(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641563
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】オイル含浸性が向上された固体潤滑剤組成比を有するプラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16C 33/10 20060101AFI20200127BHJP
C10M 103/02 20060101ALI20200127BHJP
C10M 103/06 20060101ALI20200127BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20200127BHJP
F16C 33/12 20060101ALI20200127BHJP
F16C 33/14 20060101ALI20200127BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20200127BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20200127BHJP
【FI】
F16C33/10 A
C10M103/02 Z
C10M103/06 C
F16C17/02 Z
F16C33/12 B
F16C33/14 A
C10N30:00 Z
C10N40:02
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-215770(P2018-215770)
(22)【出願日】2018年11月16日
(65)【公開番号】特開2019-219054(P2019-219054A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0068884
(32)【優先日】2018年6月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518379728
【氏名又は名称】株式会社エスジーオ
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】崔 太樹
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−081219(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/145220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/10 − 33/14
F16C 17/02
C10M 103/02
C10M 103/06
C10N 30/00
C10N 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法において、
真鍮胴体に固体潤滑剤プラグを成形する孔を形成するステップと、
熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末を混合するステップと、
熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末の混合乾燥粉末を圧縮して前記真鍮胴体の孔に合う乾燥粉末圧縮プラグを成形するステップと、
前記真鍮胴体の孔に乾燥粉末圧縮プラグを挿入するステップと、
乾燥粉末圧縮プラグが挿入された真鍮胴体を真空熱処理炉または不活性ガス雰囲気熱処理炉で熱膨張硬化性樹脂のキュアリング温度以上に熱処理して、前記乾燥粉末圧縮プラグを孔の内部で溶融膨張及び焼結させて冷却して真鍮胴体の孔内に固着された多孔性固体潤滑剤プラグを形成するステップと、及び
多孔性固体潤滑剤プラグにオイルを含浸させるステップと、を含み、
混合乾燥粉末の固体潤滑剤の乾燥粉末は、片状黒鉛50〜60Wt%、天然黒鉛5〜15Wt%、硫酸バリウム10〜15Wt%の組成物から成り、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末は、20〜25Wt%から成ることを特徴とするオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法。
【請求項2】
不活性ガス熱処理炉での加熱は、
150〜250℃で0.5〜2時間加熱することを特徴とする請求項1に記載のオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法。
【請求項3】
熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末の混合乾燥粉末を圧縮するに当たっては、
2,000kgf/cm2〜5,000 kgf/cm2の圧力で圧縮することを特徴とする請求項2に記載のオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法。
【請求項4】
真鍮胴体の孔に乾燥粉末圧縮プラグを挿入するステップにおいて、
乾燥粉末圧縮プラグの表面に熱膨張硬化性樹脂がさらに塗布されることを特徴とする請求項3に記載のオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法。
【請求項5】
