特許第6641415号(P6641415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641415
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20200127BHJP
   G02B 7/04 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   G02B7/02 A
   G02B7/04 E
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-88006(P2018-88006)
(22)【出願日】2018年5月1日
(62)【分割の表示】特願2015-26669(P2015-26669)の分割
【原出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-139006(P2018-139006A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 寛志
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−157320(JP,A)
【文献】 特開2001−245186(JP,A)
【文献】 特開2010−286508(JP,A)
【文献】 特開2010−134409(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/122849(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/057859(WO,A1)
【文献】 特開2005−195682(JP,A)
【文献】 特開2007−271878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズが設けられたレンズバレルを保持可能な筒状のレンズ保持部材と、
該レンズ保持部材を光軸方向へ移動可能に支持する支持部材と、
前記レンズ保持部材を前記光軸方向に沿って上下に移動させる駆動機構と、を備えた非ネジタイプのレンズ駆動装置において、
前記レンズバレルと前記レンズ保持部材とは、ネジ留めではなく接着剤によって互いに固定され、
前記レンズバレルが挿通される前記レンズ保持部材の筒部の内周面には、前記レンズバレルとの隙間が一定の位置決め部と、前記位置決め部の上側に位置し上方に向かうにしたがって前記位置決め部よりも前記レンズバレルとの隙間が大きくなる傾斜部と、が設けられ、
前記レンズ保持部材を上方側から見た上面視において、前記傾斜部が露出しており、
前記レンズ保持部材の前記筒部の前記内周面と前記レンズバレルとの間には前記内周面の全長に亘って筒状に伸びる隙間が生じるように構成されており、
前記レンズバレルの外周面における、前記レンズ保持部材の前記傾斜部と対向する位置に、前記接着剤を収容可能な溝部が形成されており、
少なくとも前記傾斜部と前記レンズバレルとの間に前記接着剤が充填され、前記接着剤によって前記レンズバレルが前記レンズ保持部材に固定されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記レンズ保持部材は、前記傾斜部の上側に前記傾斜部と隣接する部分を有し、
前記隣接する部分の径は、前記傾斜部の径以上であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記位置決め部と前記傾斜部との境界部が前記筒部の前記光軸方向における中間位置よりも下側に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記光軸方向に沿った直線とのなす角である傾斜角が異なる第1傾斜部と第2傾斜部とを有し、
前記第2傾斜部の前記傾斜角が前記第1傾斜部の前記傾斜角より大きく、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部より前記レンズ保持部材の上方側に配設され、
前記第2傾斜部及び前記第1傾斜部と前記レンズバレルとの間に前記接着剤が充填されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記レンズバレルの下部側には、前記光軸方向と交差する方向に向けて外周から突出した突部が設けられ、
当該レンズバレルが前記レンズ保持部材の前記筒部に下方側から挿通されて、前記突部が前記筒部の下端部と対向して配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカメラ付き携帯機器に搭載されるレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される携帯機器にカメラ機構が搭載されているのは一般的となってきた。そして、この小型の携帯機器に搭載されるカメラ機構の主要部品であるレンズ駆動装置には、小型化の要求に加え、精度良くレンズバレル(鏡筒)を駆動させるという要求が高まってきた。この2つの要求を満たすべきレンズ駆動装置として、レンズバレル(鏡筒)を保持するレンズホルダ(レンズ保持部材)を駆動するための磁気回路をレンズホルダの四方に設けたものが良く知られている。
【0003】
また、上述したレンズ駆動装置には、レンズバレルをレンズホルダに保持させる方法として、双方をねじで留めるネジタイプと接着剤を用いて固定する接着タイプとがあり、特に、接着タイプでは、ネジ山がないので、レンズバレルを大きくできてレンズ径を大きくできる、レンズバレル及びレンズホルダを作製する金型を簡易な形状にできる、等のメリットを有している。
【0004】
