【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月2日、日産自動車株式会社が、日産販売会社の日本国内の全販売店において、岡禎一郎、平野弘幸、住吉三樹夫、及び高橋真が発明したセンサを搭載した電気自動車を販売した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源端子、接地端子及び所望の出力信号が出力される出力端子を有し、前記出力信号の特性を調整可能な物理量検出素子と、少なくとも第1の端子及び第2の端子を有するコンデンサとが実装され、前記電源端子及び前記第2の端子のいずれか一方にジャンパー線の一端側が導通され、他方に前記ジャンパー線の他端側が導通されておらず、前記接地端子と前記第1の端子とが導通されている回路基板を準備する準備工程と、
前記出力信号の特性を調整する調整工程と、
前記出力信号の特性を調整した後、前記電源端子及び前記第2の端子の前記他方に前記ジャンパー線の他端側を導通させることで、前記ジャンパー線を介して前記第2の端子と前記電源端子とを電気的に接続させる接続工程と
を備えることを特徴とするセンサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホールIC等の磁気検出素子を用いた電流センサにおいては、磁性体コアの透磁率や、磁気回路(例えば磁性体コア等)の位置や寸法等にバラツキが生じるのは避けがたい。そのため、予め出力信号の特性を調整したホールIC等の磁気検出素子を用いて電流センサを組み上げたとしても、電流センサを組み上げた後における磁気検出素子からの出力信号の特性が、所望の誤差範囲内に入らないことが多い。よって、電流センサの組み上げ後においても所望の出力信号が得られるようにするためには、電流センサを構成する各部品をある程度組み上げた中間部品(「半製品」という場合もある。)において、出力信号の特性を調整するのが望ましい。
【0005】
ところで、各種のセンサには、外的要因により電源電圧が瞬間的に変化した場合であっても安定的に動作させるために、電源端子と接地端子との間に大容量のコンデンサ(キャパシタ)が設けられる場合がある。一方、ホールICを用いた電流センサの出力信号の特性を調整する場合、上記調整用パラメータとして書き込み信号(プログラミング信号)やプログラミング時の同期信号等がホールICの電源端子から入力されることがある。この場合に、コンデンサが電源端子と導通された状態で上記書き込み信号や同期信号等が電源端子から入力されると、これらの信号波形がコンデンサの影響で変形してしまい、出力信号の特性を調整することが困難となるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、コンデンサに影響されることなく、出力信号の特性を安定的に調整することができるセンサ中間部品、安定した特性の信号を出力可能なセンサ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、電源端子、接地端子及び所望の出力信号が出力される出力端子を有し、前記出力信号の特性を調整可能な物理量検出素子と、少なくとも第1の端子及び第2の端子を有する大容量のコンデンサと、前記電源端子及び前記第2の端子のいずれか一方に一端側が導通されているが他方に他端側が導通されていないジャンパー線と、を備え、前記第1の端子は、前記接地端子に導通されており、前記電源端子と前記第2の端子とが、前記ジャンパー線を介して電気的に接続可能に構成されているセンサ中間部品を提供する。
【0008】
上記センサ中間部品は、第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する回路基板をさらに備え、前記物理量検出素子及び前記コンデンサが、前記回路基板の前記第1面側に配置されており、前記回路基板には、当該回路基板の厚さ方向に貫通する第1の貫通孔と第2の貫通孔とが所定の間隔をあけて形成されており、前記第1面側における前記第1の貫通孔の開口周縁に、前記電源端子及び前記第2の端子の一方に導通可能な第1パッドが配置され、前記第2面側における前記第2の貫通孔の開口周縁に、前記電源端子及び前記第2の端子の他方に導通可能な第2パッドが配置されており、略コの字状の前記ジャンパー線の一端部が前記第1の貫通孔に挿通され、前記ジャンパー線の一端側が前記第1面側において前記第1パッドに電気的に接続されており、前記ジャンパー線の他端部が前記第2の貫通孔に挿通されており、前記ジャンパー線の他端側は前記第2面側において前記第2パッドに電気的に接続されていないことが好ましい。
