特許第6641337号(P6641337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6641337セラミック焼結体およびそれを含む受動素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641337
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】セラミック焼結体およびそれを含む受動素子
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/465 20060101AFI20200127BHJP
   C04B 35/49 20060101ALI20200127BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20200127BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   C04B35/465
   C04B35/49
   H01B3/12 338
   H01B3/12 303
   H01B3/12 304
   H01B3/12 335
   H01B3/12 324
   H01B3/12 341
   H01B3/12 333
   H01G4/12 270
   H01G4/12 450
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-208903(P2017-208903)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-81665(P2019-81665A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】517380145
【氏名又は名称】ヤゲオ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】YAGEO CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正之
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−138061(JP,A)
【文献】 特開2015−019027(JP,A)
【文献】 特開2015−043389(JP,A)
【文献】 特開2005−320498(JP,A)
【文献】 特開2014−138187(JP,A)
【文献】 特開平11−322415(JP,A)
【文献】 特開昭62−180905(JP,A)
【文献】 特開2000−281440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
H01B 3/12
H01G 4/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値より約0.05%から約20%小さく、該半導体セラミック相の材料が、ペロブスカイト材料および還元TiO(ルチル)からなる群より選択される、セラミック焼結体。
【請求項2】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が前記パーコレーション閾値の約0.999倍から約0.33倍であり、該半導体セラミック相の材料が、ペロブスカイト材料および還元TiO(ルチル)からなる群より選択される、セラミック焼結体。
【請求項3】
前記誘電セラミック相の材料が、CaZrTi27(ジルコノライト)、CaZrO3、SrZrO3、BaZrO3、TiO2(ルチル)、ZrO2、およびその固溶体からなる群より選択される、請求項1または2記載のセラミック焼結体。
【請求項4】
前記ペロブスカイト材料が、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ニッケル(NiTiO3)、チタン酸マンガン(MnTiO3)、チタン酸コバルト(CoTiO3)、チタン酸銅(CuTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、およびそれらの複合体からなる群より選択される、請求項1または2記載のセラミック焼結体。
【請求項5】
前記半導体セラミック相に添加剤がドープされている、請求項1または2記載のセラミック焼結体。
【請求項6】
前記誘電セラミック相に添加剤がドープされている、請求項1または2記載のセラミック焼結体。
【請求項7】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値より約0.05%から約20%小さく該半導体セラミック相に添加材がドープされており、該添加剤が、Y、NbおよびLaからなる群より選択されるドナー型添加剤である、セラミック焼結体。
【請求項8】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値の約0.999倍から約0.33倍であり、該半導体セラミック相に添加材がドープされており、該添加剤が、Y、NbおよびLaからなる群より選択されるドナー型添加剤である、セラミック焼結体。
【請求項9】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値より約0.05%から約20%小さく、該誘電セラミック相に添加材がドープされており、該添加剤が、V、Nb、Cr、マンガン化合物、マグネシウム化合物、ケイ酸塩化合物、およびアルミナ化合物からなる群より選択されるアクセプタ型添加剤である、セラミック焼結体。
【請求項10】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値の約0.999倍から約0.33倍であり、該誘電セラミック相に添加材がドープされており、該添加剤が、V、Nb、Cr、マンガン化合物、マグネシウム化合物、ケイ酸塩化合物、およびアルミナ化合物からなる群より選択されるアクセプタ型添加剤である、セラミック焼結体。
【請求項11】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値より約0.05%から約20%小さい、セラミック焼結体を含む、受動素子。
【請求項12】
誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、該半導体セラミック相および該誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、該半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値の約0.999倍から約0.33倍である、セラミック焼結体を含む、受動素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミック焼結体およびそれを含む受動素子に関し、より詳しくは、好ましい誘電率を有するセラミック焼結体およびそのセラミック焼結体を含む受動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサなどの受動素子は、通常、誘電材料から作られる。一般に、コンデンサの静電容量は、そのコンデンサを作る誘電材料の誘電率に関連する。すなわち、誘電材料の誘電率が高いほど、そのコンデンサの静電容量が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大きさが小型化され、静電容量が改善されたコンデンサが望ましいので、誘電率が改善された材料を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、好ましい誘電率を有するセラミック焼結体を提供する。