このような接着タイプのレンズ駆動装置として、特許文献1(従来例)では、図14に示すようなレンズ駆動装置900が提案されている。図14は、従来例のレンズ駆動装置900が用いられたカメラモジュール999の縦断面図である。
【0005】
図14に示すレンズ駆動装置900は、複数の撮像レンズ906を保持するレンズバレル907を光軸方向に移動させる可動部と、撮像レンズ906の駆動時に位置が変動しない固定部と、から構成され、可動部が固定部の内部に収容されている。また、レンズ駆動装置900は、図14に示すように、可動部として、レンズバレル907を保持するレンズホルダ908と、レンズホルダ908の外周端部(フランジ部)に固定されているコイル910と、を有している。また、レンズ駆動装置900は、図14に示すように、固定部として、底部を構成しているベース915と、ベース915上に固定され側面部を構成しているヨーク911と、ヨーク911の内側面に配置されている永久磁石912と、ヨーク911の上方に配置され上部(天面)を構成しているカバー914と、を有している。そして、この接着タイプのレンズ駆動装置900は、レンズバレル907とレンズホルダ908との固定には、熱硬化型のUV接着剤、または、嫌気性のUV接着剤を好適に用いており、レンズホルダ908とレンズバレル907との隙間に接着剤を入り込ませるとともに、レンズホルダ908とレンズバレル907表面に盛り上がったフィレット(接着剤)924を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−134409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来例では、レンズバレル907とレンズホルダ908との隙間が、一定で、しかも狭いので(図14では表記できていない程狭い)、レンズバレル907とレンズホルダ908間の接着強度が弱くなっており、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置900に加わった場合に、レンズバレル907が外れる虞があるという課題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するもので、レンズバレルが確実に保持可能なレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明のレンズ駆動装置は、レンズが設けられたレンズバレルを保持可能な筒状のレンズ保持部材と、該レンズ保持部材を光軸方向へ移動可能に支持する支持部材と、前記レンズ保持部材を前記光軸方向に沿って上下に移動させる駆動機構と、を備えた非ネジタイプのレンズ駆動装置において、前記レンズバレルと前記レンズ保持部材とは、ネジ留めではなく接着剤によって互いに固定され、前記レンズバレルが挿通される前記レンズ保持部材の筒部の内周面には、前記レンズバレルとの隙間が一定の位置決め部と、前記位置決め部の上側に位置し上方に向かうにしたがって前記位置決め部よりも前記レンズバレルとの隙間が大きくなる傾斜部と、が設けられ、前記レンズ保持部材を上方側から見た上面視において、前記傾斜部が露出しており、前記レンズ保持部材の前記筒部の前記内周面と前記レンズバレルとの間には前記内周面の全長に亘って筒状に伸びる隙間が生じるように構成されており、前記レンズバレルの外周面における、前記レンズ保持部材の前記傾斜部と対向する位置に、前記接着剤を収容可能な溝部が形成されており、少なくとも前記傾斜部と前記レンズバレルとの間に前記接着剤が充填され、前記接着剤によって前記レンズバレルが前記レンズ保持部材に固定されていることを特徴としている。この場合において、前記レンズ保持部材は、前記傾斜部の上側に前記傾斜部と隣接する部分を有し、前記隣接する部分の径は、前記傾斜部の径以上であることが好ましい。
【0010】
これによれば、本発明のレンズ駆動装置は、レンズ保持部材とレンズバレルとの間に確実にかつ充分に接着剤を充填させることができる。このため、レンズ保持部材とレンズバレル間の接着強度を高めることができる。このことにより、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置に加わった場合であっても、レンズバレルを確実に保持することができる。また、これによれば、溝部に接着剤が充填されるようになり、レンズバレルの外周面とレンズ保持部材の傾斜部とで形成される接着剤の充填領域をより一層多く確保することができる。このことにより、レンズバレルとレンズ保持部材との間の接着強度をより一層高めることができ、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置に加わった場合であっても、レンズバレルをレンズ保持部材により一層確実に保持することができる。
【0011】
また、本発明のレンズ駆動装置は、前記位置決め部と前記傾斜部との境界部が前記筒部の前記光軸方向における中間位置よりも下側に位置していることを特徴としている。
【0012】
これによれば、傾斜部とレンズバレルとで形成される接着剤の充填領域をより多く確保することができる。このことにより、レンズ保持部材とレンズバレル間の接着強度をより高めることができ、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置に加わった場合であっても、レンズバレルをより確実に保持することができる。
【0013】
また、本発明のレンズ駆動装置は、前記傾斜部が前記光軸方向に沿った直線とのなす角である傾斜角が異なる第1傾斜部と第2傾斜部とを有し、前記第2傾斜部の前記傾斜角が前記第1傾斜部の前記傾斜角より大きく、前記第2傾斜部が前記第1傾斜部より前記レンズ保持部材の上方側に配設され、前記第2傾斜部及び前記第1傾斜部と前記レンズバレルとの間に前記接着剤が充填されていることを特徴としている。
