(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の回転部と、前記各回転部の回転軸を駆動するモータとを有するロボットを備えるロボットシステムを構成し、前記ロボットを駆動制御するロボット制御装置において、
前記ロボットの駆動制御用の制御信号を出力する制御部と、
外部電源から電力が供給されることにより動作可能に構成され、前記制御部から出力された前記制御信号を入力として前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部と前記外部電源との間の電気的な接続状態を導通状態及び遮断状態のいずれかに切り替える電源遮断部と、
前記ロボットシステムの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットシステムの異常を検知した場合、前記電源遮断部の接続状態を前記導通状態から前記遮断状態に切り替えるように前記電源遮断部を切り替え操作する監視部と、を備え、
前記制御部が前記電源遮断部を直接切り替え操作できないように前記ロボット制御装置が構成されており、
前記制御部は、前記ロボットの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットの異常を検知した場合、前記電源遮断部の接続状態を前記導通状態から前記遮断状態に切り替える指示を前記監視部に対して出力し、また、前記制御信号として前記ロボットの停止用の信号を前記駆動部に対して出力することを特徴とするロボット制御装置。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、下記特許文献1に見られるように、モータの駆動制御用の制御信号を出力する制御部と、外部電源から第1〜第3の電磁接触器を介して電力が供給されることにより動作可能に構成され、制御部から出力された制御信号を入力としてモータを駆動する駆動部とを備えるものが知られている。制御部は、回転軸の回転位置を検出するエンコーダからの位置データに基づいて、ロボットの異常の有無を監視する機能を有している。制御部は、ロボットの異常を検知した場合、第1の電磁接触器を導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、外部電源から駆動部への給電が遮断され、ロボットが停止させられる。
【0003】
上記制御装置は、さらに、制御部から完全に独立した監視部を備えている。監視部は、上記エンコーダからの位置データに基づいて、ロボットの異常の有無を監視する機能を有している。監視部は、ロボットの異常を検知した場合、第2,第3の電磁接触器を導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、外部電源から駆動部への給電が遮断され、ロボットが停止させられる。
【0004】
このように、下記特許文献1に記載の制御装置では、制御部及び監視部のそれぞれが独立してロボットの異常の有無を監視することにより、ロボットの停止を保証している。すなわち、特許文献1に記載の制御装置では、監視部が設けられない場合も考慮して、制御部だけでもロボットの停止を保証できるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造ラインにおけるロボットの動作領域に作業者が立ち入ることを防止するために、動作領域を安全防護柵で囲う安全対策が従来から講じられている。ここで近年、製品製造の効率化等を図るべく、製造ラインにおいてロボット及び作業者が協調して作業を行うことも考えられている。この場合、安全防護柵を設置しないこともあり得るため、安全防護柵に代わる安全対策を講じる必要がある。この安全対策を講じるために、監視部が制御装置の必須の構成となる。
【0007】
上記特許文献1に記載の制御装置では、監視部とともに、監視部から独立した制御部もロボットの異常の有無を監視し、異常検知時に給電を遮断している。このため、ロボットに異常が生じていない場合であっても、制御部に異常が生じたときには、ロボットの動作中に第1の電磁接触器が制御部によって不用意に切り替え操作されるおそれがある。その結果、監視部による第2,第3の電磁接触器の遮断とは別に、制御部により第1の電磁接触器の遮断が行われる。遮断が行われると、モータが停止するにあたり、制御部による制御を離れた状態でモータの減速処理が行われることとなる。制御部による制御を離れた状況下においては、制御部による制御下では発生しないようなロボットの動作がなされることがある。このような動作は、制御部による制御下における通常の制御動作とは異なる事が多いため、ロボットの予期せぬ動作となることがある。ロボットが予期せぬ動作を行うと、ロボットと協調して作業を行う作業者に不安を与えるおそれがある。