(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641578
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/049 20140101AFI20200127BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
H01L31/04 562
B32B27/32 D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-545816(P2016-545816)
(86)(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公表番号】特表2017-505536(P2017-505536A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】CN2014083604
(87)【国際公開番号】WO2015103872
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年7月19日
(31)【優先権主張番号】201410007109.8
(32)【優先日】2014年1月8日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516203885
【氏名又は名称】ディーエスエム サンシャイン ソーラー テクノロジー(スーチョウ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ, ルオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャイ, シューイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ウェイ
【審査官】
本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−089966(JP,A)
【文献】
特表2013−512577(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/118727(WO,A1)
【文献】
特開2012−039086(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0159280(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/135349(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/158351(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/051930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/048 − 31/049
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次に積層された耐候層、接続層、構造補強層及び反射層を備え、
前記耐候層は、2軸延伸PA耐候性フィルムであり、又は、ポリアミド、熱安定剤、紫外線安定剤及び無機材料から作製され、
前記構造補強層は、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン又はポリマーアロイから作製され、
前記ポリマーアロイは、ポリプロピレンとエンジニアリングプラスチックとを混合してなるポリマーアロイ、又は、変性ポリプロピレンとエンジニアリングプラスチックとを混合してなるポリマーアロイであり、
前記反射層は、ポリエチレンのポリマーアロイ層であり、且つ低密度ポリエチレン(LLDPE)及びエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)のブレンド、又は低密度ポリエチレン(LLDPE)及びエチレンプロピレンゴム(EPDM)のブレンドを含むことを特徴とする耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシート。
【請求項2】
前記耐候層、前記構造補強層及び前記反射層の厚さ比は、20〜100:40〜400:20〜150であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシート。
【請求項3】
前記耐候層、前記構造補強層及び前記反射層の厚さ比は、30〜60:150〜300:20〜150であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシート。
【請求項4】
前記構造補強層と前記反射層との間にも、前記接続層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシート。
【請求項5】
前記構造補強層の融点は、145℃より大きく、
前記変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンと熱安定剤とのブレンド・変性、ポリプロピレン、グラフトされたポリプロピレン及び熱安定剤のブレンド・変性、又は、ポリプロピレン、熱安定剤及び無機充填剤のブレンド・変性によって形成され、
前記変性ポリプロピレンのポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン(ホモPP)、ポリプロピレン共重合体及びポリプロピレンブロック共重合体のうちの1種類又は複数種類が選択され、