【0014】
これによれば、傾斜部とレンズバレルとで形成される接着剤の充填領域をより一層多く確保することができるとともに、特に、第2傾斜部側に広がった接着剤層を形成することができる。このため、レンズ保持部材とレンズバレル間の接着強度をより一層高めることができるとともに、特に、接着剤層がくさびとなり、レンズバレルを下方側に抜け難くすることができる。このことにより、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置に加わった場合であっても、レンズバレルをより一層確実に保持することができる。
【0015】
また、本発明のレンズ駆動装置は、前記レンズバレルの下部側には、前記光軸方向と交差する方向に向けて外周から突出した突部が設けられ、当該レンズバレルが前記レンズ保持部材の前記筒部に下方側から挿通されて、前記突部が前記筒部の下端部と対向して配置されていることを特徴としている。
【0016】
これによれば、落下等で強い衝撃がレンズバレルの上方側に向けて加わった場合であっても、突部と下端部とが当接可能なので、レンズバレルが上方に外れる可能性を無くすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のレンズ駆動装置は、レンズ保持部材とレンズバレルとの間に確実にかつ充分に接着剤を充填させることができる。このため、レンズ保持部材とレンズバレル間の接着強度を高めることができる。このことにより、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置に加わった場合であっても、レンズバレルを確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置を説明する分解斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置を説明する図であって、図2(a)は、斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すX1側からみた側面図である。
図3】本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置を説明する図であって、図3(a)は、図2に示すZ1側から見た上面図であり、図3(b)は、図2に示すZ2側から見た底面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置のレンズバレルを説明する図であって、図4(a)は、レンズが保持されたレンズバレルの斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示すX1側から見たレンズバレルの側面図である。
図5】本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置を説明する図であって、図5(a)は、図3(a)に示すIV−IV線における断面図であり、図5(b)は、図3(a)に示すV−V線における断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置のレンズ保持部材を説明する図であって、図6(a)は、図1に示すZ1側から見たレンズ保持部材の上方斜視図であり、図6(b)は、図1に示すZ2側から見たレンズ保持部材の下方斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置のレンズ保持部材を説明する図であって、レンズ保持部材にコイルが巻かれた状態を示した斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置を説明する図であって、図5(a)に示すP部分の拡大断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置のヨークを説明する図であって、図9(a)は、図1に示すZ1側から見たヨークの上方斜視図であり、図9(b)は、図1に示すZ2側から見たヨークの下方斜視図である。
図10】本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置を説明する図であって、図2(a)に示すレンズバレル及びヨークを省略した斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置の支持部材を説明する図であって、図11(a)は、支持部材である上側板ばねの上面図であり、図11(b)は、支持部材である下側板ばねの上面図である。
図12】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置の固定機構を説明する図であって、図12(a)は、ベース部材の斜視図であり、図12(b)は、ベース部材に下側板ばねを組み付けた斜視図である。
図13】本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置の変形例1を説明するレンズ保持部材の斜視図である。
図14】従来例のレンズ駆動装置が用いられたカメラモジュールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101を説明する分解斜視図である。図2(a)は、レンズ駆動装置101の斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すX1側から見たレンズ駆動装置101の側面図である。図3(a)は、図2に示すZ1側から見たレンズ駆動装置101の上面図であり、図3(b)は、図2に示すZ2側から見たレンズ駆動装置101の底面図である。
【0023】
