(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゼオライト系吸着材料であって:少なくとも1つの、LSX型のFAU構造のゼオライトを含み、バリウムおよび/またはカリウムを含み、ならびに前記ゼオライト系吸着材料の外表面積が、窒素吸着により測定して、20m2・g−1から100m2・g−1の間(限界値を含む。)である、ゼオライト系吸着材料。
前記クレーがカオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびにまたあらゆる割合のこれの2つ以上の混合物から選ばれる、請求項8に記載の方法。
請求項1から7のいずれか一項に記載のまたは請求項8および9のいずれかに従って調製した少なくとも1つのゼオライト系吸着材料を使用する、キシレン異性体の気相または液相分離方法。
パラキシレン吸着剤として、請求項1から7のいずれか一項に記載のまたは請求項8および9のいずれかに従って調製したゼオライト系吸着材料を使用して、炭素原子8個を含有する芳香族異性体画分の供給原料からパラキシレンを分離する、請求項11に記載の分離方法。
【背景技術】
【0003】
芳香族炭化水素の混合物中のパラキシレンを選択的に吸着するための、XまたはY型の少なくともフォージャサイト(FAU)ゼオライトを含み、ナトリウムカチオン以外にバリウムイオン、カリウムイオンまたはストロンチウムイオンを単独でまたは混合物として含む、ゼオライト系吸着材料の使用が先行技術から周知である。
【0004】
特許US3558730、US3558732、US3626020およびUS3663638によって、ナトリウムおよびバリウムを主成分とする(US3960774)またはナトリウム、バリウムおよびカリウムを主成分とするアルミノシリケートを含むゼオライト系吸着材料が、C8芳香族画分(炭素原子8個を含有する芳香族炭化水素を含む画分)中に存在するパラキシレンを分離するのに効率的であることが示されている。
【0005】
特許US3878127に記載された吸着材料は、特許US2985589に記載された吸着剤と同様であり、特にC8芳香族画分に適用される、好ましくは模擬向流型の液相法における吸着剤として使用される。
【0006】
文書US6884918は、バリウムまたはバリウムおよびカリウムと交換された、1.15から1.5の間のSi/Al原子比を有するフォージャサイトXを推奨している。文書US6410815は、先行技術に記載されているような、しかしフォージャサイトが低いシリカ含有率を有し、1に近いSi/Al原子比を有するゼオライト系吸着材料(低シリカX(low−silica X)の省略形である、LSXと呼ばれる。)が、1.15から1.5の間のSi/Al原子比を有するゼオライトXを主成分とする吸着材料と比べて、エチルベンゼンが高濃度の供給原料を処理する必要がある場合にとりわけ、この異性体に対するパラキシレンの選択性がより良好であるために、パラキシレンの分離に有利に使用されることを教示している。
【0007】
上に挙げた特許において、ゼオライト系吸着材料は、主としてゼオライト粉末と、20重量%までの不活性バインダーから成る、粉末形態の結晶の形態または凝集体の形態である。
【0008】
FAUゼオライトの合成は通常、シリコアルミネートゲルの核化および結晶化によって行う。この合成により、工業規模での使用が特に困難である(操作中の供給原料の実質的な損失)(一般に粉末形態の)結晶が生じる。ここでこれらの結晶の、細粒、ストランドおよび他の凝集体の形態の凝集形態が好ましく、これらの前記形態は、おそらく、押出、ペレット化、アトマイズ化および当業者に既知の他の凝集技法によって得られる。これらの凝集体は、粉状物質に固有の欠点を有さない。
【0009】
凝集体は、プレートレット、ビーズまたは押出物などの形態で存在するにかかわらず、一般に、(吸着の意味で)有効成分を構成するゼオライト結晶と、凝集バインダーとから成る。この凝集バインダーは、凝集構造において結晶を確実に相互に結合させるものであるが、凝集体が多くの制約、例えば振動、圧力下での高いおよび/または頻繁な圧力変化、移動などを受ける工業使用の間に発生し得る、破断、分裂または破損のリスクを防止または極めて少なくとも最小化するために、前記凝集体に十分な機械的強度も与える必要がある。
【0010】
これらの凝集体の調製は例えば、粉末形態のゼオライト結晶をクレーペーストによって、20重量%から10重量%のバインダーに対しておよそ80重量%から90重量%のゼオライト粉末の割合でペースト化して、続いてビーズ、プレートレットまたは押出物に形成し、高温での熱処理でクレーを焼成してゼオライトを再活性化し、可能な場合は粉状ゼオライトのバインダーによる凝集の前および/または後に、カチオン交換、例えばバリウムとの、および場合によりカリウムとの交換を行うことによって行われる。
【0011】
ゼオライト系凝集体であって、これの凝集体の粒径は、2、3ミリメートルであるか、またはおよそ1ミリメートルでさえあり、凝集バインダーの選択および造粒が規則通りに行われれば、一連の満足な性質、特に多孔性、機械的強度および耐摩耗性を有するゼオライト系凝集体が得られる。しかし、これらの凝集体の吸着性質は、出発活性粉末と比較して、吸着に関して不活性である凝集バインダーが存在するために、明らかに低下する。
【0012】
吸着性能に関して不活性である凝集バインダーのこの欠点を克服するための各種の手段がすでに提案され、この中には、凝集バインダーの全部または少なくとも一部を吸着の観点から活性であるゼオライトに変換することがある。この操作は、例えば「ゼオライト化」という名称で現在、当業者に周知である。この操作をただちに行うために、通常、カオリナイト群に属し、好ましくは一般に500℃から700℃の間の温度にて事前にか焼される、ゼオライト化性バインダーを使用する。
【0013】
特許FR2925366は、LSXゼオライト結晶をカオリン系バインダーで凝集させ、続いて凝集体をアルカリ液に浸漬してバインダーをゼオライト化することによって、1.00≦Si/Al≦1.15であるようなSi/Al原子比を有し、バリウム、場合によりバリウムおよびカリウムで交換されたLSXゼオライト凝集体の製造方法について記載している。ゼオライトのカチオンをバリウムイオン(場合によりカリウムイオン)と交換して活性化した後、このように得た凝集体は、C8芳香族画分に含有されるパラキシレンの吸着の点および機械的強度の点から、同量のLSXゼオライトおよびゼオライト化されていないバインダーから調製した吸着材料と比べて、改善された性質を有する。
【0014】
RuthvenによってPrinciples of Adsorption and Adsorption Processes,John Wiley & Sons,(1984),pages 326 and 407という表題の書籍で指摘されるように、反応混合物から分離される種に有利な高い吸着能力および良好な選択性特性に加えて、吸着材料は、混合物中の種の効率的な分離を行うために、十分な数の理論段を確保するための良好な物質移動性質を有する必要がある。Ruthvenは(前掲書,page 243)、凝集吸着材料の場合、全体的な物質移動が結晶内および結晶間(結晶の間の)拡散抵抗の和に依存することを指摘している。
【0015】
結晶内拡散抵抗は、結晶の直径の二乗に比例し、分離される分子の結晶内拡散率に反比例または比例する。
【0016】
結晶間拡散抵抗(「マクロ細孔抵抗」としても既知)自体は、凝集体の直径の二乗に比例し、凝集体内のマクロ細孔およびメソ細孔(即ち2nmを超える開口を有する細孔)に含有される多孔率に反比例し、この多孔率において分離される分子の拡散率に反比例する。
【0017】
凝集体のサイズが工業用途での吸着材料の使用中の重要なパラメータであるのは、該サイズによって工業ユニット内での供給原料の損失および充填均一性が決定されるためである。凝集体の粒径分布はこのため、狭い必要があり、過剰な供給原料の損失を回避するために、通例、0.40mmから0.65mmの間の数平均径に集中する必要がある。
【0018】
凝集体中のマクロ細孔およびメソ細孔に含有される多孔率(それぞれ結晶間マクロ多孔率およびメソ多孔率)は、物質移動を改善するための細孔形成剤、例えば文書US8283274で推奨されているようなコーンスターチを使用することによって向上され得る。しかし、この多孔率は吸着能力に関与せず、マクロ細孔物質移動の改善は次いで、容積ベース吸着能力の劣化をもたらす。結果として、マクロ細孔物質移動を改善するこの経路は、非常に限定的であることが判明する。
【0019】
移動反応速度の改善を概算するために、RuthvenがPrinciples of Adsorption and Adsorption Processes,前掲書,pages 248−250に記載する段理論を使用することができる。この手法は、有限数の理想的撹拌仮想反応装置(理論段数)によるカラムによる表現に基づいている。同じ高さの理論段は、系の軸分散および物質移動に対する抵抗の直接測定値である。
【0020】
所与のゼオライト系構造、所与のサイズの吸着材料および所与の動作温度では、拡散率が一定であり、物質移動を改善する手段の1つが結晶の直径を縮小することに存する。物質移動全体の増大はこのため、結晶のサイズを縮小することによって得られる。
【0021】
当業者はこのため、物質移動を改善するためにゼオライト結晶の直径を最小化しようとする。
【0022】
特許CN1267185Cはこのため、パラキシレンを分離するための、90%から95%のゼオライトBaXまたはBaXKを含有する吸着材料であって、ゼオライトX結晶のサイズが、物質移動性能を改善するために、0.1μmから0.4μmの間である、吸着材料を請求している。同様に、出願US2009/0326308は、性能がサイズ0.5μm未満のゼオライトX結晶を主成分とする吸着材料を使用することによって改善される、キシレン異性体を分離する方法について記載している。特許FR2925366は、0.1μmから4.0μmの間の数平均径を有するLSXゼオライト結晶を含有する吸着材料について記載している。
【0023】
出願人は、それにもかかわらず、サイズが0.5μm未満であるゼオライト結晶の合成、濾過、取り扱いおよび凝集には、厄介で不経済な工程が含まれ、ゆえに工業化が困難になることを認めている。