【0005】
本開示のいくつかの実施の形態において、そのセラミック焼結体は、誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含み、その半導体セラミック相および誘電セラミック相は一緒にパーコレーション複合体を形成し、その半導体セラミック相の体積分率は、パーコレーション閾値に近く、それより小さい。
【0006】
本開示は、上述したセラミック焼結体を含む受動素子をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示のいくつかの実施の形態によるセラミック焼結体の微細構造を示す説明図
図2】実施例1の工程系統図
図3A】実施例1のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像
図3B】実施例1のセラミック焼結体におけるSrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図3C】実施例1のセラミック焼結体におけるCaのSTEM−EDX化学分析を示す図
図3D】実施例1のセラミック焼結体におけるTiのSTEM−EDX化学分析を示す図
図3E】実施例1のセラミック焼結体におけるZrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図4A】実施例1のセラミック焼結体における第1のセラミック相から得た制限視野電子回折(SAED)像(より明るい粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSr、CaおよびTiを示す)
図4B】実施例1のセラミック焼結体における第2のセラミック相から得た制限視野電子回折(SAED)像(より暗い粒子はSTEM−EDX化学分析におけるTiおよびZrを示す)
図5】実施例1のセラミック焼結体のX線回折(XRD)パターン
図6A】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例1のセラミック焼結体の比誘電率を示すグラフ
図6B】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例1のセラミック焼結体の誘電損失を示すグラフ
図6C】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例1のセラミック焼結体の抵抗率を示すグラフ
図7】実施例2の工程系統図
図8A】実施例2のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像
図8B】実施例2のセラミック焼結体におけるSrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図8C】実施例2のセラミック焼結体におけるCaのSTEM−EDX化学分析を示す図
図8D】実施例2のセラミック焼結体におけるTiのSTEM−EDX化学分析を示す図
図8E】実施例2のセラミック焼結体におけるZrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図9A】実施例2のセラミック焼結体における第1のセラミック相から得た制限視野電子回折(SAED)像(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSr、CaおよびTiを示す)
図9B】実施例2のセラミック焼結体における第2のセラミック相から得た制限視野電子回折(SAED)像(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるTiおよびZrを示す)
図9C】実施例2のセラミック焼結体における第3のセラミック相から得た制限視野電子回折(SAED)像(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるCa、ZrおよびTiを示す)
図9D】(150)CaZrTi27(ジルコノライト)の制限視野電子回折(SAED)シミュレーション像
図10】実施例2のセラミック焼結体のX線回折(XRD)パターン
図11A】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例2のセラミック焼結体の比誘電率を示すグラフ
図11B】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例2のセラミック焼結体の誘電損失を示すグラフ
図11C】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例2のセラミック焼結体の抵抗率を示すグラフ
図12】実施例3の工程系統図
図13A】実施例3のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像
図13B】実施例3のセラミック焼結体におけるZrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図13C】実施例3のセラミック焼結体におけるTiのSTEM−EDX化学分析を示す図
図13D】実施例3のセラミック焼結体におけるSrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図14A】実施例3のセラミック焼結体における第1のセラミック相から得た制限視野回折(SAD)像(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSr、CaおよびTiを示す)
図14B】実施例3のセラミック焼結体における第2のセラミック相から得た制限視野回折(SAD)像(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるZrおよびTiを示す)
図15】実施例3のセラミック焼結体のX線回折(XRD)パターン
図16A】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例3のセラミック焼結体の比誘電率を示すグラフ
図16B】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例3のセラミック焼結体の誘電損失を示すグラフ
図16C】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例3のセラミック焼結体の抵抗率を示すグラフ
