(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したタイヤのサイド部に埋め込んだセンサモジュールを用いてタイヤの状態や特性を計測する技術によれば、予めセンサモジュールをサイド部に埋め込んで製作したタイヤについて実走行中の計測を行うことができる。
【0005】
しかしながら、上述した技術では、センサモジュールなどの計測用の特段の装置が埋め込まれずに製作、市販される一般のタイヤについて実走行中の計測を行うことはできない。
【0006】
そこで、本発明は、計測用の装置が予め組み込まれていないタイヤであっても、比較的容易に、実走行中の計測を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、走行中の自動車のタイヤを計測するタイヤ計測システムを、前記タイヤの外周面のトレッドパターンの溝内に固定される、所定の検出対象の状態を検出するセンサと、前記タイヤのホイールのセンターに固定される伝送ユニットと、前記センサと前記伝送ユニットを接続するケーブルと、データ処理装置とを含めて構成したものである。ここで、前記センサは検出した前記状態を表す検出値を前記ケーブルを介して前記伝送ユニットに出力し、前記伝送ユニットは前記センサの検出値を、前記データ処理装置に無線通信を介して転送し、前記データ処理装置は、前記伝送ユニットから転送された検出値に対する所定のデータ処理を行う。
【0008】
ここで、このようなタイヤ計測システムにおいて、前記ケーブルは、前記センサから前記タイヤのサイド面まで、前記タイヤの外周面のトレッドパターンの溝内を通して敷設する第1部分と、前記第1の部分から前記伝送ユニットまで、前記タイヤと当該タイヤのホイールのサイド面上を這わせて敷設する第2の部分とより構成されるものとしてもよい。
【0009】
または、このようなタイヤ計測システムにおいて、前記センサは、前記タイヤの外周面のトレッドパターンの縦溝内に固定されるものとし、前記ケーブルは、前記センサから当該センサから周方向に離れた前記縦溝内の位置まで、前記縦溝内を通して敷設する第1部分と、当該第1の部分から前記タイヤのサイド面まで前記タイヤの外周面上を這わせて敷設する第2の部分と、当該第2の部分から前記伝送ユニットまで、前記タイヤと当該タイヤのホイールのサイド面上を這わせて敷設する第3の部分とより構成されるものとしてもよい。
【0010】
または、このようなタイヤ計測システムにおいて、前記センサは、前記タイヤの外周面のトレッドパターンの縦溝内に嵌入される、弾性を備えたリングに埋め込まれたものとしてもよい。
【0011】
または、このようなタイヤ計測システムを、前記センサには針状のピンが連結されており、当該ピンを前記タイヤの外周面のトレッドパターンの溝の底に刺し込むことにより、前記センサが、前記タイヤの外周面のトレッドパターンの溝内に固定されるものとして構成してもよい。
【0012】
または、このようなタイヤ計測システムは、前記センサを、前記タイヤの外周面のトレッドパターンの溝の底に接着する、制振性のある粘着シートを含めて構成するようにしてもよい。
【0013】
また、以上のタイヤ計測システムは、前記伝送ユニットを、磁石を備え、当該磁石で前記タイヤのホイールのナットに吸着することにより、当該伝送ユニットは前記タイヤのホイールのセンターに固定されるものとしてもよい。
【0014】
また、以上のタイヤ計測システムにおいて、前記センサとしては、前記状態として、音、または、音と加速度を検出するセンサなどを用いることができる。
以上のようなタイヤ計測システムによれば、センサをタイヤの外周面のトレッドパターンの溝内に固定するようにしたので、センサはタイヤの実走行時にも地面に接触して破損等することなく、タイヤの外周面近傍の状態を検出することができる。また、伝送ユニットからデータ処理装置に検出値を無線で転送するので、タイヤの回転中にも支障なく、センサの検出値をデータ処理装置において収集できるようになる。
【0015】
よって、基本的には、センサをタイヤの外周面のトレッドパターンの溝内に固定し、センサとケーブル接続した伝送ユニットをタイヤのホイールのセンターに固定するだけの比較的容易な作業を行うだけで、計測用の装置が予め組み込まれていないタイヤであっても実走行中の計測を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、計測用の装置が予め組み込まれていないタイヤであっても、比較的容易に、実走行中の計測を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、
