特許第6641689号(P6641689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641689
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】録音再生システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20200127BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20200127BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20200127BHJP
   G10K 15/02 20060101ALI20200127BHJP
   G11B 31/00 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   G10K15/04 302F
   H04Q9/00 301E
   H04M11/00 301
   G10K15/02
   G11B31/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-257233(P2014-257233)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118609(P2016-118609A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003676
【氏名又は名称】ティアック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 茂之
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−179845(JP,A)
【文献】 実開昭59−017049(JP,U)
【文献】 再公表特許第2014/103312(JP,A1)
【文献】 米国特許第9094636(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0248036(US,A1)
【文献】 池野 一成,Wi−Fiは機能豊富で便利リアルタイムでの音声モニターも実現してほしい,ビデオサロン 12月号,日本,北原 浩 株式会社玄光社,2014年12月 1日,第68巻、第6号,p.77
【文献】 山口 博士,録音システムにおける信号入力レベルのリモコン化,ソニー公開技報集 Vol.8 No.8,日本,ソニー(株)Sony Corporation,1999年 8月25日,第8巻、第8号,417-1〜417-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
G10K 15/02
G11B 31/00
H04M 11/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル録音再生装置と携帯機器からなる録音再生システムであって、
前記携帯機器は、
無線LANモジュールと、
録音に関する複数の設定項目に対する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する携帯機器側メモリと、
を備え、
前記ポータブル録音再生装置は、
無線LANモジュールと、
オーディオ信号を入力する入力手段と、
録音に関する複数の設定項目に対する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する装置側メモリと、
録音パラメータの設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録媒体に記録する処理手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器側メモリ及び前記装置側メモリに記録された複数の設定値セットの中からユーザによって選択された設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録する
ことを特徴とする録音再生システム。
【請求項2】
請求項1記載の録音再生装置システムにおいて、さらに、
前記ポータブル録音再生装置は、
再生パラメータの複数の設定値を記録する第2メモリ
を備え、
前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器から無線送信された選択コマンドに応じ、前記第2メモリに記録された複数の設定値の中から選択された設定値を用いて前記オーディオ信号を再生する
ことを特徴とする録音再生システム。
【請求項3】
ポータブル録音再生装置と携帯機器からなる録音再生システムであって、
前記携帯機器は、
無線LANモジュールと、
録音に関する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する携帯機器側メモリと、
を備え、
前記ポータブル録音再生装置は、
無線LANモジュールと、
オーディオ信号を入力する入力手段と、
