(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された秘話通信方法では、送信側で音声信号と雑音信号とが周波数領域で合成され、受信側で音声信号と雑音信号とが周波数領域で分離される。そのため、雑音信号の時間領域の変化は解読の困難性には影響を及ぼさない。したがって、一旦、音声信号と雑音信号との重畳の仕方が分かってしまうと、雑音信号を変更したとしても、音声信号と雑音信号とを容易に分離することができるという課題がある。
【0005】
一方、上述したように、送信側において音声信号と雑音信号とを時間領域で重畳する秘話方式では、受信側で音声信号と雑音信号との分離が容易ではないという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、上記の課題を解決することができる信号処理装置および信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、基準音声帯域信号を発生する基準音声帯域信号発生部と、疑似雑音信号を発生する疑似雑音発生部と、入力された音声信号と前記疑似雑音信号とを合成して、雑音重畳音声信号を生成する合成部と、前記基準音声帯域信号または前記雑音重畳音声信号を出力する出力部とを備えた信号処理装置であって、前記基準音声帯域信号発生部が前記基準音声帯域信号の発生に基づいてタイミング信号を出力し、
前記疑似雑音発生部に当該タイミング信号が入力されてから所定の時間経過後に、前記出力部が出力する前記雑音重畳音声信号に含まれる前記疑似雑音信号の発生を開始し、
前記タイミング信号は複数種類用意され、前記タイミング信号の種類は所定の順序で変更される信号処理装置である。
また、本発明の一態様は、上記の信号処理装置であって、前記タイミング信号が、前記基準音声帯域信号の発生開始時刻を表す信号、前記基準音声帯域信号の発生終了時刻を表す信号、前記基準音声帯域信号の信号波形のゼロクロス点に対応する時刻を表す信号、あるいは、前記基準音声帯域信号の発生開始時刻から1または複数周期分の時間経過後の時刻を表す信号である。
【0008】
また、本発明の一態様は、基準音声帯域信号の入力を検出する基準音声帯域信号検出部と、疑似雑音信号を発生する疑似雑音発生部と、入力された雑音重畳音声信号と、前記疑似雑音信号の逆位相の信号とを合成して、音声信号を抽出する合成部とを備えた信号処理装置であって、前記基準音声帯域信号の入力検出時刻に対応して出力されるタイミング信号が
前記疑似雑音発生部に入力されてから所定の時間経過後に、前記疑似雑音信号の発生が開始され、
前記タイミング信号は複数種類用意され、前記タイミング信号の種類は所定の順序で変更される信号処理装置である。
また、本発明の一態様は、上記の信号処理装置であって、前記タイミング信号が、送信側と同様の数の種類が設けられており、前記送信側が使用した種類と同様の種類が用いられ、当該タイミング信号が、前記基準音声帯域信号の発生開始時刻を表す信号、前記基準音声帯域信号の発生終了時刻を表す信号、前記基準音声帯域信号の信号波形のゼロクロス点に対応する時刻を表す信号、あるいは、前記基準音声帯域信号の発生開始時刻から1または複数周期分の時間経過後の時刻を表す信号である。
【0011】
また、本発明の一態様は、基準音声帯域信号を発生する基準音声帯域信号発生過程と、疑似雑音信号を発生する疑似雑音発生過程と、入力された音声信号と前記疑似雑音信号とを合成して、雑音重畳音声信号を生成する合成過程と、前記基準音声帯域信号または前記雑音重畳音声信号を出力する出力過程とを含む信号処理方法であって、前記基準音声帯域信号発生過程において前記基準音声帯域信号の発生に基づいてタイミング信号が出力され、
前記疑似雑音発生過程において当該タイミング信号が入力されてから所定の時間経過後に、前記出力過程で出力される前記雑音重畳音声信号に含まれる前記疑似雑音信号の発生を開始し、
前記タイミング信号は複数種類用意され、前記タイミング信号の種類は所定の順序で変更される信号処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
基準音声帯域信号の時刻と、疑似雑音信号の発生開始時刻との時間差が予め定められているので、受信側では、雑音重畳音声信号に含まれている疑似雑音信号の逆位相の信号発生タイミングを精度良くすることができる。よって、受信側において音声信号を精度良く抽出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態を説明するためのシステム図である。