図1に、本実施形態に係るタイヤ計測システムの構成を示す。
図示するように、タイヤ計測システムは、センサモジュール1と、センサモジュール1とケーブル2で有線接続された伝送ユニット3と、伝送ユニット3と無線接続するデータ処理装置4とより構成される。また、選択的に、伝送ユニット3とデータ処理装置4との間の通信を中継する中継器5を設けることができる。
【0019】
センサモジュール1は、タイヤの周面に配置され、音、温度、圧力、加速度などを検出し、ケーブル2を介して伝送ユニット3に検出内容を表す検出信号を出力する。すなわち、たとえば、センサモジュールは音と加速度を検出し、検出した音を表す検出信号と、検出した加速度を表す検出信号を出力する。または、センサモジュールは、複数のマイクで音を検出し、複数チャネルの音を表す検出信号を出力する。
【0020】
次に、伝送ユニット3は、インタフェース301で検出信号を受信し、AD変換部302で検出信号を検出データにデジタル変換し、メモリカードなどのリムーバブルメディア303に格納する。そして、データ送信制御部304は、AD変換部302でデジタルデータに変換した検出データを、リアルタイムに無線インタフェース305を介して、データ処理装置4に無線送信する。また、データ送信制御部304は、データ処理装置4からの要求に応え、リムーバブルメディア303に格納した検出データを、無線インタフェース305を介して、データ処理装置4に無線送信することもできる。
【0021】
ただし、中継器5を設けた場合には、データ送信制御部304は、検出データを無線インタフェース305を介して、中継器5に無線送信し、中継器5は伝送ユニット3から受信した検出データをデータ処理装置4に有線通信で送信する。なお、中継器5からデータ処理装置4への検出データの送信は、無線通信を用いて行うように構成してもよい。
【0022】
また、図示を省略したが、伝送ユニット3は、伝送ユニット3内の各部の電源を供給するバッテリも備えている。ただし、タイヤの回転による電磁誘導により発電し給電、または、バッテリに充電する構成を、タイヤ計測システムに備えるようにしてもよい。
【0023】
そして、データ処理装置4は、無線インタフェース401で、伝送ユニット3から検出データを受信し、データ収集部402は受信した検出データを記憶装置403に格納する。データ処理部404は、入出力部405で受け付けたユーザの操作に応じて、記憶装置403に格納された検出データの加工や解析を行って、その結果を入出力部405を介してユーザに提示する。
【0024】
ただし、中継器5を設けた場合には、データ処理装置4は、有線インタフェース406で中継器5から検出データを受信し、データ収集部402は有線インタフェース406で受信した検出データを記憶装置403に格納する。
【0025】
次に、
図2a、bに、伝送ユニット3の構造を示す。ここで、
図2a1は伝送ユニット3の前面を、
図2a2は伝送ユニット3の側面を、
図2a3は伝送ユニット3の背面を、
図2a4は
図2a1の断面線A-Aによる伝送ユニット3の断面を表している。また、
図2bは伝送ユニット3の分解図を示している。
【0026】
図2bの分解図に示すように、伝送ユニット3は、
図1に示した伝送部の各機能部を収容した本体部31をベース盤32の前面にボルト33により固定した構造を備えている。
また、ベース盤32の背面には、
図2d1に示すようなタイヤ計測システムが計測の対象とするタイヤ100のホイールのナットホール(ボルト孔)と同数の磁石34がホイールのナットホール(ボルト孔)と同じ配置でされている。
【0027】
そして、伝送ユニット3は、ベース盤32の背面の各磁石34を、
図2cに示すように、タイヤ100のホイールのナット101の各々に磁力で吸着させることにより、
図2d2に示すように、タイヤ100のホイールのセンターに固定される。
【0028】
ここで、本体部31とベース盤32はボルト33を外すことにより分離可能であり、たとえば、
図2e1、e2、e3の伝送ユニット3の背面図に示すように磁石34の数や磁石34の配置が異なる複数のベース盤32を予め用意しておき、測定するタイヤ100のホイールのナットホール(ボルト孔)数やPCD(ボルト穴ピッチ直径)に整合するベース盤32を選定し、選定したベース盤32に本体部31を固定して用いることにより、各種のタイヤ100に伝送ユニット3を固定することができる。
【0029】
なお、上述した中継器5を用いる場合には、中継器5は、
