【文献】
Paul de Kerret et al.,Quantized Team Precoding: A Robust Approach for Network MIMO under General CSI Uncetainties,2016 IEEE 17th International Workshop on Signal Processing Advances in Wireless Communications (SPAWC),2016年 7月 6日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施する、前記プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含む
ことを特徴とする、コンピュータープログラム。
プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施する、前記プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータープログラムを記憶する
ことを特徴とする、情報記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明を実施することができる無線通信システム100を概略的に表している。
【0030】
無線通信システム100は複数の送信機を備え、
図1には、そのうちの2つ120a、120bが表されている。無線通信システム100は複数の受信機を更に備え、
図1には、そのうちの2つ110a、110bが表されている。例えば、送信機120a、120bは、無線電気通信ネットワークのアクセスポイント又は基地局であり、受信機110a、110bは、上記アクセスポイント又は上記基地局を介して無線電気通信ネットワークにアクセスする移動端末である。
【0031】
送信機120a、120bは、これらの複数の送信機120a、120bから無線リンク111a、111b、111c、111dを介して複数の受信機110a、110bに向けた送信を行うときの性能を改善するように互いに協働する。無線リンク111aは、送信機120aから受信機110aへの送信チャネルを表し、無線リンク111bは、送信機120aから受信機110bへの送信チャネルを表し、無線リンク111cは、送信機120bから受信機110aへの送信チャネルを表し、無線リンク111dは、送信機120bから受信機110bへの送信チャネルを表す。送信機120a、120bは、送信チャネル観測結果についての長期統計を交換することができるようにするために、
図1Aにリンク121によって示すように相互接続されている。リンク121は、有線とすることもできるし、無線とすることもできる。
【0032】
上記協働は、上記送信を行うときに送信機120a、120bにそれぞれのプリコーダーを適用させることによって達成される。各送信機が上記送信の範囲内で適用しなければならないプリコーダーを求めるように、上記プリコーダーは無線通信システム内において分散形式で求められる。より詳細には、各送信機(複数の送信機の中でインデックスjによって識別される)は、上記複数の送信機のうちの他の送信機から独立して、上記送信を行うために上記複数の送信機によって協働して適用されるべき全体プリコーダーVのそれ自体のビューV
(j)を求める。この態様は、
図3に関して以下で詳述される。
【0033】
本明細書では、使用中の送信機120a、120bの数はK
tで示され、各送信機はM個の数の送信アンテナを有し、使用中の受信機110a、110bの数はK
rで示され、各受信機はN個の数の受信アンテナを有する。受信機110a、110bは、K
t個の送信機の中の複数の送信機から信号を同時に受信するように構成される。したがって、グローバルMIMOチャネルHが、K
t個の送信機とK
r個の受信機との間に作成される。グローバルMIMOチャネルHのうちの、K
t個の送信機の中の第jの送信機をK
r個の受信機の中の第kの受信機にリンクする部分は、本明細書ではH
k,jで示されるN×M行列によって表される。H
k,jもMIMOチャネルを表すことに留意することができる。グローバルMIMOチャネルHのうちの、K
t個の送信機をK
r個の受信機の中の第kの受信機にリンクする部分は、j=1〜K
tのK
t個のMIMOチャネルH
k,jを連結したものであり、したがって、本明細書ではH
kで示されるN×MK
t行列である。H
kもMIMOチャネルを表すことに更に留意することができる。
【0034】
シンボルベクトルs
kのセットを考えることにする。長さNの各シンボルベクトルs
kは、所与の時点においてK
r個の複数の受信機の中の第kの受信機に送信しなければならないデータを表す。上記所与の時点においてK
t個の送信機によってK
r個の受信機に送信される全てのデータを含むスタックされたベクトルs=[s
1T,s
1T,・・・,s
KrT]
Tをsで更に示すことにする。ここで、A
Tは、ベクトル又は行列Aを転置したものを表す。
【0035】
以下の全体プリコーダーVを更に考えることにし、V=[V
1,・・・,V
Kr]、
j=1〜K
tのE
jTVを、全体プリコーダーVのうちの、K
t個の送信機の中の第jの送信機によって適用される部分として更に定義することにする。ここで、E
jは、E
j=[0
M×(j−1)M,I
M×M,0
M×(Kt−j)M]
TとなるようなM×NK
r行列であり、k=1〜K
rのV
kは、全体プリコーダーVのうちの、K
r個の受信機の中の第kの受信機に達するように適用しなければならない等価部分である。上記で既に定義した表記と一致して、V
k(j)は、以下では、K
t個の送信機の中の第jの送信機の観点からのプリコーダー等価部分V
kのビューを表すことに留意されたい。
【0036】
上記E
jの数式における0
M×(j−1)Mは、ゼロのみを含むE
jのM×(j−1)M部分行列を表し、0
M×(Kt−j)Mは、ゼロのみを含むE
jのM×(K
t−j)M部分行列を表し、I
M×Mは、M×M単位部分行列(本明細書における他の状況ではM×M単位行列とすることができる)を表すことに留意されたい。
【0037】
結合処理CoMP(協調マルチポイント送信)手法では、全ての送信機が、所与の時点においてK
r個の受信機に向けて送信されるシンボルベクトルs
kのセットを完全に知っている。
【0038】
K
t=K
rである協調プリコーディング手法では、K
t個の送信機の中の各送信機は、K
r個の受信機の中の1つの受信機と通信する。これは、K
t個の送信機の中の第jの送信機のみが、当該第jの送信機が通信するK
r個の受信機の中の第kの受信機(ただし、k=j)に送信されるシンボルベクトルs
kを知っていなければならないことを意味し、このことは、全体プリコーダーVがブロック対角形状を有することを暗に意味する。K
t個の送信機の中の各第jの送信機が、k≠jとなるようにK
r個の受信機の中の第kの受信機と通信しなければならない場合、全体プリコーダーVにブロック対角形状を持たせるために、インデックスjに関するK
t個の送信機の並べ替え及び/又はインデックスkに関するK
r個の受信機の並べ替えが行われる。
【0039】
上記の記述を考慮すると、無線通信システム100のモデルを以下のように表すことができる。
【数11】
ここで、
−y
kは、シンボルベクトルs
kが上記第kの受信機に送信されたときに、K
r個の受信機の中の第kの受信機によって受信されるシンボルベクトルを表す。
−n
kは、シンボルベクトルs
kの送信中に上記第kの受信機が被る付加雑音を表す。
【0040】
上記式において、項H
kV
ks
kは、K
r個の受信機の中の第kの受信機の観点からの有用な信号を表し、項H
kV
ls
lの和は、シンボルベクトルs
kの送信中にK
