(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記水冷式インタークーラの出口吸気温度に基づいて、前記熱交換部における冷却水からの気泡の発生を判定して、前記第1冷却水流回路の流れから前記第2冷却水流回路の流れに切換えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸気冷却装置。
前記制御部は、前記水冷式インタークーラの出口冷却水温度に基づいて、前記熱交換部における冷却水からの気泡の発生を判定して、前記第1冷却水流回路の流れから前記第2冷却水流回路の流れに冷却水流方向を切換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸気冷却装置。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室に流入する空気の体積効率を高めて出力を向上するために、吸気を過給機で圧縮するとともに、圧縮によって上昇した吸気温度を冷却するインタークーラが吸気通路に設けられている。
このインタークーラには車両の走行風との熱交換によって吸気を冷却する空冷式インタークーラと、循環される冷却水との熱交換によって吸気を冷却する水冷式インタークーラとが知られている。
【0003】
水冷式インタークーラに関して、特許文献1には、インタークーラ冷却回路の機能を確保すると共にエンジン冷却回路の性能向上が得られる車両用冷却装置について開示されている。
この特許文献1には、エンジン冷却回路、インタークーラ冷却回路、及びエンジン冷却回路とインタークーラ冷却回路との間で熱交換する熱交換器を備えているシステムが開示されている。
エンジン冷却水の温度が設定温度未満の場合には、インタークーラ冷却回路に設けられた電動ポンプを逆転することで、排気熱回収装置においてエンジンの排気熱で加温されたインタークーラ冷却水が熱交換器に送られ、熱交換器においてエンジン冷却回路のエンジン冷却水を加温して暖機を促進する。
一方、エンジン冷却水の温度が設定温度以上の場合には、電動ポンプを正回転することで、インタークーラ冷却回路に設けられたサブラジエータで冷却されたインタークーラ冷却水が水冷インタークーラに送られ、水冷インタークーラにおいて吸気を冷却する水冷式インタークーラの機能が確保される。
このように特許文献1においては、吸気を暖気したい場合及び冷却したい場合の何れにも対応可能なように、インタークーラ冷却回路内の冷却水の流れの向きを電動ポンプの回転方向を正回転と逆回転とで切換えることで行っている。
【0004】
また、一般に、高温吸気温条件時には、冷却水の性状やインタークーラ構造にもよるが、インタークーラ内部で蒸気気泡が発生して冷却効率の低下するおそれがある。このため、冷却水内に気泡の発生を防止する対策が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、吸気を暖気したい場合及び冷却したい場合の何れにも対応可能なように、インタークーラ冷却回路内の冷却水の流れの向きを電動ポンプの回転方向を正転と逆転とで切換えることで対応することが示されている。しかし、インタークーラ冷却回路に冷却水を冷却するためのサブラジエータや、冷却水を加温するためのエンジンからの排熱回収装置を設置することから装置が複雑化し大型化する。
また、特許文献1には、インタークーラ内部での蒸気気泡の発生対策や、インタークーラが設置される吸気通路を流れる吸気流の方向に対して、インタークーラを流れる冷却水の水流の向きまでは特定されていない。
【0007】
水冷式インタークーラは、吸気通路中に設置したインタークーラに冷却水の出入り口を設け、冷却水を一方向で循環し、高温になった吸気を冷却する構成であるため、冷却水の導入方向においては、設置レイアウトの制約にもよるが、冷却効率が高くなるように、吸気の流れに対して対向する方向で冷却水を流す、所謂、向流方式が理想的である。また、吸気を暖気したい場合においては、吸気流れに対して並行して冷却水を流す、所謂、並流方式の方が向流方式より効率が良い場合がある。
