(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば電子部品の製造時や駆動時に、素体内部に水が浸入した場合には、内部電極の侵食等に起因する特性劣化が招かれるため、電子部品には十分に高い耐湿性が求められる。上述した従来のキャパシタでは、回路基板に対向する面の外部電極と絶縁層との界面において、水が素体内部に浸入する虞があった。
【0007】
そこで、発明者らは、素体内部への水の浸入について検討を重ね、その結果、耐湿性の向上を図ることができる電子部品の構造を新たに見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、耐湿性の向上が図られた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子部品は、素体と、素体の内部に位置し、素体の一の面から端面が露出する複数の引き出し電極と、素体の一の面に設けられ、素体の一の面において露出する引き出し電極の端面の第1の部分と接する電極層と、素体の一の面に電極層と接するように設けられ、引き出し電極の端面の第1の部分に隣接する第2の部分と接する絶縁層とを備え、電極層のうちの絶縁層と接する部分が、絶縁層上に乗り上げている。
【0010】
上記電子部品によれば、絶縁層と接する部分において電極層が絶縁層上の乗り上げることで、電極層と絶縁層との界面を通る水の浸入ルートが延長されている。それにより、素体内部への水の浸入が効果的に抑制されて、耐湿性の向上が図られる。
【0011】
また、複数の引き出し電極は互いに平行に延在しており、複数の引き出し電極が延在する面の法線方向から見たときに、複数の引き出し電極が互いに重畳する領域があり、かつ、複数の引き出し電極が素体の一の面から露出する端面の長さが、電極層の長さよりも長い態様であってもよい。この場合、一対の電極層間を流れる電流の最短ルートが短縮され、等価直列インダクタンス(ESL)が低減される。
【0012】
さらに、絶縁層は、端面が傾斜しており、素体の一の面に接する側の面が他側の面よりも広くなっている態様であってもよい。この場合、この場合、絶縁層の端面付近に、クラック等の起点になる空隙が生じにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の種々の側面によれば、耐湿性の向上が図られた電子部品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る電子部品について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に、実施形態に係る電子部品として、積層キャパシタ10を示す。
図1に示すように、積層キャパシタ10は、略直方体形状の外形を有する素体20を備える。素体20は、対向する一対の端面20a、20bを有し、また、両端面20a、20bに直交するように延在し、かつ、両端面20a、20bを結ぶ底面(一の面)20cを有する。素体20の寸法は、一例として、長さ(両端面20a、20bの離間距離)が600μm、幅(両端面20a、20bの対向方向と底面20cの法線方向とに直交する方向の長さ)が300μm、高さが300μmであるが、これに限定されない。素体20の寸法は、長さを1000μm以下、幅を500μm以下、高さを500μm以下とすることが好ましい。
【0017】
素体20の内部には、複数のキャパシタ内部電極22、24が形成されている。各キャパシタ内部電極22、24は、素体20の底面20cに対して立直した姿勢で、端面20a、20bの対向方向に沿って延在している。そして、複数のキャパシタ内部電極22、24は、所定距離だけ離間されて互いに平行に積層されている。すなわち、複数のキャパシタ内部電極22、24は、素体20の端面20a、20bの対向方向および底面20cの法線方向に対して直交するように、積層されている。
【0018】
複数のキャパシタ内部電極22、24は、正極の内部電極22と負極の内部電極24とで構成されており、正極の内部電極22と負極の内部電極24とが交互に配置されている。各内部電極22、24は、一体的に形成された、主に容量を形成するための容量電極22a、24aと、主に電極を素体外部に引き出するための引き出し電極22b、24bとを有する。具体的には、
図2に示すように、内部電極24は、素体端面20a、20bの対向方向(
図2の左右方向)に長く延びる長方形状の容量電極24aと、容量電極24aの底面20c側に設けられて底面20cに露出する長方形状の引き出し電極24bとを有する。引き出し電極24bは、底面20cに沿って、端面20b近傍から底面20cの中央付近まで延びている。他方の内部電極22についても、内部電極24の容量電極24aと実質的に同一寸法の容量電極22aと、容量電極22aの底面20c側に設けられて底面20cに露出する長方形状の引き出し電極22bとを有する。
【0019】