図17】実施例4の工程系統図
図18A】実施例4のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像
図18B】実施例4のセラミック焼結体におけるCaのSTEM−EDX化学分析を示す図
図18C】実施例4のセラミック焼結体におけるTiのSTEM−EDX化学分析を示す図
図18D】実施例4のセラミック焼結体におけるZrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図18E】実施例4のセラミック焼結体におけるSrのSTEM−EDX化学分析を示す図
図19A】実施例4のセラミック焼結体における第1のセラミック相から得た制限視野回折(SAD)像(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSrおよびTiを示す)
図19B】実施例4のセラミック焼結体における第2のセラミック相から得た制限視野回折(SAD)像(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるCa、ZrおよびTiを示す)
図19C】(011)CaZrTi27(ジルコノライト)の制限視野電子回折(SAED)シミュレーション像
図20】実施例4のセラミック焼結体のX線回折(XRD)パターン
図21A】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例4のセラミック焼結体の比誘電率を示すグラフ
図21B】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例4のセラミック焼結体の誘電損失を示すグラフ
図21C】いくつかの異なる再酸化条件下での実施例4のセラミック焼結体の抵抗率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
理論的に、極めて高い誘電率は、強誘電・常誘電相転移に近い非常に狭い温度範囲での強誘電材料においてしか期待できない。しかしながら、コンデンサの許容できる誘電率に対する従来のアプローチは、多層構造によって行われる。詳しくは、強誘電セラミック材料の薄層を導電層の間に配置して、多層セラミックコンデンサ(MLCC)を形成する。従来のMLCCにおいて、強誘電セラミック層の厚さは、その静電容量に影響する重要な要因である。より小さい粒径の強誘電セラミック材料を使用して強誘電セラミック層の厚さを減少させることにより、MLCCの静電容量を増やすことができる。しかしながら、粒径がより小さい強誘電セラミック材料は、いわゆる「寸法効果」のために、より小さい誘電率を示す。より薄い誘電層によってMLCCにおいてより大きい静電容量を得るための従来の基準では、理論的に、行き詰まってしまう。
【0009】
コンデンサの許容できる誘電率に対する別のアプローチは、パーコレーション複合体により行われ、これは、パーコレーション理論にしたがって説明できる。一般に、「パーコレーション理論」は、ランダムグラフにおける結合したクラスターの挙動について説明する。コンデンサに関連する技術分野において、パーコレーション理論は、絶縁粒子が充填された空間を通る電流路を形成する導電粒子の条件について説明するために使用できる。導電粒子が絶縁粒子と混合されたときに、絶縁粒子が充填された空間を通る電流路を形成するのに十分な導電粒子の最低の体積分率は、「パーコレーション閾値」と定義される。言い換えると、導電粒子の体積分率がパーコレーション閾値に到達したときに、導電粒子の一部が互いに接続され、絶縁粒子が充填された空間を通る電流路を形成する。導電粒子の体積分率の増加は、その複合体の見掛けの誘電率の増加をもたらす。導電粒子の体積分率がパーコレーション閾値の直前にある場合、これは、パーコレーション閾値の前の導電粒子の最高の体積分率を意味するが、その複合体は非常に大きい誘電率を示す。パーコレーション閾値のべき法則は以下のように記載される。
【0010】
【数1】
【0011】
上述したパーコレーション複合体では、それぞれ、導電粒子および絶縁粒子として、金属材料および誘電セラミック材料を使用する。微細な金属粒子は大きい表面エネルギーを有する。金属粒子は、誘電セラミック粒子と混合されると、互いに凝集する傾向にあり、それゆえ、混合物中に均一に分散できない。金属粒子の凝集は、その混合過程が大規模で行われた場合、さらに悪化するであろう。その上、金属粒子(ニッケルなど)の融点はセラミック粒子の融点よりも一般に低いので、焼結過程において、金属粒子は絶縁粒子よりも早く溶融し、その焼結過程中に多大な粒子成長(異常な粒成長)をもたらす。焼結過程中の異常な粒成長を避けるために、融点が高い貴金属(白金など)から作られた金属粒子を使用してもよいが、それに応じて、費用が増加するであろう。上述したことを考慮すると、そのようなパーコレーション複合体は、工業上の要件を満たすことができない。
【0012】
少なくとも上述した懸念に対処するために、本開示は、誘電セラミック相中に分散した半導体セラミック相を含むセラミック焼結体であって、その半導体セラミック相および誘電セラミック相が一緒にパーコレーション複合体を形成し、その半導体セラミック相の体積分率が、パーコレーション閾値に近く、それより小さい、セラミック焼結体を提供する。上述した金属材料の代わりに、導電相として半導体セラミック材料を使用することにより、導電相の凝集および異常な粒成長を避けることができる。このように、好ましい誘電率を有するそのようなパーコレーション複合体をうまく製造することができる。
【0013】
ここに用いたように、「おおよそ」、「実質的に」、「実質的」および「約」という用語は、小さい変動を記載し、その説明をするために使用される。その用語は、ある事象または状況と共に使用された場合、その事象または状況がまさに起こる場合、並びにその事象または状況が極めて起こりそうである場合を称することができる。例えば、その用語は、数値と共に使用された場合、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内、または±0.05%以内などの、その数値の±10%以内の変動範囲を称することができる。
【0014】
それに加え、量、比、および他の数値が、範囲の形式でここに提示されることがある。そのような範囲の形式は、便宜上で簡潔さのために使用されており、範囲の限界と明白に指定された数値を含むだけでなく、各数値および部分的な範囲が明白に指定されているかのように、その範囲内に包含される個々の数値または部分的な範囲の全てを含むように柔軟に理解されるべきであることを理解すべきである。
【0015】
本開示において、「セラミック焼結体」という用語は、セラミック材料から作られた焼結体を称する。このセラミック焼結体は、2種類以上のセラミック材料から焼結されることがある。例えば、セラミック焼結体は複数のセラミック粒子から焼結することができ、これらのセラミック粒子は互いにかみ合ってモノリス構造を形成する。
【0016】