従って、吸気流れの方向に対してインタークーラの熱交換部に冷却水を流す向きを変えることで、冷却効率を変化させることが可能である。
【0008】
そこで、これら技術的課題及び知見に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、吸気流れの方向に対してインタークーラに流す冷却水の向きを変えることにより冷却効率を制御して、インタークーラ内部で蒸気気泡が発生するのを抑制する内燃機関の吸気冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の吸気冷却装置は、内燃機関の吸気通路に設置され、吸気を冷却する水冷式イン
タークーラと、循環ポンプによって圧送された冷却水が前記水冷式インタークーラとラジエータとを循環するように形成された冷却水回路と、前記吸気通路に設置される前記水冷式インタークーラの熱交換部を構成し、吸気流に対して上流側に設置される上流側熱交換部と、該上流側熱交換部の下流側に設置される下流側熱交換部と、前記下流側熱交換部に流入して前記上流側熱交換部から流出する方向に前記冷却水を流す第1冷却水流回路と、前記上流側熱交換部に流入して前記下流側熱交換部から流出する方向に前記冷却水を流す第2冷却水流回路と、前記第1冷却水流回路の流れと前記第2冷却水流回路の流れとを切換える冷却水流切換部と、前記冷却水流切
換部による冷却水流方向の切換えを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記熱交換部における冷却水が気泡発生温度以上に達する場合には、冷却水流切換部によって前記第1冷却水流回路の流れから前記第2冷却水流回路の流れに切換えることを特徴とする。
【0010】
前記構成(1)によれば、水冷式インタークーラの熱交換部において、冷却水が気泡発生温度以上に達する場合には、第1冷却水流回路から第2冷却水流回路に切換えられることで、冷却水は上流側熱交換部に流入して下流側熱交換部から流出されるようになる。この場合には、吸気流の方向と冷却水流の方向が同方向になり、並流方式の冷却となる。
なお、冷却水が気泡発生温度以上に達しない場合には、冷却効率が高くなるように、冷却水は下流側熱交換部に流入して上流側熱交換部から流出されるように第1冷却水流回路によって流れる。この第1冷却水流回路による流れの場合には、吸気流の方向と冷却水流の方向が逆方向になり、向流方式の冷却となる。
【0011】
従って、第1冷却水流回路の流れから第2冷却水流回路に切換えられることで、第1冷却水流回路の流れによって、冷却水が高温度になっている上流側熱交換部側から冷却水が流入されるため、気泡発生に達している冷却水を効果的に冷却でき、気泡発生が迅速に抑制される。
【0012】
また、第2冷却水流回路に切換えられて並流方式の冷却水の流れになると、水冷式インタークーラに流入する吸気は、上流側熱交換部に流入するため、最も冷却されている冷却水が吸気と接触することで、吸気と冷却水との温度差が大きいことから上流側熱交換部では冷却効果が大きい。しかし下流側熱交換部では吸気と冷却水との温度差が小さくなることから、冷却水の温度上昇は上流側熱交換部より小さく冷却効果も小さい。これによって、熱交換部全体として向流方式の冷却に比べて並流方式の冷却効率は低下する。なお、向流方式の冷却効率は並流方式の冷却効率より大きいことは一般的に言われている。
【0013】
従って、向流方式の冷却から並流方式に切換えることで、熱交換部全体としての冷却効率の低下により冷却水の温度上昇は抑制されて気泡発生は生じにくくなる。このため、並流方式に切換えることで、冷却効率は向流方式より低下するが気泡の発生が抑えることができ、気泡が発生する向流方式よりも冷却効率を向上することが可能になる。
【0014】
(2)幾つかの実施形態では、前記構成(1)において、前記制御部は、前記水冷式インタークーラの出口吸気温度に基づいて、前記熱交換部における冷却水からの気泡の発生を判定して、前記第1冷却水流回路の流れから前記第2冷却水流回路の流れに切換えることを特徴とする。