録音に関する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する装置側メモリと、
録音パラメータの設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録媒体に記録する処理手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器から無線送信されたコマンドに応じて前記装置側メモリに記録された前記設定値セットを読み出して前記携帯機器に無線送信し、前記携帯機器側メモリに記録された前記設定値セット及び無線送信した前記設定値セットの中からユーザによって選択された設定値セットを調整した調整済設定値セットを前記携帯機器から受信し、受信した調整済設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録する
ことを特徴とする録音再生システム。
【請求項4】
請求項3記載の録音再生装置システムにおいて、さらに、
前記ポータブル録音再生装置は、
再生パラメータの設定値を記録する第2メモリ
を備え、
前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器から無線送信されたコマンドに応じて前記第2メモリに記録された前記設定値を読み出して前記携帯機器に無線送信し、前記携帯機器から無線送信された調整済設定値を受信し、受信した調整済設定値を用いて前記オーディオ信号を再生する
ことを特徴とする録音再生システム。
【請求項5】
請求項3、4のいずれかに記載の録音再生システムにおいて、
前記携帯機器は、前記設定値をインターネットを介して取得する
ことを特徴とする録音再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポータブル録音再生装置に関し、特に無線LAN機能を備えたポータブル録音再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の録音再生装置では、録音条件を規定するパラメータの設定は、録音再生装置のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を操作してメニュー項目から設定画面を表示して設定する、あるいはリモコン操作によりモニタやテレビ等に設定画面を表示して設定する方法が用いられている。
【0003】
但し、ポータブルの録音再生装置では、モニタやテレビに設定画面を表示することができないため、例えば録音開始や録音停止等、遠隔操作できる機能に制限があり、遠隔操作による録音パラメータの設定が困難であるのが実情である。
【0004】
特許文献1には、録音再生機能付音響信号処理装置におけるプリセット値の設定方法について記載されており、複数のプリセット値(設定パラメータ)を着脱可能なデータメモリに記録しておき、必要なときにデータメモリを装置本体にセットし、複数の設定パラメータの中から必要なパラメータを読み出して設定することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、複数のカメラを接続してコントロールするカメラ制御装置におけるプリセット情報の設定方法について記載されており、カメラ及びカメラ制御装置の両方に、それぞれ異なる複数のプリセット情報を保持しておき、カメラ制御装置に保持されているプリセット情報を各カメラに反映させ、あるいは指定のカメラから読み出したプリセット情報を他のカメラに反映させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−344594号公報
【特許文献2】特開2010−114522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ポータブル録音装置で複数のバンドが出演するライブの録音を行う場合を想定する。リハーサルあるいは本番において、その都度、各種録音パラメータの設定を行い、かつ、適切な位置にポータブル録音装置を設置して、リモコンが利用できる場合には遠隔操作で録音の開始及び停止を行っている。
【0008】
しかしながら、バンドによって音量が異なるため録音レベルを変えたい、あるいは録音フォーマットを変えたいと欲する場合が少なくないが、これに対応するためには容易に操作できる位置にポータブル録音装置を配置せざるを得ず、たとえリモコンによる遠隔操作ができたとしても最適な位置に設置できないジレンマが生じる。
【0009】
従って、ポータブル録音再生装置を最適な位置に設置できるとともに、簡易に録音再生装置の録音パラメータを遠隔操作で設定できる技術が望まれており、再生パラメータについても同様である。
【0010】