【0009】
上記センサ中間部品において、前記第2パッドは、前記第2面上における前記第2の貫通孔の開口周縁から径方向に離間した位置に設けられているのが好ましく、前記回路基板を保持する筐体をさらに備え、前記筐体は、第1筐体及び当該第1筐体の開口を覆う第2筐体を有し、前記回路基板が前記第1筐体に保持されたときに少なくとも前記第2パッドが前記第1筐体の開口の近傍又は当該開口から突出した位置に存在するように、前記第2の貫通孔が前記回路基板に形成されているのが好ましく、前記コンデンサは、1μF以上の容量を有するのが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記センサ中間部品の前記電源端子と前記第2の端子とが、前記ジャンパー線を介して電気的に接続されているセンサを提供する。
【0011】
また、本発明は、電源端子、接地端子及び所望の出力信号が出力される出力端子を有し、前記出力信号の特性を調整可能な物理量検出素子と、少なくとも第1の端子及び第2の端子を有するコンデンサとが実装され、前記電源端子及び前記第2の端子のいずれか一方にジャンパー線の一端側が導通され、他方に前記ジャンパー線の他端側が導通されておらず、前記接地端子と前記第1の端子とが導通されている回路基板を準備する準備工程と、前記出力信号の特性を調整する調整工程と、前記出力信号の特性を調整した後、前記電源端子及び前記第2の端子の前記他方に前記ジャンパー線の他端側を導通させることで、前記ジャンパー線を介して前記第2の端子と前記電源端子とを電気的に接続させる接続工程とを備えるセンサの製造方法を提供する。なお、物理量検出素子により検出される物理量には、例えば磁場強度や磁束密度、加速度、角速度、光の強さ(光子数、光パワー、光電効果によって発生する電流の電流値から換算され得る入射光強度等)、超音波、圧力(値)等が含まれる。
【0012】
上記センサの製造方法において、前記回路基板は、第1面及び当該第1面に対向する第2面を有し、前記回路基板には、厚さ方向に貫通する第1の貫通孔と第2の貫通孔とが所定の間隔をあけて形成されており、前記電源端子及び前記第2の端子のいずれか一方に導通する第1パッドが、前記第1面側における前記第1の貫通孔の開口周縁に設けられ、他方に導通する第2パッドが、前記第2面側における前記第2の貫通孔の開口周縁に設けられており、前記第1の貫通孔には、略コの字状の前記ジャンパー線の一端部が挿通され、前記第1パッドと前記ジャンパー線の前記一端側とが電気的に接続されており、前記第2の貫通孔には、前記ジャンパー線の他端部が挿通され、前記第2パッドと前記ジャンパー線の他端側とが電気的に接続されていないことが好ましい。
【0013】
また、上記センサの製造方法の前記接続工程において、前記第2パッドと前記ジャンパー線の前記他端側とが電気的に接続されるのが好ましく、前記第2パッドは、前記第2面上における前記第2の貫通孔の開口周縁から径方向に離間した位置に設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンデンサに影響されることなく、出力信号の特性を安定的に調整することができるセンサ中間部品、安定した特性の信号を出力可能なセンサ、及びその製造方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部材の寸法、部材間の大きさの比等は、必ずしも現実のものと同一とは限らず、また、同じ部材等を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場合もある。また、本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
【0017】
[センサ中間部品の概略構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ中間部品の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係るセンサ中間部品の回路構成を概略的に示す回路図であり、
図3Aは、本発明の一実施形態における回路基板の第1面側を示す概略平面図であり、
図3Bは、
図3Aに示される回路基板の第1面に対向する第2面側を示す概略平面図であり、
図3Cは、