r個の受信機の中の第kの受信機が被る干渉を表していることが分かる。
【0041】
K
r個の受信機の中の第kの受信機によって、チャネル知識H
kVから受信フィルターを計算することができる。このチャネル知識は、全体プリコーダーVに従ってプリコーディングされたパイロットが、K
t個の送信機の中の関係している送信機(複数の場合もある)によって送信される場合には直接推定によって取得することもできるし、K
t個の送信機の中の関係している送信機(複数の場合もある)からのシグナリングによって全体プリコーダーVを取得することと、さらに、MIMOチャネルH
k上でプリコーディングなしに送信されたパイロットからこのMIMOチャネルH
kを推定することとによって取得することもできる。ゼロフォーシング受信フィルターを用いるとき、K
r個の受信機の中の第kの受信機は、以下のように定義される線形フィルターT
kを用いる。
【数12】
【0042】
MMSE受信フィルターを用いるとき、K
r個の受信機の中の第kの受信機は、以下のように定義される線形フィルターT
kを用いる。
【数13】
【0043】
次に、シンボルベクトルs
kを推定するフィルタリングされた受信ベクトルT
ky
kについて、上記第kの受信機によって決定が行われる。
【0044】
有効な受信フィルターがない場合(例えば、正則化されたゼロフォーシングが送信機によって適用されるとき)、T
k=Iであることに留意しなければならない。
【0045】
K
t個の送信機は、CSIT(送信機におけるチャネル状態情報)を取得するように構成される。無線通信システム100内のCSI関連データ及び/又はチャネル推定関連データの伝播ルールが、例えば、量子化演算に起因してCSIT誤差をもたらし、その上、K
t個の送信機間のCSIT不一致(すなわち、K
t個の送信機のそれぞれの観点からの異なるCSIT)をもたらすように、CSITは、K
t個の送信機の中の各送信機によって、以下のものから取得される。
−K
r個の受信機の中の1つ以上の受信機からのフィードバックCSI(チャネル状態情報)、及び/又は、
−上記送信機において行われ、チャネル相反特性を用いたチャネル推定、及び/又は、
−K
t個の送信機の中の1つ以上の他の送信機によって提供されるそのようなCSI若しくはそのようなチャネル推定。
【0046】
量子化演算に加えて、K
t個の送信機によって有効に受信されたCSI関連データの差異は、CSITの相違がK
t個の送信機の中の送信機ごとに存在し、これがCSIT不一致をもたらすことを暗に意味することに留意することができる。
【0047】
したがって、グローバルMIMOチャネルHは、K
t個の送信機の中の各第jの送信機を考慮して、以下のように表すことができる。
H=H^
(j)+Δ
(j)
ここで、H^
(j)は、K
t個の送信機の中の第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューを表し、これは、上記第jの送信機によって取得されたCSITから上記第jの送信機によって取得され、Δ
(j)は、有効なグローバルMIMOチャネルHと、上記第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHの上記ビューH^
(j)との間の推定誤差を表す。同様に、H^
k,i(j)は、上記第jの送信機の観点からのMIMOチャネルH
k,iのビューを示し、H^
k(j)は、上記第jの送信機の観点からのMIMOチャネルH
kのビューを示す。
【0048】
したがって、全体プリコーダーVのビューV
(j)は、その場合、CSIT不一致に起因して、K
t個の送信機の中の送信機ごとに僅かに異なる場合がある。K
t個の送信機の中の第jの送信機は、次に、当該第jの送信機によって求められた全体プリコーダーVのビューV
(j)から、当該送信機が上記送信の範囲内で適用しなければならないプリコーダーE
jTV
(j)を抽出する。既述したように、これは、K
t個の送信機(j=1〜K
t)の中の各送信機によって独立して行われる。したがって、最適化は、CSIT不一致にかかわらず、かつ、K
t個の送信機の中の各第jの送信機が、当該送信機が適用しなければならないプリコーダーE
jTV
(j)を独立して求めるにもかかわらず、K
t個の送信機からK
r個の受信機への送信の性能を改善するように十分に行われる。この態様は、
図3に関して以下で詳述される。
【0049】
図2は、無線通信システム100において用いられる通信デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に表している。
図2に例示として示すハードウェアアーキテクチャは、無線通信システム100の各送信機120a、120b及び/又は無線通信システム100の各受信機110a、110bを表すことができる。
【0050】
図示したアーキテクチャによれば、通信デバイスは、通信バス206によって相互接続された次の構成要素、すなわち、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラー又はCPU(中央処理装置)200;RAM(ランダムアクセスメモリ)201;ROM(読み出し専用メモリ)202;SD(セキュアデジタル)カードリーダー203、若しくはHDD(ハードディスクドライブ)又は記憶媒体上に記憶された情報を読み出すように適合された他の任意のデバイス;第1の通信インターフェース204及び可能な場合には第2の通信インターフェース205を備える。
【0051】
通信デバイスが、K
r個の受信機の中の1つの受信機であるとき、第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスがK
t個の送信機からグローバルMIMOチャネルHを介してデータを受信することを可能にする。第2の通信インターフェース205は、この場合、必要ではない。第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスがチャネル状態情報をK
t個の送信機の中の1つ以上の送信機デバイスにフィードバックすることを更に可能にする。
【0052】
通信デバイスが、K
t個の送信機の中の1つの送信機であるとき、第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスが、K
t個の送信機の中の他の送信機と協働して、データを、グローバルMIMOチャネルHを介してK
r個の受信機に送信することを可能にする。第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスが、K
r個の受信機の中の1つ以上の受信機によってフィードバックされたチャネル状態情報を受信することを更に可能にする。その上、第2の通信インターフェース205は、この通信デバイスが、K
t個の送信機の中の1つ以上の他の送信機とデータを交換することを可能にする。
【0053】
CPU200は、ROM202又はSDカード等の外部メモリからRAM201内にロードされた命令を実行することが可能である。通信デバイスに電源が投入された後、CPU200は、RAM201から命令を読み出し、これらの命令を実行することが可能である。これらの命令は、本明細書において説明されるアルゴリズムのステップの一部又は全てをCPU200に実行させる1つのコンピュータープログラムを形成する。
【0054】
本明細書において説明されるアルゴリズムの全てのステップは、PC(パーソナルコンピューター)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラー等のプログラマブルコンピューティングマシンによる一組の命令又はプログラムの実行によってソフトウェアで実施することもできるし、それ以外に、マシン又はFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の専用構成要素によってハードウェアで実施することもできる。
