(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有し、前部、股部及び後部を有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、幅方向中心線の両側に、前記前部から前記股部を通過して前記後部に至る圧搾溝を有しており、
前記圧搾溝及び前記圧搾溝に隣接する部位に、前記吸収体が存在していないか、前記圧搾溝及び前記圧搾溝に隣接する部位の前記吸収体の坪量が、周囲に比して低くなっており、
前記前部及び前記後部の圧搾溝の深さが、前記股部の圧搾溝の深さよりも深い、吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿や血液等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。ここで、従来、吸収性物品においては、体液の吸収性を改善するため、トップシートから吸収体に亘るエンボス加工を施すことが広く行われている。また、軽失禁パッドや生理用ナプキン等においては、着用時のフィット性を向上させる目的も兼ねて、吸収性物品の長手方向両側縁部にエンボス溝(圧搾溝、フィットエンボス)を設けることも一般的であり、圧搾溝の底面や側壁に凹凸を設け、排泄された体液の拡散を促すことも行われている。
【0003】
着用時のフィット性を向上させるために、圧搾溝を設けた吸収性物品としては、例えば、特許文献1に、少なくともトップシート、バックシート、及び吸収体を有し、身体接触側表面における、吸収体の中央領域の長手方向両側縁部に圧搾溝が配置され、かつ複数の点状の圧搾部が間隔を空けて配置された吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、トップシートと、バックシートと、吸収体とからなり、吸収体が位置する領域の身体接触側表面の両側に、長手方向に延びるとともに中央部において間隔が狭くなった一対の圧搾溝が形成され、この圧搾溝は、長手方向に相互に並列する高圧搾部と低圧搾部とを有することを特徴とする生理用ナプキンが開示されている。
【0004】
特許文献1及び2の吸収性物品においては、その幅方向中央部に排泄された体液は幅方向に広がり、圧搾溝に達した後、圧搾溝を伝わって前後方向に拡散するものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のいずれの吸収性物品においても、圧搾溝に保持される体液は、前後方向に拡散するにつれて移動量が低下する傾向にあり、圧搾溝に保持される体液は、吸収性物品の長手方向両端部には到達しないまま、横漏れする可能性があった。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、圧搾溝を有し、排泄された体液を、吸収性物品の長手方向両端部にも十分に拡散させることが可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、トップシートと、バックシートと、吸収体と、を有し、幅方向中心線の両側に、前部から股部を通過して後部に至る圧搾溝を有する吸収性物品において、圧搾溝及び圧搾溝に隣接する部位の吸収体の坪量を調整することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、上記トップシート及び上記バックシートの間に配置される吸収体と、を有し、前部、股部及び後部を有する吸収性物品であって、上記吸収性物品は、幅方向中心線の両側に、上記前部から上記股部を通過して上記後部に至る圧搾溝を有しており、上記圧搾溝及び上記圧搾溝に隣接する部位に、上記吸収体が存在していないか、上記圧搾溝及び上記圧搾溝に隣接する部位の上記吸収体の坪量が、周囲に比して低くなって
おり、前記前部及び前記後部の圧搾溝の深さが、前記股部の圧搾溝の深さよりも深い、吸収性物品である。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、上記股部における体液排出部に、上記吸収体の坪量が周囲に比して高くなった嵩高部を有することを特徴とする。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、(2)に記載の吸収性物品であって、上記圧搾溝及び上記圧搾溝に隣接する部位の上記吸収体の坪量が、0g/m
2以上420g/m
2以下であり、上記体液排出部の上記吸収体の坪量が、210g/m
2以上1820g/m
2以下であることを特徴とする。
【0011】
(削除)
【0012】
(
4) 本発明の第
4の態様は、(1)から(
3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記前部及び上記後部の圧搾溝の溝幅が、上記股部の圧搾溝の溝幅よりも狭いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸収性物品は、幅方向中心線の両側に圧搾溝を有しており、この圧搾溝及び圧搾溝に隣接する部位に、吸収体が存在しないか、これらの部位の吸収体の坪量が周囲に比して低くなっており、これにより、圧搾溝の底部の吸収体量が低減し、周囲に比して疎水性を帯びたものとなっている。これにより、吸収性物品の体液排出部に排泄された体液が、第一次的には迅速に圧搾溝に到達するとともに、第二次的には圧搾溝に到達した体液が、圧搾溝の疎水性のために圧搾溝自体では吸収されず、素早く前部及び後部の圧搾溝に拡散する。このため、排泄された体液が、吸収性物品の長手方向両端部も含めた吸収体の全域に拡散しやすくなり、体液の横漏れも効果的に防止される。