本開示において、「相」という用語は、その至る所が材料の全ての物理的性質が本質的に均一である空間領域を称する。物理的性質の例としては、以下に限られないが、密度、屈折率、磁化、導電率、誘電率、および化学組成が挙げられる。相が、物理的および化学的に均一であり、物理的に区別できる材料の領域であることが好ましい。例えば、本開示のいくつかの実施の形態において、前記セラミック焼結体は、前記誘電セラミック相中に分散した前記半導体セラミック相を含む。その半導体セラミック相は、この半導体セラミック相内で本質的に均一である導電率を有する材料から実質的に作られる。同様に、その誘電セラミック相は、この誘電セラミック相内で本質的に均一である導電率を有する別の材料から実質的に作られる。さらに、半導体セラミック相の導電率は、誘電セラミック相の導電率と異なる。
【0017】
本開示のいくつかの実施の形態において、前記誘電セラミック相は、前記半導体セラミック相と比べた場合、連続相に似ている。他方で、その半導体セラミック相は、その誘電セラミック相内に分散した分散相に似ている。説明のために、図1は、本開示のいくつかの実施の形態によるセラミック焼結体の微細構造を示す。半導体セラミック相11が誘電セラミック相12内に分散しており、パーコレーション複合体を形成している。本開示のいくつかの実施の形態によるセラミック焼結体は、複数の半導体セラミック相および/または複数の誘電セラミック相を含むことがあることは注目に値する。
【0018】
本開示のいくつかの実施の形態において、前記誘電セラミック相は、誘電特性を有するセラミック材料からなる相を称する。例えば、そのような相の抵抗率は、約108Ω・cmより高い。
【0019】
本開示のいくつかの実施の形態において、前記半導体セラミック相は、半導体特性を有するセラミック材料からなる相を称する。例えば、そのような相は、約0.5S/mより高い、または約1.0S/mより高い導電率を有するn型半導体であることがある。
【0020】
本開示のいくつかの実施の形態において、パーコレーション静電容量は、前記誘電セラミック相を通る電流路を形成するのにちょうど十分である前の前記半導体セラミック相の最高体積分率を称する。パーコレーション閾値は、その誘電セラミック相を通る電流路を形成するのにちょうど十分であるその半導体セラミック相の体積分率を称する。そのパーコレーション閾値の厳密値は、その材料、半導体セラミック相および誘電セラミック相の材料の粒径、並びにセラミック焼結体の焼結温度に依存するであろう。そのパーコレーション閾値は、測定またはシミュレーションにより得ることができ、これは、当業者により容易に認識できる。
【0021】
本開示において、前記パーコレーション複合体は、パーコレーション閾値に非常に高い半導体セラミック相の体積分率を有する。そのパーコレーション複合体中の半導体セラミック相の体積分率は、パーコレーション閾値より数パーセント小さいこともあり得る。
【0022】
セラミック焼結体(誘電セラミック相および半導体セラミック相を含む)の誘電率は、パーコレーション閾値で発散する。したがって、誘電セラミック相および半導体セラミック相は共にパーコレーション構造を形成し、半導体セラミック相の体積分率はパーコレーション閾値に非常に近いので、そのセラミック焼結体に改善された誘電率を与えることができる。すなわち、セラミック焼結体の誘電率は、半導体セラミック相の体積分率がパーコレーション閾値に近い領域に増加したときに、指数関数的に増加する。
【0023】
いくつかの実施の形態において、前記パーコレーション複合体中の半導体セラミック相の体積分率は、パーコレーション閾値より約0.05%から約20%小さいことがある。例えば、特定の条件下でのパーコレーション閾値が30%である場合、同じ条件下でのサブパーコレーション複合体中の半導体セラミック相の体積分率は、約30−0.05%から約30−20%であろう。いくつかの実施の形態において、パーコレーション複合体中の半導体セラミック相の体積分率は、パーコレーション閾値より約0.05%から約10%、約0.05%から約5%、または約0.05%から約3%小さいことがある。本開示のいくつかの実施の形態において、半導体セラミック相の体積分率はパーコレーション閾値に近く、それより小さい。いくつかの実施の形態において、半導体セラミック相の体積分率は、パーコレーション閾値の厳密値の約0.999倍から約0.33倍であることがある。例えば、特定の条件下でのパーコレーション閾値が30%である場合、同じ条件下でのサブパーコレーション複合体中の半導体セラミック相の体積分率は、約(30×0.999)%から約(30×0.33)%であることがある。いくつかの実施の形態において、半導体セラミック相の体積分率は、パーコレーション閾値の厳密値の約0.999倍から約0.65倍、約0.999倍から約0.75倍、約0.999倍から約0.85倍、または約0.999倍から約0.9倍であることがある。
【0024】
いくつかの実施の形態において、例えば、所定の条件下でのパーコレーション閾値を計算することができる。所定の条件下でのパーコレーション閾値の計算モデルが、少なくとも、C.D. LorenzおよびR.M. Ziff, J. Chem. Phys. 114 3659 (2001)、S. Kirkpatrick, Rev. Mod. Phys. 45 574 (1973)、D. Stauffer, Phys Rep. 54 1 (1979)、並びにT.G. Castner等, Phys. Rev. Lett. 34 1627 (1975)に見ることができる。
【0025】
前記サブパーコレーション複合体中の半導体セラミック相の体積分率の厳密値は、半導体セラミック相と半導体セラミック相の粒径、およびそれらの幾何分布に強く依存するであろう。例えば、誘電セラミック相の粒径が半導体セラミック相の粒径よりもずっと小さく、それらが十分に均一に分布している場合、半導体セラミック相の体積分率はより大きい値を示し得る。他方で、誘電セラミック相の粒径が半導体セラミック相の粒径よりもずっと大きく、それらが十分に幾何学的に分布している場合、半導体セラミック相の体積分率はより小さい値を示し得る。しかしながら、いくつかの実施の形態において、半導体セラミック相の粒径が約3.0マイクロメートルであり、誘電セラミック相の粒径が約0.2マイクロメートルである場合、半導体セラミック相の体積分率は、好ましくは約5%から約60%、より好ましくは約15%から約40%、さらにより好ましくは約20%から約35%である。半導体セラミック相の粒径が約1.0マイクロメートルであり、誘電セラミック相の粒径が約0.2マイクロメートルである場合、半導体セラミック相の体積分率は、好ましくは約5%から60%、より好ましくは15%から40%、さらにより好ましくは約25%から35%である。そして、半導体セラミック相の粒径が0.2マイクロメートルであり、誘電セラミック相の粒径が0.1マイクロメートルである場合、半導体セラミック相の体積分率は、5%から55%、より好ましくは15%から35%、さらにより好ましくは約20%から30%である。しかしながら、いくつかの実施の形態において、半導体セラミック相の形状が、パーコレーション閾値の厳密値に大々的に影響することがある。
【0026】
