(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態である建設現場用敷き鉄板のジョイントの概略斜視図である。
図2(a)は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントの概略平面図、
図2(b)はその建設現場用敷き鉄板のジョイントの概略側面図である。
図3は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントのA−A矢視方向概略断面図である。
【0015】
本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイント(以下、単にジョイントとも称する。)は、少なくとも二枚の敷き鉄板を挟み込んでつなぐために用いられるものであり、
図1乃至
図3に示すように、つなごうとする敷き鉄板の端部を載置するベース部10と、ベース部10を上から覆うように配置されるカップ部20と、ベース部10とカップ部20とを連結するボルト30及び角ナット40と、ベース部10の下側の中央部に形成された第一凹部13内に角ナット40を収容したときにその角ナット40が外に出ないように第一凹部13の口を下側から塞ぐための蓋部50とを備える。ここで、角ナット40とは、円形のナットではなく、六角ナットや四角ナット等の多角形のナットを意味する。
【0016】
まず、ベース部10について説明する。
図4(a)は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントにおけるベース部10の概略平面図、
図4(b)はそのベース部10の概略側面図である。
図5(a)は
図4に示すベース部10の概略底面図、
図5(b)は
図4(a)に示すベース部10のB−B矢視方向概略断面図である。ベース部10は、略円板状に形成された金属製のものである。このベース部10は、
図1、
図3、
図4及び
図5に示すように、その上面の所定位置に形成された二つの突起部11,11と、二つの突起部11,11の間に形成された壁部12と、ベース部10の下側の中央部に形成された第一凹部13と、ベース部10の中心部を貫通するように形成された第一孔部14とを有する。本実施形態では、このベース部10は、例えば鋳物で一体的に形成されている。
【0017】
ベース部10の直径は約130mmである。
図4(b)及び
図5(a)に示すように、ベース部10の下面には三つのリブ17,17,17が形成されている。本実施形態では、これらのリブ17,17,17が互いに平行に形成されており、このうち真ん中のリブ17がベース部10の下面の中心位置を通っている。リブ17を含めたベース部10の厚さ(突起部11,11及び壁部12を除く。)は約25mmである。一方、
図4に示すように、ベース部10の上面には二つの突起部11,11が形成されている。突起部11,11は、ベース部10の上面の中心位置から両側へ等間隔をおいた位置に、ベース部10の上面から突出するように形成されている。各突起部11は、つなごうとする敷き鉄板の位置決めをするために利用されるテーパーを付けた両側面部110,110を有している。突起部11の高さは約25mmである。また、突起部11の底面における
図4(a)の上下方向の幅は約25mmである。尚、各突起部11の上面には、目立つ色のペイントや、蛍光色を発するペイントが塗布されている。
【0018】
また、本実施形態では、突起部11よりも高さの低い壁部12を、二つの突起部11,11の間に設けている。この壁部12は二つの突起部11,11と一体的に形成されている。具体的に、壁部12の高さは約15mmである。このため、ベース部10全体では、その厚さが約50mmとなる。壁部12の中央部における
図4(a)の上下方向の幅は、突起部11の底面における
図4(a)の上下方向の幅と同様に約25mmであり、壁部12の両側面部120,120も敷き鉄板の位置決めをする際に利用することができる。ここで、壁部12の中央部とその両端部とでは、
図4(a)の上下方向の幅が異なっている。すなわち、壁部12の両端部における
図4(a)の上下方向の幅は、壁部12の中央部における
