特許第6641921号(P6641921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641921
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】ロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/06 20060101AFI20200127BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   B25J13/06
   B25J19/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-229092(P2015-229092)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-94445(P2017-94445A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】金田 基希
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−213400(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/055440(WO,A1)
【文献】 特開2011−067017(JP,A)
【文献】 実開昭62−147487(JP,U)
【文献】 特開2004−148488(JP,A)
【文献】 特開平11−077573(JP,A)
【文献】 特開2014−065086(JP,A)
【文献】 特開2007−136617(JP,A)
【文献】 特開2014−144494(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/16−19/06
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転部と、前記各回転部の回転軸を駆動する3相モータとを有するロボットを備えるロボットシステムを構成し、前記ロボットを駆動制御するロボット制御装置において、
前記ロボットの駆動制御用の制御信号を出力する制御部と、
前記制御部から出力された前記制御信号が信号伝達経路を介して入力され、入力された前記制御信号に基づいて前記モータを駆動する駆動部と、
前記信号伝達経路を信号通過可能状態及び信号遮断状態のいずれかに切り替える信号遮断部と、
前記ロボットシステムの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットシステムの異常を検知した場合、前記信号伝達経路を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替えるように前記信号遮断部を切り替え操作する監視部と、を備え
前記制御部が前記信号遮断部を直接切り替え操作できないように前記ロボット制御装置が構成されており、
前記制御部は、前記ロボットの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットの異常を検知した場合、前記信号遮断部を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替える指示を前記監視部に対して出力することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記制御部及び前記監視部のそれぞれは、互いに異常の有無を監視する機能を有しており、
前記監視部は、前記制御部の異常を検知した場合、前記信号遮断部を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替えるように前記信号遮断部を切り替え操作し、
前記制御部は、前記監視部の異常を検知した場合、前記制御信号として前記ロボットの停止用の信号を前記駆動部に対して出力する請求項に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記ロボットシステムには、前記回転軸の回転位置情報を検出する回転検出部が備えられ、
前記監視部は、前記回転検出部により検出された前記回転位置情報とその指令情報との偏差が所定量以上になったと判定した場合、前記ロボットに異常が生じていることを検知し、前記ロボットの異常を検知した場合、前記信号伝達経路を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替えるように前記信号遮断部を切り替え操作する請求項1又は2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記駆動部は、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチの直列接続体を3つ有する3相インバータと、前記直列接続体に並列接続されたコンデンサとを含む請求項1〜のいずれか1項に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