本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101は、図2及び図3に示すような直方体形状の外観を呈し、図1に示すように、レンズRNZが設けられたレンズバレル11と、レンズバレル11が挿通される筒部12sを有したレンズ保持部材12と、レンズ保持部材12を光軸方向JD(図2に示すZ方向)に沿って上下に移動させる駆動機構M3と、レンズ保持部材12を光軸方向JDへ移動可能に支持する支持部材6(具体的には、後述する上側板ばね16、下側板ばね26A及び下側板ばね26B)と、を備えて構成される。他に、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101では、支持部材6の一部を固定する固定機構R8と、外部と電気的に接続するための端子7と、を有している。
【0024】
また、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101では、駆動機構M3は、図1に示すように、8角形の環状に巻かれたコイル33と、矩形状で箱状の外側ケースを兼ねたヨーク34と、コイル33の四辺と対向して配設された4つの磁石35と、を備えて構成される。また、固定機構R8は、図1に示すように、端子7が埋め込まれたベース部材18から主に構成されてる。
【0025】
このレンズ駆動装置101は、レンズバレル11が接着剤によってレンズ保持部材12に固定されて、図示しない撮像素子を実装した基板上に取り付けられる。そして、レンズ駆動装置101は、基板からの電源よりコイル33に通電されて、駆動機構M3で生じる電磁力により、撮像素子の上方に配置されるレンズ保持部材12をレンズRNZの光軸方向JD(図2に示すZ方向)に沿って移動させるものである。つまり、レンズ駆動装置101は、撮像素子に対して、レンズバレル11に保持されたレンズRNZを離れる方向に移動させてマクロ撮影を可能にし、レンズバレル11に保持されたレンズRNZを近づける方向に移動させて無限遠撮影を可能にしている。
【0026】
次に、レンズ駆動装置101の各構成部材に関して、図面を用いて詳細に説明する。先ず、レンズ駆動装置101のレンズバレル11について説明する。図4は、レンズバレル11を説明する図であって、図4(a)は、レンズRNZが保持されたレンズバレル11の斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示すX1側から見たレンズバレル11の側面図である。図5は、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101を説明する図であって、図5(a)は、図3(a)に示すIV−IV線における断面図であり、図5(b)は、図3(a)に示すV−V線における断面図である。
【0027】
レンズ駆動装置101のレンズバレル11は、ポリアミド樹脂(PA、polyamide)等の合成樹脂を用いて射出成形して作製されており、図4に示すように、円筒形状を有している。そして、レンズバレル11の円筒の中には、図5に示すように、レンズRNZが収容されている。なお、図5には、断面形状の異なる大小のレンズRNZが5つ示されているが、形状や個数ついてはこれに限るものではない。
【0028】
また、レンズバレル11の下部側には、図4に示すように、レンズバレル11の外周から光軸方向JDと交差する交差方向(図4ではXY平面方向)に向けて突出した突部11tが全周に亘って設けられており、レンズ駆動装置101が組み立てられた際には、図5に示すように、この突部11tがレンズ保持部材12の筒部12s(具体的には後述する下端部12u)と対向して配置される。これにより、落下等で強い衝撃がレンズバレル11の上方側(図5に示すZ1方向側)に向けて加わった場合であっても、突部11tと下端部12uとが当接可能なので、レンズバレル11が上方に外れる可能性を無くすことができる。なお、本発明の第1実施形態では、突部11tを段差形状にして全周に亘って設ける構成としたが、これに限るものではなく、例えば一部が外周から突出していても良い。その際には、少なくとも1ヶ所、好ましくは2ヶ所以上設けられているのが良い。
【0029】
また、図4に示すように、レンズバレル11の外周面11pには、全周に亘って光軸方向JDと交差する方向に溝部11uが形成されており、接着剤が塗布された際には、この溝部11uには、接着剤が収容されて充填されるようになる。これにより、レンズ保持部材12の筒部12s(具体的には後述する傾斜部92)とレンズバレル11の外周面11pとで形成される接着剤の充填領域を多く確保することができる。このことにより、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着強度を高めることができ、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置101に加わった場合であっても、レンズバレル11をレンズ保持部材12に確実に保持することができる。
【0030】
次に、レンズ駆動装置101のレンズ保持部材12について説明する。図6(a)は、図1に示すZ1側から見たレンズ保持部材12の上方斜視図であり、図6(b)は、図1に示すZ2側から見たレンズ保持部材12の下方斜視図である。図7は、レンズ保持部材12にコイル33が巻かれた状態を示した斜視図である。図8は、図5(a)に示すP部分の拡大断面図である。なお、図8では、説明を分かり易くするため、接着剤層ADを模式的に示している。
【0031】
