(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容物を搾り出すべくフィルムパック(30)を載置するための湾曲面(11)を具備する基台(10)と、前記基台(10)の各側面(12)に形成された軸孔(16)にて軸支される回動レバー(20)と、前記湾曲面(11)との間に前記フィルムパック(30)を挟んだ状態にて該湾曲面(11)に沿って移動するべく前記回動レバー(20)に取り付けられたローラー(21)と、を有するフィルムパック搾り器(1)において、
前記軸孔(16)が、
前記湾曲面(11)に沿って前記ローラー(21)を下げる際に前記回動レバー(20)の軸(22)を軸支するための主軸孔(16a)と、
前記主軸孔(16a)よりも前記湾曲面(11)に近い位置に設けられかつ前記湾曲面(11)に沿って前記ローラー(21)を上げる際に前記回動レバー(20)の軸(22)を軸支するための副軸孔(16b)と、を具備し、
前記回動レバー(20)を操作することにより該回動レバー(20)の軸(22)が前記主軸孔(16a)と前記副軸孔(16b)との間で移動可能であることを特徴とする
フィルムパック搾り器。
着脱可能な受け板(40)を支持するべく、前記基台(10)を前記湾曲面(11)の下端(11a)から後方に向かって切り欠いた溝として設けられた受け板取付溝(17)を有することを特徴とする
請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムパック搾り器。
前記湾曲面(11)の下端(11a)が前記基台(10)の底面から所定の高さに位置し、該湾曲面(11)の下端(11a)と該基台(10)の底面の間において該基台(10)の内部空間が開口していることを特徴とする
請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムパック搾り器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の搾り器は、ローラと湾曲面の間にフィルムパックを挟んだ状態で、ハンドルを用いてローラを湾曲面に沿って上から下に下げることによりフィルムパックの内容物を搾り出す。その後、ローラを初期位置に戻すためにハンドルを上げる必要があるが、その場合、ローラが、押しつぶされたフィルムパックに接触しながら上がって行くので引っ掛かり易く、円滑に上がらないことがある。
【0006】
以上の問題点に鑑み本発明の目的は、フィルムパック搾り器において、ローラーを下げて搾り終えた後に、ローラーを円滑に初期位置に上げることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
・ 本発明の態様は、内容物を搾り出すべくフィルムパック(30)を載置するための湾曲面(11)を具備する基台(10)と、前記基台(10)の各側面(12)に形成された軸孔(16)にて軸支される回動レバー(20)と、前記湾曲面(11)との間に前記フィルムパック(30)を挟んだ状態にて該湾曲面(11)に沿って移動するべく前記回動レバー(20)に取り付けられたローラー(21)と、を有するフィルムパック搾り器(1)において、前記軸孔(16)が、前記湾曲面(11)に沿って前記ローラー(21)を下げる際に前記回動レバー(20)の軸(22)を軸支するための主軸孔(16a)と、前記主軸孔(16a)よりも前記湾曲面(11)に近い位置に設けられかつ前記湾曲面(11)に沿って前記ローラー(21)を上げる際に前記回動レバー(20)の軸(22)を軸支するための副軸孔(16b)と、を具備し、前記回動レバー(20)を操作することにより該回動レバー(20)の軸(22)が前記主軸孔(16a)と前記副軸孔(16b)との間で移動可能であることを特徴とする。
・ 上記態様において、前記主軸孔(16a)と前記副軸孔(16b)の各中心を結ぶ直線が、水平方向に対して所定の角度(α)をなすことを特徴とする。
・ 上記態様において、前記主軸孔(16a)の直径が前記副軸孔(16b)の直径よりも大きいことを特徴とする。
・ 上記態様において、前記主軸孔(16a)の直径が前記副軸孔(16b)の直径と等しく、前記軸孔(16)の外郭形状が長円形であることを特徴とする。
・ 上記態様において、前記主軸孔(16a)と前記副軸孔(16b)の各中心を結ぶ直線の長さ(d1)が、該主軸孔(16a)と該副軸孔(16b)の各半径の和よりも短いことを特徴とする。
