特許第6641584号(P6641584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641584
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】ターボチャージャー
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20200127BHJP
【FI】
   F02B39/00 D
   F02B39/00 S
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-507933(P2018-507933)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2016060374
(87)【国際公開番号】WO2017168629
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋二
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−209824(JP,A)
【文献】 特開平11−229886(JP,A)
【文献】 特開昭62−029724(JP,A)
【文献】 実開平02−012004(JP,U)
【文献】 特開2014−145300(JP,A)
【文献】 特開2015−063945(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002228(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2730750(EP,A2)
【文献】 特表2006−527322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる回転軸と、
前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、
前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサーホイールと、
前記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、
前記タービンハウジングに形成され、前記タービンホイールの径方向外側で周方向に連続し、前記タービンホイールにガスを導くスクロール流路と、
前記スクロール流路から径方向内側に前記ガスを導き、前記タービンホイールに前記ガスを供給するノズル流路と、
前記ノズル流路に設けられ、前記ノズル流路における前記ガスの導入量を調整するベーンと、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受ハウジングと、
前記ノズル流路に対して前記軸受ハウジング側に設けられ、前記タービンハウジングに形成されたマウント固定部と前記軸受ハウジングとの間に、外周端部が挟み込まれて保持されたノズルマウントと、
を備え、
前記スクロール流路は、前記タービンホイールに近い側の内周内壁面が前記ガスの流れる周方向の下流に向かって漸次径方向外側に変位しつつ、流路断面積が漸次小さくなるよう形成され、
前記スクロール流路は、前記ガスの流れ方向に沿って前記流路断面積が漸次小さくなるにしたがって、前記スクロール流路の断面中心位置の、前記軸線に沿った方向における前記ノズル流路の径方向外側の位置に対するオフセット寸法が漸次小さくなるよう形成され、
前記タービンハウジングは、前記マウント固定部から径方向内側の前記ノズル流路に向かって延び、前記ノズルマウントの少なくとも一部を覆うカバー部を備え、
前記カバー部と前記ノズルマウントとの間に隙間が形成されているターボチャージャー。
【請求項2】
前記スクロール流路は、前記ガスの流れ方向に沿った前記径方向外側の外周壁面の前記軸線に対する径方向位置が一定に形成されている請求項1記載のターボチャージャー。
【請求項3】
前記タービンハウジングに形成され、前記タービンホイールによって送り出される前記ガスの排気部と、
前記スクロール流路から前記排気部に熱が逃げるのを抑える断熱部、をさらに備える請求項1又は2に記載のターボチャージャー。
【請求項4】
前記断熱部は、前記タービンハウジングにおいて、前記スクロール流路と前記排気部とを区画するシュラウド部に形成された空隙からなる請求項に記載のターボチャージャー。
【請求項5】
前記空隙に、断熱材が充填されている請求項に記載のターボチャージャー。
【請求項6】