例えば、本開示のいくつかの実施の形態による誘電セラミック相の材料としては、CaZrTi27(ジルコノライト)、CaZrO3、SrZrO3、BaZrO3、TiO2(ルチル)、ZrO2、またはその固溶体(例えば、その固溶体は、Ti1-xZrx2、式中、xは0と1の間の有理数である;またはCa1-xSrxZrO3、式中、xは0と1の間の有理数である;を含むことがある)が挙げられる。その誘電セラミック相がジルコノライトを含む場合、その誘電セラミック相が半導体セラミック相から明白に分離されていることが有利である。
【0027】
例えば、本開示のいくつかの実施の形態による半導体セラミック相の材料としては、ペロブスカイト材料が挙げられる。当業者には容易に認識できるように、「ペロブスカイト材料」は、XII2+VI4+2-3の同じ種類の結晶構造を有する化合物の部類を称する。「A」および「B」は、サイズが非常に異なる2つの陽イオンであり、「X」は、両方に結合する陰イオンである。「A」原子 は「B」原子よりも大きい。理想的な立方体対称構造は、陰イオンの八面体に取り囲まれた、6配位に「B」陽イオンを、12立方八面体配位に「A」陽イオンを有する。本開示のいくつかの実施の形態において、ペロブスカイト材料としては、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ニッケル(NiTiO3)、チタン酸マンガン(MnTiO3)、チタン酸コバルト(CoTiO3)、チタン酸銅(CuTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、またはそれらの複合体が挙げられる。ペロブスカイト材料が、例えば、還元雰囲気によって、還元されるなどの、還元状態にあり得ることが好ましい。本開示のいくつかの実施の形態において、半導体セラミック相の材料としては、還元TiO2(ルチル)、すなわち、TiO2-x;酸素欠損状態の半導体が挙げられる。この還元TiO2(ルチル)は、例えば、還元雰囲気によって還元することができる。
【0028】
ペロブスカイト材料、CaZrTi27、TiO2(ルチル)およびZrO2の中に格子不整合があるけれども、焼結過程中に、Tiの相互拡散がペロブスカイト材料(XII2+VI4+2-3の「B」がTiである)と、CaZrTi27、TiO2(ルチル)との間に生じ、Zrの相互拡散がCaZrTi27、CaZrO3、SrZrO3、BaZrO3およびZrO2の間で生じるので、そのような格子不整合は克服することができる。したがって、先に列挙された材料を半導体セラミック相および誘電セラミック相として使用する場合、亀裂、破壊、脆性破壊および破砕がなく、それらを一緒に焼結し、セラミック焼結体の好ましい構造強度を提供することができる。
【0029】
さらに、本開示のいくつかの実施の形態において、前記誘電セラミック相に別の添加剤をさらにドープすることができる。例えば、その添加剤は、V、Nb、Crなどのアクセプタ型添加剤である。それに加え、その添加剤は、誘電特性を増加させるために、マンガン化合物、マグネシウム化合物、ケイ酸塩化合物、タングステン化合物またはアルミナ化合物であってもよい。本開示のいくつかの実施の形態において、その誘電セラミック相に、MnO2、MgOまたはWO3などのドーパントをさらにドープすることができる。そのようなドーパントは、誘電セラミック相の誘電特性を向上させる、例えば、誘電セラミック相の抵抗率および信頼性を増加させることができる。
【0030】
同様に、本開示のいくつかの実施の形態において、前記半導体セラミック相は添加剤がさらにドープされている。例えば、その添加剤は、Y、NbまたはLaなどのドナー型添加剤であり、それゆえ、半導体セラミック相において、Y23、Nb25、La23を形成する。そのような添加剤は、半導体セラミック相の半導体特性を向上させる、例えば、半導体セラミック相の導電率を増加させることができる。ドナー型添加剤がドープされ、還元されたペロブスカイト材料は、高いドナー密度のn型半導体材料を形成することができる。
【0031】
本開示は、上述したセラミック焼結体を含む受動素子をさらに提供する。本開示において、その受動素子は、それが接続される利用できる交流(AC)回路を除いて、動作エネルギーを必要としない電子部品である。その受動素子は、電力利得を得ることができず、エネルギー源ではない。例えば、受動素子としては、抵抗器、コンデンサ、誘導子、および変圧器などの二端子部品があげられる。
【0032】
本開示は、上述したセラミック焼結体を製造する方法にも関することがある。その方法は、半導体セラミック粒子および誘電セラミック粒子を混合して、混合物を得る工程、およびその混合物を中性雰囲気下で焼結する工程を有してなる。
【0033】
本開示のいくつかの実施の形態において、前記半導体セラミック粒子は、上述した半導体セラミック相と同じ材料から作られる。しかしながら、TiO2粒子を、ルチルおよびアナターゼ構造の両方で提供できることが注目に値する。その半導体セラミック粒子のサイズは、約0.1マイクロメートルから約5マイクロメートル、好ましくは約0.2マイクロメートルから約2マイクロメートルであることがある。同様に、前記誘電セラミック粒子は、上述した誘電セラミック相と同じ材料から作られる。その誘電セラミック粒子のサイズは、約0.1マイクロメートルから約5マイクロメートル、好ましくは約0.2マイクロメートルから約2マイクロメートルであることがある。その半導体セラミック粒子およびその誘電セラミック粒子の混合工程は、例えば、ビーズミル粉砕機によって行うことができる。混合後、その混合物は、N2、He、Arなどの中性雰囲気下で焼結される。焼結温度は、例えば、約1100℃から約1500℃であることがある。
【0034】
本開示のいくつかの実施の形態において、前記方法は、半導体セラミック粒子、誘電セラミック粒子および結合剤を溶媒中で混合する工程、および焼結前に結合剤および溶媒を除去する工程をさらに含む。例えば、その結合剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリレートおよびエチルセルロースが挙げられる。その溶媒としては、エタノール、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)およびブチルカルビトールアセテート(BCA)、並びにそれらの組合せが挙げられる。焼結密度を増加させ、焼結温度を低下させるために、SiO2、GeO2、B23などの他の焼結助剤を添加しても差し支えない。その溶媒は、半導体セラミック粒子および誘電セラミック粒子を混合するための液体を称する。その溶媒が、半導体セラミック粒子、誘電セラミック粒子、および/または結合剤と反応しないことが好ましい。例えば、その溶媒としては、アルコール、エーテルなどが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、説明のためにだけに与えられたものであり、本発明の範囲を制限する意図はない。
【0036】
実施例1:誘電セラミック相としてのTiO2・ZrO2固溶体および半導体セラミック相としてのSrTiO3・CaTiO3固溶体を含むセラミック焼結体
