特許第6641615号(P6641615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641615
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】送信波生成装置および統合受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/707 20110101AFI20200127BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20200127BHJP
   H04L 29/00 20060101ALI20200127BHJP
   H04K 1/00 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   H04B1/707
   H04J11/00 Z
   H04L13/00 S
   H04K1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-166552(P2015-166552)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-46135(P2017-46135A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】田口 恵一
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−159302(JP,A)
【文献】 特開2014−110530(JP,A)
【文献】 特開2004−336720(JP,A)
【文献】 特開平04−101527(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0177782(US,A1)
【文献】 特開2005−110228(JP,A)
【文献】 特開2003−110529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/707
H04J 11/00
H04K 1/00
H04L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数Pの受信波のうち、所定数N(<P)の受信波に個別に物理層およびデータリンク層の処理を施し、前記所定数N以外の受信波の全てもしくは一部の属性を得る属性取得手段と、前記属性取得手段によって得られた属性に適した処理を前記所定数N以外の受信波に物理層またはデータリンク層で施す受信処理手段とを備えた統合受信装置である受信端において既知であり、かつ前記受信端が物理層またはデータリンク層における処理を個別に施されるべき、前記複数Pの受信波となる複数Pの送信波を生成する送信波生成装置であって、
前記複数Pの送信波のうち、所定数N(<P)の送信波は、
前記所定数Nの送信波以外の送信波の全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性で変調され、または前記属性が区分されてなる個々の部分属性で変調された
ことを特徴とする送信波生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信波生成装置において、
前記属性または前記部分属性は、
前記受信端において既知であり、あるいは識別可能なルールに基づいて変更される
ことを特徴とする送信波生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の送信波生成装置において、
前記複数Pの送信波のうち、所定数N(<P)の送信波は、各種変調方式(スペクトラム拡散通信方式を含む)に基づいて生成される
ことを特徴とする送信波生成装置。
【請求項4】
複数Pの受信波のうち、所定数N(<P)の受信波に個別に物理層およびデータリンク層の処理を施し、前記所定数N以外の受信波の全てもしくは一部の属性を得る属性取得手段と、
前記属性取得手段によって得られた属性に適した処理を前記所定数N以外の受信波に物理層またはデータリンク層で施す受信処理手段と
を備えたことを特徴とする統合受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の統合受信装置において、
前記属性取得手段は、
前記所定数Nの受信波毎に、既知であり、または識別可能なルールに基づいて定まる処理として前記物理層および前記データリンク層の処理を施す
ことを特徴とする統合受信装置。
【請求項6】