【0024】
さらに、サイズが0.5μm未満の結晶を含むこのような吸着材料は、より脆弱であることも判明し、次いで、吸着材料内の結晶相互の結合を補強するために凝集バインダーの含有率を上昇させることが必要となる。しかし、凝集バインダーの含有率を増加させると、吸着材料の高密度化につながり、これによりマクロ細孔拡散抵抗が上昇する。このため、結晶のサイズの縮小による結晶内拡散抵抗の低下にもかかわらず、吸着材料の高密度化によるマクロ細孔拡散抵抗の上昇によって、全体の移動は改善されない。さらに、バインダー含有率の上昇によって、良好な吸着能力を得ることはできない。
【0025】
結果として、工業的に操作が容易であり、前記結晶(または構成結晶性要素)が有利には0.5μmを超えるサイズであり、先行技術で公知の同一の結晶サイズの吸収材料と比べて改善された全体的な物質移動を有し、同時にパラキシレンに対して、これの異性体を基準にして、高い吸着性能および高い吸着選択性を保有する、LSX型のFAUゼオライト結晶から調製した、改善されたゼオライト系吸着材料に対する要求がなお存在する。
【0026】
これらの改善された吸着材料はこのため、キシレン異性体の気相または液相分離に特に好適となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下のテキストでは、別途指摘しない限り、値の範囲の限界値は、この範囲に、とりわけ「の間」および「...から...まで」という表現において含まれる。
【0037】
本発明による吸着材料
このため本発明は、ゼオライト系吸着材料であって:
−少なくとも1つの、LSX型のFAU構造のゼオライトを含み、
−バリウムおよび/またはカリウムを含み、
−これの外表面積が、窒素吸着により測定して、20m
2・g
−1から100m
2・g
−1の間および優先的には20m
2・g
−1から80m
2・g
−1の間およびより優先的には30から80m
2・g
−1の間(限界値を含む。)である、
ゼオライト系吸着材料に関する。
【0038】
一実施形態において、本発明のゼオライト系吸着材料は、1.00から1.50の間、好ましくは1.00から1.40の間(限界値を含む。)、より好ましくは1.00から1.20の間(限界値を含む。)およびさらにより好ましくは1.00から1.10の間(限界値を含む。)のSi/Al原子比を有する。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、ゼオライト系吸着材料のFAU構造のゼオライトは、LSX型のFAU構造のゼオライト(一般に、これのSi/Al原子比=1.00±0.05によって定義される。)であり、これの結晶の数平均径は、0.5μmから20μmの間(限界値を含む。)、好ましくは0.5μmから10μmの間(限界値を含む。)、より優先的には0.8μmから10μmの間(限界値を含む。)、より良好には1μmから10μmの間(限界値を含む。)およびより好ましくは1μmから8μmの間(限界値を含む。)である。
【0040】
本発明のまた別の好ましい実施形態により、結晶は、ミクロ細孔性と併せて、例えばUS7785563に記載されているように、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察によってただちに同定可能である、ナノメートルサイズの内部空洞を有する(メソ細孔性)。
【0041】
本発明のゼオライト系吸着材料の外表面積は、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で300℃から450℃の間の温度にて9時間から16時間の範囲に及ぶ時間にわたって、好ましくは400℃にて10時間にわたって脱気した後、77Kの温度にて窒素吸着等温線からtプロット法によって計算する。凝集前の該吸着材料のFAUゼオライト結晶の外表面積は、同様に測定する。
【0042】
好ましい態様により、酸化バリウム(BaO)として表される、本発明のゼオライト系吸着材料のバリウム(Ba)含有率は、吸着材料の全重量に対して25重量%超、好ましくは28重量%超、非常に好ましくは34重量%超、またより好ましくは37重量%超であり、有利には、酸化バリウム(BaO)として表されるバリウム含有率は、吸着材料の全重量に対して28重量%から42重量%の間および通例37重量%から40重量%の間(限界値を含む。)である。
【0043】
好ましい別の態様により、酸化カリウム(K
2O)として表される、本発明のゼオライト系吸着材料のカリウム(K)含有率は、吸着材料の全重量に対して30重量%未満、好ましくは15重量%未満および好ましくは0重量%から10重量%の間(限界値を含む。)である。
【0044】
また別の好ましい実施形態により、酸化バリウムBaOおよび酸化カリウムK
2O以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオン酸化物の全含有率として表される、バリウムおよびカリウム以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンの全含有率は、吸着材料の全質量に対して0から5%の間(限界値を含む。)である。
【0045】
有利には、本発明によるゼオライト系吸着材料は、0.15cm
3・g
−1から0.5cm
3・g
−1の間、好ましくは0.20cm
3・g
−1から0.40cm
3・g
−1の間のおよび非常に好ましくは0.20cm
3・g
−1から0.35cm
3・g
−1の間(限界値を含む。)の、水銀圧入によって測定したマクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)を有する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態により、ゼオライト系吸着材料は、マクロ細孔、メソ細孔およびまたミクロ細孔を含む。「マクロ細孔」という用語は、直径が50nm超である細孔を意味する。「メソ細孔」という用語は、直径が2nmから50nmの間(限界値を含む。)である細孔を意味する。「ミクロ細孔」という用語は、直径が2nm未満である細孔を意味する。
【0047】
さらに、本発明の吸着材料は、有利には、0.2から1の間および非常に好ましくは0.5から0.9の間(限界値を含む。)の(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)比を有する。
【0048】
本発明の文脈において、77Kの温度にて窒素(N
2)吸着等温線からtプロット法によって評価したミクロ細孔容積が0.160cm
3・g
−1超、好ましくは0.170cm
3・g
−1から0.275cm
3・g
−1の間およびより好ましくは0.180cm
3・g
−1から0.250cm
3・g
−1の間であるゼオライト系吸着材料も好ましい。前記窒素吸着等温線は、tプロット法によって外表面積を測定するためにも使用されるものである。
【0049】
本発明のゼオライト系吸着材料中のLSX型のFAUゼオライトの結晶構造は、(省略形XRDによって当業者に公知である)x線回折によって同定できる。
【0050】
別の好ましい実施形態により、FAU構造以外のゼオライト系構造は、本発明のゼオライト系吸着材料中ではx線回折によって検出されない。
【0051】
「FAU構造以外のゼオライト系構造は検出されない」という表現は、FAU構造以外の1つ以上のゼオライト系相が5重量%未満および好ましくは2重量%未満(限界値を含む。)であることを意味する。XRD(後述する技術)によって求められた質量分率は、吸着材料の全重量に対して重量ベースで表される。
【0052】
本発明によるゼオライト系吸着材料はまた好ましくは、確実に結晶を相互に結合させる調製法で使用する凝集バインダーを含む少なくとも1つの非ゼオライト系相を含み、このため、「凝集体」または「ゼオライト系凝集体」という用語は、場合により、先に記載したような、本発明の「ゼオライト系吸着材料」という用語の代わりに使用される。
【0053】
本発明において、「バインダー」という用語は、本発明のゼオライト系吸着材料(または凝集ゼオライト系物質)中のゼオライト結晶の結合を確実にする凝集バインダーを意味する。このバインダーは、結晶構造を有さないという点で、ゼオライト結晶とも異なり、特にゼオライト系結晶構造を有さず、この理由で該バインダーは多くの場合、不活性、より正確には吸着およびイオン交換に関して不活性と言われる。
【0054】
好ましい実施形態により、吸着材料中のFAUゼオライトの質量分率は、本発明の吸着材料の全重量に対して85重量%以上および好ましくは90重量%以上であり(限界値を含む。)、100%までの残量は、好ましくは非ゼオライト系相から成る。特に有利な態様により、FAUゼオライトの質量分率は、本発明の吸着材料の全重量に対して92重量%から98重量%の間および好ましくは94重量%から98重量%の間(限界値を含む。)であり、100%までの残量は、好ましくは非ゼオライト系相から成る。
【0055】
すでに示したように、本発明による吸着材料のゼオライトの質量分率(結晶度)は、XRDという省略形で当業者に既知の、x線回折分析によって求められ得る。
【0056】
好ましい実施形態により、本発明によるゼオライト系吸着材料は、3.0から7.7%の間、より好ましくは3.5%から6.7%の間および有利には4.0%から6%の間(限界値を含む。)の、規格NF EN 196−2に従って、950℃にて測定した強熱減量を有する。
【0057】
本発明によるゼオライト系吸着材料はとりわけ、機械的強度、パラキシレンに対して、これの異性体を基準にして2.1を超える、好ましくは2.2を超える、より好ましくは2.3を超える吸着選択性およびキシレン異性体の気相または液相分離の方法で使用するために最も特に好適でもある吸着能力を併せて有する。
【0058】
本発明の文脈において、機械的強度は、サイズが1.6mm未満の凝集体に適したShell法シリーズSMS 1471−74によって測定する。先に定義したゼオライト系吸着材料について測定したこの機械的強度は一般に、1.5MPaから4MPaの間、好ましくは1.7MPaから4MPaの間、より好ましくは1.8MPaから4MPaの間および最も好ましくは2MPaから4MPaの間(限界値を含む。)である。
【0059】
本発明による吸着材料の調製