図2は、実施例1の工程系統図を示す。0.075モルの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.075モルの炭酸カルシウム(CaCO3)、および0.15モルのTiO2(ルチル)をエタノール中でビーズミル粉砕機(直径0.1mmの酸化ジルコニウムビーズ)により混合した。混合後、混合した粉末を窒素ガス流中で乾燥させた。得られた混合物を乾式粉砕し、5時間に亘りN2+H2(95%+5%)ガス流中において1,000℃でか焼して、黒色の半導体(Sr0.5Ca0.5)TiO3粉末を得た。その乾式粉砕した粉末に0.5モルの酸化ジルコニウム(ZrO2)および0.5モルの酸化チタン(TiO2)(ルチル)を添加し、ビーズミル粉砕機により再び混合した。
【0037】
このように形成された100質量部の粉末をエタノール中で混合し、混練し、次に、15質量部のPVA結合剤、0.1質量部のSiO2および0.05質量部のAl23と混合して、スラリーを形成した。そのスラリーを、被覆装置を使用して、ポリエチレンテレフタレート担体テープ上に被覆して、未焼成シートを形成した。その未焼成シートを打ち抜いて、複数のペレットを形成した。それらのペレットを0.015気圧(約1.5MPa)超の酸素分圧および550℃の温度で60分に亘り加熱して、有機結合剤を除去した。次いで、そのペレットを、N2を含有する雰囲気下で30分間に亘り1250℃の温度で焼結して、セラミック焼結体を形成した。上記条件の理論パーコレーション閾値は約28.95%であり、そのセラミック焼結体中の半導体セラミック相(SrTiO3・CaTiO3)の体積分率は約27%である。そのセラミック焼結体中の半導体セラミック粒子および誘電セラミック粒子の均一な混合状態を確認するために、誘電特性の測定前に、試料を、空気中において、それぞれ、800℃、900℃、および1000℃で30分間に亘り再酸化した。再酸化中、半導体セラミック粒子は、粒界での酸素拡散によって、粒界区域から酸化するであろう。一方で、誘電セラミック粒子においても、粒界で酸素拡散が起こる。適切な再酸化条件でセラミック焼結体の性質が向上するであろう。しかしながら、再酸化温度が高いと、酸素拡散は、粒界だけでなく、粒子の内部でも起こる。強烈な酸素拡散は半導体セラミック粒子の劣化をもたらし、それゆえ、その導電率を減少させる。このようにして得られた焼結体を、両面から100マイクロメートルの深さまで研磨して、誘電特性の測定のためにAu電極を蒸着した。
【0038】
図3Aは、実施例1のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す。この画像のコントラスト差は、少なくとも、第1のセラミック相(より明るい粒子)および第2のセラミック相(より暗い粒子)を示す。さらに、STEM−EDX化学分析(図3Bから3E)は、第1のセラミック相(Sr・Ca・Ti)および第2のセラミック相(Ti・Zr)の存在を実証する。
【0039】
図4Aは、第1のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(より明るい粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSr、CaおよびTiを示す)を示す。その結果は、第1のセラミック相(より明るい粒子)が(213)(Sr0.5Ca0.5)TiO3であることを示す。図4Bは、第2のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(より暗い粒子はSTEM−EDX化学分析におけるTiおよびZrを示す)を示す。その結果は、第2のセラミック相(より暗い粒子)が(001)TiO2(ルチル)であり、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体として推定されることを示す。
【0040】
図5は、実施例1のセラミック焼結体のX線回折(XRD)を示す。それらのピークも、セラミック焼結体中の第1のセラミック相(すなわち、(Sr0.5Ca0.5)TiO3相)および第2のセラミック相(すなわち、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体相)の存在を示す。
【0041】
図6A図6B、および図6Cは、いくつかの異なる再酸化条件下での実施例1のセラミック焼結体の比誘電率、誘電損失、および抵抗率を示す。比誘電率および誘電損失の減少、並びに抵抗率の増加は、(Sr0.5Ca0.5)TiO3半導体相の再酸化の増加を示唆する。得られたセラミック焼結体(図6Aから6Cに「焼結されたまま」と示されている)は、(Sr0.5Ca0.5)TiO3およびTiO2・ZrO2のものよりも著しく大きい比誘電率を有し、その比誘電率は、再酸化温度の上昇に対応して減少する。半導体セラミック相((Sr0.5Ca0.5)TiO3)の酸化レベルに応じての比誘電率の減少は、そのセラミック焼結体がサブパーコレーション複合体であることを示す。すなわち、非常に大きい見掛けの比誘電率は、そのサブパーコレーション複合体に由来する。
【0042】
したがって、上記分析結果は、実施例1のセラミック焼結体は、誘電セラミック相(すなわち、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体相)中に分散した半導体セラミック相(すなわち、(Sr0.5Ca0.5)TiO3相)を含み、その半導体セラミック相および誘電セラミック相は共にサブパーコレーション複合体を形成することを示す。
【0043】
実施例2:誘電セラミック相としてのTiO2・ZrO2固溶体および半導体セラミック相としてのSrTiO3・CaTiO3固溶体を含むセラミック焼結体
図7は、実施例2の工程系統図を示す。0.11モルの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.046モルの炭酸カルシウム(CaCO3)、および0.154モルのTiO2(ルチル)をエタノール中でビーズミル粉砕機(直径0.1mmの酸化ジルコニウムビーズ)により混合した。混合後、混合した粉末を窒素ガス流中で乾燥させた。得られた混合物を乾式粉砕し、5時間に亘りN2+H2(95%+5%)ガス流中において1,100℃でか焼して、黒色の半導体(Sr0.7Ca0.3)TiO3粉末を得た。その乾式粉砕した粉末に0.7モルの酸化ジルコニウム(ZrO2)および0.3モルの酸化チタン(TiO2)(ルチル)を添加し、ビーズミル粉砕機により再び混合した。
【0044】
