特許第6641325号(P6641325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.の特許一覧

特許6641325液浸リソグラフィーのための組成物および方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641325
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】液浸リソグラフィーのための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20200127BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20200127BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20200127BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/039 601
   C08F220/22
   G03F7/20 521
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-117040(P2017-117040)
(22)【出願日】2017年6月14日
(62)【分割の表示】特願2013-125854(P2013-125854)の分割
【原出願日】2007年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-187792(P2017-187792A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】60/855715
(32)【優先日】2006年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ジェイ・カポラリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ジー・バークレー
(72)【発明者】
【氏名】ダヤン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】リー・チヤ
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−046582(JP,A)
【文献】 特開2008−065098(JP,A)
【文献】 特開2004−361577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)1種以上の光酸不安定基を含む1種以上の樹脂、
(ii)光活性成分、および
(iii)1種以上の光酸不安定基と、複数のビニル基を有するアクリレートモノマーから形成された繰り返し単位と、を含む1種以上のフッ素化された物質
を含むフォトレジスト組成物を基体上に適用し、
該適用する工程の間に該(iii)の1種以上のフッ素化された物質がフォトレジスト組成物層の上部領域へ向かって移動する工程;並びに、
(b)該適用したフォトレジスト組成物を、フォトレジスト組成物を活性化する放射線に液浸露光し、前記液浸露光および液浸露光後の処理の間にフッ素化開裂生成物が生成する工程;
を含む、フォトレジスト組成物の処理方法。
【請求項2】
フォトレジスト層を、フォトレジスト組成物を活性化する193nmの波長を有する放射線に露光する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スピンコートされた層として適用されたフォトレジスト組成物が、70度を越える後退水接触角をもたらす、請求項1または2に記載の法。
【請求項4】
(iii)1種以上の光酸不安定基を含む1種以上のフッ素化された物質が、フォトレジスト組成物中に、流体フォトレジスト組成物の総重量基準で0.1〜20重量%で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(iii)1種以上の光酸不安定基を含む1種以上のフッ素化された物質が、フォトレジスト組成物中に、フォトレジスト組成物の総固形分基準で最大で1重量%まで存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(iii)1種以上の光酸不安定基を含む1種以上のフッ素化された物質が、フォトレジスト組成物中に、フォトレジスト組成物の総固形分基準で最大で2重量%まで存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(iii)1種以上の光酸不安定基を含む1種以上のフッ素化された物質が、フォトレジスト組成物中に、フォトレジスト組成物の総固形分基準で最大で3重量%まで存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に液浸フォトリソグラフィー処理に有用な新規フォトレジスト組成物に関する。本発明の好ましいフォトレジスト組成物は、塩基での処理によって変化することのできる水接触角度を有する1種以上の物質、および/またはフッ素化された光酸不安定基(photoacid−labile group)を含む1種以上の物質、および/またはポリマー主鎖から間隔を置く酸基を含む1種以上の物質を含む。本発明の特に好ましいフォトレジストは、液浸リソグラフィー処理中における、レジスト層に接触する浸漬流体中へのレジスト物質の浸出を低減することができる。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは像を基体へ転写するために用いられる感光性フィルムである。フォトレジストのコーティング層は基体上に形成され、次いで、フォトレジスト層はフォトマスクを通して活性化放射線源に暴露される。フォトマスクは活性化放射線に不透明な領域と、活性化放射線に透明な他の領域を有する。活性化放射線への暴露はフォトレジストコーティングに光誘起化学変換を提供し、それによってフォトマスクのパターンをフォトレジスト被覆基体へ転写する。露光に続いて、フォトレジストは現像され、基体の選択的加工を可能にするレリーフ像を提供する。
【0003】
半導体産業の成長は、ICデバイスの複雑さは平均2年ごとに倍加すると述べたムーアー(Moore)の法則に従って進んでいる。これは、常に縮小しつつあるフィーチャーサイズを伴うパターンおよび構造のリソグラフィー的転写を必要とする。
【0004】
より小さなフィーチャーサイズを達成する1つの手法は、より短い波長の光を用いることであるが、しかし、193nm未満で透明な物質を見出すことの困難さが、単純にフィルムへより多くの光を合焦する液体を用いることによってレンズの開口数を増加させる液浸リソグラフィーを用いる選択肢へ導いた。液浸リソグラフィーは、像形成デバイス(例えば、KrFまたはArFステッパー)の最終表面とウェーハまたは他の基体の最初の表面間に比較的屈折率の高い流体を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0084794号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大規模かつ実証された液浸リソグラフィーシステムはまだ一般に存在しない。液浸リソグラフィーに伴う問題を解決するいくつかの努力が行われた。米国特許出願公開第2005/0084794号を参照されたい。液浸リソグラフィーのための信頼性の高い便利なフォトレジストおよび像形成工程が明らかに必要とされている。
【0007】
液浸フォトリソグラフィー用の新規な物質および方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで、発明者らは液浸フォトリソグラフィーのための新しい組成物と工程を提供する。詳細には、液浸リソグラフィー用途に特に有用であ得えるフォトレジスト組成物が提供される。
【0009】
第1の好ましい態様において、水性アルカリ性現像剤組成物に好ましくまたは特異的に反応(溶解)することのできるフォトレジスト組成物が提供される。かかる態様において、フォトレジスト組成物は、例えば、カルボキシ(−COOH)、スルホキシ(−SO)および/またはフッ素化アルコール基などの1種以上の比較的低いpKa基を含む樹脂など、1種以上の低pKa基を含む成分を含むことが好ましい。
【0010】
かかる低pKa基は、樹脂主鎖から間隔が置かれていること、例えば1,2,3,4,5、またはそれより多い原子(例えば炭素(例えば−CH−)またはヘテロ(N、O、またはS)原子)が樹脂主鎖と低pKa基の間に介在することなどが特に好ましい。発明者らは低pKa基の間隔を置くことがレジストの現像剤溶液接触角度をより低下させることができることを見出した。
【0011】
さらに好ましい態様において、本発明のフォトレジスト組成物は、処理されて、低下した水接触角度を提供し得る。かかる態様において、露光された(例えば、パターン形成された200nm未満の放射線へ露光された)フォトレジスト組成物のコーティング層は処理され、処理されたコーティング層がさらに親水性を増すように水接触角度の低下を提供することができる。好ましい態様において、露光されたフォトレジスト層は水性アルカリ性現像剤組成物で処理される。
【0012】
さらに詳細には、本発明のかかる態様において、フォトレジストは、例えば水性アルカリ性フォトレジスト現像剤組成物などの塩基の存在下で開環して、下地組成物コーティング層の水接触角度を低下させるカルボン酸部分を提供する無水物および/またはラクトン基を含む樹脂成分などの1種以上の成分を含むことができる。
【0013】