【0014】
さらに、本発明の好ましい態様においては、股部における圧搾溝の溝幅が相対的に広くかつ浅く、前部及び後部における圧搾溝の溝幅が相対的に狭くかつ深く構成されているので、圧搾溝の底部の吸収体量を低減し、圧搾溝の疎水性を増大させた構成と相俟って、前部及び後部に伝わった体液の波の高さが高まるとともに、圧搾溝の側壁との接触面積が増加して、周囲吸収体にすばやく吸収されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1から
図3を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品1について詳細に説明する。なお、本実施形態の説明においては、全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。本明細書における以下の説明において、体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出される液体をいう。さらに、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方を示す。なお、本明細書の説明において、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、本明細書において、吸収性物品1の身体接触側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の肌に当接する表面を指し、衣類接触側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の衣類に当接する表面を指す。本明細書においては、吸収性物品1の身体接触側表面側を上側と称し、衣類接触側表面側を下側と称することがある。
【0017】
<吸収性物品>
図1は、本発明の吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図であり、
図2は、
図1におけるX
1−X
1断面形状を示す図面である。本発明の実施形態に係る吸収性物品1としては、
図1に示すような軽失禁パッドが例示されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、軽失禁ライナー、生理用ナプキン、その他の吸収性物品であってもよい。吸収性物品1は、身体接触側表面に配置された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向し、衣類接触側表面に配置された液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置された吸収体20と、を備え、これにより、吸収体20は、トップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となっている。吸収性物品1は、着用者の前側に位置する前部1aと、着用者の股間に位置する股部1bと、着用者の後側に位置する後部1cとを有し、それぞれの領域に圧搾溝21が形成されている。
【0018】
[トップシート]
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体20を挟んで、バックシート30と対向して配置されている。トップシート10は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような基材、例えば、エアスルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。トップシート10は、単層であっても、複数層積層していてもよく、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。
【0019】
不織布としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、サーマルボンド法のほか、スパンレース法やスパンボンド法等の公知の加工法によって得られたものも用いることができる。加工性及び強度の点から、トップシート10の坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート10には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。トップシート10は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁よりも若干外方に延在して設けられていてもよい。
【0020】
なお、本発明においては、吸収体20の上面への体液の拡散を促進するため、トップシート10と吸収体20との間に、液拡散性シートを設けてもよい。斯かる液拡散性シートとしては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布を挙げることができる。液拡散性シートの厚さは0.1mm以上であることが好ましく、その坪量は15g/m