本発明の別の主題は、既に定義したような、ゼオライト系吸着材料を調製する方法であって、少なくとも:
i)20m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間(限界値を含む。)、好ましくは20m
2・g
−1から120m
2・g
−1の間、より好ましくは20m
2・g
−1から100m
2・g
−1の間(限界値を含む。)の外表面積を有する少なくとも1つの、LSX型のFAU構造のゼオライトの結晶であって、0.5μmから20μmの間(限界値を含む。)、より好ましくは0.5μmから10μmの間(限界値を含む。)、より優先的には0.8μmから10μmの間(限界値を含む。)、より良好になお1μmから10μmの間(限界値を含む。)およびより好ましくは1μmから8μmの間(限界値を含む。)の数平均径を有する結晶を、好ましくは少なくとも80%の、クレーまたはクレーおよび5%以下の添加剤の混合物を含むバインダー、ならびにまた凝集材料の形成させる量の水と共に凝集させて、続いて該凝集体を乾燥およびか焼するステップ;
b)ステップa)で得た凝集体を塩基性水溶液と接触させることにより、バインダーの全部または一部をゼオライト化する任意選択のステップ;
c)バリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの溶液と接触させることにより、ステップb)の凝集体をカチオン交換するステップ;
d)カリウムイオンの溶液と接触させることにより、ステップc)の凝集体を場合によりさらにカチオン交換するステップ;
e)ステップc)もしくはd)で得た凝集体を洗浄し、50℃から150℃の温度にて乾燥させるステップ;ならびに
f)ステップe)で得た凝集体を酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/もしくは除炭酸空気または場合により乾燥および/もしくは除炭酸した酸素欠乏空気などのガスを用いて、100℃から400℃の間、好ましくは200℃から300℃の温度にて活性化することによって、本発明によるゼオライト系吸着材料を製造するステップを含む方法に関する。
【0060】
本発明のゼオライト系吸着材料を調製する方法の好ましい実施形態において、上のステップa)における凝集体の乾燥は一般に、50℃から150℃の間の温度にて行い、乾燥凝集体のか焼は一般に、酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/または除炭酸空気、場合により乾燥および/または除炭酸した酸素欠乏空気などのガスを用いて、150℃超、通例180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の温度にて数時間にわたって、例えば2時間から6時間にわたって行う。
【0061】
特に前記ゼオライト系吸着材料は、窒素吸着により測定して、20m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有するゼオライト結晶から得られ、前記ゼオライト結晶は、好ましくは階層的多孔性ゼオライト結晶である。
【0062】
「階層的多孔性ゼオライト」という用語は、ミクロ細孔およびメソ細孔の両方を保持するゼオライト、即ちミクロ細孔性およびメソ細孔性の両方であるゼオライトを意味する。「メソ細孔性ゼオライト」という用語は、ミクロ細孔性ゼオライト結晶が、ミクロ細孔性と組み合わせて、例えばUS7785563に記載されているように、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察によってただちに同定可能である、ナノメートルサイズの内部空洞を有する(メソ細孔性)、ゼオライトを意味する。
【0063】
好ましい実施形態により、ステップa)で使用した前記LSX型のFAU構造のゼオライトの結晶は、当業者に周知であり、以下で詳説する技法に従って、元素化学分析によって測定される、Si/Al原子比=1.00±0.05を有する。
【0064】
20m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有する前記ゼオライト結晶は、構造化剤を使用するもしくはシーディング技法による、および/もしくは合成動作条件、例えば合成混合物のSiO
2/Al
2O
3比、ナトリウム含有率およびアルカリ度を調整することによる直接合成によって、または当業者に既知のFAUゼオライト結晶の後処理のための従来方法に従う間接合成によって調製することも可能である。
【0065】
後処理方法は一般に、例えばD.Verboekendらによって記載されているような(Adv.Funct.Mater.,22,(2012),pp.916−928)、固体を脱アルミネートする(dealuminate)1回以上の酸処理であって、水酸化ナトリウム(NaOH)による1回以上の洗浄が後続して形成されたアルミニウム系残基を除去する、酸性処理、またはもしくは、例えば出願WO2013/106816に記載されているように、酸の作用および酸処理の効力を改善する構造化剤の作用を併用する処理のどちらかによって、すでに形成されたゼオライト網目から原子を除去することに存する。
【0066】
これらのゼオライトの直接合成方法(即ち後処理以外の合成方法)は好ましく、一般に、1つ以上の構造化剤または犠牲テンプレートを包含する。
【0067】
使用され得る犠牲テンプレートは、当業者に既知のいずれの種類でもよく、とりわけ出願WO2007/043731に記載されているものでよい。好ましい実施形態により、犠牲テンプレートは、有利には、オルガノシランから、より優先的には[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロリド、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン、トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、[2−(シクロヘキセニル)エチル]−トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランおよび(3−クロロプロピル)トリメトキシシランならびにまたあらゆる割合のこれの2つ以上の混合物から選ばれる。
【0068】
上に挙げた犠牲テンプレートのうち、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、即ちTPOACが最も特に好ましい。
【0069】
より高いモル質量の犠牲テンプレート、例えばPPDA(ポリマーポリジアリルジメチルアンモニウム)、PVB(ポリビニルブチラール)およびメソ細孔の直径を増大させるための、当分野で既知の他のオリゴマー性化合物も使用してよい。
【0070】
本発明の方法の好ましい実施形態により、除去するための犠牲テンプレートの存在下で調製した、先に記載したような、少なくとも1つの、LSX型の階層的多孔性FAUゼオライトの結晶の凝集は、ステップa)で行う。
【0071】
この除去は、当業者に既知の方法に従って、例えばか焼によって、および非限定的な方式で行ってよく、犠牲テンプレートを含むゼオライト結晶のか焼は、酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/もしくは除炭酸空気、または場合により乾燥および/もしくは除炭酸した酸素欠乏空気などのガスを用いて、150℃超の1つ以上の温度、通例180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の温度にて、数時間、例えば2から6時間にわたって行ってよい。ガスの性質、温度上昇傾斜および連続温度ステージならびにこれらの期間は、犠牲テンプレートの性質の関数として適応させる。
【0072】
任意選択による犠牲テンプレートの除去の追加のステップは、本発明のゼオライト系吸着材料を調製する方法の間のいつでも実施してよい。前記犠牲テンプレートの除去はこのため、有利には、ゼオライト結晶のか焼によって、凝集ステップa)の前に、またはもしくはステップa)の間の吸着材料のか焼と同時に行ってよい。
【0073】
しかし、ステップa)の凝集が各種の方式に従って得た、1.00±0.05に等しいSi/Al原子比を有し、窒素吸着により測定して、20m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有する、複数のLSX型のFAUゼオライトの凝集を含む場合は、これは本発明の範囲からの逸脱とはならない。
【0074】
LSX型のFAUゼオライトの合成は一般に、アルカリ性媒体(水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、ゆえにNa
+カチオンおよびK
+カチオン)中で行う。このように得たLSX型のFAUゼオライトの結晶は、主にまたはさらに排他的にナトリウムカチオンおよびカリウムカチオンを含む。しかし、このステップがステップa)を行う前に行われる場合、犠牲テンプレートの任意選択による除去前または後に、合成の間に、1回以上のカチオン交換が行われた結晶を使用することは、本発明の範囲からの逸脱とはならない。この場合、ステップc)および場合により交換ステップd)は、場合により必要でないことがある。
【0075】
ステップa)で使用するLSX型のFAUゼオライトの結晶および本発明による吸着材料中のFAUゼオライトの結晶のサイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって測定する。先に指摘したように、好ましくは、結晶の数平均径は、0.5μmから20μmの間(限界値を含む。)、好ましくは0.5μmから10μmの間(限界値を含む。)、より優先的には0.8μmから10μmの間(限界値を含む。)、より良好になお1μmから10μmの間(限界値を含む。)およびより好ましくは1μmから8μmの間(限界値を含む。)である。本文書において、「数平均径」または「サイズ」という用語は、とりわけゼオライト結晶に使用される。これらの大きさを測定する方法は、本明細書にて後に説明する。
【0076】
ステップa)の凝集および形成は、当業者に既知のいずれの技法、特に押出、圧縮、造粒プレート、造粒ドラムでの凝集、アトマイズ化などから選ばれる1つ以上の技法に従って行ってよい。