前記無機充填剤として、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、雲母、滑石、カオリン、ガラスビーズ及びガラス繊維のうちの1つが選択され、
前記エンジニアリングプラスチックは、ポリアミド又はポリフェニレンエーテルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシート。
【請求項6】
前記接続層は、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、又は、エチレン−アクリレート−無水マレイン酸三元共重合体から形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシート。
【請求項7】
前記耐候層の材料、前記接続層の材料、前記構造補強層の材料及び前記反射層の材料を、それぞれ押出機を介して造粒して、耐候層プラスチック粒子、接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を得て準備するステップ1と、
前記ステップ1で準備された前記耐候層プラスチック粒子、前記接続層プラスチック粒子、前記構造補強層プラスチック粒子及び前記反射層プラスチック粒子を、押出機を介して溶融共押し出すステップ2とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシートを製造する方法。
【請求項8】
前記接続層の材料、前記構造補強層の材料及び前記反射層の材料を、それぞれ押出機を介して造粒して、接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を得て準備するステップ1と、
前記ステップ1で準備された前記接続層プラスチック粒子、前記構造補強層プラスチック粒子及び前記反射層プラスチック粒子を、押出機を介して溶融共押し出し、且つ耐候層に被覆するステップ2とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシートを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電の分野に関し、特に太陽電池のバックシートに関する。
【背景技術】
【0002】
人類がエネルギーに対する需要は、増加する一方であり、現在、石炭や石油など従来のエネルギーを主とする状況が持続されなくなり、再生可能エネルギーの使用は、人類がエネルギーに関する課題を解決する唯一の方法である。太陽光発電は、再生可能エネルギーの中で最も重要なものの1つである。世界各国は、太陽光発電を発展させるために競合し、太陽光発電の回路図を設計且つ実施している。全世界の太陽光発電産業は、過去の5年間において50%以上のスピードで高速成長し、今後の10年において30%以上のスピードで持続的に発展していくと予想される。
【0003】
太陽光バックシートは、多くの太陽電池(太陽光発電)モジュールに使用され、太陽電池パネルの背面に位置し、電池セルに対する保護作用及び支持作用を果たす。太陽光バックシートは、安定した絶縁性、耐水性及び耐老化性を有する必要がある。フッ素樹脂フィルムは、屋外の長期に渡る老化に耐える性能が優れ、太陽電池のバックシートを製造するのに大量に使用されている。バックシートは、主に耐候層、構造補強層及び反射層の3層を含む。現在、一般に使用されているバックシート構造としては、TPT構造及びTPE構造がある。ここで、Tは、デュポン会社のテドラー(Tedlar)フィルムを指し、成分はポリフッ化ビニル(PVF)である。Pは、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムである。Eは、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)フィルムである。従って、TPT構造は、PVFフィルム・PETフィルム・PVFフィルム構造を指し、TPE構造は、PVFフィルム・PETフィルム・EVAフィルム構造を指す。3層のフィルムは、接着剤で接着されている。TPT構造のバックシートの代表的なメーカーは、欧州のIsovolta会社である。TPE構造のバックシートは、米国のMadico会社の特許製品(特許文献1参照)である。現在、一部の会社は、PVFフィルムの代替製品として、KPK構造及びKPE構造(Kは、PVDFフィルムを指す。)を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを使用している。また、一部の米国及び日本の会社は、PVFフィルム又はPVDFフィルムの代わりに、ECTFE(エチレン−クロロトリフロオロエチレンコポリマー)及びETFE(エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー)をバックシートの耐候層として採用しようと試みている。一方、3M会社は、THV(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフロライド)フィルムを太陽電池用バックシートの耐候層として使用している(特許文献2参照)。当該構造は、THV/PET/EVAの3層である。
【0004】