2以上であることが好ましい。液拡散性シートの形状は、特に制限はないが、尿等の液体がくまなく吸収体20に拡散するよう、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0021】
[バックシート]
バックシート30は、吸収性物品1の外部に体液が漏れないよう、液不透過性を有し、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。バックシート30は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁より若干外方に延在して設けられていてもよい。バックシート30の衣類接触側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層60が設けられていてもよい。吸収性物品1が粘着剤層60を有する場合、粘着剤層60を保護するための剥離シート65を有していてもよく、この剥離シート65は、吸収性物品1の包装シートと一体となっていてもよい。トップシート10及びバックシート30は、長手方向端部等、端部の少なくとも一部において、吸収体20を挟まずに、ホットメルト接着剤やヒートシール等により固着されるフラップを形成していてもよい。
【0022】
[吸収体]
吸収体20は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(以下、SAPとも称する)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0023】
吸収体20の高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0024】
吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状の安定化の目的から、吸収体20をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0025】
吸収体20は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0026】
(低米坪部及び嵩高部)
図1及び
図2に示すように、本発明の吸収性物品1においては、後述する圧搾溝21及び圧搾溝21に隣接部位に、吸収体20が存在していないか、この部位の吸収体20の坪量が周囲に比して低くなった、低米坪部22が形成されている。吸収性物品1の圧搾溝21及び圧搾溝21に隣接する部位に、低米坪部22が形成されていることにより、圧搾溝21及び圧搾溝21に隣接する部位の吸収体20の高さが周囲に比して低くなるとともに、圧搾溝21の底部に存在する吸収体20の量も低減するので、圧搾溝21の疎水性が向上する。これにより、
図4(A)に示すように、吸収性物品1の体液排出部に排泄された体液が、迅速に圧搾溝21に到達するとともに、圧搾溝21に到達した体液は、圧搾溝21底部の疎水性により、前部1a及び後部1cの圧搾溝21に迅速に拡散する。このため、排泄された体液が、吸収性物品1の長手方向両端部も含めた吸収体20の全域に拡散しやすくなり、体液の横漏れを効果的に防止することができる。また、本発明の吸収性物品1においては、体液排出部に、吸収体20の坪量が周囲に比して高くなった嵩高部23を有していることが好ましい。吸収性物品1が嵩高部23を有していることにより、排泄された体液が迅速に前後左右の圧搾溝21に到達するので、前部1a及び後部1cに体液が拡散されやすくなる。
【0027】
本発明の吸収性物品1における、低米坪部22及び嵩高部23を除く部位の吸収体20の坪量は、吸収性物品1の吸収量によっても異なるが、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーの重量を合算した重量を基準として、200g/m
2以上1400g/m
2以下であることが好ましく、400g/m
2以上1300g/m
2以下であることがより好ましい。吸収体20の坪量を上記の範囲内のものとすることにより、吸収性物品1の吸収性能と着用感を共に良好に維持することができる。
【0028】
一方、圧搾溝21を含む低米坪部22においては、吸収体20の坪量は、低米坪部22及び嵩高部23を除く部位の吸収体の坪量に比較して、0%以上30%以下であることが好ましく、0%以上20%以下であることがより好ましい。具体的には、低米坪部22における吸収体20の坪量は、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーの重量を合算した重量を基準として、0g/m
2以上420g/m
2以下であることが好ましく、0g/m
2以上280g/m
2以下であることがより好ましい。低米坪部22の坪量を以上のように調整することにより、吸収体20の吸収性能を良好に維持しつつ、体液排出部に排出された体液を迅速に吸収体20上に拡散させることができる。嵩高部23においては、吸収体20の坪量は、低米坪部22及び嵩高部23を除く吸収体20の坪量に比較して、5%以上30%以下割り増しされていることが好ましく、10%以上30%以下割り増しされていることがより好ましい。具体的には、嵩高部23における吸収体20の坪量は、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーの重量を合算した重量を基準として、210g/m