【0055】
図3は、複数の送信機120a、120bから複数の受信機110a、110bに向けてデータを送信するために適用される全体プリコーダーVを推定したものを、無線通信システム100内において分散形式で求めるアルゴリズムを概略的に表している。
図3に示すアルゴリズムは、K
t個の送信機の中の各送信機によって独立して実行される。
図3のアルゴリズムが、K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる送信機120aによって実行されることを例示として考えることにする。
【0056】
第1のステップS301において、送信機120aは、グローバルMIMOチャネルHに関してK
t個の送信機のそれぞれが被るCSIT誤差についての長期統計を収集する。この長期統計は、CSIT誤差のランダムな変動を示し、例えば、CSIT誤差の分散とすることができる。
【0057】
CSIT誤差の所与の統計モデル、例えば中心ガウス分布を用いることによって、CSIT誤差の影響をシミュレーションする当該CSIT誤差の実現値を、収集された長期統計から生成することができる。上記統計モデルに基づくとともに上記収集された長期統計によってパラメーター化された解析的導出を行うことができる。
【0058】
例えば、K
t個の送信機の中の各第jの送信機は、MIMOチャネル推定値H^
k,i(j)と有効なMIMOチャネルH
k,iとの間の、以下のように定義されるチャネル推定誤差に関連した分散行列Σ
k,i(j)を推定又は計算する。すなわち、この分散行列Σ
k,i(j)の各係数は、MIMOチャネル行列H^
k,i(j)及びH
k,iの対応する係数の間の誤差の分散である。この場合、チャネル推定誤差は、チャネル係数ごとに独立していると仮定されることに留意しなければならない。一変形形態では、MIMOチャネル行列H^
k,i(j)及びH
k,iの間の(係数ごとの)差H^
k,i(j)−H
k,iをベクトル化したものの共分散行列が推定又は計算される。
【0059】
送信機間でCSIT情報の交換がないとき、H^
(j)は、K
t個の送信機の中の第jの送信機によるグローバルMIMOチャネルHの推定値を表す。上記長期統計は、CSITに関する誤差を表し、これは、有効な検討対象のMIMOチャネルに関して用いられているチャネル推定技法の既知の挙動ダイバージェンスと、関係している受信機(複数の場合もある)から上記第jの送信機への有効なCSIフィードバックとに従って計算することができる。例えば、K
r個の受信機の中の各第kの受信機がMIMOチャネルH
kを推定することを可能にするパイロットシンボルが、ダウンリンクにおいて送信されると、その結果生じる推定誤差は、上記MIMOチャネルH
kを介した信号対雑音プラス干渉比に比例し、対応する比例係数は、Ji-Woong Choi他「Optimum pilot pattern for channel estimation in OFDM systems」(IEEE Transactions on Wireless Communications, vol. 4, no. 5, pp. 2083-2088, Sept. 2005)の文献にあるようなパイロット密度から計算することができる。これによって、ダウンリンクチャネル推定誤差に関する統計を計算することが可能になる。チャネル相反性が考慮されるとき、K
t個の送信機の中の各第jの送信機は、アップリンク方向におけるチャネル推定値からCSITを知得することができ、ダウンリンクと同様の技法が、アップリンクチャネル推定誤差統計を計算するのに用いられる。フィードバックリンクが、関係している受信機(複数の場合もある)によって行われたチャネル推定から計算されるCSIフィードバックから送信機におけるCSITを取得するのに用いられるとき、CSIに関する量子化誤差統計は、この関係している受信機(複数の場合もある)によって長期に推定して上記第jの送信機にフィードバックすることもできるし、上記CSIに関する量子化誤差統計は、解析モデルから推論することもできる。実際は、各関係している受信機は、有効なCSI及び量子化関数を知っており、したがって、有効な量子化誤差を知っている。上記受信機は、次に、量子化誤差統計を或る期間にわたって計算することができ、これらの量子化誤差統計を上記第jの送信機にフィードバックすることができる。例えば、受信機は、量子化誤差の分布を表す量子化誤差のヒストグラムを作成し、このヒストグラムを第jの送信機にフィードバックする。例えば、受信機及び送信機は、量子化誤差が多変量ガウス分布であると仮定し、受信機は、第jの送信機にフィードバックされる平均ベクトル及び共分散分散を推定する。上記技法のいずれも、第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHの推定値H^
(j)に関連した上記CSIT誤差統計を取得するために組み合わせることができる。その後、K
t個の送信機の中の各第jの送信機が、グローバルMIMOチャネルHに関する、K
t個の送信機のそれぞれが被るCSIT誤差についての長期統計を収集するように、これらの長期統計を送信機の間で交換することができる(これは、K
t個の全ての送信機が同じ長期統計を共有することを意味する)。
【0060】
別の例では、上記長期統計は、Qianrui Li他「A cooperative channel estimation approach for coordinated multipoint transmission networks」(IEEE International Conference on Communication Workshop (ICCW), pp.94-99, 8-12 June 2015)の文献に開示されているように収集される。この文献では、MIMOチャネルH
k,iの、K
t個の送信機の中の各第jの送信機による推定値H^
k,i(j)を計算するために、送信機ノード間でチャネル推定値の組み合わせが行われ、次に、この組み合わせは、MIMOチャネル行列H^
k,i(j)とH
k,iとの間の(係数ごとの)差H^
k,i(j)−H
k,iに関連した平均二乗誤差を最小にするように最適化される。したがって、分散行列Σ
k,i(j)は、上記文献に記載された組み合わせ方法の結果である。
【0061】
したがって、特定の実施形態では、送信機120aは、そのエントリーが、有効なMIMOチャネルH
k,iと、K
t個の送信機の中の第jの送信機の観点からのMIMOチャネルH
k,iの推定値H^
k,i(j)との間の推定誤差Δ
k,i(j)のエントリーの分散である分散行列Σ
k,i(j)を収集する。
【0062】
ステップS301が、K
t個の送信機のそれぞれによって実行されると、K
t個の全ての送信機は、CSIT誤差について同じ長期統計を共有する。ステップS301は、通常、前述のシンボルベクトルs
kのセットを送信するようにK
t個の送信機を有効に構成することを担当するプロセスから独立したプロセスにおいて実行される。
【0063】
CSIT誤差についての前述の統計は、定義によれば、長期データであるので、K
t個の送信機のそれぞれが上記長期統計を受信することを確保するためのレイテンシーは、重要度が低いことに留意することができる。量子化は、通常、そのような長期統計を送信する制限因子ではない。これに反して、K
t個の送信機の中の各送信機がそれ自体のCSITを作成することができるようにK