・ 上記態様において、着脱可能な受け板(40)を支持するべく、前記基台(10)を前記湾曲面(11)の下端(11a)から後方に向かって切り欠いた溝として設けられた受け板取付溝(17)を有することを特徴とする。
・ 上記態様において、前記湾曲面(11)の下端(11a)が前記基台(10)の底面から所定の高さに位置し、該湾曲面(11)の下端(11a)と該基台(10)の底面の間において該基台(10)の内部空間が開口していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ローラーを取り付けた回動レバーを軸支する軸孔が、ローラーを下ろす際に軸支する主軸孔と、ローラーを上げる際に軸支する副軸孔とを有し、副軸孔は、主軸孔よりも湾曲面に近い位置にある。従って、ローラーを上げる際には、下げる際に比べてローラーと湾曲面の間の間隙が大きくなるので、湾曲面上のフィルムパックに引っ掛からずにローラーを上げて初期位置に戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
本発明のフィルムパック搾り器に適用されるフィルムパックとは、ソーセージパックとも称される。筒状のフレキシブルな合成樹脂等のフィルム包装材に内容物が充填され、その両端が留め金で密封されたものである。内容物は、例えば建築用接着剤等の高粘度のペースト状、半流動性のものであるが、特に限定しない。
【0011】
図1は、本発明によるフィルムパック搾り器の一実施形態を示した概略斜視図である。フィルムパック搾り器1は、基台10と、基台10に対して回動可能に取り付けられた回動レバー20とを有する。基台10は、フィルムパックを載置するための湾曲面11と、湾曲面11を正面から視て左右両側に配置された2つの鉛直な側面12と、その後方の鉛直な背面及び水平な底面とを具備する。各面は、所定の厚さの面状部材により構成することができる。なお、底面には、所定の厚さの面状部材を取り付なくともよく、図示のような複数の脚板を取り付けてもよい。基台10の内部は、中空でも中実でも、また中空部分と中実部分が混在していてもよい。
【0012】
湾曲面11は、背面の上縁近傍から底面の前縁近傍まで延在する所定の幅の帯状の凸面である。側面視における湾曲面11の主要部(搾り出しに直接関係する部分)の輪郭形状は、所定の半径をもつ円周の略4分の1の部分に相当する。
【0013】
湾曲面11の上端部には、幅方向の両端間に延在する作業用凹部13が形成されている。作業用凹部13は、例えば略矩形の断面形状を有し、上面が開放された所定の容積の空間を形成している。また、作業用凹部13の前壁中央部には所定の容積の空間である係止用凹部14が形成されている。さらに、係止用凹部14の上面を覆う天井板の後縁中央部には、湾曲面側に向かって切り欠かれた切欠き15が形成されている。切欠き15は、平面視にて略V字形状又はU字形状の輪郭を具備し、フィルムパックの一端を係止するためのものである。
【0014】
回動レバー20は、長尺の左右一対のレバー棹23を具備する。一対のレバー棹23の各々の一端には軸22がそれぞれ形成されている。軸22は、基台10の各側面12の軸孔16にてそれぞれ軸支される。一対のレバー棹23の他端間はハンドル24で連結されている。搾りだし作業は、作業者がハンドル24を手で持って行う。
【0015】
一対のレバー棹23の長手方向の中間部において、これらのレバー棹23間に1本のローラー21が取り付けられている。ローラー21は、回動レバー20を回すことにより、湾曲面11との間に所定の間隙を維持しつつ湾曲面11に沿って移動する。
【0016】
図2は、
図1に示した基台10の軸孔16の実施例とその作用を説明するための概略図である。基台の側面12の軸孔16は、主軸孔16aと、副軸孔16bとを具備する。各々が円形の軸孔である。主軸孔16aは、湾曲面11に沿ってローラー21を下げる搾り出し作業の際に回動レバーの軸22を軸支するためのものである。一方、副軸孔16bは、湾曲面11に沿ってローラー21を上げるリセットの際に回動レバーの軸22を軸支するためのものである。回動レバーの軸22は、主軸孔16aと副軸孔16bとの間で移動可能である。
【0017】