図3Aに示される回路基板の概略構成を概略的に示す切断端面図であり、
図3Dは、
図3Bに示される回路基板の破線で囲まれた部分の拡大図であり、
図4は、
図1に示されるセンサ中間部品の側面図である。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態に係るセンサ中間部品は、例えばハイブリッド電気自動車等のバッテリーの入出力電流等の制御のために、バッテリーに接続されたバスバーBB(破線部参照)に流れる入出力電流を計測する電流センサの中間部品1である。センサ中間部品1は、後述する磁気検出素子11やコンデンサ12が搭載される回路基板10、当該回路基板10を保持する略直方体形状の筐体14、所定の空隙を有する略C字状の磁性体コア15及びコネクタ16を備える。
【0019】
筐体14は、回路基板10が収容される第1筐体14
B、及び第1筐体14
Bの開口を被覆可能な第2筐体14
Cを有する。第1筐体14
B及び第2筐体14
Cのそれぞれには、平板状のバスバーBBが挿通される挿通孔14
BH、14
CHが互いに位置を合わせて連続するようにして形成されている。磁性体コア15は、挿通孔14
BHを取り囲むように第1筐体14
B内に収容されている(
図1参照)。なお、
図1に示されるように、挿通孔14
BH、14
CHは、バスバーBBの幅(短手方向の長さ)及び厚さに対応し、バスバーBBが挿通可能な孔形状を有する。本実施形態におけるセンサ中間部品1に備えられるバスバーBBの断面形状は、略長方形状であるが、これに限定されるものではなく、例えば略円形状等であってもよく、バスバーBBの断面積も特に限定されるものではない。また、挿通孔14
BH、14
CHの孔形状は、挿通されるバスバーBBの形状に応じて適宜設定され得る。
【0020】
回路基板10は第1面10
F及び第1面10
Fに対向する第2面10
Rを有し、第1面10
F側に、磁気検出素子11、及びコンデンサ12(
図1において不図示)が配置されている。回路基板10は、第1面10
Fに配置されている磁気検出素子11が磁性体コア15の空隙に位置するように、第1筐体14
B内に取り付けられている。コネクタ16は、回路基板10の第2面10
R側に設けられ、螺子18により回路基板10に固定されている。
【0021】
回路基板10には、後述するように、第1の貫通孔10
H1及び第2の貫通孔10
H2が形成され、第1の貫通孔10
H1及び第2の貫通孔10
H2に、略コの字状のジャンパー線13の一端部13
A及び他端部13
Bがそれぞれ挿通されている。後述するように、ジャンパー線13の一端部13
A側に位置する接続部はコンデンサ12に導通されているが、他端部13
B側に位置する接続部は磁気検出素子11の電源端子11
VINに導通されていない。
【0022】
磁気検出素子11は、バスバーBBを流れる入出力電流により発生する磁界に対応して出力信号(出力電圧)を出力するホール素子等の磁気センサと、信号処理ICとを含む。信号処理ICには、出力信号の特性を調整するための調整用パラメータ等を記憶する記憶部としてEEPROM等が内蔵されている。磁気検出素子11としては、例えば、プログラマブルホールICのようなホール素子と信号処理ICとが一体化されたものや、MR素子(AMR素子、GMR素子、TMR素子)と信号処理ICとがハイブリッド化されたもの等が用いられ得る。
【0023】
本実施形態におけるセンサ中間部品1は、大容量のコンデンサ12を有する。本実施形態における「大容量」とは、例えば電子回路に流れる直流電流に混入することで電圧を変動させてICの誤動作等をもたらすノイズ(交流電流の一種とみなすことができる)等を除去したり、遮断したりする等の目的で回路基板上に配置されるバイパスコンデンサ等のような、一般的に静電容量が0.1μF以下であるコンデンサと比較した場合に、そのようなコンデンサの容量より大きい容量であることを意味する。コンデンサ12の静電容量は、電源系統のインピーダンスや、電源電圧の低下時間の程度に応じて適宜設定することができるところ、本実施形態においては、1μF以上であるのが好ましく、1〜100μFであるのがより好ましい。また、本実施形態におけるセンサ中間部品1から作製される電流センサにおいては、近年、小型化が要求されることが多いため、筐体14(回路基板10)への搭載スペースの制約の観点から、コンデンサ12として、チップ型コンデンサを用いるのが好ましい。
【0024】
ジャンパー線13は、一端部13
