【実施例】
【0024】
以下では、
図1に示す単結晶製造装置10を用い、β-Ga
2O
3の単結晶およびLiTaO
3の単結晶を製造した実施例を示す。
(β-Ga
2O
3の結晶育成の実施例)
図1に示すVB(垂直ブリッジマン)炉内において種子無し一方向凝固β-Ga
2O
3結晶育成を試みた。
内径25mm、高さ50mmのPt-Rh系合金製のるつぼにβ-Ga
2O
3焼結体原料を充填し、β-Ga
2O
3の融点(約1795℃)近傍の温度勾配を5〜10℃/cmになるように温度分布を設定した1800℃以上の空気中高温炉(
図1に示す装置)内で全融解させた。その後るつぼ移動および炉内温度降下を併用し一方向凝固を行った。冷却後、るつぼを剥がし成長結晶を取り出した。
【0025】
上記一方向凝固β-Ga
2O
3結晶育成で得られた典型的な3種類の結晶の結晶写真を
図8に示した。結晶Aは全てが多結晶成長した場合である。結晶Bは多結晶成長から突然単結晶成長に変化した場合である。結晶Cは底面から上端まで単結晶成長した場合である。結晶Bの上部単結晶部分および単結晶Cは、X線回折と特徴的な晶癖観察から、どちらも<100>方向に(100)面のファセット成長していること、さらに(100)面と約104°に(001)ファセット面が現れ、これら2つのファセット面に垂直な方向が<010>方向であることが同定された。<100>方向よりも<010>方向の成長速度が約1桁速い、強い成長速度異方性のため、種子無しでも高い確率で、<100>方向に(100)面ファセット成長することが確認された。
【0026】
また、得られた単結晶から成長方向に垂直な(100)面基板を切断し、厚さ約0.5mmの両面鏡面研磨基板を得た。これらの基板試料について、クロスニコル観察、X線トポグラフ観察、KOHエッチング後光学顕微鏡観察を行った。
クロスニコル観察結果を
図9(a)に示した。この観察方法において検出可能な小傾角境界の無い単結晶基板であることがわかった。同じ基板の透過X線トポグラフ写真を
図9(b)に示した。外周部の一部を除き透過X線回折像が得られた。外周部の画像が欠落した部分(白色部)は、高転位密度領域、またはクロスニコル法では検出できない僅かな傾角に相当する。ほぼ[010]方向に局所的に並ぶ転位ピット列を
図9(c)に示した。この密度は2×10
3個/cm
2程度であった。
図9(b)のX線トポグラフ写真の白色部分に相当する領域には5×10
5個/cm
2程度の高密度転位ピットが存在していた。また、X線トポグラフ像とは対応しない[010]方向に10〜数10μmサイズで線状に並ぶ欠陥を
図9(d)に示した。この欠陥はエッチング無しでも観察されるもので、線状欠陥と考えられる。
本実施例において、るつぼ28は使い捨てであったが、Pt-Rh合金製で全面にジルコニアコートを施した発熱体20は、50回以上の結晶育成に繰り返し用いることができた。
【0027】
(LiTaO
3の結晶育成の実施例)
VB法によるタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成を次のようにして行う。
まず、あらかじめ計測した高周波コイル22の出力と炉本体内温度(以下炉内温度という)データに基づいて、高周波コイル22を所要出力で出力させて、あらかじめ
図10に示すような炉内温度分布となるように、炉内を昇温させる。次いでタンタル酸リチウムの種子結晶とタンタル酸リチウムの原材料を収容したるつぼ28をアダプタ26に乗せ、るつぼ受軸24を上昇させて、るつぼ28を均熱ゾーンまで上昇させ、タンタル酸リチウムを融解させる。次いでるつぼ軸受24を降下させて、るつぼ28を炉外で冷却することによって融解したタンタル酸リチウムを固化、結晶化させてタンタル酸リチウム単結晶を得ることができる。
【0028】
その後、炉内温度を適宜温度まで降下させて、炉内に再度るつぼを上昇させて、必要に応じて結晶のアニール処理をすることができる。
るつぼ28からタンタル酸リチウム単結晶を取り出すには、白金製のるつぼ28をハサミ等によって切り裂いて、結晶を取り出すようにする。切り裂いたるつぼ28は融解して再利用することができる。なお、るつぼ28は、切り裂くことが容易なように、厚さ0.5mm以下(好適には0.1〜0.2mm)の白金製とするとよい。
【0029】
VGF法によるタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成の場合にも、あらかじめ
図10に示すような炉内温度分布となるように、発熱体20を加熱する際の高周波コイル22の出力を把握しておくようにする。
VGF法によるタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成には、タンタル酸リチウムの種子結晶とタンタル酸リチウムの原材料を収容したるつぼ28をアダプタ26に乗せ、るつぼ受軸24を上昇させて、るつぼ28を、あらかじめ炉内の均熱ゾーンとなるべき高さ位置まで上昇させておく。次いで、高周波コイル22を所要出力で作動させ、炉内温度を
図10に示すような温度分布となるように上昇させ、タンタル酸リチウムを融解させる。次いで炉内温度を降下させてタンタル酸リチウムを固化、結晶化させてタンタル酸リチウム単結晶を得ることができる。VGF法によるときは、るつぼ28を所要高さ位置に固定配置して、炉内温度を上昇、下降させるものであるので、温度下降時にアニール処理を同時に行える利点がある。また、結晶育成の際に、炉内温度を上昇、降下させるのであるから、温度制御を細かく精度よく行えるので、より高品質のタンタル酸リチウム単結晶を得ることができる。
【0030】
図11に、VGF法によるときの炉内温度制御する際の炉内温度のプロファイルの一例を示す。また
図12にその際の温度制御フローを示す。
図13は、高周波コイル22の出力に対する炉内温度の追従性を示すグラフである。