このように形成された100質量部の粉末を、20%のMEKおよび80%のBCA(v/v)を含有する溶媒中で混練し、次に、15質量部のエチルセルロース、0.3質量部のCaSiO3、0.1質量部のGeO2および0.05質量部のAl23と混合して、スラリーを形成した。そのスラリーを、被覆装置を使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)担体テープ上に被覆して、未焼成シートを形成した。その未焼成シートを打ち抜いて、複数のペレットを形成した。それらのペレットを0.015気圧(約1.5MPa)超の酸素分圧および450℃の温度で60分に亘り加熱して、結合剤を除去した。次いで、そのペレットを、N2を含有する雰囲気下で30分間に亘り1300℃の温度で焼結して、セラミック焼結体を形成した。上記条件の理論パーコレーション閾値は約28.95%であり、そのセラミック焼結体中の半導体セラミック相(SrTiO3・CaTiO3)の体積分率は約27.3%である。そのセラミック焼結体中の半導体セラミック粒子および誘電セラミック粒子の均一な混合状態を確認するために、誘電特性の測定前に、試料を、空気中において、それぞれ、800℃、900℃、および1000℃で30分間に亘り再酸化した。このようにして得られた焼結体を、両面から100マイクロメートルの深さまで研磨して、誘電特性の測定のためにAu電極を蒸着した。
【0045】
図8Aは、実施例2のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す。この画像のコントラスト差は、いくつかのセラミック相を示す。さらに、STEM−EDX化学分析(図8Bから8E)は、第1のセラミック相(Sr・Ca・Ti)、第2のセラミック相(Ti・Zr)、および第3のセラミック相(Ca・Zr・Ti)の存在を実証する。
【0046】
図9Aは、第1のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSr、CaおよびTiを示す)を示す。その結果は、第1のセラミック相が(212)(Sr0.7Ca0.3)TiO3であることを示す。図9Bは、第2のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるTiおよびZrを示す)を示す。その結果は、第2のセラミック相が(311)TiO2(ルチル)であり、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体として推定されることを示す。図9Cは、第3のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるCa、ZrおよびTiを示す)を示す。図9Dに示された(150)CaZrTi27(ジルコノライト)のシミュレーション結果と比べると、第3のセラミック相は(150)CaZrTi27(ジルコノライト)であると考えられる。
【0047】
図10は、実施例2のセラミック焼結体のX線回折(XRD)を示す。それらのピークも、セラミック焼結体中の第1のセラミック相(すなわち、(Sr0.7Ca0.3)TiO3相)、第2のセラミック相(すなわち、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体相)、および第3のセラミック相(すなわち、CaZrTi27相)の存在を示す。
【0048】
図11A図11B、および図11Cは、いくつかの異なる再酸化条件下での実施例2のセラミック焼結体の比誘電率、誘電損失、および抵抗率を示す。比誘電率および誘電損失の減少、並びに抵抗率の増加は、(Sr0.7Ca0.3)TiO3半導体相の再酸化の増加を示唆する。得られたセラミック焼結体(図11Aから11Cに「焼結されたまま」と示されている)は、(Sr0.7Ca0.3)TiO3、CaZrTi27、およびTiO2・ZrO2のものよりも著しく大きい比誘電率を有し、その比誘電率は、再酸化温度の上昇に対応して減少する。半導体セラミック相((Sr0.7Ca0.3)TiO3)の酸化レベルに応じての比誘電率の減少は、そのセラミック焼結体がサブパーコレーション複合体であることを示す。すなわち、非常に大きい見掛けの比誘電率は、そのサブパーコレーション複合体に由来する。
【0049】
したがって、上記分析結果は、実施例2のセラミック焼結体は、誘電セラミック相(すなわち、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体相およびCaZrTi27相)中に分散した半導体セラミック相(すなわち、(Sr0.7Ca0.3)TiO3相)を含み、その半導体セラミック相および誘電セラミック相は共にサブパーコレーション複合体を形成することを示す。
【0050】
実施例3:誘電セラミック相としてのTiO2・ZrO2固溶体および半導体セラミック相としてのSrTiO3を含むセラミック焼結体
図12は、実施例3の工程系統図を示す。0.25モルの炭酸ストロンチウム(SrCO3)および0.25モルのTiO2(アナターゼ)をエタノール中でビーズミル粉砕機(直径0.1mmの酸化ジルコニウムビーズ)により混合した。混合後、混合した粉末を窒素ガス流中で乾燥させた。得られた混合物を乾式粉砕し、5時間に亘りN2+H2(95%+5%)ガス流中において1,000℃でか焼して、黒色の半導体SrTiO3粉末を得た。その乾式粉砕した粉末に0.5モルの酸化ジルコニウム(ZrO2)および0.5モルの酸化チタン(TiO2)(アナターゼ)を添加し、ビーズミル粉砕機により再び混合した。
【0051】
このように形成された100質量部の粉末を、35%のトルエンおよび65%のMEK(v/v)を含有する溶媒中で混練し、次に、15質量部のポリアクリレート、0.3質量部のSrSiO3、0.1質量部のGeO2および0.1質量部のMnO2と混合して、スラリーを形成した。そのスラリーを、被覆装置を使用して、PET担体テープ上に被覆して、未焼成シートを形成した。その未焼成シートを打ち抜いて、複数のペレットを形成した。それらのペレットを0.015気圧(約1.5MPa)超の酸素分圧および450℃の温度で60分に亘り加熱して、有機結合剤を除去した。次いで、そのペレットを、N2を含有する雰囲気下で30分間に亘り1300℃の温度で焼結して、セラミック焼結体を形成した。上記条件の理論パーコレーション閾値は約28.95%であり、そのセラミック焼結体中の半導体セラミック相(SrTiO3)の体積分率は約27.8%である。そのセラミック焼結体中の半導体セラミック粒子および誘電セラミック粒子の均一な混合状態を確認するために、誘電特性の測定前に、試料を、空気中において、それぞれ、800℃、900℃、および1000℃で30分間に亘り再酸化した。このようにして得られた焼結体を、両面から100マイクロメートルの深さまで研磨して、誘電特性の測定のためにAu電極を蒸着した。
【0052】
図13Aは、実施例3のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す。この画像のコントラスト差は、いくつかのセラミック相を示す。さらに、STEM−EDX化学分析(図13Bから13D)は、第1のセラミック相(Sr・Ti)および第2のセラミック相(Ti・Zr)の存在を実証する。
【0053】
図14Aは、第1のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSrおよびTiを示す)を示す。その結果は、第1のセラミック相が(112)SrTiO3であることを示す。図14Bは、第2のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるTiおよびZrを示す)を示す。その結果は、第2のセラミック相が(101)TiO2(ルチル)であり、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体として推定されることを示す。