本発明の目的は、遠隔操作で録音パラメータや再生パラメータを設定することができる無線LAN機能を備えたポータブル録音再生装置及び録音再生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポータブル録音再生装置と携帯機器からなる録音再生システムであって、前記携帯機器は、無線LANモジュールと、録音に関する複数の設定項目に対する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する携帯機器側メモリと、を備え、前記ポータブル録音再生装置は、無線LANモジュールと、オーディオ信号を入力する入力手段と、録音に関する複数の設定項目に対する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する装置側メモリと、録音パラメータの設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録媒体に記録する処理手段と、を備え、前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器側メモリ及び前記装置側メモリに記録された複数の設定値セットの中からユーザによって選択された設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録することを特徴とする。本発明において、さらに、前記ポータブル録音再生装置は、再生パラメータの複数の設定値を記録する第2メモリを備え、前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器から無線送信された選択コマンドに応じ、前記第2メモリに記録された複数の設定値の中から選択された設定値を用いて前記オーディオ信号を再生してもよい。
【0013】
また、本発明は、ポータブル録音再生装置と携帯機器からなる録音再生システムであって、前記携帯機器は、無線LANモジュールと、録音に関する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する携帯機器側メモリと、を備え、前記ポータブル録音再生装置は、無線LANモジュールと、オーディオ信号を入力する入力手段と、録音に関する複数の設定値の組み合わせからなる録音パラメータの設定値セットを記録する装置側メモリと、録音パラメータの設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録媒体に記録する処理手段と、を備え、前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器から無線送信されたコマンドに応じて前記装置側メモリに記録された前記設定値セットを読み出して前記携帯機器に無線送信し、前記携帯機器側メモリに記録された前記設定値セット及び無線送信した前記設定値セットの中からユーザによって選択された設定値セットを調整した調整済設定値セットを前記携帯機器から受信し、受信した調整済設定値セットを用いて前記オーディオ信号を記録することを特徴とする。本発明において、さらに、前記ポータブル録音再生装置は、再生パラメータの設定値を記録する第2メモリを備え、前記処理手段は、前記無線LANモジュールと携帯機器が無線接続された場合に、前記携帯機器から無線送信されたコマンドに応じて前記第2メモリに記録された前記設定値を読み出して前記携帯機器に無線送信し、前記携帯機器から無線送信された調整済設定値を受信し、受信した調整済設定値を用いて前記オーディオ信号を再生してもよい。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、前記携帯機器は、前記設定値をインターネットを介して取得する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遠隔操作で簡易にポータブル録音再生装置の録音パラメータを設定することができる。従って、ポータブル録音再生装置を所望の位置に設置しつつ、録音対象や周囲環境に応じて最適な録音パラメータを遠隔の位置から設定できるため、録音品質を向上させることができる。再生パラメータについても同様であり、最適な再生パラメータを遠隔の位置から設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態のシステム構成図である。
図2A】実施形態の録音パラメータ設定説明図(その1)である。
図2B】実施形態の録音パラメータ設定説明図(その2)である。
図2C】実施形態の録音パラメータ設定説明図(その3)である。
図2D】実施形態の録音パラメータ設定説明図(その4)である。
図3】実施形態の録音再生装置の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、ポータブル録音再生装置を例にとり説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のシステム構成図である。ポータブル録音再生装置(以下、単に録音再生装置と称する)10は、無線接続機能を備えた携帯機器と無線接続する。本実施形態では、無線接続機能を備えた携帯機器としてスマートフォン12を例示し、無線接続として無線LAN、より特定的にはWi−Fi接続を例示する。Wi−Fiモジュール等のWi−Fi通信機能を備えたスマートフォンは公知であり、無線ルータ等のアクセスポイントを介してインターネットに接続し得る。
【0020】