【0077】
使用する凝集バインダー(後の定義を参照のこと)およびゼオライトの割合は、ゼオライト92重量部から85重量部に対して、バインダー8重量部から15重量部である。
【0078】
ステップa)の後、最も微細な凝集吸着材料は、サイクロン処理および/もしくはふるい分けによって除去され得て、ならびに/または過度に粗い凝集体は、例えば押出物の場合、ふるい分けもしくは粉砕によって除去され得る。このように得た吸着材料は、ビーズ、押出物などの形態にかかわらず、好ましくは0.2mmから2mmの間、特に0.2mmから0.8mmの間および好ましくは0.40mmから0.65mmの間(限界値を含む。)の体積平均径、即ちこれの長さ(これらが球状でない場合の最長寸法)を有する。
【0079】
本発明の文脈で使用され得るバインダーは、ゼオライト化可能であるもしくは可能でない、当業者に既知の従来のバインダーから選ばれ得て、ならびに好ましくはクレーおよびクレーの混合物、シリカ、アルミナ、コロイダルシリカ、アルミナゲルなどおよびこれらの混合物から選ばれ得る。
【0080】
該クレーは、好ましくはカオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびにあらゆる割合のこれらの2つ以上の混合物からも選ばれる。
【0081】
ステップa)の間に、ゼオライト結晶以外に、バインダーは1つ以上の添加剤も含んでよい。添加剤は優先的には有機、例えばリグニン、デンプン、カルボキシメチルセルロース、界面活性剤分子(カチオン性、アニオン性、非イオン性または両性)であり、これらはレオロジーおよび/もしくは接着力を調節することによってゼオライト/クレーペーストの操作を容易にし、または最終吸着材料にとりわけマクロ細孔性に関して満足な性質を与えることを目的とする。
【0082】
優先的には、しかし網羅的な方式でないが、メチルセルロースおよびこれの誘導体、リグノスルホネート、ポリカルボン酸およびカルボン酸コポリマー、これのアミン誘導体およびこれの塩、とりわけアルカリ塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。添加剤は、吸着材料の全重量に対して0重量%から5重量%および好ましくは0.1重量%から2重量%の割合で導入される。
【0083】
添加剤は、好ましくは前記固体の全質量の1%から5%に相当する液体および/または固体シリカ源も含んでよい。任意選択によるシリカ源は、ゼオライト合成の専門家である当業者に既知であるいずれの種類、例えばコロイダルシリカ、珪藻土、パーライト、フライアッシュ、砂または固体シリカの他のいずれかの形態でもよい。ステップa)に含まれるか焼では、ガスの性質、温度上昇傾斜および連続温度ステージと、ならびにそれぞれの期間も、とりわけ除去される犠牲テンプレートの性質の関数としておよび凝集ステップa)で使用するバインダーの性質の関数として適応させる。
【0084】
ゼオライト系吸着材料のSEM観測によって、例えば凝集バインダーまたは吸着材料中の任意の他のアモルファス相を含む非ゼオライト系相の存在を確認することが可能となる。
【0085】
上記のカチオン交換ステップc)およびd)は、当業者に既知の標準方法に従って、通常、ステップa)またはステップb)から得た吸着材料をバリウム塩、例えばバリウムクロリド(BaCl
2)および/またはカリウム塩(KCl)および/またはバリウム塩およびカリウム塩に、高いバリウム含有率、即ち吸着材料の全質量に対して、酸化バリウムの重量として表される、好ましくは25%超、好ましくは28%超、非常に好ましくは34%超、さらにより好ましくは37%超の含有率を迅速に得られるように、室温から100℃の間および好ましくは80℃から100℃の間の水溶液中で接触させることによって行う。
【0086】
有利には、酸化バリウムとして表すバリウム含有率は、吸着材料の全重量に対して、28重量%から42重量%の間、通例37重量%から40重量%の間(限界値を含む。)である。交換したいゼオライトのカチオンに対して大過剰量のバリウムイオンで、通例、およそ10から12の過剰量を、有利には連続交換を行うことにより、交換することが好ましい。
【0087】
ステップd)の任意選択によるカリウム交換を、バリウム交換(ステップc)の前および/または後に行ってよい。ステップa)において、バリウムイオンもしくはカリウムイオンまたはバリウムイオンおよびカリウムイオンをすでに含有するLSX型のゼオライトの結晶を凝集させ、(ステップa)の前に、出発LSX型ゼオライト中に存在するカチオン、通例、ナトリウムカチオンおよびカリウムカチオンを、バリウムイオンもしくはカリウムイオンまたはバリウムイオンおよびカリウムイオンと事前交換し)、ならびにステップc)および/またはd)を省略する(または省略しない)ことも可能である。
【0088】
出願人は驚くべきことに、階層的多孔性ゼオライト結晶の構造の相対的な脆弱性のために困難であり得るカチオン交換ステップが、前記階層的多孔性ゼオライト結晶の(いったん交換した吸着材料の質量に関連する)外表面積およびミクロ細孔容積の固有の性質に影響を及ぼさないことを確認している。
【0089】
カチオン交換ステップの後、次いで、好ましくは水による洗浄が一般に行われ、このように得た吸着材料の乾燥が後続する(ステップe)。乾燥に続く活性化(ステップf)は従来、方法のステップf)で先に指摘したように、当業者に既知の方法に従って、例えば一般に100℃から400℃の間の温度にて行う。活性化は、所望の強熱減量の関数として求められた時間にわたって行う。この時間は一般に、数分間から数時間の間、通例1時間から6時間の間である。
【0090】
本発明による吸着材料の使用
本発明は、バリウムおよび/またはカリウムを含み、従来のLSX型のFAUゼオライトの結晶を主成分とする、文献に記載された吸着剤に有利に代わることができる吸着剤としての上記ゼオライト系吸着材料の使用、およびとりわけ以下に挙げる:
・C8芳香族異性体画分およびとりわけキシレンの分離、
・置換トルエン異性体、例えばニトロトルエン、ジエチルトルエン、トルエンジアミンなどの分離、
・クレゾールの分離、
・多価アルコール、例えば糖などの分離
における使用にも関する。
【0091】
別の主題により、本発明は、先に定義したような少なくとも1つのゼオライト系吸着材料、好ましくはゼオライト系吸着材料のゼオライト結晶が1つ以上の構造剤(または犠牲テンプレート)を使用する直接合成によって調製されるゼオライト系吸着材料、を使用する、キシレン異性体の気相または液相分離の方法に関する。
【0092】
代替的な実施形態において、本発明は特に、炭素原子8個を有する異性体を含有する芳香族炭化水素の供給原料から、模擬床において高純度(即ち90%以上の純度)でパラキシレンを分離する方法であって:
a.パラキシレンを優先的に吸着させるために、供給原料を先に記載したような少なくとも1つのゼオライト系吸着材料を含む吸着材料の床に接触させるステップ、
b.吸着材料床を好ましくはトルエンまたはパラジエチルベンゼンである脱着剤と接触させるステップ、
c.吸着材料床から、脱着剤および選択的に吸着されている度合いがより少ない供給原料の生成物を含有する流れを抜き出すステップ、
d.吸着材料床から、脱着剤および所望の生成物、即ちパラキシレンを含有する流れを抜き出すステップ、
e.ステップc)の流れを、脱着剤を含有する第1流および選択的に吸着されている度合いがより少ない供給原料の生成物を含有する第2流に分離するステップ、
f.ステップd)の流れを、脱着剤を含有する第1流ならびにパラキシレンを90%以上、好ましくは99%以上およびまたより好ましくは99.7%以上の純度で含有する第2流に分離するステップ
を含む方法に関する。
【0093】
本発明はとりわけ、パラキシレン吸着材料として先に定義したようなゼオライト系吸着材料ならびにとりわけ、液相工程で使用されるが、気相工程でも使用される、バリウムおよび/またはカリウムを含み、通例20m
2・g
−1から100m
2・g
−1の間およびより優先的には20m
2・g
−1から80m
2・g
−1の間またより優先的には30から80m
2・g
−1の間(限界値を含む。)の窒素吸着を特徴とする、大きい外表面積を有するLSX型のFAUゼオライト系吸着材料を使用して、炭素原子8個を含有する芳香族異性体画分の供給原料からパラキシレンを分離する方法に関する。
【0094】
本発明による分離方法は、分取吸着液体クロマトグラフィー(バッチ方式)により、および有利には連続モードで模擬移動床ユニットにて、即ち模擬向流または模擬並流を用いて、およびより詳細には模擬向流を用いて行われ得る。
【0095】
向流方式で機能する工業的模擬移動床吸着ユニットの動作条件は、一般に以下の通りである:
・床数:4から24;
・区域数:少なくとも4動作区域、それぞれ供給箇所(処理される供給原料の流れまたは脱着剤の流れ)および抜き出し箇所(ラフィネート流または抽出物流)の間に位置;
・有利には100℃から250℃、好ましくは140℃から190℃の間の温度にて;
・処理温度におけるキシレン(またはトルエンを脱着剤として選ぶ場合にはトルエン)の気泡圧力と3MPaとの間の圧力;
・供給原料の流速に対する脱着剤の流速の比:0.7から2.5、好ましくは0.7から2.0(例えば独立型吸着ユニットでは0.9から1.8および結晶化ユニットと組み合わせた吸着ユニットでは0.7から1.4);
・リサイクル率:2から12、好ましくは2.5から6;
・脱着剤の所与の床への2回の注入の間の時間に相当する、サイクル時間:有利には4分間から25分間の間。
【0096】
特許US2985589、US5284992およびUS5629467の教示を参照してよい。
【0097】
工業的模擬並流吸着ユニットの動作条件は一般に、一般に0.8から7の間であるリサイクル率を除いて、模擬向流方式で動作するユニットと同様である。特許US4402832およびUS4498991を参照してよい。
【0098】
脱着剤は、沸点がトルエンなどの供給原料の沸点よりも低い、またはパラジエチルベンゼン(PDEB)などの供給原料の沸点よりも高い脱着溶媒である。有利には、脱着剤は、トルエンまたはパラジエチルベンゼンである。
【0099】