さらに他の態様において、本発明のフォトレジスト組成物は、フッ素化光酸不安定基を含む1種以上の成分を含むことができ、レジストコーティング層の露光および露光後ベーク処理の間にフッ素化開裂生成物が生成される。本明細書において言及される「フッ素化開裂生成物」は、フォトレジスト層の光誘起工程中に樹脂などの高分子量の成分から開裂した低分子量(例えば400、300、200、または100ダルトン未満)の基である。したがって、例えば、フッ素化開裂生成物は、樹脂を含むレジストの露光および露光後ベーク処理工程中にそれらの基および樹脂から開裂した、樹脂の光酸不安定エステルまたはアセタール基部分とすることができる。
【0014】
本発明の特に好ましいフォトレジストは、露光工程中の浸漬流体への接触過程における、浸漬流体中へのフォトレジスト成分の移動(浸出)を低減することができる。かかるフォトレジスト物質の浸漬流体中への移動の有意な低減は、フォトレジスト上およびレジスト層と浸漬流体間に介在するいかなる種類の被覆層またはバリア層も提供することなく、達成され得る。
【0015】
また、本発明の特に好ましいフォトレジスト組成物は、例えば光酸不安定基を有するポジ型レジスト樹脂などの他のレジスト物質と実質的に非混和性の1種以上の物質を含むことができる。かかる非混和性の物質をフォトレジスト組成物へ組み込むと、液浸リソグラフィーの過程における浸漬流体層中へのフォトレジスト物質の望ましくない移動を低減することができることが見出された。
【0016】
上述のフォトレジスト成分(例えば、1種以上の低pKa基を含む成分;1種以上の塩基反応性基、例えば無水物および/またはラクトンなどを含む成分;または1種以上のフッ素化光酸不安定基を含む成分)は、かかる実質的に非混和性の物質として機能することができる。
【0017】
あるいは、フォトレジストは1種以上の実質的に非混和性の物質、および別々の物質成分として、上で論じた1種以上の物質を含む成分を含むことができ、すなわち、別の成分として、1種以上の低pKa基を含む成分;1種以上の塩基反応性基、例えば無水物および/またはラクトンなどを含む成分;または1種以上のフッ素化光酸不安定基を含む成分;を含むことができる。例えば、化学増幅型のポジ型フォトレジストにおいて、脱保護性樹脂(レジストのコーティング層の露光領域と非露光領域間に溶解性の差を与える)は1種以上の上述の物質を組み込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明者らは、フォトレジスト層から浸漬流体層中への酸および/または他のレジスト物質の望ましくない移動が特に問題になり得ることを見出した。特に、浸漬流体中に移動する酸または他のフォトレジスト物質が露光ツールを損傷させ、かつフォトレジスト層にパターン形成された像の解像度を低下させることがあり得る。したがって、本発明のフォトレジストは顕著な利点を有する。
【0019】
いかなる理論にも拘束されることないが、1種以上のレジスト樹脂と実質的に非混和性である1種以上の物質は、適用されたフォトレジストコーティング層の上部領域へ向かって移動することができ、それによって、液浸露光工程の過程において、レジスト層に接触するレジスト物質からフォトレジスト物質が浸漬流体中へ移動することを抑制するものと考えられる。
【0020】
本明細書に言及されるように、1種以上のフォトレジスト樹脂に実質的に非混和性である1種以上の物質は、フォトレジストに添加して浸漬流体中へのフォトレジスト物質の移動または浸出を低減する任意の物質とすることができる。かかる実質的に非混和性の物質は、試験されるフォトレジストと同じ成分を有するが実質的に非混和性の物質の候補ではない対照レジストと比較して試験することにより容易に実験的に識別することができる。
【0021】
実質的に非混和性の物質は、本発明のフォトレジスト組成物の上述の態様の1以上を組み込むことができる。したがって、例えば、フォトレジスト組成物は1種以上の実質的に非混和性の物質を含むことができ、これらの非混和性物質は塩基で処理することによって変化させることのできる水接触角度を有し(例えば、非混和性物質は無水物および/またはラクトン基を含む樹脂とすることができる);および/または非混和性物質はフッ素化光酸不安定基を含むことができ;および/または非混和性物質はポリマー主鎖から間隔を置く酸基を含むことができる。
【0022】
あるいは、フォトレジスト組成物は本明細書に開示される1種以上の実質的に非混和性の物質を含むことができ、別のレジスト成分(すなわち共有結合していない)として、レジストは塩基で処理することによって変化させることのできる水接触角度を有する1種以上の物質;および/またはフッ素化光酸不安定基を含む1種以上の物質を含むことができ;および/または1種以上の物質がポリマー主鎖から間隔を置く酸基を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の好ましいポジ型フォトレジストにおいて、レジスト組成物は、塩基で処理することによって変化させることのできる水接触角を有する1種以上の物質;および/またはフッ素化光酸不安定基を含む1種以上の物質;とは別に(すなわち、共有結合していない)、または結合した(すなわち、共有結合した)酸分解可能な成分(例えば、光酸不安定基を有する樹脂)を含むことができ、および/または1種以上の物質がポリマー主鎖から間隔を置く酸基を含んでいてもよい。
【0024】
本発明のフォトレジストに用いられる好適な実質的に非混和性の物質は、ケイ素および/またはフッ素置換基を含む組成物を含む。
【0025】
本発明のフォトレジストに用いられる好ましい実質的に非混和性の物質は、粒子の形であってもよい。かかる粒子は個別の粒子形状、すなわち分離した別個のポリマー粒子として重合されたポリマーを含み得る。それらのポリマー粒子は、線状またははしご状ポリマー(例えば線状またははしご状シリコンポリマーなど)とは別の1以上の特性を典型的に有する。例えば、かかるポリマー粒子は規定されたサイズおよび低分子量分布を有することができる。さらに詳細には、好ましい態様において、本発明のフォトレジストにおいて、約5〜3000オングストロームの平均粒子サイズ(寸法)、さらに好ましくは約5〜2000オングストローム、さらに好ましくは約5〜1000オングストローム、さらに好ましくは約10〜500オングストローム、さらに好ましくは10〜50または200オングストロームを有する複数のポリマー粒子を用いることができる。多くの用途にとって、特に好ましい粒子は約200または100オングストローム未満の平均粒子サイズを有する。
【0026】
本発明のフォトレジストに用いられる追加の好ましい実質的に非混和性の物質は、シルセスキオキサン物質およびSiO基を有する物質などを包含するSi含有物を有することができる。また、好ましいケイ素を含有する実質的に非混和性の物質には、多面体オリゴマーシルセスキオキサンも含まれる。
【0027】
また、化学増強型フォトレジストの樹脂成分に使用される本明細書に述べた基などを含む光酸不安定基(例えば光酸不安定エステルまたはアセタール基など)を含む実質的に非混和性の物質も好ましい。
【0028】
また、本願発明のフォトレジストにおいて使用するために好ましい実質的に非混和性の物質は、フォトレジスト組成物の配合に用いられている同じ有機溶媒中に溶解可能である。
【0029】
また、本発明のフォトレジストに用いられる特に好ましい実質的に非混和性の物質は、フォトレジストの樹脂成分の1種以上の樹脂よりも低い表面エネルギー、および/または小さな流体力学容積を有する。低い表面エネルギーは適用されたフォトレジストコーティング層の表面または上部へ、実質的に非混和性の物質の分離または移動を促進することができる。さらに、比較的小さな、より高い流体力学性の容積は、塗布されたフォトレジストコーティング層の上部領域へ1種以上の実質的に非混和性の物質の効率的な移動(より高い次拡散係数)を促進し得るので好ましいものであり得る。
【0030】
また、本発明のフォトレジストに用いられる好ましい実質的に非混和性の物質は、露光後ベーク(PEB、例えば、120℃で60秒間)の際に、フォトレジスト現像組成物(例えば、0.26N水性アルカリ溶液)中に溶解性であり、または溶解性になる。したがって、実質的に非混和性の物質には、上で論じた光酸不安定基に加えて、例えばヒドロキシル、フルオロアルコール、カルボキシなどの他の水性塩基溶解性基が含まれてもよい。
【0031】
好ましい非混和性物質には、超分岐ポリマーをはじめとするポリマー物質が含まれる。本明細書に言及される「超分岐ポリマー」は、「IUPAC命名法に基づく超分岐ポリマー(hyperbranched polymers under the IUPAC nomenclature)」として知られる物質が包含される。IUPAC.Compendium of Macromolecular Nomenclature(巨大分子命名法のIUPAC概要)(Purple Book);Metanomuski,W.V.,Ed;Blackwell Scientific Publications,英国オックスフォード,1991を参照されたい。したがって、この命名法によって、超分岐ポリマーは構造上の繰り返し単位(またはIUPACが称する構成上の繰り返し単位)を有し、かかる各々の構造上の繰り返し単位は2以上の共有結合性を有する。特に好ましい超分岐ポリマーは、最小(例えば、5,4,3,2、または1重量%未満)の芳香族含有物を有することができ、または如何なる芳香族含有物も完全に存在しなくてもよい。
【0032】
1以上のアクリレート繰り返し単位を有する超分岐ポリマーは多くの用途に特に好適であり得る。
【0033】
また、多官能性アクリレートモノマー、例えば複数のビニル基を有するアクリレートモノマー、例えばトリメチルプロパントリアクリレート(本明細書において、場合によって「TMPTA」と称する)などから形成されたポリマー添加剤も好ましい。