録音再生装置10は、公知の録音再生機能を備え、内蔵マイク22やライン入力端子24から入力されたオーディオ信号を処理してSDカード等の記録媒体に記録し、かつ、SDカードに記録されたオーディオ信号を再生して内蔵スピーカから出力する。また、録音再生装置10は、Wi−Fiモジュールを備え、スマートフォン12との間でWi−Fi接続する。録音再生装置10とスマートフォン12との間のWi−Fi接続は、基本的には1対1接続であるが、必要に応じて1対多接続でもよい。
【0021】
録音再生装置10のユーザは、所望の楽曲パートを演奏したオーディオ信号、あるいはライブ等でのバンド演奏のオーディオ信号を録音再生装置10の内蔵マイク22あるいはライン入力端子24に入力して録音する。図1では、ギター等の楽器14が示されているが、これ以外の任意のパート、例えばベースパート、ヴォーカルパート、ドラムパート等でもよい。録音再生装置10は、オーディオ信号を入力してSDカード等の記録媒体に記録して録音する。
【0022】
スマートフォン12は、Wi−Fiモジュールを備え、録音再生装置10とWi−Fi接続する。ユーザは、スマートフォン12にインストールされた所定のアプリケーション(録音再生装置10の監視や制御に必要なアプリケーション)を起動し、このアプリケーションを操作して、録音再生装置10の動作を制御する。すなわち、アプリケーションを操作することでスマートフォン12を録音再生装置10のリモコンとして機能させ、録音再生装置10の録音開始や録音停止、再生開始や再生停止等を指示する。
【0023】
録音再生装置10は、スマートフォン12からWi−Fiを介して送信された各種コマンドを処理し、このコマンドに応じて録音あるいは再生を実行する。録音を行うに際し、録音再生装置10は、スマートフォン12との連携で、録音パラメータを設定し、この録音パラメータに従って録音を実行する。録音パラメータは録音に関わる任意のパラメータであるが、例示すると以下の通りである。
(1)録音レベル
(2)録音フォーマット
(3)サンプリング周波数、量子化ビット数
(4)フィルタ特性
(5)各種エフェクト処理(リミッタ処理やリバーブ処理を含む)
【0024】
通常、これらの録音パラメータは、プリセット値として予め録音再生装置10のメモリに記録されており、これを用いてオーディオ信号の録音を行う。
【0025】
しかしながら、ライブ録音においてバンド毎に録音パラメータを変更したいと欲しても、録音再生装置10の表示部に表示された設定画面を見ながら変更せざるを得ず、最適の位置及び最適の録音パラメータで録音することが困難である。
【0026】
そこで、本実施形態では、録音再生装置10とスマートフォン12とをWi−Fi接続し、録音再生装置10を所望の位置に設置するとともに、手元のスマートフォン12で録音再生装置10の録音パラメータの設定値を任意に設定可能とする。録音パラメータの具体的な設定方法としては、スマートフォン12から録音パラメータの設定値を録音再生装置10にWi−Fi接続経由で送信する、録音再生装置10に予め録音パラメータの複数の設定値を記録しておき、スマートフォン12側でこれらの中から所望の設定値を選択するコマンドをWi−Fi接続経由で送信する、録音再生装置10に予め録音パラメータを記録しておき、スマートフォン12でこの録音パラメータの設定値を取得して調整し、調整後の録音パラメータの設定値をWi−Fi接続経由で録音再生装置10に送信する等がある。
【0027】
図2A図2Dは、録音再生装置10とスマートフォン12の連携による録音パラメータの設定を示す模式図である。
【0028】
図2Aは、第1の方法の模式図である。録音再生装置10とスマートフォン12がWi−Fi接続すると、ユーザは、スマートフォン12にインストールされた所定のアプリケーションを起動し、アプリケーション内に予め設定されている録音パラメータの設定値を録音再生装置10に送信する。録音再生装置10は、受信した録音パラメータの設定値をメモリに格納し、格納した設定値を用いて録音を実行する。なお、予め録音再生装置10に録音パラメータがプリセットされていても、スマートフォン12から送信された設定値を優先させて録音パラメータとして用いる。録音再生装置10は、プリセット値に加え、スマートフォン12から送信された設定値をメモリに格納する。
【0029】
図2Bは、第2の方法の模式図である。録音再生装置10とスマートフォン12がWi−Fi接続すると、ユーザは、スマートフォン12にインストールされた所定のアプリケーションを起動する。所定のアプリケーションは、インターネット100の特定サイトにアクセスし、録音パラメータの設定値をダウンロードして取得し、この設定値を録音再生装置10に送信する。録音再生装置10は、受信した録音パラメータの設定値をメモリに格納し、格納した設定値を用いて録音を実行する。この場合、スマートフォン12は、予め録音パラメータをメモリに記録しておく必要がない。また、インターネット100の特定サイトに、録音再生装置10で録音しようとする環境毎に録音パラメータを用意しておけば、録音再生装置10の設置された環境に応じた録音パラメータの設定値をダウンロードして録音再生装置10に設定することができる。環境に応じた録音パラメータの設定値とは、例えば、
AAドームのスタンド席でロック音楽を録音する場合の推奨設定値、
BBアリーナのアリーナ席でバラードを録音する場合の推奨設定値、
CCライブハウスでジャズを録音する場合の推奨設定値、
