(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
工業用に使用される水の中に浮遊するごみは、しばしば設備トラブルの問題を引き起こす。特に発電用に使用される水は、浮遊するごみが深刻な問題に直結する可能性もあって、清浄な状態が求められており、その要求基準は極めて高いものである。
【0003】
一方、農業用に使用される水の中に浮遊するごみも作物に被害をもたらす可能性があって看過できないケースが多い。また、排水の中を浮遊するごみは環境汚染につながる可能性もある。それらの理由から、水の中に浮遊するごみを取り除く手段として、従来から様々な装置が提案されている。
【0004】
ここで、水の中を浮遊するごみを取り除く装置として、バースクリーン装置と呼ばれる除塵装置が周知である。バースクリーン装置は、スクリーンバーと呼ばれるバーを複数本並べて配した装置であり、簡便な構造で水の中に浮遊するごみを効果的に取り除くことができる。
【0005】
バースクリーン装置で使用されるスクリーンバーの並べ方は種々である。一般的に、スクリーンバーを一定間隔のピッチで縦又は横、或いは格子状に並べて組んでスクリーン状にするケースが多い。特許文献1にバースクリーン装置の製造方法の1例が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水路内に設置されるバースクリーン装置のスクリーンバーは、一般的に、金属性のフラットバーなどで形成される。したがって、バースクリーン装置は重量物となり、設置には大型の重機が必要となる。
【0008】
暗渠になった水路にバースクリーン装置を設置する場合は、通常、暗渠の外から大型の重機を使用して吊り下げて設置する必要がある。そのため、暗渠を形成する水路の天井には、大きな開口部が設けられて解放されている必要がある。
【0009】
バースクリーン装置のスクリーンは、通常、水路の幅方向の長さにわたり架け渡されるから相当の大きさとなる。必然的にバースクリーン装置を搬入するための開口部も相当の大きさが要求される。
【0010】
なお、水路の幅が大きくバースクリーン装置のスクリーン寸法が極端に大きくなる場合には、輸送制限等もあって、スクリーンが複数枚のパネル化されるケースもある。
しかし、通常は、複数枚にパネル化されたスクリーンであっても相当の大きさがあり、重量も大きい。スクリーンを所定の場所に設置するためには、大型の重機等を使用して吊り下げて所定の位置まで移動させる必要がある。したがって、前述の開口部は水路の幅方向にわたって必要とされる。
【0011】
バースクリーン装置の設置を予定せずに設計された暗渠の水路においては、水路の天井に大型の重機を使用して設置するために十分な開口部が設けられておらず、結果、バースクリーン装置を新たに設置することが難しい状況にある。
【0012】
本発明は、以上、説明した問題点に鑑みてなされたものであり、大型の重機を使用してバースクリーン装置を設置するために必要な大きさの開口部が設けられない水路において、バースクリーン装置を設置するに好適な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明によるバースクリーン装置は、
(1)
暗渠になった水路内を流れる水を除塵するために使用するバースクリーン装置であって、間隔をあけて並べられた上下方向に伸びる複数本のスクリーンバーにより形成されたバーブロック、並びに、水平方向に伸びる上部レール、及び、上部レールと上下方向に一定の間隔をあけて並設された下部レールとからなるガイド装置を備えて、バーブロックの上部にローラ装置を配して上部レールに吊り掛けるとともに、バーブロックの下端を下部レールに当接させて、バーブロックがガイド装置に沿って移動できるように支持し、バーブロックをガイド装置に沿って所定の位置まで移動させて複数個並べて配した。
【0014】
(2)(1)に記載のバースクリーン装置であって、前記バーブロックの下端を下部レールに固定した。
【0015】
(3)本発明によるバースクリーン装置の組み立て方法は、
暗渠になった水路内を流れる水を除塵するために使用するバースクリーン装置の組み立て方法であって、水平方向に伸びる上部レール及び下部レールを上下方向に一定の間隔をあけて並設してガイド装置を形成し、複数本のスクリーンバーにより形成されたバーブロックの上部にローラ装置を取り付けて、水路の開口部から水路内に搬入してガイド装置に配し、バーブロックの上部を上部レールに吊り掛けるとともに下端を下部レールに当接させた状態として、ガイド装置に沿って移動させ、ガイド装置の所定の位置で、バーブロックの下端と下部レールを固定して、バーブロックを複数個並べて配することによりスクリーンを形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバースクリーン装置又バースクリーン装置の組み立て方法によれば、天井に大型の重機を使用してバースクリーン装置を設置するために必要十分な開口部が設けられていない水路においても、バースクリーン装置を新たに設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面等に基づき本発明の好ましい実施形態の例を詳細に説明する。