【0034】
さらなる態様において、本発明は液浸露光手段におけるリソグラフィー処理のための方法を提供する。本発明の好ましい方法は以下の工程を含み得る:
(1)本発明のフォトレジスト組成物を基体(例えば半導体ウェーハなど)に適用する(例えば、スピンコーティングにより)。フォトレジストは、ウェーハ表面上に、あるいはウェーハ上に事前に適用された物質(例えば、有機または無機反射防止組成物、または平坦化層など)上に、好適に適用され得る。塗布されるフォトレジストは、熱的に処理(例えば約120℃以下で約30〜60秒間)されて、溶媒キャリアが除去され得る。;
(3)任意選択的に、フォトレジスト組成物の上に有機バリア組成物を、例えばスピンコーティングなどによって適用する。;
(4)オーバーコーティングされたフォトレジスト層を、露光ツールとコーティングされた基体の間に介在する流体(水を含む流体)を伴ってパターン化活性放射線に暴露する。すなわち、フォトレジスト層を、露光ツールとフォトレジスト組成物層の間に介在する流体層によって液浸露光する。介在する流体は、如何なるバリア組成物もなしにフォトレジスト層に直接接触する。
【0035】
本発明のリソグラフィーシステムの好ましい像形成波長は400nm未満、例えばI線(365nm)など、300nm未満の波長、例えば248nm、および200nm未満の波長、例えば193nmを含む。1種以上の実質的に非混和性の物質に加えて、本発明の特に好ましいフォトレジストは、光活性成分(例えば、1種以上の光酸発生剤化合物)および以下の中から選択される1種以上の樹脂を含むことができる:
(1)特に248nmで像形成するのに好適な化学増幅型ポジ型レジストを提供することのできる酸不安定基を含むフェノール系樹脂。この種の特に好ましい樹脂は、(i)ビニルフェノールとアルキルアクリレートの重合した単位を含み、重合したアルキルアクリレート単位が光酸の存在下で脱保護反応を起こすことのできるポリマー。光酸で誘起されて脱保護反応を起こすことのできるアルキルアクリレートの例は、例えば、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、メチルアマダンチルアクリレート、メチルアラマンチルメタクリレート、および光酸で誘起されて反応を起こすことのできる他の非環式アルキルおよび脂環式を含み、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,042,997号、および第5,492,793号のポリマーなどが挙げられる;(ii)ビニルフェノール、ヒドロキシまたはカルボキシ環置換基を含まない任意に置換されていてもよいビニルフェノール(例えばスチレン)、および上記(i)のポリマーで説明した脱保護基などのアルキルアクリレート、の重合された単位を含むポリマー、例えば参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,042,997号に記載されているポリマーなどが挙げられる;並びに(iii)光酸と反応するアセタールまたはケタール部分を含む繰り返し単位、および任意にフェニルまたはフェノール基をはじめとする芳香族繰り返し単位を含むポリマー(かかるポリマーは米国特許第5,929,176号、第6,090、526号に記載されている)、ならびに(i)および/または(ii)および/または(iii)の混合物を含む。
(2)ジアゾナフトキノン光活性化合物と一緒にI線およびG線フォトレジストに用いることができ、例えば、米国特許第4983492号、第5130410号、第5216111号、第5529880号に記載された、ポリ(ビニルフェノール)など酸不安定基を含まないフェノール系樹脂およびノボラック樹脂。
(3)特に200nm未満(例えば193nmなど)の波長での像形成に好適な、化学増幅型ポジ型レジストを提供することのできる、実質的にまたは完全にフェニル基または他の芳香族基を有さない樹脂。この種の特に好ましい樹脂には、(i)例えば任意に置換されたノルボルネンなどの非芳香族環状オレフィン(環内二重結合)の重合された単位を含むポリマー、例えば米国特許第5,843,624号、第6,048,664号に記載されたポリマーなど;(ii)アルキルアクリレート単位を含むポリマー、例えば、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、および他の非環状アルキルおよび脂環式アクリレートなどを含むポリマー(それらのポリマーは米国特許第6,057,083号、欧州特許出願公開第EP01008913A1号および第EP00930542A1号、および米国特許第6,136,501号に記載されている);並びに(iii)重合された無水物単位、特に重合された無水マレイン酸および/または無水イタコン酸を含むポリマー、例えば、欧州特許出願公開第EP01008913A1号および米国特許第6,048,662号に記載されたものなど;ならびに(i)および/または(ii)および/または(iii)の混合物。
(4)ヘテロ原子、特に酸素および/または硫黄(但し無水物を除く、すなわち単位はケト環原子を含まない)を含む繰り返し単位を含み、特に好ましくは実質的にまたは完全にいかなる芳香族単位も含まない樹脂。ヘテロ脂環式単位は樹脂主鎖に融合しているのが好ましく、樹脂は、例えばノルボルネン基の重合によって提供されるような融合炭素脂環式単位、および/または例えば無水マレイン酸または無水イタコン酸の重合によって提供されるような無水物単位を含むのがさらに好ましい。それらの樹脂はPCT/US01/14914号および米国特許第6,306,554号に開示される。
(5)ポリ(シルセスキオキサン)などを包含する、下地層と共に用いることのできるSi置換を含む樹脂。それらの樹脂は例えば米国特許第6803171号に開示される。
(6)例えば、テトラフルオロエチレン、フッ素化芳香族基(例えばフルオロエチレンスチレン化合物など)およびヘキサフルオロアルコール部分を含む化合物などの重合によって提供され得るフッ素置換を含む樹脂(フッ素ポリマー)。それらの樹脂の例は、例えばPCT/US99/21912号に開示される。
【0036】
本発明の好ましいフォトレジストは化学増幅型のポジ型およびネガ型フォトレジストの両方を含む。典型的に好ましい化学増幅型ポジ型レジストは、光酸不安定基(例えば光酸不安定エステルまたはアセタール基など)を含む1種以上の樹脂を含む。
【0037】
本発明は、フォトレジストのレリーフ像を形成する方法、および本発明のフォトレジストを用いる電子デバイスの製造方法をさらに提供する。また、本発明は、本発明のフォトレジスト組成物でコーティングされた基体を含む新しい製造物品も提供する。
【0038】
上述のように、水性アルカリ性現像剤組成物に対して水よりも相対的に小さな水接触角度を示すことのできる、上述の好ましい組成物などの、本発明の少なくともいくつかのフォトレジスト組成物は、調節された水接触角度を提供することができる。本明細書において言及される場合、他に特に記載されていない限り、本発明のコーティング組成物の水接触角度は、例えばマイクロエレクトロニクスウェーハ基体などの基体上に、例えばスピンコーティングなどによって、組成物層を適用することによって決定することができる。スピン速度は、必要に応じ40〜120nmの範囲内のフィルム厚を得るように変化させることができる。次いで、適用された組成物層は、例えばキャスティング溶媒を除去しおよびコーティング層の架橋または硬化などのために、熱的に処理され得る(例えば、近接ホットプレート上で180℃、60秒間)。このようにして処理されたコーティング組成物層の接触角度測定は、商業的に入手可能な装置、例えば、JDSA−100 Dynamic Contact Angle GoniometerをはじめとするHamburg GermanyのKruss GmbHによって製造されたそれらの装置などによって測定することができる。
【0039】
本明細書に用いられる場合の用語「pK」は、当技術分野で認識されている意味に従って用いられ、すなわち、pKは、水性溶液中におけるほぼ室温での物質または部分の解離定数の負の対数(10を底とする)である。
【0040】
本明細書において論じているように、水性アルカリ性現像剤組成物への言及がされている。他に特に示されていない限り、水性アルカリ性現像剤組成物への言及は、0.26Nの水酸化テトラメチルアンモニウム水性組成物を指す。
【0041】
本明細書に言及される場合、「樹脂主鎖」または「ポリマー主鎖」は、次々と共有結合して直鎖または分岐ポリマーを形成する複数の原子を指す。例えば、t−ブチルアクリレートの重合の場合、t−ブチルアクリレートのビニル炭素原子は「樹脂主鎖」の部分であるが、ペンダントt−ブチルエステル部分(すなわち、−C(=O)OC(CH)は「樹脂主鎖」の部分ではない。
【0042】
本発明の他の態様が以下に開示される。
【0043】
発明者らは、少なくともある種のフォトレジスト組成物の使用は、現像の際にフォトレジストがないことを意図した基体(例えば、マイクロエレクトロニクスウェーハ基体)領域中に有機残渣が残ることを包含する現像後欠陥を生じさせ得ることを見出した。
【0044】
本発明の好ましいフォトレジストシステムは、現像後欠陥の比較的低減されたレベル、特に現像後に剥き出しにされることを意図した基体領域内に存在する望ましくない現像後有機残渣の減少されたレベルを有することを包含する良好に解像されたレジストレリーフ像を提供することができる。
【0045】
上述のように、1態様において、水との水接触角度よりも小さな水性アルカリ性現像剤組成物との水接触角度(例えば、レジスト組成物の水との同じ接触角度よりも少なくとも5、8、12、15、20、または25度小さい水性アルカリ性現像剤組成物との水接触角度)を有するフォトレジスト組成物が提供される。