図4(a)の上下方向の幅よりも小さく形成されている。尚、壁部12は省略することも可能である。
【0019】
第一凹部13は、角ナット40を収容するためのものであり、
図3及び
図5に示すように、ベース部10の下側の中央部に形成されている。この第一凹部13は、角ナット40を挿入するための角ナット挿入部131と、角ナット挿入部131の下側に形成された蓋部嵌装部132とを有する。角ナット40を角ナット挿入部131に挿入した後、蓋部50を第一凹部13の下側から蓋部嵌装部132に嵌め込むことにより、角ナット40は第一凹部13内に収容される。
【0020】
角ナット挿入部131は、角ナット40の形状と類似した形状を有する。角ナット40を、蓋部嵌装部132から第一凹部13に入れることができるように、蓋部嵌装部132の幅は角ナット挿入部131の横幅と同じ又はそれよりも広く形成されている。具体的に、蓋部嵌装部132を略円筒形状に形成した場合、その蓋部嵌装部132の直径は、角ナット40の断面形状の外接円の直径と同じ又はそれよりも広く形成されている。また、角ナット挿入部131は、角ナット40が挿入されたときに角ナット40がその中心軸の周りに回動しないように且つ角ナット40との間に隙間を有するように設計され、一方、蓋部嵌装部132は、その深さが角ナット40の高さよりも浅くなるように設計されている。したがって、角ナット40は第一凹部13内で自由に回動することができないように配置されるが、しっかりとは固定されていないので、ベース部10を動かせば、角ナット40はガタつくようになっている。尚、角ナット挿入部131及び蓋部嵌装部132の具体的な大きさについては後述する。
【0021】
第一孔部14は、ボルト30を通すためのものであり、第一凹部13の上面においてベース部10(壁部12)の中心部を貫通するように形成されている。具体的に、第一孔部14の直径は約17mmである。
【0022】
尚、本実施形態で使用するベース部10については、例えば特許文献1、2に記載された従来のものと比べて、直径を小さくしたり、突起部11,11、壁部12及びリブ17を除く本体部分の厚さを薄くしたり、壁部12の両端部における
図4(a)の上下方向の幅を壁部12の中央部における
図4(a)の上下方向の幅よりも小さく形成したりすることにより、小型化・軽量化を図っている。これにより、本実施形態のジョイントを使用する際の作業性の改善と製造コストの削減を実現している。
【0023】
これに対し、カップ部20の大幅な小型化・軽量化を図ることはあまり勧められない。通常、建設現場では、ジョイントで挟み込んだ鉄板の上を作業用車両等が頻繁に通過する。その際、鉄板は上下に振動するので、カップ部20としては、その振動を上から抑えるために十分な強度を有することが求められる。したがって、カップ部20の強度を維持しておくためには、カップ部20としては、大幅な小型化・軽量化を図ることなく、従来と略同様の構造のものを用いることが望ましい。
【0024】
次に、カップ部20について説明する。
図6(a)は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントにおけるカップ部20の概略平面図、
図6(b)はそのカップ部20の概略側面図である。
図7(a)は
図6に示すカップ部の概略底面図、
図7(b)は
図6(a)に示すカップ部のC−C矢視方向概略断面図である。カップ部20は、略円板状に形成された金属製のものである。このカップ部20は、
図1乃至
図3、
図6及び
図7に示すように、その上側の中央部に形成されたボルト用凹部21と、カップ部20の中心部を貫通するように形成された第二孔部22と、カップ部20の下面の所定位置に形成された四つの穴部(第二凹部)23と、各穴部23に嵌合された四つの金属製のピン24とを有する。本実施形態では、このカップ部20は、ピン24を除き、例えば鋳物で一体的に形成されている。また、ピン24としては鋼鉄製のものを用いている。
【0025】