A側におけるコンデンサ12に導通される部分及び他端部13
B側における磁気検出素子11の電源端子11
VINに導通される部分が露出し、それ以外の部分が絶縁体で被覆されているものであってもよいし、全体が露出している(絶縁体で被覆されていない)ものであってもよい。
【0025】
コネクタ16は、接続端子16
Tを有し、回路基板10上の配線(不図示)を介して接続端子16
Tと磁気検出素子11の後述する各端子とが接続されている。本実施形態におけるセンサ中間部品1において磁気検出素子11の出力信号の特性を調整する際に、コネクタ16にプログラミング装置(図示省略)が接続されることで、当該コネクタ16を介して磁気検出素子11とプログラミング装置とが接続され、後述する電源端子11
VINから出力信号の特性を調整するための書き込み信号(プログラミング信号)又は同期信号が磁気検出素子11に入力され得る。コネクタ16は、センサ中間部品1においては書き込み信号又は同期信号の入力部として機能し得るが、電流センサにおいては磁気検出素子11から出力される出力信号の出力部として機能し得る。
【0026】
[センサ中間部品の回路構成]
本実施形態におけるセンサ中間部品1の回路構成について
図2を参照して説明する。磁気検出素子11は、電源端子11
VIN、接地端子11
GND及び出力端子11
VOTを有する。コンデンサ12は、第1の端子12
A及び第2の端子12
Bを有する。ジャンパー線13は、一端部13
A及び他端部13
Bを有する。
図2に示されるように、コンデンサ12の第1の端子12
Aが接地端子11
GNDに導通され、ジャンパー線13の一端部13
A側に位置する接続部が電源端子11
VINに導通されているが、ジャンパー線13の他端部13
B側に位置する接続部はコンデンサ12の第2の端子12
Bに導通されていない。すなわち、センサ中間部品1の回路において、コンデンサ12は電源端子11
VINと導通されていない。本実施形態におけるセンサ中間部品1は、電源端子11
VINと第2の端子12
Bとが、ジャンパー線13を介して電気的に接続可能に構成されている。
【0027】
本実施形態においては、上記の通り、コンデンサ12が電源端子11
VINに導通されていない。これにより、電源端子11
VINから入力される書き込み信号又は同期信号の波形がコンデンサ12の影響により変形するのを防止することができるため、磁気検出素子11から出力される出力信号の特性をセンサ中間部品1において調整することができる。
【0028】
[ジャンパー線の接続状態]
本実施形態におけるジャンパー線13の接続状態の詳細について、
図3A〜
図3Dを参照して説明する。回路基板10には、その厚さ方向に貫通する第1の貫通孔10
H1と第2の貫通孔10
H2とが所定の間隔をあけて形成されている。また、回路基板10の第1面10
F側における第1の貫通孔10
H1の開口周縁に、電源端子11
VINに導通する第1パッド10
P1が配置され、回路基板10の第2面10
R側における第2の貫通孔10
H2の開口周縁に、第2の端子12
Bに導通する第2パッド10
P2が配置されている。
【0029】
ジャンパー線13の一端部13
Aが第1の貫通孔10
H1に挿通され、ジャンパー線13の一端部13
A側に位置する接続部が回路基板10の第1面10
F側において第1パッド10
P1に半田SLDにより電気的に接続されている(
図3A及び
図3C参照)。一方で、ジャンパー線13の他端部13
Bが第2の貫通孔10
H2に挿通されているが、ジャンパー線13の他端部13
B側に位置する接続部は回路基板10の第2面10
R側において第2パッド10
P2に電気的に接続されていない(
図3B及び
図3C参照)。本実施形態におけるセンサ中間部品1は、電源端子11
VINと第2の端子12
Bとが、ジャンパー線13を介して電気的に接続可能に構成され得る。なお、ジャンパー線13の一端部13
A側を第1パッド10
P1に電気的に接続する方法としては、半田付けに限定されるものではなく、その他公知の方法を用いることができる。
【0030】
本実施形態において、
図3C及び
図3Dに示されるように、第2パッド10
P2が第2の貫通孔10
H2の開口周縁から径方向に離間した位置に設けられている。これにより、第2の貫通孔10
H2にジャンパー線13の他端部13
Bが挿通された状態において、当該他端部13
B側に位置する接続部が第2パッド10
P2に短絡してしまうのを防止することができる。なお、第2の貫通孔10
