特許第6641848号(P6641848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641848
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】油圧ユニット
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20200127BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20200127BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20200127BHJP
   F04C 14/24 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   F15B11/02 M
   F15B11/00 F
   F15B11/028 G
   F04C14/24 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-195372(P2015-195372)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67218(P2017-67218A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 正高
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−193706(JP,A)
【文献】 実公昭41−008757(JP,Y1)
【文献】 特表2004−509269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/30− 2/352
F04C 11/00−15/06
F04B 49/00−51/00
F15B 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータと遮断弁とを備えた外部装置に接続される油圧ユニットにおいて、
前記遮断弁を介して前記アクチュエータに接続され、前記遮断弁とタンクとを接続する第1流路と、
前記第1流路における前記遮断弁と前記タンクとの間に設けられた第1ポンプと、
前記タンクと、前記第1流路における前記第1ポンプと前記遮断弁との間に設けられた合流部とを接続する第2流路と、
前記第2流路に設けられたベーンポンプである第2ポンプと、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプを駆動し、インバータ制御されるモータと、
前記第2流路における前記第2ポンプと前記合流部との間に設けられた切換部と、
前記第2ポンプから吐出された油が前記合流部を介して前記第1流路に合流する状態と、前記第2ポンプから吐出された油が前記切換部を介して前記第1流路から分流する状態とに切り換える弁と、
前記第2流路における前記切換部と前記合流部との間に設けられ、前記第1流路から油が流入するのを防止する逆止弁と、
前記第1流路における前記第1ポンプと前記合流部との間に設けられた入口部と、前記第2流路における前記第2ポンプと前記切換部との間に設けられた出口部とを接続する第3流路と、
前記第3流路を開閉する弁機構と、
を備え
前記遮断弁が閉じた状態で、前記弁機構が前記第3流路を開放することで、前記第1ポンプから吐出された油が前記第3流路及び前記第2ポンプを介して前記タンクに流れるように構成されたことを特徴とする油圧ユニット。
【請求項2】
前記第1ポンプから吐出された油の圧力を検知する圧力検知手段と、
圧力指令および流量指令を受け、前記圧力指令に応じた圧力および前記流量指令に応じたモータ回転速度になるように前記モータを制御する制御部とを備え、