図1は、本実施形態の信号処理装置1の構成と、主な信号の周波数スペクトルと、信号処理装置1に接続される外部の構成とを示す。
図1に示した信号処理装置1は、アナログ音声を入力し、入力した音声信号(音声通信信号SG1とする)に対して、疑似的ランダムに発生される雑音である疑似雑音信号SG2を重畳することで雑音重畳音声信号SG4を生成し、生成した雑音重畳音声信号SG4を無線機2の音声入力端子21へ出力する。無線機2は、音声入力端子21へ入力された雑音重畳音声信号SG4で所定の搬送波を変調することで所定の変調方式の高周波信号を生成し、アンテナ3へ入力して電波に変換して放射する。無線機2における変調方式には限定は無く、例えばアナログ変調である振幅変調、周波数変調、位相変調などとすることができる。また、無線機2は、送信機のみを備えた無線機であってもよいし、送信機と受信機とを備えた無線機であってもよい。なお、無線機2は、図示していない送信ボタンなどの操作子が操作された場合、あるいは、音声入力端子21から一定レベル以上の音声信号が入力された場合に、電波の送信を開始する。ここで、送信ボタンなどの操作子は、無線機2が備えていてもよいし、信号処理装置1が備えていてもよいし、あるいは、信号処理装置1に接続される図示していない外部のマイクロフォンが備えていてもよい。また、本願では、音声信号は、音声帯域の周波数を有する信号であり、人が発した声を表す信号と声以外の音を表す信号とを含むものとする。なお、音声帯域は、おおむね200Hz〜4kHzの周波数範囲であり、例えば電話では300Hz〜3.4kHzの周波数範囲とされている。
【0015】
信号処理装置1は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)やマイクロコンピュータと周辺装置とを用いて構成することができる。あるいは、信号処理装置1は、一部または全部をディスクリートで構成されたアナログ回路やロジック回路を用いて構成することができる。
図1に示した信号処理装置1は、入力回路11と、基準音声帯域信号発生器12と、疑似雑音発生器13と、選択器14と、合成器15と、出力回路16とを備える。なお、基準音声帯域信号発生器12、疑似雑音発生器13、選択器14、および合成器15は、アナログ信号を入力もしくは出力または入出力する構成であってもよいし、数値データを入力もしくは出力または入出力する構成であってもよい。
【0016】
入力回路11は、例えば内部にマイクロフォンを備えて音声を入力して音声通信信号SG1を生成し、あるいは、内部にマイクロフォンを備えずに図示していない外部のマイクロフォンが出力した音声通信信号SG1を入力し、所定のデジタル信号あるいはアナログ信号に変換した後、合成器15へ出力する。入力回路11は、また、一定以上の音量を有する音声通信信号SG1を検知した場合あるいは図示していない送信ボタンなどの操作子が操作された場合に、その旨を示す信号を基準音声帯域信号発生器12へ出力する。
【0017】
基準音声帯域信号発生器12は、例えば300Hz〜2700Hzの音声帯域内の周波数の基準音声帯域信号SG3を所定時間発生する。基準音声帯域信号SG3は、予め定めた特徴を有する信号であって、雑音重畳音声信号SG4と識別可能な信号である。予め定めた特徴を有する信号とは、例えば、周波数成分が1または複数の基本周波数成分のみからなる信号であるなど周波数成分が音声通信信号SG1や疑似雑音信号SG2とは異なる性質を有する信号である。また、この基準音声帯域信号SG3は、疑似雑音信号SG2の発生開始時刻について受信側で同期をとるための基準信号である。すなわち、受信側において時間領域で送信側と同一の雑音信号を発生する際に基準となる信号である。送信および受信のはじめにパイロット信号として基準音声帯域信号SG3を送受することで、疑似的な雑音を加算または除去する際に疑似雑音の同期をとることができる。基準音声帯域信号SG3は、例えば、周波数が2つの異なる基本周波数成分を含む信号であるトーン信号とすることができる。なお、トーン信号は、DTMF(Dial Tone Multi Frequency)信号とも呼ばれる。あるいは、基準音声帯域信号SG3は、3以上の基本周波数成分が異なる信号を合成したものであってもよい。基準音声帯域信号SG3に複数の基本周波数が異なる信号を含ませることで、例えば基準音声帯域信号SG3を1つの基本周波数の信号から構成する場合と比較して、受信側での基準音声帯域信号SG3の誤検出の可能性を低くすることができる。なお、基準音声帯域信号SG3はあらかじめ定めた1種類の信号に固定しておいてもよいし、合成する複数の信号の基本周波数や発生時間(基準音声帯域信号SG3の継続時間)などを変化させるようにしてもよい。ただし、変化させる場合には、どのように変化させるのかを示す情報を送信側と受信側とで共有しておく。