各相のそれぞれにおいて、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの接続点に前記モータのステータ巻線が接続されている請求項に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転部と、前記各回転部の回転軸を駆動するモータとを有するロボットを備えるロボットシステムを構成するロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、下記特許文献1に見られるように、モータの駆動制御用の制御信号を出力する制御部と、外部電源から第1〜第3の電磁接触器を介して電力が供給されることにより動作可能に構成され、制御部から出力された制御信号を入力としてモータを駆動する駆動部とを備えるものが知られている。制御部は、回転軸の回転位置を検出するエンコーダからの位置データに基づいて、ロボットの異常の有無を監視する機能を有している。制御部は、ロボットの異常を検知した場合、第1の電磁接触器を導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、外部電源から駆動部への給電が遮断され、ロボットが停止させられる。
【0003】
上記制御装置は、さらに監視部を備えている。監視部は、上記エンコーダからの位置データに基づいて、ロボットの異常の有無を監視する機能を有している。監視部は、ロボットの異常を検知した場合、第2,第3の電磁接触器を導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、外部電源から駆動部への給電が遮断され、ロボットが停止させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5271499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造ラインにおけるロボットの動作領域に作業者が立ち入ることを防止するために、動作領域を安全防護柵で囲う安全対策が従来から講じられている。ここで近年、製品製造の効率化等を図るべく、製造ラインにおいてロボット及び作業者が協調して作業を行うことも考えられている。この場合、安全防護柵を設置しないこともあり得るため、安全防護柵に代わる安全対策を講じる必要がある。この安全対策を講じるために、監視部が制御装置の必須の構成となる。
【0006】
上記特許文献1に記載の制御装置では、監視部により電磁接触器を遮断状態に切り替えた場合であっても、駆動部に接続されたコンデンサ等、外部電源の他に駆動部の電源が確保された状態となり得る。この状態において、制御部に異常が生じてかつ制御部から誤った制御信号が駆動部に対して出力されると、電磁接触器が遮断状態に切り替えられてからロボットが完全に停止するまでの間にロボットが予期せぬ動作を行うおそれがある。その結果、ロボットと協調して作業を行う作業者に不安を与えるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ロボットシステムに異常が生じた場合であっても、ロボットを完全に停止させるまで作業者の安全を確保できるロボット制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、複数の回転部と、前記各回転部の回転軸を駆動する3相モータとを有するロボットを備えるロボットシステムを構成し、前記ロボットを駆動制御するロボット制御装置において、前記ロボットの駆動制御用の制御信号を出力する制御部と、前記制御部から出力された前記制御信号が信号伝達経路を介して入力され、入力された前記制御信号に基づいて前記モータを駆動する駆動部と、前記信号伝達経路を信号通過可能状態及び信号遮断状態のいずれかに切り替える信号遮断部と、前記ロボットシステムの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットシステムの異常を検知した場合、前記信号伝達経路を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替えるように前記信号遮断部を切り替え操作する監視部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、制御部から出力された制御信号が信号伝達経路を介して駆動部に入力される。駆動部は、入力された制御信号に基づいてモータを駆動することにより、ロボットの駆動制御を行う。
【0010】
ここで上記発明は、信号遮断部と、監視部とを備えている。信号遮断部は、信号伝達経路を信号通過可能状態及び信号遮断状態のいずれかに切り替える。監視部は、ロボットシステムの異常を検知した場合、信号伝達経路を信号通過可能状態から信号遮断状態に切り替えるように信号遮断部を切り替え操作する。上記発明によれば、ロボットシステムを構成する制御部に異常が生じた場合、監視部により信号遮断部が信号遮断状態に切り替えられる。このため、外部電源の他に駆動部の電源が確保された状態で制御部から誤った制御信号が出力されたとしても、その制御信号は駆動部には伝達されない。これにより、ロボットが完全に停止するまでにロボットが予期せぬ動作を行うことを防止できる。したがって、ロボットを完全に停止させるまで作業者の安全を確保することができる。
【0011】
なお、第1の発明において、駆動部としては、具体的には例えば第5の発明のように、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチの直列接続体を3つ有する3相インバータと、前記直列接続体に並列接続されたコンデンサとを含む構成を採用することができる。この場合、外部電源の他に駆動部の電源となり得る構成に上記コンデンサが含まれる。
【0012】