前記制御部前記圧力指令に応じた圧力が第1閾値以下、および前記流量指令に応じた流量が第2閾値以下の状態において、前記圧力検知手段検知された圧力が第3閾値を超えないときは、前記弁機構を開き、前記第2ポンプのベーンが開くモータ回転速度になるように前記モータを制御することを特徴とする請求項1に記載の油圧ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、前記弁機構を開き、前記ベーンが開くモータ回転速度になるように前記モータを制御した後、前記圧力検知手段で検知された圧力が第4閾値以上になったときに、前記弁機構を閉じ、前記ベーンが開くモータ回転速度から、前記流量指令に応じたモータ回転速度になるように前記モータを制御することを特徴とする請求項2に記載の油圧ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御されるベーンポンプを有する油圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大容量および小容量の2つのギアポンプを備えた油圧ユニットが提案されている。このような油圧ユニットとして例えば特許文献1には、大流量が必要なときは大容量および小容量の2つのポンプを合流させ、高圧力が必要なときは小容量のポンプを単独で駆動させる油圧ユニットが記載されている。大容量のギアポンプは高価であり、また容量に限界があるため、さらなる大流量を実現するには、低価格で大流量を実現できるベーンポンプを大容量ポンプとして使用することが望まれる。
【0003】
ベーンポンプは、環状のカムリングと、カムリングの内側に配置されたロータと、ロータの外周面に形成された複数のスリットにそれぞれ進退可能に配置され、カムリングの内周面に当接して複数の圧縮室を形成する複数のベーンとを有している。このようなベーンポンプでは、モータの回転速度が上昇することによって発生する遠心力や、ベーンポンプの吐出口から発生する圧力を利用することでベーンがカムリングの内周面と密着して油が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−011597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載の油圧ユニットでは、大容量ポンプとしてベーンポンプを使用すると、ベーンポンプの特性上、低圧、低流量の状態では、ベーンが開かずベーンポンプからは油が流れないという問題がある。この状態からモータの回転速度を上げて油を流すと、 回転速度が一定以上となったときに遠心力によりベーンが開いて油が流れて流量が急変し、衝撃が生じる。
【0006】
そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ベーンポンプに流れる油の流量を制御してベーンを開き、流量が急変する際に生じる衝撃を抑制できる油圧ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る油圧ユニットは、
アクチュエータと遮断弁とを備えた外部装置に接続される油圧ユニットにおいて、
前記遮断弁を介して前記アクチュエータに接続され、前記遮断弁とタンクとを接続する第1流路と、
前記第1流路における前記遮断弁と前記タンクとの間に設けられた第1ポンプと、
前記タンクと、前記第1流路における前記第1ポンプと前記遮断弁との間に設けられた合流部とを接続する第2流路と、
前記第2流路に設けられたベーンポンプである第2ポンプと、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプを駆動し、インバータ制御されるモータと、
前記第2流路における前記第2ポンプと前記合流部との間に設けられた切換部と、
前記第2ポンプから吐出された油が前記合流部を介して前記第1流路に合流する状態と、前記第2ポンプから吐出された油が前記切換部を介して前記第1流路から分流する状態とに切り換える弁と、
前記第2流路における前記切換部と前記合流部との間に設けられ、前記第1流路から油が流入するのを防止する逆止弁と、
前記第1流路における前記第1ポンプと前記合流部との間に設けられた入口部と、前記第2流路における前記第2ポンプと前記切換部との間に設けられた出口部とを接続する第3流路と、
前記第3流路を開閉する弁機構と、
を備え
前記遮断弁が閉じた状態で、前記弁機構が前記第3流路を開放することで、前記第1ポンプから吐出された油が前記第3流路及び前記第2ポンプを介して前記タンクに流れるように構成されことを特徴とする
【0008】