多孔性固体潤滑剤プラグにオイルを含浸させるステップの前に、
荒削りにより不要な部分は除去し、仕上げにより寸法を調整する後加工ステップが行なわれることを特徴とする請求項4に記載のオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法。
【請求項6】
固体潤滑剤の乾燥粉末を混合するステップは、
片状黒鉛と天然黒鉛と硫酸バリウムをアルコールと混合する原料混合ステップと、
混合された原料を乾燥させるステップと、
乾燥された原料を粉砕及び50〜150meshでフィルターするステップと、
フィルターされた原料を回収して混合機で再混合するステップと、が順次行なわれることを特徴とする請求項1に記載のオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル含浸性が向上された固体潤滑剤組成比を有するプラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法に関し、より詳しくは、真鍮胴体の軸摺動面に固体潤滑剤プラグを埋め込んだオイルレスベアリングにおいて、真鍮胴体と固体潤滑剤プラグとの間の接着性と固体潤滑剤プラグのオイル含浸性を同時に向上させた固体潤滑剤組成比を有するプラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングは、オイルを酸敗させるほどの高温環境(例えば、製鉄所の溶融炉周辺など)に使用する場合を除いては、固体潤滑剤プラグにオイルを含浸させる。
【0003】
含浸されたオイルは、オイルレスベアリングと軸またはピンなどの相手材間に相対運動による摩擦が発生すると、摺動面に熱が発生して固体潤滑剤プラグから流れ出て摺動面に供給され、相対運動が停止して摩擦が発生しなければ、再び固体潤滑剤プラグに吸収される。
【0004】
十分なオイル含浸量は、特に高速運動をする相手材に使用されるときに必須的である。
【0005】
下記の特許文献1の従来技術には、従来使用されてきた固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造工程が詳細に説明されている。
【0006】
下記の特許文献2、特許文献3にも、他の形態の固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法が提案されている。
【0007】
しかし、従来使用されていたり、従来の特許文献等により開示された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングは、2つの問題点がある。
【0008】
その一つは、孔からプラグが離脱することであり、残りの一つは、オイル含浸が容易ではないか、またはオイル含浸量が過度に少ないということである。
【0009】
一般的に、固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングは、カーボンに液状の接着剤を混合して、プラグ状に成形した後、熱または硬化剤により硬化させた固体潤滑剤プラグを固体潤滑剤プラグ表面に接着剤を塗布した後、真鍮胴体に形成された孔に挿入して接着剤を凝固させる方法を使用する。
【0010】
つまり、固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングに使用される固体潤滑剤プラグは真鍮胴体成形に挿入する前に、カーボンと液状の接着剤を混合した後、一定の大きさまたは規格のプラグ(plug)状に成形し、これを硬化剤または熱により硬化させて製造し、真鍮胴体との組立過程で真鍮胴体に孔を開けて固体潤滑剤プラグ表面に接着剤を塗って孔に挿入した後、接着剤を乾燥させて接合する。
【0011】
このとき、真鍮胴体に成形する孔は、一定の間隔を置いて多数形成され、その孔の大きさは、接着剤が塗布された固体潤滑剤プラグが容易に挿入できる大きさに成形されるので、常に固体潤滑剤プラグの外径よりも大きい。
【0012】
その結果、接着剤が塗布されたまま真鍮胴体の孔に挿入された固体潤滑剤プラグは、接着剤の乾燥過程で固体潤滑剤プラグと真鍮胴体との間に隙間が発生し易く、部分的に接着されていない部分が発生する。
【0013】
また、使用中に摺動面に熱が発生すると、接着剤層は、容易に劣化して接着力が弱くなったり、接着部位が分離されて、機械運動中に固体潤滑剤プラグが孔から離脱することになる。
【0014】
特に、オイルレスベアリングを射出機などのピンガイドブッシュとして使用する場合、ピンがガイドブッシュから離れている間、固体潤滑剤が真鍮胴体の孔から少しでも真鍮胴体内側に突出する場合には、ピンが真鍮胴体に進入して進むとき、固体潤滑剤がピンにかかって損傷したり、孔から離脱することになる。
【0015】
このように、固体潤滑剤プラグを予め規格に合うように作製した後、この固体潤滑剤プラグの規格に合う孔を真鍮胴体に成形し、固体潤滑剤プラグに接着剤を塗って真鍮胴体の孔に挿入した後、接着する方法は、使用により真鍮胴体と固体潤滑剤との間の接着力が劣化するしかなく、これはベアリング使用中に固体潤滑剤が真鍮胴体から離脱したり、損傷が発生する原因となる。
【0016】
それだけでなく、カーボンと液状の接着剤を混合してプラグ状に予め成形し、これを熱硬化して固体潤滑剤プラグを作製した後、真鍮胴体の孔に挿入する場合、固体潤滑剤プラグを構成するカーボンの気孔の殆どが液状の接着剤により詰められ、ここに真鍮胴体に挿入するとき、固体潤滑剤プラグの表面に接着剤を塗って接着剤膜を形成するので、オイル含浸が難しくオイル含浸量も非常に少ない。