カップ部20の上面の周端部には丸みが付けられている。本実施形態では、このカップ部20の直径をベース部10の直径よりも若干小さくしている。例えば、カップ部20の直径は約126mm、その厚さは約26mmである。但し、一般に、カップ部20の直径は、ベース部10の直径と同じ又は大きくてもよい。また、第二孔部22は、ボルト30のネジ部を通すためのものであり、ボルト用凹部21の底面においてカップ部20の中心部を貫通するように形成されている。ボルト用凹部21の径は第二孔部22の径よりも大きい。例えば、ボルト用凹部21の直径はその上側で約52mm、その底面で約36mmであり、第二孔部22の直径は約18mmである。ボルト用凹部21は、ボルト30の上部に成形されているネジ頭部を格納する役割を果たす。このため、ボルト用凹部21の径を、ボルト30のネジ頭部をボルト用凹部21に格納した状態でそのネジ頭部にレンチをはめることができるような大きさに設計している。
【0026】
鋼鉄製のピン24,24,24,24は、
図7(a)に示すように、カップ部20の下面の中心位置から左斜め上方向、右斜め上方向、左斜め下方向、右斜め下方向へ所定間隔、本実施形態では等間隔をおいた位置に設けられている。具体的に、ピン24が設けられている位置は、カップ部20の中心位置から約50mm離れている。各ピン24の一方の端部は略円錐状に形成され、その他の部分は略円筒状に形成されている。
図8は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントにおけるピン24の概略側面図である。このピン24は、
図8に示すように、略円錐状に形成されたピン下部24aと、略円筒状に形成されたピン上部24bとから構成される。ピン上部24bの長さは約10.8mm、ピン全体の長さは約15.5mmである。ピン下部24aの半頂角は約46度である。また、ピン上部24bの直径は約9mmであり、ピン上部24bとピン下部24aとのは間に約0.45mm程度の段差が設けられている。更に、ピン上部24bについては、その上面部の周囲が約30度に面取り加工されている。
【0027】
カップ部20の下面の所定位置には、
図7(b)に示すように、ピン上部24bを嵌め込むための穴部(第二凹部)23が形成されている。この穴部23は、先端のテーパーが30度であるドリルで作製されている。ピン上部24bをその穴部23に嵌合した後、
図7(a)に示すように、当該ピン24の周囲におけるカップ部20の3箇所にポンチ打ち27を施すことにより、当該ピン24はカップ部20にしっかり固定される。このとき、
図6(b)に示すように、略円錐状に形成されたピン24の先端はカップ部20の下端面よりも下側に約4mm程度突出している。ジョイントの使用時には、カップ部20をハンマーで叩いてピン24を敷き鉄板に刺す作業が行われる。尚、ピン24を嵌め込む穴部23の上側には、貫通孔25が形成されている。この貫通孔25は当該ピン24を抜く際に利用される。
【0028】
また、
図7(a)に示すように、カップ部20の下面において隣り合うピン24の間には、突起部11,11の上端部が入り込めるような突起部用凹部26,26,26,26が形成されている。このように四つの突起部用凹部26,26,26,26を形成したことにより、カップ部20の軽量化を図ることができる。
【0029】
更に、
図1、
図2(a)、
図3、
図6(a)及び
図7(b)に示すように、カップ部20の上面には、カップ部20の中央を中心とする円形の溝28が形成されている。この円形の溝28の直径は約80mmであり、その溝28の幅及び深さはともに約3mmである。この溝28は、雨天時におけるスリップ止めの役割を果たす。また、カップ部20の上面におけるボルト用凹部21の周端部には、ゲージ用溝29が形成されている。自動車等が本実施形態のジョイント上を何度も通過すると、カップ部20の上面が徐々に磨耗し、やがてカップ部20の上面がボルト30のネジ頭部と同じ高さになってしまう。その後も、そのジョイントを使用し続けると、ボルト30のネジ頭部が痛んだり、割れたりするおそれがある。これを回避するため、本実施形態では、ゲージ用溝29を利用して、カップ部20の使用限界を判断することにしている。すなわち、予めゲージ用溝29の深さを、そのゲージ用溝29の底面がボルト30のネジ頭部よりも上側に位置するような所定の値に設定しておく。そして、使用者は、ジョイントの使用中、定期的に、ゲージ用溝29を監視し、ゲージ用溝29が磨耗して無くなってしまったと判断したときに、カップ部20を交換する。