この発明では、弁機構が第1ポンプと第2ポンプとの間に配置され、第1ポンプから第2ポンプに油が流れる第3流路を開閉する。第1流路が、アクチュエータに遮断弁を介して接続されている場合において、遮断弁が閉じた状態で、第3流路が閉じている場合には、第1ポンプから油が流れて圧力が上昇して圧力制御になり、流量を増加できない。しかし、第2ポンプであるベーンポンプのベーンが閉じているときに弁機構が第3流路を開放することで、第1ポンプから第2ポンプを介して、第1ポンプの吸入側に配置されたタンクに油を流すことができ、流量制御となって流量を増加させることができる。従って、ベーンが閉じているベーンポンプを介してタンクに流れる油の流量を増加し、モータの回転数を増やすことでモータ回転速度が上昇して遠心力によりベーンを開くことができる。これらから、起動時に遮断弁が閉じた状態でもあらかじめベーンを開くことができる。そしてベーンを開くことで、ベーンポンプから油を流すことができる。あらかじめベーンを開いておくことにより、外部装置側の遮断弁を開いてアクチュエータを動作させる際、モータの回転速度が上昇してベーンが開く回転速度になったときにベーンポンプから急に大量の油が供給されることを防止し、流量が急変する際の衝撃を抑制できる。このようにベーンポンプの流量を制御してベーンを開くことで、流量急変によるアクチュエータ動作時のショックを抑制する。
【0009】
第2の発明に係る油圧ユニットは、
前記第1ポンプから吐出された油の圧力を検知する圧力検知手段と、
圧力指令および流量指令を受け、前記圧力指令に応じた圧力および前記流量指令に応じたモータ回転速度になるように前記モータを制御する制御部とを備え、
前記制御部前記圧力指令に応じた圧力が第1閾値以下、および前記流量指令に応じた流量が第2閾値以下の状態において、前記圧力検知手段検知された圧力が第3閾値を超えないときは、前記弁機構を開き、前記第2ポンプのベーンが開くモータ回転速度になるように前記モータを制御する。
【0010】
この発明では、外部装置からの圧力指令が第1閾値以下、および外部装置からの流量指令が第2閾値以下の状態において、圧力検手段が検する油の圧力が第3閾値を超えないときは油が正方向に流れていない、すなわちベーンポンプのベーンが開いていないと判断する。このときに、ベーンポンプのベーンが開くモータ回転速度になるようにモータを制御することで、モータ回転速度が上昇して遠心力によりベーンを開くことができる。
【0011】
第3の発明に係る油圧ユニットは、
前記制御部は、前記弁機構を開き、前記ベーンが開くモータ回転速度になるように前記モータを制御した後、前記圧力検知手段で検知された圧力が第4閾値以上になったときに、前記弁機構を閉じ、前記ベーンが開くモータ回転速度から、前記流量指令に応じたモータ回転速度になるように前記モータを制御する。
【0012】
この発明では、圧力検知手段で検知した油の圧力が第4閾値以上になったときにベーンポンプが開いたと判断する。この後、外部からの流量指令に基づく流量になるようにモータを制御することで、所望の流量の油を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明では、弁機構が第1ポンプと第2ポンプとの間に配置され、第1ポンプから第2ポンプに油が流れる第3流路を開閉する。第1流路が、アクチュエータに遮断弁を介して接続されている場合において、遮断弁が閉じた状態で、第3流路が閉じている場合には、第1ポンプから油が流れて圧力が上昇して圧力制御になり、流量を増加できない。しかし、第2ポンプであるベーンポンプのベーンが閉じているときに弁機構が第3流路を開放することで、第1ポンプから第2ポンプを介して、第1ポンプの吸入側に配置されたタンクに油を流すことができ、流量制御となって流量を増加させることができる。従って、ベーンが閉じているベーンポンプを介してタンクに流れる油の流量を増加し、モータの回転数を増やすことでモータ回転速度が上昇して遠心力によりベーンを開くことができる。これらから、起動時に遮断弁が閉じた状態でもあらかじめベーンを開くことができる。そしてベーンを開くことで、ベーンポンプから油を流すことができる。あらかじめベーンを開いておくことにより、外部装置側の遮断弁を開いてアクチュエータを動作させる際、モータの回転速度が上昇してベーンが開く回転速度になったときにベーンポンプから急に大量の油が供給されることを防止し、流量が急変する際の衝撃を抑制できる。このようにベーンポンプの流量を制御してベーンを開くことで、流量急変によるアクチュエータ動作時のショックを抑制する。