第2の発明は、前記制御部が前記信号遮断部を直接切り替え操作できないように前記ロボット制御装置が構成されており、前記制御部は、前記ロボットの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットの異常を検知した場合、前記信号遮断部を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替える指示を前記監視部に対して出力することを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、ロボット制御装置の安全性に係る部分について、第三者機関の認証を得るための作業を容易化することができる。つまり、第三者機関の認証対象範囲には、ロボットを停止させるための構成が含まれる。このため上記特許文献1に記載の制御装置では、電磁接触器を直接切り替え操作する制御部を改良した場合、その改良が、監視部によりロボットを安全に停止させる機能に影響がないと立証するための作業負荷が大きくなり得る。これに対し、上記発明では、制御部が信号遮断部を直接切り替え操作できず、監視部が信号遮断部を直接切り替え操作する構成である。このため、制御部を改良した場合であっても、その改良が監視部によるロボットの安全な停止に影響しないと立証することが容易となる。したがって上記発明によれば、制御部を改良した場合において、認証を得るための作業を容易化することができ、認証を得るための作業負荷を低減することができる。
【0014】
第3の発明は、前記制御部及び前記監視部のそれぞれは、互いに異常の有無を監視する機能を有しており、前記監視部は、前記制御部の異常を検知した場合、前記信号遮断部を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替えるように前記信号遮断部を切り替え操作し、前記制御部は、前記監視部の異常を検知した場合、前記制御信号として前記ロボットの停止用の信号を前記駆動部に対して出力することを特徴とする。
【0015】
上記発明では、監視部及び制御部のうちいずれかに異常が生じた場合であっても、ロボットを停止させることができる。また、監視部に異常が生じた場合であっても、制御部が信号遮断部を直接切り替えるのではなく、ロボットの停止用の信号によりロボットを停止させることができる。なお、ロボットの停止用の信号として、ロボットに所定の動作を実行させながら停止させる信号を採用することもできる。
【0016】
第4の発明は、前記ロボットシステムには、前記回転軸の回転位置情報を検出する回転検出部が備えられ、前記監視部は、前記回転検出部により検出された前記回転位置情報とその指令情報との偏差が所定量以上になったと判定した場合、前記ロボットに異常が生じていることを検知し、前記ロボットの異常を検知した場合、前記信号伝達経路を前記信号通過可能状態から前記信号遮断状態に切り替えるように前記信号遮断部を切り替え操作することを特徴とする。
【0017】
上記発明では、監視部は、回転検出部により検出された回転位置情報とその指令情報との偏差が所定量以上になったと判定した場合、ロボットの異常を検知する。ロボットに異常が生じると、ロボットの駆動制御ができなくなって上記偏差が大きくなるため、上記発明によれば、ロボットの異常を精度よく検知することができる。
【0018】
第6の発明は、各相のそれぞれにおいて、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの接続点に前記モータのステータ巻線が接続されていることを特徴とする。
【0019】
ロボットが完全に停止するまでの間においては、モータの惰性回転によりステータ巻線に誘起電圧が発生する。この誘起電圧は、外部電源の他に駆動部の電源となり得る。このため、モータの惰性回転中に制御部からの誤った制御信号により同相のハイサイド,ローサイドスイッチが同時にオンされると、短絡電流が流れるおそれがある。
【0020】
この点上記発明では、制御部に異常が生じた場合、監視部により信号遮断部が信号遮断状態に切り替えられる。このため、制御部からの誤った制御信号により同相のハイサイド,ローサイドスイッチが同時にオンされることを防止でき、短絡電流が流れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ロボットシステムの概要を示す図。
図2】セーフティコントローラの構成を示す図。
図3】異常検知に係る監視部の処理の手順を示すフローチャート。
図4】異常検知に係る制御部の処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、ロボット制御装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るロボットは、例えば産業用ロボットとして機械組立工場などの組立システムにて用いられる。
【0023】
まず、図1を用いて、本実施形態に係るロボットシステムの概要について説明する。
【0024】
図1に示すように、ロボットシステムを構成するロボット10は、複数の回転部と、各回転部を互いに連結する関節とを備えている。本実施形態に係るロボット10は、6軸の垂直多関節型ロボットとして構成されている。
【0025】
ロボット10は、床等に固定される固定部11と、その固定部11の上方に設けられる第1回転部12とを有している。ロボット10のアームは、第1回転部12に加え、下アーム13、上アーム14、手首部15、及びハンド部16を有している。第1回転部12は、アームの両端部のうち、アーム先端部とは反対側の根元部に相当する。第1回転部12は、鉛直方向に延びる第1軸線J1を回転中心として水平方向に回転可能になっている。
【0026】