【0017】
特許文献1には、真鍮などの金属をブッシュ型ないしはプレート型に実際の寸法よりも大きく荒削りした後、貫通する孔を一直線に穿孔して胴体を形成する工程と、均一な径に長く形成された固体型のカーボン芯(カーボンと液状の接着剤を混合してプラグ状に予め成形し、これを熱硬化したもの)を、前記孔よりも長く切断する工程と、前記切断されたカーボン芯の長手方向の表面に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤が塗布されたカーボン芯を胴体の孔に挿入する工程と、前記カーボン芯が挿入された胴体を乾燥して接着剤が固くなる工程と、前記カーボン芯が孔よりも長く挿入された胴体を設計寸法通り仕上げる工程と、からなるオイルレスベアリングの作製方法が従来技術として記載されている。
【0018】
しかし、これらの従来技術による場合、上述したようにカーボン芯が孔から容易に離脱できるので、特許文献1の発明は、真鍮などの金属を実際の寸法よりも大きく、ブッシュ型ないしはプレート型に荒削りし、外側面から摺動面方向へ狭くなるようにテーパ孔を貫通するように穿孔して胴体を形成する工程と、前記テーパ孔に充填させるカーボン生地を製造するためにカーボン粉末と液状の接着剤とを混ぜて練る工程と、前記胴体のテーパ孔にテーパーカーボン芯が形成されるようにカーボン生地を充填させる工程と、前記カーボン生地が充填された胴体を乾燥炉で300℃〜350℃の温度に加熱してカーボン生地を凝固させる工程と、前記カーボン生地が凝固された胴体を設計寸法通り仕上げる工程と、からなることを特徴とするテーパーカーボン芯が構成されたオイルレスベアリングの製造方法を提案している。
【0019】
特許文献1の発明によれば、カーボン芯が離脱しないという効果がある。
【0020】
しかし、特許文献1の従来技術に記載された方法や発明の内容に記載されたものもまたカーボン芯そのものがカーボンと液状の接着剤を混合して成形するので、カーボンの気孔率が大きく低下し、真鍮胴体に挿入するとき、カーボン芯の表面に接着剤を塗って接着剤膜を形成することから、オイル含浸が難しくオイル含浸量も非常に少ないという点で同一である。
【0021】
特許文献2は、樹脂固体潤滑剤(黒鉛を含む樹脂成形物)をドライアイスなどで冷却して収縮させた後、基材の孔に挿入して樹脂固体潤滑剤が抜けないようにする方法を開示している。
【0022】
しかし、この時の樹脂固体潤滑剤も液状の樹脂を黒鉛と混合して、プラグ状に成形した後、熱硬化させたもので気孔率が大きく低下する欠点がある。
【0023】
特許文献3は、湿潤性及び流動性のある固体潤滑剤を螺旋溝に詰めて熱で硬化させる方法を開示している。
【0024】
つまり、特許文献3は、固体潤滑剤を埋設固定した円筒形ベアリングに関するもので、内周面に形成された螺旋溝及びリング溝に詰められる固体潤滑剤は、主成分を成す固体潤滑剤粉末に対して潤滑油剤が5〜30重量%、潤滑油剤を吸収保持する担体が2〜15重量%、合成樹脂結合剤15〜50重量%を含む湿潤性と流動性を有する固体潤滑剤である。
【0025】
特許文献3は、湿潤性と流動性を有する固体潤滑剤を円筒形金属基質に形成した螺旋溝及びリング溝に詰めて、金属基質を80℃の加熱炉で60分間保持して、前記合成樹脂結合剤を硬化させた後、140℃の加熱炉で30分間維持して合成樹脂結合剤を補助硬化させるとともに、潤滑油を含有した固体潤滑剤を螺旋溝及びリング溝に接合すると説明されている。
【0026】
また、前記固体潤滑剤の具体的な成分に対して、主成分を成す固体潤滑剤粉末は、そのものだけで固体潤滑作用を成す物質で、天然黒鉛、人造黒鉛、天然スケール黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン樹脂及び窒化ホウ素のうち1種または2種以上を選択して使用することができ、常温で液状またはペーストを示す潤滑油剤として機械油、エンジンオイルなどの鉱物油、ヒマシ油などの植物油、エステルオイル、シリコンオイルなどの合成油、グリースなどから1種または2種以上を選択して使用することができ、潤滑油剤を吸収保持する担体としては、炭化水素系ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸を誘導して得られるワックス、ポリオレフィン樹脂粉末、油性繊維、スチレンまたはメタクリル系を主成分とする架橋多孔性球状粒子、多孔性炭酸カルシウムなどから1種または2種以上を選択して使用することができ、合成樹脂バインダーにはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することができ、特に、常温硬化型液状エポキシ樹脂または熱硬化型液状または粉末エポキシ樹脂が好ましいと説明されている。
【0027】
しかし、特許文献3によれば、固体潤滑剤の接着力と潤滑油(オイル)の含浸性を全て喪失する欠点がある。
【0028】
加熱前に湿潤性と流動性を有する固体潤滑剤に含有されていた潤滑油剤は、合成樹脂結合剤の硬化過程で金属基質の溝に合成樹脂結合剤が付着することを妨害するだけではなく、140℃の温度に加熱炉で加熱する間、固体潤滑剤から殆ど排出されてしまうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10−0823828号(登録日:2008.04.21)