【0014】
第2の発明では、外部装置からの圧力指令が第1閾値以下、および外部装置からの流量指令が第2閾値以下の状態において、圧力検手段が検する油の圧力が第3閾値を超えないときは油が正方向に流れていない、すなわちベーンポンプのベーンが開いていないと判断する。このときに、ベーンポンプのベーンが開くモータ回転速度になるようにモータを制御することで、モータ回転速度が上昇して遠心力によりベーンを開くことができる。
【0015】
第3の発明では、圧力検知手段で検知した油の圧力が第4閾値以上になったときにベーンポンプが開いたと判断する。この後、外部からの流量指令に基づく流量になるようにモータを制御することで、所望の流量の油を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ユニットを示す概略構成図。
図2図1のベーンポンプの縦断面図。
図3図2に示すIII-III線に沿った要部断面図
図4】ベーンポンプを開く制御のフローチャート。
図5】(a)は時間とベーンポンプの流量との関係を示すグラフ、(b)は時間とベーンポンプの圧力との関係を示すグラフ、(c)はモータの回転速度と流量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0018】
図1に示すように、油圧ユニット30は、タンク40内の作動流体を例えば油圧シリンダなどのアクチュエータ42に供給する。油圧ユニット30は、小容量ポンプとしてギアポンプ(第1ポンプ)25と、大容量ポンプとしてベーンポンプ(第2ポンプ)1と、電磁弁(弁機構)38と、モータ32と、圧力センサ(圧力検知手段)33と、ユニット側制御部(制御部)34とを備えている。この油圧ユニット30は、大流量が必要なときはギアポンプ25およびベーンポンプ1の2つのポンプから吐出された油を合流させてアクチュエータ42に供給し、高圧力が必要なときはギアポンプ25から吐出された油のみアクチュエータ42に供給する。なお、本実施形態では作動流体として油を用いるが、これに限定されないのは勿論である。
【0019】
ギアポンプ25は、ンク40とアクチュエータ42とを接続する第1流路50に配設されている。タンク40とギアポンプ25との間に位置する第1流路50の上流側では、タンク40から汲み上げられてギアポンプ25に吸入される油が流動する。ギアポンプ25とアクチュエータ42との間に位置する第1流路50の下流側では、ギアポンプ25から吐出された油がアクチュエータ42に向かって流動する。また第1流路50の上流側には、ベーンポンプ1が配設された後述する第2流路51と分岐する分岐部55が設けられている。第1流路50の下流側には、第2流路51と合流する合流部56が設けられている。
【0020】
ベーンポンプ1は、タンク40と合流部56とを接続する第2流路51に配設されている。図2および図3に示すようにベーンポンプ1は、外側がケーシング2で覆われている。ケーシング2の内部には、軸受2A及び軸受2Bにより回転軸3が回転自在に軸支されている。回転軸3には、キー4を介して円筒状のロータ5が回転軸3と一体的に回転可能に取り付けられている。ロータ5の外周面には、環状に配列された複数のスリット6(この可変ベーンポンプ1では13個)が設けられている。複数のスリット6は、ロータ5を軸方向に貫通し且つ放射方向に沿って設けられており、周方向において略等間隔に配置されている。また、ロータ5の径方向外側には、環状(円環状)のカムリング7が配置されている。
【0021】
複数のスリット6には、各スリット6内を径方向に進退可能に配置される複数のベーン8(この可変ベーンポンプ1では13個)が配置されている。複数のベーン8は、ロータ5の回転によって発生する遠心力によってカムリング7の内周面に当接して、複数の圧縮室9を形成している。この可変ベーンポンプ1では、隣接する2つのベーン8、ロータ5、カムリング7、及び後述する2つの側板(第1側板21及び第2側板22)により13個の圧縮室9が形成されている。なお、ロータ5、カムリング7、ベーン8等は、ケーシング2の内周面12により形成される断面視円形状の空間に配置されている。また、回転軸3、ロータ5、及びベーン8は、図2の矢印方向に回転する。
