特許第6641327号(P6641327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641327
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】光ファイバカプラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20200127BHJP
【FI】
   G02B6/32
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-144664(P2017-144664)
(22)【出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-92128(P2018-92128A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】105140003
(32)【優先日】2016年12月2日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】廖子毅
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04420219(US,A)
【文献】 特開平11−194229(JP,A)
【文献】 特開昭52−136645(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0171636(US,A1)
【文献】 特開平07−134225(JP,A)
【文献】 特開2000−206359(JP,A)
【文献】 特開2004−219766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26−6/27,
6/30−6/34,
6/42−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の光ファイバを結合するように構成された光ファイバカプラであって、
収容チャンバと、前記収容チャンバの対向する2つの側部にそれぞれ接続された2つの光通過口とを有する基部と、
前記収容チャンバのなかに配置され、前記2つの光通過口の間に位置するレンズと、
ケーシングと、
を含み、
前記基部は前記ケーシングの中に配置され、
前記ケーシングは、互いに結合された第1外郭と第2外郭とを備え、前記第1外郭は第1案内斜面を有し、前記第2外郭は前記第1案内斜面に接する第2案内斜面をさらに有し
記2本の光ファイバは、前記レンズの両側にそれぞれ対向配置され、前記2つの光通過口によってそれぞれ一列に連結されるように構成され、前記2本の光ファイバの各々は、前記レンズの光軸を共有するコアを有し、
前記第1外郭は、少なくとも1つの第1締結部を有し、前記第2外郭は、少なくとも1つの第2締結部を有し、前記第1外郭と前記第2外郭は、少なくとも1つの前記第1締結部と少なくとも1つの前記第2締結部とによって互いに固定され、
前記2本の光ファイバの各開口数をNAとし、各光ファイバの光出射端と前記レンズの光学中心との間の軸方向距離をDとし、前記レンズの有効直径をHとし、前記レンズの焦点距離をfとし、光円錐の最大角度の半分であって、前記光ファイバと前記レンズとの間に位置し、前記レンズに出射又は入射する光の角度をθとすると、以下の条件を充足する光ファイバカプラ:
θ=sin-1(NA)かつ
D=2f=H/(2*tanθ)。
【請求項2】
前記レンズは前記基部に固定され、前記レンズと前記2つの光通過口のそれぞれは前記光軸を共有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプラ。
【請求項3】
前記基部は2つの遮蔽面をさらに有し、前記2つの光通過口はそれぞれ前記遮蔽面上に位置し、前記2つの遮蔽面と前記レンズの光学中心との間の距離は、前記光ファイバの光出射端と前記レンズの光学中心との軸方向距離に等しく、前記2本の光ファイバはそれぞれ前記2つの遮蔽面と境を接するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプラ。
【請求項4】
前記レンズは、前記基部と一体であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプラ。
【請求項5】
前記基部は、中央部と2つの側部とを有し、前記2つの側部は、前記中央部の両側に対向配置され、前記中央部と前記2つの側部とは、共に前記収容チャンバを形成し、前記2つの側部は、前記2つの光通過口をそれぞれ有し、前記レンズは前記中央部に固定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプラ。
【請求項6】