【0046】
いくつかの実施形態において、かかる減少された水接触角度は、フォトレジスト組成物中に、低pKa物質(例えば酸基、例えばカルボキシ、エステル、およびハロゲン化特にフッ素化された基(例えばハロゲン化、特にフッ素化されたアルコールなど)などの酸基)を組み込むことによって提供され得る。本明細書で言及される好ましい低pKa基は、約5、4、3、2、1またはそれ未満(少ない数)のpKaを有する。
【0047】
特に好ましいシステムにおいて、かかる低pKa基は、上述のように、樹脂主鎖から基を延長するまたは間隔を置くことによって、例えば、樹脂主鎖と低pKa基の間に1、2、3、4、5個またはそれ以上の原子(例えば炭素、N、O、またはSヘテロ原子など)を介在させることによって、水性アルカリ性現像剤組成物に対する水接触角度を小さくする、向上された効果を提供することができる。
【0048】
好適なフォトレジスト樹脂は、以下の式(I)に対応するものであり得る。
【0049】
【化1】
【0050】
上述のように、もう一つの態様において、フォトレジスト組成物は、例えば水性アルカリ性現像剤組成物への暴露によって濡れ特性を変化させることのできる基を含む樹脂などの成分を含むことができる。
【0051】
例えば、いくつかの好ましい実施形態において、フォトレジスト組成物は、例えば水性アルカリ性現像剤組成物に暴露すると開環してカルボン酸基を提供することのできる1種以上の基(例えばラクトンまたは無水物など)を含む樹脂などの成分を含むことができる。
【0052】
例えば、好適なフォトレジスト樹脂は以下の式(II)に対応するものであり得る。
【0053】
【化2】
【0054】
上述のように、さらに他の態様において、フッ素化された脱離基、例えば光酸不安定エステルおよび/またはアセタール基を含む光酸―酸不安定部分の脱離基などのフッ素化された脱離基を含むことのできる樹脂などの成分を含むことのできるフォトレジスト組成物が提供される。
【0055】
例えば、好適なフォトレジスト樹脂は以下の式(III)に対応するものであり得る。
【0056】
【化3】
【0057】
塩基反応基を含むことのできる特に好適な樹脂は以下を含む。
【0058】
【化4】
【0059】
フッ素化開裂生成物を含む光酸不安定基を含む特に好適な樹脂繰り返し単位は以下を含む。
【0060】
【化5】
【0061】
樹脂主鎖から間隔を置く酸基を含む特に好適な樹脂繰り返し単位は、以下を含む(ここで、カルボキシ繰り返し単位は、樹脂主鎖とカルボキシ基(−COOH)の間に挿入された3原子(>C=O、−O−、および−CH−)を有する)。
【0062】
【化6】
【0063】
上述のように、本発明の特に好ましいフォトレジストは、露光工程の過程中に浸漬流体へ接触する間、フォトレジスト成分の浸漬流体中への低減された移動(浸出)を示すことができる。また、驚くべきことに、発明者らは1種以上の実質的に非混和性の物質の添加が、フォトレジストのリソグラフィー性能を向上することができることを見出した。特に、1種以上の実質的に非混和性の物質の添加は、ライン−スペース用途における場合をはじめとする現像されたレジストのラインの縁部の粗さを低減することができる。また、1種以上の実質的に非混和性の物質の添加は、コンタクトホール用途においてコンタクトホールをより円形にすることができる。
【0064】
さらに詳細には、上述のように、好ましい態様において、本発明のフォトレジストは、
(i)1種以上の樹脂と、
(ii)1種以上の光酸発生剤化合物を好適に含むことのできる光活性成分と、
(iii)該1種以上の樹脂と実質的に非混和性である1種以上の物質
を含むことができる。成分(i)、(ii)、(iii)は別々の物質(たとえば共有結合していない)であることが好ましい。フォトレジストは、化学増幅型ポジ型レジストであることが好ましく、例えば、成分(i)の1種以上の樹脂の少なくとも1種の樹脂が、光酸不安定基、例えば光酸不安定エステルおよび/またはアセタール基などを含むことが好ましい。
【0065】
さらに好ましい態様において、本発明の好ましいフォトレジストは、
(i)1種以上の樹脂と、
(ii)1種以上の光酸発生剤化合物を好適に含むことのできる光活性成分と、
(iii)(1)Si置換、(2)フッ素置換、(3)超分岐ポリマー、および/または(4)該1種以上の樹脂と実質的に非混和性であるポリマー粒子を含む1種以上の物質
とを含むことができる。成分(i)、(ii)および(iii)は別々の物質(たとえば共有結合していない)であることが好ましい。フォトレジストは、化学増幅型ポジ型レジストであることが好ましく、例えば、成分(i)の1種以上の樹脂の少なくとも1種の樹脂が、光酸不安定基、例えば光酸不安定エステルおよび/またはアセタール基などを含むことが好ましい。
【0066】
上述のように、レジスト樹脂成分と実質的に非混和性である、本発明のフォトレジストに好適な物質は、簡単な試験によって容易に識別することができる。詳細には、本明細書に言及されるように、好ましい実質的に非混和性の物質は、該候補物質を含むフォトレジスト組成物を使用した場合に、同じ方法において処理されるが候補の実質的に非混和性の物質を含まない同じフォトレジストシステムに比べて、浸漬流体中に検出される酸または有機物質の量の減少をもたらす。浸漬流体中のフォトレジスト物質の検出は以下の実施例2に記載されたようにして行うことができ、フォトレジストへの露光前後の浸漬流体の質量分光分析が包含される。かかる分析において、浸漬流体は、試験されるフォトレジスト組成物層に露光過程において約60秒間直接接触する。好ましくは、1種以上の実質的に非混和性の物質の添加は、かかる実質的に非混和性の物質を含まない同じフォトレジストと比較した場合に、浸漬流体中に存在するフォトレジスト物質(この場合も先と同様に、質量分光分析によって検出される酸または有機物)の少なくとも10%の低減をもたらし、より好ましくは、1種以上の実質的に非混和性の物質は、実質的に非混和性の物質を含まない同じフォトレジストと比較した場合に、浸漬流体中に存在するフォトレジスト物質(この場合も先と同様に、酸または有機物)の少なくとも20、50、または100、200、500、または1000%の低減をもたらす。
【0067】
上述のように、実質的に非混和性の物質は、上述の本発明のフォトレジスト組成物の態様(すなわち、これらの1種以上の非混和性物質が塩基による処理により変化させることのできる水接触角度を有し(例えば、非混和性物質は無水物および/またはラクトン基を含む樹脂であり得る);および/または非混和性物質がフッ素化光酸不安定基を含むことができ;および/または非混和性物質がポリマー主鎖から間隔を置く酸基を含むことができる、1種以上の実質的に非混和性の物質)の1以上を組み込むことができる。あるいは、フォトレジスト組成物は、本明細書に開示される1種以上の実質的に非混和性の物質を含むことができ、別のレジスト成分(すなわち、共有結合していない)として、レジストは、塩基による処理で変化させることのできる水接触角度を有する1種以上の物質;および/またはフッ素化光酸不安定基を含む1種以上の物質;を含むことができ、および/または非混和性物質はポリマー主鎖から間隔を置く酸基を含んでもよい。
【0068】
特に好ましい実質的に非混和性の物質は、Si含有物質を含む。とりわけ好ましい実質的に非混和性の物質はナノ構造組成物を含み、これは例えばHybrid Plastics(カリフォルニア州ファウンテンバレー)、Sigma/Aldrichなどのグループから商業的に入手可能である。かかる物質には、有機基で包まれたSi−Oコアを有する分子状シリカ;シラノール;および、シスセスキオキサンかご構造の化合物を含む、シリコーン、スチレン系、アクリル系、脂環例えばノルボルネンなどであり得るポリマーや樹脂;が包含され得る。
【0069】
実質的に非混和性の物質として有用な粒子(有機粒子を含む)は、Si含有およびフッ素化された物質を含む。かかる粒子は商業的に入手可能であるか、または、例えば、架橋剤および必要であれば開始剤化合物と共に1種以上のモノマーの反応によって容易に合成することができる。反応したモノマーは必要に応じて置換基、例えば、フッ素、Si基、光酸不安定基(例えば光酸不安定エステルまたはアセタールなど)、他の塩基可溶性基(、例えばアルコールなど)などを有することができる。得られるポリマー粒子にモノマーの1つが光酸不安定基を提供する、複数の別々モノマーより製造されたかかる粒子の例示的合成に関する以下の実施例1を参照されたい。
【0070】
実質的に非混和性の物質は、フォトレジスト組成物に比較的少量存在することができ、比較的少量でも効果的な結果を与えることができる。例えば、1種以上の実質的に非混和性の物質は、流体フォトレジスト組成物の総重量基準で約0.1〜20重量%存在するのが好適であり得る。また、好適な量は以下の実施例において提供される。
【0071】
本発明に従って使用するための好ましいフォトレジストには、ポジ型またはネガ型の化学増幅型フォトレジスト、すなわち、光酸促進架橋反応を行ってレジストコーティング層の露光された領域に未露光領域よりも低い現像剤への溶解性を与えるネガ型レジスト組成物、および1種以上の組成成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を行ってレジストコーティング層の露光された領域に未露光領域よりも水性現像剤へのより高い溶解性を与えるポジ型レジスト組成物が包含される。エステルのカルボキシル酸素に共有結合したターシャリー非環状アルキル炭素(例えば、t−ブチル)またはターシャリー脂環式炭素(例えば、メチルアダマンチル)を含むエステル基は、多くの場合、本発明のフォトレジストに用いられる樹脂の好ましい光酸不安定基である。また、アセタール光酸不安定基も好ましい。
