(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゲートの開放中に前記水位差及び/又は前記海水の流速が、それぞれ潮汐発電装置に応じて予め設定された所定範囲内で維持されるようにゲートの開閉制御する、請求項2に記載の潮汐発電装置の管理制御システム。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーに対する需要が増加し、その一つとして広大な海の潮汐水を利用する潮汐発電が注目されている。潮汐発電は、満潮時に堰を開放し湾内に海水を導入し、干潮時に堰を閉鎖し海水をタービンに導入し、このタービンの回転力を利用して発電機を回転させる発電方式である(特許文献1等参照)。この潮汐発電は、クリーン再生可能エネルギーであること、水の密度が大きいことによりエネルギー集中が可能なこと、原理的には潮汐現象を利用するため風力発電と異なり予測出力による電力供給が可能であること、から近年、干満の潮位差が大きい湾内では特に利用が期待されている。
【0003】
その一方、現実的には、潮汐発電は設備利用率(発電効率を示す指標)が水力発電、風力発電に比して悪いことが指摘されており(例えば、水力発電約60%、風力発電22.8%であるのに対して潮汐発電15.1%である(新エネ財団H21/1))、その改善が大きな課題である。また潮汐発電は、付着した貝等の除去や機材の塩害対策等の維持管理費がかかる一方で耐用年数が短く費用対効果が悪いこと、漁業権や船舶等の制約から設置場所が制限されること等の問題もある。その結果、再生エネルギーの地産地消化を期待する各地域等にとって潮汐発電設置により振興するときの障壁となっている。
【0004】
従来、潮汐発電の設備利用率を上げるために潮汐発電に必要となる水車(タービン)、発電機(通常、水車を内蔵)、変速機等個々の機材の開発がなされてきたが(例えば、特許文献2等参照)、個々の機材を開発するには莫大な資金を要する。上述するように設備利用率が悪いこと等による潮汐発電設置の遅れが個々機材の開発投資及び開発試験の遅れにもつながっている。
【0005】
したがって、潮汐発電開発・導入の促進に対して、個々の機材の単なる開発を超えた突破口となるような新たな技術視点の提供が望まれる。一方、近年のデータ分析・集積技術の発展により潮汐発電の設置場所となる湾岸(湾内)の種々のマッピングデータ等が蓄積されてきており、潮汐に関する情報も含まれている実情がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の事情に鑑みて本発明者は、個々の機材の開発にとどまらず予め集積された経時的潮位データに基づいて総合的に設備利用率を向上させる新たな視点の潮汐発電装置の管理制御システムを社会的に提供することを目的として本発明を創作したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、湾内外を仕切る開閉可能なゲートを設け、ゲート開放時に流出入する海水を用いて水車を回転させて発電する潮汐発電装置の管理制御システムであって、
前記潮汐発電装置を設置する湾の所定位置の経時的潮位データに基づいて所定時間の潮位の変動を設定し、
前記潮汐発電装置を所定位置に設置したときのゲートの開閉状態に応じた所定時間の湾内水位と前記潮位との水位差と、
ゲートの開閉状態と前記潮汐発電装置と前記水位差とに基づいて算出されたゲートから放出される海水の流量と、を所望の範囲とするためにゲートの開閉制御を行う、潮汐発電装置の管理制御システムを提供する。
【0009】
本発明の潮汐発電装置の管理制御システムは、従来のように潮汐発電装置の個々の機材(発電機、変速機、水車(タービン)、ゲート等)の改善だけでの設備利用率の向上を図るのではなく、各地域の詳細な経時的潮位データを活用して、採用する潮汐発電装置に応じた効率の良い発電をゲートの開閉時間及び開度の制御で行って設備利用率の向上を図っている。具体的には、(i)湾内水位と潮位との水位差、(ii)ゲートから放出される海水の流量、との各時間における値を算出し、所望の値(出力P=係数a×水位差H×流量Q、Hは固定でQは変化、Qはゲート開度と水位差で決まる)になるようにゲートの開閉を制御している。
