(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。実施形態において、同一部材や同一機能をする部材には、同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。なお、図面の見やすさを考慮して、構成要件を部分的に省略あるいは破断等して記載することもある。
本実施形態では、選択部を手動操作することで回生ブレーキ力の回生率が変更されるものにおいて、通常の回生率変更操作とは異なる所定操作を少なくとも1度行うことで、通常の回生率変更操作時とは異なるパターンで回生率を変更するように現在の回生段が目標回生段まで自動で変段されるものである。以下、現在の回生段とは、選択部が所定操作される直前の回生段との意味で使用する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る回生ブレーキ制御装置30が搭載された電動の車両1の全体構成を示す概略図である。車両1では、走行用動力源として回転電機であるフロントモータ11A及びリヤモータ11Bが、それぞれフロント側及びリヤ側に配置されている。車両1にはバッテリ12が搭載されている。バッテリ12には、予め直流電力が充電されている。バッテリ12には、車両外部の電源装置から充電可能とされている。バッテリ12から放電された電力は、フロントインバータ13A及びリヤインバータ13Bで交流変換した後、フロントモータ11A及びリヤモータ11Bにそれぞれ供給される。フロントモータ11Aから出力された動力は、フロントトランスアスクル14Aを介して左右のフロント駆動輪15Aにそれぞれ伝達される。リヤモータ11Bから出力された動力は、リヤトランスアスクル14Bを介して左右のリヤ駆動輪15Bにそれぞれ伝達される。
フロントモータ11A及びリヤモータ11Bを総称する場合には「モータ11」と称する。フロントインバータ13A及びリヤインバータ13Bを総称する場合には「インバータ13」と称し、フロント駆動輪15A及びリヤ駆動輪15Bを総称する場合には「駆動輪15」と称する。
【0010】
モータ11は、車両1の減速時や降板路等をアクセルオフで走行する場合に回生駆動され、発電機として機能する。モータ11は、回生操作が行われる場合でも回生駆動され、発電機として機能する。モータ11が回生機能する回生駆動時において、ブレーキフィーリングは、回生動作(回生ブレーキ)を与えられると共に、運動エネルギーをバッテリ12に電気エネルギーとして回収する。モータ11の回生駆動では、交流電力が発電され、インバータ13でそれぞれ直流変換された後、バッテリ12に充電される。このように車両1では、モータ11の回生駆動によって、運動エネルギーを電気エネルギーとしてバッテリ12に回収することで、エネルギーの有効利用がなされる。モータ11の回生ブレーキ力の大きさは、回生ブレーキ制御によって変更可能とされている。
車両1は、駆動輪15に制動力を与える制動部としてのブレーキ装置21を備えている。運転席の足元には、車速をコントロールするアクセルペダル17と、ブレーキ装置21を作動させるブレーキペダル18が配置されている。
【0011】
このような車両1の運転席には、運転者の操作によって走行モードを切り換え可能なシフト装置16が設けられている。
図2は、シフト装置16の周辺構成を真上側から示す模式図である。シフト装置16は、運転者によって操作されるシフトレバー16Aを備えている。シフトレバー16Aは、初期状態として図中にPで示すホームポジションに配置されており、この位置から矢印に沿って前後左右に移動可能に設けられている。シフト装置16は、運転者が矢印に沿って前後左右にシフトレバー16Aのシフトポジションを変更することにより、対応する走行モードや回生モードに切り換え可能に構成されている。
図2において、Nで示すNポジションはモータ11の動力を駆動輪15に伝達しないニュートラルモードであり、Dで示すDポジションはモータ11の動力を駆動輪15に伝達して前進走行を行う通常走行モードであり、Rで示すRポジションはモータ11の動力を駆動輪15に伝達して後退走行を行う後退モードを示している。Bで示すBポジションは、走行時(通常走行モード)においてモータ11の回生ブレーキ力の変更を段階的に行う回生モードを示している。シフト装置16は、運転者がシフトレバー16をBポジションに操作した後にシフトレバー16Aを開放すると、シフトレバー16Aが自動的にホームポジションに復帰するように構成されている。
【0012】
