特許第6642195号(P6642195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6642195擬似接着性積層体、擬似接着ラベル及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642195
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】擬似接着性積層体、擬似接着ラベル及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20200127BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200127BHJP
   G09F 3/03 20060101ALI20200127BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20200127BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20200127BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20200127BHJP
   B31D 1/02 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B32B27/00 L
   B32B27/00 M
   G09F3/03 E
   G09F3/02 F
   G09F3/02 C
   G09F3/00 E
   G09F3/10 A
   B31D1/02 A
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-66419(P2016-66419)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-177466(P2017-177466A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雅康
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−257388(JP,A)
【文献】 特開2014−224882(JP,A)
【文献】 特開2007−140438(JP,A)
【文献】 特開2004−085729(JP,A)
【文献】 特開2003−140553(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0117307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B31D 1/02
B32B 27/00
G09F 3/00
G09F 3/02
G09F 3/03
G09F 3/10
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂フィルムと、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に、剥離可能なように設けられるポリエチレン系樹脂層と、
前記ポリエチレン系樹脂層の前記ポリプロピレン系樹脂フィルム側の面とは反対側、又は前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの前記ポリエチレン系樹脂層側の面とは反対側に設けられる紫外線印刷層と
を備える擬似接着性積層体。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの前記ポリエチレン系樹脂層に対する剥離力が、80〜1000mN/50mmである、請求項1に記載の擬似接着性積層体。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂層を構成するポリエチレン系樹脂のMFR値が、2.5〜25g/10minである請求項1又は2に記載の擬似接着性積層体。
【請求項4】
前記MFR値が、3.0〜10g/10minである請求項3に記載の擬似接着性積層体。
【請求項5】
前記紫外線印刷層が、前記ポリエチレン系樹脂層又は前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの接着性改質処理面上に設けられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体。
【請求項6】
前記紫外線印刷層が、前記ポリエチレン系樹脂層の前記ポリプロピレン系樹脂フィルム側の面とは反対側に設けられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体。
【請求項7】
前記ポリエチレン系樹脂層及び前記ポリプロピレン系樹脂フィルムのうち、前記紫外線印刷層が設けられる側の樹脂層又は樹脂フィルムが、少なくとも透明性を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体と、