なお、容量電極22a、24aの寸法は、一例として、長さ500μm、高さ200μm、厚さ1μmである。引き出し電極22b、24bの寸法は、一例として、長さ200μm、高さ50μm、厚さ1μmである。
【0020】
そして、素体20の底面20cには、一対の電極層30A、30Bおよび絶縁層40が形成されている。一対の電極層30A、30Bおよび絶縁層40は、
図1〜3に示すように、底面20cの幅方向(すなわち、内部電極22、24の積層方向)に全長に亘って形成されている。
【0021】
一対の電極層30A、30Bは、上述した内部電極22、24と接続される。具体的には、正極の電極層30Aは、端面20a側の底面領域に設けられ、底面20cに露出した各内部電極22の引き出し電極22bの端面23の一部と接し、それにより、電極層30Aと各内部電極22とが電気的に接続される。負極の電極層30Bは、端面20b側の底面領域に設けられ、底面20cに露出した各内部電極24の引き出し電極24bの端面25の一部と接し、それにより、電極層30Bと各内部電極24とが電気的に接続される。
【0022】
絶縁層40は、一対の電極層30A、30Bの間の領域を覆うように、底面20cの中央領域に設けられている。絶縁層40は、
図2に示すように、一対の電極層30A、30Bの両方と接し、底面20cに露出した各内部電極22の引き出し電極22bの端面23の一部と接し、かつ、底面20cに露出した各内部電極24の引き出し電極24bの端面25の一部と接している。
【0023】
ここで、
図4を参照しつつ、引き出し電極22b、24b、電極層30A、30Bおよび絶縁層40の位置関係について、より詳しく説明する。
【0024】
図4に示すように、各電極層30A、30Bはいずれも、絶縁層40の厚さよりも厚くなるように設計されており、絶縁層40と接する部分において絶縁層40上に乗り上げている。電極層30A、30Bと接する部分の絶縁層40が、電極層30A、30Bの下側(底面20c側)に潜り込んでいると言うこともできる。その結果、引き出し電極24bにおいては、端面25の第1の部分25aにおいて電極層30Bと接し、端面25の第1の部分25aの左側に隣接する第2の部分25bにおいて絶縁層40と接することとなる。引き出し電極22bについても、端面23の第1の部分において電極層30Bと接し、端面23の第1の部分25aの右側に隣接する第2の部分において絶縁層40と接することとなる。
【0025】
上述したように、各電極層30A、30Bが絶縁層40と接する部分で絶縁層40上に乗り上げている場合には、
図4に示すように、電極層30A、30Bと絶縁層40との界面が屈曲される。それにより、
図5に示した積層キャパシタのように、素体120の底面120cに同一厚さの電極130A、130Bおよび絶縁層140が単純に並設され、真っ直ぐな界面が形成される場合に比べて、積層キャパシタ10においては電極層30A、30Bと絶縁層40との界面の延長が図られている。
【0026】
そのため、積層キャパシタ10の素体20内部に、外部から水が浸入する場合には、その浸入ルート(
図4の矢印R1)は、
図5の構成における浸入ルート(
図5の矢印R2)よりも、絶縁層40を迂回する分だけ長くなる。
【0027】
以上において説明したように、電子部品10は、素体20と、素体20の内部に位置し、素体20の底面20cから端面23、25が露出する複数の引き出し電極22b、24bと、素体20の底面20cに設けられ、底面20cにおいて露出する引き出し電極22b、24bの端面23、25の第1の部分23a、25aと接する電極層30A、30Bと、底面20cに電極層30A、30Bと接するように設けられ、第1の部分23a、25aに隣接する第2の部分23b、25bと接する絶縁層40とを備え、電極層30A、30Bのうちの絶縁層40と接する部分が、絶縁層40上に乗り上げている。
【0028】
このような積層キャパシタ10においては、素体20内部への水の浸入ルートが長く、水の浸入が効果的に抑制されることで、高い耐湿性が実現されている。
【0029】
また、積層キャパシタ10においては、内部電極22、24の積層方向が、素体20の高さ方向ではなく、電極形成面である底面20cに平行な方向である。
素体20の高さ方向に沿って積層された積層キャパシタにおいては、電極形成面に近い下層の内部電極を通過する電流のルートの長さに比べて、上層の内部電極を通過する電流ルートの長さが長くなるため、特に上層の内部電極が等価直列インダクタンス(ESL)の増加を招く。一方、積層キャパシタ10では、内部電極22、24のいずれも、底面20cに比較的近い位置において、電極層30A、30B間を流れる電流が流すことができる。すなわち、積層キャパシタ10のいずれの内部電極22、24も、一対の電極層30A、30B間を流れる電流の最短ルートが同じであり、最短ルートは比較的短くなる。そのため、内部電極22、24の積層方向が底面20cに平行な方向である積層キャパシタ10においては、低い等価直列インダクタンス(ESL)が実現される。
【0030】