2以上1820g/m
2以下であることが好ましく、220g/m
2以上1820g/m
2以下であることがより好ましい。嵩高部23の坪量を以上のように調整することにより、吸収性物品1の着用感を良好に維持しつつ、体液排出部に排出された体液を迅速に吸収体20上に拡散させることができる。
【0029】
低米坪部22及び嵩高部23の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、低米坪部22は、吸収体20を成形するに際して、圧搾溝21及び圧搾溝21に隣接する部位により多くの吸収体20を配置しないように成形することにより形成することができる。一方、嵩高部23は、
図2に示すように、吸収体20を、嵩高部23を構成する上層吸収体201と他の部位を構成する下層吸収体202とに区分し、上層吸収体201と下層吸収体202とを積層することにより形成してもよい。嵩高部23は、
図2とは逆に、幅の広い吸収体を上層吸収体201とし、幅の狭い吸収体を下層吸収体202とすることにより形成してもよい。
【0030】
[圧搾溝]
本発明の吸収性物品1は、長手方向に沿って、幅方向中心線の両側に、前部1aから股部1bを通過して後部1cに至る圧搾溝21を有している。換言すれば、本発明の吸収性物品1は、前部1a、股部1b、及び後部1cにおいて、幅方向中心線の両側に、それぞれ圧搾溝21を有し、股部1bの圧搾溝21は、前部1a及び後部1cの圧搾溝21とそれぞれ連結している。
図1に示すように、本発明において、圧搾溝21は、吸収性物品1の幅方向中心線を軸として左右対称に設けられていることが好ましく、前部1a及び後部1cにおける左右の圧搾溝21は、吸収性物品1の長手方向両端部において連結し、弧を描く構成となっていることが好ましい。なお、圧搾溝21は、股部1bの幅方向中央部を避けて設けられているが、このような構成とすることにより、吸収性物品1の体液排出部付近における肌当たりを良好なものとすることができる。
【0031】
ここで、本発明においては、体液の移動を促進するために、前部1a及び後部1cの圧搾溝21の深さは、股部1bの圧搾溝21の深さよりも深くなっていることが好ましい。前部1a、股部1b、及び後部1cの圧搾溝21の深さを、そのような構成とすることにより、前部1a、股部1b、及び後部1cにおける圧搾溝21の溝幅を調整する構成とも相俟って、前部1a及び後部1cの圧搾溝21に到達した体液と圧搾溝21の側壁との接触面積が増加して、周囲の吸収体にすばやく吸収されることとなるとともに、より早い速度で圧搾溝21を拡散しやすくなり、吸収性物品1上の体液が、その長手方向両端部にまで十分に拡散できるようになる。したがって、吸収性物品1上の体液が、吸収体20の全面で吸収されるので、体液が迅速に吸収されるとともに、体液の横漏れがより防止される。
【0032】
本発明の吸収性物品1は、上述のとおり、圧搾溝21に隣接して、低米坪部22を有し、好ましくは体液排出部において嵩高部23を有している。このような低米坪部22及び嵩高部23を有していることにより、
図3に示すように、吸収性物品1の着用時においては、股部1bにおいて、一対の圧搾溝21を谷としてW字状に変形しやすくなる。着用時に吸収性物品1がこのように変形することにより、吸収性物品1のフィット性が向上するとともに、体液排出部に排出された体液は、圧搾溝21により保持されやすくなるが、一方で、前部1a及び後部1cにおいては、着用時の吸収性物品1の変形が少ないので、圧搾溝21での体液の保持されやすさが、股部1bに比べて低減しうるという懸念がある。本発明の好ましい態様においては、上述のとおり、前部1a及び後部1cの圧搾溝21の深さを、股部1bの圧搾溝21の深さよりも深く設定するので、前部1a及び後部1cの圧搾溝21においても体液が保持されやすくなり、前部1a及び後部1cの吸収体20も含めた、吸収体20の全域において体液を吸収することができるようになる。
【0033】
ここで、本発明の吸収性物品1における圧搾溝21の深さは、股部1bにおいては、吸収体20の厚みに対して、30%以上90%以下であることが好ましく、40%以上80%以下であることがより好ましい。また、圧搾溝21の深さは、前部1a及び後部1cにおいては、吸収体20の厚みに対して、40%以上95%以下であることが好ましく、50%以上90%以下であることがより好ましい。圧搾溝21の深さを上記の範囲内のものとすることにより、吸収体20の吸収性能を良好に維持しつつも、特に前部1a及び後部1cにおいて圧搾溝21の底部及び周囲の吸収体20の密度が高密度となるため、排泄された体液を長手方向両端部に迅速に拡散させることができる。吸収体20の厚さは、吸収性物品1の吸収性能によって異なるが、圧搾溝21の深さは、吸収体20の厚さとの関係で上記の条件を充足する範囲内で、股部1bにおいて0.5mm以上5mm以下とすることが好ましく、前部1a及び後部1cにおいて0.7mm以上7mm以下とすることが好ましい。
【0034】
なお、本発明の吸収性物品1においては、前部1a及び後部1cの圧搾溝21の溝幅が、股部1bの圧搾溝21の溝幅よりも狭いことが好ましい。圧搾溝21の溝幅を股部1bから前部1a又は後部1cにかけて狭まる構成を採用することにより、