【特許文献2】日本特開2013−092222号(公開日:2013.05.16)
【特許文献3】日本特開平06−200946号(公開日:1994.07.19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、上述した固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法が有する問題点を解決するために案出されたものであり、本発明が解決しようとする第1の課題は、真鍮胴体の孔に埋め込まれた固体潤滑剤と真鍮胴体との間隙の発生や不連続境界の発生を根本的に予防し、固体潤滑剤と真鍮胴体との間に強固な付着力が長期間維持できる固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法を提供することである。
【0031】
本発明が解決しようとする第2の課題は、成形過程で固体潤滑剤の内部と表面に多孔性を維持してオイル含浸が容易であり、オイル含浸量の多い固体潤滑剤組成比を有するプラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明のオイル含浸性が向上された固体潤滑剤組成比を有するプラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法は、真鍮胴体に固体潤滑剤プラグを成形する孔を形成するステップと、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末を混合するステップと、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末の混合乾燥粉末を圧縮して前記真鍮胴体の孔に合う乾燥粉末圧縮プラグを成形するステップと、前記真鍮胴体の孔に乾燥粉末圧縮プラグを挿入するステップと、乾燥粉末圧縮プラグが挿入された真鍮胴体を熱処理炉で熱膨張硬化性樹脂のキュアリング温度以上に熱処理して、前記乾燥粉末圧縮プラグを孔の内部で膨張及び焼結させて冷却して真鍮胴体の孔内に固着された多孔性固体潤滑剤プラグを形成するステップと、及び多孔性固体潤滑剤プラグにオイルを含浸させるステップと、を含み、混合乾燥粉末の固体潤滑剤の乾燥粉末は、
片状黒鉛50〜60Wt%、天然黒鉛5〜15Wt%、硫酸バリウム10〜15Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末20〜25Wt%から成ることを特徴とする。
【0033】
また、熱処理炉における加熱は、150〜250℃で0.5〜2時間加熱することを特徴とする。
【0034】
また、固体潤滑剤の乾燥粉末の混合乾燥粉末を圧縮するに当たっては、2,000kgf/cm
2〜5,000kgf/cm
2の圧力で圧縮することを特徴とする。
【0035】
また、真鍮胴体の孔に乾燥粉末圧縮プラグを挿入するステップにおいて、乾燥粉末圧縮プラグの表面に熱膨張硬化性樹脂がさらに塗布されることを特徴とする。
【0036】
また、多孔性固体潤滑剤のプラグにオイルを含浸させるステップの前に、荒削りにより不要な部分は削除し、仕上げにより寸法を調整する後加工ステップが行なわれることを特徴とする。
【0037】
また、固体潤滑剤の乾燥粉末を混合するステップは、片状黒鉛、天然黒鉛、硫酸バリウム、アルコール、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末を混合する原料混合ステップ、混合された原料を乾燥させるステップ、乾燥された原料を粉砕及び50〜150meshでフィルターするステップ、フィルターされた原料を回収して混合機で再混合するステップと、が順次行なわれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
上述した構成を持つ本発明によれば、固体潤滑剤プラグが真鍮胴体の孔の内部で固体潤滑剤の乾燥粉末の焼結により形成される。
【0039】
真鍮胴体に形成された孔に挿入された乾燥粉末圧縮プラグの組成中に片状黒鉛の膨張と熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末などが熱処理過程で膨張焼結硬化して孔の空間を隙間なく詰めながら真鍮胴体と気密に付着する。
【0040】
したがって、真鍮胴体の孔に固体潤滑剤プラグが形成されながらも、真鍮胴体と固体潤滑剤プラグとの間に隙間が発生せず、強固な付着力が長期間維持されることができる。
【0041】
また、焼結過程で固体潤滑剤組成物である片状黒鉛と、天然黒鉛、硫酸バリウム、硬化性樹脂乾燥粉末の組成比を変化させて目標とするオイル含浸量を制御することができる。
【0042】
また、固体潤滑剤プラグの表面にも気孔が広く分布するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の一実施例に係る黄銅胴体に孔を形成した状態の断面図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る乾燥粉末圧縮プラグの製造方法を示す断面図である。
【
図3】
図2に示された方法で成形した乾燥粉末圧縮プラグの断面図である。
【