図2に示す実施例では、主軸孔16aの中心Caと副軸孔16bの中心Cbを結ぶ直線の長さd1が、主軸孔16aと副軸孔16bの各半径の和よりも短くなっており、双方の軸孔の一部が重なった形状となっている。
【0018】
主軸孔16a及び副軸孔16bの双方とも、軸22の円滑な回動を実現するために、軸22の周縁に対して一定の間隙をもって軸支するような大きさに設定されている。好適には、主軸孔16aに対してより大きな間隙を設けることにより、搾り出し作業時には遊嵌状態で軸支する。搾りだし作業時には、ローラー21が湾曲面11との間に挟んだフィルムパックを略棒体形状から平坦な形状へと押し潰しながら回動するので、軸22に大きな負荷がかかる。従って、軸22の周囲にある程度の変位が可能な間隙が設けられていることにより円滑な回動を確保できる。一方、軸22が副軸孔16bにより軸支されるリセット時には、軸22にかかる負荷は小さいので周囲の間隙は小さくても円滑な回動が可能である。よって、主軸孔16aの直径は、副軸孔16bの直径よりも大きいことが好適である。
【0019】
また、主軸孔16aの中心Caと副軸孔16bの中心Cbを結ぶ直線の延長線Sと、湾曲面11との交点Pにおける湾曲面11の接線Tとは垂直に交わる。この交点Pの位置は、ローラー21の最下位置に対応する。すなわち、主軸孔16aの中心Caと副軸孔16bの中心Cbを結ぶ直線の方向は、ローラー21が最下位置にあるときの回動レバーのレバー棹の長手方向と同じである。
【0020】
また、図示の通り、主軸孔16aの中心Caと交点Pとの距離Laよりも、副軸孔16bの中心Cbと交点Pとの距離Lbの方が短い。すなわち、副軸孔16bは、主軸孔16aよりも湾曲面11に対して距離d1だけ近い位置に設けられる。軸孔22が主軸孔16aから副軸孔16bに移動すると、ローラー21も一体に移動するので、ローラー21の湾曲面11との間の間隙が距離d1だけ大きくなる(移動後のローラー21を鎖線で示す)。
【0021】
次に、
図3及び
図4を参照して、搾り出し作業工程を説明する。
図3(a)は、フィルムパックの一例の外観を示した図であり、
図3(b)(c)(d)は、
図1に示したフィルムパック搾り器を用いた搾り出し作業の状況を概略的に示した図である。
図4(a)(b)(c)(d)(e)は、搾り出し時及びその後のリセット時の基台の軸孔と、回動レバーの軸との関係を模式的に示した図である。なお、
図3及び
図4では、回動レバー20(レバー棹23)の操作方向を黒矢印で示している。
【0022】
図3(a)に示すように、フィルムパック30は、フレキシブルな筒状のフィルム31に内容物を充填し、両端を留め金32で密封した略棒体形状のものである。
【0023】
図3(b)に示すように、先ず、フィルムパック30の一方の留め金32を基台10の切欠き15に引っ掛けて係止する。作業用凹部13は、この作業を行うための空間である。回動レバー20は、この作業の邪魔にならない位置に回動させておく。切欠き15の幅は、留め金32よりも小さいため、留め金32は抜け出せない。
図1に示した係止用凹部14内にフィルムパック30の一端部が収容される。フィルムパック30の本体は、湾曲面11上に載置され、切欠き15から吊り下がった状態となる。さらに、基台10の受け板取付溝17には、搾り出された内容物を受けるための受け板40が差し込まれる。受け板40は着脱可能であり、必要に応じて用いられる。受け板取付溝17は、基台10を湾曲面11の下端から後方に向かって切り欠いた溝として設けられている。受け板取付溝17は、後方に向かってやや降り傾斜となっていることが、作業上好適である。
【0024】
作業開始時には、回動レバー20を湾曲面11の最上位置とし、一対のレバー棹23をほぼ鉛直方向に向ける。このとき、回動レバー20の軸22は、軸孔16の主軸孔16a内に位置する。この時点の状態は、
図4(a)に示されている。続いて、フィルムパック30のもう一方の留め金32を切り取り、フィルムパック30の下端を開封する。
【0025】
次に、
図3(b)の状態から回動レバー20を回してローラー21を下げることにより、搾り出しを行う。搾り出し時の変位は、
図4(a)(b)(c)に示されている。この際、ローラー21が、湾曲面11との間にフィルムパック30を挟んだ状態にて湾曲面11に沿って移動する。これによりフィルムパック30は上端側から押し潰され、下端側から内容物33が押し出され、受け板40に向かって落ちる。
【0026】