t個の送信機によって用いられるデータを伝播するレイテンシーは、無線通信システム100が良好な反応性を有するために、最も重要である。その場合、少数のレベルを有する量子化が、そのようなCIST関連データを送信するのに必要である可能性があり、情報の質を大幅に低減する可能性がある。ところで、ステップS301において送信機120aによって受信されるCSIT誤差についての長期統計と、送信機120aがグローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^
(j)を有するために必要とするCSIT関連データとの間の混同は回避されるであろう。
【0064】
ステップS302において、送信機120aは、当該送信機120aがグローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^
(j)を有するために必要とする最新(すなわち、短期)のCSIT関連データを取得する。送信機120aは、K
t個の送信機の中の1つ以上の送信機がグローバルMIMOチャネルHのそれら自体のそれぞれのビューを作成するのを助けるために、好ましくは、ステップS302において取得されたCSITを上記1つ以上の送信機と共有する。
【0065】
ステップS302が、K
t個の全ての送信機によって独立して(実質的に並列に)実行されると、K
t個の送信機によって最終的に取得されたCSITは、K
t個の送信機の中の送信機ごとに異なり、これはCSIT不一致をもたらす。
【0066】
ステップS303において、送信機120aは、全体プリコーダーVの送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からの初期バージョンV~
(j)を、ステップS302において送信機120aによって取得されたCSIT関連データから求める。したがって、全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)は、全体プリコーダーVの推定値である。CSIT不一致が存在するので、全体プリコーダーVのこの初期バージョンV~
(j)は、CSIT不一致とともに増大する残留干渉を伴う場合がある。
【0067】
特定の実施形態では、全体プリコーダーVのタイプ、したがって、全体プリコーダーVの推定値V~
(j)のタイプはともに、以下のものの中の1つのプリコーダータイプである。
−Rui Zhang「Cooperative Multi-Cell Block Diagonalization with Per-Base-Station Power Constraints」(IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol. 28, no. 9, pp. 1435-1445, December 2010)の文献において検討されているような結合処理を有する協調マルチポイント送信のためのブロック対角化プリコーダー;
−Chan-Byoung Chae他「Interference Aware-Coordinated Beamforming in a Multi-Cell System」(IEEE Transactions on Wireless Communications, vol. 11, no. 10, pp. 3692-3703, October 2012)の文献において検討されているような協調プリコーディングを有する協調マルチポイント送信のための干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダー;及び、
−Jun Zhang他「A large system analysis of cooperative multicell downlink system with imperfect CSIT」(IEEE International Conference on Communications (ICC), pp.4813-4817, 10-15 June 2012)の文献において検討されているような結合処理を有する協調マルチポイント送信のための正則化されたゼロフォーシングプリコーダー。
【0068】
これらのプリコーダーのタイプのそれぞれについての本発明の特定の実施形態が以下で詳述される。
【0069】
送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)によって取得されたCSIT関連データからの全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)は、各プリコーダータイプに関して上記で言及した文献において示されるように求めることができることに留意しなければならない。
【0070】
ステップS304において、送信機120aは、精緻化されたプリコーダーV
(j)=[V
1(j),・・・,V
Kr(j)]を取得するために、全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)を、ステップS301において取得されたCSI誤差長期統計に従って精緻化する。この精緻化されたプリコーダーは、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からの全体プリコーダーVのビューである。
【0071】
特定の実施形態では、全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)を精緻化することは、精緻化関数f(・,・)及びk=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)のセット{F
k(j)}により送信機120aによって行われる。より詳細には、V~
(j)=[V~
1(j),・・・,V~
Kr(j)]であることを考慮すると、全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)を精緻化することは、全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)のk=1〜K
rの部分行列V~
k(j)を精緻化することを意味する。ここで、各部分行列V~
k(j)は、V
(j)内の部分行列V
k(j)のV~
(j)内において同等である。
【0072】
したがって、各部分行列V~
k(j)について、精緻化関数f(・,・)及び精緻化行列F
k(j)は、好ましくは、以下の電力制約、すなわち、
【数14】
の下で、
V
k(j)=f(V~
k(j),F
k(j))=V~
k(j)F
k(j)
等の乗法的精緻化ストラテジー、又は加法的精緻化ストラテジー、すなわち、
V
k(j)=f(V~
k(j),F
k(j))=V~
k(j)+F
k(j)
において適用することができる。
【0073】
上記関係から、各精緻化行列F
k(j)のサイズは、精緻化ストラテジーが加法的であるのか又は乗法的であるのかに依存することに留意しなければならない。
【0074】
全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)を精緻化することは、k=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)のセット{F
k(j)}の最適化されたバージョンを求めることができるように、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)と、送信機からグローバルMIMOチャネルHを介して受信機への送信の性能を表す性能指数との関数として更に行われる。そのような無線通信システムでは、グローバルMIMOチャネルHを介した送信の性能を表す性能指数は、通常、マルチユーザー性能メトリックである。
【0075】
プリコーダーV
(j)は、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^
(j)から計算されたK