レンズ駆動装置101のレンズ保持部材12は、液晶ポリマー(LCP、Liquid Crystal Polymer)等の合成樹脂を用いて射出成形して作製されており、図6に示すように、筒状に形成されており、円形の外周面12m及び内周面12qを有する筒部12sと、筒部12sの下端の外周面12mから径方向外側に突出した鍔部12vと、から構成されている。そして、この筒部12sには、レンズバレル11がレンズ保持部材12の下方側から挿通されて、接着剤により、レンズバレル11がレンズ保持部材12に保持される。
【0032】
レンズ保持部材12の筒部12sには、図6(a)に示すように、その上部に位置する上端側に凹状の窪みを有した台座部12dが対向して2箇所に設けられている(図6(a)に示すY方向の2箇所)。この台座部12dには、図5(a)に示すように、支持部材6である上側板ばね16の一方側の部分(具体的には後述する第1部分16a)が載置される。また、図6(b)に示すように、筒部12sの下部に位置する下端部12uは、平面となっており、レンズバレル11がレンズ保持部材12の下方側から挿通された際には、下端部12uとレンズバレル11の突部11tとが当接可能に対向するようになる。これにより、前述したように、落下等で強い衝撃がレンズバレル11の上方側に向けて加わった場合であっても、下端部12uと突部11tとが当接可能なので、レンズバレル11が上方に外れる可能性を無くすことができる。なお、本発明の第1実施形態では、下端部12uを一様な平面形状にして全周に亘って設ける構成としたが、これに限るものではなく、例えば下端部12uの一部が下方に向けて突出しており、その突出した部分がレンズバレル11の突部11tと対向するよう構成しても良い。その際には、少なくとも1ヶ所、好ましくは2ヶ所以上設けられているのが良い。
【0033】
筒部12sの外周面12mには、図6に示すように、コイル33を内側から支持するコイル支持部12jが均等に8箇所設けられているとともに、このコイル支持部12jの上端側には、鍔部12vと対向して径方向外側に突出した庇部12hが4箇所形成されている。そして、図7に示すように、コイル33がコイル支持部12jに支持され庇部12h及び鍔部12vに挟まれるようにして、レンズ保持部材12の外周面12m側に8角形状で巻かれている。
【0034】
筒部12sの内周面12qには、図8に示すように、レンズバレル11との隙間が一定の位置決め部52と、位置決め部52の上側に位置し上方に向かうにしたがって位置決め部52よりもレンズバレル11との隙間が大きくなる傾斜部92と、が設けられている。そして、レンズバレル11がレンズ保持部材12に保持された際に、この傾斜部92とレンズバレル11との隙間に確実にかつ充分に接着剤が充填され、接着剤によってレンズバレル11がレンズ保持部材12に固定されるようになる。これにより、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着強度を高めることができる。このことにより、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置101に加わった場合であっても、レンズバレル11を確実に保持することができる。
【0035】
また、レンズバレル11の材質がポリアミド樹脂(PA)でレンズ保持部材12の材質が液晶ポリマー(LCP)の場合、ポリアミド樹脂(PA)の方が一般に接着性が良いので、接着性が劣る液晶ポリマー(LCP)のレンズ保持部材12の方に傾斜部92を設けるように構成した。これにより、レンズ保持部材12の方の接着面積を広くすることができ、レンズ保持部材12の方の接着強度を高められるので、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着を強くすることができる。
【0036】
更に、本発明の第1実施形態では、図8に示すように、位置決め部52と傾斜部92との境界部(図8に示すKP)が、筒部12sの光軸方向JDにおける中間位置よりも下側に位置している。言い換えると、境界部が筒部12sの内周面12qの上下方向(図8に示すZ方向)における中間位置よりも下側に位置している。これにより、傾斜部92とレンズバレル11とで形成される接着剤の充填領域をより多く確保することができ、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着強度をより高めることができる。また、前述したレンズバレル11の外周面11pに形成された溝部11uが、この傾斜部92と対向している位置に設けられているので、溝部11uに確実にかつ充分に接着剤が充填される。
【0037】
また、レンズバレル11がレンズ保持部材12に保持された際に、傾斜部92は、図8に示すように、縦断面視して、光軸方向JDに沿った直線とのなす角である傾斜角が異なる2つの第1傾斜部92aと第2傾斜部92bとを有しており、第2傾斜部92bの傾斜角の方が第1傾斜部92aの傾斜角より大きくなっている。なお、本発明の第1実施形態では、レンズバレル11の外周が光軸方向JDに沿った直線と一致しているので、レンズバレル11の外周とのなす角が傾斜角とも云える。
【0038】
また、この傾斜角が大きい第2傾斜部92bが第1傾斜部92aよりレンズ保持部材12の内周面12qの上方側に配設されており、この第2傾斜部92b側から接着剤を充填し易くなっていて、第2傾斜部92b及び第1傾斜部92aとレンズバレル11との間に接着剤が確実にかつ充分に充填されている。これにより、第2傾斜部92b側に広がった接着剤層ADを形成することができ、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着強度をより一層高めることができる。特に、接着剤層ADの断面形状が上方に広がったくさび形状となっているので、下方に向けた強い力が加わった場合には、下方にレンズバレル11が抜け難い構成となっている。
【0039】