【0030】
尚、本実施形態では、ベース部10とカップ部20には、塗装を施している。但し、塗装の代わりに、めっきを施してもよい。
【0031】
次に、ボルト30、角ナット40及び蓋部50について説明する。
図9(a)は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントにおけるボルト30の概略斜視図、
図9(b)はそのボルト30の概略平面図、
図9(c)はそのボルト30の概略側面図である。
図10(a)は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントにおける角ナット40の概略斜視図、
図10(b)はその角ナット40の概略平面図、
図10(c)はその角ナット40の概略側面図である。
図11(a)は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントにおける蓋部50の概略斜視図、
図11(b)はその蓋部50の概略平面図である。また、
図12(a)は
図5(a)における第一凹部13の概略拡大平面図、
図12(b)は
図5(b)における第一凹部13の概略拡大断面図である。更に、
図13は角ボルト40及び蓋部50が取り付けられたベース部10の概略断面図である。
【0032】
ボルト30は、
図9に示すように、ネジ部31と、ネジ部31の先端に形成されたネジ頭部32とを有する。ネジ頭部32の形状は例えば六角形である。すなわち、ボルト30として六角ボルトを用いている。具体的に、ボルト30の長さは約70mm、太さは約16mmである。また、ネジ頭部32の対辺距離は約24mm、対角距離は約27mm、その高さは約10mmである。一方、角ナット40としては、
図10に示すように、六角ナットを用いている。具体的に、角ナット40の高さは約14mm、対辺距離は約24mm、対角距離は約27mmである。また、蓋部50としては、
図11に示すように、平ワッシャー(座金)を用いている。この平ワッシャーの外径は約34mm、内径は約19mm、厚さは約3mmである。本実施形態では、蓋部50として、専用のものを製造するのではなく、市販のワッシャーを使用している。尚、ボルト30、角ナット40及び蓋部50としては、高張力の鋼で作製された強度の高いものを用いている。
【0033】
角ナット40は、
図13に示すように、ベース部10の下側から第一凹部13の角ナット挿入部131に挿入される。ここで、角ナット挿入部131は、角ナット40の形状と類似した形状、すなわち、本実施形態では六角形の形状を有する。勿論、角ナット40はその中心軸が第一孔部14の中心軸と略平行となるように角ナット挿入部131に挿入される。本実施形態では、角ナット挿入部131は、角ナット40が挿入されたときに角ナット40がその中心軸の周りに回動しないように且つ角ナット40との間に隙間を有するように設計されている。具体的に、
図12に示すように、角ナット挿入部131の深さは約15mm、その対辺距離は約25mm、その対角距離は約28mmである。これにより、角ナット40を角ナット挿入部131に挿入しても、角ナットはしっかりとは固定されず、容易に取り出すことができる。すなわち、角ナット40は、角ナット挿入部131内で自由に回動することができないが、ベース部10を動かせば、ガタつくようになっている。また、本実施形態では、角ナット挿入部131の下側に形成された蓋部嵌装部132は、その深さが角ナット40の高さよりも浅く設計されている。この蓋部嵌装部132は略円筒形状に形成されており、その直径は、蓋部50の外径と同じく約34mmであり、その深さは約8mmである。したがって、角ナット40を第一凹部13内に収容した場合、
図13に示すように、第一凹部13には、角ナット40が水平方向に少し移動できるだけの隙間だけでなく、垂直方向にも少し移動できるだけの隙間が形成される。
【0034】