したがって、監視部によるロボットの安全な停止に影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ロボットシステムに異常が生じた場合であっても、監視部によるロボットの安全な停止を保証できるロボット制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、複数の回転部と、前記各回転部の回転軸を駆動するモータとを有するロボットを備えるロボットシステムを構成し、前記ロボットを駆動制御するロボット制御装置において、前記ロボットの駆動制御用の制御信号を出力する制御部と、外部電源から電力が供給されることにより動作可能に構成され、前記制御部から出力された前記制御信号を入力として前記モータを駆動する駆動部と、前記駆動部と前記外部電源との間の電気的な接続状態を導通状態及び遮断状態のいずれかに切り替える電源遮断部と、前記ロボットシステムの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットシステムの異常を検知した場合、前記電源遮断部の接続状態を前記導通状態から前記遮断状態に切り替えるように前記電源遮断部を切り替え操作する監視部と、を備え、前記制御部が前記電源遮断部を直接切り替え操作できないように前記ロボット制御装置が構成されており、前記制御部は、前記ロボットシステムの異常の有無を監視する機能を有し、前記ロボットシステムの異常を検知した場合、前記電源遮断部の接続状態を前記導通状態から前記遮断状態に切り替える指示を前記監視部に対して出力することを特徴とする。
【0010】
上記発明において、監視部は、ロボットシステムの異常の有無を監視する機能を有している。監視部は、ロボットシステムの異常を検知した場合、電源遮断部の接続状態を導通状態から遮断状態に切り替えるように電源遮断部を切り替え操作する。これにより、外部電源から駆動部への給電が遮断され、ロボットが停止させられる。また上記発明において、制御部は、ロボットシステムの異常の有無を監視する機能を有している。制御部は、ロボットシステムの異常を検知した場合、電源遮断部の接続状態を導通状態から遮断状態に切り替える指示を監視部に対して出力する。切り替え指示が監視部に入力されることにより、監視部が最終的に電源遮断部の接続状態を遮断状態に切り替える。これにより、外部電源から駆動部への給電が遮断され、ロボットが停止させられる。
【0011】
ここで、監視部が最終的に電源遮断部の接続状態を遮断状態に切り替える構成は、上記発明のロボット制御装置が、制御部が電源遮断部を直接切り替え操作できないように構成されているために設けられている。つまり、例えば上記特許文献1のように制御部が電源遮断部を切り替え操作できる従来の構成においては、電源遮断部の接続状態を遮断状態に切り替えるべき状況下において、制御部自身が誤動作することにより、接続状態が導通状態に維持されるように制御部の制御がなされ、電源遮断部の接続状態を遮断状態に切り替えることができなくなるといった問題が生じるおそれがある。これに対し上記発明では、制御部が電源遮断部の切り替え操作を直接実施できないため、そのような問題が発生しない。このため上記発明によれば、制御部に異常が生じた場合であっても、電源遮断部が制御部によって不用意に切り替え操作されることを防止できる。このため上記発明によれば、監視部によるロボットの安全な停止を保証することができる。
【0012】
また上記発明によれば、電源遮断部への切り替え指示及び電源遮断部による遮断処理の進行にかかる時間の間において、制御部による制御下でモータの停止処理を行わせることもできる。このため、ロボットの予期せぬ動作が発生する期間を減らすことができる。また、電源遮断部への切り替え指示及び電源遮断部による遮断処理の進行にかかる期間は、モータ停止開始の初期段階であるのでモータ動作量が大きい。したがって、モータ動作量が大きい時にモータの停止処理を行うことにより、ロボットの予期せぬ大きな動作を抑制することができ、ロボットシステムの安全をより高めることができる。
【0013】
さらに上記発明によれば、ロボット制御装置の安全性に係る部分について、第三者機関の認証を得るための作業を容易化することができる。つまり、第三者機関の認証対象範囲には、電源遮断部を切り替え操作する構成が含まれる。このため上記特許文献1に記載の制御装置では、電磁接触器を直接切り替え操作する制御部を改良した場合、その改良が、監視部によりロボットを安全に停止させる機能に影響がないと立証するための作業負荷が大きくなるおそれがある。これに対し、上記発明では、制御部が電源遮断部を直接切り替え操作できないように構成されているため、制御部を改良した場合であっても、その改良が監視部によるロボットの安全な停止に影響しないと立証することが容易となる。したがって上記発明によれば、制御部を改良した場合において、認証を得るための作業を容易化することができ、認証を得るための作業負荷を低減することができる。
