(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る照明装置の構成例を示す図である。
照明装置は、
図1に示すように、1つのレーザ光源1、1本の光ファイバ2、球レンズ3及びロッドインテグレータ4を備えている。
【0013】
レーザ光源1は、出射面から光を出射する。レーザ光源1としては、例えば、半導体レーザ、固体レーザ又はファイバレーザが用いられる。このレーザ光源1は、単一波長の光を出射する光源が1つ又は複数個組み合わせられて構成される。
【0014】
光ファイバ2は、入射面がレーザ光源1の出射面に対向配置されている。光ファイバ2は、コアとクラッドから成る細い繊維状のガラス物質であり、レーザ光源1から入射面に入射された光をコア内で全反射させながら導光し、出射面から出射する。
なお、光ファイバ2の出射面は、球レンズ3の入射面側の焦点位置に配置されている。
【0015】
なお、光ファイバ2のコア径を1mmとし、開口数NAを0.25とした場合、レーザ光源1を構成する光源の位置が光ファイバ2の開口数NAの範囲内であれば、光ファイバ2の光軸上にない場合でも当該光源からの光を光ファイバ2へ結合できる。よって、レーザ光源1を構成する光源を複数個設置できる。なお、開口数NAは、コア材とクラッド材との屈折率差で決まる。
【0016】
球レンズ3は、入射面が光ファイバ2の出射面に対向配置されている。球レンズ3は、球状のガラスであり、入射面に入射された光を屈折し、当該光の角度分布と照度分布とを変換する。
【0017】
図2は、球レンズ3の入射面側の焦点位置fにレーザ光源1を設置した場合での球レンズ3の機能を説明する図である。なお、レーザ光源1は、球レンズ3の光軸31に対して、距離xだけ離れた箇所に設置されている。
球レンズ3は、
図2に示すように、光軸31に対して距離xだけ離れたレーザ光源1から入射された光を屈折する。この際、球レンズ3により屈折された光の光軸31に対する角度は、θ’=x/fとなる。また、球レンズ3は、レーザ光源1から光軸31に対する角度θで入射された光を、球レンズ3の出射面側の焦点位置fにおいて、光軸31に対して距離x’=θ/fだけ離れた位置を通るように屈折する。すなわち、球レンズ3は、レーザ光源1からの光に対し、光軸31に対する距離xの強度分布(照度分布)を光軸31に対する角度θ’の強度分布(角度分布)に変換し、光軸31に対する角度θの強度分布(角度分布)を光軸31に対する距離x’の強度分布(照度分布)に変換する。
【0018】
なお、球レンズ3は、屈折率が2.0より大きい場合、焦点位置が球レンズ3の内側に入る。そのため、屈折率は2.0以下とすることが望ましい。
【0019】
図1の説明に戻り、ロッドインテグレータ4は、入射面が球レンズ3の出射面に対向配置されている。ロッドインテグレータ4は、四角柱状のロッドレンズであり、入射面に入射された光を内部で全反射させながら伝播させることで、出射面で光の照度分布を均一化する。
なお、ロッドインテグレータ4の入射面は、球レンズ3の出射面側の焦点位置に配置されている。これにより、光ファイバ2の出射面でのファーフィールドパターンを、ロッドインテグレータ4の入射面に結像できる。
【0020】
次に、実施の形態1に係る照明装置の動作例について、
図3を参照しながら説明する。
図3において、面A−A’は光ファイバ2の出射面の位置を示し、面B−B’はロッドインテグレータ4の入射面の位置を示し、面C−C’はロッドインテグレータ4の出射面の位置を示している。
レーザ光源1から出射された光は、光ファイバ2に入射されて導光された後、光ファイバ2の開口数NA以下の広がり角で出射される。光ファイバ2から出射された光は、球レンズ3に入射され、この球レンズ3によって、角度分布が照度分布に変換され、照度分布が角度分布に変換される。球レンズ3により角度分布と照度分布とが変換された光は、ロッドインテグレータ4に入射され、内部で全反射を繰り返し、出射される。
【0021】
次に、実施の形態1に係る照明装置の効果について、
図4,5を参照しながら説明する。ここで、
図4Aは光ファイバ2の出射面での光の角度分布及び照度分布を示している。また、
図4Bは光ファイバ2から出射された後の光の角度分布及び照度分布を示している(球レンズ3がない場合)。また、
図5Aはロッドインテグレータ4の入射面での光の角度分布及び照度分布を示している(球レンズ3がある場合)。また、
図5Bはロッドインテグレータ4の出射面での光の角度分布及び照度分布を示している(球レンズ3がある場合)。
【0022】