【0018】
基準音声帯域信号発生器12は、入力回路11から一定以上の音量を有する音声信号を検知したことを示す信号あるいは送信ボタンなどが操作されたことを示す信号が入力された場合、所定時間、基準音声帯域信号SG3を発生して選択器14へ出力する。選択器14は、基準音声帯域信号発生器12が基準音声帯域信号SG3を出力した場合、基準音声帯域信号発生器12の出力を合成器15の一方の入力に接続する。
【0019】
また、基準音声帯域信号発生器12は、選択器14へ基準音声帯域信号SG3を出力した時刻に対応するタイミング信号T1を疑似雑音発生器13へ出力する。このタイミング信号T1は、基準音声帯域信号SG3の出力時刻に対して、疑似雑音発生器13が疑似雑音信号SG2の発生を開始する時刻を同期させるための信号である。タイミング信号T1は、例えば、基準音声帯域信号SG3の発生開始時刻を表す信号、基準音声帯域信号SG3の発生終了時刻を表す信号、あるいは、基準音声帯域信号SG3の信号波形のゼロクロス点に対応する時刻を表す信号である。あるいは、タイミング信号T1は、基準音声帯域信号SG3の信号波形の発生開始時刻から1または複数周期分の時間経過後の時刻を表す信号としてもよい。なお、信号波形のゼロクロス点は、複数の基本波を含むトーン信号全体について検出されたものであってもよいし、トーン信号が含む複数の基本波のそれぞれについて検出されたものであってもよい。また、タイミング信号T1は、最初のゼロクロス点が発生した時刻を表してもよいし、複数のゼロクロス点が発生した時刻を表してもよい。
【0020】
また、タイミング信号T1として、複数種類のタイミング信号T1
1〜T1
n(nは2以上の整数)をあらかじめ用意しておき、これらを選択的に用いるようにしてもよい。例えば、タイミング信号T1
1を基準音声帯域信号SG3の発生開始時刻を表す信号、タイミングT1
2を基準音声帯域信号SG3の発生終了時刻を表す信号、タイミングT1
3を基準音声帯域信号SG3の信号波形のゼロクロス点に対応する時刻を表す信号、タイミングT1
4を基準音声帯域信号SG3の信号波形の1周期分の時間経過後の時刻を表す信号、タイミングT1
5を基準音声帯域信号SG3の信号波形の2周期分の時間経過後の時刻を表す信号などとする。そして、例えば、最初のタイミング信号T1をタイミング信号T1
1とし、次のタイミング信号T1をタイミング信号T1
2とするというように、タイミング信号T1の種類をあらかじめ定めた順序で変更する。この変更の順序を表す情報は、送信側と受信側とで共有されるようにしておく。タイミング信号T1の種類が変化した場合、受信側においてもこの種類の変化に応じた対応が求められる。したがって、このようにタイミング信号T1を複数種類の信号から構成することで、第3者による解読の困難性を高めることができる。
【0021】
一方、疑似雑音発生器13は、基準音声帯域信号発生器12からタイミング信号T1が入力された場合に、タイミング信号T1の入力から所定の時間が経過した後に疑似雑音信号SG2の発生を開始し、発生した疑似雑音信号SG2を選択器14へ出力する。疑似雑音発生器13は、例えば一定のクロック信号に応じて動作する複数のシフトレジスタや乗算器、排他論理和、搬送波発生器、変調器などから構成される。疑似雑音発生器13では、例えば、一定の値を初期値として周期的に変化する疑似雑音符号系列が生成され、生成された疑似雑音符号系列で所定の搬送波を変調することで疑似雑音信号SG2が発生される。その際、搬送波の位相は疑似雑音符号系列の生成開始時に一定の初期値に設定される。したがって、疑似雑音発生器13は、疑似雑音信号SG2の発生開始時刻からの時間経過に伴って発生毎に同一の疑似雑音信号SG2を発生する。なお、疑似雑音信号SG2の周波数は、上述した音声帯域内の周波数に設定される。疑似雑音発生器13は、例えば、音声帯域で広い範囲に分布した周波数スペクトルを有する疑似雑音信号SG2を発生する。