図4】
図3に示された乾燥粉末圧縮プラグの表面に熱膨張硬化性液状樹脂を塗布した状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された真鍮胴体の孔に、
図4に示された乾燥粉末圧縮プラグを挿入した状態を示す断面図である。
【
図6】
図5に示された乾燥粉末圧縮プラグが挿入された真鍮胴体を熱処理炉で焼結させる方法を示す断面図である。
【
図7】真鍮胴体の孔の内部に多孔性固体潤滑剤プラグが形成された状態を示す断面図である。
【
図8】真鍮胴体の孔の内部に形成された多孔性固体潤滑剤プラグにオイルを含浸する方法を示す断面図である。
【
図9】本発明に係るオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの斜視図である。
【
図10】固体潤滑剤の組成比が他の実施例別の膨張率と圧縮強度を示したグラフである。
【
図11】片状黒鉛の温度別圧縮強度及び膨張率を示したグラフである。
【
図12】韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した片状黒鉛の写真である。
【
図13】韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した天然黒鉛の写真である。
【
図14】韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した混合粉末1(片状黒鉛+天然黒鉛+硫酸バリウム)の写真である。
【
図15】韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した混合粉末2(片状黒鉛+天然黒鉛+硫酸バリウム+バインダー)の写真である。
【
図16】韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した硫酸バリウムの写真である。
【
図17】韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した熱処理前の固体潤滑剤の混合粉末2の写真である。
【
図18】韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した熱処理後の固体潤滑剤の混合粉末2の写真である。
【
図19】他の実施例の真鍮胴体に形成された孔の斜視図及び部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の好ましい実施例について、添付された図面を参照して詳細に説明する。尚、本発明を説明するのに参照する図面に示された構成要素の大きさ、線の厚さなどは、理解の便宜上、多少誇張して表現されていることもある。
【0045】
また、本発明の説明に使用される用語は、本発明の機能を考慮して定義したものであるので、ユーザー、オペレータの意図、慣例などにより異なる場合がある。したがって、この用語の定義は、本明細書の全般にわたる内容に基づいて下すのが当然である。
【0046】
そして、本出願において、「含む」、「有する」などの用語は、明細書上に記載された特定の数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指すものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在若しくは付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0047】
また、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態で具現されるものであり、単に本実施例は、本発明の開示を完全にし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0048】
したがって、本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を持つことができるので、様態(aspect)(または実施例)を明細書に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態について限定するものではなく、本発明の技術的思想に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解しなければならず、本明細書で使用した単数の表現は、文脈上明らかに異ならない限り、複数の表現を含む。
【0049】
ただ、本発明を説明するに当たって、周知または公知された機能或いは構成に対する具体的な説明は、本発明の要旨を明瞭にするために省略する。
【0050】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係るオイル含浸性が向上された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法の具体的な実施例を詳細に説明する。
【0051】
図1に示すように、本発明に係る固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングの製造方法は、真鍮胴体9に固体潤滑剤プラグ(
図9の符号7)を成形する孔11を形成するステップを含む。
【0052】