C8芳香族画分中に含有されるパラキシレンの吸着のための本発明による吸着材料の選択性は、950℃にて測定した吸着材料の強熱減量が好ましくは7.7%以下、好ましくは0から7.7%の間、非常に好ましくは3.0%から7.7%の間、より好ましくは3.5%から6.5%の間およびまたより好ましくは4.5%から6%の間(限界値を含む。)である場合に最適である。
【0100】
入口流の含水率は、例えば水を供給原料流および/または脱着剤流に添加することによって、20ppmから150ppmの間に優先的に調整する。
【0101】
さらに、先に示したような20m
2・g
−1を超える外表面積の選択によってミクロ細孔までの移送時間を短縮することが可能となり、先行技術と比べて物質移動が著しく改善されることが着目される。
【0102】
さらに、1.00±0.05に等しいSi/Al原子比を有するLSX型のFAUゼオライトの選択と組み合わせた、先に示したような20m
2・g
−1から100m
2・g
−1の間の外表面積を選択することによって、良好な分離のために十分である、他の異性体を基準とするパラキシレンへの吸着選択性およびとりわけ吸着材料に対する親和性がパラキシレンに次いで高く、2.1を超える、エチルベンゼンを基準とするパラキシレンへの選択性が達成可能なことが着目される。
【0103】
外表面積が100m
2・g
−1を超える、同じSi/Al原子比を有するLSXを主成分とする吸着材料または1.00±0.05を超えるSi/Al原子を有し、20m
2・g
−1から100m
2・g
−1の間の外表面積を有する、X型のFAUゼオライトを主成分とする吸着材料の、エチルベンゼンを基準とするパラキシレンへの選択性が厳密には2.1未満であることが着目される。
【0104】
別の利点は、より容易に操作可能であり、このため吸着材料の製造が容易となる、(通例、0.5μmから20μmの間(限界値を含む。)、より好ましくは0.5μmから10μmの間(限界値を含む。)、より優先的には0.8μmから10μmの間(限界値を含む。)、より良好にはなお1μmから10μmの間(限界値を含む。)およびより好ましくは1μmから8μmの間(限界値を含む。)の)マイクロメートルサイズの結晶が入手できることである。
【0105】
このため、本発明のゼオライト系吸着材料はとりわけ、改善された物質移動特性を有するとともに、同時にパラキシレンに対して、これの異性体を基準にして通例2.1を超える選択性の、およびまた吸着能力の最適特性を維持し、パラキシレン、好ましくは模擬向流型の液相分離方法で使用するための高い機械的強度を保持する。
【0106】
キャラクタリゼーション技法
ゼオライト結晶の粒径−メソ細孔の検出
凝集(ステップa)中に使用するFAUゼオライト結晶および本発明によるゼオライト系吸着材料に含有される結晶の数平均径の概算は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用する観測によって行う。
【0107】
サンプルにおけるゼオライト結晶のサイズを概算するために、画像一式を少なくとも5000の倍率で撮影する。次いで、専用ソフトウェアを使用して、少なくとも200個の結晶の直径を測定する。精度はおよそ3%である。
【0108】
US7785563に示されているように、透過型電子顕微鏡(TEM)によって、本発明の吸着材料のゼオライト結晶が、充填ゼオライト結晶(即ち非メソ細孔性)または充填ゼオライト結晶の凝集体またはメソ細孔性結晶(メソ細孔性が明らかに目視できる
図1のTEM画像と、充填結晶を示す
図2のTEM画像との比較を参照のこと。)であるかを確認することもできる。このためTEM観測によって、メソ細孔の存在または非存在を描出することもできる。
【0109】
ゼオライト系吸着材料の化学分析−Si/Al比および交換度
前述したステップa)からf)の後に得た最終生成物の元素化学分析は、当業者に既知の各種の分析技法に従って行ってよい。これらの技法のうち、規格NF EN ISO 12677:2011に記載されているような、波長分散型分光器(WDXRF)、例えばBrueker社のTiger S8装置でのX線蛍光による化学分析の技法を挙げることができる。
【0110】
X線蛍光は、サンプルの元素組成を確認するための、X線範囲の原子の光ルミネセンスを利用する非破壊スペクトル技法である。一般に、X線のビームを用いた、または電子衝撃による原子の励起によって、原子の基底状態に戻った後に、特定の放射線が発生する。X線蛍光スペクトルは、元素の化学結合にごくわずかしか依存しないという利点を有するため、定性的にも定量的にも精密な測定値が得られる。各酸化物の較正後に、0.4重量%未満の測定不確定性が従来得られている。
【0111】
これらの元素化学分析によって、吸着材料の調製中に使用したゼオライトのSi/Al原子比の、また吸着材料のSi/Al原子比と、ステップc)および任意選択によるステップd)で記載したイオン交換の品質との両方を確認することが可能となる。本発明の説明において、Si/Al原子比の測定不確定性は±5%である。
【0112】
イオン交換の質は、交換後のゼオライト系吸着材料中に残存する酸化ナトリウムNa
2Oのモル数に関連する。例えば、バリウムイオンとの交換度は、酸化バリウムBaOのモル数と、組み合わせ(BaO+Na
2O+K
2O)のモル数との間の比を評価することによって概算される。同様に、カリウムイオンとの交換度は、酸化カリウムK
2Oのモル数と、組み合わせ(BaO+K
2O+Na
2O)のモル数との間の比を評価することによって概算される。各種の酸化物の含有率が、無水ゼオライト系吸着材料の全重量に対する重量パーセンテージとして示されていることに留意されたい。
【0113】
ゼオライト系吸着材料の粒径:
凝集および形成のステップa)の後に得たゼオライト系吸着材料の体積平均径の測定は、規格ISO 13322−2:2006による撮像による吸着材料のサンプルの粒径分布の分析によって、カメラの対物レンズの前にサンプルを通過させるコンベヤベルトを使用して行う。
【0114】
次いで、規格ISO 9276−2:2001を利用して、粒径分布から体積平均径を計算する。本文書において、「体積平均径」または「サイズ」という用語は、ゼオライト系吸着材料に使用する。本発明の吸着材料のサイズ範囲の精度は、およそ0.01mmである。
【0115】
ゼオライト系吸着材料の機械的強度:
本発明に記載するゼオライト系吸着材料の床の粉砕強度は、Shell法シリーズSMS1471−74(Shell Method Series SMS1471−74 Determination of Bulk Crushing Strength of Catalysts.Compression−Sieve Method)に従ってキャラクタリゼーションされ、該Shell法シリーズはVinci Technologies社が販売するBCS Tester装置に関連付けられている。この方法は、最初は3mmから6mmの触媒をキャラクタリゼーションするためであったが、425μmふるいの使用に基づき、とりわけ粉砕中に生じる微粉を分離することが可能となる。425μmふるいの使用は、1.6mm超の直径を有する粒子になお適しているが、キャラクタリゼーションが望まれる吸着材料の粒径に従って適応させるべきである。
【0116】
一般にビーズまたは押出物の形態の本発明の吸着材料は、一般に0.2mmから2mmの間、特に0.2mmから0.8mmの間および好ましくは0.40mmから0.65mmの間(限界値を含む。)の、体積平均径または長さ、即ち非球状吸着材料の場合の最長寸法を有する。結果として、Shell法規格SMS1471−74で示した425μmふるいの代わりに100μmふるいを使用する。
【0117】
測定プロトコルは以下の通りである:適切なふるい(100μm)によって事前にふるい分けして、(Shell法規格SMS1471−74に示された300℃の代わりに)250℃のオーブン内で少なくとも2時間にわたって事前乾燥させた凝集吸着材料の20cm
3のサンプルを、内断面が既知の金属製シリンダに入れる。このサンプルに対して、鋼鉄ビーズの床5cm
3を通じてピストンによって加える力を段階的に増大させて、凝集吸着材料にピストンによって加えられる力をより良好に散在させる(直径が厳密に1.6mm未満の球形状の粒子には、直径2mmのビーズを使用)。各種の圧力段階で得た微粉をふるい分け(100μmの好適なふるい)によって分離して、秤量する。
【0118】
バルク粉砕強度は、ふるいを通過する累積微粉量がサンプルの0.5重量%である、メガパスカル(MPa)での圧力によって求める。この値は、得られた微粉の質量を吸着材料の床に印加された力の関数としてグラフにプロットして、累積微粉0.5質量%まで内挿することによって得る。機械的バルク粉砕強度は、通例、数百kPaから数十MPaの間および一般に0.3MPaから3.2MPaの間である。精度は従来、0.1MPa未満である。
【0119】
ゼオライト系吸着材料のゼオライト画分の同定および定量ならびに格子パラメータの概算
吸着材料に含有されるゼオライト画分の(質量による)同定は、x線回折(XRD)分析によって行う。この分析は、Bruekerブランド装置で行う。ゼオライト系吸着材料中に存在する結晶性相の同定は、ICDDデータベースシートとの比較によって、場合により好適な参照(1.00に等しいSi/Al原子比を有し、検討中の吸着材料と同じカチオン交換処理を受けた、LSX型のFAUゼオライトの結晶(100%結晶性であると仮定))のディフラクトグラムとの比較によって行う。例えば、バリウムと交換したX型ゼオライトの存在は、ICDDシートNo.38−0234(「ゼオライトX、(Ba)」)によって得たディフラクトグラムの線との比較によって確認される。ディフラクトグラムの比較は、参照ゼオライトおよび検討中の吸着材料について測定した格子パラメータの比較によって完了する。ゼオライトの格子パラメータの測定は、正確に(±0.01Åまで)行う:これを行うために、内部標準(Si 640b NIST認証)を添加し、データはTOPASリファインメントソフトウェアを用いて処理する。例えば、1.25に等しいSi/Al原子比を有し、バリウムによって95%交換したゼオライトX結晶で得た測定値により、25.02ű0.01Åの格子パラメータが得られるのに対して、1.00に等しいSi/Al原子比を有し、バリウムによって95%交換したLSXゼオライト結晶で得た測定値により、25.19ű0.01Åの格子パラメータが得られる。
【0120】