t個の送信機の中の各第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)の精緻化されたバージョンであるので、K
t個の全ての送信機によって独立して計算されたプリコーダーV
(j)間には不一致が存在することに留意しなければならない。したがって、精緻化操作は、性能指数によって特徴付けられる性能に対する不一致の影響を最小にするように設計されるべきである。送信機は、プリコーダーV
(j)を設計するための2つのタイプの情報を有することに留意することができる。これらの情報は、第1のものとして、各第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)によって表されるとともに、全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)を計算するのに利用されるローカルCSITと、全ての送信機間で共有され、したがって、上記精緻化操作に利用することができる、有効なグローバルMIMOチャネルHと上記ビューH^
(j)との間の推定誤差に関する長期統計とである。統計ベースの精緻化が検討されているので、精緻化操作は、全体プリコーダーVの事前に求められた初期バージョンV~
(j)を考慮した可能な全体プリコーダーVを特徴付ける中間確率変数V^
(j)のセットと、有効なグローバルMIMOチャネルHと各第jの送信機の上記ビューH^
(j)との間の推定誤差に関する長期統計とから、精緻化されたプリコーダーV
(j)を計算する統計的方法である。さらに、精緻化ストラテジー(乗法的又は加法的)は、初期バージョンV~
(j)をV
(j)に統計的に補正することができるように定義することができる。上記精緻化ストラテジーは、性能に対する不一致の影響を統計的に低減するように最適化されるパラメーターを伴う。
【0076】
したがって、各第jの送信機は、全ての送信機による精緻化後に、用いられている精緻化ストラテジー(乗法的又は加法的)と、CSIT誤差について収集された長期統計とに従うとともに、さらに、以下で詳述するように、上記第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)と、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^
(j)とに従って、全体プリコーダーVに関連した中間確率変数V^
(j)(以下で定義される)の分布を計算することもできるし、その実現値を生成することもできる。
【0077】
第1の特定の実施形態では、性能指数は、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^
(j)に関して、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHを介して達する総和レートの下限LBSR
(j)である。総和レート下限LBSR
(j)は、セット{F
k(j)}の関数である。送信機120aは、グローバルMIMOチャネルHをH^
(j)であるとみなすことを考慮すると、その場合、総和レート下限LBSR
(j)は、以下のように定義される。
【数15】
【数16】
は、数学的期待値を表し、MSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))は、シンボルベクトルs
kと、例えば、CSIT誤差の中心ガウス分布を考慮することによってステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の実現値と、送信機120aの観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)との対応するフィルタリングされた受信ベクトルT
ky
k(既に説明済み)との間の平均二乗誤差行列を表す。以下でより詳細に説明するように、K
r個の受信機の中の全ての第kの受信機のMSE
k(j)を計算することによって、K
t個の送信機の中の検討対象の各第jの送信機は、検討対象の性能指数の最適化を行うことが可能になる。しかしながら、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の有効な実現値は未知である。したがって、ステップS301において収集されたCSIT誤差についての長期統計を用いることによって、MSE
k(j)の代わりにEMSE
k(j)に依拠することによる近似が行われる。
【0078】
受信機フィルターT
kは、送信機において未知である全体プリコーダーV及びグローバルMIMOチャネルHの関数とすることができる。しかし、各第jの送信機は、その代わりに、以下で説明するように、中間確率変数V^
(j)を取得するとともに、k=1〜K
rの各受信フィルターT
kのそれ自体のビューT
k(j)を取得するために、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^
(j)と、ステップS301において収集された長期統計と一致する推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の実現値とに依拠することができる。備考として、中間確率変数V^
(j)及び受信フィルターT
kのビューT
k(j)は、k=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)のセット{F
k(j)}の関数である。
【0079】
EMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))は、パラメーターの固定セットF
1(j),・・・,F
Kr(j)について計算することができるので、行列の幾つかの候補セットをランダムに定義して、k=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)のセット{F
k(j)}を形成することと、送信機120aの観点からの総和レート下限LBSR
(j)を最小にする候補セットを保持することとによって、総和レート下限LBSR
(j)を最適化することができる。
【0080】
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR
(j)は、
図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
【0081】
第2の特定の実施形態では、性能指数は、以下のように、k=1〜K
rのEMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))のトレースの総和である。この総和は、簡略化された数式MINMSE
(j)を与え、したがって、より単純な実施態様を伴う。
【数17】
【0082】
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR
(j)又は簡略化された数式MINMSE
(j)等のEMSE
k(j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)の適切なセット{F
k(j)}が取得され、さらに、(関係した加法的精緻化ストラテジー又は乗法的精緻化ストラテジーを適用することによって)精緻化行列F
k(j)の上記適切なセット{F
k(j)}から精緻化されたプリコーダーV
(j)が取得される。
【0083】
ステップS305において、送信機120aは、K
t個の送信機のうちの他の送信機と協働して、K
r個の受信機に向けたシンボルベクトルs
kのセットの送信を行う。これを行うために、送信機120aは、プリコーダーE
jTV
(j)を適用する。
【0084】
図3のアルゴリズムは、全ての送信機によって定期的に独立して適用することができる。