従来のバックシートは、フッ素樹脂フィルムが使用されることで、屋外の長期に渡る老化に耐える性能が優れている。しかし、フッ素樹脂フィルム自体のコストが高額であるため、更なる大規模の応用が制限される。また、従来のバックシートの構造補強層に用いられているPETプラスチックフィルムは、耐熱・耐湿性及び耐加水分解性能が劣り、高温多湿の環境での長期使用に伴い、脆化割れに至り、それによって、太陽電池の性能が劣化又は喪失する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/091901A2号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0280922A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠陥を克服するために、本発明は、層間の接続が堅固であり、耐熱・耐湿性及び耐老化性が優れ、且つコストが安価である太陽電池のバックシートを提供する。本発明は、太陽エネルギー業界において非常に重要な意味を有する。
【0007】
上記の目的を達成すべく、本発明に係る技術的解決手段は、下記の通りである。耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシートは、順次に積層された耐候層、接続層、構造補強層及び反射層を備えている。前記耐候層は、2軸延伸PA耐候性フィルムであり、又は、ポリアミド、熱安定剤、紫外線安定剤及び無機材料から作製されている。前記構造補強層は、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン又はポリマーアロイから作製されている。前記ポリマーアロイは、ポリプロピレンとエンジニアリングプラスチックとを混合してなるポリマーアロイ、又は、変性ポリプロピレンとエンジニアリングプラスチックとを混合してなるポリマーアロイである。
【0008】
好ましくは、前記ポリアミドは、下記成分の1つ又は複数の組合せである。ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド613、ポリアミド615、ポリアミド616、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10、ポリアミド912、ポリアミド913、ポリアミド914、ポリアミド915、ポリアミド616、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1013、ポリアミド1014、ポリアミド1210、ポリアミド1212、ポリアミド1213、ポリアミド1214、ポリエチレンテレフタレートアジポアミド、ポリエチレンテレフタレートアゼライン酸アミド、ポリエチレンテレフタレートセバカミド、ポリエチレンテレフタレート12ジアミド、アジピン酸アジポアミド・テレフタル酸アジポアミドのコポリアミド、テレフタル酸アジポアミド・イソフタル酸アジポアミドのコポリアミド、ポリキシレンアジピン酸アミド、テレフタル酸アジポアミド・テレフタル酸、2−メチルグルタル酸アミド、アジピン酸アジポアミド・テレフタル酸アジポアミド・イソフタル酸アジポアミドのコポリアミド、ポリカプロラクタム−テレフタル酸アジポアミドである。
【0009】
好ましくは、前記構造補強層の融点は、145℃より大きい。
【0010】
好ましくは、前記変性ポリプロピレンは、前記ポリプロピレンと前記熱安定剤とのブレンド・変性、前記ポリプロピレン、グラフトされた前記ポリプロピレン及び前記熱安定剤のブレンド・変性、又は、前記ポリプロピレン、前記熱安定剤及び無機充填剤のブレンド・変性によって形成されている。
【0011】
さらに好ましくは、前記ポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン(ホモPP)、ポリプロピレン共重合体及びポリプロピレンブロック共重合体から1種類又は複数種類が選択される。
【0012】
さらに好ましくは、前記変性ポリプロピレンは、前記ポリプロピレン、前記熱安定剤及び前記無機充填剤のブレンド・変性によって形成されている。前記無機充填剤として、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、雲母、滑石、カオリン、ガラスビーズ及びガラス繊維のうちの1つが選択される。
【0013】
好ましくは、前記エンジニアリングプラスチックは、ポリアミド又はポリフェニレンエーテルである。
【0014】
好ましくは、前記接続層は、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、又は、エチレン−アクリレート−無水マレイン酸三元共重合体である。
【0015】
さらに好ましくは、前記接続層は、エチレン−アクリル酸ブチル−無水マレイン酸コポリマー又はマレイン酸変性ポリプロピレンである。
【0016】
好ましくは、前記耐候層、前記構造補強層及び前記反射層の厚さ比は、20〜100:40〜400:20〜150である。
【0017】
好ましくは、前記耐候層、前記構造補強層及び前記反射層の厚さ比は、30〜60:150〜300:20〜150である。
【0018】
好ましくは、前記耐候層、前記構造補強層及び前記反射層の厚さ比は、50〜100:150〜250:50〜100である。
【0019】
好ましくは、前記反射層は、ポリエチレンのポリマーアロイ層である。
【0020】
さらに好ましくは、前記反射層は、ポリエチレン、エチレンセグメント(−CH
2−CH
2−)を含むコポリマー、紫外線安定剤及び無機白色顔料のブレンド・変性によって形成されている。
【0021】
さらに好ましくは、前記反射層は、低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、紫外線安定剤及び二酸化チタン(TiO
2)のブレンド・変性によって形成されている。
【0022】
さらに好ましくは、前記反射層は、低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、紫外線安定剤及び二酸化チタン(TiO