等である。一般的には、録音場所及び楽曲ジャンル毎に設定値が決まるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、バンド名毎の設定値や大音量バンドの設定値等も可能であろう。
【0030】
図2Cは、第3の方法の模式図である。録音再生装置10とスマートフォン12がWi−Fi接続すると、ユーザは、スマートフォン12にインストールされた所定のアプリケーションを起動する。所定のアプリケーションは、録音再生装置10に対して、プリセット値として予めメモリに記録されている録音パラメータの設定値に関する情報を要求し、録音再生装置10はこの要求に応じて設定値情報をスマートフォン12に送信する。例えば、録音再生装置10のメモリにプリセット値として、複数の設定値
設定値I
設定値II
が予め記録されているものとすると、録音再生装置10は、設定値I、IIの情報をスマートフォン12に送信する。スマートフォン12の所定のアプリケーションは、録音再生装置10から送信された設定値情報を受信し、スマートフォン12の画面に表示する。ユーザは、この画面を視認して、いずれかの設定値を選択する。所定のアプリケーションは、ユーザの選択に応じた選択コマンドを録音再生装置10に送信する。録音再生装置10は、選択コマンドを受信し、この選択コマンドで選択された設定値をメモリから読み出し、読み出した設定値を用いて録音を実行する。
【0031】
設定値I、IIとしては、録音レベル、録音フォーマット、サンプリング周波数、フィルタ特性、エフェクト処理の少なくともいずれかでよく、あるいはこれらの組み合わせでもよい。例えば、
設定値I:録音レベル=L1、録音フォーマット=wav
設定値II:録音レベル=L2、録音フォーマット=mp3
等である。
【0032】
図2Dは、第4の方法の模式図である。録音再生装置10とスマートフォン12がWi−Fi接続すると、ユーザは、スマートフォン12にインストールされた所定のアプリケーションを起動する。所定のアプリケーションは、録音再生装置10に対して、プリセット値として予めメモリに記録されている録音パラメータの設定値を要求し、録音再生装置10はこの要求に応じて設定値をスマートフォン12に送信する。スマートフォン12の所定のアプリケーションは、録音再生装置10から送信された設定値を受信し、スマートフォン12の画面に表示する。ユーザは、この画面を視認して、録音パラメータの設定値を調整する。例えば、録音再生装置10から送信された設定値が、
録音レベル=L2
録音フォーマット=mp3
サンプリング周波数=48kHz、16ビット
であるところ、これを調整して
録音レベル=L1
録音フォーマット=wav
サンプリング周波数=96kHz、24ビット
と変更する等である。所定のアプリケーションは、ユーザの調整が終了すると、調整後の設定値を録音再生装置10に送信する。録音再生装置10は、調整済設定値を受信し、受信した設定値をメモリに記録するとともに、この調整済設定値を用いて録音を実行する。
【0033】
さらに、スマートフォン12の所定のアプリケーションは、調整済設定値を録音再生装置10に送信するとともに、インターネット100の特定サイトに対して調整済設定値をアップロードする。アップロードされた設定値は、他のユーザの利用に供される。
【0034】
なお、図2A図2Dに示す方法は、適宜組み合わせることも可能である。例えば、図2B図2Dを組み合わせ、インターネット100の特定サイトから録音パラメータの設定値をダウンロードするとともに、ダウンロードした設定値をユーザがスマートフォン12の所定のアプリケーションを用いて調整して録音再生装置10に送信し、かつ、調整済設定値をインターネット100の特定サイトにアップロードする等である。あるいは、図2A図2Cを組み合わせ、スマートフォン12から設定値を録音再生装置10に送信し、録音再生装置10で設定値をメモリに格納した後、スマートフォン12から選択コマンドを送信していずれかの設定値を選択して用いる等である。
【0035】
次に、本実施形態における録音再生装置10の具体的な構成について説明する。
【0036】
図3は、本実施形態の録音再生装置10の構成ブロック図である。録音再生装置10は、Wi−Fiモジュール20、内蔵マイク22、ライン入力端子24、内蔵スピーカ30、ディスプレイ32、LED33、操作ボタン34、システムコントローラ36、及びSDコネクタ42を備える。
【0037】
Wi−Fiモジュール20は、無線LANモジュールであり、スマートフォン12とのWi−Fi接続及びデータ送受を行うモジュールである。Wi−Fiモジュール20は、操作ボタン34の操作に応じて起動し、スマートフォン12とのWi−Fi接続を確立する。また、Wi−Fiモジュール20は、スマートフォン12からコマンドを受信し、受信したコマンドをシステムコントローラ36に供給する。このコマンドは、録音再生装置10の動作を制御するコマンドであり、録音開始、録音停止等である。また、Wi−Fiモジュール20は、システムコントローラ36から供給されたステータス情報をスマートフォン12に送信してもよい。
【0038】
内蔵マイク22は、Rチャンネル及びLチャンネルのステレオマイクであり、演奏された楽器等のオーディオ信号を入力し、インタフェース(I/F)26に出力する。