請求項4に記載の統合受信装置において、
前記物理層および前記データリンク層の処理は、前記複数Pの受信波のうち、所定数Nの受信波の個々の生成に適用された各種変調方式(スペクトラム拡散通信方式を含む)に適した処理である
ことを特徴とする統合受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信端において物理層またはデータリンク層における所定の処理を施されるべき複数の送信波を生成する送信波生成装置と、受信端においてこれらの複数の送信波に所定の処理を施す統合受信装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、不正な傍受または妨害に対し、無線信号の秘匿性と耐妨害性とを高める技術の一例が記載されている。特許文献1に記載されている伝送システムでは、送受信される複数系統の変調信号の周波数、変調方式等が、送信側と受信側とで予め定められた共通の変更手順に従って通信中に変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−349787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている伝送システムでは、周波数、変調方式等が、予め定められた一定の手順に従って通信中に変更される。特許文献1には、送信側と受信側との間で制御情報を通信中に交換することでこの手順を適宜変更することができる旨の記載はあるが、具体的な構成は示されていない。通信中に手順を任意に変更することができれば無線信号の冗長性や秘匿性をより高めることができる。しかしながら、手順変更の際に送信側と受信側との間で交換される制御情報の秘匿性の確保が課題となる。
【0005】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、外部からの干渉を確度高く緩和しつつ、通信における秘匿性を容易に高めることができる送信波生成装置および統合受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明による送信波生成装置の一態様は、複数Pの受信波のうち、所定数N(<P)の受信波に個別に物理層およびデータリンク層の処理を施し、前記所定数N以外の受信波の全てもしくは一部の属性を得る属性取得手段と、前記属性取得手段によって得られた属性に適した処理を前記所定数N以外の受信波に物理層またはデータリンク層で施す受信処理手段とを備えた統合受信装置である受信端において既知であり、かつ前記受信端が物理層またはデータリンク層における処理を個別に施されるべき、前記複数Pの受信波となる複数Pの送信波を生成する送信波生成装置であって、前記複数Pの送信波のうち、所定数N(<P)の送信波は、前記所定数Nの送信波以外の送信波の全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性で変調され、または前記属性が区分されてなる個々の部分属性で変調されたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の送信波生成装置において、前記属性または前記部分属性は、前記受信端において既知であり、あるいは識別可能なルールに基づいて変更されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の送信波生成装置において、前記複数Pの送信波のうち、所定数N(<P)の送信波は、各種変調方式(スペクトラム拡散通信方式を含む)に基づいて生成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による統合受信装置の一態様は、複数Pの受信波のうち、所定数N(<P)の受信波に個別に物理層およびデータリンク層の処理を施し、前記所定数N以外の受信波の全てもしくは一部の属性を得る属性取得手段と、前記属性取得手段によって得られた属性に適した処理を前記所定数N以外の受信波に物理層またはデータリンク層で施す受信処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の統合受信装置において、前記属性取得手段は、前記所定数Nの受信波毎に、既知であり、または識別可能なルールに基づいて定まる処理として前記物理層および前記データリンク層の処理を施すことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の統合受信装置において、前記物理層および前記データリンク層の処理は、前記複数Pの受信波のうち、所定数Nの受信波の個々の生成に適用された各種変調方式(スペクトラム拡散通信方式を含む)に適した処理であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、受信端において既知でありかつ受信端が物理層またはデータリンク層における処理を個別に施されるべき送信波が、物理層またはデータリンク層における処理に供される属性で変調される。