【0014】
第2の発明は、前記制御部は、前記ロボットの異常を検知した場合、さらに、前記制御信号として前記ロボットの停止用の信号を前記駆動部に対して出力することを特徴とする。
【0015】
上記発明では、ロボットの異常が検知された場合、さらにロボットの停止用の信号を制御部から駆動部に対して出力する。このため、ロボットを停止させる手段を2重化することができる。しかも上記発明では、駆動部への給電を遮断することによりロボットを停止させる以外に、ロボットを制御により停止させることも可能となる。なお、ロボットの停止用の信号として、ロボットに所定の動作を実行させながら停止させる信号を採用することもできる。
【0016】
第3の発明は、前記制御部及び前記監視部のそれぞれは、互いに異常の有無を監視する機能を有しており、前記監視部は、前記制御部の異常を検知した場合、前記電源遮断部の接続状態を前記導通状態から前記遮断状態に切り替えるように前記電源遮断部を切り替え操作し、前記制御部は、前記監視部の異常を検知した場合、前記制御信号として前記ロボットの停止用の信号を前記駆動部に対して出力することを特徴とする。
【0017】
上記発明では、監視部及び制御部のうちいずれかに異常が生じた場合であっても、ロボットを停止させることができる。また、監視部に異常が生じた場合であっても、制御部が電源遮断部を直接切り替えるのではなく、ロボットの停止用の信号によりロボットを停止させることができる。
【0018】
第4の発明は、前記ロボットシステムには、前記回転軸の回転位置情報を検出する回転検出部が備えられ、前記制御部は、前記回転検出部により検出された前記回転位置情報とその指令情報との偏差が所定量以上になったと判定した場合、前記ロボットに異常が生じていることを検知し、前記ロボットの異常を検知した場合、前記電源遮断部の接続状態を前記導通状態から前記遮断状態に切り替える指示を前記監視部に対して出力することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、制御部は、回転検出部により検出された回転位置情報とその指令情報との偏差が所定量以上になったと判定した場合、ロボットの異常を検知する。ロボットに異常が生じると、ロボットの駆動制御ができなくなって上記偏差が大きくなるため、上記発明によれば、ロボットの異常を精度よく検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ロボット制御装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るロボットは、例えば産業用ロボットとして機械組立工場などの組立システムにて用いられる。
【0022】
まず、
図1を用いて、本実施形態に係るロボットシステムの概要について説明する。
【0023】
図1に示すように、ロボットシステムを構成するロボット10は、複数の回転部と、各回転部を互いに連結する関節とを備えている。本実施形態に係るロボット10は、6軸の垂直多関節型ロボットとして構成されている。
【0024】
ロボット10は、床等に固定される固定部11と、その固定部11の上方に設けられる第1回転部12とを有している。ロボット10のアームは、第1回転部12に加え、下アーム13、上アーム14、手首部15、及びハンド部16を有している。第1回転部12は、アームの両端部のうちアーム先端部とは反対側の根元部に相当する。第1回転部12は、鉛直方向に延びる第1軸線J1を回転中心として水平方向に回転可能になっている。
【0025】
第1回転部12には、水平方向に延びる第2軸線J2を回転中心として、時計回り方向又は反時計回り方向に回転可能に第2回転部としての下アーム13の下端部が連結されている。下アーム13の上端部には、上アーム14が、水平方向に延びる第3軸線J3を回転中心として、時計回り方向又は反時計回り方向に回転可能に連結されている。上アーム14は、基端側(回転の際に第3軸線J3を回転中心とする関節側)と先端側とで2つのアーム部に分割されて構成されており、基端側は第3回転部としての第1上アーム14A(第3回転部)、先端側は第4回転部としての第2上アーム14B(第4回転部)となっている。第2上アーム14Bは、上アーム14の長手方向に延びる第4軸線J4を回転中心として、第1上アーム14Aに対してねじり方向に回転可能になっている。
【0026】