先に挙げた参照ゼオライトのピーク強度を参照として用いて、(質量による)ゼオライト画分の量をディフラクトグラムにおけるピークの相対強度から評価する。結晶性へのワークバックを可能にするピークは、9°から37°の間の2θ角区画の最も強いピーク、即ちそれぞれ11°から13°、22°から26°および31°から33°の間の2θ角範囲で見られるピークである。
【0121】
ミクロ細孔容積および外表面積
本発明のゼオライト系吸着材料の結晶性も、吸着材料のミクロ細孔容積を測定して、これを好適な参照(同じカチオン性処理条件下での100%結晶性であるゼオライトまたは理論的ゼオライト)のミクロ細孔容積と比較することによって評価する。このミクロ細孔容積は、窒素などのガスの、これの液化温度における吸着等温線の測定から求める。
【0122】
吸着の前に、ゼオライト系吸着材料を300℃から450℃の間で、9時間から16時間の間の時間にわたって、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で脱気する。次いで、77Kにおける窒素吸着等温線の測定をMicromeritics製のASAP 2020M型の装置で、0.002から1の間の比P/P
0を有する相対圧にて少なくとも35個の測定点を取って行う。
【0123】
ミクロ細孔容積および外表面積は、得られた等温線から、tプロット法により、規格ISO 15901−3:2007を適用して、ジュラ−ハーキンスの式(Harkins−Jura equation)によって統計的厚さtを計算することによって求める。ミクロ細孔容積および外表面積は、それぞれy軸から原点までおよび線形進行の傾きから、0.45nmから0.57nmの間のtプロットの点に対する線形回帰によって得る。評価したミクロ細孔値は、無水吸着材料1グラム当たりの液体吸着質のcm
3で表す。外表面積は、無水吸着材料1グラム当たりのm
2で表す。
【0124】
マクロ細孔およびメソ細孔容積ならびに細粒密度
マクロ細孔容積およびメソ細孔容積ならびに細粒密度は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定する。Micromeritics製のAutopore(R)9500水銀ポロシメータを使用して、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される細孔容積の分布を分析する。
【0125】
規格ASTM D4284−83に関連する装置の操作マニュアルに記載されている実験方法は、事前に秤量した吸着材料のサンプル(測定されるゼオライト系細粒状物質)(既知の強熱減量)をポロシメトリーセルに入れ、次いで最初の脱気(少なくとも10分間にわたって30μmHgの排出圧)後、セルに水銀を所与の圧力(0.0036MPa)で充填し、次いで水銀をサンプルの細孔網目に徐々に浸透させるために、圧力を段階的に400MPaまで上昇させて印加することに存する。
【0126】
印加圧力と見掛けの細孔径との間の関係は、円筒状細孔、水銀と細孔壁との間の140°の接触角および485ダイン/cmの水銀表面張力を仮定することによって確立される。印加圧力の関数として導入された水銀の累積量を記録する。水銀がすべての細粒間空隙を充填する値を0.2MPaに設定し、この値を超えると、水銀が細粒状物質の細孔に浸透すると考えられる。次いで、この圧力(0.2MPa)における水銀の累積体積をポロシメトリーセルの容積から引き、この差を無水換算細粒状物質の質量、即ち強熱減量について補正した前記物質の質量で割ることによって、細粒体積(Vg)を計算する。
【0127】
細粒密度は、細粒体積(Vg)の逆数であり、1cm
3当たりの無水吸着材料のグラム数で表す。
【0128】
細粒状物質のマクロ細孔容積は、0.2MPaから30MPaの間の圧力にて導入された水銀の累積体積であるとして定義され、見掛けの直径が50nm超の細孔に含有される容積に相当する。細粒状物質のメソ細孔容積は、30MPaから400MPaの間の圧力にて導入された水銀の累積体積であるとして定義される。
【0129】
本文書において、cm
3・g
−1で表されるゼオライト系吸着材料のマクロ細孔容積およびメソ細孔容積は、このように水銀圧入によって測定され、無水換算のサンプルの質量、即ち強熱減量について補正した前記物質の質量に関連付けられる。
【0130】
ゼオライト系吸着材料の強熱減量
強熱減量は、規格NF EN 196−2(April 2006)に記載されているように、酸化雰囲気下で、950℃±25℃の温度での空気中でサンプルをか焼することによって求められる。測定値の標準偏差は、0.1%未満である。
【0131】
液相破過吸着のキャラクタリゼーション
多孔性固体への分子の液相吸着をキャラクタリゼーションするために使用する技法は、あるグレードの吸着性構成要素の注入に対する反応の研究としての破過曲線の技法を定義する、Ruthven in Principles of Adsorption and Adsorption Processes(chapters 8 and 9、John Wiley & Sons、1984)に記載された、破過として知られる技法である。破過曲線の平均退出時間(第1のモーメント)の分析により、吸着量に関する情報が与えられ、2つの吸着性構成要素の間の選択性、即ち分離因子の評価も可能になる。非選択的体積の概算には、トレーサーとして非吸着性構成要素を注入することが推奨される。破過曲線の分散(第2のモーメント)の分析により、系の物質移動の軸方向への分散および抵抗の直接測定値である、有限数の仮説的理想撹拌装置(理論段数)によるカラムの表現に基づいて、理論段の有効高さの評価が可能となる。
【実施例】
【0132】
[実施例A]:従来LSXゼオライト結晶の合成(特許FR2925366の合成A)(比較例)
特許FR2925366に記載した合成Aに従って結晶を調製する。濾過、洗浄および乾燥後に得た結晶をx線回折によってフォージャサイトとして同定される。固体の化学分析により、Si/Al比=1.01が得られる。
【0133】
真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.305cm
3・g
−1および6m
2・g
−1である。
【0134】
ゼオライト結晶のサイズの分析は、走査型電子顕微鏡法によって行う。結晶の平均径は2.6μmである。
【0135】
[実施例B]:階層的多孔性FAUゼオライト結晶の合成
[実施例B1]:Si/Al比=1.24および90m
2・g
−1に等しい外表面積を有するHPX型ゼオライト結晶の合成(比較例)
90m
2・g
−1に等しい外表面積を有するゼオライトXは、Inayatらによる論文(Angew.Chem Int.Ed.,(2012),51,1962−1965)に記載された合成方法に従って直接合成する。
【0136】
ステップ1):アルキメデススクリューを用いて300rpmにて撹拌された反応装置内での成長ゲルの調製
成長ゲルは、加熱ジャケット、温度プローブおよびスターラーを装備した鋼鉄反応装置内で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物128g(Al
2O
3,3H
2O、65.2重量%のAl
2O
3を含有)および水195.5gを含有する25℃のアルミネート溶液を、ナトリウムシリケート565.3g、NaOH 55.3gおよび水1997.5gを含有する、25℃のシリケート溶液と、25分間にわたって300rpmの撹拌速度で混合することによって調製する。
【0137】
成長ゲルの化学量論は、以下の通りである:3.48 Na
2O/Al
2O
3/3.07 SiO
2/180 H
2O。成長ゲルの均質化は、25℃にて300rpmで25分間撹拌することによって行う。
【0138】
ステップ2):反応媒体中への構造化剤の導入
MeOH中60%のTPOACの溶液27.3gを、300rpmの撹拌速度で反応媒体中に導入する(TPOAC/Al
2O
3モル比=0.04)。5分間の均質化の後、撹拌速度を50rpmに低下させる。
【0139】
ステップ3):熟成段階
反応媒体を50rpm、25℃にて22時間撹拌を維持すると、次いで結晶化が開始した。
【0140】
ステップ4):結晶化
撹拌速度を50rpmで維持し、反応装置ジャケットの公称値を80℃に設定して、反応媒体の温度を80分間かけて75℃まで上昇させる。75℃の段階での72時間後、冷水をジャケットに循環させることによって反応媒体を冷却して、結晶化を停止させる。
【0141】
ステップ5):濾過/洗浄
固体をシンター上で回収し、次いで脱イオン水によって中性pHまで洗浄する。
【0142】
ステップ6):乾燥/か焼
生成物のキャラクタリゼーションを行うために、乾燥をオーブン内で90℃にて8時間行うと、乾燥生成物の強熱減量は、22重量%である。
【0143】
乾燥生成物のか焼は、構造化剤を除去することによってミクロ細孔性(水)およびメソ細孔性の両方を解放するために必要であり、以下の温度プロファイル:30分間で200℃まで上昇、次いで200℃の段階で1時間、次いで3時間で550℃まで上昇および最後に550℃の段階で1.5時間を用いて行う。
【0144】
真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.260cm
3・g
−1および90m
2・g
−1である。このように得たメソ細孔性ゼオライト(または階層的多孔性ゼオライト)の結晶の数平均径は4.5μmであり、Si/Al比は1.24に等しい。
【0145】
以下の文では、無水換算で表される質量は、生成物から生成物の強熱減量を減じた質量を意味する。
【0146】
[実施例B2]:Si/Al比=1.01および95m
2・g
−1に等しい外表面積を有するHPLSX型ゼオライト結晶の合成(本発明による)
成長ゲルの調製:アルキメデススクリューを用いて250rpmにて撹拌された反応装置
成長ゲルは、加熱ジャケット、温度プローブおよびスターラーを装備した3リットル鋼鉄反応装置内で、水酸化ナトリウム(NaOH)300g、85%水酸化カリウム264g、アルミナ三水和物169g(Al
2O
3,3H
2O、65.2重量%のAl
2O