【0072】
典型的に本発明の好ましいフォトレジストは樹脂成分と光活性成分を含む。樹脂は樹脂組成物にアルカリ水性現像可能性を与える官能基を有することが好ましい。極性官能基(例えば、ヒドロキシルまたはカルボキシレートなど)を含む樹脂バインダーが好ましい。樹脂組成物中に、レジストに水性アルカリ溶液での現像可能性を与える十分な量の樹脂成分を用いるのが好ましい。
【0073】
例えば248nmなどの200nmを超える波長で像形成するためには、フェノール系樹脂が典型的に好ましい。好ましいフェノール系樹脂は、触媒の存在下で対応するモノマーのブロック重合、エマルジョン重合または溶液重合によって形成することのできるポリ(ビニルフェノール)である。ポリビニルフェノール樹脂の製造に有用なビニルフェノールは、例えば、商業的に入手可能なクマリンまたは置換クマリンの加水分解、続いて、得られる水酸化桂皮酸の脱カルボキシル化によって調製することができる。また、有用なビニルフェノールは、対応する水酸化アルキルフェノールの脱水によって、または置換または非置換ヒドロキシベンズアルデヒドのマロン酸との反応から得られる水酸化桂皮酸の脱カルボキシル化によっても調製することができる。それらのビニルフェノールから調製される好ましいポリビニルフェノール樹脂は約2,000〜約60,000ダルトンの分子量範囲を有する。
【0074】
例えば248nmなどの、200nmを超える波長で像形成するためには、混合物中に光活性成分と、フェノール系および非フェノール系単位の両方を含むコポリマーを含む樹脂成分とを含む化学増幅型フォトレジストも好ましい。例えば、かかるコポリマーの1つの好ましい基は、実質的に、本質的にまたは完全にコポリマーの非フェノール系単位上のみに酸不安定基を有することが好ましく、特にアルキルアクリレート光酸不安定基を有すること(すなわちフェノール−アルキルアクリレートコポリマー)が好ましい。特に好ましい1つのコポリマーバインダーは、以下の式の繰り返し単位xおよびyを有する。
【0075】
【化7】
【0076】
式中、ヒドロキシル基はコポリマー全体を通してオルソ、メタ、パラ位置のいずれかに存在し、R’は1〜約18炭素原子、さらに典型的に1〜約6から8の炭素原子を有する置換または非置換アルキルである。tert−ブチルは一般に好ましいR’基である。R’基は場合によって、例えば1種以上のハロゲン(特にF、ClまたはBr)、C1〜8アルコキシ、C2〜8アルケニルなどによって置換されていてもよい。単位xおよびyは、コポリマー中で規則的に交互であってもよいし、またはポリマーを通して不規則に散在していてもよい。かかるコポリマーは容易に形成することができる。例えば、上記式の樹脂のためには、当技術分野で既知のように、ビニルフェノールと、例えばt−ブチルアクリレートなどの置換または非置換アルキルアクリレートとをフリーラジカル条件の下で縮合することができる。置換されたエステル部分、すなわち、R’−O−C(=O)−、アクリレート単位の部分は、樹脂の酸不安定基として作用し、樹脂を含むフォトレジストコーティング層の露光の際に光酸誘起開裂を受ける。コポリマーは、好ましくは約8,000〜約50,000のMw、さらに好ましくは、約15,000〜約30,000のMwを有し、好ましくは約3以下の分子量分布、さらに好ましくは約2以下の分子量分布を有する。また、非フェノール系樹脂、例えばアルキルアクリレート(例えば、t−ブチルアクリレートまたはt−ブチルメタクリレートなど)と、ビニル脂環式(例えばビニルノルボルナニルまたはビニルシクロヘキサノール化合物など)とのコポリマーも本発明の組成物中の樹脂バインダーとして用いることができる。また、かかるコポリマーはそれらのフリーラジカル重合または他の既知の手段によって調製することができ、好適には約8,000〜約50,000のMw、および約3以下の分子量分布を有する。
【0077】
本発明のポジ型の化学増幅型フォトレジストに用いるための酸不安定脱保護基を有する他の好ましい樹脂は、Shipley Companyの欧州特許出願第0829766A2号(アセタールとケタール樹脂)およびShipley Companyの欧州特許出願第EP0783136A2号(ターポリマーおよび(1)スチレン、(2)ヒドロキシスチレン、(3)酸不安定基、詳細にはt−ブチルアクリレートまたはt−ブチルメタクリレートなどのアルキルアクリレート酸不安定基、の単位を含む他のコポリマー)に開示されている。一般に、例えば酸感受性のエステル、カーボネート、エーテル、イミドなどの、様々な酸不安定基を有する樹脂が好適である。より典型的には、光酸不安定基は、ポリマー主鎖からペンダントしているが、ポリマー主鎖に一体化した酸不安定基を有する樹脂も用いることができる。
【0078】
上述のように、例えば193nmなど、200nm未満の波長での像形成にとって、実質的に、本質的にまたは完全にフェニルまたは他の芳香族基を含まない1種以上のポリマーを含むフォトレジストを用いるのが好ましい。例えば、200nm未満の像形成のために好ましいフォトレジストポリマーは約5モル%未満の芳香族基を含み、さらに好ましくは約1または2モル%未満の芳香族基、さらに好ましくは約0.1、0.02、0.04および0.08モル%未満の芳香族基、さらに好ましくは約0.01モル%未満の芳香族基を含む。特に好ましいポリマーは完全に芳香族基を含まない。芳香族基は200nm未満の放射線を大きく吸収することができ、したがって、かかる短い波長の放射線で像形成されるフォトレジストにおいて用いられるポリマーのためには望ましくない。
【0079】
実質的に、本質的にまたは完全に芳香族基を含まず、本発明のPAGと共に配合して200nm未満の像形成のためのフォトレジストを提供することができる好適なポリマーは、欧州特許出願第EP930542A1号、米国特許第6,692,888号、および第6,680,159号(全てShipley Company)に開示される。
【0080】
実質的にまたは完全に芳香族基を含まない好適なポリマーは、例えばメチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルフェンチルアクリレートおよびエチルフェンチルメタクリレートなどの重合によって提供することのできる、光酸不安定アクリレート単位などのアクリレート単位;例えばノルボルネン化合物または環内炭素−炭素二重結合を有する他の脂環式化合物の重合によって提供することのできるような縮合した非芳香族脂環式基;例えば無水マレイン酸および/または無水イタコン酸などの重合によって提供することのできる無水物;などを好適に含む。
【0081】
本発明の好ましいネガ型化合物は、酸への暴露によって硬化、架橋しまたは硬質化する1種以上の物質(例えば、アミンベース物質、例えばメラミン樹脂などの架橋剤成分)および本発明の光活性成分を含む。特に好ましいネガ型組成物は、樹脂バインダー(例えばフェノール系樹脂など)、架橋剤成分、および本発明の光活性成分を含む。かかる組成物およびその使用はTackerayらの欧州特許出願第0164248号および第0232972号、米国特許第5,128,232号に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するために好ましいフェノール系樹脂には、上で論じたようなノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)が含まれる。好ましい架橋剤には、メラミン、グリコールウリル、を包含するアミン系物質、ベンゾグアナミン系物質および尿素系物質が包含される。一般にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が最も好ましい。これらの架橋剤は、商業的に入手可能であり、例えば、Cymel 300、301および303の商品名でAmerican Cyanamidから販売されているメラミン樹脂が挙げられる。グリコールウリル樹脂はCymel 1170、1171、1172の商品名でAmerican Cyanamidから販売されており、尿素系樹脂はBeetle 60、65および80の商品名で販売されており、並びにベンゾグアナミン樹脂はCymel 1123および1125の商品名で販売されている。
【0082】
例えば193nmなどの200nm未満の波長で像形成するための好ましいネガ型フォトレジストはShipley Companyの国際公開第WO03077029号に開示される。
【0083】
また、本発明のフォトレジストは、他の物質を含むことができる。例えば、任意選択的な他の添加剤には、光化学作用(actinic)およびコントラスト染料、条痕防止剤(anti−striation agent)、可塑剤、促進剤、増感剤(例えば、本発明のPAGを例えばI線(すなわち365nm)またはG線波長などの、より長い波長で使用するため)が含まれる。典型的に、かかる任意選択的な添加剤は、例えば、レジストの乾燥成分の総重量の5〜30重量%などの比較的高濃度で存在してもよい充填剤および染料を除き、フォトレジスト組成物中に少量の濃度で存在する。
【0084】
本発明のレジストの任意選択的な好ましい添加剤は、添加される塩基(例えば、現像されたレジストレリーフ像の解像度を高めることができるカプロラククタム)である。加えられる塩基は比較的少量、例えばPAGに対して約1〜10重量%、さらに典型的には1〜約5重量%で好適に使用される。他の好適な塩基添加剤には、スルホン酸アンモニウム塩、例えばピペリジニウムp−トルエンスルホネート、およびジシクロヘキシルアンモニウムp−トルエンスルホネートなど;アルキルアミン、例えばトリプロピルアミンおよびドデシルアミンなど;アリールアミン、例えばジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アミノフェノール、および2−(4−アミノフェノール)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど;が包含される。