この構成によれば、受信端では、送信波の変調内容から物理層またはデータリンク層における処理に供される属性を取得することができる。これにより、外部からの干渉を確度高く緩和しつつ、所望の無線伝送路を多様な変調方式および多元接続方式で形成できる。また、送信波の物理層またはデータリンク層における処理に関し秘匿性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の基本的構成を示す概略ブロック図である。
図2図1に示した伝送システム1において形成される伝送路の形態を説明するための模式図である。
図3図1に示した記憶手段13の記憶内容の基本構成を説明するための説明図である。
図4図1に示した記憶手段13の記憶内容の構成例を説明するための説明図である。
図5図1に示した伝送システム1において形成される伝送路の変化の一例を説明するための模式図である。
図6】本発明に係る他の実施形態の構成例を示す概略ブロック図である。
図7図6に示した送信装置100の動作例を説明するための説明図である。
図8図6に示した伝送システム300において形成される伝送路の変化の一例を説明するための模式図である。
図9図6に示した受信装置200の動作例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る伝送システム1の基本的構成を示す概略ブロック図である。図1に示した伝送システム1は、送信波生成装置10と統合受信装置20とを備え、送信波生成装置10と統合受信装置20との間に無線伝送路30(以下、伝送路30と記す)を形成して通信信号を伝送する。
【0015】
図1に示した送信波生成装置10は、送信手段11と制御手段12と記憶手段13とを備え、受信端において既知であり、かつ受信端が物理層またはデータリンク層における処理を個別に施されるべき複数Pの送信波を生成する。なお、受信端は、この場合、統合受信装置20である。送信手段11は、制御手段12による制御の下、伝送路30を変化させながら形成して所定のデータを送信する。制御手段12は、記憶手段13の記憶内容を参照して、送信手段11を制御する。そして、記憶手段13は、統合受信装置20に既知であり、または識別可能なルールに基づいて定まる処理であって、伝送路30を変化させる際に利用する情報を記憶する。
【0016】
次に、図2を参照して、伝送システム1において形成される伝送路30について説明する。図2は、図1に示した伝送システム1において形成される伝送路30を説明するための模式図である。本願において、伝送路とは、通信信号を伝送する経路を意味し、複数の無線通信回線(すなわち複数のチャネル)を含んで構成される。なお、本願では、1つの無線通信回線を1つの送信波あるいは1つの受信波と呼ぶ。図2は、横軸に周波数または時間をとり、縦軸に各波の電力密度を模式的に示す。本実施形態において、伝送路30は、P個の送信波C〜Cを含む。また、P個の送信波C〜Cは、N個の送信波C〜Cからなる第1群401と、(P−N)個の送信波CN+1〜Cからなる第2群402とに分類される。ここで、Pは2以上の整数であり、NはP未満の自然数である。
【0017】
なお、物理層とは、伝送媒体(電気信号や光)上にてビット転送を行うための物理コネクションを確立・維持・解放する電気・機械・機能・手続き的な手段である。また、データリンク層は、コンピューターの通信プロトコルのひとつであるデータリンクプロトコルを、プロトコルスタックの階層モデルにおける層(レイヤ)に対応させたものである。データリンク層は、ネットワークエンティティ間におけるデータ転送のための機能や手順を提供し、物理層で発生する誤り(エラー)の検出方法や、その誤りを訂正する。また、データリンク層は、メディアアクセス制御を含む。メディアアクセス制御(英:Media Access Control、MAC)は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデル第2層に該当するデータリンク層の一部(副層)である通信プロトコルである。
【0018】
なお、伝送路30を構成する各波の形態は図2に示したものに限定されない。伝送路30を構成する各波の形態は、図2に示したように周波数分割または時分割によって形成するものに限らず、例えば各波を符号によって識別する符号分割によって形成するものであってもよい。