前記ノズル流路に対して前記軸受ハウジングと反対側に設けられたノズルプレートをさらに備え、
前記断熱部は、前記ノズルプレートと、前記タービンハウジングにおいて前記排気部と前記スクロール流路とを区画するシュラウド部との間に挟み込まれた断熱材からなる請求項に記載のターボチャージャー。
【請求項7】
前記ノズル流路に対して前記軸受ハウジングと反対側に設けられたノズルプレートをさらに備え、
前記断熱部は、前記ノズルプレートの表面に形成された、断熱材料からなるコーティング層からなる請求項に記載のターボチャージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボチャージャーに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャーにおいては、タービンホイールの径方向外側からタービンホイールに流れ込むノズル流路の開口面積を変化可能とすることで、タービンホイールに供給するガスの流量を可変とした、可変容量型のターボチャージャーが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、タービンホイールの径方向外側に設けられ、タービンホイールに排気ガスを供給するスクロール流路の断面積を大きくすることで、効率を高める構成が開示されている。この構成では、可変容量型のターボチャージャーにおいて、可変ノズル機構のノズルプレートをスクロール流路に面するようにスクロールの内周側壁面の一部を形成することで、タービンケーシングの一部を不要とし、スクロール流路の断面積を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4275081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようなターボチャージャーにおけるスクロール流路は、一般に、排気ガスが最大流量で入ってきたときに制限することなく流せるような大きさで形成されている。しかし、大きいスクロール流路の場合、内壁面の表面積が増えて放熱が大きくなってしまう。特に、排気ガスが小流量の場合に、排気ガスから熱が奪われると、熱損失による効率低下量が相対的に大きくなってしまう。
この発明は、排気ガスの放熱を抑えて、過給効率を高めることのできるターボチャージャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る第一態様によれば、ターボチャージャーは、軸線に沿って延びる回転軸と、前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサーホイールと、前記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、前記タービンハウジングに形成され、前記タービンホイールの径方向外側で周方向に連続し、前記タービンホイールにガスを導くスクロール流路と、前記スクロール流路から径方向内側に前記ガスを導き、前記タービンホイールに前記ガスを供給するノズル流路と、前記ノズル流路に設けられ、前記ノズル流路における前記ガスの導入量を調整するベーンと、前記回転軸を回転可能に支持する軸受ハウジングと、前記ノズル流路に対して前記軸受ハウジング側に設けられ、前記タービンハウジングに形成されたマウント固定部と前記軸受ハウジングとの間に、外周端部が挟み込まれて保持されたノズルマウントと、を備え、前記スクロール流路は、前記タービンホイールに近い側の内周内壁面が前記ガスの流れる周方向の下流に向かって漸次径方向外側に変位しつつ、流路断面積が漸次小さくなるよう形成され、前記スクロール流路は、前記ガスの流れ方向に沿って前記流路断面積が漸次小さくなるにしたがって、前記スクロール流路の断面中心位置の、前記軸線に沿った方向における前記ノズル流路の径方向外側の位置に対するオフセット寸法が漸次小さくなるよう形成され、前記タービンハウジングは、前記マウント固定部から径方向内側の前記ノズル流路に向かって延び、前記ノズルマウントの少なくとも一部を覆うカバー部を備え、前記カバー部と前記ノズルマウントとの間に隙間が形成されている。
一般に、ターボチャージャーにおけるタービンのスクロール流路は、ガスの流れ方向下流側に向かうほど、流路の断面中心及びタービンホイール側の内周内壁面が径方向内側に寄っていくようにして渦巻き状に形成されている。さらに、スクロール流路を流れるガスは、自由渦である。そのため、スクロール流路を半径位置の外側から入ってきたガスは、径方向内側に行くほど流速が上がる。