前記ポリエチレン系樹脂の前記ポリプロピレン系樹脂フィルム側の面とは反対側に設けられる粘着剤層と
を備える擬似接着ラベル。
【請求項9】
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの前記ポリエチレン系樹脂層側の面とは反対側に設けられる表面基材をさらに備える請求項8に記載の擬似接着ラベル。
【請求項10】
ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に、剥離可能なようにポリエチレン系樹脂層を積層し、積層体を形成する工程と、
前記積層体に紫外線硬化性インクを塗布しかつ紫外線を照射することで紫外線印刷層を形成する工程と
を備える擬似接着性積層体の製造方法。
【請求項11】
前記紫外線は光量40〜400mJ/2で前記積層体に照射する請求項10に記載の擬似接着性積層体の製造方法。
【請求項12】
ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に、剥離可能なようにポリエチレン系樹脂層を積層し、積層体を形成する工程と、
前記積層体に紫外線硬化性インクを塗布しかつ紫外線を照射することで紫外線印刷層を形成し、擬似接着性積層体を得る工程と、
前記積層体又は擬似接着性積層体の前記ポリエチレン系樹脂層側の表面に粘着剤層を形成する工程と
を備える擬似接着ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV印刷が施された擬似接着性積層体、擬似接着ラベル、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホームセンター、スーパーマーケット、ディスカウントストア等では、万引き防止用タグが広く使用されるようになってきており、万引き防止用タグは、擬似接着ラベルにより商品に付されることがある。擬似接着ラベルを用いると、一旦、商品から取り外した万引き防止用タグは、他の商品に再接着できないため、悪用防止に有効である。
【0003】
擬似接着ラベルとしては、擬似接着性を奏する積層体に、一方の面に表面基材、反対面に粘着剤層がさらに積層されたものが知られている。また、擬似接着ラベルに用いる積層体は、粘着剤層に面する側に印刷を施すことがある。このような印刷は表面基材や積層体自体に設けた隠蔽層等により隠すことが可能であるため、剥がした後で初めて利用できるようになる情報を印字することが多い。このような印刷としては、瞬時に塗膜を硬化することができること等から、紫外線印刷を利用することがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来、擬似接着ラベルに用いる積層体としては、一方を基材、他方を熱可塑性樹脂層とする積層体が知られている。該基材には、紙基材、樹脂フィルム等が使用されるが、樹脂フィルムが使用される場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが広く使用されている。一方で、熱可塑性樹脂層には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン樹脂が多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4137930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材にPETフィルム、熱可塑性樹脂層にポリプロピレン系樹脂を使用した積層体では、基材の熱可塑性樹脂層に対する剥離力が低くなり、基材が熱可塑性樹脂層から不意に剥がれる等の不具合が生じやすくなる。一方で、基材にPETフィルム、熱可塑性樹脂層にポリエチレン系樹脂を使用した積層体では、基材の熱可塑性樹脂層に対する剥離力が比較的適切な値になりやすい。
【0007】
しかし、PETフィルムとポリエチレン系樹脂からなる積層体に、紫外線印刷を施すと、PETフィルムとポリエチレン系樹脂の間の剥離力が必要以上に高くなってしまい、基材を熱可塑性樹脂層から剥離できない不具合が生じることがある。したがって、積層体として基材にPETフィルム、熱可塑性樹脂層にポリエチレン系樹脂を使用した擬似接着ラベルに、紫外線印刷を施すことは難しい。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、樹脂フィルムに熱可塑性樹脂層を積層した積層体に、紫外線印刷を施しても、樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層間の剥離力が必要以上に高くなることを防止して、熱可塑性樹脂層に対する樹脂フィルムの剥離性を良好にすることが可能な擬似接着性積層体および該擬似接着性積層体を使用した擬似接着ラベル並びにこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記PETフィルムとポリエチレン系樹脂の間の剥離力が高くなる原因について検討した結果、紫外線照射により樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層の間の剥離力が高くなっていることを解明した。そして、さらに検討した結果、特定の樹脂フィルムと特定の熱可塑性樹脂の積層体においては、紫外線を照射しても、樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層間の剥離力が殆ど高くならないことを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(12)を提供する。
