(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量方式タッチパネル等の表示機器において、その表面電極には、透明性に優れるITO(Indium Tin Oxide)のスパッタ膜が用いられている。しかしながら、ITOのスパッタ膜は、抵抗が高く、機械的強度が低い。そのため、近年、これに代わって、静電容量制御の感度を高められる低抵抗導電体からなり、機械的強度に優れる、メッシュパターン銀ペーストの印刷ライン、銅箔のエッチングライン、銅めっきライン等による多角形からなるメッシュパターンを表面電極とする表示機器の商品化が試みられている。特に、低コスト化を目的として、印刷により、線幅が10μm以下の微細配線を形成することが盛んに行われている。微細配線は、印刷時に断線することがあるため、その断線箇所を修復する技術が必要とされている。
【0003】
微細配線の断線箇所を修復する方法としては、例えば、次のような方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
断線箇所およびその近傍に、光照射によって濡れ性が変化する物質を用いた濡れ性調整層を形成する。その濡れ性調整層における断線箇所に対応する部分に光を照射し、その部分の電極形成液に対する濡れ性を、それ以外の部分よりも高くする。その後、その濡れ性を高めた部分に、電極形成液を供給して、修正電極パターンを形成し、断線箇所を修復する。
【0004】
微細配線の断線箇所を修復する方法としては、例えば、次のような方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
この方法は、第1吐出工程と、判定工程と、第2吐出工程と、調整工程と、を有する。
第1吐出工程では、インクジェット印刷により、配線幅および配線間隔よりも小さな第1のドット径の液滴を、配線基板の断線箇所に向かって吐出する。
判定工程では、第1のドット径の液滴が配線基板上に着弾した着弾位置と、配線基板の欠陥箇所との相対位置がずれているか否かを判定する。
第2吐出工程では、第1のドット径よりも大きな第2のドット径の液滴を欠陥箇所に吐出する。
調整工程では、判定工程において、相対位置がずれていると判定された場合、判定工程の後、相対位置のずれ量を判定し、このずれ量に基づいてインクジェットヘッドの位置調整を行う。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の印刷方法および印刷装置の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
[印刷方法]
本実施形態の印刷方法は、電極形成面に形成された微細配線の断線箇所を修復する印刷方法であって、前記断線箇所に、印刷により導電部を形成して、前記断線箇所を修復するとともに、前記微細配線における前記断線箇所以外の部位に、印刷により前記導電部と相似形状の疑似導電部を形成する工程を有する方法である。
【0016】
以下、本実施形態の印刷方法について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の印刷方法における配線印刷工程および第1の検知工程を示す概略平面図である。
図2は、本実施形態の印刷方法における修復工程を示す概略平面図である。
まず、
図1に示すように、印刷により、例えば、透明基材11の電極形成面(一方の面)11aに、格子状の微細配線12を形成する(配線印刷工程)。これにより、透明基材11と、その電極形成面(一方の面)11aに形成された微細配線12とを有する表面電極10を作製する。
微細配線12の形成には、印刷版を用いる印刷手段や、インクジェットヘッドやディスペンサ等の無版印刷手段が用いられる。
【0017】
透明基材11としては、例えば、ポリチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルフォン(PES)、環状オレフィンコポリマー(COC)、トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose;TAC)フィルム、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol;PVA)フィルム、ポリイミド(Polyimide;PI)フィルム、ポリスチレン(Polystyrene;PS)、二軸延伸ポリスチレン(K樹脂含有biaxially oriented PS;BOPS)、ガラスまたは強化ガラスなどからなる基材が挙げられる。
【0018】
微細配線12は、例えば、導電回路の形成に用いられる導電性のインクから構成されている。導電性のインクとしては、例えば、ポリマー型導電インク、銀インク組成物、市販の金属ペースト、金属ナノインク、金属錯体インク等が用いられる。
【0019】