図4(b)に示すように、回動レバー20の回動中、軸22は、主軸孔16aから副軸孔16bへ移動する方向に力を受けないため、軸22は副軸孔16bへは移動しない。
【0027】
図3(c)は、回動レバー20すなわちローラー21が最下位置となった状態を示している(
図4(c)に対応)。搾り出された内容物33は、受け板40の上に堆積している。ローラー21により押し潰されたフィルムパック30は、平坦になって湾曲面11に張り付いた状態である。
【0028】
次に、
図3(d)では、最下位置にて回動レバー20を黒矢印方向に引くことにより、軸22が主軸孔16aから副軸孔16bに移動した状態を示している。この変位は、
図4(c)から(d)に対応する。
図2に示したように、主軸孔16aと副軸孔16bの各中心を結ぶ直線は、ローラー21の最下位置において回動レバー20のレバー棹23と同じ方向であるので、最下位置で回動レバー20をそのまま引くだけで簡単に軸22が移動する。
【0029】
その後、
図4(d)に示すように、軸22が副軸孔16bに軸支された状態で、黒矢印の方向に回動レバーを回す。これによりローラー21を上げて初期位置にリセットすることができる。軸22が副軸孔16bに移動したことにより、湾曲面11とローラー21との間の間隙が大きくなっているので、回動レバーが引っ掛かることなく円滑に上げることができる。
【0030】
図4(e)に示すように、回動レバーを最上位置まで上げたならば、黒矢印の方向に回動レバーを押すことにより、軸22が副軸孔16bから主軸孔16aへと移動し、
図4(a)の状態に戻る。
【0031】
図5(a)は
図4(a)のI−I断面を、
図5(b)は
図4(d)のII−II断面を概略的に示したものである。これらの軸支部分の構成は一例であり、多様な構成とすることが可能である。
図5(c)は、軸受けを用いない別の簡易な実施例のI−I断面の例を概略的に示したものである。この場合、レバー棹23の先端から垂直に折れ曲がった延長部分として軸が形成されている。
【0032】
図6は、軸孔16の別の例を示す。
図6(a)では、主軸孔16aと副軸孔16bの各中心を結ぶ直線の長さd2が、主軸孔16aと副軸孔16bの各半径の和よりも長くなっており、双方の軸孔は、通路16cを介して繋がった形状となっている。通路16cは、回動レバー20の軸22が通過可能な幅を有する。主軸孔16aと副軸孔16bの各中心の間が離れるほど、リセット時のローラーと湾曲面の間の間隙が大きくなる。しかしながら、当該間隙は必要最小限とすることが好適である。
【0033】
図6(b)では、主軸孔16aの直径が副軸孔16bの直径と等しく、軸孔16の外郭形状が長円形である。図示の例では、主軸孔16aと副軸孔16bの各中心を結ぶ直線の長さd2が、主軸孔16aと副軸孔16bの各半径の和よりも長いが、長さd2が各半径の和よりも短くてもよい。主軸孔16aと副軸孔16bの各中心を結ぶ直線は、湾曲面に向かって上向きに水平方向に対し角度αをなしている。
【0034】
さらに、
図6(c)に示すように、主軸孔16aと副軸孔16bの各中心を結ぶ直線が、湾曲面に向かって下向きに水平方向に対しを角度αをなしていてもよい。この場合、主軸孔16aの中心と副軸孔16bの中心を結ぶ直線の延長線Sは、湾曲面11を下方へ延長した仮想的な延長面上で交わることになる。この場合、ローラー21を湾曲面11の最下位置まで押し下げた後、そのまま若干下方に引くことで軸を主軸孔16aから副軸孔16bへ移動させることができるので好ましい。
【0035】
図7は、基台10の別の例を有するフィルムパック搾り器1Aを示す。湾曲面11の下端11aが基台10の底面から所定の高さに位置している。この構成例においては、湾曲面11の下端11aと基台10の底面の間において基台10の内部空間が開口している。すなわち、湾曲面11の下端11aより下方では、基台10の前面が設けられていない。上述した受け板を用いずに、絞り出された内容物を床面に直接落下させる場合、内容物が付着しないように前面がないことが好ましい。図示しないが、別の構成例として、
図7の構成例において受け板取付溝17を設けない構成としてもよい。
【0036】
以上に述べた本発明の実施形態は一例を示したものである。各実施形態で説明した構成は互いに組み合わせることも可能である。また、これら以外にも、設計的変更による多様な変形形態が可能であり、それらについても本発明に含まれるものとする。