(1)ポリプロピレン系樹脂フィルムと、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に、剥離可能なように設けられるポリエチレン系樹脂層と、
前記ポリエチレン系樹脂層の前記ポリプロピレン系樹脂フィルム側の面とは反対側、又は前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの前記ポリエチレン系樹脂層側の面とは反対側に設けられる紫外線印刷層と
を備える擬似接着性積層体。
(2)前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの前記ポリエチレン系樹脂層に対する剥離力が、80〜1000mN/50mmである、上記(1)に記載の擬似接着性積層体。
(3)前記ポリエチレン系樹脂層を構成するポリエチレン系樹脂のMFR値が、2.5〜25g/10minである上記(1)又は(2)に記載の擬似接着性積層体。
(4)前記MFR値が、3.0〜10g/10minである上記(3)に記載の擬似接着性積層体。
(5)前記紫外線印刷層が、前記ポリエチレン系樹脂層又は前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの接着性改質処理面上に設けられる上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体。
(6)前記紫外線印刷層が、前記ポリエチレン系樹脂層の前記ポリプロピレン系樹脂フィルム側の面とは反対側に設けられる上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体。
(7)前記ポリエチレン系樹脂層及び前記ポリプロピレン系樹脂フィルムのうち、前記紫外線印刷層が設けられる側の樹脂層又は樹脂フィルムが、少なくとも透明性を有する上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の擬似接着性積層体と、
前記ポリエチレン系樹脂の前記ポリプロピレン系樹脂フィルム側の面とは反対側に設けられる粘着剤層と
を備える擬似接着ラベル。
(9)前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの前記ポリエチレン系樹脂層側の面とは反対側に設けられる表面基材をさらに備える上記(9)に記載の擬似接着ラベル。
(10)ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に、剥離可能なようにポリエチレン系樹脂層を積層し、積層体を形成する工程と、
前記積層体に紫外線硬化性インクを塗布しかつ紫外線を照射することで紫外線印刷層を形成する工程と
を備える擬似接着性積層体の製造方法。
(11)前記紫外線は光量40〜400mJ/2で前記積層体に照射する上記(10)に記載の擬似接着性積層体の製造方法。
(12)ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に、剥離可能なようにポリエチレン系樹脂層を積層し、積層体を形成する工程と、
前記積層体に紫外線硬化性インクを塗布しかつ紫外線を照射することで紫外線印刷層を形成し、擬似接着性積層体を得る工程と、
前記積層体又は擬似接着性積層体の前記ポリエチレン系樹脂層側の表面に粘着剤層を形成する工程と
を備える擬似接着ラベルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
樹脂フィルムに熱可塑性樹脂層を積層した積層体に、紫外線印刷を施しても、樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層間の剥離力が必要以上に高くなることを防止し、熱可塑性樹脂層に対する樹脂フィルムの剥離性を良好にすることが可能な擬似接着性積層体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】擬似接着性積層体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
図2】擬似接着性積層体の他の実施形態を示す模式的な断面図である。
図3】擬似接着ラベルの一実施形態を示す模式的な断面図である。
図4】擬似接着ラベルの他の実施形態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
[擬似接着性積層体]
本発明の擬似接着性積層体10は、図1,2に示すように、ポリプロピレン系樹脂フィルム(以下、“PPフィルム”ともいう)11と、PPフィルム11の一方の面11Aに剥離可能なように設けられるポリエチレン系樹脂層12(以下、“PE樹脂層”ともいう)と、紫外線印刷層13とを備えるものである。