前記基部は、前記収容チャンバの一部を構成する2つの円錐形の内面を有し、前記2つの光通過口は、前記2つの円錐形の内面にそれぞれ連結されており、前記レンズは、前記2つの円錐形の内面の間に配置され、前記2つの光通過口は、前記2つの円錐形の内面の2つの側方にそれぞれ位置し、前記収容チャンバにおける前記円錐形の内面の断面積は、前記レンズから一方の前記光通過口の方向に向かって徐々に減少し、一方の前記円錐形の内面の延長方向と前記レンズの光軸とのなす角度は、前記光円錐の最大角度の半分に略等しいことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプラ。
【請求項7】
前記基部は、前記2つの光通過口のうちの1つの光通過口が接続される第1の取付孔を有し、前記2つの光通過口のうちの他の1つの光通過口が接続される第2の取付孔を有し、前記第1の取付孔及び前記第2の取付孔の各々の中心軸は、前記レンズの光軸と略平行であり、前記2本の光ファイバのうちの1本は前記第1の取付孔に挿入され、前記2本の光ファイバのうちの他の1本は前記第2の取付孔に挿入され、前記2本の光ファイバは、前記2つの光通過口によって一列に連結されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプラ。
【請求項8】
前記第1外郭は、前記2つの光通過口のうちの1つの光通過口が接続される第1の取付孔を有し、前記第2外郭は、前記2つの光通過口のうちの他の1つの光通過口が接続される第2の取付孔を有し、前記第1の取付孔及び前記第2の取付孔の各々の中心軸は、前記レンズの光軸と略平行であり、前記2本の光ファイバのうちの1本は前記第1の取付孔に挿入され、前記2本の光ファイバのうちの他の1本は前記第2の取付孔に挿入され、前記2本の光ファイバは、前記2つの光通過口によって一列に連結されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプラ。
【請求項9】
前記第1外郭は、前記第1の取付孔に対応する第1の遮蔽面を有し、前記第2外郭は、前記第2の取付孔に対応する第2の遮蔽面を有し、前記第1の遮蔽面および前記第2の遮蔽面のそれぞれと前記レンズの光学中心との間の距離は、前記光ファイバの光出射端と前記レンズの光学中心との間の軸方向距離に等しく、前記2本の光ファイバは、一方が前記第1の遮蔽面と境を接するように構成され、もう一方は前記第2の遮蔽面と境を接するように構成されることを特徴とする請求項8に記載の光ファイバカプラ。
【請求項10】
2本の光ファイバを結合するように構成された光ファイバカプラであって、
収容チャンバと、前記収容チャンバの対向する2つの側部にそれぞれ接続される2つの光通過口とを有するケーシングと、
前記収容チャンバのなかに配置され、前記2つの光通過口の間に位置するレンズと、
を含み、
前記ケーシングは、互いに結合された第1外郭と第2外郭とを備え、前記第1外郭と前記第2外郭とはそれぞれ前記2つの光通過口を有し、前記第1外郭は第1案内斜面をさらに有し、前記第2外郭は前記第1案内斜面に接する第2案内斜面をさらに有し
記2本の光ファイバは、前記レンズの両側にそれぞれ対向配置され、前記2つの光通過口によってそれぞれ一列に連結されるように構成され、前記2本の光ファイバの各々は、前記レンズの光軸を共有するコアを有し、
前記第1外郭は、少なくとも1つの第1締結部を有し、前記第2外郭は、少なくとも1つの第2締結部を有し、前記第1外郭と前記第2外郭は、少なくとも1つの前記第1締結部と少なくとも1つの前記第2締結部とによって互いに固定され、
前記2本の光ファイバの各開口数をNAとし、各光ファイバの光出射端と前記レンズの光学中心との間の軸方向距離をDとし、前記レンズの有効直径をHとし、前記レンズの焦点距離をfとし、光円錐の最大角度の半分であって、前記光ファイバと前記レンズとの間に位置し、前記レンズに出射又は入射する光の角度をθとすると、以下の条件を充足する光ファイバカプラ:
θ=sin-1(NA)かつ
D=2f=H/(2*tanθ)。
【請求項11】
前記ケーシングは、2つの遮蔽面をさらに有し、前記2つの光通過口はそれぞれ前記遮蔽面上に位置し、前記2つの遮蔽面と前記レンズの光学中心との間の距離は、前記光ファイバの光出射端と前記レンズの光学中心との軸方向距離に等しく、前記2本の光ファイバはそれぞれ前記2つの遮蔽面と境を接するように構成されることを特徴とする請求項10に記載の光ファイバカプラ。
【請求項12】
前記ケーシングは前記2つの光通過口にそれぞれ接続される2つの取付孔を有し、前記2つの取付孔の各々の中心軸は、前記レンズの光軸と略平行であり、前記2本の光ファイバは、それぞれ前記2つの取付孔に挿入され、前記2つの光通過口によって一列に連結されるように構成されることを特徴とする請求項10に記載の光ファイバカプラ。
【請求項13】
前記ケーシングは、前記収容チャンバの一部を構成する保持面をさらに有し、前記保持面の延在方向は前記レンズの光軸と略平行であり、前記レンズは前記保持面に押圧されることを特徴とする請求項10に記載の光ファイバカプラ。
【請求項14】