第2上アーム14Bの先端部には、第5回転部としての手首部15が設けられている。手首部15は、水平方向に延びる第5軸線J5を回転中心として、第2上アーム14Bに対して回転可能になっている。手首部15の先端部には、ワークやツール等を取り付けるための第6回転部としてのハンド部16が設けられている。ハンド部16は、その中心線である第6軸線J6を回転中心として、ねじり方向に回転可能になっている。なお、ハンド部16の中心点16aであるTCP(Tool Center Point)が制御点として設定されている。
【0027】
ロボット10の各回転部は、それぞれに対応して設けられるモータ41(
図2参照)により駆動される。モータ41は、正逆両方向の回転が可能であり、モータ41の駆動により原点位置を基準として各回転部が駆動される。
【0028】
ロボットシステムは、さらに、ロボット10を制御するコントローラ20と、コントローラ20に電気的に接続されたティーチングペンダント30とを備えている。ティーチングペンダント30は、CPU、ROM、及びRAMを含むマイクロコンピュータ、各種の手動操作キー、並びにディスプレイ等を備えている。ペンダント30は、コントローラ20と通信可能となっている。オペレータは、ペンダント30を手動操作して、ロボット10の動作プログラムの作成、修正、登録、各種パラメータの設定を行うことができる。動作プログラムの修正等を行うティーチングでは、作業において制御点であるTCPが通過する教示点を教示する。そして、オペレータは、コントローラ20を介して、ティーチングされた動作プログラムに基づきロボット10を動作させることができる。
【0029】
続いて、
図2を用いて、ロボットシステムの電気的構成について説明する。
【0030】
コントローラ20は、外部の電源40を電力供給源としてモータ41を駆動する駆動部21を備えている。本実施形態において、駆動部21は、直流電圧を交流電圧に変換し、3相モータ41のステータ巻線に印加する3相インバータを含むインテリジェントパワーモジュール(IPM)として構成されている。なお、モータ41及びインバータは、ロボット10の各回転部のそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0031】
コントローラ20は、電源40と駆動部21とを接続する電気経路上に設けられた電源遮断部22を備えている。本実施形態では、電源遮断部22として、コンタクタ(電磁接触器)を用いている。電源遮断部22は、その接続状態が導通状態とされることにより電源40と駆動部21との間を電気的に接続し、その接続状態が遮断状態とされることにより電源40と駆動部21との間を電気的に遮断する。なお、電源40と駆動部21とを接続する電気経路上であってコントローラ20の外部の電気経路上には、この電気経路を手動操作により導通状態及び遮断状態のいずれかに切り替える非常停止スイッチが設けられている。
【0032】
コントローラ20は、モータ41の駆動制御を行う制御部23を備えている。制御部23は、マイクロプロセッサを主体として構成され、また、モータ41の回転位置情報を検出する回転検出部としてのエンコーダ42の出力信号を取得可能に構成されている。エンコーダ42は、各モータ41に対応して個別に設けられている。制御部23は、各モータ41の制御量(例えば回転速度)をその指令値に制御すべく、駆動部21に対して制御信号であるPWM信号を出力する。
【0033】
コントローラ20は、ロボット10及び制御部23の異常の有無を監視する監視部24を備えている。監視部24は、エンコーダ42の出力信号を取得可能に構成されている。監視部24は、ロボット10及び制御部23のうち少なくとも一方の異常を検知した場合、電源遮断部22を導通状態から遮断状態に切り替える。本実施形態では、コントローラ20において監視部24のみが電源遮断部22を直接切り替え操作できるようにコントローラ20が構成されている。このため、制御部23は、電源遮断部22を直接切り替え操作できない。すなわち本実施形態では、制御部23と電源遮断部22とは信号線により直接接続されていない。
【0034】
なお本実施形態において、制御部23及び監視部24のそれぞれは、互いに異常の有無を監視し合う機能を有している。また本実施形態では、制御部23、監視部24、電源遮断部22及び駆動部21が共通の筐体20aに収容されている。
【0035】
制御部23が電源遮断部22を直接切り替え操作できない構成は、制御部23に異常が生じた場合にロボット10が予期せぬ動作を行うことを防止するために設けられている。つまり、制御部23が電源遮断部22を直接切り替え操作できる構成では、制御部23に異常が生じた場合において、ロボット10の動作中に電源遮断部22が制御部23によって不用意に切り替え操作されるおそれがある。具体的には、例えば、制御部23によって電源遮断部22が不用意に遮断状態に切り替えられるおそれがある。この場合、ロボット10が予期せぬ動作を行い、ロボット10と協調して作業を行う作業者に不安を与えるおそれがある。また例えば、導通状態及び遮断状態が交互に繰り返されるように制御部23によって電源遮断部22が切り替え操作されるおそれがある。この場合、ロボット10が予期せぬ動作を行うことに加えて、電源遮断部22が溶着するおそれもある。