【0019】
本実施形態において、送信波生成装置10は、送信手段11によって、複数Pの送信波C〜Cのうち、所定数N(<P)の送信波C〜Cを、複数Pの送信波C〜Cのうちの所定数Nの送信波以外の送信波CN+1〜Cの全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性で変調し、または属性が区分されてなる個々の部分属性で変調する。すなわち、送信手段11は、第2群402の送信波CN+1〜Cの全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性で、第1群401の送信波C〜Cを変調する。あるいは、送信手段11は、第2群402の送信波CN+1〜Cの全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性の区分されてなる個々の部分属性で、第1群401の送信波C〜Cを変調する。ここで、物理層またはデータリンク層における処理に供される属性は、送信波CN+1〜Cのキャリア周波数、サブキャリア周波数、変調方式、多チャンネルの形成方式、間欠的に無線信号を送信する場合の送信間隔、インターリーブの有無や順序、伝送するデータをどのように複数チャネルで分配あるいは冗長性を持たせるのかという設定等の要素からなる。また、部分属性は、この属性が複数の要素を含む場合に、一部の要素からなる属性である。
【0020】
次に図3を参照して記憶手段13の記憶内容の基本構成について説明する。記憶手段13は、図3に示したように、第2群402の送信波CN+1〜Cの全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性の内容と、第1群401の送信波C〜Cを変調内容とを対応付けて、複数組(図3ではk組)記憶する。ここで変調内容は、上述した送信波CN+1〜Cの物理層またはデータリンク層における処理に供される属性が含む要素の全部または一部と同一である。すなわち、変調内容は、キャリア周波数、サブキャリア周波数、変調方式、多チャンネルの形成方式、間欠的に無線信号を送信する場合の送信間隔、インターリーブの有無や内容、伝送するデータをどのように複数のチャネルで分配あるいは冗長性を持たせるのかという設定等の各要素において、通信中に変化させる内容を表す。
【0021】
制御手段12は、伝送路30を変化させる際に、記憶手段13を参照して、属性を任意に選択する。次に、制御手段12は、選択した属性を示す情報とその属性に対応する変調内容を示す情報とを記憶手段13から読み出す。そして、制御手段12は、記憶手段13から読み出した各情報に応じて送信手段11を制御する。
【0022】
送信手段11は、制御手段12の制御に従い、上述したように、複数Pの送信波C〜Cのうち、所定数N(<P)の送信波C〜Cは、複数Pの送信波C〜Cのうちの所定数Nの送信波以外の送信波CN+1〜Cの全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性に対応する変調内容で変調し、または属性が区分されてなる個々の部分属性に対応する変調内容で変調する。また、送信手段11は、複数Pの送信波C〜Cのうちの所定数Nの送信波以外の送信波CN+1〜Cの全てもしくは一部の物理層またはデータリンク層における処理に供される属性が、送信波C〜Cを変調した属性または部分属性となるように、送信波C〜Cを生成して送信する。その際、送信手段11は、送信波C〜Cを変調した属性または部分属性に応じて生成された送信波CN+1〜Cを次のように送信する。
【0023】
すなわち、送信手段11は、例えば、まず、当該属性に対応する変調内容で変調した送信波C〜Cを所定期間送信し、その後、当該属性で生成した送信波CN+1〜Cを送信する。この場合、統合受信装置20は、まず、送信波C〜Cが有する属性を取得し、次に、取得した属性に応じて送信波CN+1〜Cを受信する。あるいは、送信手段11は、当該属性に対応する変調内容で変調した送信波C〜Cと当該属性を有する送信波CN+1〜Cとを同時に送信してもよい。この場合、統合受信装置20は、例えば、送信波C〜Cと送信波CN+1〜Cとを受信して一旦所定の記憶装置に記憶し、記憶したデータから送信波C〜Cを変調した属性を取得し、次に、取得した属性に応じて送信波CN+1〜Cに対する復調処理を行うことができる。
【0024】