前記ケーシングは、前記収容チャンバの一部を構成する支持面をさらに有し、前記支持面は前記保持面に接続され、前記支持面は前記レンズの光軸の方向に延在し、前記レンズは前記支持面に対して傾斜することを特徴とする請求項13に記載の光ファイバカプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバカプラに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバカプラは、光通信に用いられる受動光デバイスである。光ファイバカプラは、2本の光ファイバの端面を互いに一列に連結する(align)ために使用され、これにより、一方の光ファイバから出射した光信号が他方の光ファイバに結合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高出力結合光ファイバの場合、光ファイバの端面同士が一列に並んでいなければ、結合効率(coupling efficiency)が低下する。この場合、光通信の際に、光ファイバから出射した光のエネルギーが、端面の粗さや塵埃によって熱に変換されやすくなり、その結果、端面付近の光ファイバのコアが燃焼することがある。このように、結合効率の向上は、光ファイバカプラの設計において重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、2本の光ファイバを結合するように構成された光ファイバカプラであって、収容チャンバと、収容チャンバの対向する2つの側部にそれぞれ接続された2つの光通過口とを有する基部と、収容チャンバのなかに配置され、2つの光通過口の間に位置するレンズと、を含み、2本の光ファイバは、レンズの両側にそれぞれ対向配置され、2つの光通過口によってそれぞれ一列に連結されるように構成され、2本の光ファイバの各々は、レンズの光軸を共有するコアを有し、2本の光ファイバの各開口数をNAとし、各光ファイバの光出射端とレンズの光学中心との間の軸方向距離をDとし、レンズの有効直径をHとし、レンズの焦点距離をfとし、光円錐の最大角度の半分であって、光ファイバとレンズとの間に位置し、レンズに出射又は入射する光の角度をθとすると、以下の条件を充足する光ファイバカプラを開示する:θ=sin-1(NA)かつD=2f=H/(2*tanθ)。
【0005】
本発明の他の実施形態は、2つの光ファイバを結合するように構成された光ファイバカプラであって、収容チャンバと、収容チャンバの対向する2つの側部にそれぞれ接続される2つの光通過口とを有するケーシングと、収容チャンバのなかに配置され、2つの光通過口の間に位置するレンズと、を含み、2本の光ファイバは、レンズの両側にそれぞれ対向配置され、2つの光通過口によってそれぞれ一列に連結されるように構成され、2本の光ファイバの各々は、レンズの光軸を共有するコアを有し、2本の光ファイバの各開口数をNAとし、各光ファイバの光出射端とレンズの光学中心との間の軸方向距離をDとし、レンズの有効直径をHとし、レンズの焦点距離をfとし、光円錐の最大角度の半分であって、光ファイバとレンズとの間に位置し、レンズに出射又は入射する光の角度をθとすると、以下の条件を充足する光ファイバカプラを開示する:θ=sin-1(NA)かつD=2f=H/(2*tanθ)。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】第1実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。
図1B図1に示す光ファイバカプラの分解図である。
図1C図1に示す光ファイバカプラによって結合された2つの光ファイバの概略図である。
図2】第2実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。
図3A】第3実施形態に係る光ファイバカプラの分解図である。
図3B図3Aに示す光ファイバカプラの断面図である。
図4】2本の光ファイバが結合されている第4実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。
図5】第5実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。
図6】第6実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、以下に示す発明の詳細な説明及び添付の図面によって、よりよく理解されるであろう。ただし、添付の図面は説明のためにのみ用いられるものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
【0008】
以下の発明の詳細な説明では、説明の目的で、開示される実施形態の完全な理解を提供するために多くの具体的な構成が示される。しかしながら、これらの具体的な構成をすべて備えなくても本発明のいくつかの実施形態を実現することができることは明らかであろう。他の例として、図面を簡略に示すため、従来周知の構造や装置は概略的に示されることがある。
【0009】
図1Aから図1Cを参照する。図1Aは、第1実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。図1Bは、図1Aに示す光ファイバカプラの分解図である。図1Cは、図1Aに示す光ファイバカプラによって結合された2つの光ファイバの概略図である。本実施形態では、光ファイバカプラ1が設けられている。光ファイバカプラ1は、基部10と、レンズ20と、ケーシング30とを含む。