これに対し、上記構成によれば、スクロール流路は、ガスの流れ方向の下流側に行くほど、軸線に対して流路の断面中心が径方向外側に離れて位置することとなる。そのため、スクロール流路を流れるガスの流速を下げることができる。このようにガスの流速が下がることで、レイノルズ数が下がって、熱伝達率を低減することができる。したがって、ガスの放熱を抑えて、過給効率を高めることができる。
【0007】
クロール流路は、ガスの流れ方向の下流側に行くほど流路断面積が小さくなる一方で、軸線方向におけるノズル流路に対するオフセット寸法が小さくなるので、ガスは、スクロール流路からノズル流路に向かって、径方向内側にダイレクトに流れるようになる。これにより、スクロール流路からノズル流路に向かって流れるガスが、ノズル流路の周囲の部材と接触する面積を抑えることができるので、放熱量を抑えることができる。
また、タービンハウジングに設けられたカバー部によって、ノズルマウントの少なくとも一部を覆うことで、スクロール流路内を流れるガスの熱エネルギーが、ノズルマウントを介して軸受ハウジング側に逃げるのを抑えることができる。
更に、カバー部とノズルマウントの間の隙間により、スクロール流路内を流れるガスの熱エネルギーが、ノズルマウントを介して軸受ハウジング側に逃げるのを、さらに確実に抑えることができる。
【0008】
この発明に係る第態様によれば、ターボチャージャーは、第態様において、前記スクロール流路は、前記ガスの流れ方向で前記径方向外側の外周壁面の前記軸線に対する径方向位置が一定に形成されているようにしてもよい。
これにより、ターボチャージャーが大型化するのを抑えつつ、スクロール流路からの放熱量を抑え、過給効率を高めることができる。
【0011】
この発明に係る第態様によれば、ターボチャージャーは、第一又は第二態様において、前記タービンハウジングに形成され、前記タービンホイールによって送り出される前記ガスの排気部と、前記スクロール流路から前記排気部に熱が逃げるのを抑える断熱部と、をさらに備えるようにしてもよい。
これにより、断熱部によって、タービンホイールを経ずに、スクロール流路から排気部に排気ガスの熱エネルギーが逃げてしまうのを抑えることができる。
【0012】
この発明の第態様によれば、ターボチャージャーは、第態様において、前記断熱部は、前記タービンハウジングにおいて、前記スクロール流路と前記排気部とを区画するシュラウド部に形成された空隙からなるようにしてもよい。
これにより、シュラウド部を形成する材料よりも熱伝導率の低い空隙(空気)からなる断熱部によって、スクロール流路から排気部に、排気ガスの熱エネルギーが逃げてしまうのを抑えることができる。
【0013】
この発明の第態様によれば、ターボチャージャーは、第態様において、前記空隙に、断熱材が充填されているようにしてもよい。
このように、空隙に断熱材を充填することで、排気ガスの熱エネルギーが逃げるのを、より確実に抑えることができる。
【0014】
この発明の第態様によれば、ターボチャージャーは、第態様において、前記ノズル流路に対して前記軸受ハウジングと反対側に設けられたノズルプレートと、をさらに備えていてもよい。前記断熱部は、前記ノズルプレートと、前記タービンハウジングにおいて前記排気部と前記スクロール流路とを区画するシュラウド部との間に挟み込まれた断熱材からなるようにしてもよい。
これによりスクロール流路に面するシュラウド部からノズルプレートに伝わる熱を抑え、スクロール流路における放熱を抑えることができる。
【0015】
この発明の第態様によれば、ターボチャージャーは、第態様において、前記ノズル流路に対して前記軸受ハウジングと反対側に設けられたノズルプレートと、をさらに備えていてもよい。前記断熱部は、前記ノズルプレートの表面に形成された、断熱材料からなるコーティング層からなるようにしてもよい。
これにより、スクロール流路に面するシュラウド部からノズルプレートに伝わる熱を抑え、スクロール流路における放熱を抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
上述したターボチャージャーによれば、排気ガスの放熱を抑えて、過給効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施形態に係るターボチャージャーの全体構成を示す断面図である。
図2】上記ターボチャージャーを構成するタービンホイールの周辺の構成を示す断面図である。
図3】上記ターボチャージャーのタービンを構成するスクロール流路の概略形状を示す図である。
図4図3における断面Da,Db,Dcの各位置におけるスクロール流路の形状を示す断面図である。