【0015】
前記構成(2)によれば、水冷式インタークーラの出口吸気温度に基づいて、熱交換部において冷却水が気泡発生温度以上になるか否かを判定して、第1冷却水流回路の流れから第2冷却水流回路の流れに切換えるので、冷却水の気泡が生じるおそれがある吸気温度をあらかじめ設定しておくことで、簡単に気泡発生状態に至るか否かを判定して切換えることが可能である。
【0016】
(3)幾つかの実施形態では、前記構成(1)または(2)において、前記制御部は、前記水冷式インタークーラの出口冷却水温度に基づいて、前記熱交換部における冷却水からの気泡の発生を判定して、前記第1冷却水流回路の流れから前記第2冷却水流回路の流れに冷却水流方向
を切換えることを特徴とする。
【0017】
前記構成(3)によれば、水冷式インタークーラの出口冷却水温度を基に熱交換部における冷却水の気泡発生を判定するので、精度良い判定を基に切換えができる。
【0018】
(4)幾つかの実施形態では、前記構成(1)から(3)のいずれかの構成において、前記冷
却水流切換部は、前記循環ポンプの回転方向を正転と逆転とを切換えて前記冷却水の流れ方向を切換えることを特徴とする。
【0019】
前記構成(4)によれば、第1冷却水流回路による流れと第2冷却水流回路による流れの切換えを循環ポンプの回転方向で切換えるので、配管構成を複雑化することなく達成できる。
【0020】
(5)幾つかの実施形態では、前記構成(1)から(3)のいずれかの構成において、前記冷
却水流切換部は、前記冷
却水回路に設けられた切換弁によって前記冷却水の流れ方向を切換えることを特徴する。
【0021】
前記構成(5)によれば、第1冷却水流回路による流れと第2冷却水流回路による流れの切換えを切換弁により切り換えられるため、循環ポンプの回転方向で切換える場合に比べて、流れの切換えが迅速に行われる。
【0022】
(6)幾つかの実施形態では、前記構成(1)から(5)のいずれかの構成において、前記水冷式インタークーラの熱交換部は吸気マニホールド内に設置されることを特徴とする。
【0023】
前記構成(6)によれば、水冷式インタークーラの熱交換部を通過した冷却後の吸気が直ぐにエンジンの吸気ポートを介して燃焼室に導入される。このためエンジンの燃焼効率の向上に適した配置構造とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、吸気流れの方向に対してインタークーラの熱交換部に流す冷却水の向きを変えることにより冷却効率を制御して、インタークーラ内部で蒸気気泡が発生するのを抑制でき、インタークーラの冷却効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態に係る内燃機関の吸気冷却装置1は、
図1に示すような全体構成を有し、
図1は、エンジン(内燃機関)3を上方より見た平面視概略図である。
この
図1に示すように、エンジン3は、排気ターボ過給機(以下過給機という)5が装着されている。エンジン3には、複数気筒が設けられ、エンジン本体7の一方側に設けられた排気マニホールド9に過給機5が連結され、排気は過給機5を通過して排気通路4から排出される。吸気管6からの吸気は過給機5によって過給され、過給後の吸気を各気筒に導入する吸気通路11が、エンジン本体7の一方側から他方側に跨るように設けられている。また、エンジン本体7の他方側には、複数気筒の各気筒へ過給機5による過給後の吸気を供給する吸気マニホールド13が取り付けられている。
【0028】
この吸気マニホールド13は、吸気通路11の端部が接続する吸気取入れ部15と、エンジン本体7側への取り付けを行う取付け部17と、冷却水式インタークーラ(以下インタークーラという)19を構成する本体部21と、を備え、本体部21の内部には吸気と接触して熱交換を行うインタークーラ19の熱交換部23(
図2参照)が収容されている。
【0029】