前記孔11は、円筒状の孔であり、その数と大きさは、真鍮胴体の表面積の大きさまたはオイルレスベアリングの用途に応じて異なる。
【0053】
前記真鍮胴体9は、図面に示したように、ブッシュ型の真鍮胴体であっても良く、図面には示していないが、長さ及び幅に比べて厚さの薄いプレート型の真鍮胴体であっても良い。
【0054】
本発明に係る固体潤滑剤プラグ7は、乾燥粉末を高圧で圧縮した乾燥粉末圧縮プラグ(
図5の符号3)を前記孔11に挿入した後、熱処理炉で乾燥粉末を焼結して固体潤滑剤プラグ7を成形するとともに、真鍮胴体9の孔11に接着させる。
【0055】
このために本発明は、
図2及び
図3に示すように熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末を混合するステップと、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末の混合乾燥粉末1を1,000kgf/cm
2以上の高圧で圧縮して前記真鍮胴体9の孔11に合う乾燥粉末圧縮プラグ3を成形するステップを含む。
【0056】
好ましくは、前記熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末の混合乾燥粉末1を圧縮するに当たっては、2,000kgf/cm
2〜5,000kgf/cm
2範囲の高圧で圧縮することが好ましい。
【0057】
本発明に最も好ましく適用できる前記熱膨張硬化性樹脂は、フェノール樹脂である。これらの樹脂は、熱硬化過程で3%体積〜5%体積膨張する。
【0058】
前記固体潤滑剤としては、黒鉛(graphite)、カーボン(carbon)、二硫化モリブデン(MoS2)または二硫化タングステン(WS2)のうち選択することができる。
【0059】
特に、前記固体潤滑剤として熱膨張性を有する片状黒鉛または人造カーボンを選択することが好ましい。
【0060】
片状黒鉛または人造カーボンは、加熱するとき15〜22%熱膨張して固化されるものと知られている。このような片状黒鉛の加熱による膨張率を利用して、固体潤滑剤を成形した後、真鍮胴体9のの孔11に挿入させて加熱膨張するものである。
【0061】
また、熱膨張硬化性樹脂と固体潤滑剤の乾燥粉末混合体1をプラグ状に成形するために、金型105の中空107内部に乾燥粉末混合体1を詰めてパンチ103が付着されたプレス101により圧着する。
【0062】
このように成形された乾燥粉末圧縮プラグ3は、前記真鍮胴体9の孔11に挿入する。
【0063】
このとき、
図4に示すように、乾燥粉末圧縮プラグ3の表面に熱膨張硬化性液状樹脂5をさらに塗布することが好ましい。
【0064】
このとき、挿入される乾燥粉末圧着プラグ3は、焼結硬化される前の状態に衝撃が加わると壊れることがあり、真鍮胴体9を熱処理炉に移動する過程で孔11から離脱できるからである。
【0065】
図6に示すように、本発明は、乾燥粉末圧縮プラグ3が挿入された真鍮胴体9を真空熱処理炉109または不活性ガス雰囲気熱処理炉で熱膨張硬化性樹脂のキュアリング温度以上に熱処理して前記乾燥粉末圧縮プラグ3を孔の内部で膨張及び焼結させて冷却して真鍮胴体の孔内に固着された多孔性固体潤滑剤プラグ7を形成するステップを含む。
【0066】
加熱温度は、150〜250℃の範囲で加熱する。好ましくは、180〜220℃の範囲で加熱する。
【0067】
このように、固体潤滑剤プラグ7を成形する場合、気孔率を10%〜20%まで高めることができる。
【0068】
図8に示すように、本発明は、孔11の内部に多孔性固体潤滑剤プラグが形成された真鍮胴体9をオイルバス113に浸漬して、多孔性固体潤滑剤プラグ7にオイルを含浸させるステップを含む。
【0069】
図9は、オイルが含浸された固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングを後加工して得られたものである。
【0070】
後加工ステップでは、荒削りによって不要な部分を除去し、仕上げにより寸法調整をする。
【0071】
後加工を先に行なった後、オイルを含浸しても良い。
【0072】
このように製造される本発明に係る固体潤滑剤プラグ埋込型オイルレスベアリングは、固体潤滑剤が熱処理過程で膨張硬化しながら真鍮胴体9の孔11の空間を隙間なく気密に詰めながら真鍮胴体と強固に付着され、真鍮胴体と固体潤滑剤との間の隙間がなくなり、長時間使用しても固体潤滑剤が真鍮胴体から分離されなくなる。
【0073】
また、このように固体潤滑剤プラグ7が加熱により膨張されながら形成された気孔にオイルを容易に含浸させることができ、固体潤滑剤の膨張に寄与する程度が相対的に大きい組成成分である片状黒鉛の成分比を制御することにより、オイル含浸量も制御することができる。
【0074】
以下では、本発明の固体潤滑剤である熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末と固体潤滑剤の乾燥粉末の組成物について説明する。
【0075】
図10は、固体潤滑剤の組成比が他の実施例別の膨張率と圧縮強度の比較図であり、
図11は、片状黒鉛の温度別膨張率と圧縮強度の変化図ある。
【0076】
図12は、韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した片状黒鉛の写真、