本実施形態では、角ナット40を第一凹部13内に収容する作業はとても簡単である。まず、作業者は、ベース部10をその下面が上を向いた状態にした後、角ナット40を角ナット挿入部131に挿入する。このとき、作業者は、例えば角ナット40の中心軸と第一孔部14の中心軸とが正確に一致しているかどうか等を気にする必要はない。次に、作業者がハンマー等を用いて蓋部50を蓋部嵌装部132に嵌め込んだ後、ベース部10をその上面が上を向いた状態に戻すと、
図13に示すように、角ナット40は第一凹部13内に収容される。ここで、蓋部嵌装部132の深さが角ナット40の高さよりも浅いので、ベース部10をその上面が上を向いた状態にしても、角ナット40の少なくとも一部は第一凹部13内に留まったままである。こうして、角ナット40は、その中心軸と第一孔部13の中心軸とが略一致しているが、自由には回転できない状態(遊びがある状態)でベース部10に装着される。
【0035】
ボルト30のネジ部31は、
図3に示すように、第二孔部22と第一孔部14とが一致するようにしてカップ部20をベース部10の上に配置した状態で、カップ部20の上面側から第二孔部22及び第一孔部14を通して角ナット40にねじ込まれる。ところで、本実施形態では、角ナット40を上記のように完全に固定しない状態でベース部10に装着しているが、ボルト30を角ナット40に容易にねじ込むことができる。例えば角ナット40が少し傾いていてボルト30の中心軸と角ナット40の中心軸とが完全に一致していなかったとしても、角ナット挿入部131には角ナット40が少し動ける遊びが設けられているので、カップ部10の上面側から第二孔部22及び第一孔部14を通してボルト30を角ナット40にねじ込むと、角ナット40はその中心軸がボルト30の中心軸と一致するようにボルト30の動きに追従することができるからである。こうして、ボルト30を角ナット40にねじ込むと、ボルト30のネジ頭部32はボルト用凹部21に格納される。
【0036】
次に、本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントの取付け方法について説明する。
図14は本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントの取付け方法を説明するための図である。ここでは、本実施形態のジョイントを用いて、二枚の敷き鉄板を挟み込んでつなぐ場合を考える。通常、一枚の敷き鉄板のサイズは、縦6m、横1.5m、厚さ22mmであり、その重量は1620kgである。実際の建設現場では、複数枚の敷き鉄板を敷き詰めることになるが、この場合、隣り合う敷き鉄板については、本実施形態のジョイントを、長辺側に3個、短辺側に2個取り付けることになる。
【0037】
本実施形態のジョイントでは、蓋部50として平ワッシャーを用いており、その平ワッシャーの中央には孔が空いているため、第一凹部13の下側は密閉されていない。例えばジョイントの設置箇所が雨でぬかるんでいる場合、このジョイントをそのまま使用すると、泥水が平ワッシャーの孔から角ナット挿入部131内に入り込んでしまうので、その泥水が原因でボルト30を角ナット40にねじ込むことができなくなってしまうことが起こり得る。そこで、本実施形態では、ジョイントを使用する際には、
図3に示すように、平ワッシャーの上にシール70を貼り付けることにしている。ここでは、シール70として例えば紙製のものを用いている。これにより、第一凹部13の下側を密閉することができるので、外部から土や泥水等が第一凹部13内に入り込むのを防止することができる。
【0038】
まず、最初の敷き鉄板P1をクレーンで吊り上げ、建設現場の所定の位置に移動して地面に降ろす。次に、作業者は、その敷き鉄板P1の所定端部の近傍にベース部10を配置する。具体的に、二つの突起部11,11を結ぶ直線によってベース部10の上面を二つの表面領域に区分したときにその二つの表面領域のうち一方の表面領域が敷き鉄板P1と対向するようにベース部10を配置する。そして、作業者は、ベース部10の側面をハンマーで叩くことにより、
図14(a)に示すように、ベース部10を敷き鉄板P1の下に差し込んで、敷き鉄板P1の端縁を二つの突起部11,11及び壁部12に当接させる。