3を含有)および水1200gを含有する25℃のアルミネート溶液を、ナトリウムシリケート490g、NaOH 29.4gおよび水470gを含有する、25℃のシリケート溶液と、5分間にわたって250rpmの撹拌速度で混合することによって調製する。
【0147】
成長ゲルの化学量論は、以下の通りである:4.32 Na
2O/1.85 K
2O/Al
2O
3/2.0 SiO
2/114 H
2O。成長ゲルの均質化は、25℃にて250rpmで15分間撹拌することによって行う。
【0148】
b)核化ゲルの添加
成長ゲルと同様に調製し、40℃にて1時間熟成させた、組成が12 Na
2O/Al
2O
3/10 SiO
2/180 H
2Oの核化ゲル11.6g(即ち0.4重量%)を、25℃にて、300rpmで撹拌しながら、成長ゲルに添加する。250rpmで5分間均質化した後、撹拌速度を50rpmに低下させ、撹拌を30分間継続する。
【0149】
c)反応媒体中への構造化剤の導入
メタノール(MeOH)中60%のTPOACの溶液35.7gを、250rpmの撹拌速度で反応媒体中に5分間かけて導入する(TPOAC/Al
2O
3モル比=0.04)。次いで成熟ステップを30℃にて20時間、50rpmにて行ってから、結晶化を開始する。
【0150】
d)2ステップ結晶化
開始速度を50rpmに維持して、反応媒体の温度が5時間かけて60℃まで上昇して、60℃における段階が21時間後続するように、反応装置ジャケットの公称温度の63℃までの線形上昇をプログラミングし、反応媒体の温度が60分間かけて95℃まで上昇するように、反応装置ジャケットの公称温度を次いで102℃に設定する。95℃の段階での3時間後、冷水をジャケットに循環させることによって反応媒体を冷却して、結晶化を停止させる。
【0151】
e)濾過/洗浄
固体をシンター上で回収し、次いで脱イオン水によって中性pHまで洗浄する。
【0152】
f)乾燥/か焼
生成物をキャラクタリゼーションするために、乾燥を90℃のオーブンで8時間行う。
【0153】
乾燥生成物のか焼は、構造化剤を除去することによってミクロ細孔性(水)およびメソ細孔性の両方を放出させるために必要であり、9時間から16時間の間の期間にわたって、真空下にて(P<6.7×10
−4Pa)50℃刻みで400℃まで徐々に上昇させながら、真空下で脱気することによって行う。
【0154】
真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.215cm
3・g
−1および95m
2・g
−1である。結晶の数平均径は6μmである。DFT法によって窒素吸着等温線から計算したメソ細孔径は、5nmから10nmの間である。x線ディフラクトグラムは純フォージャサイト(FAU)構造に一致し、LTAゼオライトは検出されなかった。x線蛍光によって求めたHPLSXのSi/Alモル比は、1.01に等しい。
【0155】
[実施例B3]:146m
2・g
−1に等しい外表面積を有するHPLSXゼオライト結晶の合成(比較例)
実施例B2で合成したゼオライトよりも外表面積が大きい階層的多孔性LSXゼオライトは、ステップ2のTPOAC/Al
2O
3モル比が0.07に等しいことを除いて、実施例B2の手順に厳密に従って得る。
【0156】
真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.198cm
3・g
−1および146m
2・g
−1である。このように得たメソ細孔性ゼオライト(または階層的多孔性ゼオライト)の結晶の数平均径は6μmであり、Si/Al比は1.01に等しい。
【0157】
[実施例1]:(比較)
実施例Aによる直径2.6μmのLSXゼオライト結晶およびカオリン型バインダーを用いた、細粒状形態のゼオライト系吸着材料の調製
特許FR2925366に記載した実施例6を再現することによって吸着材料を調製し、細粒を回収して、0.3mmから0.5mmの間の粒径範囲で体積平均径が0.4mmとなるようにふるい分けする。
【0158】
WDXRFによって元素化学分析から評価したこの吸着材料のバリウムとの交換度は97%であり、これの強熱減量は6.2%である。XRDによって測定したこの吸着材料の格子パラメータは、25.19ű0.01Åにて評価する。真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.231cm
3・g
−1および7m
2・g
−1である。水銀圧入によって測定した、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)は、0.25cm
3・g
−1である。比(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)は、0.9に等しい。キャラクタリゼーション技法で示した方法に従って測定した、この吸着材料の機械的強度は、2.1MPaである。
【0159】
[実施例2]:(比較)
外表面積が70m
2・g
−1に等しい、サイズが4.5μmのHPX結晶およびカオリン型凝集バインダーを用いた、細粒形態のゼオライト系吸着材料の調製
無水換算値1600gの、実施例B1の手順に従って合成したゼオライトX結晶(結晶サイズ4.5μm)、無水換算値350gのカオリン、130gの、Klebosol(R)30の商標名で販売されているコロイダルシリカ(30重量%のSiO
2および0.5%のNa
2Oを含有)およびまた混合物の押出による凝集を可能にする量の水から成る、均質混合物を調製する。押出物を乾燥させ、粒径が0.3mmから0.5mmの間の範囲に及び、体積平均径0.4mmである細粒が回収されるように粉砕し、次いで窒素流下で550℃にて2時間、次いで乾燥除炭酸空気流下で550℃にて2時間か焼する。
【0160】
次いでバリウム交換を、95℃にて0.7M濃度の塩化バリウム溶液、BaCl
2を用いて4ステップで行う。各ステップにおいて、溶液の固体の質量に対する体積比は20ml/gであり、交換は毎回4時間継続する。各交換の間、固体を複数回洗浄して、過剰の塩を遊離させる。次いで、固体を80℃にて2時間乾燥させ、次いで250℃にて窒素流下で2時間にわたって活性化させる。
【0161】
分析技法にて上述したような、WDXRFによる元素化学分析から評価したこの吸着材料のバリウム交換度は97%であり、強熱減量は5.5%である。XRDによって測定したこの吸着材料の格子パラメータは、25.02ű0.01Åにて評価する。真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.192cm
3・g
−1および70m
2・g
−1である。
【0162】
水銀圧入によって測定した、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)は、0.33cm
3・g
−1である。比(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)は、0.6に等しい。
【0163】
キャラクタリゼーション技法で示した方法に従って測定した、この吸着材料の機械的強度は、0.5%の微粉を得るのに必要な圧力に相当する、2.1MPaである。
【0164】
[実施例3]:(本発明による)
外表面積が64m
2・g
−1に等しい、サイズが6μmのHPLSX結晶およびカオリン型凝集バインダーを用いた、細粒形態のゼオライト系吸着材料の調製
吸着材料は、実施例2の吸着材料の調製と同じ方式で、しかし実施例B2の手順に従って合成したLSXゼオライト結晶(結晶サイズ6μm)を使用して調製する。
【0165】
分析技法にて上述したような、WDXRFによる元素化学分析から評価したこの吸着材料のバリウム交換度は97%であり、強熱減量は5.0%である。XRDによって測定したこの吸着材料の格子パラメータは、25.20ű0.01Åにて評価する。真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.167cm
3・g
−1および64m
2・g
−1である。
【0166】
水銀圧入によって測定した、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)は、0.29cm
3・g
−1である。比(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)は、0.73に等しい。
【0167】
キャラクタリゼーション技法で示した方法に従って測定した、この吸着材料の機械的強度は、0.5%の微粉を得るのに必要な圧力に相当する、2.3MPaである。
【0168】
[実施例4]:(比較)
外表面積が121m
2・g
−1に等しい、サイズが6μmのHPLSX結晶およびカオリン型凝集バインダーを用いた、細粒形態のゼオライト系吸着材料の調製
吸着材料は、実施例3の吸着材料の調製と同じ方式で、しかし実施例B3の手順に従って合成したLSXゼオライト結晶(結晶の数平均径6μm)を使用して調製する。
【0169】
分析技法にて上述したような、WDXRFによる元素化学分析から評価したこの吸着材料のバリウム交換度は97%であり、強熱減量は5.1%である。XRDによって測定したこの吸着材料の格子パラメータは、25.21ű0.01Åにて評価する。真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.147cm
3・g
−1および121m
2・g
−1である。
【0170】
水銀圧入によって測定した、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)は、0.34cm
3・g
−1である。比(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)は、0.63に等しい。
【0171】
キャラクタリゼーション技法で示した方法に従って測定した、この吸着材料の機械的強度は、0.5%の微粉を得るのに必要な圧力に相当する、2.2MPaである。
【0172】
[実施例5]:
破過試験(フロンタルクロマトグラフィー)を実施例2の吸着材料および本発明による実施例3の吸着材料に行って、エチルベンゼンを基準としたパラキシレンの吸着についてこれらの選択性を評価する。この試験に使用した吸着材料の量は、約34gである。
【0173】
破過曲線を得る手順は以下の通りである:
・吸着材料をカラムに充填して、試験ベンチに挿入する;