図1から
図6は本発明の実施形態を説明するための図に係わり、その好ましい例を示したものであって、
図1はバースクリーン装置に使用したバーブロックの構成を説明する図であり(1)が正面から観察した図であり(2)が側面から観察した図である。
図2はバースクリーン装置の設置例を説明する図である。
図3はバースクリーン装置に使用したバーブロックの並べ方手順を説明する図である。
図4はバースクリーン装置に使用したバーブロックの取り付け方法を説明する図である。
図5はバースクリーン装置に使用したバーブロックの固定方法等を説明する図である。
図6は他の実施形態に係りバースクリーン装置の構成を説明する図である。
【0019】
本発明の実施形態(第1実施形態と称することもある)に使用したバーブロック3の構成を
図1に示す。本実施形態によるバーブロック3は、複数本のスクリーンバー3Aを一定間隔のピッチで水平方向に連結し一体化したものであり、上部にローラ装置5を配しているとともに、下部には、後述する下部レール13に固定するための固定板3Cが取り付けられている
【0020】
なお、本実施形態においては
図1(1)に示すように金属製のフラットバーで形成された4本のスクリーンバー3Aを、スクリーンバー3Aの長手方向に対して直交する方向に伸びる連結具を上下2箇所に使用することにより、一定間隔のピッチで水平方向に連結して一体化させた。
【0021】
バーブロック3の上部に配したローラ装置5のローラ5Aは、その一方側がバーブロック3に対して軸支されており、他方側が側面に突出した構造となっている。
そして、ローラ5Aの突出した部分のローラ径が段付きとなって、後述する上部レール11に嵌め合わさって回転する構造となっている。
【0022】
ここで、上部レール11と下部レール13は、水路の伸在する方向、即ち、水路の水流が流れる方向に対して直交し、水平方向に伸びている。そして、上部レール11と下部レール13は、
図3(1)に示すように、上下方向に一定の間隔をあけて並設される。
本実施形態においては、上部レール11と下部レール13により、バーブロック3が水平方向に移動する際のガイド装置10を形成する。
なお、本実施形態においては、上部レール11は図示しないアンカーボルトにより水路壁52に固定されており、下部レール13は図示しないアンカーボルトにより水路底53に固定されている。
【0023】
上部レール11及び下部レール13の構成を
図1又
図3に示す。
上部レール11は、
図1(2)に断面を示すように先端が上方に曲がったフック(鉤)型になっており、先端の曲がった部分が、前述したローラ5Aの段付き部分に嵌め合わさる形状になっている。
【0024】
そして、
図4(1)から
図4(3)に示すように、バーブロック3を上部レール11に対して上方から徐々に近接させて、ローラ5Aを上部レール11に嵌め合せて吊り掛けることにより、ローラ5Aが上部レール11上で転動できるように構成する。
なお、本実施形態においては、フック型の上部レール11を、ローラ5Aの段付き部に嵌め合せて吊り掛けているので、ローラ5Aと上部レール11を、一旦、嵌め合せた後は、水平方向への移動で外れることがない。
【0025】
一方、下部レール13は断面がL字型になっており、水路底53に固定されている。ローラ5Aを上部レール11に嵌め合せて吊り掛けた際において、上部レール11に対して上下方向に一定の間隔をあけて並設されている下部レール13は、バーブロック3が滑りながら移動できるガイドになる。即ち、本実施形態においては、バーブロック3の上部にローラ装置5を配して上部レール11に吊り掛けるとともに、バーブロック3の下端を下部レール13に当接させて、バーブロック3がガイド装置10に沿って所定の位置までスライドして移動できるように支持する。
【0026】
組立方法は、後述するが、本実施形態においては、
図3(1)から
図3(3)に示すように、前述したガイド装置10に対して、複数個のバーブロック3を並べて配してスクリーンを形成することによって、バースクリーン装置1を組み立て設置する。
【0027】
以下、大型の重機を使用することが難しい小さな開口部しか有しない暗渠の水路にバースクリーン装置1を設置する際の方法について詳細に説明する。
【0028】
バースクリーン装置1の設置前の準備作業として、水路内のバースクリーン設置箇所について、水を排水しドライアップする。
水路内がドライアップされた後、続いて水路内を清掃し、足場を組み立て、該当箇所の寸法を測定する。なお、必要に応じて、上部レール11又下部レール13を設置する箇所に、適宜、墨打ち作業等をする。
【0029】
準備が完了後、水路天井54に形成されている小さな開口部から、上部レール11及び下部レール13を水路内に搬入して、所定の箇所に設置する。
この際において、上部レール11は、その長さを分割して短くして開口部から搬入し、図示しないアンカーボルトを使用して、水路壁52に固定することにより一本の長いレールとする。