【0010】
基部10は、中央部110と、2つの側部120とを含む。2つの側部120は、中央部110の対向する2つの側部にそれぞれ接続される。側部120の各々は、光通過口121と、遮蔽面122と、円錐形の内面123とを有する。光通過口121は、遮蔽面122上に位置し、光通過口121は、円錐形の内面123に接続している。中央部110と2つの側部120とが一体になって収容チャンバ130を形成している。2つの光通過口121は、収容チャンバ130の互いに対向する2つの側部に各々接続され、円錐形の内面123は、収容チャンバ130の一部を形成する。図1Bに示す基部10の側部120を参照すると、収容チャンバ130の円錐形の内面123の断面積は、レンズ20から一方の光通過口121に向かうに従って徐々に減少している。すなわち、円錐形の内面123の頂点は遮蔽面122に近接し、円錐形の内面123の底面は中央部110に近接し、光通過口121は円錐形の内面123の頂点に接続している。
【0011】
レンズ20は収容チャンバ130のなかに位置し、2つの光通過口121の間に配置される。具体的には、レンズ20は、基部10の中央部110に固定され、レンズ20は、2つの円錐形の内面123の間に配置される。各光通過口121は中心軸O1を有し、中心軸O1はレンズ20の光軸Lと重なっている。すなわちレンズ20と光通過口121とが光軸Lを共有している(光軸Lを「共通軸」と呼ぶ)。なお、本実施形態では、基材10とレンズ20とは、透明材料からなる成形型で一体的に形成されているが、これに限定されるものではない。いくつかの他の実施形態では、基部とレンズとは2つの独立した構成要素であり、レンズは基部と共に組み立てられて収容チャンバのなかに配置される。
【0012】
基部10とレンズ20とはケーシング30のなかに配置される。具体的には、ケーシング30は、互いに接続された第1外郭310と第2外郭320とを含む。第1外郭310は、取付孔311と第1締結部312とを有する。第2外郭320は、取付孔321と第2締結部322とを有する。各取付孔311,321は、中心軸O2を有し、中心軸O2は、レンズ20の光軸Lと略平行である。中心軸O2は、レンズ20の光軸Lと重なる。第1外郭310は、第2締結部322に固定された第1締結部312によって第2外郭320に固定されている。図1Bに示すように、第1締結部312と第2締結部322の双方には、ねじ孔(図面に番号の記載なし)が形成されており、ねじ孔にねじが螺合されて第1締結部312と第2締結部322とが固定される。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。他の実施形態では、第1の締結部または第2の締結部のいずれか一方が凹部を有し、他の1方が凹部に合致する凸部を有し、第1の締結部が第2の締結部に直接固定されてもよい。
【0013】
図1Cは、光ファイバカプラ1を用いて2本の光ファイバ2を連結する模式図である。2本の光ファイバ2は、レンズ20の両側にそれぞれ配置され、2本の光ファイバ2は2つの光通過口121によって一直線に連結される。具体的には、2本の光ファイバ2はそれぞれ取付穴311,321に挿入され、2本の光ファイバ2はそれぞれ2つの遮蔽面122と境を接する。2本の光ファイバ2は、各々レンズ20の光軸Lと重なるコアO3を有する。すなわち、2本の光ファイバ2とレンズ20とは光軸Lを共有している。遮蔽面122は、光ファイバ2のレンズ20に対する位置決めに好適であり、光路の偏差により光ファイバ2の結合効率が低下することを防止する。図1Cに示すように、一方の光ファイバ2は、その光出射端21から光を出射し、基部10の収容チャンバ130に光円錐B(cone B of light)を形成する。光ファイバ2から出射された光は、レンズ20に入射して屈折し、レンズ20から出射した光は、他方の光ファイバ2の光出射端21に導かれる。
【0014】
本実施形態では、結合効率を向上させるために、光ファイバカプラ1は次の構成を有する。各光ファイバ2の開口数をNAとし、各光ファイバ2の光出射端21とレンズ20の光学中心Cとの間の軸方向距離をDとし、レンズ20の有効直径をHとし、レンズ20の焦点距離をfとし、光円錐Bの最大角度の半分であって、光ファイバ2とレンズ20との間に位置するレンズ20への出入射が可能な光の角度をθとすると、以下の条件を充足する。
(条件1)θ=sin-1(NA)かつ
(条件2)D=2f=H/(2*tanθ)
【0015】
条件1と条件2を同時に満たす場合、結合効率の高い光ファイバカプラ1の構成が得られる。例示的な設計プロセスを以下に説明する。まず、光ファイバ2の開口数NAとレンズ20の有効直径H(通常、有効直径Hはレンズ20の実際の直径である。)を与える。そして、条件1において、開口数NAと有効直径Hとを代入して、最大角度の半分であるθを求める。そして、条件2において、最大角度の半分であるθと有効直径Hとの両方を代入して、軸方向距離Dを求める。最後に、軸方向距離Dに応じて基部10の大きさ及びケーシング30の大きさを決定する。この実施形態では、各遮蔽面122とレンズ20の光学中心Cとの距離は軸方向距離Dと等しいので、光ファイバ2が光ファイバカプラ1に配置されている場合は条件2が満たされる。