また、無線信号をフレーム単位で送信する場合、送信手段11は、属性に応じた変調内容で変調した送信波C〜Cを送信する期間を、パイロット信号やプリアンブル部に割り当ててもよいし、フレームの全期間に割り当ててもよい。また、当該属性に対応する変調内容で変調された送信波C〜Cと、当該属性で生成された送信波CN+1〜Cとを時間差を持たせて送信する場合、時間差を同一フレーム内の時間差としてもよいし、異なるフレームにわたる時間差としてもよい。
【0025】
一方、統合受信装置20は、受信手段21と、属性取得手段22と、受信処理手段23とを備え、送信波生成装置10が送信した複数Pの送信波C〜Cを、受信波C〜Cとして受信する。ここで、送信波C〜Cと受信波C〜Cとは同一の無線信号である。受信手段21は、受信波C〜Cに対して周波数変換、アナログ・デジタル変換等を行い、受信波C〜Cを表すデータ(テーブル)を所定の記憶装置に記憶する。属性取得手段22は、記憶された複数Pの受信波C〜Cのうち、所定数N(<P)の受信波C〜Cに個別に物理層およびデータリンク層の処理を施し、所定数N以外の受信波CN+1〜Cの全てもしくは一部の属性を得る。受信処理手段23は、属性取得手段22によって得られた属性に適した処理を所定数N以外の受信波CN+1〜Cに物理層またはデータリンク層で施す。
【0026】
この場合、属性取得手段22は、所定の記憶装置に記憶した、図3を参照して説明した記憶手段13が記憶するものと同一の情報を参照することができる。また、属性取得手段22は、所定数Nの受信波C〜C毎に、既知であり、または識別可能なルールに基づいて定まる処理として物理層およびデータリンク層の処理を施す。
【0027】
ここで、図4および図5を参照して、伝送システム1の動作例について説明する。この動作例では、送信波C〜Cは周波数分割で多重化されていて、P=5、N=3であるとする。すなわち、第1群401が送信波C〜Cからなり、第2群402が送信波CおよびCからなる。図4は、この動作例において、記憶手段13および統合受信装置20内の所定の記憶装置に記憶されているテーブルであって、属性と変調内容とを対応付けるテーブルを示す。第2群402の送信波CおよびCの物理層又はデータリンク層の処理の属性はキャリア周波数であり、第1群401の送信波C〜Cの変調内容において変化する要素もキャリア周波数であるとしている。図4に示したテーブルを用いる場合、例えば、第2群402の送信波CおよびCの周波数をfおよびfに変化させるときには、第1群401の各送信波C〜Cの周波数をf、fおよびfに設定すればよい。また、例えば、第2群402の送信波CおよびCの周波数をfおよびfに変化させるときには、第1群401の各送信波C〜Cの周波数をf、fおよびfに設定すればよい。
【0028】
図5は、送信波C〜Cの各周波数の時間変化を模式的に示した図である。図5に示した例では、時刻t1、t2、t3およびt4で変調内容を変化させている。例えば、時刻t1で第1群401の各送信波C〜Cの周波数をf、fおよびfに設定した場合、時刻t2で第2群402の送信波CおよびCの周波数はfおよびfに変更される。また、例えば、時刻t2で第1群401の各送信波C〜Cの周波数をf、fおよびfに設定した場合、時刻t3で第2群402の送信波CおよびCの周波数はfおよびfに変更される。
【0029】
この場合、第1群401の送信波C〜Cの周波数の変化は、統合受信装置20において既知であるか、または識別可能なルールに基づいて定まる態様で変化している。例えば、第1群401の送信波C〜Cの周波数はf〜fのいずれかであって、各送信波C〜Cには予め定めた識別符号を付与することとしておく。この場合、例えば、統合受信装置20では、すべての周波数f〜fを監視し、識別符号を照合することで、送信波C〜Cを識別して、各送信波C〜Cの周波数を検知することができる。
【0030】
なお、図4及び図5を参照して説明した動作例は一例であって、動作例はこの例に限定されない。例えば、属性あるいは変調内容は、キャリア周波数に限らず、サブキャリア周波数、変調方式、多チャンネルの形成方式、間欠的に無線信号を送信する場合の送信間隔、インターリーブの有無や内容、伝送するデータをどのように複数のチャネルで分配あるいは冗長性を持たせるのかという設定等の各要素、またはそれらの組み合わせとすることができる。
【0031】
以上のように本実施形態では、受信端において既知でありかつ受信端が物理層またはデータリンク層における処理を個別に施されるべき送信波C〜Cが、送信波CN+1〜Cの物理層またはデータリンク層における処理に供される属性で変調される。この構成によれば、受信端では、送信波C〜Cの変調内容から送信波CN+1〜Cの物理層またはデータリンク層における処理に供される属性を取得することができる。したがって、送信波CN+1〜Cの物理層またはデータリンク層における処理に供される属性を、外部電波干渉状況に応じて変えることができ、干渉に対する耐性を挙げることができる。また、受信端に対して伝送する際の秘匿性を、容易に高めることができる。