レンズ保持部材12の鍔部12vには、図6(b)に示すように、その底面から下方に突出した角形凸状の絡げ部12kが2ヶ所、丸形凸状の突設部12tが4箇所設けられている。この絡げ部12kには、コイル33の巻始め及び巻終わりに対応して、コイル33の導線の両端側が絡げられている。また、この突設部12tには、支持部材6である下側板ばね26A及び下側板ばね26Bの一方側の部分(具体的には後述する第3部分26c)が固定される。
【0040】
次に、レンズ駆動装置101の駆動機構M3について説明する。図9(a)は、図1に示すZ1側から見た駆動機構M3におけるヨーク34の上方斜視図であり、図9(b)は、図1に示すZ2側から見たヨーク34の下方斜視図である。図10は、図2(a)に示すレンズバレル11及びヨーク34(駆動機構M3)を省略したレンズ駆動装置101の斜視図である。
【0041】
レンズ駆動装置101の駆動機構M3は、前述したように、8角形の環状に巻かれたコイル33と、外側ケースを兼ねた矩形状で箱状のヨーク34と、コイル33の四辺と対向して配設された4つの磁石35と、を備えて構成される。そして、駆動機構M3は、コイル33に流れる電流と磁石35から発生する磁気とで磁気回路を構成し、レンズ保持部材12を光軸方向JDに沿って上下に移動させている。
【0042】
先ず、駆動機構M3のコイル33は、図1及び図7に示すように、環状形状で8角形の角度を有して導線を巻回して形成されている。なお、図1及び図7では、導線は絶縁部材で表面を被覆していることもあり、導線の詳細な巻回状態を省略して示している。また、コイル33は、図7に示すように、レンズ保持部材12の筒部12sの周囲を囲む位置に配設され、コイル支持部12j(図6を参照)により内側から支持された状態で、コイル33の一部が庇部12hと鍔部12vに挟まれるようにして、鍔部12vの上面に固定されている。そして、コイル33の内周面33uがコイル支持部12jにより等方的にバランス良く支持されるため、コイル33の中心軸とレンズ保持部材12の中心軸とが一致した状態でレンズ保持部材12に保持される。これにより、レンズ保持部材12に保持されたレンズバレル11のレンズRNZの光軸とレンズ保持部材12の中心軸とを容易に一致させ易くなる。
【0043】
次に、駆動機構M3のヨーク34は、鉄等の軟磁性体材料の板材に抜き加工や絞り加工を施して作製しており、図9に示すように、外形が収容部34sを有した箱状に形成されている。そして、ヨーク34は、外側の環状の外ヨーク34Aと、外ヨーク34Aの上端(図9に示すZ1側)と連続して設けられた平板状の上面部34Bと、上面部34Bの一部から下方(図9に示すZ2方向)に延設された4つの内ヨーク34Cと、を有して構成されている。また、内ヨーク34Cが形成された四隅には、上面部34Bより下方に位置する段差部34Dが設けられている。このように構成されたヨーク34は、図2(a)に示すように、レンズ保持部材12及びコイル33(図示していない)を収容部34sに収容するとともに覆うようにして、ベース部材18に係合されて、ベース部材18とともに外形を構成している。
【0044】
ヨーク34の外ヨーク34Aは、図3(a)に示すように、平面視して、矩形状をしている。また、ヨーク34の内ヨーク34Cは、図3(a)に示すように、平面視して、円弧状に形成され、外ヨーク34Aの4つの角部に対向するように、等間隔で配設されている。また、詳細な図示はしていないが、レンズ駆動装置101が組み立てられた際に、内ヨーク34Cのそれぞれは、レンズ保持部材12の筒部12sの外周に沿って配設されるとともに、コイル33の内周面33uと対向して配設される。更に、内ヨーク34Cのそれぞれは、コイル33を挟んで、磁石35のそれぞれと対向する位置に配設されている。なお、ヨーク34を絞り加工で作製する際には、ヨーク34の内ヨーク34Cが円弧状であるので、容易に絞り加工を行うことができる。このため、ヨーク34の内ヨーク34Cの形状及び配設の位置の精度を高めることができる。
【0045】
最後に、駆動機構M3の磁石35は、図1に示すように、断面形状が台形形状で、平板状の外形をしており、4つの磁石35が、コイル33の外側に位置するとともに、ヨーク34の四隅に等分に配設されている。また、磁石35の台形形状における傾斜する2つの外側面は、外ヨーク34Aに沿った形状をしている。このため、レンズ駆動装置101を組み立てる際に、この2つの外側面を外ヨーク34Aに押しあてて配置することができ、磁石35の位置決めを容易に行うことができる。そして、図5(b)に示すように、磁石35は、ヨーク34の段差部34Dとの間に支持部材6(上側板ばね16)の一部を挟持するようにして、接着剤により、ヨーク34に固定されている。
【0046】
次に、レンズ駆動装置101の支持部材6について説明する。図11は、支持部材6を説明する図であって、図11(a)は、支持部材6である上側板ばね16の上面図であり、図11(b)は、支持部材6である下側板ばね26A及び下側板ばね26Bの上面図である。
【0047】
レンズ駆動装置101の支持部材6は、銅合金を主な材質とした金属板から作製されており、図10に示すように、レンズ保持部材12とヨーク34との間に配設される上側板ばね16と、レンズ保持部材12とベース部材18との間に配設される2つの下側板ばね(26A、26B)と、から構成されている。そして、レンズ保持部材12と支持部材6のそれぞれ(上側板ばね16、下側板ばね26A、下側板ばね26B)が係合されて、レンズ保持部材12が光軸方向JD(図2に示すZ方向)へ移動可能になるように、レンズ保持部材12を空中で支持している。なお、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bは、コイル33の両端側とそれぞれ電気的に接続されているので、コイル33への給電部材としても用いられる。