シフトレバー16Aの操作状態は、シフト装置16に設けられているシフトセンサ及びセレクトセンサによって検出される。シフトセンサはシフトレバー16Aの前後方向(
図2において上下方向)の操作状態を電圧信号として出力し、セレクトセンサはシフトレバー16Aの左右方向の操作状態を電圧信号として出力する。後述するように、回生ブレーキ制御装置30では、このようなシフトセンサ及びセレクトセンサから出力された電圧信号を取得することにより、シフトレバー16Aがどのポジションに操作されたかを把握可能に構成されている。
図3は、車両1の運転席に設けられたステアリング19に装備されているパドルスイッチ20の周辺構成を示す模式図である。パドルスイッチ20は、回生ブレーキ力を減少方向に段階的に切り換え可能なパドルプラススイッチ20A及び回生ブレーキ力を増加方向に段階的に切り換え可能なパドルマイナススイッチ20Bを備えている。パドルスイッチ20は選択部であり、運転者がステアリング19を握った状態で操作可能とされている。パドルスイッチ20は、運転者がハンドル側(手前側)に引き込み操作することで、操作信号を出力する電気的なスイッチである。パドルスイッチ20からの操作信号は、引き込み操作一回につき一度出力される。回生ブレーキ制御装置30は、この操作信号からパドルスイッチ20による操作状態や操作回数を把握可能とされている。
【0013】
図4は、シフトレバー16A及びパドルスイッチ20によって選択可能な回生ブレーキ力と回生段の関係を示す概念図である。ここで、回生ブレーキ力とは回生比率のことであり、回生比率とは一定速度で計測した際の回生量を示す。モータ11の回生ブレーキ力は、その大きさによってB0〜B5の6段階の回生段が選択されている。シフトレバー16Aによって選択可能な一連の回生段をまとめて第1の回生パターンとし、パドルスイッチ20によって選択可能な一連の回生段をまとめて第2の回生パターンとする。第2の回生パターンには、通常の回生率変更操作によるパターン1と、通常の回生率変更操作とは異なる所定操作によるパターン2とがそれぞれある。つまり、所定操作によるパターン2とは、第3の回生パターンでもある。
【0014】
ここでいう通常の回生率変更操作とは、所定時間内でパドルスイッチ20を一回操作することを指す。すなわち、通常の回生率変更操作とは、パドルプラススイッチ20A又はパドルマイナススイッチ20Bを一度操作する操作である。回生段は、このような通常の回生率変更操作が行われると、現在の回生段から1段階、下降または上昇するように構成されている。
所定操作とは、所定時間内にパドルスイッチ20を複数回連続して操作することを指す。すなわち、所定操作とは、パドルスイッチ20を基準速度よりも短い時間で複数回連続操作することである。本実施形態において、所定操作とは、パドルプラススイッチ20Aやパドルマイナススイッチ20Bを所定時間内に2回連続して操作する操作「ダブルクリック操作」のことを指す。パドルスイッチ20に対してダブルクリック操作が行われると、操作されたスイッチにより、回生段は、現在の回生段から回生ブレーキ力の増大方向または回生ブレーキ力の減少方向に自動変段するように構成されている。
回生ブレーキ力はB0からB5に向かうに従って強くなり、運転者の減速フィーリングや回生段が増大するように設定されている。回生ブレーキ力(回生比率)は、Bポジションへのシフトレバー16Aの操作回数及びパドルスイッチ20への操作回数に応じて回生ブレーキ力が段階的に変段するようになっている。つまり、回生ブレーキ力(回生比率)と回生段の関係は、回生段BAの時のブレーキ力が最も小さく、回生段BFに向かうに従い強くなるように設定されている。
【0015】
シフトレバー16Aによって選択可能な第1の回生パターンは、回生段D、B、BLから構成されている。回生段Dはシフトレバー16AをDポジションに操作することによって選択可能であり、回生ブレーキ力は初期値であるB2に相当している。回生段Bにはシフトレバー16AをDポジションからBポジションに一回操作することにより移行し、回生段Dより回生ブレーキ力が強いB3に設定されている。回生段BLにはシフトレバー16を更に一回Bポジションに操作することにより移行し、回生段Bより回生ブレーキ力が強いB5に設定されている。
本実施形態では、B2からB3への回生比率の変化量よりB3からB5への回生比率の変化量の方が大きくなるようにしている。このように、シフトレバー16Aで設定される回生段間における回生比率の変化量を、回生比率が高い回生段ほど大きく設定することによって、回生量を大きく変更する場合においても、シフトレバー16Aの操作によって、素早く運転者が望む回生量(回生ブレーキ力)を得ることができる。