【0054】
図15は、実施例3のセラミック焼結体のX線回折(XRD)を示す。それらのピークも、第1のセラミック相(すなわち、SrTiO3相)および第2のセラミック相(すなわち、ルチル構造TiO2・ZrO2固溶体相)の存在を示す。
【0055】
図16A図16B、および図16Cは、いくつかの異なる再酸化条件下での実施例3のセラミック焼結体の比誘電率、誘電損失、および抵抗率を示す。比誘電率および誘電損失の減少、並びに抵抗率の増加は、SrTiO3半導体相の再酸化の増加を示唆する。得られたセラミック焼結体(図16Aから16Cに「焼結されたまま」と示されている)は、SrTiO3およびTiO2・ZrO2のものよりも著しく大きい比誘電率を有し、その比誘電率は、再酸化温度の上昇に対応して減少する。半導体セラミック相(SrTiO3)の酸化レベルに応じての比誘電率の減少は、そのセラミック焼結体がサブパーコレーション複合体であることを示す。すなわち、非常に大きい見掛けの比誘電率は、そのサブパーコレーション複合体に由来する。
【0056】
実施例4:誘電セラミック相としてのCaZrTi27および半導体セラミック相としてのSrTiO3を含むセラミック焼結体
図17は、実施例4の工程系統図を示す。0.56モルの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.56モルのTiO2(アナターゼ)、および0.015モルのY23をエタノール中でビーズミル粉砕機(直径0.1mmの酸化ジルコニウムビーズ)により混合した。混合後、混合した粉末を窒素ガス流中で乾燥させた。得られた混合物を乾式粉砕し、5時間に亘りN2+H2(95%+5%)ガス流中において1,000℃でか焼して、黒色の半導体SrTiO3粉末を得た。その乾式粉砕した粉末に1.0モルのジルコノライト(CaZrTi27)を添加し、ビーズミル粉砕機により再び混合した。
【0057】
このように形成された100質量部の粉末を、トルエンおよびMEK溶媒の混合物中で混練し、次に、15質量部のエチルセルロース結合剤、0.3質量部のSrSiO3、0.1質量部のGeO2および0.1質量部のMnO2と混合して、スラリーを形成した。そのスラリーを、被覆装置を使用して、PET担体テープ上に被覆して、未焼成シートを形成した。その未焼成シートを打ち抜いて、複数のペレットを形成した。それらのペレットを0.015気圧(約1.5MPa)超の酸素分圧および550℃の温度で30分に亘り加熱して、有機結合剤を除去した。次いで、そのペレットを、N2を含有する雰囲気下で30分間に亘り1300℃の温度で焼結して、セラミック焼結体を形成した。上記条件の理論パーコレーション閾値は約28.95%であり、そのセラミック焼結体中の半導体セラミック相(SrTiO3)の体積分率は約28%である。そのセラミック焼結体中の半導体セラミック粒子および誘電セラミック粒子の均一な混合状態を確認するために、誘電特性の測定前に、試料を、空気中において、それぞれ、800℃、900℃、および1000℃で30分間に亘り再酸化した。このようにして得られた焼結体を、両面から100マイクロメートルの深さまで研磨して、誘電特性の測定のためにAu電極を蒸着した。
【0058】
図18Aは、実施例4のセラミック焼結体の高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す。この画像のコントラスト差は、いくつかのセラミック相を示す。さらに、STEM−EDX化学分析(図18Bから18E)は、第1のセラミック相(Sr・Ti)および第2のセラミック相(Ca・Zr・Ti)の存在を実証する。
【0059】
図19Aは、第1のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるSrおよびTiを示す)を示す。その結果は、第1のセラミック相が(102)SrTiO3であることを示す。図19Bは、第2のセラミック相から得た制限視野電子回折像(SAED)(粒子はSTEM−EDX化学分析におけるCa、TiおよびZrを示す)を示す。その結果は、第2のセラミック相が(011)CaZrTi27(ジルコノライト)であることを示す。図19Cに示された(011)CaZrTi27(ジルコノライト)のシミュレーション結果と比べると、第3のセラミック相は(011)CaZrTi27(ジルコノライト)であると考えられる。
【0060】
図20は、実施例4のセラミック焼結体のX線回折(XRD)を示す。それらのピークも、第1のセラミック相(すなわち、SrTiO3相)および第2のセラミック相(すなわち、CaZrTi27(ジルコノライト)相)の存在を示す。
【0061】
図21A図21B、および図21Cは、いくつかの異なる再酸化条件下での実施例4のセラミック焼結体の比誘電率、誘電損失、および抵抗率を示す。比誘電率および誘電損失の減少、並びに抵抗率の増加は、SrTiO3半導体相の再酸化の増加を示唆する。得られたセラミック焼結体(図21Aから21Cに「焼結されたまま」と示されている)は、SrTiO3およびCaZrTi27のものよりも著しく大きい比誘電率を有し、その比誘電率は、再酸化温度の上昇に対応して減少する。半導体セラミック相(SrTiO3)の酸化レベルに応じての比誘電率の減少は、そのセラミック焼結体がサブパーコレーション複合体であることを示す。すなわち、非常に大きい見掛けの比誘電率は、そのサブパーコレーション複合体に由来する。
【0062】
本開示を、その特定の実施の形態に関して記載し、説明してきたが、これらの記載および説明は制限するものではない。付随の特許請求の範囲により定義されたような本開示の真の精神および範囲から逸脱せずに、様々な変更を行い、同等物を代用してもよいことを当業者は理解すべきである。説明図は、必ずしも、一定の縮尺で描かれていないであろう。製造過程および許容誤差のために、本開示と実際の装置における技術解釈の間には違いがあるかもしれない。具体的に説明されていない本開示の他の実施の形態があるであろう。明細書および図面は、限定的ではなく、むしろ説明的であると解釈すべきである。本開示の目的、精神および範囲に、特定の状況、材料、物質の組成、方法、または過程を適用するために、改変を行ってもよい。そのような改変の全ては、付随の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されている。ここに開示された方法は、特定の順序で行われる特定の操作に関して記載されているが、これらの操作は、本開示の教示から逸脱せずに、同等の方法を形成するために、組み合わせても、細かく分けても、または並べ替えてもよいことが理解されよう。したがって、この中に具体的に示されていない限り、それらの操作の順序および組分けは、本開示の制限ではない。
【符号の説明】
【0063】
11 半導体セラミック相
12 誘電セラミック相
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19A
図19B
図19C
図20
図21A
図21B
図21C