【0010】
潮汐発電の場合、ゲート内外の水位差に基づいて流速(流量)が変動する海水の流れを水車の回転に利用するため、そのまま発電を行うと水力発電の場合と異なり一定の出力を維持することが難しい。その一方、発電機は個々に発電効率が高い条件があり(後述)、発生電力量を増加させるには単に瞬間的な出力のみに注目するのではなく、高い発電効率で定常的な出力を維持することが重要であり、自然現象を出力源とする潮汐発電において明確な指標が存在していなかった。本発明者は、近年、潮汐発電を設置する場所での詳細な経時的潮位データの蓄積が進んでいる社会情勢に注目し、これを活用して個々の発電機の発電効率を高く維持しながら長期的な発生電力量を増加させるためにゲートの開閉タイミングを制御する潮汐発電装置の管理制御システムを提供したものである。
【0011】
なお、本潮汐発電装置の管理制御システムでは、地域的な経時的潮汐データを利用して、個々に採用する発電機等を考慮した発生電力量の算出結果をゲート開閉制御に用いるため、設置場所に応じて採用する発電機等個々の機材を選定することにも有益である。
【0012】
また、前記水車は湾内外に双方向に流れる海水で回転する、ことが好ましい。
【0013】
双方向ともに回転する水車(タービン)にすれば、湾内外のいずれの潮位が高くてもゲート開放時には発電することができ、満潮干潮を問わず発電することができる。
【0014】
また、本潮汐発電装置の管理制御では、ゲートの開放中に前記水位差及び/又は前記海水の流速が、それぞれ潮汐発電装置に応じて予め設定された所定範囲内で維持されるようにゲートの開閉制御する、ことが好ましい。
【0015】
本潮汐発電装置の管理制御システムでは、湾内水位と潮位との水位差と、潮汐発電装置と水位差とに基づいて算出された海水の流速とのいずれか又は両者を一定範囲(略同一)に維持するようにゲートの開閉タイミングを算出・制御している。ゲートの開閉タイミングの算出では、発電開始時間や放流海水の流速(流量に戻づく)の算出を行う。採用する発電機の発生電力は、所定の湾内水位と潮位との水位差又は海水の流速でピークを迎え、それ以外の水位差や流速では発電力が低下する。したがって、発生電力量(発生電力の時間積分値)は瞬間的な発電力の大きさよりも長時間・定常的(略同一)に維持することが好ましい。
【0016】
また、発電機は、湾内水位と潮位との水位差及び海水の流速が所定値になるときが最も発電効率が高い。本潮汐発電装置の管理制御システムを活用すると、設置地域の経時的潮位変動や発電機固有の性能を考慮して高い発電効率を維持しながら、定常的で長時間の発電が可能となり、累計発生電力量を増加(設備利用率の向上)させるようゲートの開閉タイミングを制御することができる。
【0017】
さらに、上記のように累計発生電力量を増加させるためには、水車は、ゲート内外の海面が低い側に追従して上下に移動可能な構成が適している。
【0018】
上述した湾内水位と潮位との水位差及び/又は海水の流速を所定値に維持するようゲート開閉タイミングを制御する場合、水車が双方向の水流で発電可能であるとともに、水車の位置が自由に上下でき、かつ湾内外のどちらか低い水位に追従可能であることが望ましい。
【0019】
さらに、前記ゲートは、
その正面又は背面で湾内外を仕切って内部が横方向に中空構造であり、該内部に下方を流体的に接続する連通管を有して左右を水密にする仕切り板を設け、
海面が高い側から低い側に所定の揺動範囲内で傾斜し、前記仕切り板で区分けされた内部区画には海面が高い側からのみ海水が流入する区画と内部が海面の低い側にのみ海水が流出することで傾斜時に一方向の水流が内部横方向に流れる、ことが好ましく、傾斜時に内部横方向に流れる水流の下流側の区画に発電機を配設することができる。