またシフトレバー16Aは、パドルスイッチ20に比べて回生段数が少なくなっており、所定回生段を設定するための操作回数が少なくなるように設定されている。そのため、シフトレバー16ではパドルスイッチ20に比べて同じ回生量を得るためのシフト操作の回数が少なくなるため、少ない操作回数で回生ブレーキ力を容易に増減制御でき、運転者の操作負担の軽減に適している。
【0016】
パドルスイッチ20によって選択可能な第2の回生パターンの第1パターンは、回生段BA、BB、BC、BD、BE、BFの回生段から構成されており、第1の回生パターンに比べて回生段数が多くなっている。回生段BA、BB、BC、BD、BE、BFは、それぞれ回生ブレーキ力がB0、B1、B2、B3、B4、B5に相当しており、パドルプラススイッチ20A及びパドルマイナススイッチ20Bの操作に応じて一段ずつ移行できるようになっている。本実施形態において回生段BAは最小値、回生段BFは最大値を示す。
回生段B0〜B5の各々の回生比率の変化量は等しくしてもよい。このようにパドルスイッチ20によって選択される回生段間における回生比率の変化量を等しく設定することによって、段階的に回生量(回生ブレーキ力)を増減できるので、きめ細やかな回生制御が可能となる。つまり、本実施形態では、回生段および回生率が複数設定されている。
またパドルスイッチ20は、シフトレバー16Aに比べて回生段数が多くなっており、所定回生段を選択するための操作回数が多くなるように設定されていることからも、きめ細やかな回生ブレーキ力の制御に適している。
【0017】
パドルスイッチ20によって選択可能な第2の回生パターンの第2パターンは、パドルスイッチ20を所定操作たるダブルクリック操作した際に、現在の回生段が目標回生段まで段階的に自動変段するようになっている。目標回生段とは、回生ブレーキ力が最も大きいB5相当の回生段BFと、回生ブレーキ力が最も小さいB0相当の回生段BAをここでは指す。すなわち、パドルプラススイッチ20Aに対してダブルクリック操作した場合には、操作時の回生段から回生段BAに向かって連続して段階的に自動変段し、パドルマイナススイッチ20Bに対してダブルクリック操作した場合には、操作時の回生段から回生段BFに向かって連続して段階的に自動変段するようになっている。
また、本実施形態では、パドルスイッチ20による第2のパターンが選択された際の、車両1の状態に応じて回生段の自動変段速度を変更するようにしている。この自動変段速度の制御については、後述する。
【0018】
本実施形態では、パドルスイッチ20に対してダブルクリック操作と異なる操作がなされた場合、回生段の自動変段速度を変化させる制御をキャンセルするようになっている。例えばパドルスイッチ20に対してダブルクリック操作が行われて回生モードが第2パターンであるときに、パドルスイッチ20を通常操作時よりも長い時間、手前に引き込む操作がなされた場合、回生段の自動変段速度を変化させる制御がキャンセルされてDレンジ走行状態となる。また、シフトレバー16Aの操作によって第1の回生パターンであるときに、パドルスイッチ20を通常操作時よりも長い時間、手前に引き込む操作がなされた場合、回生モードがキャンセルされてDレンジ走行状態となる。本実施形態において、回生ブレーキの禁止条件が成立すると、回生モードがキャンセルされてDレンジ走行状態となるように設定されている。
【0019】
このように所定回生段を選択するための操作回数が異なるシフトレバー16A及びパドルスイッチ20を備えることにより、走行状態に応じて運転者の意図に沿った回生ブレーキ力の制御が可能になる。シフトレバー16Aではパドルスイッチ20に比べて同じ回生量を得るための操作回数が少なくなるため、少ない操作回数で回生ブレーキ力を容易に増減制御でき、運転者の操作負担の軽減に適している。逆に、パドルスイッチ20によるパターン1では、シフトレバー16Aに比べてシフト操作回数が多く設定されているため、きめ細やかな回生ブレーキ力の制御に適している。
【0020】
パドルスイッチ20によるパターン2(第3の回生パターン)では、現在の回生段が目標回生段まで自動変段されるので、パターン1のように一回の操作で一段ずつ変段する場合に比べて運転者が求める回生量に応じた減速感を得るまでの時間を短縮することができ、操作性とドライバビリティの向上を図ることができる。また、パドルスイッチ20は、ステアリング19を握った状態で操作できるので、特にステアリング19を左右に旋回操作するコーナリング時の減速感を調整する際の操作性が良く、スポーティーな走行時のドライバビリティが向上する。