次いで、表面電極10について、微細配線12の断線箇所12aの有無と位置を検知する(第1の検知工程)。
この第1の検知工程では、透明基材11の電極形成面11aを画像診断装置等の検知手段を用いて検査し、微細配線12において、断線箇所12aの有無を検知する。第1の検知工程では、例えば、検知手段に備えられたCCDカメラ等からなる撮像部によって、透明基材11の電極形成面11aを撮影し、その画像のデータを検知手段に備えられた画像データ処理部等により、透明基材11の電極形成面11aおよび断線箇所12aの位置を座標データ化する。また、この座標データを、検知手段に備えられたデータ記憶部に保存する。
なお、断線箇所12aは、微細配線12の連続性が断ち切られ、微細配線12の電気的な流れも断ち切る部分である。
【0020】
次いで、第1の検知工程において、微細配線12に断線箇所12aが存在することが確認された場合、その検知結果(断線箇所12aの位置を示す座標データ)に基づいて、
図2に示すように、断線箇所12aに、印刷により導電部21,22を形成して、断線箇所12aを修復する。また、導電部21,22の形成に伴って、微細配線12における断線箇所12a以外の部位に、印刷により導電部21,22と相似形状の疑似導電部31,32,33を形成する(修復工程)。
【0021】
修復工程では、導電部21,22や疑似導電部31,32,33の形成において、微細配線12の形成に用いられたものとは別に設けられた印刷手段が用いられる。
導電部21,22および疑似導電部31,32,33の形成には、印刷版を用いる印刷手段や、インクジェットヘッドやディスペンサ等の無版印刷手段が用いられる。
また、導電部21,22を形成する位置は、上述のように、データ記憶部に保存された、断線箇所12aの位置に関する座標データに基づいて決定される。
【0022】
修復工程では、疑似導電部31,32,33を、規則的に設ける必要はなく、不規則に形成されることが好ましい。
ここでいう不規則とは、疑似導電部31,32,33が設けられる位置や、疑似導電部31,32,33の長さや幅(太さ)、疑似導電部31,32,33の微細配線12に対する傾き等が一定(同一)ではなく、不揃い(不規則)であることを言う。
すなわち、疑似導電部31,32,33は、導電部21,22の位置に対して、特定の位置に設けられる必要がなく、透明基材11の電極形成面11aにおいて適宜分散して配置されていてもよい。また、3つの疑似導電部31,32,33は、互いに長さや幅が異なっていてもよい。3つの疑似導電部31,32,33は、互いに微細配線12に対する傾きが異なっていてもよい。
【0023】
仮に、微細配線12の断線箇所12aを修復するために、導電部21,22のみを形成した場合、人間は、その導電部21,22を微細配線12全体に対して異物と認識(視認)してしまい、導電部21,22が目立(際立)ってしまう。そのため、導電部21,22のみを有する表面電極10をタッチパネル等の表示機器に適用した場合、表示機器の視認性を損なってしまう。そこで、本実施形態では、導電部21,22に加えて、疑似導電部31,32,33を形成することにより、導電部21,22のみに人間の意識が向かないようにして、あたかも導電部21,22および疑似導電部31,32,33が形成されていないように思わせるという効果を得ている。
また、仮に、疑似導電部31,32,33が規則的に設けられた場合、人間は規則的な配列による干渉縞を異物と認識(視認)し易くなる。そのため、干渉縞が発生しない程度に規則的に疑似導電部31,32,33を設けるか、不規則に疑似導電部31,32,33を設けることが好ましい。
さらに、透明基材11の電極形成面11aにおいて、導電部21,22と疑似導電部31,32,33が偏在すると、それらが1つの塊として視認されやすくなる。従って、疑似導電部31,32,33を、透明基材11の電極形成面11aにおいて、全体的にほぼ均一に分散して配置することが好ましい。
【0024】
導電部21,22や疑似導電部31,32,33を、微細配線12に対して斜めに形成してもよい。微細配線12の幅は、0.1μm〜20μm程度と非常に小さいため、微細配線12に対して平行に、導電部21,22や疑似導電部31,32,33を形成することが難しいことがある。微細配線12に断線箇所12aを修復してさえいれば、すなわち、微細配線12の電気的な流れが断ち切られないようにすることさえできれば、導電部21,22は微細配線12に対して斜めに形成されていてもよい。また、導電部21,22が微細配線12に対して斜めに形成されている場合、導電部21,22のみが目立たないようにするためには、疑似導電部31,32,33も微細配線12に対して斜めに形成されていることが好ましい。
【0025】