【0012】
紫外線印刷層13は、図1に示すように、PE樹脂層12のPPフィルム11側の面12Aとは反対側の面(反対面)12B側に設けられてもよいし、図2に示すように、PPフィルム11のPE樹脂層12側の面11Aとは反対側の面(反対面)11B側に設けられてもよいし、これら両方に設けられてもよい。
紫外線印刷層13は、これらの中では、図1に示すように、PE樹脂層12の反対面12B側に設けられることが好ましい。このような態様によると、後述する擬似接着ラベル等において基材を構成するPPフィルム11を剥がした後でも、紫外線印刷層13によって表示される情報が被着体上に残るので、紫外線印刷層13によって有効に情報表示できる。また、PPフィルム11や、PPフィルム11上に設けた部材(例えば、後述する隠蔽層等)により紫外線印刷層13を隠蔽しておくと、PPフィルム11をPE樹脂層12から剥がしたときに、被着体上に紫外線印刷層13により新たな情報を表示できる。
【0013】
紫外線印刷層13は、後述するように、PPフィルム11とPE樹脂層12とを備える積層体に、紫外線硬化型インクを塗布し、紫外線照射により硬化して形成するものである。そのため、擬似接着性積層体10(特に、PPフィルム11と、PE樹脂層12の界面)には、紫外線が照射される。
本発明では、このように基材を構成するフィルムと熱可塑性樹脂層の界面に紫外線を照射されたものであるが、基材フィルムにPPフィルム11を用い、熱可塑性樹脂層にPE樹脂層12を用いるため、これら界面において剥離力が必要以上に高くなることを防止する。
【0014】
以下、擬似接着性積層体10の各部材についてより詳細に説明する。
(PPフィルム)
PPフィルム11としては、一般的に使用されるポリプロピレン系樹脂フィルムを使用すればよい。また、PPフィルム11は、延伸でも、無延伸でもよいが、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよいが、通常は二軸延伸フィルムを使用する。
PPフィルム11は、擬似接着性積層体10の基材を構成するものである。擬似接着性積層体10の基材は、PPフィルム11単体からなるものでもよいが、PE樹脂層12に接触する側の面がPPフィルム11である限りは、PPフィルム11と、その他のプラスチックフィルムからなる多層体でもよい。或いは、紙、合成紙にPPフィルム11を積層した多層体や、紙又は合成紙にPPフィルム11及びその他のプラスチックフィルムを積層した多層体であってもよい。多層体であり、かつ紫外線印刷層13が図2に示すようにPPフィルム11側に形成される場合、紫外線印刷層13は、PPフィルム11上に直接形成されずに、プラスチックフィルム上等に形成される。
PPフィルム11の厚さは、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。
【0015】
(PE樹脂層)
PE樹脂層12は、PPフィルム11の一方の面に剥離可能なように積層されるものである。PE樹脂層12は、PPフィルム11に剥離可能に積層されることで、PE樹脂層12とPPフィルム11の間が擬似接着性を有することになる。なお、擬似接着性とは、積層された2層の界面で剥離が容易であり、剥離された後では、剥離された層間で容易に再接着ができない性質をいう。
【0016】
PE樹脂層12を構成するポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満)、中密度ポリエチレン(密度:0.930g/cm3以上0.942g/cm3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:0.942g/cm3以上)などのポリエチレンが挙げられ、これらの中では、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。
なお、ポリエチレンには、マレイン酸変性ポリエチレンなどの酸変性ポリエチレンも知られているが、酸変性ポリエチレンは、紫外線照射によってPPフィルム12に対する剥離力を向上させる要因になり得るので、酸変性されていないポリエチレンが好ましい。
なお、ポリエチレン系樹脂は、上記各種ポリエチレンに必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、柔軟性付与剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、滑剤、充填剤、着色剤などを適宜配合したものであってもよい。
【0017】
また、本発明では、ポリエチレン系樹脂のMFR値が、2.5〜25g/10minであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂は、MFR値が上記範囲内であることで、PPフィルム11にPE樹脂層12を容易に積層することが可能になる。また、ポリエチレン系樹脂のMFR値は、3.0〜10g/10minであることがより好ましく、3.0〜5.0g/10minであることがさらに好ましい。このようにMFR値を低い値とすると、擬似接着性積層体10は、高温多湿環境下で保存されても剥離力が変化しにくくなり、剥離性能の安定性が向上する。なお、MFRは、JISK7210:1999に基づき測定したものである。