2)のブレンド・変性によって形成されている。
【0023】
好ましくは、前記構造補強層と前記反射層との間にも、前記接続層が設けられ、つまり、太陽電池のバックシートは、順次に積層された耐候層、接続層、構造補強層、接続層及び反射層から構成されている。
【0024】
本発明は、以下の2つの前記太陽光バックシートの製造方法をさらに提供する。
【0025】
方法1は、以下のステップを含む。
ステップ1:前記耐候層の材料、前記接続層の材料、前記構造補強層の材料及び前記反射層の材料を、それぞれ押出機を介して造粒して、耐候層プラスチック粒子、接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を得て準備する。
ステップ2:前記ステップ1で準備された前記耐候層プラスチック粒子、前記接続層プラスチック粒子、前記構造補強層プラスチック粒子及び前記反射層プラスチック粒子を、押出機を介して溶融共押し出す。
【0026】
方法2は、以下のステップを含む。
ステップ1:前記接続層の材料、前記構造補強層の材料及び前記反射層の材料を、それぞれ押出機を介して造粒して、接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を得て準備する。
ステップ2:前記ステップ1で準備された前記接続層プラスチック粒子、前記構造補強層プラスチック粒子及び前記反射層プラスチック粒子を、押出機を介して溶融共押し出し、且つ耐候層に被覆する。
【0027】
本発明は、背景技術に存在する欠陥を解決し、以下の有益な効果を有する。
【0028】
1、本発明に係る太陽電池のバックシートによれば、ポリアミド(PA)が、耐候層として従来のフッ素系フィルム材料に代替することによって、耐候性が確保され、コストが大幅に低下する。また、ポリプロピレン(PP)が、構造補強層として従来のPET材料に代替することによって、従来のPET構造補強層の耐熱・耐湿性及び耐加水分解性能が劣る問題、並びに高温多湿の環境での長期使用に伴う脆化割れ問題が回避され、また、PA耐候層と協働することで、バックシートの耐熱・耐湿性及び耐老化性がさらに向上する。
【0029】
2、耐候層、構造補強層及び反射層の厚さ比は、20〜100:40〜400:20〜150である。特に、当該厚さ比が30〜60:150〜300:20〜150又は50〜100:150〜250:50〜100であると、層間の接続がより堅固であり、構造がより安定し、最良の耐熱・耐湿性及び耐老化性能を得ることができる。
【0030】
3、本発明に係るバックシートは、多層化溶融共押し出の方式で製造されてよい。この場合、従来の接着剤を省略することができ、生産率が向上し、環境にも優しい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下、図面及び実施例と併せて、本発明について詳細に説明する。
【0032】
【
図2】本発明に係る実施例2〜4の構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面及び実施例と併せて、本発明について詳細に説明する。これらの図面のすべては、簡略図であり、本発明の基本的な構造を模式的に説明するためのものにすぎない。従って、これらの図面には、本発明と関連する構成のみが表示されている。
【0034】
<実施例1>
図1に示すように、耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシートは、順次に積層された耐候層2、第1接続層4、構造補強層6及び反射層12から構成されている。
【0035】
耐候層2は、ポリアミド(PA)、熱安定剤、紫外線安定剤及び無機材料から作製されている。
【0036】
第1接続層4は、マレイン酸変性ポリプロピレンである。
【0037】
構造補強層6は、変性ポリプロピレンから作製されており、融点が145℃より大きい。変性ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン(ホモPP)及び熱安定剤のブレンド・変性によって形成されている。
【0038】
反射層12は、ポリエチレンのポリマーアロイ層である。反射層12は、ポリエチレン、エチレンセグメント(−CH
2−CH
2−)を含むコポリマー、紫外線安定剤及び無機白色顔料のブレンド・変性によって形成されている。より具体的には、反射層12は、低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、紫外線安定剤及び二酸化チタン(TiO
2)のブレンド・変性によって形成されている。
【0039】
バックシートの耐候層2、第1接続層4、構造補強層6及び反射層12の厚さは、それぞれ50um、25um、250um、50umである。
【0040】
<実施例2〜4>
図2に示す耐熱・耐湿性を有する太陽電池のバックシートと実施例1との相違点は、以下の通りである。
実施例2〜4に係る太陽電池のバックシートは、順次に積層された耐候層14、第1接続層16、構造補強層18、第2接続層24及び反射層22から構成されている。
【0041】
耐候層14は、2軸延伸PA耐候性フィルムであり、又は、ポリアミド(PA)、熱安定剤、紫外線安定剤及び無機材料から作製されている。
【0042】
第1接続層16は、マレイン酸変性ポリプロピレン、又は、エチレン−アクリル酸ブチル−無水マレイン酸コポリマーである。
【0043】