【0030】
同様に、下部レール13も、その長さを分割して短くして開口部から搬入し、図示しないアンカーボルトを使用して、水路底53に固定することにより一本の長いレールとする。上部レール11と下部レール13の設置の状況を
図2又
図3に示す。本実施形態においては、上部レール11と下部レール13によりガイド装置10を形成する。
【0031】
ここで、予め組み立てたバーブロック3を開口部から水路内に搬入する。バーブロック3は従来の大きなスクリーンではないので、小さな開口部からでも容易に搬入できる。
なお、本実施形態においては、バーブロック3の大きさを勘案して、1つのバーブロック3の重量を40Kg程度とし、大型の重機を使用しなくても水路内に搬入できる重量とした。
【0032】
水路内では、バーブロック3の上端を上部レール11に近づけながら、下端を下部レール13に近づける。そして、バーブロック3のローラ装置5を上部レール11に嵌め合せて吊り掛けて取り付ける。取り付けの状況を
図4(1)から
図4(3)に示す。バーブロック3を上方から上部レール11に近づけることにより、ローラ装置5のローラ5Aを上部レール11に嵌め合せる。ローラ5Aと上部レール11が嵌め合わされることにより、ローラ5Aが上部レール11上で転動できるようになるとともに、バーブロック3の下部が下部レール13に当接した状態となる。
【0033】
ローラ5Aが上部レール11に嵌め合わされることにより、バーブロック3が上部レール11に吊り掛けられた状態となり、バーブロック3の下部が下部レール13に当接した状態を
図5(1)に示す。バーブロック3を水平方向に押すと、ローラ装置5のローラ5Aが上部レール11上で転動して回転するとともに、バーブロック3の下部が下部レール13に当接した状態で滑ることにより、水平方向にスライドして移動する。
即ち、本実施形態においては、水路内の固定金物をガイドとして、バーブロック3をガイドに合わせてスライドさせることにより所定の設置箇所へ配置することができる。
【0034】
上部レール11及び下部レール13により形成したガイド装置10に対して、バーブロック3を取り付けて、水平方向にスライドさせて移動させる際の状況を
図3(1)に示す。なお、幅寸法の小さなバーブロック3は、小さな開口部からでも水路内に搬入することが可能であり、一旦、ガイド装置10に取り付ければ、前述したように、水平方向への移動設置が極めて容易である。
【0035】
そして、複数のバーブロック3を水路内に搬入し、ガイド装置10により水平方向に移動させて所定の位置に配置するという手順を繰り返すことにより、
図3(1)から
図3(3)に示すような作業を行い、水路内に伸びる大きなスクリーンを形成することにより、バースクリーン装置1を組み立て設置する。
【0036】
なお、この際、ガイド装置10において、それぞれ所定の位置に配されたバーブロック3は、下部にある固定板3Cを利用して、下部レール13に対して固定ボルト3Bにより固定される。固定時の状況を
図5(2)に示す。
【0037】
前述の手順によりバースクリーン装置1が形成された後、各箇所を点検する。点検後は、足場の撤去片付けなどの作業を実施し、張水して、バースクリーン装置1の設置作業完了とする。
【0038】
バースクリーン装置1の設置後は、
図2に示すように、水路内を流れる水流Wに対して、バースクリーン装置1が除塵装置としての機能し、作用効果を奏する。
【0039】
水路に設置されるバースクリーン装置1のスクリーンバー3Aは、通常、金属の棒やフラットバーなどで形成されるから重量物となる。したがって、前述したように、バースクリーン装置1の設置には大型の重機が必要となり、結果、水路の天井には、水路の幅方向に渡る大きな開口部が設けられて上部が解放された構造となる。
【0040】
本実施形態においては、バーブロック3とガイド装置10を利用することにより、小さな開口部からでも、バースクリーン装置1を容易に設置することが可能になる。
【0041】
前述したように、本実施形態においては、
図3(1)に示すように、上部レール11及び下部レール13により形成したガイド装置10に対して、バーブロック3を取り付けて、水平方向にスライドさせることにより、所定の位置まで移動させる。なお、幅寸法の小さなバーブロック3は、小さな開口部からでも水路内に搬入することが可能であり、一旦、ガイド装置10に取り付ければ、水平方向への移動は、大型の重機など使用しなくても容易である。
【0042】
本実施形態においては、バーブロック3の大きさを勘案して、大型の重機を使用しなくても水路内に搬入できる重量とした。そして、ガイド装置10に取り付けたバーブロック3を、それぞれ人力等を利用してスライドさせて所定の位置に取り付けた。
【0043】
なお、本発明に適応できるバーブロック3並びにガイド装置10の配置は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において変更が可能であり、例えば、
図6に示すように、水路の形状に合わせて、ガイド装置10とバーブロック3の配置を変更しても良い。