光ファイバ2から出射される光は、光ファイバ2の内部を全反射しながら伝播する。そのため、
図4Aに示すように、光ファイバ2の出射面での光の角度分布は、0°付近よりも±θ
1°方向の方が強度が強い分布となる。また、照度分布は均一となる。
【0023】
ここで、球レンズ3を用いない場合、光ファイバ2から出射された後の光は、
図4Bに示すように、角度分布及び照度分布の両方とも偏りのある分布となる。
従来構成において、
図4Bに示す分布である光がロッドインテグレータ4に入射して伝播すると、ロッドインテグレータ4の出射面では照度分布が均一となる。しかしながら、ロッドインテグレータ4の出射面での角度分布は、ロッドインテグレータ4に入射された際の角度分布が保存されている。よって、照明装置から照射後の光の照度分布は均一度が低下した分布となる。照射後の分布は、例えばレーザ光源1から出射される光が多波長の場合、各光源の発光面のサイズ、波長、広がり角、設置位置が異なるため、色毎に異なるビーム形の分布となる。また、レーザ光源1から出射される光が単一波長の場合でも、図
4Aに示す角度分布が保存されるため、照射後の照度分布はリング状となる。
【0024】
一方、光ファイバ2の後段に球レンズ3を配置した場合、ロッドインテグレータ4の入射面は、光ファイバ2の出射面に対し、光ファイバ2から出射された光の角度分布と照度分布とが変換されたフーリエ変換面となる。つまり、光ファイバ2の出射面での光の角度分布がロッドインテグレータ4の入射面での光の照度分布となり、光ファイバ2の出射面での光の照度分布がロッドインテグレータ4の入射面での光の角度分布となる。
よって、ロッドインテグレータ4の入射面での光の角度分布は、
図5Aに示すように、
図4Bで示した球レンズ3を使用しない場合と比べ、偏りが小さくなり、すなわち、均一化された分布となる。また、ロッドインテグレータ4の入射面での光の照度分布は、
図5Aに示すように、中心が外側よりも強度が低い分布となる。
【0025】
図5Aに示すような分布の光がロッドインテグレータ4に入射して伝播すると、ロッドインテグレータ4の出射面では照度分布が均一となる。また、ロッドインテグレータ4の出射面での光の角度分布は、ロッドインテグレータ4に入射された際の角度分布が保存されているため、均一のままとなる。よって、
図5Bに示すように、ロッドインテグレータ4の出射面では光の角度分布と照度分布の両方が均一となり、照明装置から照射後の光の照度分布も均一化された分布となる。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、出射面から光を出射する1つのレーザ光源1と、入射面がレーザ光源1の出射面に対向配置された1本の光ファイバ2と、入射面が光ファイバ2の出射面に対向配置され、当該入射面に入射された光の角度分布と照度分布とを変換する球レンズ3と、入射面が球レンズ3の出射面に対向配置されたロッドインテグレータ4とを備えたので、照射距離に依存せず、均一な照明を実現できる。
すなわち、光ファイバ2の後段に球レンズ3を設けることで、ロッドインテグレータ4に入射する光の角度分布を均一化でき、ロッドインテグレータ4の出射面での光の角度分布及び照度分布を共に均一化できる。このように、ロッドインテグレータ4の出射面での光の角度分布及び照度分布を均一化できるので、照明装置から出射した光は照射距離に依存せず、色ムラのない均一化された照明が可能となる。
【0027】
なお上記では、光ファイバ2により出射された光の角度分布と照度分布とを変換するレンズとして、球レンズ3を用いた場合を示した。しかしながら、これに限らず、入射された光の角度分布と照度分布とを変換できるレンズであればよく、例えば、凸レンズ又はシリンドリカルレンズを用いてもよい。
なお、球レンズ3は、凸レンズ及びシリンドリカルレンズと比べ、焦点距離が短い。そのため、球レンズ3を用いることで、球レンズ3と光ファイバ2との間の距離、及び、球レンズ3とロッドインテグレータ4との間の距離を短くでき、照明装置全体を小型化できる。
【0028】
また上記では、光ファイバ2の出射面での光の角度分布が、
図4Aに示すように、0°付近よりも±θ
1°方向の方が強度が強い場合を示した。しかしながら、これに限らず、0°付近の強度が強い角度分布でも、上記と同様の効果を奏する。
【0029】
また上記では、ロッドインテグレータ4が、四角柱状のロッドレンズである場合を示した。しかしながら、これに限らず、ロッドインテグレータ4は、入射された光が内部で全反射をするような多角柱状のロッドレンズであればよい。