図13は、韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した天然黒鉛の写真、
図14は、韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した混合粉末1(片状黒鉛+天然黒鉛+硫酸バリウム)の写真、
図15は、韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した混合粉末2(片状黒鉛+天然黒鉛+硫酸バリウム+バインダー)の写真、
図16は、韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した硫酸バリウムの写真、
図17は、韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した熱処理前の固体潤滑剤の混合粉末2の写真、
図18は、韓国化学融合試験研究院で走査顕微鏡で撮影した熱処理後の固体潤滑剤の混合粉末2の写真である。
【0077】
本実施例では混合乾燥粉末の固体潤滑剤の乾燥粉末は、片状黒鉛
50〜60Wt%、天然黒鉛
5〜15Wt%、硫酸バリウム10〜15Wt%の組成物から成り、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末であるフェノール樹脂乾燥粉末20〜25Wt%から成る組成物を不活性ガス熱処理炉で150〜250℃に0.5〜2時間加熱することに特徴がある。
【0078】
図11は、片状黒鉛温度別膨張率と圧縮強度の変化図であり、表1は、片状黒鉛の温度別膨張率である。
〈表1〉
【0079】
膨張率=加熱後の体積−加熱前の体積)/加熱前の体積を示した数値である。
【0080】
膨張率に相応する割合でオイルが含浸されることができるので、目的とするオイル 含浸量を持つように膨張率を制御することが好ましい。
【0081】
片状黒鉛は、加熱して焼結させると膨張されるが、膨張率は温度が増加すると高くなるが、150℃以上では19%前後と大きな変化はなく、圧縮強度は150℃以上では170kgf/cm
2以上とオイルレスベアリングの潤滑剤で求められる強度値である150kgf/cm
2以上を持つ。
【0082】
天然黒鉛は、回転体または滑りが発生する相手物との潤滑機能を担当する。潤滑効果の面では、天然黒鉛の成分比を高くすることが良いが、本発明のようにプラグ型に挿入した後、加熱により真鍮胴体9に固定させるためには、膨張性を考慮しなければならないので、10〜15Wt%の天然黒鉛の成分比を持つのが良い。
【0083】
硫酸バリウムは、熱膨張硬化性樹脂、アルコールと混合するときに固まる特性を有する。
【0084】
硫酸バリウムは、片状黒鉛粉末、天然黒鉛粉末、バインダーの熱膨張硬化性樹脂、アルコールと混合するときに粉末同士を固めて固体潤滑剤であるプラグを成形するための移送時に移送が円滑になり、成形のための充填時に固まって混合粉末間の気孔を持つ役割を担当する。また、焼結後の耐摩耗性を向上させる機能を有する。硫酸バリウムは、混合粉末に10〜15Wt%が含まれているとき、最適の効率を持つようになる。
【0085】
バインダーの熱膨張硬化性樹脂は、固体潤滑剤を結束させることにより、各組成物が離脱することを防止する機能を有する。
【0086】
バインダーの熱膨張硬化性樹脂としては、結合剤と硬化剤とを混合して使用するが、バインダーの熱膨張硬化性樹脂100重量部に結合剤90〜97重量部、硬化剤3〜10重量部を有する。
【0087】
固体潤滑剤の乾燥粉末を混合するステップを具体的に見ると、
片状黒鉛、天然黒鉛、硫酸バリウム、アルコール、バインダーの熱膨張硬化性樹脂と混合する原料混合ステップ、次に、混合された原料を乾燥させるステップと、乾燥された原料を粉砕及び50〜150meshでフィルターするステップと、フィルターされた原料を回収して混合機で再混合するステップが順次行なわれる。
【0088】
このような固体潤滑剤の乾燥粉末を混合するステップと、が順次行われることにより、乾燥粉末の各組成物の分布割合と粒度が均一になる効果を奏する。
【0089】
図14は、混合粉末1(片状黒鉛+天然黒鉛+硫酸バリウム)の写真である。これはアルコール、バインダーの熱膨張硬化性樹脂を混合していないときであり、この場合には、粒子が固まっていないが、
図15の混合粉末2(片状黒鉛+天然黒鉛+硫酸バリウム+バインダー)の場合には、混合された混合粉末2のように粒子が固まっている。これは硫酸バリウムの粒子と粒子が固まる役割を果たしていることを確認することができる。
【0090】
図17は、熱処理前の固体潤滑剤の混合粉末2の写真であり、
図18は、熱処理後の固体潤滑剤の混合粉末2の写真である。
【0091】
熱処理前には
図17のように粒子と粒子との間の気孔が狭いが、熱処理後には、
図18のように加熱焼結されながら粒子サイズが増大することを確認することができ、粒子サイズの増大に応じて粒子と粒子との間の気孔が拡大されたことを確認することができる。この気孔の間に潤滑に必要なオイルが含浸される。
【0092】
以下では、実験値に対する例示を説明する。
【0093】
前記表1と
図11で確認できるように、片状黒鉛は加熱焼結すると体積が膨張されるが、150℃以上の温度での膨張率が19%を超えるが、その変化は大きくないので、加熱温度は150℃以上であれば好ましく、250℃以上に加熱することは、熱膨張硬化性樹脂に好ましい影響を与えないので、加熱温度を150〜250℃の範囲とするのが良い。