第1回転部12には、水平方向に延びる第2軸線J2を回転中心として、時計回り方向又は反時計回り方向に回転可能に第2回転部としての下アーム13の下端部が連結されている。下アーム13の上端部には、上アーム14が、水平方向に延びる第3軸線J3を回転中心として、時計回り方向又は反時計回り方向に回転可能に連結されている。上アーム14は、基端側(回転の際に第3軸線J3を回転中心とする関節側)と先端側とで2つのアーム部に分割されて構成されており、基端側は第3回転部としての第1上アーム14A(第3回転部)、先端側は第4回転部としての第2上アーム14B(第4回転部)となっている。第2上アーム14Bは、上アーム14の長手方向に延びる第4軸線J4を回転中心として、第1上アーム14Aに対してねじり方向に回転可能になっている。
【0027】
第2上アーム14Bの先端部には、第5回転部としての手首部15が設けられている。手首部15は、水平方向に延びる第5軸線J5を回転中心として、第2上アーム14Bに対して回転可能になっている。手首部15の先端部には、ワークやツール等を取り付けるための第6回転部としてのハンド部16が設けられている。ハンド部16は、その中心線である第6軸線J6を回転中心として、ねじり方向に回転可能になっている。なお、ハンド部16の中心点16aであるTCP(Tool Center Point)が制御点として設定されている。
【0028】
ロボット10の各回転部は、それぞれに対応して設けられるモータ41(図2参照)により駆動される。モータ41は、正逆両方向の回転が可能であり、モータ41の駆動により原点位置を基準として各回転部が駆動される。
【0029】
ロボットシステムは、さらに、ロボット10を制御するコントローラ20と、コントローラ20に電気的に接続されたティーチングペンダント30とを備えている。ティーチングペンダント30は、CPU、ROM、及びRAMを含むマイクロコンピュータ、各種の手動操作キー、並びにディスプレイ等を備えている。ペンダント30は、コントローラ20と通信可能となっている。オペレータは、ペンダント30を手動操作して、ロボット10の動作プログラムの作成、修正、登録、各種パラメータの設定を行うことができる。動作プログラムの修正等を行うティーチングでは、作業において制御点であるTCPが通過する教示点を教示する。そして、オペレータは、コントローラ20を介して、ティーチングされた動作プログラムに基づきロボット10を動作させることができる。
【0030】
続いて、図2を用いて、ロボットシステムの電気的構成について説明する。
【0031】
コントローラ20は、外部電源40(商用電源)から出力された交流電圧を直流電圧に変換する整流器21と、整流器21から出力される直流電圧が供給される駆動部22とを備えている。駆動部22は、整流器21から出力された直流電圧を平滑化するコンデンサ23と、コンデンサ23から出力された直流電圧を交流電圧に変換し、モータ41の各ステータ巻線41U,41V,41Wに印加する3相インバータ24を備えている。モータ41及びインバータ24は、ロボット10の各回転部のそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0032】
インバータ24は、ハイサイドスイッチSWHとローサイドスイッチSWLとの直列接続体を3つ備えている。これら直列接続体には、上記コンデンサ23が並列接続されている。U相のハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLの接続点には、U相のステータ巻線41Uの第1端が接続されている。V相のハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLの接続点には、V相のステータ巻線41Vの第1端が接続されている。W相のハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLの接続点には、W相のステータ巻線41Wの第1端が接続されている。各ステータ巻線41U,41V,41Wの第2端は、互いに中性点で接続されている。ちなみに本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的には、IGBTを用いている。そして、各スイッチSWH,SWLには、各フリーホイールダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。また本実施形態では、各ステータ巻線41U,41V,41Wを有するモータ41として、永久磁石同期機を用いている。
【0033】
コントローラ20は、外部電源40と駆動部22とを接続する電気経路上に設けられた電源遮断部25を備えている。本実施形態では、電源遮断部25として、コンタクタ(電磁接触器)を用いている。電源遮断部25は、その接続状態が導通状態とされることにより外部電源40と駆動部22との間を電気的に接続し、その接続状態が遮断状態とされることにより外部電源40と駆動部22との間を電気的に遮断する。
【0034】
コントローラ20は、モータ41の駆動制御を行う制御部26を備えている。制御部26は、マイクロプロセッサを主体として構成され、また、モータ41の回転位置情報を検出する回転検出部としてのエンコーダ42の出力信号を取得可能に構成されている。エンコーダ42は、各モータ41に対応して個別に設けられている。制御部26は、各回転軸に対応して設けられるモータ41の制御量(例えば回転速度)をその指令値に制御すべく、ハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLを駆動する制御信号であるPWM信号をインバータ24に対して出力する。
【0035】