【0048】
先ず、支持部材6の上側板ばね16は、図11(a)に示すように、略矩形状をしており、レンズ保持部材12に固定される2箇所の第1部分16aと、ヨーク34と磁石35とで挟持されて固定される4箇所の第2部分16bと、第1部分16aと第2部分16bとの間に位置する4箇所の弾性腕部16gと、4箇所の第2部分16b同士を繋ぐ桟部16rと、を有して構成されている。
【0049】
そして、上側板ばね16がレンズ駆動装置101に組み込まれた際には、図10に示すように、第1部分16aがレンズ保持部材12の台座部12dに載置され、第1部分16aと台座部12dとを接着剤で固定することにより、上側板ばね16の一方側がレンズ保持部材12に固定されるようになる。また、図5(b)に示すように、第2部分16bが磁石35の上面と当接し、ヨーク34との間に挟持されて、上側板ばね16の他方側が固定されるようになる。
【0050】
また、上側板ばね16は、図11(a)に示すように、ほぼ線対称の形状に構成しており、第1部分16aの2箇所の均等な位置でレンズ保持部材12に固定されているとともに、ベース部材18と一体化されたヨーク34に対して第2部分16bの4箇所の均等な位置で固定されている。これにより、上側板ばね16は、レンズ保持部材12をバランス良く空中で支持することができる。
【0051】
支持部材6の下側板ばね(16A、16B)は、図11(b)に示すように、それぞれの内側形状が半円形状をしており、レンズ保持部材12と係合される4箇所の第3部分26cと、ベース部材18と係合される4箇所の第4部分26dと、第3部分26cと第4部分26dとの間に位置する4箇所の弾性腕部26gと、2箇所の第3部分26cを繋ぐ2つの第1連結部26pと、2箇所の第4部分26dを繋ぐ2つの第2連結部26qと、を有して構成されている。
【0052】
そして、この下側板ばね(26A、26B)がレンズ駆動装置101に組み込まれた際には、図6(b)に示すレンズ保持部材12の4つの突設部12tが、図11(b)に示す下側板ばね(26A、26B)の第3部分26cに設けられた貫通孔26kに挿通されて嵌合される。これにより、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bの一方側がレンズ保持部材12に位置決めされるとともに、レンズ保持部材12に固定される。なお、この際には、レンズ保持部材12の突設部12tに熱かしめを施して、より確実に下側板ばね26A及び下側板ばね26Bをレンズ保持部材12に固定している。
【0053】
一方、下側板ばね(26A、26B)の第4部分26dに設けられた貫通孔26m(図11(b)を参照)に、後述するベース部材18の上面に設けられた突設部18tに挿通されて嵌合される。これにより、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bの他方側がベース部材18に位置決めされるとともに、ベース部材18に固定される。
【0054】
また、下側板ばね26Aと下側板ばね26Bとは、図11(b)に示すように、ほぼ線対称の形状に構成しており、レンズ保持部材12に対して第3部分26cの4箇所の均等な位置で接続されているとともに、ベース部材18に対して第4部分26dの4箇所の均等な位置で接続されている。これにより、レンズ保持部材12をバランス良く空中で支持することができる。従って、以上のように構成された支持部材6(上側板ばね16、下側板ばね26A及び下側板ばね26B)により、レンズ保持部材12を光軸方向JDへ移動可能に支持している。
【0055】
最後に、レンズ駆動装置101の固定機構R8について説明する。図12(a)は、固定機構R8のベース部材18の斜視図であり、図12(b)は、ベース部材18に下側板ばね26A及び下側板ばね26Bを組み付けた斜視図である。
【0056】
レンズ駆動装置101の固定機構R8は、上側板ばね16の他方側である第2部分16bを固定するヨーク34(磁石35も含む)と、下側板ばね(26A、26B)の他方側である第4部分26dを固定するベース部材18と、を有して構成されている。ここでは、上側板ばね16の固定機構R8については、駆動機構M3でもあるヨーク34の項目で前述したので説明を省略し、下側板ばね(26A、26B)の固定機構R8についてのみ説明する。
【0057】
固定機構R8のベース部材18は、液晶ポリマー(LCP)等の合成樹脂を用いて射出成形して作製されており、図1及び図12に示すように、外形が矩形の板状形状で構成され、中央に円形の開口18kが形成されている。また、ベース部材18の上面には、上方に向けて突出する4つの突設部18tが四隅に設けられている。そして、下側板ばね(26A、26B)の第4部分26dに設けられた貫通孔26m(図11(b)を参照)に、ベース部材18の上面に設けられた突設部18tが挿通されて、貫通孔26mと突設部18tとが嵌合される。なお、この際には、ベース部材18の突設部18tに熱かしめを施して、より確実に下側板ばね26A及び下側板ばね26Bをベース部材18に固定している。
【0058】
ベース部材18には、図5(b)に示すように、銅や鉄若しくはそれらを主成分とした合金等の材質を用いた金属板からなる端子7が、インサート成形されて埋め込まれている。そして、電気的に絶縁された2つの端子7(端子7A及び端子7B)のそれぞれは、図示していない撮像素子を実装した基板と電気的に接続され、この2つの端子7から電力を供給できるようになっている。そして、端子7の一方の端子7Aは、下側板ばね26Aと電気的に接続されるとともに、端子7の他方の端子7Bは、下側板ばね26Bと電気的に接続されており、この端子7A及び端子7Bから、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bを介して、コイル33に電流を流すことができる。