なお、電極層30A、30Bおよび絶縁層40の寸法形状は、界面の長さが長くなる限りにおいて、様々に変更することができる。以下、上述した絶縁層40とは異なる態様の絶縁層40を示す。
【0031】
図6に示した絶縁層41は、電極層30A、30Bと接する両端面41aが傾斜している点以外は、上述した絶縁層40と同様である。絶縁層41は、両端面41aが傾斜することで、素体20の底面20cに接する側の面が他側の面よりも広くなっている。このような絶縁層41においても、上述した絶縁層40同様、電極層30A、30Bと絶縁層41との界面が延長されて、外部から水が浸入する場合には浸入ルートの延長が図られている。
【0032】
その上、絶縁層41の構成によれば、以下に示す追加的な効果も得られる。
【0033】
すなわち、製造時には、素体20の底面20c上に絶縁層41を形成し、その後に、絶縁層41の端面41a付近を覆うように電極層30A、30Bを形成することが考えられる。このとき、底面20cに接する側の面が他側の面よりも広くなっている絶縁層41では、端面41aと底面20cとで画成される角部の角度θ1が鈍角となるため、電極形成時に角部に電極材料が入り込みやすくなっている。つまり、電極形成時に角部に電極材料が入り込まずに空隙が生じてしまう事態が有意に回避されている。このような空隙は、絶縁層の端面付近で発生するクラックの起点となりやすい。
【0034】
したがって、絶縁層41は、上述したような傾斜する端面41aを有することで、積層キャパシタ10に生じるクラックの発生を効果的に抑制することができる。その結果、さらなる耐湿性の向上が図られる。
【0035】
なお、
図7に示した絶縁層40のように、幅方向における端面40bを傾斜させて、素体20の底面20cに接する側の面が他側の面よりも広くなるようにしてもよい。この場合も、端面40b付近に空隙が生じる事態が有意に回避され、積層キャパシタ10に生じるクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、
図8に示した絶縁層42のように、電極層30A、30Bと接する両端面42aを、素体20の底面20cに接する側の面が他側の面よりも狭くなるように、傾斜させることもできる。このような絶縁層42においても、上述した絶縁層40同様、電極層30A、30Bと絶縁層42との界面が延長されて、外部から水が浸入する場合には浸入ルートの延長が図られている。
【0037】
製造時には、端面42aと底面20cとで画成される角部に空隙が生じないように、たとえば二段階で電極層30A、30Bを形成する手順を採用し得る。
【0038】
すなわち、まず、素体20の底面20c上に、電極層30A、30Bの一段目30aを形成する。そして、次に、電極層30A、30Bの一段目30aと同じ高さの絶縁層42を形成する。このとき、電極層30A、30Bの一段目の端面と底面20cとで画成される角部の角度θ2は鈍角であるため、角部に絶縁層42の材料が入り込みやすくなっている。その後、電極層30A、30Bの一段目30aおよび絶縁層42の端部を覆う二段目30bを形成する。その結果、空隙が生じる事態を抑制しつつ、
図7に示した形状の絶縁層42を形成することができる。
【0039】
図9に示した絶縁層43は、素体20の底面20cに接する側の面とは反対の面43aが、全体的に湾曲しており、中央付近の厚さD1が端部付近の厚さD2よりも厚くなっている。このような絶縁層43においても、上述した絶縁層40同様、電極層30A、30Bと絶縁層41との界面が延長されて、外部から水が浸入する場合には浸入ルートの延長が図られている。
【0040】
また、内部電極22、24の引き出し電極22b、24bの寸法形状についても、様々に変更することができる。
【0041】
図10では、内部電極22の引き出し電極22bと内部電極24の引き出し電極24bとが、内部電極の積層方向(引き出し電極が延在する面の法線方向)から見たときに、互いに重畳している態様を示している。
【0042】
具体的には、引き出し電極24bの端面25の長さが電極層30Bの長さより長く、引き出し電極24bが、底面20cに沿って、端面20b近傍から電極層30Aの上方に達する位置まで延びている。引き出し電極22bの端面23の長さも電極層30Aの長さより長く、引き出し電極22bも、底面20cに沿って、端面20a近傍から電極層30Bの上方に達する位置まで延びている。それにより、内部電極の積層方向から見て、引き出し電極22b、24bとが互いに重畳する領域Aが形成されている。
【0043】
この場合、内部電極22、24が重畳する領域Aに、一対の電極層30A、30B間を流れる電流のルートが形成されるため、電流ルートの短縮化が図られ、等価直列インダクタンス(ESL)のさらなる低減が実現される。その上、重畳する領域Aの引き出し電極22b、24bが、容量電極として機能するため、容量の増加も図られる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。たとえば、電子部品は、キャパシタに限らず、インダクタ、圧電体素子、バリスタ又はサーミスター等であってもよい。