H2の開口周縁と第2パッド10
P2との径方向の間隔は、第2の貫通孔10
H2に挿通されたジャンパー線13の他端部13
B側に位置する接続部を第2パッド10
P2に短絡させ得ない程度であり、かつ磁気検出素子11の出力信号の特性を調整した後に、当該他端部13
B側に位置する接続部と第2パッド10
P2とを半田付け等により容易に接続させ得る程度であればよい。
【0031】
また、
図4の側面図で示されるように、本実施形態における回路基板10を第1筐体14
Bに収容したときに第1パッド10
P1(第1の貫通孔10
H1)及び第2パッド10
P2(第2の貫通孔10
H2)が第1筐体14
Bの開口から突出した位置に存在するように、第1の貫通孔10
H1及び第2の貫通孔10
H2が回路基板10に形成されている。これにより、第2パッド10
P2が第1筐体14
Bの開口から突出した位置に存在することになるため、ジャンパー線13の他端部13
Bをその他端側において第2パッド10
P2に半田等により接続し易くすることができる。なお、上記構成に限定されるものではなく、ジャンパー線13の他端部13
Bを第2パッド10
P2に半田等により接続し易くすることができる限りにおいて、例えば回路基板10が第1筐体14
Bに収容されたときに、第2パッド10
P2(第2の貫通孔10
H2)のみが第1筐体14
Bの開口から突出した状態で位置するように、第2の貫通孔10
H2が回路基板10に形成されていてもよい。また、回路基板10が第1筐体14
Bに収容されたときに少なくとも第2パッド10
P2(第2の貫通孔10
H2)が第1筐体14
Bの開口の近傍に位置するように、第2の貫通孔10
H2が回路基板10に形成されていてもよい。
【0032】
[センサ]
図5は、本発明の一実施形態に係るセンサの回路構成を概略的に示す回路図であり、
図6は、本発明の一実施形態に係るセンサの回路基板を概略的に示す断面図である。本実施形態に係るセンサ1’は、上述したセンサ中間部品1の電源端子11
VINとコンデンサ12の第2の端子12
Bとが、ジャンパー線13を介して電気的に接続されることにより構成され得る(
図5参照)。具体的には、第2の貫通孔10
H2にジャンパー線13の他端部13
Bが挿通された状態で、その他端部13
B側に位置する接続部が半田SLDにより第2パッド10
P2に電気的に接続され、それにより、センサ中間部品1の電源端子11
VINとコンデンサ12の第2の端子12
Bとが、ジャンパー線13を介して電気的に接続されている。上述したように、センサ中間部品1の状態において、ジャンパー線13の一端部13
A側に位置する接続部が電源端子11
VINに導通されているものの、ジャンパー線13の他端部13
B側に位置する接続部はコンデンサ12の第2の端子12
Bに導通されていない。また、後述するように、その状態で磁気検出素子11の出力信号の特性が調整された後、コンデンサ12の第2の端子12
Bと電源端子11
VINとがジャンパー線13を介して電気的に接続されることで、本実施形態におけるセンサ1’として構成され得る。そのため、本実施形態におけるセンサ1’によれば、安定した特性の信号を出力することができる。
【0033】
[センサの製造方法]
図7は、本発明の一実施形態に係るセンサの製造方法の工程を示すフローチャートである。
図8Aは、
図7に示される接続工程において、ジャンパー線の両端部が回路基板の各貫通孔に挿通される前の状態を概略的に示す断面図であり、
図8Bは、
図7に示される接続工程において、ジャンパー線の両端部が回路基板の各貫通孔に挿通され、ジャンパー線の一端側が回路基板の第1面側で半田付けされた後の状態を概略的に示す切断端面図であり、
図8Cは、
図7に示される接続工程において、ジャンパー線の他端側が回路基板の第2面側で半田付けされた状態を概略的に示す切断端面図である。
図8Dは、本発明の他の実施形態に係るジャンパー線による接続方法を概略的に示す切断端面図である。
【0034】
[回路基板準備工程]
まず、例えば紙フェノールやガラス・エポキシ等で構成された回路基板10を準備する(ステップS1)。回路基板10の第1面10
F側には、出力信号の特性を調整可能な磁気検出素子11と、コンデンサ12とが実装されている。上述したように、磁気検出素子11は、電源端子11
VIN、接地端子11
GND及び出力端子11
VOTを有し、コンデンサ12は第1の端子12
A及び第2の端子12