導電部21,22および疑似導電部31,32,33の幅は、微細配線12の幅以上であることが好ましい。このようにすれば、微細配線12全体の導電性を損なうことなく微細配線12に断線箇所12aを修復することができるとともに、導電部21,22および疑似導電部31,32,33を目立たなくすることができる。
【0026】
また、疑似導電部31,32,33は、微細配線12の縦配線12A(
図2における紙面上下方向の配線)と、微細配線12の横配線12B(
図2における紙面左右方向の配線)とによって形成される格子の最小単位(例えば、
図2に示す1点鎖線αで囲まれた格子)において1つ形成されていてもよい。この程度であれば、疑似導電部31,32,33が目立つことはない。
【0027】
導電部21,22および疑似導電部31,32,33の材料としては、特に限定されないが、微細配線12の材料と同じものが好ましい。
【0028】
なお、本実施形態では、微細配線12に断線箇所12aが2つ存在し、それに対応する2つの導電部21,22を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、微細配線に存在する断線箇所は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。微細配線に断線箇所が3つ以上存在する場合、それらの断線箇所を修復するために、それと同数の導電部を形成する。
【0029】
また、本実施形態では、2つの導電部21,22に対して、3つの疑似導電部31,32,33が形成された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、導電部と同数の疑似導電部、または、導電部よりも多くの疑似導電部を形成する。
【0030】
次いで、微細配線12の断線箇所12aを修復した後、表面電極10について、微細配線12の断線箇所12aの有無と位置を検知する(第2の検知工程)。
この第2の検知工程では、透明基材11の電極形成面11aを画像診断装置等の検知手段を用いて検査し、微細配線12において、断線箇所12aの有無を検知する。第2の検知工程では、例えば、検知手段に備えられたCCDカメラ等からなる撮像部によって、透明基材11の電極形成面11aを撮影し、その画像のデータを検知手段に備えられた画像データ処理部等により、断線箇所12aの位置を座標データ化する。得られた断線箇所12aに関する座標データと、第1の検知工程において得られ、データ記憶部に保存されている断線箇所12aに関する座標データとを比較して、微細配線12の断線箇所12aの修復が適正に行われたか否かを確認する。
【0031】
微細配線12の断線箇所12aの修復が適正に行われていなかったことが分かった場合、第1の検知工程における検知結果(断線箇所12aに関する座標データ)に基づいて、断線箇所12aに、印刷により導電部21,22を形成して、断線箇所12aを修復することを繰り返す。
【0032】
本実施形態の印刷方法によれば、微細配線12の断線箇所12aに、印刷により導電部21,22を形成して、断線箇所12aを修復するとともに、微細配線12における断線箇所12a以外の部分に、印刷により導電部21,22と相似形状の疑似導電部31,32,33を形成するため、導電部21,22を目立たせる(際立たせる)ことなく、微細配線12の断線箇所12aを修復することができる。従って、タッチパネル等の表示機器に適用した場合に視認性を損なうことなく、透明基材11の電極形成面11aに形成された微細配線12を修復することができる。
【0033】
[印刷装置]
本実施形態の印刷装置は、電極形成面に形成された微細配線の断線箇所を修復する印刷装置であって、前記断線箇所に、導電部を形成して、前記断線箇所を修復するとともに、前記微細配線における前記断線箇所以外の部分に、前記導電部と相似形状の疑似導電部を形成する印刷手段と、前記微細配線の修復の前後にて、前記断線箇所を検知する検知手段と、を備えた装置である。
【0034】
以下、本実施形態の印刷装置について詳細に説明する。
図3は、本実施形態の印刷装置を示す模式図である。
本実施形態の印刷装置100は、印刷対象物に対して微細配線を形成する第1の印刷手段101と、微細配線の断線箇所を修復する第2の印刷手段102と、第1の印刷手段101で形成された印刷部の状態、および第1の印刷手段101と第2の印刷手段102によって形成された印刷部の状態を検知する検知手段103と、第1の印刷手段101と第2の印刷手段102の位置決めをする位置決め手段104と、第1の印刷手段101、第2の印刷手段102、検知手段103および位置決め手段104に接続され、これらの動作を制御する制御手段105と、第1の印刷手段101、第2の印刷手段102、検知手段103、位置決め手段104および制御手段105に接続され、これらに電力を供給する電源106と、を備えている。
【0035】