【0020】
この構成によればゲートは、湾内と外洋(湾外)とを仕切る位置に設置された内部が空洞の構造物であり、湾内外のいずれが高水位であっても内部の空洞に高水位から低水位に流れる一方向の水流を作り、下流側に発電機を配設することとしている。ゲート内で一方向の水流を生成し低水位の下流側で発電させるため双方向発電に比べて高効率で発電することができる。
【0021】
具体的には、ゲートは内部を空洞にし、空洞内を横方向途中で仕切る仕切り板を設けて内部を2つの区画に分けている。この区画の一方は、ゲートが傾斜すると一方の区画はゲートの正面又は背面のうち高水位側のみ開き(例えば、
図6(a)のフラップゲート3、4参照)、他の方の区画は、ゲートの背面又は正面のうち低水位側のみ開く構成になっており(例えば、
図6(b)のフラップゲート3’、4’参照)、ゲートはどちらに傾斜してもゲート内部では一方向の水流が流れることとなる。この低水位側の区画に発電機を配設することで高効率の一方向発電を行うことが可能となる(さらに詳細な実施形態は後述)。
【発明の効果】
【0022】
本潮汐発電装置の管理制御システムによれば、発生電力量(発生電力の時間積分値)は瞬間的な発電力の大きさよりも長時間・定常的(略同一)に維持することで潮汐発電装置の設備利用率を向上させ、潮汐発電設置を促進させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず前提として潮汐発電の一般的な構成について概説する。潮汐発電は、基本的に水力発電同様に水の流れに基づいて発電する方式であり、潮汐により生じる海水の流れを利用する。具体的には、湾内に開閉可能なゲート(水門)を設け、干潮時にゲートを閉めゲートが開放されると満潮時にはゲート外(湾外)からゲート内(湾内)に向かって海水が流れ、逆に満潮時にゲートを閉め干潮時にゲートが開放されるとゲート内(湾内)からゲート外(湾外)に向かって海水が流れる。この海水の流れを利用して水車(タービン)を回転させて発電機(通常、水車が内蔵)で出力し、電力供給するものである。
【0025】
次に、本発明の潮汐発電用管理制御システムの活用した例を説明する。
本実施形態では、設置場所(設置位置)として有明湾で最大の平均潮位差のある「住ノ江」地域で潮汐発電用管理制御システムを活用した。この地域では、平均潮位差が344cmであり、従来式の潮汐発電で使用する汎用ポンプでは所望の出力を得るだけの潮位差がない点でも、本潮汐発電用管理制御システムの優位性を検討し得る良好な地域と言える。
【0026】
実際には下記の湾条件(地理的条件)及び発電機の条件で行った。
(1)湾条件
・片側水位:1.72m(344m/2)
・湾内面積:1849m
2(1辺:43m)の3倍
・湾内片側容積:3180m
3(43m×43m×1.72m)の3倍
(2)発電機条件(系統連携手続きが必要としない最大50KW(16.9KW×3台)を目標とする)
・総合発電効率:70%(水車・発電機・変速機他)
・流出係数:60%
・連通管直径:0.6m(平均放流量:0.88m
3/s、平均放流速3.12m/s)
・運用落差:0.4〜3.5m
・運用流量:1.5m
3/s以内
【0027】
まず、上記(1)湾条件での水理計算(シュミレーション)の第一の結果が
図1のグラフ図に示されている。
図1の結果は、従来の潮汐発電同様に水車の位置が固定された方式の場合である。
図1の横軸は時間を示しており、縦軸はスケール(m)及び流速(m/S)>を示している。縦軸0.00(m)に沿って横方向に表記された数字は単位時間を示しており、1単位時間当たり15分である。
【0028】
まず、