図5】この発明の実施形態に係るターボチャージャーの断熱部の変形例を示す断面図である。
図6】この発明の実施形態に係るターボチャージャーの断熱部の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、この発明の実施形態に係るターボチャージャーの全体構成を示す断面図である。
図1に示すように、この実施形態のターボチャージャー10は、ターボチャージャー本体11と、コンプレッサー17と、タービン30と、を備えている。このターボチャージャー10は、例えば、回転軸14が水平方向に延在するような姿勢で自動車等にエンジンの補機として搭載される。
【0022】
ターボチャージャー本体11は、回転軸14と、軸受15A,15Bと、軸受ハウジング16と、を備えている。
【0023】
軸受ハウジング16は、ブラケット(図示せず)、コンプレッサー17、タービン30等を介して車体等に支持される。軸受ハウジング16は、その一端側に開口部16aを有し、その他端側に開口部16bを有している。
軸受15A,15Bは、軸受ハウジング16の内部に設けられている。軸受15A,15Bは、回転軸14を中心軸C回りに回転自在に支持する。
回転軸14の第一端部14a、第二端部14bは、開口部16a,16bを通して軸受ハウジング16の外部に突出している。
【0024】
コンプレッサー17は、軸受ハウジング16の他端側に設けられている。コンプレッサー17は、コンプレッサーホイール13と、コンプレッサーハウジング18と、を備えている。
コンプレッサーホイール13は、軸受ハウジング16の外部で、回転軸14の第二端部14bに設けられている。コンプレッサーホイール13は、回転軸14と一体に中心軸C回りに回転する。
コンプレッサーハウジング18は、軸受ハウジング16の他端側に連結されている。コンプレッサーハウジング18は、コンプレッサーホイール13を内部に収容している。
【0025】
タービン30は、軸受ハウジング16の一端側に設けられている。タービン30は、タービンハウジング31と、タービンホイール12と、を備えている。
【0026】
図2は、ターボチャージャーを構成するタービンホイールの周辺の構成を示す断面図である。図3は、タービンを構成するスクロール流路の概略形状を示す図である。
図2に示すように、タービンハウジング31は、軸受ハウジング16の一端側に連結されている。タービンハウジング31は、タービンホイール12を内部に収容している。
タービンハウジング31は、ガス導入部32(図3参照)と、スクロール流路34と、ノズル流路35と、排気部36と、を備えている。
【0027】
図3に示すように、ガス導入部32は、エンジン(図示無し)から排出される排気ガスをスクロール流路34に送り込む。
スクロール流路34は、ガス導入部32に連続して、タービンホイール12の径方向外側で周方向に連続して形成されている。スクロール流路34は、タービンホイール12を回転駆動させる排気ガスが周方向に流れる流路を形成する。
【0028】
図2に示すように、ノズル流路35は、タービンハウジング31において軸受ハウジング16に対向する側に形成されている。このノズル流路35は、周方向全周にわたって、スクロール流路34とタービンホイール12とを径方向に連通するよう形成されている。
【0029】
排気部36は、タービンホイール12から排出される排気ガスが流れる。排気部36は、タービンホイール12の外周部から、回転軸14の中心軸C方向に沿ってターボチャージャー本体11から離間する方向に連続して形成されている。
【0030】
タービンホイール12は、回転軸14の第一端部14aに一体に設けられている。タービンホイール12は、回転軸14と一体に中心軸C回りに回転する。
【0031】
タービンホイール12は、ディスク22と、ブレード23と、を備える。
ディスク22は、中心軸C方向に一定長を有し、回転軸14の第一端部14aに固定されている。ディスク22は、径方向外側に延びる円盤状をなし、中心軸C方向の一方側に、ディスク面22fを有している。ディスク面22fは、径方向外側に向かうにしたがって、中心軸C方向一方側の排気部36(図2参照)側から中心軸C方向の他方側の軸受ハウジング16側に漸次向かう湾曲面により形成されている。
ブレード23は、ディスク面22fに、中心軸C回りの周方向に間隔をあけて複数が設けられている。
【0032】