【0016】
本実施形態では、光ファイバ2の光出射端21とレンズ20の光学中心Cとの軸方向距離は、条件2(D=2f)のレンズの焦点距離の2倍に等しい。光出射端21がレンズ20の焦点距離の2倍の距離で光軸L上に位置する場合、光ファイバカプラ1をコンパクトサイズに保持しながら、焦点深度を大きくすることができる。このため、光ファイバ2が取付孔311,321に挿入されるとき、光ファイバ2と遮蔽面122との組立公差が大きくなり、光ファイバ2が遮蔽面122に十分に接していない場合に結合効率が過度に低下することが防止される。
【0017】
また、円錐形の内面123の延長方向A1とレンズ20の光軸Lとのなす角は、最大角度の半分であるθに略等しい。すなわち、円錐形の内面123の形状は、光円錐Bの形状に合致する。したがって、光円錐Bの端部付近の光線は、円錐形の内面123での屈折によって迂回が防止され、一方の光ファイバ2から出射された光は他方の光ファイバ2にほとんど受け入れられ、光ファイバが連結されている間の光損失が防止される。しかしながら、本発明は、円錐形の内面123の構成に限定されない。いくつかの他の実施形態では、円錐形の内面の延長方向とレンズの光軸との間の角度は、ビーム角度の半分より大きくてもよい。
【0018】
第1実施形態では、光ファイバカプラはケーシングを備えているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図2を参照すると、図2は、第2実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。第2実施形態は、第1実施形態と類似するため、以下では両者の相違点についてのみ説明する。
【0019】
本実施形態では、光ファイバカプラ1はケーシングを有しておらず、基部10には、2つの光通過口121にそれぞれ接続された2つの取付孔140が設けられている。2つの取付孔140の中心軸O2は、レンズ20の光軸Lに対して中心軸O2が光軸Lと重なるように配置されている。2本の光ファイバは、2つの光通過口121によって1直線に結合されるように2つの取付孔140にそれぞれ挿入されて構成されている。本実施形態では、基部10に取付孔が形成されているので、ケーシングが省略されている。したがって、光ファイバカプラ1はより小型となり製造コストを低減することができる。
【0020】
次に、外郭は、結合効率を向上させるために、組み立てにおけるいくつかの補助構造を含むものでもよい。例えば、図3A及び図3Bを参照すると、図3Aは、第3実施形態にかかる光ファイバカプラの分解図であり、図3Bは、図3Aに示す光ファイバカプラの断面図である。第3実施形態は、第1実施形態と類似するため、以下では両者の相違点についてのみ説明する。
【0021】
本実施形態では、ケーシング30の第1外郭310は、第1の案内斜面313をさらに有し、第2外郭320は、第1の案内斜面313に押し付けられる第2の案内斜面323をさらに有する。第1外郭310が第1締結部312と第2締結部322とによって第2外郭320に締結されると、第1の案内斜面313は第2締結部322上を摺動し、第1外郭310と第2外郭320とが完全に固定されたことをユーザに補助的に知らせるため、第1外郭310と第2外郭320との径方向のずれを小さくして、結合効率が過度に低下しないようにするのに好適である。
【0022】
しかしながら、本発明の組み立てのための補助構造は、案内斜面に限定されない。いくつかの他の実施形態では、光ファイバカプラの外郭は、それぞれ、組み立てのための補助構造として構成された凹部および凸部を含む。
【0023】
次に、図4を参照する。図4は、2本の光ファイバが結合されている第4実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。第4実施形態は、第1実施形態と類似するため、以下では両者の相違点についてのみ説明する。
【0024】
この実施形態では、ケーシング30は、取付孔311,321の内面からそれぞれ突出する2枚のプレート311a、321aを有し、2枚のプレート311a、321aは、それぞれ、遮蔽面3111,3211を有する。遮蔽面3111又は遮蔽面3211のいずれかとレンズ20の光学中心Cとの軸方向距離は、光ファイバ2の光出射端21とレンズ20の光学中心Cとの軸方向距離Dに等しい。
【0025】
次に、図5を参照する。図5は、第5実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。第5実施形態は、第1実施形態と類似するため、以下では両者の相違点についてのみ説明する。
【0026】