図2d2のサイドミラーに中継器5を固定した場合の例で示したように、自動車の外部の伝送ユニット3に近い位置に配置する。なお、この場合、中継器5と車内のデータ処理装置4との間の有線通信用のケーブルは、自動車のドアや窓の隙間を通して中継器5から車内に引き込みデータ処理装置4に接続するようにする。
【0030】
次に、センサモジュール1とケーブル2の配置について説明する。
図3aにセンサモジュール1とケーブル2が配置されたタイヤ100の外観を、
図3bにセンサモジュール1とケーブル2とタイヤ100のトレッドパターンとの関係を示す。センサモジュール1は、タイヤ100の外周面のトレッドパターンの溝110の内側に配置される。また、ケーブル2はセンサモジュール1からタイヤ100の外周面のトレッドパターンの溝110の内側を通ってタイヤ100のサイド面に達し、そこから、さらにタイヤ100のサイド面上とホイールのスポーク面上を通って伝送ユニット3に到達するように配置される。したがって、センサモジュール1やケーブル2が、自動車の走行に伴い地面に接触し、破損等することはない。
【0031】
ここで、
図3c1に示すように、センサモジュール1は、タイヤ100のトレッドパターンの溝110の底に、耐衝撃性を備えたゲル201で周囲を保護した状態で接着材202により接着される。また、ケーブル2は、タイヤ100の外周面部においては、タイヤ100のトレッドパターンの溝110の底に接着材202により接着され、タイヤ100のサイド面上においてはタイヤ100のタイヤ100のサイド面に、ホイールのスポーク面上においてはホイールのスポーク面に接着材202により接着される。
【0032】
ただし、センサモジュール1において音を検出する場合には、
図3c2に示すように、ゲル201や接着材202は、センサモジュール1の音取り込み用の孔11を塞がないように設ける。
【0033】
ここで、タイヤ100のトレッドパターンによっては、タイヤ100の外周面の左右方向中央部の溝110からタイヤ100のサイド面まで連続する溝110が存在しない場合がある。
【0034】
このような場合には、
図3dに示すように、タイヤ100のトレッドパターンによる溝110のうち、タイヤ100の縦溝111(タイヤ100の全周に渡る溝111)内にセンサモジュール1を配置する。そして、ケーブル2を、センサモジュール1から周方向に離れた位置まで、センサモジュール1を配置した縦溝111の内を通す。そして、センサモジュール1から周方向に離れた位置から、タイヤ100の外周面の上をケーブル2を這わせることにより、センサモジュール1からタイヤ100のサイド面までのケーブル2の部分を配置するようにする。なお、ケーブル2は縦溝底やタイヤ外周面に接着することにより、縦溝111内や外周面上に配置する。
【0035】
このようにすることにより、センサモジュール1が音や圧力を検出するセンサである場合に、ケーブル2が接地することにより発生する音や圧力がセンサモジュール1で検出されてしまうことを抑制することができる。
【0036】
なお、このようにケーブル2を配置する場合には、ケーブル2が接地により破損しないように、電線を保護する保護構造を備えた強化型のケーブル2を用いるようにする。
ここで、センサモジュール1とケーブル2の配置は、次のように行ってもよい。
すなわち、
図4aに示すように合成ゴムなどの弾性材料で形成した薄く細い円環形状のリング600に、センサモジュール1とケーブル2の一部を埋め込み、
図4bに示すように、リング600の弾性を利用してリング600をタイヤ100の縦溝111の内側に、リング600が接地面に突出しないように嵌め込むことにより、センサモジュール1とケーブル2をタイヤ100に取り付ける。ただし、ケーブル2をリング600に埋め込む部分は、コイル状にするなど周方向に伸び縮みできる構造とする。
【0037】
また、リング600から延びるケーブル2は、タイヤ100に縦溝111からサイド面までつながる溝110がある場合には、当該溝110を通してリング600からタイヤ100のサイド面まで通し、当該溝110がない場合にはタイヤ100の外周面の上を這わせてリング600からタイヤ100のサイド面まで通す。
【0038】
図4cは、リング600をタイヤ100の縦溝111に嵌め込んだ状態における、センサモジュール1の配置部分のリング600の断面を示しており、センサモジュール1とケーブル2は、リング600の内部に埋め込まれており、弾性体のリング600によって保護されている。
【0039】