このようなタービン30において、ガス導入部32から流れ込んだ排気ガスは、スクロール流路34に沿ってタービンホイール12の外周側を周方向に沿って流れる。このように周方向に沿って流れる排気ガスは、ノズル流路35を通って径方向内側に流れ、タービンホイール12のブレード23に当たることで、タービンホイール12が回転駆動される。タービンホイール12を経た排気ガスは、タービンホイール12の内周側から排気部36内に排出される。
【0033】
ノズル流路35は、このノズル流路35を通してスクロール流路34からタービンホイール12に供給する排気ガスの量を調整する可変ベーン機構50を備えている。
可変ベーン機構50は、ノズルマウント51と、ノズルプレート52と、ベーン53と、駆動部55と、を備えている。
【0034】
ノズルマウント51は、ノズル流路35の軸受ハウジング16側に設けられ、中心軸Cに直交する面内に位置する円環プレート状をなしている。
ノズルプレート52は、ノズル流路35においてノズルマウント51と反対側に、ノズルマウント51と間隔を空けて設けられている。これらノズルマウント51とノズルプレート52との間が、ノズル流路35とされている。
ノズルマウント51の径方向内側には、回転軸14の第一端部14aの外周部の隙間を塞ぐバックプレート41が設けられている。
【0035】
ベーン53は、板状で、ノズルマウント51とノズルプレート52との間に設けられている。ベーン53は、周方向に連続するノズル流路35において、周方向に間隔を空けて複数が設けられている。各ベーン53は、ノズルマウント51を中心軸C方向に貫通するシャフト54によって、シャフト54の中心軸回りに回転自在に支持されている。
【0036】
駆動部55は、ノズルマウント51から軸受ハウジング16側に突出したシャフト54を回転させることによって、ベーン53の角度を調整する。駆動部55は、ノズルマウント51に対し、軸受ハウジング16側に設けられている。駆動部55は、ドライブリング56と、リンクアーム57と、を備えている。
【0037】
ドライブリング56は、円環状で、シャフト54よりも径方向外周側に設けられている。ドライブリング56は、アクチュエータ(図示無し)等によって、その周方向に旋回可能に設けられている。
【0038】
リンクアーム57は、各シャフト54のそれぞれに連結されている。各リンクアーム57は、一端がシャフト54に連結され、他端がドライブリング56に回動自在に連結されている。リンクアーム57は、ドライブリング56が回転すると、シャフト54を中心として回動し、これによって、周方向に複数設けられたベーン53の角度がシャフト54の中心軸回りに変わる。
ベーン53の角度が変わると、周方向で互いに隣り合うベーン53の隙間が増減し、これによってノズル流路35を通ってタービンホイール12に送り込まれる排気ガスの量(導入量)が調整される。
【0039】
この実施形態において、スクロール流路34は、タービンハウジング31の径方向外側に向かって膨出したスクロール形成部31s(図2参照)内に形成されている。図3に示すように、スクロール形成部31sは、タービンハウジング31の周方向に連続して形成され、その内部にスクロール流路34が形成されている。スクロール流路34は、タービンハウジング31の周方向に連続する流路軸方向に沿って、ガス導入部32から離間するにしたがってその内径が漸次縮小するように形成されている。
【0040】
図4は、図3における断面Da,Db,Dcの各位置におけるスクロール流路の形状を示す断面図である。
図4に示すように、スクロール流路34は、中心軸C(図2参照)にほぼ平行な外周内壁面34aと、ノズルプレート52に対し、軸受ハウジング16とは反対側に形成された、半円凹状に湾曲した湾曲内壁面34bと、湾曲内壁面34bの径方向内側の端部に連続する内周内壁面34cと、を有している。
【0041】
図3図4に示すように、スクロール流路34は、ガスの流れ方向に延びる径方向外側の外周内壁面34aの中心軸Cに対する径方向位置が一定に形成されている。これに対し、スクロール流路34は、ガス導入部32から離間するにしたがって、内周内壁面34cが、漸次径方向外側に位置するよう、ガスの流れ方向に沿って位置が変位して形成される。これによって、外周内壁面34aと内周内壁面34cとの径方向における距離、すなわち湾曲内壁面34bの曲率半径が漸次小さくなるよう形成されている。
【0042】