図3のアルゴリズムは、グローバルMIMOチャネルHが既定の閾値を越えて変化したことを検出すると、全ての送信機によって独立して適用することができる。
図3のアルゴリズムは、K
t個の送信機からK
r個の受信機に向けたデータの各送信の前に、全ての送信機によって独立して適用することができる。
【0085】
ブロック対角化プリコーダーの特定の実施形態
この特定の実施形態では、全体プリコーダーVはブロック対角化プリコーダーである。その場合、K
tM≧K
rNであると仮定される。ブロック対角化の定義によれば、K
r個の受信機の中の第kの受信機を考えた場合、K
r個の受信機の中の他の全ての受信機のMIMOチャネルが被る干渉は、除去されることになっており、これは、理想的には、以下であることを意味する。
【数18】
【0086】
K
r個の受信機の中の第kの受信機の集約された干渉チャネルをH
[k]で示すことにする。これは以下のように表される。
【数19】
同様に、K
r個の受信機の中の第kの受信機の集約された干渉チャネル推定値をH^
[k]で示すことにする。これは以下のように表される。
【数20】
【0087】
集約された干渉チャネルH
[k]の上記数式に対して特異値分解(SVD)演算を適用すると、以下の式が得られる。
【数21】
ここで、
−U
[k]は、N(K
r−1)×N(K
r−1)ユニタリー行列であり、
−D
[k]は、N(K
r−1)×N(K
r−1)対角行列であり、
−V’
[k]は、MK
t×N(K
r−1)行列であり、
−V”
kは、MK
t×MK
t−N(K
r−1)行列である。
全体プリコーダーVのうち、第kの受信機に向けてデータを送信するために適用しなければならない部分V
kのサイズはMK
t×Nであり、V
kは、行列V”
kの所定のN個の列のセットを選択することによって取得される。この所定のセットは、既定の選択ルールによれば、V”
kのN個の最初の列又はV”
kのN個の最後の列のいずれかとすることができる。
【0088】
K
t個の送信機の中の第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)を考えた場合、上記数式は以下のものとなる。
【数22】
ここで、H^
[k](j)は、K
t個の送信機の中の第jの送信機の観点からの、K
r個の受信機の中の第kの受信機の集約された干渉チャネル推定値のビューH^
[k]を表し、V~'
[k](j)は、有効なグローバルMIMOチャネルHの代わりに推定値H^
(j)を用いたときにV’
[k]と等価なMK
t×N(K
r−1)行列であり、V~''
k(j)は、有効なグローバルMIMOチャネルHの代わりに推定値H^
(j)を用いたときにV”
kと等価なMK
t×MK
t−N(K
r−1)行列であり、V~
k(j)は、既定の選択ルールに従って、行列V~''
k(j)の所定のN個の列のセットを選択することによって取得され、この選択ルールは、全ての送信機によって同様に適用され、V~
k(j)は、精緻化関数f(・,・)が前述の乗法的精緻化ストラテジーにおいて用いられるようになっているものであり、これは、以下のことを意味する。
V
k(j)=V~
k(j)F
k(j)
ここで、F
k(j)は、好ましくは以下の制約下でのN×N行列である。
【数23】
【0089】
プリコーディングストラテジーの結果、ブロック対角化特性は保存され、これは、以下のことを意味する。
【数24】
【0090】
一方、ブロック対角化特性は、通常、グローバルMIMOチャネルH上での送信中に実現されないことに留意しなければならない。なぜならば、H^
(j)とHとの間に不一致が存在するからである。したがって、送信機が、送信を行うのにプリコーダーのそれらの初期バージョンV~
(j)を用いる場合、受信機に向けた送信間に干渉が存在する。この干渉は、適切な(乗法的又は加法的)精緻化ストラテジーを用いることによって、有効なグローバルMIMOチャネルHと上記ビューH^
(j)との間の推定誤差についての長期統計に関する統計的知識を用いることによって低減することができる。
【0091】
したがって、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)に対してSVD演算を適用することによって、行列V~'
[k](j)及びV~
k(j)を送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)によって求めることができる。
【0092】
したがって、全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)を精緻化することは、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)に対する特異値分解の適用によって取得される行列V~
k(j)のセット{V~
k(j)}に関する精緻化行列F
k(j)のセット{F
k(j)}を最適化することを含む。
【0093】
まず、送信機によって知られている推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の固定実現値のシステム性能メトリックが導出され、次に、確率変数である推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)に対する統計的解析が、ステップS301において収集されたそれらのそれぞれの長期統計に従って適用される。
【0094】
K
t個の送信機から受信された信号をフィルタリングするMMSEフィルターが、K
r個の受信機のそれぞれにおいて実施されることを考えると、第jの送信機の観点から、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の固定実現値について第kの受信機において計算されるMMSEフィルターの数式は、以下となる。
【数25】
ここで、V^
k(j)は、K
t個の送信機の中の他の送信機も、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の固定実現値に従って精緻化を行ったことを考慮に入れることによってK
r個の受信機の中の第kの受信機に関係する中間確率変数V^
(j)の部分である。
【0095】
したがって、K
t個の送信機の中の各第jの送信機は、K
r個の中の各第lの受信機(l=1〜K
r)について以下の式を計算する。
【数26】
ここで、Δ
l(j)は、検討対象の第jの送信機の観点からの検討対象の第lの受信機の誤差推定値を表し、
【数27】
であり、H^
l(j)は、検討対象の第jの送信機の観点からのMIMOチャネルH
lのビューを表し、H^
[l](j)は、検討対象の第jの送信機の観点からの検討対象の第lの受信機の集約された干渉チャネルH
[l]の推定値を表す。
【0096】
実際は、
H=H^
(j)+Δ
(j)
であることを想起されたい。これは、この場合、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の固定実現値が、検討対象の第jの送信機によって知られているとき、上記第jの送信機が、K
t個の送信機の中の他の任意の第j’の送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j’)を以下のように計算することができることを意味する。
H^
(j’)=H^
(j)+Δ
(j)−Δ
(j’)
【0097】
したがって、上記に表されたように、l=1〜K
rのV^
l(j)を計算することによって、T
k(j)を計算することが更に可能になり、MSE
k(j)を以下のように定義することが更に可能になる。
【数28】
ここで、Iは単位行列である。
【0098】