【0022】
また、上述したように、疑似雑音発生器13は、基準音声帯域信号発生器12からタイミング信号T1が入力された場合、予め定められた時間経過後に、疑似雑音信号SG2の発生を開始する。したがって、受信側では基準音声帯域信号SG3を検出した時刻を基準として、同一の疑似雑音信号SG2を発生させることができる。
【0023】
疑似雑音発生器13は、疑似雑音信号SG2の発生を開始した場合、その時点から、あるいは発生開始から所定時間経過後に、発生した疑似雑音信号SG2を選択器14へ出力する。選択器14は、疑似雑音発生器13から疑似雑音信号SG2を入力した場合、疑似雑音発生器13の出力を合成器15の一方の入力に接続する。
【0024】
選択器14は、基準音声帯域信号発生器12の出力または疑似雑音発生器13の出力の一方を選択して、合成器15の一方の入力へ接続する。なお、選択器14の切替動作は、信号処理装置1内の図示していない制御回路によって制御してもよいし、基準音声帯域信号発生器12や疑似雑音発生器13あるいは入力回路11から入力された図示してない制御信号によって制御してもよい。
【0025】
合成器15は、入力回路11からの入力と選択器14からの入力とを時間領域で合成し、合成した信号を出力回路16へ出力する。ただし、合成器15は、選択器14から基準音声帯域信号SG3が入力された場合は、選択器14からの入力と入力回路11からの入力とを合成せずに、選択器14からの入力をそのまま出力することができる。なお、疑似雑音信号SG2と入力回路11から入力された音声通信信号SG1とを合成器15が合成した信号が、雑音重畳音声信号SG4である。
【0026】
そして、出力回路16は、合成器15の出力を入力し、無線機2の音声入力端子21の入力形式に適した信号に変換して出力する。出力回路16の出力信号の時間的な流れは、
図1に示したように、まず、基準音声帯域信号SG3となり、所定時間経過後に雑音重畳音声信号SG4となる。
【0027】
次に、
図2を参照して、
図1に示した信号処理装置1の動作例について説明する。信号処理装置1は、入力回路11が例えば一定以上の音量を有する音声通信信号SG1を検知した場合あるいは図示していない送信ボタンなどの操作子が操作された場合(ステップS11でYesの場合)、基準音声帯域信号発生器12で基準音声帯域信号SG3を発生して選択器14を介して合成器15へ入力する(ステップS12)。基準音声帯域信号発生器12は、基準音声帯域信号SG3を出力した時刻からの経過時間を計測し(ステップS13)、所定の時間が経過した場合(ステップS14でYesの場合)に、タイミング信号T1を出力する。疑似雑音発生器13は、タイミング信号T1が入力されると、疑似雑音信号SG2の発生を開始し、所定の時間が経過した後発生した疑似雑音信号SG2を選択器14を介して合成器15へ入力する(ステップS15)。次に、信号処理装置1は、入力回路11が一定以上の音量を有する音声通信信号SG1を所定時間以上、検知しなくなった場合あるいは図示していない送信ボタンなどの操作子が送信終了を示す操作状態となった場合(ステップS16でYesの場合)、疑似雑音発生器13による疑似雑音信号SG2の発生を終了する(ステップS17)。
【0028】
以上のように、本実施形態の信号処理装置1は、基準音声帯域信号SG3を発生する基準音声帯域信号発生器12(基準音声帯域信号発生部)と、疑似雑音信号SG2を発生する疑似雑音発生器13(疑似雑音発生部)と、入力された音声通信信号SG1(音声信号)と疑似雑音信号SG2とを合成して、雑音重畳音声信号SG4を生成する合成器15(合成部)と、基準音声帯域信号SG3または雑音重畳音声信号SG4を出力する出力回路16(出力部)とを備える。そして、出力回路16が基準音声帯域信号SG3を出力する時刻と、出力回路16が出力する雑音重畳音声信号SG4に含まれる疑似雑音信号SG2の発生開始時刻との時間差が予め定められている。したがって、受信側では、雑音重畳音声信号SG4に先だって基準音声帯域信号SG3を受信して同期をとることで、雑音重畳音声信号SG4に含まれている疑似雑音信号SG3の逆位相の信号の信号発生タイミングを精度良くすることができる。よって、受信側において音声通信信号SG1を精度良く抽出することができる。