【0022】
カムリング7の径方向外側には、カムリング7の外周面に当接して、カムリング7の径方向外側からカムリング7を押圧する押圧部材10が配置されている。この押圧部材10は、ケーシング2の内周面12から径方向外側に向かって延在した押圧部材収容部13に配置されている。この押圧部材収容部13には、外側空間11内の作動流体(例えば油)を外部に排出する排出孔14が形成されている。
【0023】
図2に示すように、押圧部材10は、弾性部材15(この可変ベーンポンプ1では、バネ部材)とピストン16により構成されている。また、押圧部材10におけるカムリング7と反対側には、ボルト部材17が配置されている。この可変ベーンポンプ1では、ボルト部材17をロータ5の径方向に沿って変位させることで、ピストン16によりカムリング7に作用する弾性部材15の弾性力が変化し、圧縮室9内から吐出される作動流体の吐出圧力が調整される。この可変ベーンポンプ1では、カムリング7がロータ5に対して押圧部材10と反対側に偏心した位置に配置される。すなわち、カムリング7の中心位置は、ロータ5の中心位置に対して押圧部材10の反対側にある。このとき、カムリング7のうち押圧部材10と反対側の外周面は、ケーシング2の内周面12に当接している。
【0024】
図3に示すように、カムリング7及びロータ5の両端面には、円筒状の第1側板21(端面部材)及び円筒状の第2側板22が配置されている。第1側板21及び第2側板22の中央には、貫通孔が形成されており、これらの貫通孔には、回転軸3が挿通されている。
【0025】
第1側板21は、圧縮室9に作動流体(例えば油)を供給する吸入孔23と、圧縮室9内の作動流体を吐出させる吐出孔24と、圧縮室9内の作動流体をカムリング7の径方向外側の外側空間11に排出する連通部31とを有している。吸入孔23は第1流路50に接続され、吐出孔24は第2流路51に接続されている。
【0026】
図1に示すように、分岐部55とベーンポンプ1との間に位置する第2流路51の上流側では、タンク40から流出し分岐部55分岐してベーンポンプ1に吸入される油が流動する。ベーンポンプ1と合流部56との間に位置する第2流路51の下流側には、切換部57が設けられている。この切換部57では、ベーンポンプ1から吐出された油が第1流路50に合流する状態と、第1流路50から分流する状態とに切り換えられる。
【0027】
切換部57と合流部56との間の第2流路51には、第1流路50から第2流路51に油が流入するのを防止する逆止弁35が設けられている。第2流路51の油が第1流路50に合流する状態では、ベーンポンプ1から吐出された油が切換部57および逆止弁35を介して合流部56に向かって流動する。
【0028】
切換部57の合流部56と反対側の流路には、パイロット逆止弁36が設けられている。また、パイロット逆止弁36の下流には、外部装置側制御部43からの信号で切り替えられる第2電磁弁39が設けられている。第2電磁弁39を切替えて合流部56の流量をパイロット逆止弁36に流すことにより、パイロット圧をかけてパイロット逆止弁36を開き、第2流路51の油が切換部57からパイロット逆止弁36を通って貯留部37へ流れる。これにより、合流部56に流れる油はギアポンプ25から流れる油のみとなる。第2電磁弁39を切替えて合流部56の流量をパイロット逆止弁36に流さない場合は、パイロット逆止弁36は閉じて第2流路51の油が切換部57から逆止弁35を通って合流部56へ流れる。これら逆止弁35とパイロット逆止弁36とが、ポンプ容量選択ブロック61を構成している。
【0029】
第1電磁弁38は第3流路52の途中に配設され、第3流路52を開閉する。第3流路52はギアポンプ25とベーンポンプ1との間に配置され、ギアポンプ25から吐出された油をベーンポンプ1に流動させる。具体的には第3流路52は、電磁弁入口部58と、電磁弁出口部59とを接続している。電磁弁入口部58は、第1流路50のギアポンプ25より下流側、すなわちギアポンプ25と合流部56との間に配設されている電磁弁出口部59は、第2流路51のベーンポンプ1より下流側、すなわちベーンポンプ1と切換部57との間に配設されている。なお、第1電磁弁38はユニット側制御部34に電気的に接続されている。