【0018】
さらに、ポリエチレン系樹脂の融点は、95〜140℃であることが好ましく、100〜130℃であることがより好ましい。融点がこの範囲であると、加熱により剥離力が変化しにくく、夏場等でも安定した剥離性能を得やすくなる。
なお、融点は、DSCにより測定したものである。具体的には、融点測定時のDSC測定条件は、0℃から温度レート5℃/分でサンプル量は10mgにて行い、吸熱ピークのピークトップ温度である。
また、PE樹脂層の厚さは、7〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。
【0019】
PE樹脂層は、引張強度が120N/m以上であることが好ましい。引張強度が高いと、PPフィルム11をPE樹脂層12から剥離するときにPE樹脂層12が破壊されにくくなる。また、PE樹脂層の引張強度は、130〜230N/mであることがより好ましい。なお、引張強度は、JIS Z 0237に準拠して測定された値である。なお、PE樹脂層12の引張強度は、PPフィルム11からPE樹脂層12を剥がして測定することが可能である。
【0020】
PE樹脂層12及びPPフィルム11は、いずれか一方が透明性を有することが好ましい。より具体的には、PE樹脂層12及びPPフィルム11のうち、紫外線印刷層13が設けられる側のPE樹脂層12又は樹脂フィルム11が、少なくとも透明性を有することが好ましい。紫外線印刷層13が設けられる側のPE樹脂層12又は樹脂フィルム11が透明であると、紫外線印刷層13を硬化するために照射する紫外線が、必然的にPE樹脂層12とPPフィルム11の界面に照射されるようになる。
中でも、図1のようにPE樹脂層12の反対面12B上に紫外線印刷層13が設けられるとともに、PE樹脂層12が透明であることがより好ましい。勿論、PE樹脂層12が不透明で、PPフィルム11が透明性を有してもよい。また、PE樹脂層12及びPPフィルム11の両方が透明性を有してもよい。
【0021】
なお、透明性を有するPPフィルム11、PE樹脂層12とは、通常、可視光及び紫外光の両方を透過するものであるが、紫外光のみを透過するものであってもよい。ただし、紫外光のみを透過する場合、上記のようにPE樹脂層12上に設けた紫外線印刷層13がPE樹脂層12を介して視認できなくなるため、可視光及び紫外光の両方を透過することが好ましい。また、透明性を有する場合、PPフィルム11、PE樹脂層12は着色が付されていてもよいし、無着色であってもよい。
【0022】
PPフィルム11のPE樹脂層12に対する剥離力は、80〜1000mN/50mmであることが好ましい。剥離力が80mN/50mmより高くなることで、これらの間で剥がれ等が生じて、PPフィルム11がPE樹脂層12から不意に剥がれる等の不具合が生じにくくなる。そのため、例えば擬似接着性積層体10をロールに巻き取ったりロールから巻き出したりロール状態で保管している時の巻きずれによりPPフィルム11が剥がれたりする不具合が防止される。
1000mN/50mm以下とすることで、PE樹脂層12を破壊させずにPE樹脂層12からPPフィルム11を剥離することが可能になる。また、例えば後述する擬似接着ラベルにおいて、PPフィルム11をPE樹脂層12から剥離しようとしたときに、他の界面(例えば、後述する被着体と粘着剤層21の間)において剥離が生じたりすることも防止する。
上記剥離力は、PPフィルム11とPE樹脂層12間の剥離性能をより向上させる観点からは、100〜500mN/50mmであることがより好ましく、200〜450N/50mmであることがさらに好ましい。
なお、上記したように、PPフィルム11とPE樹脂層12の界面には、上記のように、通常、紫外線が照射されたものであるが、紫外線が照射されたものにもかかわらず、上記のように、剥離力を比較的低い値にすることが可能である。
【0023】
(紫外線印刷層)
紫外線印刷層13は、紫外線硬化性インキに紫外線を照射することで硬化された硬化物である。紫外線硬化性インキとしては、光重合性化合物と光重合開始剤と顔料とを含有するものが挙げられる。
顔料は無機顔料、有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、例えば、チタン、コバルト、マンガン、カーボンブラックなどが挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、トリフェニルメタン系、ジオキサジン系の顔料などが挙げられる。
光重合性化合物は、不飽和基を分子内に1個または2個以上含有する化合物であり、ポリエステルアクリレートもしくはメタクリレート類、エポキシアクリレートもしくはメタクリレート類、ウレタンアクリレートもしくはメタクリレート類、ポリエーテルアクリレートもしくはメタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。