本体部21の壁面には、熱交換部23への冷却水の流入と流出を行う第1冷却水管25、第2冷却水管27が、それぞれ接続される第1配管接続口25a、第2配管接続口27aが設けられる。
この第1配管接続口25aは、吸気流Aに対して下流側に位置し、第2配管接続口27aは、吸気流Aに対して上流側に位置して設けられている。また、第1冷却水管25は、第1配管接続口25aとラジエータ29とを連結し、第2冷却水管27は、第2配管接続口27aとラジエータ29とを連結している。
そして、第1冷却水管25には循環ポンプ31が設置され、循環ポンプ31の作動によって、インタークーラ19の熱交換部23を通過して吸気を冷却した後の冷却水をラジエータ29に戻して循環させることで、空気(大気)との熱交換によって冷却して再び熱交換部23に供給するように冷却水回路33が形成されている。
【0030】
熱交換部23は、
図3に示すように、吸気流Aに対して上流側に設置される上流側熱交換部23aと、該上流側熱交換部23aの下流側に設置される下流側熱交換部23bとによって構成されている。
下流側熱交換部23bに流入して上流側熱交換部23aから流出する方向に冷却水を流す第1冷却水流回路33aを形成するともに、上流側熱交換部23aに流入して下流側熱交換部23bから流出する方向に冷却水を流す第2冷却水流回路33bを形成する。
【0031】
循環ポンプ31は、循環ポンプ31の回転方向を正回転、逆回転を切換えることで、第1冷却水流回路33aの流れと第2冷却水流回路33bの流れとを切換える冷却水流切換部を構成している。例えば、正回転方向の場合には、第1冷却水流回路33aの流れを形成し、後述する向流方式の冷却となる。また、逆回転方向の場合には、第2冷却水流回路33bの流れを形成し、後述する並流方式の冷却となる。
冷却水流切換部を循環ポンプ31によって構成するため、装置の大型化が抑えられている。
【0032】
また、循環ポンプ31の回転方向を切換える制御装置(制御部)41が備えられている。
制御装置41には、図示しない信号入力部、信号出力部、記憶部、演算部等が設けられ、信号入力部には、インタークーラ19の熱交換部23を通過した後の吸気温度を検出する吸気温度センサ43からの信号、インタークーラ19の熱交換部23を通過した後の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ45からの信号が入力されている。
そして、信号出力部からは、冷却水流切換部である循環ポンプ31に回転方向の制御信号を出力するようになっている。また、回転方向の制御信号だけではなく、回転数を制御して冷却水の流量調整も制御するようになっている。
【0033】
制御装置41は、熱交換部23における冷却水が気泡発生温度に達することを、吸気温度センサ43、または冷却水温度センサ45によって判定した場合には、循環ポンプ31によって第1冷却水流回路33aの流れから第2冷却水流回路33bの流れに切換えるように制御する。
【0034】
かかる実施形態の構成によれば、インタークーラ19の熱交換部23において、冷却水が気泡発生温度以上に達する場合には、循環ポンプ31の回転方向が切換えられて、第1冷却水流回路33aから第2冷却水流回路33bに切換えられることで、冷却水は上流側熱交換部23aに流入して下流側熱交換部23bから流出されるようになる。この場合には、吸気流Aの方向と冷却水流の方向が同方向になり、所謂、並流方式の冷却となる。
なお、冷却水が気泡発生温度以上に達しない場合には、冷却効率が高くなるように、冷却水は下流側熱交換部23bに流入して上流側熱交換部23aから流出されるように第1冷却水流回路33aによって流れる。この第1冷却水流回路33aによる流れの場合には、吸気流の方向と冷却水流の方向が逆方向になり、所謂、向流方式の冷却となる。
【0035】
従って、第1冷却水流回路33aの流れから第2冷却水流回路33bに切換えられることで、第1冷却水流回路33aの流れによって、冷却水が高温度になっている上流側熱交換部23a側から冷却水が流入されるため、気泡発生に達している高温の冷却水を効果的に冷却でき、気泡発生が迅速に抑制される。