【0032】
次に図6から図9までを参照して本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、上記の実施形態の一構成および動作例である。図6は、本発明に係る他の実施形態の構成例を示す概略ブロック図である。図7は、図6に示した送信装置100の動作例を説明するための説明図である。図8は、図6に示した伝送システム300において形成される伝送路30の変化の一例を説明するための模式図である。そして、図9は、図6に示した受信装置200の動作例を説明するための説明図である。
【0033】
図6に示した伝送システム300は、送信装置100と受信装置200とを備える。図6に示した送信装置100は、図1に示した送信波生成装置10に対応する。図6に示した受信装置200は、図1に示した統合受信装置20に対応する。
【0034】
送信装置100は、制御部101と、変調器(1)102、変調器(2)103、…、変調器(n)104と、符号発生器105と、合成器106と、周波数変換器107と、増幅器108と、ローパスフィルタ109と、アンテナ110とを備える。制御部101は、破線の矢印で示したように、変調器(1)102、変調器(2)103、…、変調器(n)104、符号発生器105等へ所定の制御信号を出力する。符号発生器105の出力は、変調器(2)103へ入力される。変調器(1)102、変調器(2)103、…、変調器(n)104の出力は、合成器106へ入力される。符号発生器105は生成した符号をスペクトラム拡散方式を使用する場合に任意の変調器(図示の例では変調器(2)103)に出力する。合成器106の出力は、周波数変換器107へ入力される。周波数変換器107の出力は、増幅器108へ入力される。増幅器108の出力は、ローパスフィルタ109へ入力される。そして、ローパスフィルタ109の出力は、アンテナ110へ入力される。
【0035】
一方、受信装置200は、アンテナ210と、ローパスフィルタ209と、増幅器208と、周波数変換器207と、分配器206と、制御部201と、属性取得器202と、復調器(1)203、復調器(2)204、…、復調器(n)205と、符号発生器206とを備える。制御部201は、破線の矢印で示したように、属性取得器202が出力した制御信号を入力するとともに、復調器(1)203、復調器(2)204、…、復調器(n)205、符号発生器206等へ所定の制御信号を出力する。アンテナ210の出力は、ローパスフィルタ209へ入力される。ローパスフィルタ209の出力は、増幅器208へ入力される。増幅器208の出力は、周波数変換器207へ入力される。周波数変換器207の出力は、分配器206へ入力される。分配器206の出力は、属性取得器202と、復調器(1)203、復調器(2)204、…、復調器(n)205とへ入力される。そして、符号発生器206の出力は、スペクトラム拡散方式を使用する場合の逆拡散を行う任意の復調器(図示の例では復調器(2)204)へ入力される。
【0036】
次に、伝送システム300の動作について図7図9を参照して説明する。なお、この動作例では、一例として図2を参照して説明したPを2、Nを1とした例で説明する。信号S1を例えばPSK変調(位相偏移変調)し、信号S2を例えばFSK変調(周波数偏移変調)した場合にそれぞれ変調速度が異なるものとした時、周波数を離調させて同時に送信する。なお、変調方式や速度は任意であるためここでは説明のためPSK変調、FSK変調とした。変調速度が異なるため、同じ情報を送達させるにはそれぞれ時間が異なる。図7(a)の様なスペクトラムになり、図8の様な断続的に送信時間が異なる送信となる。
また、特に変調の一つにスペクトラム拡散方式を用いた場合は図7(b)になる。制御部101には、例えば図示していないアナログ・デジタル変換器が出力した信号を入力される。制御部101は、入力信号を所定形式のシリアル信号に変換し、変調器(1)102および変調器(2)103へ出力する。変調器(1)102は、入力されたシリアル信号に応じて所定の周波数(サブキャリア周波数)の信号S1をPSK変調し、変調器(2)103は、符号発生器105が生成した符号列に応じてスペクトラム拡散変調方式によって変調し、スペクトラムが拡散した信号S3を出力する。
【0037】