図1の潮位(1)はこの地域における潮汐データから得られるものであり、平均海面水位を基準0.00mとすると、満潮時の海面水位(片側水位)が1.72m、干潮時の海面水位が−1.72m、周期が12時間(48単位時間)の余弦曲線に設定されていることがわかる。次に、湾内水位(2)はゲートを開放状態にしておくと潮位(1)と同じになるが、本システムでは後述するようにゲートの湾内外(ゲート内外)での水位差(潮位差)の変化を抑制する制御を行っており、3.5時間(14単位時間)のゲート閉鎖、2.5時間(10単位時間)のゲート開放を繰り返している。具体的には、最大満潮時からゲートを閉鎖してスタート(1単位時間)し、最大海面水位(−1.72m)のまま湾内に海水をためておき、3.5時間経過時(15単位時間時)にゲートを開放して海水を放流して水車を回転させ、2.5時間経過時(25単位時間時)に湾内水位(2)が最低潮位(=−1.72m)まで低下すると再びゲートを閉鎖する。
【0029】
上記スタート時〜6時間経過時(1〜25単位時間時)のゲートの開閉制御は、湾内片側容積や潮位推移(1)に基づいて最大潮位が最低潮位に推移する時間でゲート開放による湾内水位(2)が最大潮位から最低水位に到達するように最初のゲート閉鎖時間を算出・設定している。その後、6時間経過ごと(24単位時間ごと)に同周期で湾内水位の最低点、最高点、最低点とを繰り返している。
【0030】
また、
図1の潮位(1)と湾内水位(2)との水位差(3)は、ゲートを開放した3.5時間経過時(15単位時間時)及び15.5時間経過時(63単位時間時)を最大、9.5時間経過時(39単位時間時)及び21.5時間経過時(87単位時間時)を最小として増減している。
【0031】
また、ゲートから放出される海水の流速(4)は、ゲートの閉鎖時には0.00m/sであり、ゲートの開放時には上記水位差(3)に依存して増減する。なお、発電機で生成する電力は水車(タービン)に与えられる海水の流量(=流速×有効断面積)に依存するものであり、その意味では
図1(4)は流量の経時的変化を示しても良いが、有効断面積であるゲート開口は変わらないため、ここでは流速の経時的変化で(4)が示されている。実際にはエネルギーロスの影響があり、エネルギーロスは流速の2乗に比例するため流速で判断する方が効率を確認するには好都合である(
図1の(4)では流速が示されているが、Qで表記している)。この点は後述で比較する
図4でも同様である。
【0032】
具体的には、スタートから3.5時間経過時(15単位時間時)及び6.0時間経過時(25単位時間から9.5時間経過時(39単位時間時)及び12.0時間経過時(45単位時間から15.5時間経過時(59単位時間時)及び18.0時間経過時(73単位時間)から21.5時間経過時(87単位時間時)には、流速(3)=0.00km/sであり、ゲートの開放開始時である3.5時間経過時(15単位時間時)と9.5時間経過時(39単位時間時)と15.5時間経過時(59単位時間時)と21.5時間経過時(87単位時間時)に急激に流速=8.57m/sまで流速上昇し、その後、流速が減衰し約2.5時間経過時(25単位時間時、49単位時間時、69単位時間時、97単位時間時)に流速(3)=0.00m/sに収束して、再び流速が急上昇するまでの約3.5時間(14単位時間)流れが止まる。
【0033】
図1の場合の計算上の発電電力量等は以下の通りである。
・最大出力:16.9KW×3台=49.2KW (P=16.9KW、 Q=1.11m3/s、H=2.17m)
・年間発生電力量:65.1メガWH(65,123KWH)
・設備利用率:15.1%(65,123KWH/49.2KW/8760H)
特に、設備利用率が、水力・風力と比較して悪いことがわかる(通常の水力発電の設備利用率は約60%、風力で22.%と言われている)。
【0034】
このように本潮汐発電装置の管理制御システムでは特定地域に設置した潮汐発電の水位差(3)、流速(4)が事前に計算で概算されるため、発電機の選定やゲートの開閉タイミングを制御変更して、より設備利用率が増加する方法を検討することができる。