【0094】
下記の表2と
図10は、硫酸バリウム13Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末22Wt%に固定し、片状黒鉛と天然黒鉛の成分比を変化させて加熱条件200℃で1時間加熱したときの試験値である。
〈表2〉
【0095】
前記表2と
図10で実施例1は、片状黒鉛20Wt%、天然黒鉛45Wt%、硫酸バリウム13Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末22Wt%の混合粉末の加熱焼結後膨張率が5.5%、圧縮強度204.2kgf/cm
2を持つが、膨張率が目標とする15%を満たしていないことを確認した。
【0096】
実施例2は、片状黒鉛30Wt%、天然黒鉛35Wt%、硫酸バリウム13Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末22Wt%の混合粉末の加熱焼結後の膨張率が9.9%、圧縮強度321.1 kgf/cm
2を持つが、膨張率が目標とする15%を満たしていないことを確認した。
【0097】
実施例3は、片状黒鉛40Wt%、天然黒鉛25Wt%、硫酸バリウム13Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末22Wt%の混合粉末の加熱焼結後の膨張率が13.4%、圧縮強度355.6 kgf/cm
2を持つが、膨張率が目標とする15%を満たしていないことを確認した。
【0098】
実施例4は、片状黒鉛50Wt%、天然黒鉛15Wt%、硫酸バリウム13Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末22Wt%の混合粉末の加熱焼結後の膨張率が15.2%、圧縮強度311.8kgf/cm
2を持つが、膨張率が目標とする15%を
満たしていることを確認した。
【0099】
実施例5は、片状黒鉛52Wt%、天然
黒鉛13Wt%、硫酸バリウム13Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末22Wt%の混合粉末の加熱焼結後の膨張率が16.7%、圧縮強度290.4kgf/cm
2を持つが、膨張率が目標とする15%を満たしていることを確認した。
【0100】
実施例6は、片状黒鉛60Wt%、天然黒鉛5Wt%、硫酸バリウム13Wt%、熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末22Wt%の混合粉末の加熱焼結後の膨張率が18.9%、圧縮強度247.2kgf/cm
2を持つが、膨張率が目標とする15%を満たしていることを確認した。
【0101】
前記実施例1〜6から膨張率と圧縮強度を満たす好ましい片状黒鉛の組成比は、
50〜60Wt%であることを確認した。
【0102】
固体潤滑剤の膨張に寄与する程度が相対的に大きい組成成分である片状黒鉛の成分比を制御することにより、オイル含浸量も制御できることを確認した。
【0103】
これはオイルレスベアリング潤滑剤において目標とするオイル含浸量を持つための気孔を持つ膨張率15%を超え、潤滑剤から求められる強度値である150 kgf/cm
2以上を持つ。
【0104】
以下では、本発明の他の実施例の真鍮胴体に固体潤滑剤プラグを成形する孔について説明する。
【0105】
前述したように真鍮胴体9には、固体潤滑剤プラグを成形する孔11が形成されているが、本実施例では、孔11に挿入される固体潤滑剤プラグが離脱されることを防止するためのものである。
【0106】
図19は、真鍮胴体に形成された孔の斜視図及び部分拡大図である。
【0107】
図示されたように、本実施例は、真鍮胴体9の固体潤滑剤プラグを成形する孔11の内周面には突起が形成されており、その突起は中心線に向かって傾斜した構造を持っていることに特徴がある。
【0108】
このような構造を有する黄銅胴体9の孔11に挿入された固体潤滑剤プラグは、加熱により膨張し、膨張された固体潤滑剤プラグは、突起により強固に結合されながら孔の外に離脱されることが防止される。
【0109】
突起の形状をトゲ状又はねじ山状若しくは円筒形状など必要に応じて設定できることは言うまでもない。
【0110】
以上のような本発明は、真鍮胴体に形成された孔に挿入された乾燥粉末圧縮プラグの組成中に熱膨張硬化性樹脂の乾燥粉末が熱処理過程で溶融膨張焼結硬化して孔の空間を隙間なく詰めながら真鍮胴体と気密に付着する効果と、
【0111】
真鍮胴体の孔に固体潤滑剤プラグが形成されながらも、真鍮胴体と固体潤滑剤プラグとの間に隙間が発生せず、強固な付着力が長期間維持できる効果と、
【0112】
焼結過程で硬化性樹脂の乾燥粉末間に気孔が発生するだけではなく、固体潤滑剤の乾燥粉末が持つ固有の気孔を塞がないので、気孔率を最大化できる効果と固体潤滑剤プラグの表面にも気孔が広く分布することになり、オイル含浸が容易なだけではなく、オイル含浸量を増やすことができる顕著な機能と効果を奏する。
【符号の説明】
【0113】
1:混合乾燥粉末
3:乾燥粉末圧縮プラグ
5:液状の熱膨張硬化性樹脂
7:多孔性固体潤滑剤プラグ
9:真鍮胴体
11:孔
101:プレス
103:パンチ
105:金型
107:中空
109:熱処理炉
111:ヒーター
113:オイルバス