すなわち、異なる操作方式で異なる操作回数によって異なる複数の回生パターンを切り替えることができるので、回生ブレーキ力の切り換えの自由度が上がり、多様な走行パターンに対応することができる。このため、通常操作とは異なる所定操作をすることで、回生段が段階的に自動で変段されるので、回生段を変更する毎に何度もパドルスイッチ20を操作しなくてもよくなり、操作性が向上し、ドライバビリティが向上する。
【0021】
このような複数の回生パターンに基づいた回生ブレーキ力の制御は、車両1に搭載された回生ブレーキ制御装置30にて実施される。
図5は、車両1に搭載された回生ブレーキ制御装置30の構成を機能的に示すブロック図である。
シフトレバー16Aの操作ポジションは、シフトセンサ及びセレクトセンサから出力された電圧信号を、シフトセンサ電圧検知部32及びセレクトセンサ電圧検知部33にて検出し、シフトレバー判定部34にて判定される。パドルプラススイッチ20A及びパドルマイナススイッチ20Bの操作は、パドルプラススイッチ検出部35及びパドルマイナススイッチ検出部36によって検出される。
【0022】
回生段判定部37は、シフトレバー判定部34、パドルプラススイッチ検出部35及びパドルマイナススイッチ検出部36のそれぞれの検出結果に基づいて、回生ブレーキ力の回生段を決定する。具体的には、回生ブレーキ力の初期回生段(B)を基準として、シフトレバー16AのBポジションへの操作回数、並びに、パドルプラススイッチ20A及びパドルマイナススイッチ20Bの操作回数や所定操作に応じて、切り換えるべき回生段(回生パターン)を決定する。
【0023】
回生段判定部37で回生ブレーキの回生段が決定されると、回生段表示制御部38はコンビネーションメータ22に、決定した回生段を表示して運転者に報知する。制御部となる回生ブレーキ制御部31は、回生段判定部37で決定された回生段になるように、フロントモータ制御部39及びリヤモータ制御部40を介してフロントモータ11A及びリヤモータ11Bを作動して回生ブレーキ力を制御する。
【0024】
回生ブレーキ制御装置30は、ブレーキペダル18の動作を検出するブレーキ動作検出部41と、バッテリ12の充電率Aを検出する充電率検出部42と、車両1の速度である車速(V)を検出する車速検出部43を備えている。
回生ブレーキ制御装置30は、ストローク判定部44と、充電率判定部45と、車速判定部46を備えている。ストローク判定部44は、ブレーキ動作検出部41から出力される電気信号からブレーキペダル18の踏込み量や踏込み速度等の作動状態を検出し、回生ブレーキ制御部31に出力する。本実施形態では踏込み量であるブレーキストロークSを検出するものとする。充電率判定部45は、充電率検出部42から出力される現在の充電率Aと予め設定された充電率所定値となる充電基準値A1とから、現在のバッテリ12の充電率Aが充電基準値A1以上であるか否かを判定する。車速判定部46は、車速検出部43が検出した車速Vと予め設定された所定速度V1とから、現在の車速Vが所定速度V1以下か否かを判定する。
回生ブレーキ制御部31は、ストローク判定部44からの判定結果、充電率判定部45の判定結果及び車速判定部46の判定結果に応じて回生時の自動変段速度を変更するように制御する。ここでは、自動変段速度の制御パラメータとして、ストローク判定部44からの判定結果、充電率判定部45の判定結果及び車速判定部46の判定結果の3つを用いているが、自動変段速度の制御パラメータとしては、これらの内の少なくとも1つを用いることでもよい。
【0025】
回生ブレーキ制御部31は、ブレーキ動作検出部41でブレーキペダル18が踏み込まれたことが検出され、ストローク判定部44により所定ストロークよりも大きく、パドルスイッチ20に対してダブルクリック操作がなされたときに、回生段の自動変段速度を大きくするように制御する。これは、ブレーキペダル18の踏込み量が大きい場合には、運転者は減速又は停止する意思があるものと見做し、現在の回生段を、回生ブレーキ力が増大する方向に自動で変段させるとともに、その速度を大きくするように制御する。
回生ブレーキ制御部31は、パドルスイッチ20に対してダブルクリック操作がなされ、車速検出部43で検出される車速Vが所定速度V1よりも低くなるに従い、回生段の自動変段速度を大きくするように制御する。これは、車速Vが低下することは、運転者に減速又は停止する意思があるものと見做し、速度が低くなるに従い回生ブレーキ力が増大する方向に自動で変段させるとともに、その速度を大きくするように制御する。