【0039】
ライン入力端子24は、外部機器からのオーディオ信号をライン入力し、インタフェース(I/F)26に出力する。
【0040】
インタフェース(I/F)26は、内蔵マイク22あるいはライン入力端子24からのオーディオ信号をコーデック(CODEC)28に出力する。
【0041】
コーデック(CODEC)28は、入力されたオーディオ信号をデジタル信号に変換し、圧縮及び符号化してシステムコントローラ36に供給する。また、システムコントローラ36から供給されたオーディオ信号を伸長及び復号化し、アナログオーディオ信号に変換して内蔵スピーカ30から出力する。コーデック(CODEC)28は、内蔵マイク22あるいはライン入力端子24からのオーディオ信号を処理するモジュールと、内蔵スピーカ30に出力するオーディオ信号を処理するモジュールに分離していてもよい。
【0042】
ディスプレイ32は、LCDパネルあるいは有機ELパネル等から構成され、録音再生装置10の各種ステータス情報、例えば録音/再生のタイムカウンタや録音レベルを表示する。
【0043】
LED33は、Wi−Fiモジュール20の起動状態や接続状態を示す。LED33は、Wi−Fiモジュールがオフでは消灯状態、Wi−Fiモジュール20がオンでは点滅状態(スタンバイ状態)、Wi−Fiモジュール20がオンであり、かつWi−Fi接続状態で点灯状態に移行する。
【0044】
操作ボタン34は、録音再生装置10の動作を指示するボタンである。操作ボタン34には、Wi−Fiのオン/オフを切り替えるWi−Fiボタン、録音/再生/停止ボタン、録音レベル調整ボタン、トラック選択ボタン等が含まれる。操作ボタン34をジョグダイヤルやディスプレイ32上のタッチボタンとして構成してもよい。録音再生装置10とスマートフォン12がWi−Fi接続され、スマートフォン12のアプリケーションで録音再生装置10の動作を制御可能であっても、これらの操作ボタン34は引き続き有効(アクティブ状態)に設定される。すなわち、システムコントローラ36は、スマートフォン12からのコマンドを解釈するとともに、操作ボタン34からの指示も同時に受け付ける。
【0045】
システムコントローラ36は、プロセッサ及びメモリで構成され、録音再生装置10の各部を制御する。システムコントローラ36は、ROM38に記録された処理プログラムに従い、RAM40をワーキングメモリとして用いて各種処理を実行する。各種処理には、Wi−Fiモジュール20の起動/オフ、スマートフォン12との接続確立、内蔵マイク22あるいはライン入力端子24から入力されたオーディオ信号の処理、当該オーディオ信号のSDカードへの記録、当該オーディオ信号の再生、ステータス情報のWi−Fiモジュール20への供給が含まれる。システムコントローラ36は、複数のプロセッサを備えていてもよく、PLD(プログラマブルロジックデバイス)と協働してもよい。
【0046】
SDコネクタ42には、SDカードが装着される。システムコントローラ36は、オーディオ信号をSDカードに記録することで録音する。また、SDカードに記録されているオーディオ信号を読み出し、コーデック(CODEC)28を介して内蔵スピーカ30から出力する。
【0047】
システムコントローラ36は、スマートフォン12からの要求コマンドに応じ、ROM38あるいはRAM40に格納された録音パラメータの設定値を読み出し、Wi−Fiモジュール20を介してスマートフォン12に送信する。また、スマートフォン12から録音パラメータの設定値が送信されると、Wi−Fiモジュール20を介してこれを受信し、ROM38あるいはRAM40に格納する。図2A図2Dの各方法に即して説明すると、以下の通りである。
【0048】
図2A及び図2Bの場合、システムコントローラ36は、スマートフォン12から送信された録音パラメータの設定値を受信し、ROM38あるいはRAM40に格納する。録音再生装置10の電源オフ後も設定値を有効に保持するために、不揮発性のROM38に設定値を格納しておくのが望ましい。その後、システムコントローラ36は、スマートフォン12から録音開始コマンドを受信すると、メモリに格納された録音パラメータの設定値を用いて録音を実行する。すなわち、録音パラメータの設定値で規定される録音レベル、録音フォーマット、サンプリング周波数、ビット数、フィルタ特性及びエフェクト処理を施してオーディオ信号をSDカードに記録する。
【0049】
図2Cの場合、システムコントローラ36は、スマートフォン12からの要求に応じ、ROM38あるいはRAM40に格納されている録音パラメータの設定値を読み出し、これらの一覧を作成して設定情報としてスマートフォン12に送信する。また、スマートフォン12から送信された選択コマンドを受信すると、この選択コマンドで選択された録音パラメータの設定値をROM38あるいはRAM40から読み出す。その後、システムコントローラ36は、スマートフォン12から録音開始コマンドを受信すると、読み出した録音パラメータの設定値を用いて録音を実行する。
【0050】