すると、スクロール流路34の上流側から下流側に向かって、例えば3個所の断面Da,Db,Dcについて比較すると、スクロール流路34の断面Daにおける断面中心Cra、断面DbにおけるCrb、断面DcにおけるCrcの位置は、ガス導入部32から離間するにしたがって、径方向外側に変位している。また、スクロール流路34の断面中心Cra,Crb,Crcの位置は、ガスの流れ方向下流側に向かって、中心軸C方向において軸受ハウジング16側に変位している。言い換えると、スクロール流路34の断面中心Cra,Crb,Crcの位置は、ガスの流れ方向下流側に向かって、中心軸C方向におけるノズル流路35の径方向外側の位置Pからのオフセット量が少なくなるように変位している。これにより、ガスの流れ方向下流側にいくほど、スクロール流路34は、ノズル流路35に対して径方向外側に位置し、スクロール流路34からノズル流路35に対する排気ガスの流れがスムーズなものとなる。
【0043】
ノズルマウント51は、その外周端部51sが、軸受ハウジング16の外周部に形成された固定部16tと、タービンハウジング31の外周部に形成されたマウント固定部31tとの間に、挟み込まれている。タービンハウジング31には、マウント固定部31tから径方向内側に延びるカバー部60が形成されている。このカバー部60において、スクロール流路34に面するスクロール側面60fは、スクロール流路34の外周内壁面34aに連続し、径方向内側に漸次向かう湾曲面によって形成されている。
カバー部60は、径方向内側の先端部60sが、ベーン53と干渉しない位置に設定されている。
【0044】
カバー部60のノズルマウント51側の裏面60rと、ノズルマウント51との間には、隙間Sが形成されている。この隙間Sは、例えばノズルマウント51においてカバー部60に対向され、凹部62を形成することで確保することができる。
【0045】
タービンハウジング31において、スクロール流路34と排気部36とを区画するシュラウド部38には、スクロール流路34からシュラウド部38を通して熱が逃げるのを抑える断熱部70が形成されている。このシュラウド部38は、スクロール流路34の内周内壁面34c及び排気部36を形成し、その端部38aが、ノズルプレート52に対向するよう位置している。
【0046】
この実施形態において、断熱部70は、スクロール流路34の内周内壁面34cと、排気部36との間において、シュラウド部38に空隙71を形成することで形成されている。断熱部70を形成する空隙71は、シュラウド部38の端部38aにおいて、ノズルプレート52に対向する側から、ノズルプレート52から離間する方向に延びるスリット状に形成されている。この断熱部70は、中心軸Cを中心とする環状に形成されている。
空隙71には、例えば、断熱材を充填するようにしてもよい。ここで用いる断熱材は、タービンハウジング31よりも熱伝導率が低い材料から形成されている。具体的には、例えば常温で熱伝導率0.1W/m/K以下の、断熱材料や遮熱材料によって形成することができる。このような材料としては、例えば、セラミック系材料、シリカ系材料等からなる多孔質体やシート材を用いることができる。さらに、このような材料を、金属製のネットで覆うことで断熱材を形成してもよい。
【0047】
上述した実施形態のターボチャージャー10によれば、スクロール流路34は、ガスの流れ方向の下流側に行くほど、流路の断面中心CraからCrcが径方向外側に離れて位置することとなる。すると、ガスの流れ方向下流側にいくほど、スクロール流路34からタービンホイール12までの径方向の距離が離れる。このようにして、スクロール流路34が径方向外側に離れて位置するほど、自由渦となるガスの流速を低下させることができる。これにより、スクロール流路34を流れるガスのレイノルズ数を低下させることができる。そのため、スクロール形成部31sへの熱伝達率を低下させることができ、ガスの放熱量を減少させることができる。その結果、ガスの放熱を抑えて、過給効率を高めることができる。
【0048】
また、スクロール流路34は、ガスの流れ方向の下流側に行くほど流路断面積が小さくなる一方で、中心軸C方向におけるノズル流路35に対するオフセット寸法が小さくなるので、ガスは、スクロール流路34からノズル流路35に向かって、径方向内側にダイレクトに流れるようになる。これにより、スクロール流路34からノズル流路35に向かって流れるガスが、ノズルプレート52等、ノズル流路35の周囲の部材と接触する面積を抑えることができるので、放熱量を抑えることができる。
【0049】
さらに、スクロール流路34は、ガスの流れ方向で径方向外側の外周内壁面34aの中心軸Cに対する径方向位置が一定に形成されている。これにより、ターボチャージャー10が大型化するのを抑えつつ、スクロール流路34からの放熱量を抑え、過給効率を高めることができる。
【0050】