工程S1において、るつぼ28にタンタル酸リチウムの種子結晶とタンタル酸リチウムの原材料を収納し、るつぼ28を炉内の所定位置(上記均熱ゾーンとなるべき位置)まで上昇させておく。炉内温度は室温である。
工程S2において、高周波コイル22の出力を比較的急激に上昇させ、炉内温度が約1295℃となるまで、炉内温度を急上昇させる。この間の時間は約600分。これによりタクトタイムを短縮できる。出力を急上昇させるので炉内温度の追従性は低い(
図13)。
【0031】
工程S3では、高周波コイル22の出力を一定にして、炉内の温度を一定に保持し、炉内の温度を安定化する。この間の時間は約650分となる。ただし、今後の実施において、炉内温度安定化に650分を必要とすることはなく、360分程度で十分である。
次いで工程S4で、再度高周波コイル22の出力を再び急上昇させて炉内温度を種子付け温度の手前である約1500℃まで上昇させる。この間の時間は約230分となる。工程S3で炉内温度を安定化し、炉内温度分布を均一化してあるので、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は高い(
図13)。
次いで工程S5で、高周波コイル22の出力上昇を低く抑えて、炉内温度、すなわちるつぼ28の温度が種子付け温度となるまでゆっくり温度上昇させる。この間の時間は約150分となる。このように、炉内温度をゆっくり上昇させることで、るつぼ28の温度が、種子付け温度(約1586℃)をオーバーシュートするのを防止することができる。
【0032】
そして工程S6で、高周波コイル22の出力を一定にし、るつぼ28の温度を約1586℃と一定にして、原材料のタンタル酸リチウムを溶解し、種子付けを行う。この間の時間は約180分となる。なお、るつぼ28の温度は、るつぼ28の底部の温度を熱電対のヘッド30で計測しているので、るつぼ28内の温度は、これよりも高い、約1650℃に上昇していると考えられる。
上記のように、工程S5で炉内温度をゆっくり上昇させて、るつぼ28の温度が、種子付け温度(約1586℃:るつぼ内の実際の種子付け温度は1650℃)をオーバーシュートするのを防止するようにしているので、タンタル酸リチウムの単結晶化を精度よく、かつ効率よく行わせることができる。また、るつぼ28を過加熱することがないので、白金製のるつぼ28が軟化して変形するなどの不具合が発生しない。また、工程S5およびS6での、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は当然ながら高い(
図13)。
このように、温度制御を細かく精度よく行うことができる製造装置を作製し、炉内温度上昇の追従性が高い制御を実行することによって、白金るつぼを軟化、変形させることなく用いることができた。
また、白金るつぼの温度を白金融点(1768℃)よりも50℃程度低くなるようにすればよいことがわかった。
【0033】
次いで、工程S7で、高周波コイル22の出力を若干低下させ、炉内温度、したがって、るつぼ28の温度を約1425℃までゆっくり低下させ、融解したタンタル酸リチウムを固化、結晶化させる。この間の時間は約3010分となる。この工程S7における、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は高い(
図13)。この工程S7において、実質的にアニール処理もなされる。
そして、工程S8で、高周波コイル22の出力を比較的急激に低下させ、炉内温度を室温にまで低下させ、結晶育成を終了する。工程S8の時間は、約2660分となる。工程S8における、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は低い(
図13)。
【0034】
上記のように、
図11、
図12に示す炉内温度制御の実施の形態において、工程S1、S2、S3、S8では、高周波コイル22の出力変化に対して炉内温度が遅れて追従しているが、精密な温度制御を必要とする工程S4〜S7、特に工程S5〜S7では、高周波コイル22の出力変化に対する炉内温度の追従性は高い。このことは、精密な温度制御を必要とする工程S5〜S7において、必要とする正確な温度制御が可能なことを意味し、高品質のタンタル酸リチウム単結晶を育成でき、また、るつぼ28を変形させることなく結晶の育成ができる。
図14は、白金100%のるつぼを用い、
図1に示す高周波加熱炉により、
図11に示す炉内温度プロファイルにて、VGF法により結晶育成を行って得られたタンタル酸リチウム単結晶の写真である。
なお、
図11、
図12に示す炉内温度のプロファイルおよび制御フローは一例であって、これに限定されるものではない。
【0035】
上記のように、本実施例では、温度勾配を小さくできるVB法もしくはVGF法を採用することによって、炉内温度分布の均一化が図れ、炉内最高温度を低く抑えることができるので、タンタル酸リチウムとの融点差の小さい白金製のるつぼを、軟化、変形させることなく用いることができる。そして、白金製のるつぼを用いることができるので、るつぼ材料の結晶中への融解がほとんどなく、炉内温度制御を精密に行うことができることと相俟って、高品質のタンタル酸リチウム単結晶の育成ができるという効果を奏する。
また、酸化雰囲気(大気中)でタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成ができるので、例えばIr(イリジウム)製るつぼを用いる場合のように、不活性ガス等の導入が必要でなく、装置の小型化が図れると共に、アニール処理も容易に行えるという利点がある。
以上、各実施例の結果により、酸化ガリウムとタンタル酸リチウムの単結晶の育成を確認しており、本実施の形態における単結晶製造装置によれば、融点が1800℃ぐらいまでの金属酸化物における、単結晶の商業的製造を実現可能にできる。