【0085】
典型的に、本発明のレジストの樹脂成分は、レジストの露光されたコーティング層を例えば水性アルカリ溶液などで現像可能とするのに十分な量で用いられる。さらに詳細には、樹脂バインダーはレジストの総固形分の50〜約90重量%を好適に含む。光活性成分はレジストのコーティング層中に潜像を発生できる十分な量存在すべきである。さらに詳細には、光活性成分はレジストの総固形分の約1〜40重量%の量で好適に存在する。典型的に、より少ない量の光活性成分は化学増幅型レジストに好適である。
【0086】
また、本発明のレジスト組成物は光酸発生剤(すなわち「PAG」)を含み、光酸発生剤は、活性化放射線に暴露した際にレジストのコーティング層中に潜像を発生するのに十分な量で好適に用いられる。193nmおよび248nmで像形成するための好ましいPAGは、イミドスルホネートを含み、例えば下式の化合物などのイミドスルホネートを含む。
【0087】
【化8】
【0088】
式中、Rはカンファー、アダマンタン、アルキル(例えば、C1〜12アルキル)、およびペルフルオロアルキル、例えばペルフルオロ(C1〜12アルキル)、特にペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロノナンスルホネートなどである。特に好ましいPAGはN−[(ペルフルオロオクタンスルホニル)オキシ]−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドである。
【0089】
また、スルホネート化合物(特にスルホネート塩)は好適なPAGである。193nmおよび248nm像形成用の2種の好適な薬剤は以下のPAG1および2である。
【0090】
【化9】
【0091】
かかるスルホネート化合物は、上述のPAG1の合成の詳細を記述する欧州特許出願第96118111.2号(公開番号第0783136号)に開示されるようにして調製することができる。
【0092】
また、上記のカンファースルホネート基以外のアニオンと錯化した上記の2つのヨードニウム化合物も好適である。詳細には、好ましいアニオンには、式RSOのものが含まれ、式中、Rはアダマンタン、アルキル(例えば、C1〜12アルキル)およびペルフルオロアルキル、例えばペルフルオロ(C1〜12アルキル)、特にペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネートなどである。
【0093】
他の既知のPAGも、本発明に従って用いられるフォトレジストに使用することができる。特に、193nm像形成に対しては、透明性を高めるために、例えば上述のイミドスルホネートなどの芳香族基を含まないPAGが一般的に好ましい。
【0094】
また、本発明のフォトレジストは任意選択的な他の物質を含むことができる。例えば、任意選択的な他の添加剤には、条痕防止剤、可塑剤、促進剤などが含まれる。典型的に、かかる任意選択的な添加剤は、例えばレジストの乾燥成分の総重量の約5〜30重量%などの比較的高濃度で存在することのできる充填剤および染料を除き、フォトレジスト組成物中に少量の濃度で存在する。
【0095】
本発明に従って用いられるフォトレジストは一般に以下の既知の手段によって調製される。例えば、本発明のレジストは、フォトレジストの成分を、好適な溶媒、例えば、グリコールエーテル、例えば2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど;プロピレンモノメチルエーテルアセテート;ラクテート、例えばエチルラクテートまたはメチルラクテートなど(エチルラクテートが好ましい);プロピオネート、特にメチルプロピオネート、エチルプロピオネート、およびエチルエトキシプロピオネート;セロソルブエステル、例えばメチルセロソルブアセテートなど;芳香族炭化水素、例えばトルエンまたはキシレンなど;またはケトン、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノンなどの好適な溶媒に溶解することによって、コーティング組成物として調製することができる。典型的に、フォトレジストの固形分含有量はフォトレジスト組成物の総重量の5〜35重量%の間で変動する。かかる溶媒の混合物も好適である。
【0096】
液状フォトレジスト組成物は、例えばスピニング、ディッピング、ローラーコーティング、または他の通常のコーティング技術によって、基体へ適用することができる。スピンコーティングの場合、コーティング溶液の固形分含有量は、用いられる特定のスピニング装置、溶液の粘度、スピナーの速度、およびスピニングを行う時間に基づいて所望のフィルム厚さを与えるように調整することができる。
【0097】
本発明に従って用いられるフォトレジスト組成物は、フォトレジストのコーティングを含む処理に通常用いられる基体に好適に適用される。例えば、組成物はマイクロプロセッサまたは他の集積回路部品の製造のためのシリコンウェーハまたは二酸化ケイ素で被覆されたシリコンウェーハ上に適用することができる。アルミニウム−酸化アルミニウム、ガリウムヒ素、セラミック、石英、銅、ガラス基体なども好適に用いられる。また、フォトレジストは、反射防止層、特に有機反射防止層の上に好適に塗布することができる。
【0098】
表面へのフォトレジストのコーティングに続いて、それを、好ましくはフォトレジストコーティングの粘着性がなくなるまで加熱して溶媒を除去し乾燥させることができる。
【0099】
次いで、フォトレジスト層(存在する場合にはオーバーコートされたバリア層と共に)は、液浸リソグラフィーシステム(すなわち、露光ツール(特に投影レンズ)とフォトレジスト被覆基体の間の空間は、浸漬流体、例えば水または流体の屈折率を高めることのできる硫酸セシウムなど1種以上の添加剤を混合した水などの浸漬流体で充填される)において露光される。浸漬流体(例えば水)は気泡を除去するために処理しておくことが好ましく、例えば水はナノ気泡を避けるため脱気することができる。
【0100】
本明細書に言及される「液浸露光」または他の類似用語は、露光ツールと被覆されたフォトレジスト組成物層の間に挿入されたそれらの流体層(例えば、水または添加剤を含む水)を伴って露光が行われることを指す。
【0101】
次いで、フォトレジスト組成物層は、露光ツールおよびフォトレジスト組成物の成分に応じて、典型的に約1〜100mJ/cmの露光エネルギーで好適に活性化放射線に暴露されパターン化される。本明細書において、フォトレジストを活性化する放射線にフォトレジスト組成物を暴露することは、放射線が、例えば光活性成分の反応(例えば、光酸発生剤化合物から光酸を生成する)を誘起するなどによって、フォトレジスト中に潜像を形成することができることを意味する。
【0102】
上述のように、フォトレジスト組成物は短い露光波長、特に、400nm未満、300nm未満、200nm未満の露光波長で光活性化されるのが好ましく、I線(365nm)、248nm、および193nm、ならびにEUVおよび157nmは特に好ましい露光波長である。
【0103】
露光に続いて、組成物のフィルム層を約70℃〜約160℃の範囲の温度でベークするのが好ましい。その後フィルムは、好ましくは、水性塩基性現像剤、例えば水酸化第四級アンモニウム溶液、例えば水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液など;様々なアミン溶液、例えば、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、またはメチルジエチルアミンなど(好ましくは0.26N水酸化テトラメチルアンモニウム);アルコールアミン、例えばジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンなど;環状アミン、例えばピロール、ピリジンなど;などの水性現像剤による処理によって現像される。一般に、現像は当技術分野において認識されている手段に従って行われる。
【0104】
基体上のフォトレジストコーティングの現像に続いて、現像された基体は、当技術分野に既知の手段に従って、例えば、レジストのない領域の化学的エッチングまたはレジストのない基体領域のメッキなどによって、レジストのない領域上の選択的な処理をすることができる。マイクロエレクトロニクス基体の製造、例えば二酸化ケイ素ウェーハの製造のための好適なエッチャントには、気体エッチャント、例えばハロゲンプラズマエッチャントなど、例えば塩素またはフッ素系エッチャントなど、例えばプラズマ流として適用されるClまたはCF/CHFエッチャントなどが包含される。かかる処理の後、レジストは既知の剥離手段を用いて処理された基体から除去することができる。
【0105】
以下の非制限的な実施例は本発明を例示するものである。
【実施例】
【0106】
実施例1
(ポリマー合成)