推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の有効な固定実現値は、実際には送信機において未知であるが、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)は、ステップS301において収集されたCSIT誤差に関する長期統計から計算することができる所与の発生確率に関連しているので、統計的解析を用いることができる。
【0099】
各第jの送信機(送信機120a等)は、その場合、ステップS301において収集されたCSIT誤差に関する長期統計を考慮し、さらに、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)に関して、Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の分布に対してモンテカルロシミュレーションを用いることによって、又は数値積分を用いることによってEMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))を計算することができる。
【0100】
代替的に、数学的近似が、EMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))の閉形式の数式を以下のように提供する。
【数29】
A
+は、Aのムーア・ペンローズ擬似逆行列であり、mdiag(・)は、所与のベクトルから対角行列を作成するものであり、diag(・)は、行列の対角エントリーを取り出し、それらのエントリーをベクトルにスタックするものである。
【0101】
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR
(j)又は簡略化された数式MINMSE
(j)等のEMSE
k(j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)の適切なセット{F
k(j)}が取得され、さらに、前述の乗法的精緻化ストラテジーを適用することによって精緻化行列F
k(j)の上記適切なセット{F
k(j)}から精緻化されたプリコーダーV
(j)が取得される。
【0102】
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR
(j)は、
図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
【0103】
干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダーの特定の実施形態
この特定の実施形態では、送信機の数K
tが受信機の数K
rと等しい、すなわち、K
t=K
rであると仮定され、送信アンテナの数Mが受信アンテナの数Nと等しい、すなわち、M=Nであると仮定される。その上、K
t個の送信機のそれぞれは、K
r個の受信機の中の単一の受信機とのみ通信する。K
r個の受信機の中の任意の第kの受信機を考えると、該第kの受信機と通信するK
t個の送信機の中の第jの送信機は、k=jとなるものである。干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダーのこの特定の実施形態において以下で用いられる数学的表現では、インデックスk(上記では、K
r個の受信機の中の任意の受信機を識別することにのみ用いられている)をインデックスjの代わりに用いることができる。干渉認識協調ビームフォーミングプリコーディングは、上記で詳述したブロック対角化プリコーディングのサブケースである。実際は、全体プリコーダーVが、サイズMのK
t個のブロックを有するブロック対角構造を有することを考えることによって、K
t個の送信機の中の各第kの送信機は、
V
k=E
kW
k’
であるようなM×M部分行列W
k’によってプリコーディングされるシンボルベクトルs
kのみを知っている(K
t個の送信機の中の他の送信機によって送信しなければならないl≠kの他のシンボルベクトルs
lを知らない)と考えられる。
【0104】
k=1〜K
rの部分行列W
k’は、各第kの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(k)に基づいて、ビームフォーミング及び/又は干渉アライメントを実施することによって取得される。例えば、部分行列W
k’は、Changho Suh他「Downlink Interference Alignment」(IEEE Transactions on Communications, vol. 59, no. 9, pp. 2616-2626, September 2011)の文献にあるように、干渉アライメント技法に従って計算される。別の例では、部分行列W
k’は、
E
kTH^
(k)E
k=U
k’D
k’W
k’
であるようなE
kTH^
(k)E
kによって定義されるチャネル行列の固有ベクトルビームフォーミングとして、K
t個の送信機の中の検討対象の第kの送信機によって上記チャネル行列に対して適用されるSVD演算から計算される。ここで、
−U
k’は、NK
r×NK
rユニタリー行列であり、
−D
k’は、NK
r×NK
r対角行列である。
【0105】
その場合、最適化は、ブロック対角化プリコーディングに関して上述した手法と非常に類似している。
【0106】
したがって、次に、ブロック対角化プリコーディングに関して上述した手法を、以下のように、同様に適用することができる。
【0107】
まず、K
t個の送信機の中の各第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの初期バージョンV~
(j)が、全体プリコーダーV及びその初期バージョンV~
(j)がブロック対角構造を有するように、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^
(j)から計算される。E
kTV~
(j)E
kによって定義される各ブロックは、シンボルベクトルs
kのみをプリコーディングするための、各第jの送信機の観点からの第kの送信機において用いられるプリコーダーに関係しているとともに、干渉アライメント又は固有ベクトルビームフォーミング技法に従って事前に記述されるか又は求められる部分行列W
k’に関係している。
【0108】
初期バージョンV~
k(j)は、精緻化関数f(・,・)が前述の乗法的精緻化ストラテジーにおいて用いられるようになっているものであり、これは、
V
k(j)=V~
k(j)F
k(j)
であることを意味する。ここで、F
k(j)は、好ましくは以下の制約下でのN×N行列である。
【数30】
【0109】
各第jの送信機(送信機120a等)は、その場合、
【数31】
を用いることによって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致するΔ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の分布に対して、さらに、精緻化行列F
k(j)がそれぞれのブロック対角形状を示すという制約下で、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)に関して、モンテカルロシミュレーションを用いることによって又は数値積分を用いることによってEMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))を計算することができる。
【0110】
代替的に、数学的近似が、EMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))の閉形式の数式を以下のように提供する。
【数32】
【0111】
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR
(j)又はMINMSE
(j)等のEMSE
k(j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)の適切なセット{F
k(j)}が取得され、さらに、前述の乗法的精緻化ストラテジーを適用することによって精緻化行列F
k(j)の上記適切なセット{F
k(j)}から精緻化されたプリコーダーV
(j)が取得される。
【0112】
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR
(j)は、
図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
【0113】
正則化されたゼロフォーシングプリコーダーの特定の実施形態
この特定の実施形態では、K
t個の送信機の中の各第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの推定値V~
(j)は、K
r個の受信機の中の各第kの受信機に関して、以下のように表すことができる。
【数33】
ここで、α
(j)は、チャネル反転後に干渉と有用な信号との間のバランスを考慮することを可能にするとともに、信号対干渉プラス雑音比(SINR)を最適化することを可能にする正則化係数を表すスカラーである。α
(j)は、K
t個の送信機の中の検討対象の第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)の統計に従って最適化される。α
(j)は、上記第jの送信機によって、K
t個の送信機の中の他の送信機と共有される。α
(j)は、例えば、Z. Wang他「Regularized Zero-Forcing for Multiantenna Broadcast Channels with User Selection」(IEEE Wireless Communications Letters, vol. 1, no. 2, pp. 129-132, April 2012)の文献にあるように取得される。V~
k(j)は、精緻化関数f(・,・)が前述の加法的精緻化ストラテジーにおいて用いられるようになっているものであり、これは、
V
k(j)=V~
k(j)+F
k(j)
であることを意味する。ここで、F
k(j)は、MK
t×N行列である。
【0114】
まず、送信機によって知られている推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の固定実現値のシステム性能メトリックが導出され、次に、確率変数である推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)に対する統計的解析が、ステップS301において収集されたそれらのそれぞれの長期統計に従って適用される。
【0115】
Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の固定実現値について、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)に関して、V^
k(j)を以下のように計算することができる。
【数34】
ここで、Re{X}は、複素入力Xの実部を表し、
【数35】
であり、これによって、MSE
k(j)を以下のように定義することが更に可能になる。
【数36】
【0116】
EMSE
k(j)は以下のように定義されることを想起されたい。
【数37】
【0117】
送信機120aは、その場合、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致するΔ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の分布に対して、さらに、送信機120a(K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^
(j)に関して、モンテカルロシミュレーションを用いることによって又は数値積分を用いることによってEMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))を計算することができる。
【0118】
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ
(1),Δ
(2),・・・,Δ
(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR
(j)又はMINMSE
(j)等のEMSE
k(j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜K
rの精緻化行列F
k(j)の適切なセット{F
k(j)}が取得され、さらに、前述の加法的精緻化ストラテジーを適用することによって精緻化行列F
k(j)の上記適切なセット{F
k(j)}から精緻化されたプリコーダーV
(j)が取得される。
【0119】
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR
(j)は、
図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
【0120】
図4は、LBSR
(j)の最適化から、EMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))をどのように計算するのかに関する上記説明によって、精緻化行列F
k(j)を求める反復アルゴリズムを概略的に表している。
図4のアルゴリズムは、K
t個の送信機の中の各第jの送信機によって実行される。
図4のアルゴリズムが、K
t個の送信機の中の第jの送信機とみなされる送信機120aによって実行されることを例示として考えることにする。
【0121】
図4のアルゴリズムの実行を開始するとき、送信機120aは、K
r個の受信機の中の各第kの受信機の行列V~
k(j)、Σ
k(j)及びH^
k(j)を知っていると考えられる。
【0122】
ステップS401において、送信機120aは、K
r個の受信機の中の各第kの受信機の精緻化行列F
k(j)を初期化する。この初期化は、以下の制約下でランダムに設定することができる。
【数38】
【0123】
代替的に、精緻化行列F
k(j)は、ブロック対角の場合にはN×N単位行列とみなされ、正則化されたゼロフォーシングの場合にはゼロのみを含むMK
t×N行列とみなされる。
【0124】
次のステップS402において、送信機120aは、K
r個の受信機の中の各第kの受信機について、B
k(j)を以下のように計算する。
B
k(j)=EMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))
【0125】
次のステップS403において、送信機120aは、K
r個の受信機の中の各第kの受信機について、精緻化行列F
k(j)を、以下の制約が好ましくは満たされるように、
【数39】
以下のように調整する。
【数40】
【0126】
次のステップS404において、送信機120aは、K
r個の受信機の中の各第kの受信機について、F
1(j),・・・,F
Kr(j)に関して収束に達したか否かを確認する。そのような収束に達した場合、
図4のアルゴリズムが終了するステップS405が実行され、そうでない場合、ステップS402が繰り返され、B
k(j)が、直前に行われたステップS403において取得されたF
1(j),・・・,F
Kr(j)の値によって更新される。
【0127】
MINMSE
(j)の最適化は、精緻化行列F
k(j)を、EMSE
k(j)(F
1(j),・・・,F
Kr(j))をどのように計算するのかに関する上記説明によって求めるために行うこともできる。これによって、凸最適化問題が得られる。