Bを有する(
図2参照)。コンデンサ12の第1端子12
Aは接地端子11
GNDに導通されている。回路基板10には、略コの字状のジャンパー線13の一端部13
Aを挿通可能な、厚さ方向に貫通する第1の貫通孔10
H1と、他端部13
Bを挿通可能な、厚さ方向に貫通する第2の貫通孔10
H2とが所定の間隔をあけて形成されている(
図8A参照)。回路基板10の第1面10
F上における第1の貫通孔10
H1の開口周縁に、電源端子11
VINに導通する第1パッド10
P1が設けられており、第2面10
R上における第2の貫通孔10
H2の開口周縁に、第2の端子12
Bに導通する第2パッド10
P2が設けられている。第2パッド10
P2は、第2面10
R上における第2の貫通孔10
H2の開口周縁から径方向に離間した位置に設けられている。これにより、第2の貫通孔10
H2にジャンパー線13の他端部13
Bが挿通された状態において、当該他端部13
B側に位置する接続部が第2パッド10
P2に短絡してしまうのを防止することができる。
【0035】
ジャンパー線13の一端部13
Aが第1の貫通孔10
H1に挿通され、他端部13
Bが第2の貫通孔10
H2に挿通された後、ジャンパー線13の一端部13
A側に位置する接続部が第1パッド10
P1に半田付けにより電気的に接続される(
図8B参照)。このとき、ジャンパー線13の他端部13
B側に位置する接続部は第2パッド10
P2と電気的に接続されない(
図8B参照)。ジャンパー線13の一端部13
A側に位置する接続部を第1パッド10
P1に電気的に接続する方法としては、半田付けに限定されるものではなく、その他公知の接続方法が適宜選択され得る。
【0036】
[調整工程]
次に、コネクタ16(
図1参照)を介して磁気検出素子11とプログラミング装置(図示省略)とを接続し、電源端子11
VINから書き込み信号を磁気検出素子11に入力することで、磁気検出素子11の出力信号の特性を調整する(ステップS2)。なお、上記に限定されるものではなく、コネクタ16を介して、電源端子11
VINから同期信号を磁気検出素子11に入力するとともに、出力端子11
VOTから書き込み信号を入力することで、磁気検出素子11の出力信号の特性を調整してもよい。本実施形態においては、上述の通り、出力信号の特性調整時において、コンデンサ12と電源端子11
VINとが電気的に接続されていないことで、コンデンサ12に影響されることなく、出力信号の特性を安定的に調整することができる。
【0037】
[接続工程]
次に、出力信号の特性を調整した後、ジャンパー線13の他端部13
B側に位置する接続部と第2パッド10
P2とを半田付けにより電気的に接続することで(
図8C参照)、コンデンサ12の第2の端子12
Bと電源端子11
VINとを、ジャンパー線13を介して電気的に接続させる(ステップS3)。このとき、上述したように、第2パッド10
P2(第2の貫通孔10
H2)側が筐体14
Bの開口近傍又は当該開口から突出した位置に存在するため、半田付けの作業スペースが確保され接続作業を容易に行うことができる。また、仮に、回路基板準備工程ではなく、本接続工程においてジャンパー線13を回路基板10に固定しようとする場合は、ジャンパー線13の両端部を各貫通孔に挿通した後、ジャンパー線13を手や冶具等で押さえておく必要がある等、作業が煩雑になってしまう。これに対して、本実施形態においては、上述したとおり、回路基板準備工程においてジャンパー線13の両端部が各貫通孔に挿通された後、一端部13
A側に位置する接続部が第1パッド10
P1に半田付けにより電気的に接続されることで、その接続部分においてジャンパー線13が回路基板10に固定される。次いで、調整工程を経た後、本接続工程において、他端部13
B側に位置する接続部と第2パッド10
P2とを半田付けにより電気的に接続するだけでよいため、ジャンパー線13の接続作業が容易になる。本実施形態におけるセンサの製造方法によれば、コンデンサ12に影響されることなく、磁気検出素子11の出力信号の特性を安定的に調整することができる。また、本実施形態におけるセンサの製造方法により製造されたセンサ1’は、ノイズ等により瞬間的に出力電圧が変動しても、安定して動作可能である。
【0038】
なお、上記の略コの字状のジャンパー線13に限定されるものではなく、
図8Dに示されるような棒状のジャンパー線13’を用いて、回路基板10の第1面10
Fにおける貫通孔10