第1の印刷手段101は、印刷により、印刷対象物である透明基材11の電極形成面11aに、微細配線12を形成するための手段である。第1の印刷手段101としては、印刷版を用いる印刷手段や、インクジェットヘッド、ディスペンサ等の無版印刷手段が挙げられる。
【0036】
第2の印刷手段102は、印刷により、印刷対象物である表面電極10に対して、透明基材11の電極形成面11aにおける微細配線12の断線箇所12aに、導電部21,22を形成して、断線箇所12aを修復するとともに、微細配線12における断線箇所12a以外の部位に、導電部21,22と相似形状の疑似導電部31,32,33を形成するための手段である。第2の印刷手段102としては、印刷版を用いる印刷手段や、インクジェットヘッド、ディスペンサ等の無版印刷手段が挙げられる。
【0037】
検知手段103は、微細配線12を形成する前に、透明基材11の電極形成面11aを検査するための手段である。また、検知手段103は、微細配線12の修復の前にて、微細配線12が形成された透明基材11の電極形成面11aを検査し、微細配線12において、断線箇所12aの有無を検知するための手段である。なお、検知手段103は、微細配線12の修復の後にて、微細配線12が形成された透明基材11の電極形成面11aを検査し、微細配線12の断線箇所12aの修復状態を検知することもできる。検知手段103は、画像診断装置等からなる。検知手段103は、例えば、CCDカメラ等からなる撮像部、撮像部によって撮影された透明基材11の電極形成面11aの画像のデータを処理して、透明基材11の電極形成面11aおよび断線箇所12aの位置を座標データ化する画像データ処理部、画像データや座標データを保存するデータ記憶部等を備える。
【0038】
位置決め手段104は、透明基材11の電極形成面11aに対して、微細配線12を形成するための第1の印刷手段101の位置決めをする手段である。また、位置決め手段104は、微細配線12の断線箇所12aに対して、導電部21,22を形成するとともに、微細配線12に対して、疑似導電部31,32,33を形成するための第2の印刷手段102の位置決めをする手段である。
位置決め手段104は、検知手段103で、微細配線12を形成する前に取得した透明基材11の電極形成面11aの座標データに基づいて、第1の印刷手段101の位置決めをする。
位置決め手段104は、検知手段103のデータ記憶部に保存された、微細配線12の断線箇所12aの位置に関する座標データに基づいて、第2の印刷手段102の位置決めをする。
【0039】
制御手段105は、第1の印刷手段101、第2の印刷手段102、検知手段103および位置決め手段104が、本実施形態の印刷方法を実施するための所定の動作をなすように制御する手段である。
【0040】
また、
図3に示すように、本実施形態の印刷装置100は、第2の印刷手段102として、複数のパターン化された修復用印刷版(
図3では、第1の修復用印刷版201と第2の修復用印刷版202)を備えていてもよい。このようにすれば、微細配線12の修復の前に、検知手段103によって検査された、微細配線12の断線箇所12aの位置や長さに応じて、第2の印刷手段102のうち、最適な修復用印刷版を選択し、その修復用印刷版を用いることによって、微細配線12の断線箇所12aを修復することもできる。
具体的には、まず、第1の修復用印刷版201により、透明基材11の電極形成面11aにおいて、何れかの微細配線12の断線箇所12aに、導電部21を形成するとともに、微細配線12における、その断線箇所12a以外の部位に、疑似導電部32を形成する。続いて、第2の修復用印刷版202により、透明基材11の電極形成面11aにおいて、他の微細配線12の断線箇所12aに、導電部22を形成するとともに、微細配線12における、その断線箇所12a以外の部位に、疑似導電部31,33を形成してもよい。
【0041】
本実施形態の印刷装置100によれば、微細配線12の断線箇所12aに、導電部21,22を形成して、断線箇所12aを修復するとともに、微細配線12における断線箇所12a以外の部分に、導電部21,22と相似形状の疑似導電部31,32,33を形成する第2の印刷手段102と、微細配線12の修復の前にて、断線箇所12aを検知する検知手段と、を備えるため、導電部21,22を目立たせる(際立たせる)ことなく、微細配線12の断線箇所12aを修復することができる。従って、タッチパネル等の表示機器に適用した場合に視認性を損なうことなく、透明基材11の電極形成面11aに形成された微細配線12を修復することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、第1の印刷手段101と、第2の印刷手段102と、検知手段103と、位置決め手段104と、制御手段105と、電源106と、を備えた印刷装置100を例示したが、本発明の印刷装置はこれに限定されない。本発明の印刷装置にあっては、一般的な印刷装置が有する各種手段(装置)を備えていてもよい。