ここで、信号S1、信号S2は制御部101の制御により後述するインターバルを持つ断続した信号である。信号S1、信号S2は合成器106で合成される。この場合、信号S1と信号S2との周波数差は例えば図7(a)に矢印72で示したものとなる。一方、スペクトラム拡散方式の場合、信号S3は、変調器(2)103の出力信号S2とともに合成器106で合成される。この場合、信号S2と信号S3との周波数差は例えば図7(b)に矢印72で示したものとなる。また、信号S2と信号S3とのレベル差71は信号S3をスペクトラム拡散方式で生成した結果、例えば図7(b)に示したように発生する。
【0038】
合成器106の出力信号は、周波数変換器107で周波数変換された後、増幅器108で増幅される。増幅器108は、信号S3を十分増幅できるだけのバックオフ(余裕度)を有することが望ましい。また増幅器108は、拡散された信号S2を送信するため十分な信号対雑音比を有することが望ましい。増幅器108の出力信号はローパスフィルタ109へ入力され、スプリアスが除去されて、アンテナ110から送信される。
【0039】
本動作例は、上述したように図2に示したPが2でNが1である場合に対応する。本動作例では、図8に示したように、例えば、図7に示した信号S2が第1群401の送信波Cであり、信号S3が第2群402の送信波Cである。本動作例では、制御部101が、送信波Cの属性で、断続する送信波Cのインターバル(送信間隔)を変調する。図8に示した例では、制御部101が、時刻t1から時刻t2までのインターバルT1に応じて、時刻t2から送信波Cのサブキャリア周波数をfからfに変更する。また、制御部101は、時刻t2から時刻t3までのインターバルT2に応じて、時刻t3から送信波Cのサブキャリア周波数をfからfに変更する。
【0040】
次に、本動作例における受信装置200の動作について説明する。受信装置200では、アンテナ110から送信された信号がアンテナ210で受信され、ローパスフィルタ209を介して、増幅器208で増幅される。増幅器208の出力は、分配器206で分配され、属性取得器202と、復調器(1)203と、復調器(2)204とに入力される。属性取得器202は、図9に示した信号S2(受信波C)のインターバルを計測し、計測結果に応じて信号S3のサブキャリア周波数を特定する。特に、スペクトラム拡散方式の場合、復調器(2)204は、符号発生器206が発生した符号に応じて信号S3を逆拡散し、さらに制御部201から入力されたサブキャリア周波数の情報に応じて入力信号をPSK復調する。
【0041】
本動作例では、変調器(1)102で発生した信号のインターバルを変化させることで伝送路を形成するための情報を伝送するので、無線信号の秘匿性を容易に高めることができる。また、送信波Cと送信波Cとによる冗長な伝送により混信や妨害波(ジャミング)に対する耐性が確保される。
【0042】
なお、上記の説明では、送信波C(信号S2)および送信波C(信号S3)の両方に同一のシリアル信号に基づくデータを載せて送信している。そのため、データ伝送の冗長性を高めることができる。ただし、例えば、送信波C(信号S3)のみに伝送するデータを載せ、送信波C(信号S2)には伝送するデータとは異なる信号を載せることとしてもよい。この場合、無線信号の秘匿性をより高めることができる。また、所定数N(<P)の送信波をスペクトラム拡散通信方式に基づいて生成することで秘匿性を高めることができる。
【0043】
以上、本発明によれば、外部からの干渉を安定に確度高く緩和しつつ、所望の無線伝送路を多様な変調方式および多元接続方式で形成できる送信波生成装置および統合受信装置を提供することができる。
【0044】
なお、本発明の実施の形態は上記のものに限定されない。例えば、複数の送信波をバースト波としてもよいし、複数の送信波を拡散通信方式に基づいて生成しもよい。また、拡散通信方式と周波数ホッピング方式とを組み合わせてもよい。
【0045】
また、複数の送信波に対しては、一部または全部に暗号化が適用されてもよい。受信端においては、複数の送信波の受信を、複数の櫛形フィルタを用いて行ってもよいし、スキャンによって待ち受けてもよい。また、複数の送信波あるいは受信波に対しては、空中線共用により増幅器を共用する構成としてもよいし、空中線を複数設けたり、増幅器を複数設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 伝送システム
10 送信波生成装置
11 送信手段
12 制御手段
13 記憶手段
20 統合受信装置
21 受信手段
22 属性取得手段
23 受信処理手段
30 伝送路
図1
図2
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図9