【0030】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2に係る照明装置の構成例を示す図である。この
図6に示す実施の形態2に係る照明装置では、
図1に示す実施の形態1に係る照明装置に対し、球レンズ3とロッドインテグレータ4との間に光拡散素子5を追加している。なお、ロッドインテグレータ4の入射面は、球レンズ3の出射面側の光学的な焦点位置に配置されている。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0031】
光拡散素子5は、球レンズ3とロッドインテグレータ4との間に配置されている。光拡散素子5は、入射された光をある決まった拡散角の中で散乱させて均一化する光学素子である。光拡散素子5としては、例えば入射された光を拡散させる拡散板が用いられる。この光拡散素子5は、球レンズ3から出射された光を拡散させる。
【0032】
なお、球レンズ3の屈折率が1.6よりも大きい場合、球レンズ3とロッドインテグレータ4との間の距離が1mm以下となり、光拡散素子5の設置が難しくなる。そのため、球レンズ3とロッドインテグレータ4との間に光拡散素子5を設置し易くするため、球レンズ3の屈折率は1.6以下が望ましい。
【0033】
次に、実施の形態2に係る照明装置の動作例について説明する。
レーザ光源1から出射された光は、光ファイバ2に入射されて導光された後、光ファイバ2の開口数NA以下の広がり角で出射される。光ファイバ2から出射された光は、球レンズ3に入射され、この球レンズ3によって、角度分布が照度分布に変換され、照度分布が角度分布に変換される。球レンズ3により角度分布と照度分布とが変換された光は、光拡散素子5に入射され、この光拡散素子5によって拡散角以内で拡散される。光拡散素子5により拡散された光は、ロッドインテグレータ4に入射され、内部で全反射を繰り返し、出射される。
【0034】
このように、球レンズ3とロッドインテグレータ4との間に光拡散素子5を設けることで、ロッドインテグレータ4の入射面での光の照度分布を均一化できる。そして、この均一化された光がロッドインテグレータ4を伝播することで、照度分布が更に均一化できる。
【0035】
また、光ファイバ2の出射面での光の照度分布に偏りがある場合、ロッドインテグレータ4の入射面での光の角度分布は光軸対称ではなくなる。一方、ロッドインテグレータ4の前段に光拡散素子5を設けることで、ロッドインテグレータ4の入射面での光の角度分布の非対称性を軽減できる。
【0036】
また、光ファイバ2の出射面の位置又はロッドインテグレータ4の入射面の位置が球レンズ3の焦点位置にない場合、ロッドインテグレータ4の入射面は光ファイバ2の出射面に対してフーリエ変換面とはならない。そのため、この場合には、ロッドインテグレータ4から出射された光は十分に均一化されない。一方、このような場合であっても、ロッドインテグレータ4の前段に光拡散素子5を設けることで、ロッドインテグレータ4の入射面での光の角度分布のムラを軽減でき、ロッドインテグレータ4から出射された光の色ムラを解消できる。
【0037】
以上のように、この実施の形態2によれば、球レンズ3とロッドインテグレータ4との間に光拡散素子5を配置したので、実施の形態1における効果に加え、ロッドインテグレータ4の出射面での光の照度分布を更に均一化でき、色ムラのない照明が可能となる。
【0038】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3に係る照明装置の構成例を示す図である。この
図7に示す実施の形態3に係る照明装置では、
図1に示す実施の形態1に係る照明装置に対し、ロッドインテグレータ4の後段に光拡散素子6を追加している。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
光拡散素子6は、ロッドインテグレータ4の出射面に対し、入射面が平行(略平行の意味を含む)に対向配置されている。光拡散素子6は、入射された光をある決まった拡散角の中で散乱させて均一化する光学素子である。光拡散素子6としては、例えば入射させた光を拡散させる拡散板が用いられる。この光拡散素子6は、ロッドインテグレータ4から出射された光を拡散させる。
【0040】
ここで、ロッドインテグレータ4の入射面と出射面の有効開口によりケラレが発生したり、エッジのチッピングが発生すると、ロッドインテグレータ4の出射面の全範囲を光が透過せず、すなわち、ロッドインテグレータ4から出射された光に部分的に照度が低い箇所が発生する場合がある。それに対し、ロッドインテグレータ4の後段に出射面と平行に光拡散素子6を配置することで、ロッドインテグレータ4の出射面の全範囲を光が透過しない場合でも均一化された光を出射できる。