以下、
図1の場合に設備利用率を増加させるための検討を行った。
【0035】
まず、発生電力量について検討する。
図2(a)は、
図1の場合の発生電力量のイメージを示すグラフ図、(b)は理想的な発生電力量のイメージを示すグラフ図を示している。
図2(a)では
図1の15〜20単位時間時に流速が発生し、発電した様子であり、横軸が時間t(単位時間)、縦軸が発生電力kWである。電力量は電力を時間積分したものであるため
図2(a)の斜線部の面積が発生電力量(kWh)となる。したがって、
図2(a)の場合(
図1の場合)、15単位時間時に発生する電力w1は大きいが、25単位時間までに減衰し、また15〜25単位時間以外は全く電力を発生しておらず、累計発生電力量は小さいと考えられる。
【0036】
一方、
図2(b)ではt1〜t2単位時間時に流速が発生し、発電した様子である。
図2(b)の場合、最大の発生電力w2であり、
図2(a)の最大発生電力w1より小さい場合でも、定常的な発生電力kWが長く供給され、、?斜線部の面積が
図2(a)の斜線部の面積よりも大きく、累計発生電力量は大幅に増加していることがわかる。このように累計発生電力量を増加させる観点からは最大の発生電力ではなく変動が小さく長時間電力発生させることが好ましいことがわかる。
【0037】
次に、発電機の発電効率について検討する。
図3(a)は、横軸を流量(m
3/s)又は水位差(m)、縦軸を発電機の発電効率(%)としてその相関を示すグラフ図を示し、
図3(b)では、横軸を流量(m
3/s)、縦軸を水位差(m)としてその相関を示すグラフ図を示している。
【0038】
図3(a)に示すように発電機の発電効率は、流速又は水位差が増加すると上昇し、所定の流速又は水位差に到達するとピークになり、さらに流速又は水位差が増加しても下降していく特性を有する。したがって、
図3の特性を有する場合、発電効率が90%に近い状態を維持するような流速、水位差になるようにゲート開閉タイミングを制御することが好ましいことがわかる。また、
図3(b)に示すように流速又は水位差はどちらか一方で発電効率が決定されるものではなく、両者が相まって発電効率が決定されることがわかる。したがって、
図3(b)の場合、流速q1、水位差h1の近傍で90%の発電効率を得ることがわかる。
【0039】
以上、
図2〜
図3から累計発生電力を増加させ設備利用率を向上させるには、発電効率が高い流速と水位差とで長時間定常的に電力発生させるように制御することが望まれる。この視点で本潮汐発電装置の管理制御システムで制御する方法を以下、検討する。なお、湾条件(地理的条件)及び発電機の条件については
図1と同様である。
【0040】
図4には、発電効率が高い流速と水位差とで長時間定常的に電力発生させるように制御した水理計算(シュミレーション)の第二の結果のグラフ図が示されている。
図4の場合は、自由に上下することができ、且つ、湾内外のどちらか低い水位に追従する方式の水車を用いており(後述)、
図1同様に双方向発電が可能な水車を有している。また、
図1同様に横軸は時間、縦軸はスケール(m)及び流速(m/S)、縦軸0.00(m)に沿って横方向に表記された数字は1単位15分の単位時間を示している。
【0041】
まず、
図4の潮位(1)は
図1同様であり、湾内水位(2)は、1.5時間(6単位時間)のゲート閉鎖、4.5時間(18単位時間)のゲート開放を繰り返している。具体的には、最大満潮時からゲートを閉鎖してスタート(1単位時間)し、最大海面水位(−1.72m)のまま湾内に海水をためておき、1.5時間経過時(7単位時間時)にゲートを開放して海水を放流して水車を回転させ、4.5時間経過時(25単位時間時)に湾内水位(2)が最低潮位(=−1.72m)まで低下すると再びゲートを閉鎖する。
【0042】
また、