【0036】
こうした問題を解決すべく、制御部23が電源遮断部22を直接切り替え操作できないようにコントローラ20が構成されている。以下、コントローラ20が行う処理のうち、異常検知に係る制御部23及び監視部24の処理について説明する。
【0037】
まず、
図3を用いて、制御部23の処理について説明する。この処理は、制御部23により例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0038】
この一連の処理では、まずステップS10において、ロボット10及び監視部24のうち少なくとも一方の異常が検知されたか否かを判定する。以下、ロボット10及び監視部24のそれぞれの異常検知手法について説明する。
【0039】
ロボット10の異常検知手法について説明すると、本実施形態では、エンコーダ42により検出された回転位置情報に基づく回転軸の回転角度とその指令角度との偏差が所定量以上になったと判定した場合、ロボット10の異常が検知されたと判定する。なお、指令角度とは、例えば、ロボット10の駆動制御がPTP制御で行われる場合、PTP制御により定められる各回転軸の指令回転角度のことであり、駆動制御がCP制御で行われる場合、制御点の指令値を逆変換処理することにより算出される各回転軸の回転角度のことである。
【0040】
一方、監視部24の異常検知手法について説明すると、本実施形態では、ウォッチドックタイマに基づいて監視部24の異常を検知する。
【0041】
ステップS10において異常検知されたと判定した場合には、ステップS11に進み、電源遮断部22の接続状態を導通状態から遮断状態に切り替える指示を監視部24に対して出力する。これにより、電源40から駆動部21への給電が遮断される。また、駆動部21に対するPWM信号の出力を停止する。これにより、ロボット10の駆動制御を停止させる。
【0042】
続いて
図4を用いて、監視部24の処理について説明する。この処理は、監視部24により例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0043】
この一連の処理では、まずステップS20において、ロボット10及び制御部23のうち少なくとも一方に異常が検知されたか否かを判定する。ここでロボット10の異常検知手法は、先の
図3のステップS10で説明した手法と同じ手法を用いればよい。また、制御部23の異常検知手法は、先の
図3のステップS10で説明したように、ウォッチドックタイマに基づく異常検知手法を採用すればよい。
【0044】
ステップS20において異常が検知されたと判定した場合には、ステップS21に進み、通電操作により電源遮断部22を導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、電源40から駆動部21への給電が遮断される。
【0045】
一方、ステップS20において異常が検知されないと判定した場合には、ステップS22に進み、電源遮断部22を遮断状態に切り替える指示が制御部23からあったか否かを判定する。ステップS22において肯定判定した場合には、ステップS21に進み、電源遮断部22を導通状態から遮断状態に切り替える。
【0046】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0047】
ロボットシステムにおいて監視部24のみが電源遮断部22を直接切り替え操作できるようにコントローラ20が構成されている。制御部23は、ロボット10及び監視部24のうち少なくとも一方の異常を検知した場合、電源遮断部22の接続状態を導通状態から遮断状態に切り替える指示を監視部24に対して出力する。切り替え指示が監視部24に入力されることにより、監視部24が最終的に電源遮断部22の接続状態を遮断状態に切り替える。これにより、電源40から駆動部21への給電が遮断され、ロボット10が停止させられる。このような構成によれば、制御部23に異常が生じた場合であっても、電源遮断部22が制御部23によって不用意に切り替え操作されることを防止できる。したがって、ロボット10と協調作業を行う作業者に不安を与えることなく、監視部24によるロボット10の安全な停止を保証することができる。
【0048】