また、タービンハウジング31に設けられたカバー部60によって、ノズルマウント51の少なくとも一部を覆うことで、スクロール流路34内を流れるガスの熱エネルギーが、ノズルマウント51を介して軸受ハウジング16側に逃げるのを抑えることができる。
さらに、カバー部60とノズルマウント51との間に、隙間Sを形成することで、スクロール流路34内を流れるガスの熱エネルギーが、ノズルマウント51を介して軸受ハウジング16側に逃げることを、さらに確実に抑えることができる。
【0051】
さらに、ターボチャージャー10は、スクロール流路34から排気部36に熱が逃げるのを抑える断熱部70を備えている。この断熱部70によって、タービンホイール12を経ずに、スクロール流路34から排気部36側に、排気ガスの熱エネルギーが逃げてしまうのを抑えることができる。
ここで、断熱部70は、タービンハウジング31において、スクロール流路34と排気部36とを区画するシュラウド部38に形成された空隙71からなる。これにより、シュラウド部38を形成する材料よりも熱伝導率の低い空隙71(空気)からなる断熱部70によって、スクロール流路34から排気部36側に、排気ガスの熱エネルギーが逃げてしまうのを抑えることができる。
さらに、空隙71に断熱材を充填すれば、排気ガスの熱エネルギーが逃げるのを、より確実に抑えることができる。
【0052】
(実施形態の変形例)
上記実施形態では、断熱部70として、空隙71を形成するようにしたが、これに限るものではない。
例えば、図5に示すように、断熱部70として、ノズルプレート52と、シュラウド部38との間に、断熱材73を挟み込むようにしてもよい。
これによりスクロール流路34に面するシュラウド部38からノズルプレート52に伝わる熱を抑え、スクロール流路34における放熱を抑えることができる。
【0053】
また、図6に示すように、断熱部70として、ノズルプレート52の表面に、断熱性能を有するセラミックス系材料等の断熱材料からなるコーティング層74を形成するようにしてもよい。
これにより、スクロール流路34に面するシュラウド部38からノズルプレート52に伝わる熱を抑え、スクロール流路34における放熱を抑えることができる。コーティング層74は、ノズルプレート52の全面ではなく、ノズルプレート52とシュラウド部38との接する部分のみに局所的に設けても良い。
【0054】
(その他の実施形態)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、設計変更可能である。
例えば、上記したような、ガスの流れ方向に沿って内周内壁面34cが漸次径方向外側に変位しつつ、流路断面積が漸次小さくなるスクロール流路34の形状、カバー部60、断熱部70は、その全てを備えることが必須ではなく、少なくともその一つを備えていればよい。
【0055】
また、ターボチャージャー10のターボチャージャー本体11、コンプレッサー17、タービン30等の各部の構成については、上記に例示したものに限らず、他の構成に変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明は、ターボチャージャーに適用可能である。この発明によれば、スクロール流路を、内周内壁面がガスの流れ方向に沿って漸次径方向外側に変位しつつ、流路断面積が漸次小さくなるよう形成とすることで、ガスの放熱を抑えて、過給効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 ターボチャージャー
11 ターボチャージャー本体
12 タービンホイール
13 コンプレッサーホイール
14 回転軸
14a 第一端部
14b 第二端部
15A,15B 軸受
16 軸受ハウジング
16a 開口部
16b 開口部
16t 固定部
17 コンプレッサー
18 コンプレッサーハウジング
22 ディスク
22f ディスク面
23 ブレード
30 タービン
31 タービンハウジング
31s スクロール形成部
31t マウント固定部
32 ガス導入部
34 スクロール流路
34a 外周内壁面
34b 湾曲内壁面
34c 内周内壁面
35 ノズル流路
36 排気部
38 シュラウド部
38a 端部
41 バックプレート
50 可変ベーン機構
51 ノズルマウント
51s 外周端部
52 ノズルプレート
53 ベーン
54 シャフト
55 駆動部
56 ドライブリング
57 リンクアーム
60 カバー部
60f スクロール側面
60r 裏面
60s 先端部
62 凹部
70 断熱部
71 空隙
73 断熱材
74 コーティング層
C 中心軸(軸線)
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6