図4の潮位(1)と湾内水位(2)との水位差(3)は、ゲートを開放した1.5時間経過時(7単位時間時)及び7.5時間経過時(31単位時間時)を最大、13.5時間経過時(55単位時間時)及び19.5時間経過時(69単位時間時)を最小として増減している。
【0043】
また、ゲートから放出される海水の流速(4)は、ゲートの閉鎖時には0.00m/sであり、ゲートの開放時には上記水位差(3)に依存して増減する。具体的には、スタートから1.5時間経過時(7単位時間時)及び6.0時間経過時(25単位時間)から7.5時間経過時(31単位時間時)及び12.0時間経過時(49単位時間)から14.5時間経過時(55単位時間時)及び18.0時間経過時(73単位時間)から19.5時間経過時(79単位時間時)には、流速(3)=0.00km/sであり、ゲートの開放開始時である1.5時間経過時(7単位時間時)と7.5時間経過時(31単位時間時)と14.5時間経過時(55単位時間時)と19.5時間経過時(79単位時間時)に急激に流速=3.14m/sまで流速上昇し、その後、略同一の流速で推移し、2.5時間経過時(20単位時間時、44単位時間時、68単位時間時、92単位時間時)ごろから減衰し、2.5時間経過時(25単位時間時、49単位時間時、73単位時間時、97単位時間時)に流速(3)=0.00m/sに収束して、再び流速が急上昇するまでの約1.5時間(6単位時間)流れが止まる。
【0044】
図4の例では、
図1と異なりゲートの閉鎖時間を各1.5時間としたことにより、
図1に比べて、水位差(3)も流速(4)が一定(水位差=0.5m近傍、流速=3.14m/s近傍)の時間が長くなり、累計発生電力量も
図1の場合よりも大幅に増加している。
【0045】
実際に
図4の場合の計算上の発電電力量等は以下の通りである。
・最大出力:1.6KW×31台=49.6KW (P=1.6KW、 QMAX=0.47m3/s、H=0.5m)
・年間発生電力量:232.5メガWH(232,502KWH)
・設備利用率:53.1%(232,502KWH/49.6KW/8760H)
設備利用率は、通常の水力発電の設備利用率は約60%、風力で22.8%であり、水力発電同等にまで増加していることがわかる。
【0046】
次に、ゲートの構造について例示説明する。
図5(a)はゲート1の構造を示す略平面図、(b)はゲート1に設けられた仕切り板2の揺動を示す略断面図である。ゲート1は、湾内及び湾外(外洋)に正面及び背面を向けて配設され、海水が流出入し、内部で横一方向(
図5(a)の上下方向)に流れて湾内外の高水位側から低水位側に海水を移動させるものである。
図5(b)に示すようにゲート1は下方に設けた戸当たり7、8に対してヒンジ1aで枢結することで、戸当たり7、8に当接するまで揺動する(
図5(b)矢印参照)。また、
図5(a)及びゲート1の斜視図である
図7(a)に示すようにゲート1は、内部に空洞を有する中空構造物であり、横方向(
図5(a)では上下方向)の略中間に設けた仕切り板2により2つの区画1(1)、1(2)に区分けされている。また、仕切り板2の下方は連通管により、区画1(1)、1(2)が流体的に接続している。
【0047】
また、
図5(b)のように湾内の海面S1が湾外(外洋)の海面S2よりも高水位の場合、自動又は手動でゲート1が戸当たり7まで傾斜する。ゲート1が傾斜した場合、その傾斜が湾内側又は湾外側(外洋側)のどちらであってもゲート1内に高水位側から流入した海水は区画1(1)から区画1(2)に向かって流れ、低水位側に放出される。具体的には
図6を参照して以下、説明する。
【0048】
図6(a)(b)は
図5(b)のように傾斜したゲート1に海水が流出入する様子を示しており、詳細には
図6(a)は区画1(1)側の断面図、
図6(b)は区画1(2)側の断面図を示している。