コントローラ20は、信号遮断部27を備えている。信号遮断部27は、制御部26とインバータ24とを接続するPWM信号伝達用の信号伝達経路上に設けられている。信号遮断部27は、信号伝達経路上に設けられたバッファIC27a(例えばスリーステートバッファ)と、スイッチ27bとを有している。スイッチ27bは、通電操作されることにより、電源28とバッファIC27aとの間の電気的な接続状態を導通状態及び遮断状態のいずれかに切り替えるものである。スイッチ27bが導通状態とされることにより、信号伝達経路が信号通過可能状態とされる。これにより、制御部26から出力されたPWM信号は、バッファIC27aを介してインバータ24に伝達される。一方、スイッチ27bが遮断状態とされることにより、信号伝達経路が信号遮断状態とされる。これにより、制御部26から出力されたPWM信号は、バッファIC27aを通過することができず、PWM信号がインバータ24に伝達されない。その結果、インバータ24を構成する全てのハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLがオフされる。
【0036】
コントローラ20は、ロボット10及び制御部26の異常の有無を監視する監視部29を備えている。監視部29は、エンコーダ42の出力信号を取得可能に構成されている。また本実施形態において、制御部26及び監視部29のそれぞれは、互いに異常の有無を監視し合う機能を有している。本実施形態では、コントローラ20において監視部29のみが信号遮断部27及び電源遮断部25を直接切り替え操作できる。このため、制御部26は、信号遮断部27及び電源遮断部25を直接切り替え操作できない。すなわち、制御部26と電源遮断部25とは信号線により直接接続されておらず、制御部26と信号遮断部27とは信号線により操作可能なようには直接接続されていない。
【0037】
なお本実施形態では、制御部26、監視部29、電源遮断部25、駆動部22及び信号遮断部27が共通の筐体20aに収容されている。
【0038】
続いて、異常検知に係る監視部29及び制御部26の処理について説明する。
【0039】
まず、図3を用いて、監視部29の処理について説明する。この処理は、監視部29により例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0040】
この一連の処理では、まずステップS10において、ロボット10及び制御部26のうち少なくとも一方に異常が検知されたか否かを判定する。以下、ロボット10及び制御部26のそれぞれの異常検知手法について説明する。
【0041】
ロボット10の異常検知手法について説明すると、本実施形態では、エンコーダ42により検出された回転位置情報に基づく回転軸の回転角度とその指令角度との偏差が所定量以上になったと判定した場合、ロボット10の異常が検知されたと判定する。なお、指令角度とは、例えば、ロボット10の駆動制御がPTP制御で行われる場合、PTP制御により定められる各回転軸の指令回転角度のことであり、駆動制御がCP制御で行われる場合、制御点の指令値を逆変換処理することにより算出される各回転軸の回転角度のことである。
【0042】
一方、制御部26の異常検知手法について説明すると、本実施形態では、ウォッチドックタイマに基づいて制御部26の異常を検知する。
【0043】
ステップS10において異常が検知されたと判定した場合には、ステップS11に進み、スイッチ27bを導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、信号遮断部27が信号通過可能状態から信号遮断状態に切り替えられる。また、電源遮断部25を導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、外部電源40から駆動部22への給電が遮断される。
【0044】
続いて図4を用いて、制御部26の処理について説明する。この処理は、制御部26により例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0045】
この一連の処理では、まずステップS20において、ロボット10の異常が検知されたか否かを判定する。ここでロボット10の異常検知手法は、先の図3のステップS10で説明した手法と同じ手法を用いればよい。
【0046】
ステップS20において異常が検知されたと判定した場合には、ステップS21に進む。ステップS21では、信号遮断部27を信号通過可能状態から信号遮断状態に切り替える指示と、電源遮断部25を導通状態から遮断状態に切り替える指示とを監視部29に対して出力する。これにより、監視部29は、信号遮断部27を信号遮断状態に切り替え、電源遮断部25を遮断状態に切り替える。
【0047】
一方、ステップS20において否定判定した場合には、ステップS22に進み、監視部29の異常が検知されたか否かを判定する。本実施形態では、ウォッチドックタイマに基づいて監視部29の異常を検知する。
【0048】
ステップS22において異常が検知されたと判定した場合には、ステップS23に進み、インバータ24に対するPWM信号の出力を停止する。これにより、ロボット10の駆動制御を停止させる。
【0049】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0050】
コントローラ20は、信号遮断部27と、監視部29とを備えている。監視部29は、ロボット10及び制御部26の少なくとも一方の異常を検知した場合、スイッチ27bを導通状態から遮断状態に切り替える。このため、制御部26に異常が生じた場合、監視部29により信号遮断部27が信号遮断状態に切り替えられる。これにより、制御部26から誤ったPWM信号が出力されたとしても、そのPWM信号はインバータ24には伝達されない。したがって、ロボット10が完全に停止するまでにロボット10が予期せぬ動作を行うことを防止できる。よって、ロボット10を完全に停止させるまで作業者の安全を確保することができる。
【0051】