回生ブレーキ制御部31は、充電率検出部42で検出された充電率Aが充電基準値A1よりも高く、パドルスイッチ20に対してダブルクリック操作がなされた場合、回生段の自動変段速度を小さくするように制御する。これは、バッテリ12の充電率Aが充電基準値A1よりも高い場合には、モータ11を発電しても充電するには至らず、過充電になることを防止するためである。このため充電基準値A1とは、充電率100%よりも低い値である。
【0026】
以下、回生ブレーキ制御装置30で実行される自動変段速度の制御について、
図6に示すフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、既にモータ11の駆動により車両1がDレンジで前進走行しているものとする。
回生ブレーキ制御装置30は、ステップST1において、パドル自動変段が使用できるか否か、すなわち、自動変段許可中か否かを判定する。この判定としては、例えばバッテリ12の充電率Aが100%の場合を回生ブレーキの禁止条件としている場合には、充電率検出部42からの充電率Aから判定する。回生ブレーキの禁止条件として他の条件が設定されている場合には、その条件を読み込んで判定すればよい。
回生ブレーキ制御装置30は、自動変段許可中の場合にはステップST2に進み、ブレーキストロークSをストローク判定部44から取得し、ステップST3に進む。回生ブレーキ制御装置30は、ステップST3において、ブレーキストロークSに応じて回生段の自動変段速度を変更し、変更情報をメモリに記憶しておく。
回生ブレーキ制御装置30は、ステップST4において速度情報(車速V)を車速検出部43から取得し、車速判定部46で判定された速度判定値を取得し、ステップST5に進む。回生ブレーキ制御装置30は、ステップST5において、車速Vに応じた回生段の自動変段速度を変更し、変更情報をメモリに記憶しておく。
【0027】
回生ブレーキ制御装置30は、ステップST6においてバッテリ12の充電情報を充電率検出部42から取得し、充電率判定部45で判定された充電率Aを取得し、ステップST7に進む。回生ブレーキ制御装置30は、ステップST7において、充電率Aに応じた回生段の自動変段速度を変更し、変更情報をメモリに記憶しておく。
回生ブレーキ制御装置30は、ステップST8において、パドルスイッチ20により所定操作であるダブルクリック操作が行われたか否かを、パドルプラススイッチ検出部35又はパドルマイナススイッチ検出部36の検出値から判定する。回生ブレーキ制御装置30は、ダブルクリック操作が行われた場合には、ステップST9に進んで、ステップST3、ST5、ST7においてメモリに記憶した自動変段の変更情報に応じて、パターン2における自動変段の速度で自動変段するように、フロントモータ制御部39及びリヤモータ制御部40を介してフロントモータ11Aとリヤモータ11Bの作動を制御する。
【0028】
このように、パドルスイッチ20がダブルクリック操作されて現在の回生段を目標回生段まで自動変段する場合には、その自動変段速度を車両1の状態に応じて変更することで、操作性を向上させつつも、車両1の状態に応じた回生ブレーキ力を得ることができるので、よりドライバビリティが向上する。
特に本実施形態において、ブレーキペダル18の踏込み量が大きい場合には、現在の回生段を、回生ブレーキ力が増大する方向に自動で変段させるとともに、その自動変段速度を大きくするので、運転者が要求する減速感をより早く実現することができ、ドライバビリティが向上する。
また、回生ブレーキ制御部31は、車速Vが小さくなるに従い、現在の回生段の自動変段速度を回生ブレーキ力が増大する方向に自動で変段させるとともに、その自動変段速度を大きくするので、運転者が要求する減速感をより速く実現することができ、ドライバビリティが向上する。
回生ブレーキ制御部31は、充電率Aが充電基準値A1よりも高い場合には、現在の回生段の自動変段速度を回生ブレーキ力が減少する方向に自動で変段させるとともに、回生段の自動変段速度を小さくする。このため、バッテリ12が満充電に近い充電率領域における回生量を低減して過充電を防止することができる。
本実施形態では、回生ブレーキの禁止条件が成立すると、回生モードがキャンセルされてDレンジ走行状態となるので、回生ブレーキの禁止条件の1つである所定充電率以上の領域で、いきなり回生モードがキャンセルされることによる減速感の変化を低減することができ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0029】