【0036】
また、第2冷却水流回路33bに切換えられて並流方式の冷却水の流れになると、インタークーラ19に流入する吸気は、上流側熱交換部23aに流入するため、最も冷却されている冷却水が吸気と接触することで、吸気と冷却水との温度差が大きいことから上流側熱交換部23aでは冷却効果が大きい。しかし、下流側熱交換部23bでは吸気と冷却水との温度差が小さくなることから、冷却水の温度上昇は上流側熱交換部23aより小さく冷却効果も小さい。これによって、熱交換部23の全体として向流方式の冷却に比べて並流方式の冷却効率は低下する。なお、向流方式の冷却効率は並流方式の冷却効率より大きいことは一般的に言われていることである。
【0037】
従って、向流方式の冷却から並流方式に切換えることで、冷却水が高温度になっている上流側熱交換部23a側から冷却水が流入されるため、及び、熱交換部23の全体としての冷却効率の低下のため、冷却水の温度上昇は抑制されて気泡発生は生じにくくなる。このため、並流方式に切換えることで、冷却効率は向流方式より低下するが気泡の発生が抑えられることによって、気泡が発生した向流方式よりも冷却効率を向上することが期待できる。この冷却効率の大小関係の概要は、向流方式(気泡発生)<並流方式<向流方式の関係が得られる。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態では、
図2に示すように、第1冷却水流回路33aの流れと第2冷却水流回路33bの流れとを切換える冷却水流切換部を、切換弁47によって構成することを特徴とする。その他の構成は、
図1の構成と同様である。
【0039】
図2のように、循環ポンプ31と第1配管接続口25aの間の第1冷却水管25と、第2冷却水管27との交差部に切換弁47が設けられている。
制御装置41からの切換え信号によって、切換弁47が循環ポンプ31からの冷却水を、第1冷却水管25側に流す場合には、第1冷却水流回路33aの流れが形成され、切換弁47が循環ポンプ31からの冷却水を第2冷却水管27側に流す場合には、第2冷却水流回路33bの流れが形成される。
【0040】
かかる実施形態の構成によれば、第1冷却水流回路33aによる流れと第2冷却水流回路33bによる流れの切換えを切換弁47により切り換えられるため、循環ポンプ31の回転方向で切換える場合に比べて、流れの切換えが迅速かつ確実に行われる。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態では、熱交換部23の構成は、
図3、4に示す構成を備えている。
図3において、インタークーラ19における冷却水の流れ方向、及び熱交換部23の概要を示す。なお、
図3は平面視概要図である。熱交換部23は吸気マニホールド13内に収容されて設置され、既に説明したように、吸気流Aに対して上流側に設置される上流側熱交換部23aと、上流側熱交換部23aの下流側に設置される下流側熱交換部23bとによって構成されている。
【0042】
図4に示すように、熱交換部23は、空気が通過する空気層51と、冷却水が通過する冷却水層53とが交互に積層されて構成されている。
冷却水層53は、カッププレート55から構成され、上カッププレート55aと下カッププレート55bが重ねられて、その間に冷却水が流れる冷却水通路が形成される。カッププレート55は平面視形状が長方形をしており、長手方向の一端側の短辺に沿って第1開口57と第2開口59とが形成されている。上カッププレート55aと下カッププレート55bとの間の内部には、長手方向に沿って延びて断面が波板状のインナーフィン61を備えて冷却水通路を形成するとともに、短手方向の中央部を長手方向に沿って延びる仕切部63が設けられている。仕切部63によって、冷却水通路は略U字形状に形成されている。
【0043】
そして、例えば、第1開口57から流入した冷却水は、仕切部63によって仕切られた一方の流路を第1開口57とは、反対側の短辺に向かって流れて、反対側の短辺近傍でUターンして、仕切部63によって仕切られた他方の流路を第2開口59に戻るように流れて第2開口59から流出される。