さらに、コントローラ20の安全性に係る部分について、第三者機関の認証を得るための作業を容易化することができる。つまり、第三者機関の認証対象範囲には、電源遮断部22を直接切り替え操作する構成が含まれる。本実施形態では、制御部23が電源遮断部22を直接切り替え操作できないように構成されているため、制御部23を改良した場合であっても、その改良が電源遮断部22を直接切り替え操作する監視部24に影響しない。したがって本実施形態によれば、制御部23を改良した場合において、認証を得るための作業を容易化することができ、認証を得るための作業負荷を低減することができる。
【0049】
認証を得るには、監視部24に対して個別に電源遮断部22を設ける必要がある。ここで、上記特許文献1に記載の制御装置は、制御部及び第1,第2監視部に対して個別に電源遮断部を設けることにより、3つの電磁接触器を備える必要がある。これに対し、本実施形態では、制御部23が電源遮断部22を直接切り替え操作しないため、監視部24に対してのみ電源遮断部22を設ければよい。これにより、電源遮断部22の数を削減することができる。
【0050】
制御部23は、ロボット10の異常を検知した場合、駆動部21に対するPWM信号の出力を停止した。このため、監視部24により電源遮断部22が遮断状態に切り替えられる構成とあわせて、ロボット10を停止させる手段を2重化することができる。
【0051】
制御部23及び監視部24のそれぞれは、エンコーダ42の回転位置情報に基づき算出された回転角度とその指令角度との偏差が所定量以上になったと判定した場合、ロボット10に異常が生じていることを検知した。この検知手法は、各回転軸の回転角度がロボット10の各回転部の動作状態を精度よく把握できるパラメータであるため、信頼性の高い異常検知手法である。このため本実施形態では、ロボット10に異常が生じたことを精度よく検知することができる。
【0052】
制御部23及び監視部24のそれぞれは、互いに異常の有無を監視する機能を有している。監視部24は、制御部23の異常を検知した場合、電源遮断部22の接続状態を導通状態から遮断状態に切り替えるように電源遮断部22を切り替え操作した。制御部23は、監視部24の異常を検知した場合、駆動部21に対するPWM信号の出力を停止した。この構成によれば、監視部24及び制御部23のうちいずれに異常が生じた場合であっても、ロボット10を停止させることができる。
【0053】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態を以下のように変更して、実施することもできる。
【0054】
・上記実施形態において、制御部23及び監視部24による異常検知対象に、ロボット10に加えて、電源遮断部22等、ロボットシステムの他の構成部品を含めてもよい。
【0055】
・制御部23及び監視部24によるロボット10の異常検知手法としては、上記実施形態に示したものに限らない。例えば、回転位置情報に基づき算出された現在の制御点が所定の動作範囲からはずれたと判定された場合や、回転位置情報に基づき算出された現在の回転軸の回転速度が規定速度以上であると判定された場合に、ロボット10の異常を検知してもよい。
【0056】
・先の
図3のステップS10で肯定判定された場合、ロボット10にダイナミックブレーキをかけながらロボット10を停止させるようなPWM信号を出力してもよい。なお、ダイナミックブレーキとは、モータ41のステータ巻線及び駆動部21のインバータのスイッチを含む閉回路を形成するようにインバータを操作することにより、モータ41を減速停止させるものである。
【0057】
また、
図3のステップS10で肯定判定された場合、ロボット10の回転部が作業者から離れるような動作をロボット10に実行させながらロボット10を停止させるPWM信号を出力してもよい。具体的には例えば、予め定められた作業者の作業スペースからロボット10の中心点16aが離れるように第1回転部12を第1軸線J1まわりに旋回させながらロボット10を停止させるPWM信号を出力すればよい。なお、作業者の作業スペースに係る情報は、例えばコントローラ20のメモリに予め記憶される。
【0058】
・上記実施形態において、監視部24を複数設けてもよい。この場合、各監視部が共通の電源遮断部を切り替え操作するようにしてもよいし、各監視部に対して個別に設けられた電源遮断部を各監視部が切り替え操作するようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態において、制御部23は、ロボット10の異常を検知した場合、PWM信号の出力を停止しなくてもよい。
【0060】
・電源遮断部22としては、コンタクタに限らず、例えばIGBT等の半導体スイッチであってもよい。
【0061】
・上記実施形態において、駆動部21が筐体20aに収容されていなくてもよく、少なくとも、電源遮断部22、制御部23及び監視部24が筐体20aに収容されていればよい。
【0062】
・ロボットとしては、垂直多関節型のものに限らず、例えば水平多関節型のものを採用してもよい。