本実施形態では、パドルスイッチ20がダブルクリック操作される前に、車両1の状態を検出し、ダブルクリック操作が行われると、ただちに駆動モータ11を制御して回生ブレーキ力を自動変更するので、パドルスイッチ20から減速感が得られるまでの応答性がよく、ドライバビリティがより良い。しかし、制御サイクルを向上させる必要が無い場合、例えば、高速走行時等においては、ダブルクリック操作が行われた後に、車両1の状態を検出し、当該検出結果に応じて回生段の自動変段速度を制御するようにしても良い。
【0030】
本実施形態において、ブレーキペダル18のストローク量が大きくなるに従い自動変段速度を大きくするように制御したが、ブレーキペダル18の踏込み速度が大きくなるほど自動変段速度を大きくするように制御してもよい。このような制御形態とすると、運転者が急いでブレーキペダル18を踏んでいる状況化において、回生ブレーキ力を素早く強めることができるので、ドライバビリティが向上する。
あるいはブレーキペダル18の踏込み操作の有無をブレーキ動作検出部41で検出し、ブレーキペダル18が踏まれた場合には、運転者に減速あるいは停止の意思があるものとする。そして、現在の回生段から回生ブレーキ力が増大する方向の目標回生段に向かって自動変段する自動変段速度を大きくするようにしても良い。
【0031】
本実施形態では、回生段を自動変段する選択部としてパドルスイッチ20を例示したが、選択部としては、これに限定するものではない。本実施形態では、シフトレバー16AをBポジションに操作すると、第1の回生パターンに切り替わる。しかし、シフトレバー16AをBポジションに所定時間内に複数回、例えば2度続けて変速操作をすることを所定操作とし、当該所定操作をすることで回生段が現在の回生段から目標回生段に向かって自動変段するようにしても良い。
【0032】
あるいは、シフト装置としては、
図7に示すように、Dレンジ走行時において、シフトレバー160Aを、Dレンジがあるシフトレーン161とは異なるシフトレーン162に移動させて前後方向に変速操作することで変速できるシフト装置160がある。このようなシフト装置160を車両1に適用する場合には、シフトレーン162でのシフトレバー160Aで変速操作をすると回生段が変段するようにしても良い。
この場合、例えばシフトレバー160Aをシフトレーン162でプラス方向に一度操作する通常の回生率変更操作を行うと、回生段が一段ずつ回生ブレーキ力の減少する方向に、シフトレバー160Aをシフトレーン162でマイナス方向に一度操作する通常の回生率変更操作を行うと、回生段が一段ずつ回生ブレーキ力の増大する方向に変段するようにする。つまり、第2の回生パターンの第1パターンを行えるようにする。
シフトレーン162において、所定時間内に、シフトレバー160Aをプラス方向に複数回操作すると、回生段が現在の回生段から回生ブレーキ力が減少する方向の目標回生段に向かって自動変段するようにする。また、所定時間内に、シフトレバー160Aをマイナス方向に複数回操作すると、回生段が現在の回生段から回生ブレーキ力が増大する方向の目標回生段に向かって自動変段するようにする。つまり、第2の回生パターンの第2パターンを行えるようにする。
このようなシフト装置160を選択部として用いても、通常の回生率変更操作とは異なる所定操作をすることで、回生段が段階的に自動で変段されるので、回生段を変更する毎に何度もパドルスイッチ20を操作しなくてもよくなり、操作性が向上し、ドライバビリティが向上する。
自動変段速度制御をキャンセルする場合には、例えばシフトレバー160AをDレンジが位置するシフトレーン161に戻す操作をすることで、行うようにすればよい。
【0033】
回生段の自動変段速度は、回生ブレーキ力が増大する方向に変段する場合には、ブレーキ力を早く作用させたい、あるいは減速感を早く運転者がほしいため、自動変段を早めることが望ましい。しかし、回生ブレーキ力が減少する方向に変段する場合には、ブレーキ力を抜く方向であるので、自動変段速度を早める必要は薄く、自動変段速度を早める制御を行うようにしなくてもよい。
【0034】
本実施形態では、走行用の動力源として回転電機であるモータ11を有する電動の車両1を例に説明したが、車両1としては、このようなものに限定されるものではなく、例えば回転電機と内燃機関を備えたハイブリッド型の電気自動車であっても良い。車両1の駆動方式としては4輪駆動を例示したが、2輪駆動であっても良い。ハイブリッドタイプの形式としては、シリーズハイブリッド方式、パラレルハイブリッド方式、シリーズ・パラレルハイブリッド方式、パワースプリット方式のいずれであっても良い。