このようなリング600を用いることにより、センサモジュール1とケーブル2のタイヤ100への固定や取り外しの作業を容易化することができる。また、リング600は弾性を備えているので、異なるサイズのタイヤ100へのセンサモジュール1とケーブル2の固定に適用することができる。
【0040】
以上のようにタイヤ100のトレッドパターンの溝110、縦溝111に配置されたセンサモジュール1は、タイヤ100の外周面の近傍で、音、温度、圧力、加速度などを検出し、ケーブル2を介して、ホイールセンタに磁石34で固定された伝送ユニット3に検出信号を出力する。伝送ユニット3は、検出信号をデジタルデータ化し、中継器5を介して、または、直接、無線通信によって、自動車車内に配置されたデータ処理装置4に転送する。データ処理装置4は、転送された検出データを記録したり、検出データを加工、解析した結果をユーザに対して提示するなどの、所定の計測処理を行う。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明した。
本実施形態によれば、センサモジュール1をタイヤ100の外周面のトレッドパターンの溝110、縦溝111の内に固定するようにしたので、センサモジュール1はタイヤ100の実走行時にも地面に接触して破損等することなく、タイヤ100の外周面近傍の状態を検出することができる。また、伝送ユニット3からデータ処理装置4に検出値を無線で転送するので、タイヤ100の回転中にも支障なく、センサモジュール1の検出値をデータ処理装置4において収集できるようになる。
【0042】
よって、基本的には、センサモジュール1をタイヤ100の外周面のトレッドパターンの溝110内に固定し、センサモジュール1とケーブル接続した伝送ユニット3をタイヤ100のホイールのセンターに磁石34の磁力で固定するだけの比較的容易な作業を行うだけで、計測用の装置が予め組み込まれていないタイヤ100であっても実走行中の計測を行うことができるようになる。
【0043】
ここで、以上の実施形態において、伝送ユニット3のタイヤ100への固定を磁石34の磁力により行ったが、伝送ユニット3のタイヤ100への固定は、伝送ユニット3を自動車のハブボルトにナットで固定することにより行うようにしてもよい。
【0044】
すなわち、この場合には、
図5aに示すように、伝送ユニット3のベース盤32に、磁石34に代えて、自動車のハブボルトと同数、同配置のボルト孔35を設ける。なお、
図5a1は伝送ユニット3の前面を、
図5a2は伝送ユニット3の側面を示す。
【0045】
そして、
図5b1に示すように設けられている自動車のハブボルト102に、
図5b2に示すように延長ボルト103のナット部を螺合することにより、当該ハブボルト102を延長する。そして、
図5b3示すように、延長ボルト103のボルト部を、伝送ユニット3のボルト孔35に通して、ナット36を螺合することにより、伝送ユニット3をタイヤ100のホイールのセンターに固定する。
【0046】
なお、ハブボルト102が充分に長い場合は、延長ボルト103は不要であり、ハブボルト102を伝送ユニット3のボルト孔35に通して、ナット36を螺合することにより、伝送ユニット3をタイヤ100のホイールのセンターに固定する。
【0047】
また、以上の実施形態におけるセンサモジュール1のタイヤ100への固定は
図6a、b、cに示すように行ってもよい。
すなわち、
図6aに示すように、センサモジュール1は、タイヤ100の溝110の壁を削って設けた空間内に埋め込んだ形態でタイヤ100に固定してもよい。このようにすることにより、跳ね石や、路面の凸凹からセンサモジュール1を、効果的に保護することができる。
【0048】
または、センサモジュール1は、
図6bに示すように、センサモジュール100の下部に針状のピン61を設け、ピン61を、タイヤ100の溝110の底に刺し込むことにより、センサモジュール1をタイヤ100の溝110内に固定してもよい。このようにすることによりセンサモジュール1の設置が簡単となる。
【0049】
または、
図6cに示すように、センサモジュール100を、タイヤ100の溝110の底に、シリコンやスポンジなどの制振材を用いて形成した粘着シート62により接着することにより、センサモジュール1をタイヤ100の溝110内に固定してもよい。このようにすることにより、タイヤ100からセンサモジュール1に伝わる振動を軽減し、検出信号に含まれてしまうノイズを軽減することができる。
【0050】
なお、
図6a、b、cのようにセンサモジュール1をタイヤ100に固定した場合の、ケーブル2の配置は
図3a、dと同様とする。