【0029】
次に、
図3を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。
図3は、本発明の一実施形態を説明するためのシステム図である。
図3は、本実施形態の信号処理装置4の構成と主な信号の周波数スペクトルと外部の構成とを示す。上述した
図1に示した信号処理装置1は例えば送信側の無線機2とともに使用することができるが、本実施形態の
図3に示した信号処理装置4は例えば受信側の無線機5とともに使用することができる。
【0030】
図3に示した信号処理装置4は、無線機5の音声出力端子51から出力された雑音重畳音声信号SG4を入力し、入力した雑音重畳音声信号SG4から疑似雑音信号SG2を分離し、音声通信信号SG1を抽出してアナログ音声を出力する。無線機5は、
図1に示した無線機2が送信した電波をアンテナ6で受信し、受信した信号を復調した結果を音声出力端子51から出力する。なお、無線機5は、受信機を備えた無線機であってもよいし、受信機と送信機とを備えた無線機であってもよい。
【0031】
信号処理装置4は、例えば、FPGAやマイクロコンピュータと周辺装置とを用いて構成することができる。あるいは、信号処理装置4は、一部または全部をディスクリートで構成されたアナログ回路やロジック回路を用いて構成することができる。
図3に示した信号処理装置4は、出力回路41と、合成器42と、入力回路43と、基準音声帯域信号検出回路44と、疑似雑音発生器45と、逆位相変換器46とを備える。なお、出力回路41、合成器42、入力回路43、基準音声帯域信号検出回路44、疑似雑音発生器45、および逆位相変換器46とは、アナログ信号を入力もしくは出力または入出力する構成であってもよいし、数値データを入力もしくは出力または入出力する構成であってもよい。
【0032】
入力回路43は、無線機5の音声信号出力端子51から出力された基準音声帯域信号SG3や雑音重畳音声信号SG4を入力し、所定のデジタル信号あるいはアナログ信号に変換して合成器42および基準音声帯域信号発生器44へ出力する。
【0033】
基準音声帯域信号検出回路44は、入力回路43から入力した信号に、上述した
図1の基準音声帯域信号発生器12が発生した基準音声帯域信号SG3が含まれていた場合、これを検出する。基準音声帯域信号検出回路44は、基準音声帯域信号SG3を検出した時刻に対応するタイミング信号T2を疑似雑音発生器45へ出力する。基準音声帯域信号検出回路44は、1または複数のバンドパスフィルタ、1または複数のコンパレータなどを用いて構成することができる。タイミング信号T2は、基準音声帯域信号SG3に対してタイミング信号T1と同一のタイミングで(時間差を有して)発生される信号である。タイミング信号T2は、上述したタイミング信号T1と同様、基準音声帯域信号SG3の発生開始時刻を表す信号、基準音声帯域信号SG3の発生終了時刻を表す信号、基準音声帯域信号SG3の信号波形のゼロクロス点に対応する時刻を表す信号などである。
【0034】
なお、上述したように、送信側で所定のルールに従って複数種類のタイミング信号T1
1〜T1
nの1つをタイミング信号T1として選択して用いる場合、受信側でも同じルール(手順)に従って複数種類のタイミング信号T2
1〜T2
nのうち送信側で選択されたものと同じ種類のものをタイミング信号T2として選択して使用するようにする。
【0035】
疑似雑音発生器45は、上述した
図1に示した疑似雑音発生器13と同一の構成を有する。疑似雑音発生器45は、基準音声帯域信号検出回路44からタイミング信号T2を入力すると、予め定められている一定時間経過後に疑似雑音信号SG2の発生を開始する。この一定時間は、
図1に示した送信側の疑似雑音発生器13がタイミング信号T1の入力から疑似雑音信号の発生を開始するまでの時間と同一に設定されている。したがって、雑音重畳音声信号SG4について送信側と受信側とで疑似雑音信号SG2の発生タイミングを同期させることができる。疑似雑音発生器45が発生した疑似雑音信号SG2は、逆位相変換器46へ入力される。逆位相変換器46は、疑似雑音発生器45が発生した疑似雑音信号SG2の位相を逆位相に変換する。
【0036】