図2Dの場合、システムコントローラ36は、スマートフォン12からの要求に応じ、ROM38あるいはRAM40に格納されている録音パラメータの設定値を読み出し、スマートフォン12に送信する。また、スマートフォン12から送信された調整済設定値を受信すると、これをROM38あるいはRAM40に格納する。その後、システムコントローラ36は、スマートフォン12から録音開始コマンドを受信すると、メモリに格納された録音パラメータの設定値を用いて録音を実行する。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、図2Cの方法において、複数の録音パラメータの設定値が予め録音再生装置10に格納されており、いずれかの録音パラメータを用いて録音を実行した後、当該録音パラメータを録音再生装置10からスマートフォン10に送信し、スマートフォン12のメモリに保持してもよい。
【0053】
また、スマートフォン12に所定のアプリケーションをインストールする際に、インターネット100の特定のサイトからダウンロードするとともに、所定のアプリケーションに付随して、複数の録音パラメータも併せてダウンロードしてもよい。特定サイトからダウンロードされた録音パラメータの設定値は、図2Bに示す方法により録音再生装置10のメモリに格納される。複数の録音パラメータは、予め所定のアプリケーションを作成するメーカが提供してもよく、あるいは本システムを利用するユーザが有償もしくは無償で提供してもよい。静止画や動画、楽曲、書籍等の電子商取引は公知であるが、本実施形態によれば、録音パラメータの設定値に関する電子商取引が実現する。
【0054】
なお、楽曲データにその楽曲を録音したときの録音パラメータがメタデータとして添付されている場合に、当該楽曲データをダウンロードする際に録音パラメータを抽出し、抽出した録音パラメータをスマートフォン12から録音再生装置10に送信してもよい。
また、本実施形態では、無線接続としてWi−Fi接続を例示したが、ブルートゥース(登録商標)等を用いてもよい。
【0055】
本実施形態において、録音パラメータは、既述したように、録音レベル、録音フォーマット等の少なくともいずれかでよく、あるいはこれらの組み合わせでもよい。組み合わせの場合、録音パラメータをセットとして録音再生装置10あるいはスマートフォン12のメモリに複数保持しておく。録音再生装置10のメモリ制限によって、少ない録音パラメータセット数しか保持できなくても、スマートフォン12のメモリにより多くのセット数を保持することで多様な録音条件での録音が可能である。スマートフォン12から録音再生装置10に保持された複数の録音パラメータセットの中から所望のセットを選択してもよいし、スマートフォン12に保持された複数の録音パラメータセットの中から所望のセットを選択して録音再生装置10に無線送信してもよい。例えば、スマートフォン12のメモリに、(録音フォーマット、サンプリング周波数、量子化ビット数、録音レベル、フィルタ、リミッタ、エフェクト、その他)からなる録音パラメータセットとして、セット1、セット2、セット3、セット4を保持しておき、ユーザがこのうちセット1を選択して録音再生装置10に無線送信する等である。勿論、録音パラメータセットを構成するパラメータの組み合わせは、固定でもよいしユーザが適宜選択できるようにしてもよい。例えば、録音パラメータセットとして、(録音フォーマット、録音レベル)とする等である。
【0056】
また、本実施形態では、録音パラメータの設定について説明したが、録音パラメータに代えて、あるいは録音パラメータとともに、同様に再生パラメータをスマートフォン12からの無線送信によって設定することもできる。この場合、再生パラメータとして、再生フォーマットや再生レベル等を個別に、あるいはセットとして設定すればよい。スマートフォン12から録音再生装置10に保持された複数の再生パラメータセットの中から所望のセットを選択してもよいし、スマートフォン12に保持された複数の再生パラメータセットの中から所望のセットを選択して録音再生装置10に無線送信してもよい。また、録音再生装置10に保持された再生パラメータセットをスマートフォン12で調整し、調整済みの設定値として録音再生装置10に無線送信してもよい。再生パラメータセットは、録音再生装置10のROM38あるいはRAM40に録音パラメータセットとともに格納されていてもよく、録音パラメータセットとは別のメモリに格納されていてもよい。再生パラメータセットを格納するメモリを第2メモリとすると、第2メモリは録音パラメータセットを格納するメモリ(ROM38あるいはRAM)と同一でもよく、異なるメモリでもよい。また、スマートフォン12に所定のアプリケーションをインストールする際に、インターネット100の特定のサイトからダウンロードするとともに、所定のアプリケーションに付随して、複数の再生パラメータも併せてダウンロードしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 録音再生装置、12 スマートフォン、14 楽器、20 Wi−FIモジュール、22 内蔵マイク、24 ライン入力端子、30 内蔵スピーカ、32 ディスプレイ、33 LED、34 操作ボタン、36 システムコントローラ、42 SDコネクタ。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3