9.4886g(5.15−2モル)の以下の実施例2に示したECPA構造体と、10.5114g(5.15−2モル)のトリフルオロエチルアセテート(TFEA)を40gのPGMEAと一緒に50mlの丸底フラスコへ計量する。この溶液を窒素で30分間脱気する。3つ口フラスコ中で80gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を窒素で脱気し、85℃に加熱する。TFEA、ECPA、およびPGMEAの脱気した溶液をガラス注射筒に移し、反応容器へ供給するように設置した。2.40g(1.03−2モル)のv601(10モル%の開始剤)を反応容器に入れた。開始剤の添加後、注射筒は6時間にわたるフラスコへのモノマー混合物の供給を開始した。添加の後、21.61gのPGMEAに溶解した7.20gのv601を6時間かけて注射筒ポンプによって加える。添加後、混合物を85℃で12時間攪拌し、次いで室温に冷却した。次いで、生成物はそのまま用いることができ、または水/メタノール95/5中に沈殿させて単離することができる。
【0107】
実施例2
(粒子添加剤の調製)
好ましいフッ素化粒子添加剤は以下のようにして調製される。
反応容器に所要量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を装填し、Nパージを伴って80℃に加熱する。下記モノマー(PFPA、ECPMA、TMPTA)、架橋剤、および開始剤(t−アミルペルオキオシピバレート)を氷浴中において、80〜90重量%流体組成物でPGMEAに混合する。開始剤含有量はモノマーおよび架橋剤の総量に対して4%である。モノマーは以下の重量用いた。70重量%のペンタフルオロアクリレート(PFPA)、20重量%のエチルシクロペンチルメタクリレート(ECPMA)、及び10重量%のトリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA)。
【0108】
【化10】
【0109】
次いで、そのモノマー/架橋剤/開始剤/PGMEA混合物を90分間かけて反応容器に供給する。反応容器への添加が完了した後、反応容器内の混合物の温度を80℃で30分間維持する。次いで、追加の2重量%(総モノマーおよび架橋剤に対して)の開始剤を反応器に供給する。30分後に、他の2重量%(総モノマーおよび架橋剤に対して)の開始剤を反応器に供給する。その添加の後、反応器内の混合物の温度を80℃でさらに2時間維持する。その後、反応容器の温度を室温まで冷却させる。
【0110】
この手順によって、数平均分子量(Mn)7088および重量平均分子量(Mw)19255を有するポリマー粒子が得られた。
【0111】
実施例4
(フォトレジストの調製および処理)
以下の物質を指定された量で混合することによってフォトレジスト組成物を調製する:
(1)樹脂成分:フォトレジスト組成物の総重量基準で6.79重量%の(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート/ベータ−ヒドロキシ−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート/シアノ−ノルボルニルメタクリレート)のターポリマー;
(2)光酸生成剤化合物:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.284重量%のt−ブチルフェニルテトラメチレンスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート;
(3)塩基添加剤:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.017重量%のN−アルキルカプロラクタム;
(4)界面活性剤:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.0071重量%のR08(フッ素含有界面活性剤、大日本インキ化学工業株式会社から入手可能);
(5)ポリマー添加剤:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.213重量%の上述の実施例1のコポリマー;
(6)溶媒成分:約90%流体組成物を得るためのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0112】
この組成物を含有するフォトレジストをシリコンウェーハ上にスピンコーティングし、真空ホットプレート上で乾燥してソフト−プレートを取り外し、次いで、乾燥されたフォトレジスト層に直接接触する水性浸漬流体によって液浸リソグラフィー法で露光する。この液浸システムにおいて、フォトレジスト層は、対照フォトレジスト層に対し24.1mJ/cmの線量で、および実質的に非混和性の添加剤を含むフォトレジスト組成物層に対し23.4mJ/cmの線量で、パターン化された193nmの放射線に暴露される。
【0113】
次いで、フォトレジスト層は露光後ベークされ(例えば約120℃など)、0.26Nのアルカリ性水性現像溶液で現像してフォトレジストレリ−フ像を得る。
【0114】
実施例4
(フォトレジストの調製および処理)
以下の物質を指定された量で混合することによってフォトレジスト組成物を調製する。
(1)樹脂成分:フォトレジスト組成物の総重量基準で6.79重量%の(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート/ベータ−ヒドロキシ−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート/シアノ−ノルボルニルメタクリレート)のターポリマー、
(2)光酸生成剤化合物:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.284重量%のt−ブチルフェニルテトラメチレンスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート、
(3)塩基添加剤:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.017重量%のN−アルキルカプロラクタム、
(4)界面活性剤:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.0071重量%のR08(フッ素含有界面活性剤、大日本インキ化学工業株式会社から入手可能)、
(5)実質的に非混和性の添加剤:上記実施例2で述べたようにして調製された7088のMnおよび19255のMwを有するフッ素化PFPA/ECPMA/TMPTAターポリマー粒子をフォトレジスト組成物の総重量基準で0.213重量%、
(6)溶媒成分:約90%流体組成物を得るためのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0115】
また、対照フォトレジスト組成物は上述のフォトレジスト組成物と同じ成分および同じその量を有して調製されるが、対照フォトレジストは実質的に非混和性の添加剤を含まない。
【0116】
対照フォトレジスト組成物および上述のフォトレジストを含む組成物の両方をシリコンウェーハ上にスピンコーティングし、真空ホットプレート上で乾燥してソフト−プレートを取り外し、次いで、乾燥されたフォトレジスト層に直接接触する水性浸漬流体によって液浸リソグラフィー法で露光する。この液浸システムにおいて、フォトレジスト層は、対照フォトレジスト層に対して24.1mJ/cmの線量で、および実質的に非混和性の添加剤を含むフォトレジスト組成物層に対して23.4mJ/cmの線量で、パターン化された193nmの放射線に暴露された。
【0117】
次いで、フォトレジスト層は露光後ベークされ(約120℃など)、0.26Nのアルカリ性水性現像溶液で現像して良好に解像された90nmの1:1ラインアンドスペースを得た。
【0118】
レジスト成分の浸出を評価するために、以下の手順を用いた:
1mlの脱イオン水(DI)をレジスト表面の制限された領域(4.2cm)に60秒間置いた。次いで、LC/MS分析のためにDI水を収集し、浸出した光酸生成剤化合物(PAG)の量を決定した。対照フォトレジストは浸漬流体中に21ppbの光酸生成剤化合物および劣化した生成物をもたらした。実質的に非混和性の添加剤(すなわち、フッ素化PFPA/ECPMA/TMPTAターポリマー粒子)を含む上述のフォトレジスト組成物は、浸漬流体中に0.21ppbの光酸生成剤化合物および分解生成物を有していた。
【0119】
実施例5
(フォトレジストの調製および処理)
以下の物質を指定された量で混合することによってフォトレジスト組成物を調製する:
(1)樹脂成分:フォトレジスト組成物の総重量基準で6.79重量%の(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート/ベータ−ヒドロキシ−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート/シアノ−ノルボルニルメタクリレート)のターポリマー;
(2)光酸生成剤化合物:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.284重量%のt−ブチルフェニルテトラメチレンスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート;
(3)塩基添加剤:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.017重量%のN−アルキルカプロラクタム;
(4)界面活性剤:フォトレジスト組成物の総重量基準で0.0071重量%のR08(フッ素含有界面活性剤、大日本インキ化学工業株式会社から入手可能);
(5)実質的に非混和性の添加剤:Hybrid Plasticsから得たイソオクチルポリヘドラルシルセスキオキサン(IPSS)をフォトレジスト組成物の総重量基準で0.213重量%;
(6)溶媒成分:約90%流体組成物を得るためのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0120】