合成器42は、入力回路43の出力と、逆位相変換器46の出力SG5とを時間領域で合成して、合成した信号を出力回路41へ入力する。入力回路43が雑音重畳音声信号SG4を出力する場合、逆位相変換器46は、雑音重畳音声信号SG4が含む疑似雑音信号SG2と同期した逆位相の疑似雑音信号SG5を出力する。したがって、合成器42は、雑音重畳音声信号SG4が含む疑似雑音信号SG2を逆位相の疑似雑音信号SG5で打ち消し、疑似雑音信号SG3を分離して雑音重畳音声信号SG4から抽出した音声通信信号SG1を出力する。
【0037】
出力回路41は、スピーカを内部に備え、あるいは、スピーカを内部に備えず外部のスピーカやイヤホンに信号を出力する出力インターフェースを備え、合成器42の出力を入力して、出力に適した所定の音声通信信号SG1に変換して出力する。
【0038】
次に、
図4を参照して、
図3に示した信号処理装置4の動作例について説明する。信号処理装置4では、基準音声帯域信号検出回路44が、基準音声帯域信号SG3を検出した場合(ステップS21でYesの場合)、基準音声帯域信号SG3を検出した時刻からの経過時間を計測し(ステップS22)、所定の時間が経過した場合(ステップS23でYesの場合)に、タイミング信号T2を出力する。この判定の時間は
図2のステップS14の判定の時間と同一である。疑似雑音発生器45は、タイミング信号T2が入力されると、疑似雑音信号SG2の発生を開始し、発生した疑似雑音信号SG2を逆位相変換器46へ入力する(ステップS24)。ここで、合成器42は、入力回路43の出力と、逆位相変換器46の出力SG5とを時間領域で合成して、合成した信号を出力回路41へ入力する。そして、出力回路41は、合成器42の出力を入力して、出力に適した所定の音声通信信号SG1に変換して出力する。次に、信号処理装置1は、例えば入力回路43が一定以上の音量を有する信号を所定時間以上検知しなくなった場合(ステップS25でYesの場合)、疑似雑音発生器45による疑似雑音信号SG2の発生を終了する(ステップS26)。
【0039】
以上のように本実施形態の信号処理装置4は、基準音声帯域信号SG3の入力を検出する基準音声帯域信号検出回路44(基準音声帯域信号検出部)と、疑似雑音信号SG2を発生する疑似雑音発生器45(疑似雑音発生部)と、入力された雑音重畳音声信号SG4と、疑似雑音信号SG2の逆位相の信号SG5とを合成して、音声通信信号SG1(音声信号)を抽出する合成器42(合成部)とを備える。その際、基準音声帯域信号SG3の入力検出時刻に対して予め定めた時間差を有するように、疑似雑音信号S2の発生開始時刻が設定される。したがって、信号処理装置4では、雑音重畳音声信号SG4に含まれている送信側で生成された疑似雑音信号SG3の逆位相の信号を精度良く生成することができる。よって、信号処理装置4において音声通信信号SG1を精度良く抽出することができる。
【0040】
なお、
図1に示した無線機2と
図3に示した無線機5との間の通信は、次のように実施することができる。概要は、次の通りである。(1)送信側、受信側では通常の無線通信運用を行う。(2)送信側で疑似的なランダム雑音を発生させ通信内容に重畳する。受信側ではこの疑似的ランダム雑音は既知であることから、無線受信した後に通信内容に重畳された雑音を逆位相で雑音を除去し通信内容を復元させる。(3)その際、疑似雑音の同期が必要になるため、送信および受信のはじめにパイロット信号を送受することで疑似的な雑音を除去する事が可能となる。
【0041】
より具体的には次のように
図1に示した無線機2と
図3に示した無線機5との間で通信を実施することができる。すなわち、(1)送信側では通常のアナログ音声を信号処理装置1に入力する。(2)音声通信信号に疑似雑音発生器13で発生させた信号を合成させる。(3)信号処理装置1で合成された信号は疑似雑音が重畳されているため、通信内容と雑音が混じった信号になる。(4)この雑音が混じった信号を無線機2に入力し送信する前にトーン信号をパイロット信号として送信し、しかる後雑音が混じったアナログ信号を送信する。(5)無線通信においては単純S/N(信号雑音比)の悪い信号を送信していることになる。(6)受信側では、通常に無線受信し、そのままではS/Nの悪い信号であるため信号処理装置4に出力する。(7)信号処理装置4はパイロット信号としてトーン信号を受信し、既知である疑似雑音を除去するための同期をとり、予め決めておいた期間待ち受けし雑音の混じった信号を受信する。(8)信号処理装置4はパイロット信号を受信した後、疑似雑音信号を逆位相で除去する。(9)受信側オペレータは通信内容を明瞭に判定することが出来る。