【0059】
また、ベース部材18には、図5に示すように、銅や鉄若しくはそれらを主成分とした合金等の材質を用いた金属板からなる接続部材57が、端子7と同様に、インサート成形されて埋め込まれており、接続部材57の一部は、図3に示すように、ヨーク34の四隅に一部を露出している。そして、ヨーク34の外ヨーク34Aの内壁とベース部材18の外周側面が組み合わさって位置決めされた後に、ベース部材18の接続部材57とヨーク34の四隅とのつなぎ目部分を4箇所溶接して、ヨーク34をベース部材18に固定している。
【0060】
以上のように構成された本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0061】
本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101は、レンズ保持部材12とレンズバレル11との間に隙間が生じるように、レンズ保持部材12の筒部12sの内周面12qに位置決め部52と傾斜部92とを設けたので、レンズ保持部材12とレンズバレル11との隙間に確実にかつ充分に接着剤を充填させることができる。このため、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着強度を高めることができる。このことにより、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置101に加わった場合であっても、レンズバレル11を確実に保持することができる。
【0062】
また、位置決め部52と傾斜部92との境界部が筒部12sの光軸方向JDにおける中間位置よりも下側に位置しているので、傾斜部92とレンズバレル11とで形成される接着剤の充填領域をより多く確保することができる。このことにより、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着強度をより高めることができ、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置101に加わった場合であっても、レンズバレル11をより確実に保持することができる。
【0063】
また、傾斜部92が、第1傾斜部92aと、第1傾斜部92aの傾斜角より大きい第2傾斜部92bと、を有しており、第2傾斜部92bに接着剤が充填されているので、傾斜部92とレンズバレル11とで形成される接着剤の充填領域をより一層多く確保することができるとともに、特に、第2傾斜部92b側に広がった接着剤層ADを形成することができる。このため、レンズ保持部材12とレンズバレル11間の接着強度をより一層高めることができるとともに、特に、接着剤層ADがくさびとなり、レンズバレル11を下方側に抜け難くすることができる。このことにより、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置101に加わった場合であっても、レンズバレル11をより一層確実に保持することができる。
【0064】
また、レンズバレル11の下部には、光軸方向JDと交差する外周側に突出した突部11tが設けられ、突部11tがレンズ保持部材12の筒部12sの下端部12uと対向して配置されているので、落下等で強い衝撃がレンズバレル11の上方側に向けて加わった場合であっても、突部11tと下端部12uとが当接可能なので、レンズバレル11が上方に外れる可能性を無くすことができる。
【0065】
また、レンズバレル11の外周面11pに溝部11uが形成されているので、この溝部11uに接着剤が充填されるようになり、レンズバレル11の外周面11pとレンズ保持部材12の傾斜部92とで形成される接着剤の充填領域をより一層多く確保することができる。このことにより、レンズバレル11とレンズ保持部材12との間の接着強度をより一層高めることができ、落下等で強い衝撃がレンズ駆動装置101に加わった場合であっても、レンズバレル11をレンズ保持部材12により一層確実に保持することができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0067】
<変形例1><変形例2>
図13は、変形例1を説明するレンズ保持部材C12の斜視図である。上記第1実施形態では、レンズ保持部材12の筒部12sの内周面12qの全周に亘って第1傾斜部92a及び第2傾斜部92bを設けるように好適に構成したが、これに限るものではない。例えば、図13に示すように、レンズ保持部材12の内周面12qの一部にのみ、第2傾斜部C92bを設けるように構成しても良い。また、図示はしていないが、第1傾斜部のみが形成された傾斜部であっても良い(変形例2)。
【0068】
<変形例3>
上記第1実施形態では、レンズバレル11の溝部11uが外周面11pを一周する形で形成されていたが、これに限るものではなく、例えばリング状で複数有した形状でも良いし、スパイラル形状でも良い。また、光軸方向JDと交差する方向ではなく、光軸方向JDに沿った縦溝であっても良い。
【0069】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
11 レンズバレル
11p 外周面
11t 突部
11u 溝部
12、C12 レンズ保持部材
12q 内周面
12s 筒部
12u 下端部
52 位置決め部
92 傾斜部
92a 第1傾斜部
92b、C92b 第2傾斜部
M3 駆動機構
6 支持部材
R8 固定機構
RNZ レンズ
JD 光軸方向
101 レンズ駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14