また、監視部29により信号遮断部27が信号遮断状態に切り替えられることにより、ロボット10が完全に停止するまでにおいて、制御部26からの誤ったPWM信号により同相のハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLが同時にオンされることを防止できる。これにより、ステータ巻線41U,41V,41Wに発生する誘起電圧によりインバータ24に短絡電流が流れることを防止できる。
【0052】
コントローラ20において監視部29のみが信号遮断部27を切り替え操作できるようにコントローラ20を構成した。これにより、コントローラ20の安全性に係る部分について、第三者機関の認証を得るための作業を容易化することができる。つまり、第三者機関の認証対象範囲には、ロボット10を停止させるための構成が含まれる。本実施形態では、制御部26が信号遮断部27を直接切り替え操作できず、監視部29が信号遮断部27を直接切り替え操作する構成である。このため、制御部26を改良した場合であっても、その改良が信号遮断部27を切り替え操作する監視部29に影響しない。したがって本実施形態によれば、制御部26を改良した場合において、認証を得るための作業を容易化することができ、認証を得るための作業負荷を低減することができる。
【0053】
監視部29及び制御部26のそれぞれは、エンコーダ42の回転位置情報に基づき算出された回転角度とその指令角度との偏差が所定量以上になったと判定した場合、ロボット10に異常が生じていることを検知した。この検知手法は、各回転軸の回転角度がロボット10の各回転部の動作状態を精度よく把握できるパラメータであるため、信頼性の高い異常検知手法である。このため本実施形態では、ロボット10に異常が生じたことを精度よく検知することができる。これにより、信号遮断部27を信号遮断状態に切り替えるべき状況を的確に把握することができる。
【0054】
制御部26及び監視部29のそれぞれは、互いに異常の有無を監視する機能を有している。監視部29は、制御部26の異常を検知した場合、電源遮断部25を遮断状態に切り替え、また、信号遮断部27を信号遮断状態に切り替える。このため、ロボット10を停止させる手段を2重化することができる。また、制御部26は、監視部29の異常を検知した場合、インバータ24に対するPWM信号の出力を停止した。これにより、監視部29及び制御部26のうちいずれに異常が生じた場合であっても、ロボット10を停止させることができる。
【0055】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態を以下のように変更して、実施することもできる。
【0056】
・上記実施形態において、制御部26及び監視部29による異常検知対象に、ロボット10に加えて、電源遮断部25等、ロボットシステムの他の構成部品を含めてもよい。
【0057】
・制御部26及び監視部29によるロボット10の異常検知手法としては、上記実施形態に示したものに限らない。例えば、回転位置情報に基づき算出された現在の制御点が所定の動作範囲からはずれたと判定された場合や、回転位置情報に基づき算出された現在の回転軸の回転速度が規定速度以上であると判定された場合に、ロボット10の異常を検知してもよい。
【0058】
・先の図4のステップS22で肯定判定された場合、ロボット10にダイナミックブレーキをかけながらロボット10を停止させるようなPWM信号を出力してもよい。なお、ダイナミックブレーキとは、ステータ巻線41U,41V,41W及びインバータ24のスイッチを含む閉回路を形成するようにインバータ24を操作することにより、モータ41を減速停止させるものである。
【0059】
また、図4のステップS22で肯定判定された場合、ロボット10の回転部が作業者から離れるような動作をロボット10に実行させながらロボット10を停止させるPWM信号を出力してもよい。具体的には例えば、予め定められた作業者の作業スペースからロボット10の中心点16aが離れるように第1回転部12を第1軸線J1まわりに旋回させながらロボット10を停止させるPWM信号を出力すればよい。なお、作業者の作業スペースに係る情報は、例えばコントローラ20のメモリに予め記憶される。
【0060】
・上記実施形態において、制御部26は、ロボット10の異常を検知した場合、電源遮断部25の接続状態を導通状態から遮断状態に切り替える指示を監視部29に対して出力しなくてもよい。
【0061】
・上記実施形態において、監視部29は、ロボット10及び制御部26のうち少なくとも一方の異常を検知した場合、電源遮断部25の接続状態を遮断状態に切り替えなくてもよい。
【0062】
・上記実施形態において、制御部26によって直接切り替え操作される電源遮断部を外部電源40と駆動部22とを接続する電気経路上にさらに設けてもよい。すなわち、監視部29と制御部26とのそれぞれに対応して個別に電源遮断部を設けてもよい。
【0063】
・電源遮断部25としては、コンタクタに限らず、例えばIGBT等の半導体スイッチであってもよい。また、電源遮断部25はコントローラ20に必須の構成ではない。
【0064】
・上記実施形態において、駆動部22及び電源遮断部25が共通の筐体20aに収容されていなくてもよく、少なくとも制御部26、監視部29及び信号遮断部27が筐体20aに収容されていればよい。
【0065】
・ロボットとしては、垂直多関節型のものに限らず、例えば水平多関節型のものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…ロボット、20…コントローラ、22…駆動部、25…電源遮断部、26…制御部、27…信号遮断部、29…監視部、41…モータ。
図1
図2
図3
図4