【0042】
上記の通信によれば、信号処理装置4を使用していない第3者がこの無線通信を傍受した場合、雑音に埋もれた音声に聞こえるため非常に聞きづらい音声として認識するため、第3者には通信内容が明瞭に判定することが不可能である。
【0043】
また、
図1に示した無線機2と
図3に示した無線機5との間の通信は、重畳する雑音やパイロット信号はいずれもアナログ信号であり、従来の無線機で認定されている無線局の電波型式がそのまま使用することが可能であり、極めて簡易的な方法で、通信内容を保全化することが可能である。加えて、難しい装置や処理は皆無であることから、装置自体の消費電力は軽減でき、装置のサイズも小型化出来る。
【0044】
なお、本発明の実施の形態は上記のものに限定されない。例えば、無線機2あるいは無線機5が、送信機と受信機とを備えた無線機である場合、
図1に示した信号処理装置1と
図3に示した信号処理装置4とを一体的に構成してもよい。その場合、例えば、1つの
疑似雑音発生器を共用することができる。また、信号処理装置1と無線機2とを一体的に構成してもよい。また、信号処理装置4と無線機5とを一体的に構成してもよい。また、疑似雑音発生器13および疑似雑音発生器45で発生する疑似雑音は予め1つに決めておくことのほか、予め複数種類の疑似雑音符号系列を決めておいて、いずれかを選択して用いるようにしてもよい。その場合の選択は、例えば時間帯によって、あるいは送信側から受信側へトーン信号などを用いて所定の情報を伝送することによって決めることができる。
【0045】
また、タイミング信号T1をタイミング信号T1
1〜T1
nのいずれかにするとともに、基準音声帯域信号SG3を構成する合成信号に含まれる複数の信号成分の各周波数や、基準音声帯域信号SG3の時間長などを変化させることとし、さらに、それらの組み合わせを何通りか予め定めて、使用する組み合わせを予め定めた手順で変化させるようにしてもよい。この場合、送信側と受信側とで組み合わせの内容を示す情報を共有し、使用する組み合わせを予め決めた手順で変化させる。例えば、基準音声帯域信号SG3として、合成信号の各周波数成分が互いに異なる基準音声帯域信号SG3
1と基準音声帯域信号SG3
2とを設定する。また、タイミング信号T1として、基準音声帯域信号SG3の信号波形の1周期分の時間経過後の時刻を表すタイミングT1
4と基準音声帯域信号SG3の信号波形の2周期分の時間経過後の時刻を表すタイミングT1
5とを設定する。そして、例えば、第1の組み合わせとして基準音声帯域信号SG3
1とタイミングT1
4との組み合わせ、第2の組み合わせとして基準音声帯域信号SG3
1とタイミングT1
5との組み合わせ、第3の組み合わせとして基準音声帯域信号SG3
2とタイミングT1
4との組み合わせなどを予め定めておくことができる。このように複数種類の基準音声帯域信号SG3と複数種類のタイミング信号T1とからなる組み合わせを複数用意して、選択的に用いた場合、疑似雑音信号SG2に対する同期の取り方を多様に変化させることができる。この場合、基準音声帯域信号発生器12による基準音声帯域信号SG3の発生の仕方と、基準音声帯域信号SG3を出力回路16が出力する時刻と雑音重畳音声信号SG4に含まれる疑似雑音信号SG2の発生開始時刻との時間差の取り方、あるいは、基準音声帯域信号検出部44による基準音声帯域信号SG3の入力検出時刻と疑似雑音発生器45による疑似雑音信号SG2の発生開始時刻との時間差の取り方とが、予め複数種類決められていて、基準音声帯域信号SG3の発生の仕方と時間差の取り方との組み合わせを予め決められた手順で変化させていることになる。したがって、疑似雑音のパターンや開始時間を予め決めておけば、これらの組み合わせを用いた暗号化を複数種類の暗号化とする事ができる。よって、第3者による解読の困難性をより高めることができる。
【0046】
また、本発明の実施形態は、無線通信に限らず、有線通信に適用することができる。また、信号処理装置1や信号処理装置4の一部または全部を、プログラム可能な構成あるいはCPU(中央処理装置)でプログラムを実行する構成とした場合は、そのプログラムの一部または全部をコンピュータ読取可能な記録媒体あるいは通信回線を介して頒布することができる。