また、対照フォトレジスト組成物は上述のフォトレジスト組成物と同じ成分と同じその量を有して調製されるが、対照フォトレジストは実質的に非混和性の添加剤を含まない。
【0121】
対照フォトレジスト組成物および上述のフォトレジストを含む組成物の両方をシリコンウェーハ上にスピンコーティングし、真空ホットプレート上で乾燥してソフト−プレートを取り外し、次いで、水性浸漬流体を乾燥されたフォトレジスト層に直接接触させ液浸リソグラフィー法で露光する。この液浸システムにおいて、対照フォトレジスト層および実質的に非混和性の添加剤を含むフォトレジスト組成物層の両方を26.5mJ/cmの線量で、パターン化された193nmの放射線に暴露した。
【0122】
次いで、フォトレジスト層は露光後ベークされ(例えば約120℃など)、0.26Nのアルカリ性水性現像溶液で現像して良好に解像された90nmの1:1ラインアンドスペースを得た。
【0123】
レジスト成分の浸出を評価するために、以下の手順を用いた:
1mlの脱イオン水(DI)をレジスト表面の制限された領域(4.2cm)に60秒間置いた。次いで、浸出した光酸生成剤化合物(PAG)の量のLC/MS分析のためにDI水を収集した。対照フォトレジストは浸漬流体中に16.4ppbの光酸生成剤化合物および分解生成物をもたらした。実質的に非混和性の添加剤(すなわち、イソオクチルポリヘドラルシルセスキオキサン(IPSS))を含む上述のフォトレジスト組成物は、浸漬流体中に1.76ppbの光酸生成剤化合物を有した。
【0124】
実施例6〜8
(追加のフォトレジスト浸出試験)
上述の実施例4のフォトレジストに対応する追加のフォトレジストを調整したが、イソオクチルポリヘドラルシルセスキオキサン(IPSS、Hybrid Plasticsから得た)からなる実質的に非混和性の添加剤の総固形分のパーセント量を異ならせた。これらのフォトレジストはリソグラフィー的に処理され、上記実施例4に述べたように193nmで液浸露光し、実施例4に述べたようにして光酸生成剤化合物とその分解生成物の浸出(10億分の1部すなわちppbにおいて)を評価した。また、フォトレジスト層の接触角度を評価した。結果を以下の表1に記載する。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例6〜8のフォトレジストも良好に解像されたライン/スペースを与えた。
【0127】
実施例9〜21
(本発明に従ったフォトレジストのための追加のポリマー添加剤)
以下の実施例9〜21において、ポリマーは、形成されたポリマーを製造するため、以下の実施例中の量において相当するモノマーを用いて、全般的に上記の実施例1〜3の手段に従って合成した。
【0128】
実施例9
x/y/z/TMPTA=70/15/5/10のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する分岐テトラポリマーを調製した。式中、以下の構造に示したように、重合されたx単位を与えるモノマーはPFPA(ペンタフルオロプロピルアクリレート)であり、重合されたy単位を与えるモノマーはECPMA(エチルシクロペンチルメタクリレート)であり、重合されたz単位を与えるモノマーはアクリル酸である。
【0129】
【化11】
【0130】
実施例10
x/y/z/TMPTA=70/15/5/10のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する超分岐テトラポリマーを調製した。式中、繰り返し単位x、yおよびzは以下の構造で示される。構造から理解することができるようにz単位を提供する重合されるモノマーはメタクリル酸である。
【0131】
【化12】
【0132】
実施例11
x/y/TMPTA=70/20/10のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する超分岐ターポリマーを調製した。式中、繰り返し単位xおよびyは次の構造で示される。
【0133】
【化13】
【0134】
実施例12
x/y/TMPTA=80/10/10のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する超分岐ターポリマーを調製した。式中、繰り返し単位xおよびyは次の構造で示される。
【0135】
【化14】
【0136】
実施例13
y/z=94/6のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する直鎖コポリマーを調製した。式中、繰り返し単位y、zは次の構造で示される。構造から理解することができるように、y単位を提供する重合されるモノマーはtert−ブチルメタクリレートである。
【0137】
【化15】
【0138】
実施例14
y/z=94/6のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する直鎖コポリマーを調製した。式中、繰り返し単位yおよびzは次の構造で示される。構造から理解することができるように、z単位を提供する重合されるモノマーはカルボキシエチルアクリレートである。
【0139】
【化16】
【0140】
実施例15
重合されたtert−ブチルメタクリレート基を有する直鎖ホモポリマーを調製した。
【0141】
実施例16
y/z=50/50のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する直鎖コポリマーを調製した。式中、繰り返し単位yおよびzは次の構造で示される。構造から理解することができるように、z単位を提供する重合されるモノマーは1−シクロヘキシル−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブチル2−メタクリレートである。
【0142】
【化17】
【0143】
実施例17
y/z=50/50のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する直鎖コポリマーを調製した。式中、繰り返し単位yおよびzは次の構造で示される。構造から理解することができるようにz−単位を提供する重合されるモノマーは2−メタクリル酸4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−ブチルエステルである。
【0144】
【化18】
【0145】
実施例18
y/z=70/30のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する直鎖コポリマーを調製した。式中、繰り返し単位yおよびzは次の構造で示される。構造から理解することができるように、z−単位を提供する重合されるモノマーは2−メタクリル酸4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−ブチルエステルである。
【0146】
【化19】
【0147】
実施例19
y/z/TMPTA=70/30/10のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する超分岐ターポリマーを調製した。式中、繰り返し単位xおよびyは次の構造で示される。
【0148】
【化20】
【0149】
実施例20
y/z=50/50のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する直鎖コポリマーを調製した。式中、繰り返し単位yおよびzは次の構造で示される。構造から理解することができるように、z単位を提供する重合されるモノマーは、5および6−[3,3,3−トリフルオロ−2−2−ヒドロキシ−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−イルアクリレートである。
【0150】
【化21】
【0151】
実施例21
y/z1/z2=74/20/6=50/50のそれぞれのモル量において以下の繰り返し単位を有する直鎖ターポリマーを調製した。式中、繰り返し単位y、z1およびz2は次の構造で示される。
【0152】
【化22】
実施例22〜35
【0153】
(浸漬浸出分析)
以下の実施例22〜33において、上記実施例9〜20における3種の異なる193nmフォトレジストポリマー(第1型、第2型、第3型と呼ぶ)を以下の表2に指定した量加えた。3種のフォトレジスト組成物(すなわち、第1型、第2型、第3型)は、各々、光酸不安定エステル基および別の光酸生成剤化合物を有する非芳香族樹脂を含むポジ型の化学増幅型レジストであった。比較実施例34および35において、さらに他の添加剤(ポリマーなど)は第1型の樹脂および第2型の樹脂には加えなかった。以下の表2において、総固形分に対する重量%への言及は、溶媒キャリアを除くすべての組成物成分を意味する。
【0154】
浸出分析は上記実施例3および以下の表2に記載したよう行った。結果を以下の表2に記す。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例36〜47
(水接触角度分析)
以下の表3に指定したポリマーのスピンコーティングされた層について、水接触角度を評価した。Burnettら、J.Vac.Sci.Techn.B、23(6)、2721〜2727ページ、(2005年11月/12月)に開示された手段に全般的に従って、静止、後退、前進、滑り、現像剤静止のいくつかの水接触角度を評価した。結果を以下の表3に記す。
【0157】
これらの実施例34〜45の結果も、本発明のフォトレジスト組成物を調製して、70を超える後退水接触角度および/または20未満の滑り水接触角度などの、デバイス製造に望まれるであろう望ましい水接触角度を得ることができることを示している。
【0158】
【表3】