【0041】
以上のように、この実施の形態3によれば、ロッドインテグレータ4の出射面に対し、入射面が平行に対向配置された光拡散素子6を備えたので、実施の形態1における効果に加え、ロッドインテグレータ4の出射面の全範囲を光が透過しない場合でも、均一化された光を出射でき、照明装置から出射された光は照射距離に依存せず均一化した照明が可能となる。
【0042】
なお上記では、
図1に示す実施の形態1に係る照明装置に光拡散素子6を追加した場合を示した。しかしながら、これに限らず、
図6に示す実施の形態2に係る照明装置に光拡散素子6を追加してもよい。
【0043】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4に係る照明装置の構成例を示す図である。この
図8に示す実施の形態4に係る照明装置では、
図1に示す実施の形態1に係る照明装置に対し、レーザ光源1を複数設け、当該複数のレーザ光源1と光ファイバ2との間に1枚の集光用レンズ7を追加している。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
複数のレーザ光源1は、互いに異なる波長(色)の光を出射する。
図8では、4台のレーザ光源1(1a〜1d)を設けた場合を示している。このレーザ光源1により出射されたレーザ光は集光用レンズ7に入射される。
【0045】
集光用レンズ7は、集光面が複数のレーザ光源1の出射面に対向配置されている。この集光用レンズ7は、各レーザ光源1により出射されたレーザ光を空間伝播で集光し、1本の光ファイバ2へ結合させる。
【0046】
次に、実施の形態4に係る照明装置の動作例について説明する。
複数のレーザ光源1から出射された光は、集光用レンズ7によって、1本の光ファイバ2の入射面に集光される。この集光用レンズ7により集光された光は、光ファイバ2に入射されて導光された後、光ファイバ2の開口数NA以下の広がり角で出射される。光ファイバ2から出射された光は、球レンズ3に入射され、この球レンズ3によって、角度分布が照度分布に変換され、照度分布が角度分布に変換される。球レンズ3により角度分布と照度分布とが変換された光は、ロッドインテグレータ4に入射され、内部で全反射を繰り返し、出射される。
【0047】
ここで、複数のレーザ光源1から出射された光を空間伝播で集光させ、1本の光ファイバ2に入射させる場合、光ファイバ2への入射角度が各レーザ光源1の設置位置に依存する。よって、各レーザ光源1から出射された光を個々に光ファイバで伝播して1本の光ファイバ2に結合する場合と比べ、各レーザ光源1から出射された光の光ファイバ2への入射角度の差異が大きくなる。
そのため、従来構成では、ロッドインテグレータの出射面での光の照度分布は均一化されるが、ロッドインテグレータへ入射された際の角度分布は保存されるため、伝播後は角度分布に依存した偏りのある分布となり、色ムラのある照明となってしまう。
【0048】
一方、実施の形態1における球レンズ3及びロッドインテグレータ4を用いた構成では、ロッドインテグレータ4の入射面を光ファイバ2の出射面に対してフーリエ変換面とすることができる。よって、ロッドインテグレータ4への入射角度の偏りがなくなり、ロッドインテグレータ4の出射面での光の照度分布だけではなく、照明装置から照射後の照度分布も均一化されるため、色ムラのない照明が可能となる。よって、複数のレーザ光源1から出射された光を空間伝播させて1本の光ファイバ2へ入射させる場合でも、照明装置から出射された光の照度分布は、照射距離に依存せず均一化できる。
【0049】
以上のように、この実施の形態4によれば、複数のレーザ光源1から出射された光を集光し、光ファイバ2へ入射させる集光用レンズ7を用いた照明装置であっても、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0050】
なお上記では、実施の形態1の構成に対し、複数のレーザ光源1に変更し、集光用レンズ7を追加した構成を示した。しかしながら、これに限らず、実施の形態2,3の構成に対し、複数のレーザ光源1に変更し、集光用レンズ7を追加してもよい。
【0051】
また上記では、4台のレーザ光源1を用いた場合を示したが、レーザ光源1の台数はこれに限らず、複数台であればよい。
【0052】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。