【0044】
また、空気層51は、複数の冷却水層53相互間の間隙に設けられ、薄板を蛇行状に折り曲げ加工してなるコルゲートフィン65を備え、コルゲートフィン65の折り曲げ頂部が冷却水層53のカッププレート55に接合している。
【0045】
吸気流Aに対して冷却水層53内を流れる冷却水流は略直角方向に交差して流れる。また、吸気流Aに対して上流側に設置される上流側熱交換部23aは、仕切部63に対して他方側の
図4で符号23a部分に形成され、下流側熱交換部23bは、仕切部63に対して一方側の
図4で符号23b部分に形成される。
【0046】
かかる実施形態の構成によれば、冷却水層53を、上カッププレート55aと下カッププレート55bによって形成され、その内部に、長手方向に沿って延びて断面が波板状のインナーフィン61を備えて冷却水通路を形成するとともに、さらに短手方向の中央部を長手方向に沿って延びる仕切部63が設けられて、冷却水通路を略U字形状に形成して冷却水を流す構成とすることで、インタークーラ19の熱交換部23内に上流側熱交換部23aと下流側熱交換部23bとをコンパクトに形成することが可能になる。
その結果、冷
却水の流れ方向の切換えに
よって、向流及び並流の切換えが可能な熱交換部23を吸気マニホールド13内にコンパクトに収容することができる。
また、熱交換部23を吸気マニホールド13内に収容するので、熱交換部23を通過した冷却後の吸気が直ぐにエンジンの吸気ポートを介して燃焼室に導入されるためエンジンの燃焼効率の向上に適している。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態では、制御装置41は、
図5に示すフローチャートに沿って制御される。
図5において、まず、ステップS1において、インタークーラ出口吸気温度を吸気温度センサ43によって検出し、ステップS2において、目標吸気温度以上か否かを判定する。この目標吸気温度は、例えば、エンジン3の運転状態であるエンジン回転数とエンジン負荷とを基に予め設定された目標とする吸気温度である。運転状態にもよるが、100℃未満の所定温度が目標吸気温度として設定される。
【0048】
ステップS2で、目標吸気温度以下の場合には、ステップS3に進んで、インタークーラ冷却水の循環ポンプ31を駆動せずに最初のステップS1にリターンする。
また、ステップS2で、目標吸気温度以上の場合には、ステップS4に進んで、ステップS1で計測したインタークーラ19の出口吸気温度が150℃以上か否かを判定し、150℃未満の場合には、ステップS5に進んで、インタークーラ冷却水を向流方向に流す。この向流方向の流れは、
図1のシステムにおいては、循環ポンプ31を正回転方向に制御して、または
図2のシステムでは、切換弁47を切り換える制御を行って、第1冷却水流回路33aの流れを形成し、向流方式の冷却とする。この向流方式の冷却水の流れによって、冷却効率を高めた冷却を行うことができる。
そして、次に、ステップS6に進んで、目標吸気温度になるように、循環ポンプ31の回転数を制御して、冷却水回路33を循環する冷却水の流量を調整する。
【0049】
また、ステップS4で、吸気温度が150℃以上と判定した場合には、ステップS7に進んで、冷却水が熱交換部23内で蒸気気泡の発生の可能性が高いと判定して、インタークーラ冷却水を並流方向に流す。この並流方向の流れは、
図1のシステムにおいては、循環ポンプ31を逆回転方向に制御して、または
図2のシステムでは、切換弁47を切り換える制御を行って、第2冷却水流回路33bの流れを形成し、並流方式の冷却とする。
この並流方式の冷却水の流れによって、第1冷却水流回路33aの流れから第2冷却水流回路33bに切換えられ、冷却効率を低下させるとともに、冷却水を吸気が熱交換部23に流入する上流側熱交換部23aから流入することで、第1冷却水流回路33aの流れによって、冷却水が高温度になっている上流側熱交換部23a側から冷却水が流入されるため、気泡発生に達している高温の冷却水を効果的に冷却でき、気泡発生が迅速に抑制される。