【0030】
モータ32は、外部装置側制御部43またはユニット側制御部34からの指令によりインバータ制御され、ギアポンプ25およびベーンポンプ1を駆動する。モータ32は、ギアポンプ25およびベーンポンプ1に接続され、かつ、ユニット側制御部34に電気的に接続されている。
【0031】
圧力センサ33は第1流路50のギアポンプ25と電磁弁入口部58との間に設けられ、ギアポンプ25から吐出された油の圧力を検知する。そして、ポンプ容量選択ブロック61によって合流に切り替えられている場合、または第1電磁弁38が開いた状態のとき、圧力センサ33はギアポンプ25の吐出圧、及びベーンポンプ1の吐出圧を検知する。圧力センサ33は、一端が第1流路50の途中に電気的に接続され、他端はユニット側制御部34に電気的に接続されている。
【0032】
ユニット側制御部34は、後述する外部装置側制御部43から圧力指令および流量指令を受け、圧力指令に応じた圧力および流量指令に応じたモータ回転速度になるようにモータ32を制御する。ユニット側制御部34は外部装置側制御部43に電気的に接続され、外部装置側制御部43から圧力指令および流量指令を受信する。ユニット側制御部34は外部装置側制御部43からの各指令に基づいてモータ32を駆動する。なお本発明のユニット側制御部34は、外部装置側制御部43からの各指令を受信すると共に、ベーンポンプ1のベーン8を開くために外部装置側制御部43からの指令とは別に独自の指令を用いてモータ32を駆動する。
【0033】
油圧ユニット30に接続された外部装置45は、外部装置側制御部43とアクチュエータ42と遮断弁46とを備えている。外部装置側制御部43は、圧力指令および流量指令をユニット側制御部34に送信する。外部装置側制御部43は遮断弁46に電気的に接続され、遮断弁46を開閉する。
【0034】
遮断弁46は、油圧ユニット30と、油圧ユニット30の吐出側に設けられたアクチュエータ42との間に配置され、外部装置側制御部43からの指令により第1流路50を開閉する。遮断弁46を開いた状態では、油圧ユニット30から吐出された油がアクチュエータ42に供給される。一方、遮断弁46を閉じた状態では、油圧ユニット30から吐出された油がアクチュエータ42に供給されるのを阻止する。また遮断弁46は、外部装置側制御部43に電気的に接続されている。
【0035】
次に図4を参照して、外部装置側制御部43およびユニット側制御部34によるベーンポンプ1のベーン8を開放する制御について詳述する。なお、外部装置側制御部43がユニット側制御部34に対して流量QI1に応じた流量指令を送信している。また初期状態では、第1電磁弁38が閉じられている。
【0036】
まずステップS1でユニット側制御部34が、外部装置側制御部43からの圧力指令に応じた圧力が第1閾値以下かつ流量指令に応じた流量が第2閾値以下であるか否かを検知する。また、圧力指令に応じた圧力が第1閾値以下かつ流量指令に応じた流量が第2閾値以下であるときには、油圧ユニット30側で仕事をしない待機状態となり、外部装置側制御部43からの指令により遮断弁46を閉じる。起動時はこの待機状態となるため、外部装置側制御部43およびユニット側制御部34によるベーンポンプ1のベーン8を開放する制御をこの待機状態で行うことにより、ベーンポンプ1から油が流れる準備が整う。第1閾値は、省エネ効果を得るため小さい値に設定される。また第2閾値は、保圧時に油圧回路の油の漏れ量を補充するのに十分な値であり、かつ圧力の変化に対して過敏に反応しない小さい値に設定される。
【0037】
圧力指令に応じた圧力が第1閾値以下かつ流量指令に応じた流量が第2閾値以下であるときには、ベーンポンプ1のべーン8が開いていないと判断してステップS2に進む。一方、圧力指令に応じた圧力が第1閾値より大きいときには、待機状態での外部装置側制御部43およびユニット側制御部34によるベーンポンプ1のベーン8を開放する制御が既に行われてベーン8が開いていると判断し、ステップS6に進む。
【0038】