図6(a)に示すように区画1(1)では前面1b側(高水位S1側)と背面1c側(低水位S2側)とにそれぞれ上部のヒンジ4a、3aにより誘導するフラップゲート4、3を設けている,ヒンジ4a、3aはゲート1の前面1b、背面1bの内側に設けられ、フラップゲート4、3は、それぞれゲート1の内部側には誘導するが外部側は前面1b、背面1cがストッパとなって揺動を規制する。従って、ゲート1が傾斜すると自重によりフラップゲート4が開放されて内部側に揺動し、フラップゲート3は閉鎖状態を維持する。その結果、高水位側S1からのみ区画1(1)に海水が流入する。図示しないが逆にS2が高水位側になった場合にはフラップゲート3が揺動、フラップゲート4が閉鎖状態を維持し、S2からのみ区画1(1)に海水が流入する。
【0049】
また、
図6(b)に示すように区画1(2)でも前面1b’側(高水位S1側)と背面1c’側(低水位S2側)とにそれぞれ上部のヒンジ4a’、3a’により誘導するフラップゲート4’、3’を設けている,フラップゲート4’、3’ではヒンジ4a’、3a’はゲート1の前面1b’、背面1c’の外側に設けられ、フラップゲート4’、3’は、それぞれゲート1の外部側には誘導するが内部側は前面1b’、背面1c’がストッパとなって揺動を規制する。従って、ゲート1が傾斜すると自重によりフラップゲート3’が開放されて外部側に揺動し、フラップゲート4’は閉鎖状態を維持する。その結果、区画1(2)内の海水は低水位側S2にのみ流出する。逆にS2が低水位側になった場合にフラップゲート4’が揺動、フラップゲート3’が閉鎖状態を維持し、区画1(2)からS1にのみに海水が流出する。すなわち、ゲート1が傾斜した場合には、傾斜の方向を問わず、
図5(a)の矢印1(丸囲み1)又は矢印2(丸囲み2)に示すように湾内外の高水位側から区画1(1)内に海水が流入し、区画1(1)から区画1(2)に流れて、区画1(2)から低水位側に海水が流出する一方向水流を作ることができる。
【0050】
図7には、ゲート1内の仕切り板2で区分けした区画1(1)と区画1(2)とに生じた水位差を補うべく流れる流量が、仕切り板2の底部に取り付けたバルブ付きの連通管9内を流れ、水車(タービン)5を内蔵する発電機5を動作する様子を示している。具体的には、(a)は、ゲート1内の仕切り板2、発電機5、フロート6の配置を示す略斜視図、(b)は仕切り板2の底部より連通管9内を通過して発電機5まで海水を案内する様子を示すゲート1の略断面図を示している。水車(発電機5)は、低い側の海面S2に浮遊するフロート6に配設されており、発電機5に流出入する海水で回転し、発電する。したがって、水車(発電機5)は海面S2の変動(
図7(b)矢印a参照)に追従して上昇下降する。その結果、連通管9の傾斜角θは変動する。
【0051】
すなわち、ゲート1では下流側の区画1(2)に配設された発電機5が、矢印bに示すようにゲート1の内部の仕切り板2の底部から連通管9より供給される一方向の水流で水車を回転させて発電する。また、上述するように連通管9の付け根は、水位の変化に応じて上昇下降する水車(発電機5)に追従するように角度θが変化する構造になっているため連通管9を流れる海水の流量はバルブで調整される。従って、このゲート1の構造を採用すれば、高い側の海面S1と低い側の海面S2との水位差(4)を同一又は所定範囲内に維持できるので上述した
図4のような制御を行う場合に適している。
【課題】 本発明は、湾内外を仕切る開閉可能なゲートを設け、ゲート開放時に流出入する海水を用いて水車を回転させて発電する潮汐発電装置の管理制御システムの提供を目的とする。
【解決手段】 本潮汐発電装置の管理制御システムは、潮汐発電装置を設置する湾の所定位置の経時的潮位データに基づいて所定時間の潮位の変動を設定し、潮汐発電装置を所定位置に設置したときのゲートの開閉状態に応じた所定時間の湾内水位と潮位との水位差と、ゲートの開閉状態と潮汐発電装置と水位差とに基づいて算出されたゲートから放出される海水の流速と、を所望の範囲とするためにゲートの開閉制御を行う。