そして、次に、ステップS6に進んで、目標吸気温度になるように、循環ポンプ31の回転数を制御して、冷却水回路33内を循環する冷却水の流量を調整する。
【0050】
かかる実施形態の構成によれば、ステップS4、S5、S7によって示す冷却水流れ方向切換制御部分Bのように、インタークーラ19の出口吸気温度を基に、熱交換部23において冷却水が気泡発生温度以上になるか否かを判定して、気泡発生温度以上と判定した場合に、第1冷却水流回路33aの流れから第2冷却水流回路33bの流れに切換えるので、冷却水の気泡が生じるおそれがある吸気温度をあらかじめ設定しておくことで、簡単に気泡発生状態に至るか否かを判定して冷却水の流れ方向を切換えることが可能である。
なお、インタークーラ19の出口吸気温度を基に冷却水が気泡発生温度以上になるか否かを判定したが、インタークーラ19内の吸気温度としてもよい。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態では、制御装置41は、
図6に示すフローチャートに沿って制御される。
本実施形態の
図6のフローチャートのステップS11からS13は、
図5の実施形態のフローチャートのステップ1からS3と同様である。
【0052】
従って、
図6において、ステップS14から説明する。
ステップS12で、目標吸気温度以上の場合には、ステップS14に進んで、ステップS11で計測したインタークーラ19の出口冷却水温度が100℃以上か否かを判定し、100℃未満の場合には、ステップS15に進んで、インタークーラ冷却水を向流方向に流す。この向流方向の流れは、
図1のシステムにおいては、循環ポンプ31を正回転方向に制御して、または
図2のシステムでは、切換弁47を切り換える制御を行って、第1冷却水流回路33aの流れを形成し、向流方式の冷却とする。この向流方式の冷却水の流れによって、冷却効率を高めた冷却を行うことができる。
そして、次に、ステップS16に進んで、目標吸気温度になるように、循環ポンプ31の回転数を制御して、冷却水回路33を循環する冷却水の流量を調整する。
【0053】
また、ステップS14で、インタークーラ19の出口冷却水温度が100℃以上と判定した場合には、ステップS17に進んで、冷却水が熱交換部23内で蒸気気泡の発生の可能性が高いと判定して、インタークーラ冷却水を並流方向に流す。この並流方向の流れは、
図1のシステムにおいては、循環ポンプ31を逆回転方向に制御して、または
図2のシステムでは、切換弁47を切り換える制御を行って、第2冷却水流回路33bの流れを形成し、並流方式の冷却とする。
この並流方式の冷却水の流れによって、第1冷却水流回路33aの流れから第2冷却水流回路33bに切換えられ、冷却効率を低下させるとともに、冷却水を吸気が熱交換部23に流入する上流側熱交換部23aから流入することで、第1冷却水流回路33aの流れによって、冷却水が高温度になっている上流側熱交換部23a側から冷却水が流入されるため、気泡発生に達している高温の冷却水を効果的に冷却でき、気泡発生が迅速に抑制される。
そして、次に、ステップS6に進んで、目標吸気温度になるように、循環ポンプ31の回転数を制御して、冷却水回路33を循環する冷却水の流量を調整する。
【0054】
かかる実施形態の構成によれば、ステップS14、S15、S17に示す冷却水流れ方向切換制御部分Cのように、インタークーラ19の出口冷却水温度を基に、熱交換部23において冷却水が気泡発生温度以上になるか否かを判定して、気泡発生温度以上と判定した場合に、第1冷却水流回路33aの流れから第2冷却水流回路33bの流れに切換えるので、さらに、直接冷却水温度に基づいて熱交換部23における冷却水の気泡発生を判定するので、精度良い判定を基に冷却水の流れ方向を切換えることが可能である。
なお、インタークーラ19の出口冷却水温度を基に冷却水が気泡発生温度以上になるか否かを判定したが、インタークーラ19内の冷却水温度としてもよい。