ステップS2では、ユニット側制御部34が第1電磁弁38を開く。第1電磁弁38を開くことで第3流路52が開放され、ギアポンプ25で汲み上げられた油が電磁弁入口部58から第3流路52および第1電磁弁38に流入する。これにより、ベーン8が閉じているベーンポンプ1に流れる油の流量を増加し、モータ32の回転数を増やすことでベーン8を開き易くすることができる。そして第1電磁弁38から吐出された油は電磁弁出口部59を介してベーンポンプ1を通過し、分岐部55からタンク40に戻される。このように、第1電磁弁38が第3流路52を開放することで、ギアポンプ25からベーンポンプ1を介してタンク40に油を流すことができ、流量制御となって流量を増加させることができる。従って、ベーン8が閉じているベーンポンプ1を介してタンク40に流れる油の流量を増加し、モータ32の回転数を増やすことでベーン8を開くことができる。
【0039】
油が、電磁弁出口部59からベーンポンプ1を通過して分岐部55まで流れるとき、ベーンポンプ1では吐出孔24を介して圧縮室9に作動流体が供給され、吸入孔23から圧縮室9内の作動流体を吐出する。
【0040】
ステップS3ではユニット側制御部34が、ベーンポンプ1から吐出された油の圧力が第3閾値以下であるか否かを判断する。第3閾値は、回転速度が低下しても吐出圧を利用してベーン8が開いた状態を保持できる値などが設定される。なお、第1電磁弁38が開いた状態のとき、圧力センサ33はギアポンプ25の吐出圧、及びベーンポンプ1の吐出圧を検知する。ベーンポンプ1から吐出された油の圧力が第3閾値以下のときは、ベーン8が閉じていると判断してステップS4に進む。油の圧力が第3閾値より大きいときは、ベーン8が開いていると判断し、ステップS6に進む。
【0041】
ステップS4では、ユニット側制御部34が流量QI2に応じた流量指令に設定することで、モータ32はベーンポンプ1の流量がQI2になるように駆動する。このとき、モータ32は、ベーンポンプ1のベーン8が開くモータ回転速度になるように制御される
【0042】
流量QI2は流量QI1よりも大きい値であり、ベーンポンプ1が開くモータ回転速度とポンプ容量から算出される理論流量である。これにより図5(a)の時間t1から時間t2の間に示すように、ベーンポンプ1のモータ回転速度とポンプ容量から算出される理論流量が増加する。このとき、ベーン8は開いていないので、実際に油は流れていない。なお図5(a)では、この理論流量を実線L1で、ベーンポンプ1に実際に流れる油の流量を実線L2で、それぞれ示している。また、外部装置側制御部43からの流量指令に応じた流量を一点鎖線で示している。モータ回転速度とポンプ容量から算出される理論流量が増加することで、ベーン8が開く理論流量となる。これにより、時間t2でベーン8が開いて実際に油が流れ始め、ベーンポンプ1の圧力も増加する(図5(b)参照)。なお図5(b)では、圧力センサ33で検知された油の圧力を実線で示している。
【0043】
次にステップS5ではユニット側制御部34が、ベーンポンプ1から吐出された油の圧力が第4閾値以上であるか否かを判断する(図5(b)の時間t3参照)。第4閾値は、モータ32の回転速度が低下しても吐出圧を利用してベーン8が開いた状態を保持できる値や、ヒステリシスを持たせるために第3閾値よりも少し大きい値などが設定される。油の圧力が第4閾値以上のときは、ベーン8が開いたと判断してステップS6に進む。油の圧力が第4閾値未満のときは、ベーン8が未だ閉じていると判断してステップS4に戻る。
【0044】
ステップS6では、ユニット側制御部34が第1電磁弁38を閉じる。これにより、ギアポンプ25から吐出された油が、第1流路50を合流部56に向かって流れる。またベーンポンプ1から吐出された油が、第2流路51を切換部57に向かって流れる。このとき、ベーンポンプ1は図2の矢印方向に回転する。
【0045】
続くステップS7では、ユニット側制御部34が流量QI2に応じた流量指令から流量QI1に応じた流量指令に変更する(図5(a)の時間t3参照)。すなわち、ユニット側制御部34は、ベーンポンプ1が開くモータ回転速度から、外部装置側制御部43からの流量指令に応じたモータ回転速度になるようにモータ32を制御する。このように、第1電磁弁38を閉じ、外部装置側制御部43からの流量指令に基づく流量QI1に戻してモータ32を制御することで、ポンプ容量選択ブロック61によるポンプ容量の切替が有効となり、所望の流量の油を得ることができる。このとき、油が流れて圧力が上がると保圧状態となりモータ32の回転速度が低下するが、吐出圧を利用してベーン8が開き、カムリング7の内周面と密着して油が流れる状態を保持する。そしてベーン8の開放制御が終了する。