・室温の脱着溶媒を充填する;
・溶媒の蒸気下(5cm
3・分
−1)で175℃まで徐々に上昇させる;
・吸着温度(175℃)に達した時、5cm
3・分
−1にて溶媒を注入する;
・溶媒/供給原料を置換して供給原料を注入(5cm
3・分
−1);
・破過流出物の回収および分析;流出物中の溶媒の濃度がゼロになるまで、供給原料の注入を維持する。
【0174】
使用した脱着溶媒は、パラジエチルベンゼンである。2つの異性体の間の選択性を、45重量%の各異性体および非選択的体積の概算に使用され、分離に関与しない10重量%のトレーサー(イソオクタン)を含有する供給原料を使用することによって評価する。実施した試験では、供給原料組成が以下のような供給原料を使用する:
・パラキシレン:45重量%、
・エチルベンゼン:45重量%、
・イソオクタン:10重量%
【0175】
圧力は、供給原料が吸着温度にて液相に残存するのに十分であり、即ち1MPaである。表面速度は0.2cm/s
−1である。
【0176】
エチルベンゼンに対するパラキシレンの選択性を各化合物の吸収量から計算し、これらの量は、流出物中に存在する構成成分すべての破過曲線の第1のモーメントからの物質の質量バランスによって求める。結果を下の表1に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
上の表において:
・キシレン吸着能力は吸着材料1グラムにつき吸着されたC8芳香族のcm
3で表わされ;
・PXはパラキシレンを意味し、EBはエチルベンゼンを意味する。
【0179】
実施例2から4の吸着材料生成物は、同等の全キシレン吸着能力を有する。他方、本発明による実施例3の吸着材料は、2.5を超えるパラキシレンとエチルベンゼンとの間の選択性を有するのに対して、実施例2および4の吸着材料で得た選択性は2.1未満である。このため実施例3の吸着材料は、エチルベンゼンが豊富な供給原料を分離するのにより効率的である。
【0180】
[実施例6]:
実施例6の目的は、以下に対する、本発明による吸着材料(実施例3の吸着材料)を用いて得た生産性の上昇を示すことである:
・先行技術による不適合な(小さすぎる)外表面積のLSXゼオライト結晶を用いた吸着材料(実施例1の比較吸着材料)、
・1.00±0.05に等しいSi/Al比のLSXゼオライト結晶を用いた、不適合な(大きすぎる)外表面積を有する吸着材料(実施例4の吸着材料)。
【0181】
実施例1、3および4の吸着材料に試験を行い、直径2cmおよび長さ1.10mの直列の15個のカラムから成る模擬向流パイロットクロマトグラフィーユニットで、パラキシレンの分離に関するこれらの性能を評価する。最後のカラムと最初のカラムとの間の循環は、リサイクルポンプによって行う。各カラム間の連結部にて、分離される供給原料または脱着剤のどちらかを注入する。ラフィネートまたは抽出物のどちらかも抜き出してよい。すべてのカラムおよび分配弁を175℃に維持して、圧力を1.5MPa超に維持する。各種の注入箇所または抜き出し箇所の移動は、調整され得る置換期間(permutation time)に従って同時である。床を以下の構成に従って、4つのクロマトグラフィー区域に分割する:
・脱着剤の注入と抽出物の抜き出し規定区域1との間の3床
・抽出物の抜き出しと供給原料の注入規定区域2との間の6床
・供給原料の注入とラフィネートの抜き出し規定区域3との間の4床
・ラフィネートの抜き出しと脱着剤注入規定区域4との間の2床
【0182】
供給原料は、21.3質量%のパラキシレン、19.6質量%のオルトキシレン、45.1質量%のメタキシレンおよび14.0質量%のエチルベンゼンで構成される。
【0183】
第1段階において、実施例1による吸着材料を使用して試験を行う。本試験によって、99.7%の純度および少なくとも97%の収率でパラキシレンを得るために必要な供給原料および脱着剤の注入速度を求めることが可能となる。
【0184】
パラキシレンは、39.5g・分
−1の速度で供給原料をおよび35.5g・分
−1の速度で脱着剤を注入することにより、ならびに118秒の注入箇所および抜き出し箇所の置換時間を適用することにより、純度99.7%、収率97%で抽出物において得られる。抽出物の流速は、24.7g・分
−1であり、区域4の流速は105.9g・分
−1である。
【0185】
その後、脱着剤を同じ流速で適用することによってすべての吸着材料に試験を行う。他方、供給原料流速、注入箇所および抜き出し箇所の置換時間ならびにリサイクル率は、必要な性能、即ち純度99.7%および収率97%が達成されるように調整され得る。結果を表2に示す。
【0186】
【表2】
【0187】
図3は、供給原料の流速の変化を外表面積の関数として示し、3つの点は表2の実施例1、3および4に相当する。
【0188】
外表面積64m
2・g
−1を有するLSX結晶を主成分とする吸着材料ビーズ、即ち本発明による吸着材料を使用すると、実施例1の参照吸着材料によって処理したものよりも高い供給原料流速を注入することにより、同時に同じカラムを使用して参照脱着剤流速、即ち35.5g・分
−1を注入することにより、必要な純度および収率性能を備えたパラキシレンを得ることができる。
【0189】
例えば本発明による実施例3の吸着材料を用いると、パラキシレンは実施例1の参照吸着材料を用いて得たものと同じ純度99.7%および収率97%で製造され得るが、同時に供給原料流速が26%上昇する。結果として、同じ仕様では、実施例1の吸着材料と比べて本発明による実施例3の吸着材料により、生産性が26%上昇する。
【0190】
本発明による吸着材料生成物とは異なり、100m
2・g
−1を超える、即ち本発明により定義する上限を超える外表面積を有するLSX結晶を主成分とする吸着材料ビーズを使用すると、実施例1の参照吸着材料によって処理したもの以上の高い供給原料流速を注入することにより、同時に同じカラムを使用して参照脱着剤流速、即ち35.5g・分
−1を注入することにより、必要な純度および収率性能を備えたパラキシレンを得ることができない。反対に、100m
2・g
−1を超える外表面積を有する吸着材料を用いて必要な純度および収率性能を得るためには、実施例1の参照吸着材料で処理したものよりも低い供給原料流速が処理される。
【0191】
例えば121m
2・g
−1に等しい外表面積を有する、即ち外表面積が本発明とは100m
2・g
−1超異なるLSX結晶を主成分とする実施例4の吸着材料を用いると、パラキシレンは実施例1の参照吸着材料を用いて得たものと同じ純度99.7%および収率97%で製造され得るが、同時に供給原料流速が28%低下する。結果として、同じ仕様では、実施例1の吸着材料と比べて実施例4の吸着材料により、生産性が28%低下する。
【0192】
[実施例7]:
実施例7の目的は、エチルベンゼンを含有する供給原料について、同じ外表面積を有するが、ゼオライトX結晶を用いた吸着材料(実施例2の吸着材料)と比べた、本発明による吸着材料(実施例3の吸着材料)によって得た生産性の上昇を示すことである。
【0193】
実施例2および3の吸着材料は、直径2cmおよび長さ1.10mの直列の15個のカラムから成る模擬向流パイロットクロマトグラフィーユニットで実施例6に記載したのと同じように動作させて、パラキシレンの分離に関するこれらの性能を評価する試験を行う。
【0194】
3つの供給原料組成を使用して、吸着材料の生産性に対する、吸着材料中のエチルベンゼン含有率の影響を評価する:
・先の実施例と同様の、パラキシレン21.3質量%、オルトキシレン19.6質量%、メタキシレン45.1質量%およびエチルベンゼン14.0質量%で構成される供給原料、
・パラキシレン21.3質量%、オルトキシレン23.8%およびメタキシレン54.9%で構成される供給原料、この供給原料はエチルベンゼンを含有しない、
・パラキシレン21.3質量%、オルトキシレン14.8質量%、メタキシレン33.9質量%およびエチルベンゼン30質量%で構成される供給原料。
【0195】
実施例6において、本発明による実施例3の吸着材料を使用して試験を行った。本試験によって、14%のエチルベンゼンを含有する供給原料について、99.7%の純度および少なくとも97%の収率でパラキシレンを得るために必要な供給原料および脱着剤の注入速度を求めることが可能となった。
【0196】
パラキシレンは、49.9g・分
−1の速度で供給原料をおよび35.5g・分
−1の速度で脱着剤を注入することにより、ならびに66秒の注入箇所および抜き出し箇所の置換時間を適用することにより、純度99.7%、収率97%で抽出物において得られる。抽出物の流速は19.9g・分
−1であり、区域4の流速は194.8g・分
−1である。
【0197】
その後、実施例2および実施例3の吸着材料に、各種の供給原料を用いて、同じ脱着剤流速を印加することによって試験を行った。他方、供給原料流速、注入箇所および抜き出し箇所の置換時間ならびにリサイクル率は、必要な性能、即ち純度99.7%および収率97%が達成されるように調整され得る。結果を下の表3に示す。
【0198】
【表3】
【0199】
図4は、X結晶を主成分とする実施例2による吸着材料の場合およびLSX結晶を主成分とする本発明による実施例3による吸着材料の場合の、供給原料流速の変化を、これに含有されたエチルベンゼンの含有率の関数として示す。
【0200】
本実施例において、本発明による実施例3の吸着材料を使用すると、実施例2の比較吸着材料によって処理したもの以上の高い供給原料流速を注入することにより、同時に同じカラムを使用して参照脱着剤流速、即ち35.5g・分
−1を注入することにより、供給原料に含有されたエチルベンゼンの含有率とは無関係に、必要な純度および収率性能を備えたパラキシレンを得ることができる。エチルベンゼンの含有率が高いほど、本発明による実施例3の吸着材料によって得られる生産性の上昇が比例して大きくなることも認められる。実施例3の吸着材料の場合には、実施例2の吸着材料と比べて、エチルベンゼンの含有率の関数としての生産性の変化がより小さいことも認められた。
【0201】
エチルベンゼンが0から30%の間の範囲に及ぶ供給原料組成では、本発明による実施例3の吸着材料の場合には、5%未満の生産性の変化が見出される。対照的に、組成の変化が同じでは、本発明による実施例2の吸着材料の場合には、12%を超える生産性の変化が見出される。