構造補強層18は、変性ポリプロピレン及びポリマーアロイから作製されおり、融点が145℃より大きい。変性ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン(ホモPP)及び熱安定剤のブレンド・変性によって形成され、又は、ホモポリプロピレン、グラフトされたポリプロピレン及び熱安定剤のブレンド・変性によって形成されている。ポリマーアロイは、変性ポリプロピレンとエンジニアリングプラスチックとを混合してなるポリマーアロイである。エンジニアリングプラスチックは、ポリアミドである。
【0044】
第2接続層24は、第1接続層16と同じである。
【0045】
バックシートの耐候層14、第1接続層16、構造補強層18、第2接続層24及び反射層22の厚さは、それぞれ50〜100um、15〜40um、150〜250um、15〜40um、100umである。
【0046】
実施例1〜4に係る太陽光バックシートの具体的なパラメータは、表1のとおりである。
【0047】
以下、実施例2〜4に係る太陽光バックシートの製造方法(本発明の1つ目の製造方法)について説明する。当該方法は、以下のステップを含む。
ステップ1:第1接続層の材料、第2接続層の材料、構造補強層の材料及び反射層の材料を、それぞれ押出機を介して造粒して、第1接続層プラスチック粒子、第2接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を得て準備する。当技術分野において一般的な方法を採用して耐候層のフィルムを制作し又は購入して準備する。
【0048】
第1接続層の材料、第2接続層の材料、構造補強層の材料及び反射層の材料は、それぞれ各層の配合方法に基づいて当技術分野において一般的な方法で準備される。
【0049】
ステップ2:ステップ1で準備された第1接続層プラスチック粒子、第2接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を、押出機を介して溶融共押し出し、且つステップ1で準備された耐候層のフィルムに被覆する。溶融押出温度は、180℃〜310℃であり、好ましくは240℃〜280℃である。
【0050】
以下、実施例1に係る太陽光バックシートの製造方法(本発明の2つ目の製造方法)について説明する。当該方法は、以下のステップを含む。
ステップ1:耐候層の材料、第1接続層の材料、構造補強層の材料及び反射層の材料を、それぞれ押出機を介して造粒して、耐候層プラスチック粒子、第1接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を得て準備する。
【0051】
耐候層の材料、第1接続層の材料、構造補強層の材料及び反射層の材料は、それぞれ各層の配合方法に基づいて当技術分野において一般的な方法で準備される。
【0052】
ステップ2:ステップ1で準備された耐候層プラスチック粒子、第1接続層プラスチック粒子、構造補強層プラスチック粒子及び反射層プラスチック粒子を、押出機を介して溶融共押し出して成膜する。溶融押出温度は、180℃〜310℃であり、好ましくは240℃〜280℃である。
【0053】
構造補強層と反射層との間に第2接続層が設けられている場合は、上記の製造方法における溶融共押し出の際に、第2接続層の材料を追加すればよい。
【0054】
本発明に係る太陽光バックシートの耐候性及び強度を証明するために、以下の測定実験を行い、実施例1〜4と、比較例1〜2に係る2種類のバックシートとを比較した。比較例1は、FPEバックシートとして、従来のPVDFフィルム、2軸延伸PETフィルム及びEVAフィルムを採用して、これらをポリウレタン接着剤で互いに接着し、硬化した溶剤を高温で除去する方式によって製造される。比較例2は、耐候性を有するPETフィルム、2軸延伸PETフィルム及びEVAフィルムを採用して、これらをポリエステル接着剤で互いに接着し、硬化した溶剤を高温で除去する方式によって製造される。
【0055】
測定実験は、以下の項目を含む。
1、ASTM D1876標準方法を用いた耐候層と構造補強層との間のピール強度試験(180度剥離、速度0.2m/min)
2、外観及び黄変を測定するためのIEC61215標準方法を用いたQUV紫外線促進耐候試験(UVA+UVB、30kWh/m
2)
3、ASTM D1868標準方法を用いたHAST高度加速寿命試験装置による96時間劣化試験(121℃、湿度100%)後の外観
4、EC61215標準方法を用いたDamp−Heatによる3000時間劣化試験(85℃、湿度85%)後のモジュールのパワー減衰
【0056】
比較例1〜2及び実施例1〜4の測定結果は、表2に記載されている。
【0057】
【表1】
表1において、各層は多くの成分を含有し、各成分の比率を重量部比で示す。
【0058】
Tinuvin770は、BASF株式会社が生産しているビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバシン酸エステルである。IrganoxB225は、BASF株式会社が生産している熱安定剤である。Lotader4210は、フランスのアルケマ株式会社が生産しているエチレン−アクリル酸ブチル−無水マレイン酸コポリマーである。比較例1のバックシートは、日本の東洋アルミニウム株式会社が生産したFPEシートである。比較例2のPETフィルムは、2軸延伸耐候性フィルムであり、具体的には、日本の帝人デュポンフィルム株式会社が生産したMelinexという2軸延伸白色耐候性フィルムである。ポリウレタン接着剤は、日本の三井化学株式会社が生産したA−969V/A−5という接着剤である。
【0059】
また、マレイン酸変性ポリプロピレン内のポリプロピレンは、ホモポリプロピレンである。
【0061】