【0039】
次に、二枚目の敷き鉄板P2をクレーンで吊り上げ、ベース部10の上方に移動する。そして、その敷き鉄板P2を、最初の敷き鉄板P1が載せられている表面領域と反対側の表面領域において突起部11,11の側面部110,110及び壁部12の側面部120に接触させながら降下させる。その後、敷き鉄板P2の端縁を突起部11,11及び壁部12に当接させた状態のまま、敷き鉄板P2を地面に倒す。このとき、敷き鉄板P2が突起部11,11からずれたり、ベース部10から離れたりすることが起こり得る。そのような場合には、作業者がバールを敷き鉄板P2に差し込んで鉄板を持ち上げて滑らせることにより、敷き鉄板P2を突起部11,11に当接させるようにすればよい。こうして、
図14(b)に示すように、二枚の敷き鉄板P1,P2は、ベース部10の突起部11,11(壁部12)を間に挟んだ状態で、一定間隔(約25mm)をもって配置される。尚、本実施形態では、各突起部11の上面に目立つ色のペイントや蛍光色を発するペイントを塗布しているので、作業者は夜間であっても突起部11,11の位置を確認しやすいという利点がある。
【0040】
次に、作業者は、カップ部20を、
図14(c)に示すように、第二孔部22が第一孔部14と一致するようにベース部10上に被せる。このとき、各ピン24の先端が二つの敷き鉄板P1,P2のいずれかの端部上面に突き当たるように、且つ、各突起部11の上端部が四つの突起部用凹部26,26,26,26のいずれかの下方に入り込むように、カップ部20の向きを調整する。その後、作業者は、ボルト30のネジ部31を、カップ部20の上面側から第二孔部22に入れる。ここで、ネジ部31には、ネジ頭部32の下面を受け止めるワッシャー60を挿入している(
図3参照)。ワッシャー60としては、スプリングワッシャーや平ワッシャーを使用することができる。作業者は、ネジ頭部32にレンチをはめ込み、そのレンチを用いてボルト30を角ナット40にねじ込む。ここで、本実施形態のジョイントでは、角ナット40を完全に固定しない状態でベース部10に装着しているため、ボルト30の中心軸と角ナット40の中心軸とが完全に一致していないということも有り得る。しかし、この場合であっても、角ナット挿入部131には角ナット40が少し動ける遊びが設けられているため、ボルト30をねじ込んだ際に、角ナット40はその中心軸がボルト30の中心軸と一致するようにボルト30の動きに追従することができる。このように、本実施形態のジョイントでは、ボルト30を角ナットにねじ込む作業を何ら問題なく行うことができる。
【0041】
次に、作業者は、ハンマーで各ピン24が設けられたカップ部20の部位を上から強く叩き、各ピン24を敷き鉄板P1,P2に食い込ませる。その後、再度、レンチを用いてボルト30を角ナット40にねじ込む。ここで、ボルト30と角ナット40とを締め付けたときに、ベース部10にはその締付けによる引張荷重がかかるが、本実施形態では、ベース部10に壁部12及びリブ17を設け、ベース部10の中心部の厚さを厚くしているので、ベース部10はその引張荷重に十分に耐えることができる。こうして、
図14(d)に示すように、二枚の敷き鉄板P1,P2がカップ部20とベース部10によって締め付けられると共に各ピン24の先端が敷き鉄板P1,P2の端部上面に食い込むようになるので、二枚の敷き鉄板P1,P2をしっかりとつなぐことができる。尚、ジョイントの取付け完了後、敷き鉄板P1,P2上を車両等が何度も走行すると、
図14(d)に示すように、ベース部10は地面に沈み込むようになる。
【0042】
尚、四枚の敷き鉄板の角部が集まる箇所に本実施形態のジョイントを適用することも可能である。この場合、四つのピン24がそれぞれ、別の敷き鉄板に突き当たるようにカップ部20をベース部10上に被せることにより、本実施形態のジョイントで四枚の敷き鉄板を挟み込んでつなぐことができる。
【0043】
次に、本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントにおいて角ナット40を交換する手順を説明する。
【0044】