H3の開口周縁に設けられた第1パッド10
P1とジャンパー線13’の一端部側とを電気的に接続した後、磁気検出素子11の出力信号の特性を調整し、その後、第2面10
Rにおける貫通孔10
H3の開口周縁に設けられた第2パッド10
P2とジャンパー線13’の他端部側とを半田付けにより電気的に接続してもよい。この場合、棒状のジャンパー線13による接続箇所は、回路基板10とジャンパー線13との間の熱膨張率の違いにより、使用環境が高温や低温に晒された際、上記接続箇所における半田付けされた部分に熱応力が集中しやすくなる。これに対して、上述した略コの字状のジャンパー線13によれば、例えば使用環境が高温に晒されることで回路基板10が膨張し、それによって回路基板10が厚み方向に変形してしまうような場合でも、回路基板10の変形に追従するように略コの字状のジャンパー線13が3次元方向(幅方向、高さ方向、奥行き方向)に容易に変形する。ジャンパー線13が所望の3次元方向に変形することにより、半田付けされた部分にかかる熱応力が緩和される。その結果、ジャンパー線13による接続箇所への熱応力の集中が回避され、当該半田付けされた部分の接続信頼性(耐久性)をより向上させることができる。
【0039】
上述した本実施形態に係るセンサの製造方法によれば、磁気検出素子11の出力信号の特性を調整した後に、コンデンサ12を電源端子11
VINに電気的に接続させるため、安定的な特性の信号を出力可能なセンサを、高い歩留まりで製造することができる。
【0040】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0041】
上述した本実施形態においては、磁気検出素子11を用いて、バスバーBB等の導体を流れる入出力電流を計測する電流センサのセンサ中間部品1の回路構成を例として説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態におけるセンサ中間部品1の回路構成は、例えば、磁気検出素子11を用いて、自動車等におけるステアリングホイール等の回転体の回転位置の検出等を行う角度センサの中間部品の回路構成としても使用され得る。また、磁気検出素子11を用いた電流センサ等の中間部品1の回路構成に限定されるものではなく、本実施形態におけるセンサ中間部品1の回路構成は、所定の物理量検出素子を用いて、物体の傾き、物体の有無及び動き、物体までの距離、流体の圧力等を計測・判別するセンサの中間部品の回路構成としても使用され得る。物体の傾き等を計測・判別するセンサに用いられる物理量検出素子として、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を使用した半導体方式(静電容量検出方式、ピエゾ抵抗方式、熱検知方式等)の加速度検出素子や、ジャイロセンサ等の角速度検出素子や、フォトダイオード等の光検出素子や、圧電素子等の超音波検出素子や、種々の圧力検出素子等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態においては、出力信号を調整した後、ジャンパー線13の他端部13
B側に位置する接続部が第2の貫通孔10
H2の開口周縁に設けられた第2パッド10
P2と電気的に接続されることで、コンデンサ12と磁気検出素子11の電源端子11
VINとが導通される。一方、これに代えて、ジャンパー線13を使用せず、出力信号を調整した後にコンデンサ12を回路基板10に取り付ける方法が考えられ得る。但し、センサ1’を小型にするために、筐体14の容量や回路基板10の実装面積が相対的に小さくなると、搭載スペースの都合上、通常、チップ型のコンデンサが用いられる。しかし、チップ型コンデンサのような比較的小さいサイズのコンデンサを回路基板10に後付けする場合に取り付けミス等が生じ、他回路が搭載されている部位等に微小なサイズのコンデンサが入り込むと、他回路における短絡等の電気的な不良を発生させてしまう。電気的な不良が発生したセンサ中間部品は、製品として使用できなくなり、歩留まりが低下してしまう。この点、本実施形態においては、コンデンサ12が予め取り付けられた回路基板10において、磁気検出素子11の出力信号を調整した後に、ジャンパー線13を介して、コンデンサ12と磁気検出素子11の電源端子11
VINとを導通させることから、チップ型コンデンサのような微小なサイズのコンデンサの取り付けミス等を防止することができる。その結果、歩留まりを向上させることができる。