表1及び表2からわかるように、本発明の実施形態1〜4に係るバックシートは、比較例1〜2におけるバックシートと比較すると、耐候性が明らかに向上し、ピール強度も良好なレベルに保たれる。従って、本発明に係るバックシートは、特定の材質の耐候層及び構造補強層から構成されているため、強い優位性を有する。
【0062】
なお、実施例1〜4は、本発明における典型的な解決手段にすぎない。本発明に係るバックシートによれば、耐候層、構造補強層及び反射層の厚さ比が20〜100:40〜400:20〜150である場合に、上記実験の測定結果のすべては、比較例1〜2より好ましく、特に、上記厚さ比が30〜60:150〜300:20〜150のときに最も好ましい。具体的な説明を省略する。本発明に係るバックシートによれば、耐候層が、当技術分野において一般的な方法によるものであっても、ポリアミド、熱安定剤、紫外線安定剤及び無機材料から作製されれば、上記実験の測定結果のすべては、比較例1〜2より優れる。本発明に係るバックシートの耐候層は、具体的な説明は省略するが、実施例の成分比に限定されない。本発明に係るバックシートによれば、構造補強層が、当技術分野において一般的な方法によるものであっても、ポリプロピレン及び熱安定剤から、又は、ポリプロピレン、グラフトされたポリプロピレン、熱安定剤及びポリアミドから作製されれば、上記実験の測定結果のすべては、比較例1〜2より優れる。本発明に係るバックシートの構造補強層は、具体的な説明は省略するが、実施例の成分比に限定されなない。本発明に係るバックシートによれば、反射層が、当技術分野において一般的な方法によるものであっても、ポリエチレン、エチレンセグメント(−CH
2−CH
2−)を含むコポリマー、紫外線安定剤及び無機白色顔料から作製されれば、上記実験の測定結果のすべては、比較例1〜2より優れる。本発明に係るバックシートの反射層層は、具体的な説明は省略するが、実施例の成分比に限定されない。
【0063】
本発明に係るバックシートでは、
1、耐候層におけるポリアミドとして、以下の材料の1種類又は複数種類が選択される。ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド613、ポリアミド615、ポリアミド616、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10、ポリアミド912、ポリアミド913、ポリアミド914、ポリアミド915、ポリアミド616、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1013、ポリアミド1014、ポリアミド1210、ポリアミド1212、ポリアミド1213、ポリアミド1214、ポリエチレンテレフタレートアジポアミド、ポリエチレンテレフタレートアゼライン酸アミド、ポリエチレンテレフタレートセバカミド、ポリエチレンテレフタレート12ジアミド、アジピン酸アジポアミド・テレフタル酸アジポアミドのコポリアミド、テレフタル酸アジポアミド・イソフタル酸アジポアミドのコポリアミド、ポリキシレンアジピン酸アミド、テレフタル酸アジポアミド・テレフタル酸、2−メチルグルタル酸アミド、アジピン酸アジポアミド・テレフタル酸アジポアミド・イソフタル酸アジポアミドのコポリアミド、ポリカプロラクタム−テレフタル酸アジポアミド無機材料は、二酸化チタン又は硫酸バリウムであってよい。紫外線安定剤及び熱安定剤は、当技術分野において一般的な材料を採用してよく、実施例に用いられる材料に限定されない。
【0064】
2、第1接続層は、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、又は、エチレン−アクリレート−無水マレイン酸三元共重合体であってよい。第1接続層は、実施例における材料に限定されない。
【0065】
3、構造補強層は、実施例に用いられる材料以外に、ポリプロピレン、又は、ポリプロピレンとエンジニアリングプラスチックとを混合してなるポリマーアロイであってもよい。構造補強層として、変性ポリプロピレンが採用される場合において、変性ポリプロピレンは、ポリプロピレン、熱安定剤及び無機充填剤のブレンド・変性によって形成されてもよく、ポリプロピレン、グラフトされたポリプロピレン及び熱安定剤のブレンド・変性によって形成されてもよく、又は、ポリプロピレンに熱安定剤、紫外線安定剤、強靭剤及び無機充填剤を加えて、ブレンド・変性によって形成されてもよい。無機充填剤として、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、雲母、滑石、カオリン、ガラスビーズ及びガラス繊維のうちの1つが選択される。
【0066】
4、反射層におけるエチレンセグメント(−CH
2−CH
2−)を含むコポリマーとしては、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ヘキセンコポリマー、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、及びエチレンアクリレートコポリマーのうちの1種類又は複数種類から選択される。ポリエチレン、紫外線安定剤及び無機白色顔料は、それぞれ当技術分野における一般的な材料であってよく、実施例に限定されない。
【0067】
当業者は、本発明に係る好適な実施例に基づいて、上記の説明内容によって、本発明の技術的思想の範囲から逸脱しないかぎり、様々な変更や修正を行うことができる。本発明の技術的範囲は、明細書に記載されている内容に限定されず、特許請求の範囲によって技術的範囲を確定すべきである。
【符号の説明】
【0068】
2 耐候層
4 第1接続層
6 構造補強層
12 反射層
14 耐候層
16 第1接続層
18 構造補強層
22 反射層
24 第2接続層