【0046】
本発明のベーンポンプ1の開放制御を行うことで、その後、図5(c)に示すように、モータ32の回転速度を上昇させると、ギアポンプ25およびベーンポンプ1から得られる油の流量が比例して増加することが分かる。
【0047】
[本実施形態の油圧ユニットの特徴]
本実施形態の油圧ユニット30には以下の特徴がある。
【0048】
本実施形態の油圧ユニット30では、第1電磁弁38がギアポンプ25とベーンポンプ1との間に配置され、ギアポンプ25からベーンポンプ1に油が流れる第3流路52を開閉する。遮断弁46が閉じた状態で、第3流路52が閉じている場合には、ギアポンプ25から油が流れて圧力が上昇して圧力制御になり、流量を増加できない。しかし、ベーンポンプ1のベーン8が閉じているときに、第1電磁弁38が第3流路52を開放することで、ギアポンプ25からベーンポンプ1を介してタンク40に油を流すことができ、流量制御となって流量を増加させることができる。従って、ベーン8が閉じているベーンポンプ1を介してタンク40に流れる油の流量を増加し、モータ32の回転数を増やすことでベーン8を開くことができる。これらから、起動時に遮断弁46が閉じた状態でもあらかじめベーン8を開くことができる。遮断弁46を開いてアクチュエータ42を動作させる際、モータ32の回転速度が上昇してベーン8が開く回転速度になったときにベーンポンプ1から急に大量の油が供給されることを防止し、流量が急変する際の衝撃を抑制できる。また、ギアポンプ25側に圧力センサ33が設けられているので、ベーンポンプ1からの吐出圧を圧力センサ33で検知でき、ベーンポンプ1からの吐出圧を検知する新たな圧力検知手段が必要なくコストダウンが図れる。
【0049】
本実施形態の油圧ユニット30では、外部装置45からの圧力指令が第1閾値以下、および外部装置45からの流量指令が第2閾値以下の状態において、圧力センサ33が検する油の圧力が第3閾値を超えないときは油が正方向に流れていない、すなわちベーンポンプ1のベーン8が開いていないと判断する。このときに、ベーンポンプ1のベーン8が開くモータ回転速度になるようにモータ32を制御することで、モータ回転速度が上昇して遠心力によりベーン8を開くことができる。そしてベーン8を開くことで、ベーンポンプ1から油が流れる準備が整う。あらかじめベーン8を開いておくことにより、外部装置45側の遮断弁46を開いてアクチュエータ42を動作させる際、モータ32の回転速度が上昇してベーン8が開く回転速度になったときにベーンポンプ1から急に大量の油が供給されることを防止し、流量が急変する際の衝撃を抑制できる。このようにベーンポンプの流量を制御してベーンを開くことで、流量急変によるアクチュエータ42の動作時のショックを抑制する。
【0050】
本実施形態の油圧ユニット30では、圧力センサ33で検した油の圧力が第4閾値以上になったときにベーンポンプ1が開いたと判断する。この後、外部装置45からの流量指令に基づく流量になるようにモータ32を制御することで、所望の流量の油を得ることができる。また、第1電磁弁38を閉じることで、ポンプ容量選択ブロック61によるポンプ容量の切替えが有効となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
前記実施形態では第1流路50に圧力センサ33を設けたが、これに限定されない。圧力センサ33を第2流路51のベーンポンプ1の下流側に設けることで、直接、ベーンポンプ1の吐出圧を検知してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ベーンポンプ(第2ポンプ)
25 ギアポンプ(第1ポンプ)
30 油圧ユニット
32 モータ
33 圧力センサ(圧力検知手段)
34 ユニット側制御部(制御部)
35 逆止弁
38 第1電磁弁(弁機構)
50 第1流路
51 第2流路
52 第3流路
図1
図2
図3
図4
図5