図4(B)(a)に示すように、前部1a及び後部1cに伝わった体液の波の高さが高まって、前後方向に素早く移動するとともに、圧搾溝21の側壁との接触面積が増加して、体液がすばやく付近の吸収体20に吸収されることとなる。一方、
図4(B)(b)では、圧搾溝21の溝幅が一定になっているが、前部1a及び後部1cに伝わった体液の波の高さが高く維持されないため、
図4(B)(a)に比較すれば、体液が前後方向に移動する速度が低下することになる。なお、圧搾溝21の溝幅は、股部1bにおいては、2mm以上12mm以下であることが好ましく、3mm以上6mm以下であることがより好ましい。また、圧搾溝21の溝幅は、体液と吸収体20との接触面積を増加させるために、前部1a及び後部1cにおいては、1mm以上6mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがより好ましい。圧搾溝21の溝幅を上記の範囲内のものとすることにより、上記の効果に加えて、吸収性物品1の着用者への着用感やフィット性を良好に維持するとともに、排泄された体液を圧搾溝21で確実に保持し、かつ長手方向両端部に迅速に拡散させることができる。
【0035】
なお、以上の説明においては、前部1a及び後部1cと、股部1bとで、圧搾溝21の溝幅及び深さを別々に調整する態様について説明したが、圧搾溝21の溝幅及び深さは、前部1a及び後部1c、並びに股部1bで、それぞれ一定である必要はなく、股部1bから前部1a及び後部1cにかけて、圧搾溝21の溝幅や深さを徐々に変化させてもよく、股部1bの圧搾溝21の溝幅が、長手方向中心部付近から前部1a及び後部1cに向かい、徐々に狭くなり、股部1bの圧搾溝21の深さが、長手方向中心部付近から前部1a及び後部1cに向かい、徐々に深くなる構成を採用してもよい。
【0036】
本発明においては、
図1に示すように、前部1aの圧搾溝21及び股部1bの圧搾溝21の連結点、及び後部1cの圧搾溝21及び股部1bの圧搾溝21の連結点において、前部1aの圧搾溝21及び後部1cの圧搾溝21が分岐していることが好ましい。これにより、圧搾溝21に保持される体液を、吸収性物品1の前部1a及び後部1cの吸収体20の表面に、より広く拡散させることが可能となる。ここで、圧搾溝21を吸収性物品1の幅方向中心線を軸として左右対称に配置している場合、前部1a及び後部1cで分岐した2対の圧搾溝21は、長手方向両端部においてそれぞれ連結され、前部1a及び後部1cにおいて、圧搾溝21が二重の弧を描くような構成となっていてもよい。
【0037】
[圧搾溝底部の微小パターン]
本発明においては、圧搾溝21の底部に、高吸水性ポリマーによる微小パターンを設けて、圧搾溝21が体液と接触した後、長手方向両端部に到達した体液が、長手方向中心部に逆流することを防止してもよい。このような圧搾溝21の底部の微小パターンとしては、圧搾溝21の全幅に亘り、長手方向中心部寄りの端部の高吸水性ポリマーの量がより少なく、長手方向両端部寄りの端部の高吸水性ポリマーの量がより多くなる、複数の鋸歯状の微小パターンを挙げることができる。このような微細パターンを形成することにより、圧搾溝21の底部が体液と接触した後、体液を吸収して膨潤した微細パターンが体液の逆流をせき止めるための堰としての役割を果たすので、長手方向中心部から長手方向両端部方向への体液の流れを妨げることなく、体液の逆流を防止することができる。
【0038】
このような微小パターンは、例えば、エンボス加工により圧搾溝21を形成する際、圧搾溝21の底部に対応するエンボスロールの凸部に、この微細パターンに対応する凹部を形成する方法や、圧搾溝21と直交する帯状の吸収性シートを利用して、微細パターンを形成する方法により形成することが好ましい。吸収性シートは、SAPを使用したものであってもよい。
【0039】
[立体ギャザー]
吸収性物品1の身体接触側表面には、立体ギャザー50が設けられていてもよい。この立体ギャザー50は、トップシート10とともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の横漏れを防止できるようになっている。立体ギャザー50は、立体ギャザーシート51と、立体ギャザーシート51の自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材52と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材52としては、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0040】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、必要に応じて、液拡散性シート及び立体ギャザー50をあらかじめトップシート10上に配置し、このトップシート10とバックシート30との間に吸収体20を挟持する。そして、トップシート10から吸収体20に亘る圧搾溝21を形成させつつ、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。最後に、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折り等にして折り畳めばよい。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。