本実施形態のジョイントで敷き鉄板を挟み込むと、角ナット40にはボルト30の締付けによる大きな引張荷重がかかる。このため、本実施形態のジョイントを何度も使用していると、角ナット40の内側のネジが損傷してしまうことがある。角ナット40が損傷した場合には、作業者は角ナット40の交換作業を行うことになる。この交換作業では、まず、作業者は、ベース部10の第一孔部14にベース部10の上側からボルト30を入れ、ボルト30の先端部を角ナット40にねじ込む。次に、作業者は、そのボルト30のネジ頭部32を上からハンマーで強く叩く。これにより、角ナット40を蓋部50に強く当てて蓋部50を押し出すことができるので、蓋部50を蓋部嵌装部132から簡単に取り外すことができる。そして、ボルト30を角ナット40から外せば、角ナット40をベース部10から取り出すことができる。その後、作業者は新たな角ナット40を角ナット挿入部131に挿入し、ハンマー等を用いて蓋部50を蓋部嵌装部132に嵌め込む。このように、角ナット40の交換は誰でも容易に行うことができる。
【0045】
本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントでは、ベース部の下側の中央部に形成された第一凹部は、角ナットの形状と類似した形状を有する角ナット挿入部と、角ナット挿入部の下側に形成された蓋部嵌装部とを備えており、角ナット挿入部は、角ナットが挿入されたときに角ナットがその中心軸の周りに回動しないように且つ角ナットとの間に隙間を有するように形成され、一方、蓋部嵌装部は、その深さが角ナットの高さよりも浅く形成されている。このため、本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントでは、作業者は角ナットを角ナット挿入部に挿入した後、蓋部をハンマー等で蓋部嵌装部に嵌め込むだけで、角ナットをベース部に装着することができるので、角ナットの装着作業はとても容易である。
【0046】
また、本実施形態の建設現場用敷き鉄板のジョイントでは、蓋部嵌装部を略円筒形状に形成し、蓋部として平ワッシャーを用いたことにより、蓋部として市販品を用いることができるので、製造コストの増大を抑えることができる。
【0047】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0048】
上記の実施形態では、ボルトとして六角ボルトを用いた場合について説明したが、ボルトとしては、ネジ頭部が特殊な形状を有するもの、例えば七角ボルト等を用いるようにしてもよい。この場合、そのボルトのネジ頭部を差し込むための専用の特殊ソケットを有するレンチ等を用いなければ、ボルトを回転することができないので、敷き鉄板の盗難を防止することができる。かかるボルトの例としては、実用新案登録第3202814号に係る盗難防止用ボルトを挙げることができる。
【0049】
また、上記の実施形態では、角ナットとして六角ナットを用いた場合について説明したが、角ナットとしては、四角ナット等、多角形のナットを用いることができる。この場合も、角ナット挿入部は、角ナットが挿入されたときに角ナットがその中心軸の周りに回動しないように且つ角ナットとの間に隙間を有するように設計されなければならない。
【0050】
更に、上記の実施形態では、蓋部として平ワッシャーを用いた場合について説明したが、蓋部としては、第一凹部の口を下側から塞ぎ、角ナットを第一凹部内に閉じ込めておくことができるものであれば、円盤状や多角形状等、どのようなものを用いてもよい。この場合、蓋部嵌装部としては、蓋部を嵌め込むことができるように蓋部と略同じ形状に形成される。また、孔の空いていない蓋部を用いると、蓋部として平ワッシャーを用いた場合のように平ワッシャーにシールを貼り付ける必要がなくなる。
【0051】
また、上記の実施形態では、ハンマー等を用いて蓋部50を蓋部嵌装部132に嵌め込む場合について説明したが、専用の治具を用いて蓋部50を蓋部嵌装部132に嵌め込むようにしてもよい。
図15は蓋部50を蓋部嵌装部132に嵌め込む際に使用する専用治具の概略斜視図である。
図16(a)はその専用治具の支持第具の概略側面図、
図16(b)はその専用治具の押具の概略側面図、