この実施形態では、基部10の中央部110および2つの側部120は、3つの独立した構成要素である。2つの側部120は、中央部110の2つの対向する側面に、例えば接着によってそれぞれ取り付けられる。
【0027】
上述した実施形態では、光ファイバカプラは基部を備え、レンズは基部に固定されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、代わりに、いくつかの他の実施形態では、光ファイバカプラは基部を有しないものでもよい。例えば、図6を参照する。図6は、第6実施形態に係る光ファイバカプラの断面図である。第6実施形態は、第1実施形態と類似するため、以下では両者の相違点についてのみ説明する。
【0028】
この実施形態では、光ファイバカプラ1は、レンズ20とケーシング30’’とを含む。ケーシング30’’は、収容チャンバ320’’を共に形成する2つの外郭310’’を含む。2つの外郭310’’のそれぞれは、光通過口311’’、取付孔312’’および遮蔽面313’’を有する。2つの光通過口311’’はそれぞれ収容チャンバ320’’の2つの対向する側に接続されている。レンズ20は、収容チャンバ320’’内に配置され、2つの光通過口311’’の間に配置される。2つの遮蔽面313’’は、それぞれ2つの取付孔312’’に対応する。各遮断面313’’とレンズ20の光学中心との間の距離は、光ファイバの光出射端とレンズ20の光学中心Cとの軸方向距離に等しい。2本の光ファイバは、2つの光通過口311’’によって一直線に結合されるように2つの取付孔312’’に挿入される。
【0029】
さらに、この実施形態では、ケーシング30’’の2つの外郭310’’がともに組み立てられて保持面314’’を形成し、一つの外郭310’’は支持面315’’を有する。保持面314’’の延長方向は、レンズ20の光軸Lと略平行である。保持面314’’には支持面315’’が接続しており、支持面315’’はレンズ20の光軸Lの方向に延在する。レンズ20は、保持面314’’に押し付けられて保持され、支持面315’’によって傾きが規定される。したがって、レンズ20は、基部を全く用いることなく、ケーシング30’’内の特定の位置に配置されることができる。また、支持面315’’は、レンズ20の傾きを防止するのに有効であるので、光軸Lが光通過口311’’の中心軸及び取付孔312’’の中心軸と平行であることが保証される。この実施形態では、保持面314’’と支持面315’’の両方がレンズ20にフィットするような環状であるため、レンズ20が保持面314’’によってしっかりと保持され、支持面315’’に当接することができる。しかしながら、保持面314’’および支持面315’’の構成における前述の説明は、本発明を限定するものではない。
【0030】
この実施形態では、2つの外郭310’’が共に組み立てられて保持面314’’を形成するが、本発明はこれに限定されない。いくつかの他の実施形態では、保持面314’’は単一の外郭310’’上に形成される。
【0031】
さらに、この実施形態では、ケーシング30’’の2つの外郭310’’は、それぞれ、図1Aに示す光ファイバカプラの締結部としての締結部分を含む。いくつかの他の実施形態では、2つの外郭310’’の各々は、図3Bに示す光ファイバカプラの誘導斜面としての案内斜面を含む。締結部および案内斜面の詳細な説明はすでに上述しているため、以下では省略する。
【0032】
本発明によれば、光ファイバカプラは、2本の光ファイバを結合することができる。各光ファイバの開口数をNAとし、各光ファイバの光出射端とレンズの光学中心との軸方向距離をDとし、レンズの有効直径をHとし、前記光ファイバと前記レンズとの間に位置する光円錐の最大角度の半分をθとすると、次の条件を充足する。θ=sin-1(NA)、かつD=2f=H/(2*tanθ)。したがって、光ファイバカプラは、シンプルで低コストのプロセスによって高い結合効率を実現することができる。さらに、本発明の光ファイバは相互に溶着されていないため、光ファイバを光ファイバカプラから容易に取り外すことができ、使い勝手が良い。
【0033】
さらに、D=2f=H/(2*tanθ)の条件を満たす場合、光ファイバの光出射端とレンズの光学中心との軸方向距離がレンズの焦点距離の2倍に等しい。発光端がレンズの焦点距離の2倍の距離で光軸上に配置されていると、光ファイバカプラをコンパクトに維持することができ、焦点深度を大きくすることができる。このため、光ファイバが光ファイバカプラ上に配置されている場合には、光ファイバおよび遮蔽面の組立公差が大きくなり、光ファイバが所定の位置に十分に位置しない場合において結合効率が過度に低下することが防止される。
【0034】
当業者にとって、本発明は様々な変更および変形がなされ得ることは明らかであろう。本明細書に記載された実施形態は、例示的な実施形態としてのみ考慮され、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載およびそれらの均等物によって示されることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6