図16(c)はその押具の概略平面図である。
図17はその専用治具の使い方を説明するための図である。この専用治具200は、蓋部50として平ワッシャーを用いる場合に使用される。専用治具200は、鉄製のものであり、
図15に示すように、ベース部10を支持するための支持具210と、平ワッシャーを略均一な力で押し込むための押具220とから構成される。支持具210は、
図15及び
図16(a)に示すように、ボルトに類似した形状をしており、底部211と、軸部212とを有する。底部211は円筒状に形成されている。この底部211の直径は約44mm、その高さは約10mmである。底部211の上面中央には、軸部212が一体的に形成されている。軸部212の直径は約12mm、その長さは約50mmである。すなわち、軸部212の直径は第一孔部14の直径よりも若干小さい。一方、押具220は、
図15、
図16(b)及び
図16(c)に示すように、本体部221と、凸部222とを有する。本体部221は円筒状に形成されており、その直径は約44mm、その高さは約15mmである。本体部221の上面中央には、凸部222が一体的に形成されている。凸部222の形状は蓋部50として用いられる平ワッシャーと略同じ形状に形成されている。例えば、凸部222の直径は約34mm、その高さは約2mmである。また、押具220にはその中心軸に沿って貫通孔223が形成されている。この貫通孔223の直径は約17mmである。
【0052】
この専用治具200を用いて平ワッシャーを蓋部嵌装部132に嵌め込む作業を行う場合には、まず、ベース部10の底面を上にした状態でベース部10の第一孔部14を軸部212に通すことにより、
図17(a)に示すように、ベース部10を支持具210で支持する。このとき、軸部212は第一凹部13から外に突出している。次に、
図17(b)に示すように、平ワッシャー(蓋部50)の孔を軸部212に通して、平ワッシャーを蓋部嵌装部132に配置する。その後、凸部222を下側に向けた状態で押具220の貫通孔223を軸部212に通すことにより、
図17(c)に示すように、平ワッシャーと押具220の凸部222とを相対させる。最後に、押具220の本体部221の上面をハンマーで叩くと、平ワッシャーの表面は押具220の凸部222から略均一な力を受けて、蓋部嵌装部132に良好に嵌め込まれる。このような専用治具200を用いることにより、蓋部50としての平ワッシャーの嵌め込み作業を容易に行うことができ、また、平ワッシャーを蓋部嵌装部132に略水平の状態で容易に嵌め込むことができる。
【0053】
更に、上記の実施形態では、カップ部の上面におけるボルト用凹部の周端部にゲージ用溝29を形成した場合について説明したが、ゲージ用溝29を形成する位置は、ボルト用凹部の周端部に限られるものではなく、カップ部の上面であればどの位置であってもよい。また、上記の実施形態では、ゲージ用溝29をリング状に形成した場合について説明したが、ゲージ用溝29の形状はこれに限られるものではない。例えば、ゲージ用溝29は、その平面形状が略方形状、略円形状又は略星形状等であるような溝であってもよい。更に、上記の実施形態では、カップ部の上面に、スリップ止め用の溝28とゲージ用溝29とを形成した場合について説明したが、溝28とゲージ用溝29のうち何れか一方だけを設けるようにしてもよい。この場合、その設けた方の溝が、設けなかった方の溝の役割をも果たすことができる。尚、溝28とゲージ用溝29の両方を省略することも可能である。
【解決手段】第一凹部13は、ベース部10の下側の中央部に形成されている。第一凹部13は、角ナット40の形状と類似した形状を有する角ナット挿入部131と、角ナット挿入部131の下側に形成された蓋部嵌装部132とを備えている。角ナット挿入部131は、角ナット40が挿入されたときに角ナット40がその中心軸の周りに回動しないように且つ角ナット40との間に隙間を有するように形成され、蓋部嵌装部132は、その深さが角ナット40の高さよりも浅く形成されている。角ナット40を角ナット挿入部131に挿入した後、ハンマー等を用いて蓋部50を蓋部嵌装部132に嵌め込むことにより、角ナット40がベース部10に装着される。