これらの光重合性化合物をインキの粘度、硬化性、接着性を考慮し、適宜組み合わせて使用する。
光重合性開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、チオキサントン系、アセトフェノン系の開始剤などが挙げられる。
紫外線硬化性インキには、必要に応じて、顔料分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐磨耗防止剤、ブロッキング防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。
紫外線印刷層13は、上記したように、PPフィルム11又はPE樹脂層12の反対面11B,12B側の全面に形成されたものでもよいが、部分的に形成されたものであってもよい。紫外線印刷層13は、部分的に形成されることで情報を表示しやすくなる。
【0024】
(接着性改質処理)
図1に示すように、紫外線印刷層13をPE樹脂層12の反対面12B上に設ける場合、反対面12Bは、未処理であってもよいが、易接着コート処理、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、プラズマ処理等の接着性改質処理を施してもよい。そして、その接着性改質処理面上に紫外線印刷層13を直接形成すればよい。接着性改質処理は、上記した中では、コロナ処理が好ましい。
同様に、図2に示すように、紫外線印刷層13をPPフィルム11の反対面11B上に設ける場合、PPフィルム11の反対面11Bは未処理であってもよいが、接着性改質処理を施してもよい。そして、その接着性改質処理面に紫外線印刷層13を直接形成すればよい。この場合の接着性改質処理としては、上記で列挙したものから適宜選択して使用できるが、コロナ処理が好ましい。接着性改質処理により、紫外線印刷層13のPE樹脂層12又はPPフィルム11への密着性が向上する。
【0025】
[擬似接着ラベル]
次に、本発明の擬似接着ラベルについて用いて説明する。図3は、擬似接着ラベルの一実施形態を示す。図3に示すように、擬似接着ラベル20は、上記した擬似接着性積層体10と、PE樹脂層12の反対面12B側に設けられる粘着剤層21と、PPフィルム11の反対面11B側に設けられる表面基材22とを備える。
粘着剤層21は、粘着剤から形成される。粘着剤としては、特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられ、これらの中ではアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤としては、溶剤型、無溶剤型、エマルション型のいずれであってもよい。
擬似接着ラベルにおいても、上記のように、紫外線印刷層13は、PE樹脂層12の反対面12B上に形成されることが好ましく、そのため、粘着剤層21は紫外線印刷層13の上に形成されることが好ましい。ただし、図2に示すように紫外線印刷層13がPPフィルム11の反対面11B上に形成される場合には、粘着剤層21は、PE樹脂層12の上に直接形成されてもよい。
表面基材22は、紙、合成紙、プラスチックフィルム等の表面に印刷印字が可能なシートである。ただし、擬似接着ラベル20において、表面基材22は省略されてもよく、その場合、PPフィルム11が擬似接着ラベルの表面基材としての機能も果たすことになる。
なお、図3に示すように、表面基材22とPPフィルム11が一体的に多層体を構成する場合には、多層体は、擬似接着性積層体10、及び擬似接着ラベル20の基材としての機能を有してもよい。また、図3に示す擬似接着ラベルにおいて、PPフィルム11と表面基材22は、接着剤層を介して接着されてもよい。
【0026】
図4は、別の実施形態の擬似接着ラベル30を示す。図4に示すように、擬似接着ラベル30は、表面基材22と擬似接着性積層体10との間に機能層25を有してもよい。
機能層25は、擬似接着ラベル30に各種の機能を付すための層であり、隠蔽層、センサー部材等であり、好ましくはセンサー部材である。
隠蔽層は、紫外線印刷層13の表示等を隠蔽する部材である。また、センサー部材としては、共振回路、RF回路、ICチップ、EMタグ等が挙げられる。
擬似接着ラベルは、各種用途に使用可能である。例えば、機能層が共振回路である場合、共振回路ラベルとして使用される。擬似粘着ラベルは、共振回路ラベルである場合、例えば、店舗等での万引き防止のために使用される。なお、共振回路は、特定周波数の電波にのみ共振する回路である。
なお、擬似接着ラベル30では、図3に示すように機能層25を設けない場合、又は機能層25を隠蔽層以外の部材とする場合には、表面基材22を不透明として表面基材22自体を隠蔽部材としてもよい。また、機能層25がセンサー部材である場合等では、表面基材22が不透明な部分を有することで、表面基材22によりセンサー部材等を隠蔽することも可能になる。さらには、上記のようにPPフィルム11を不透明としてPPフィルム11自体を隠蔽部材としてもよい。
表面基材22、及びPPフィルム11は、これらの全面を不透明部分としてもよいが、一部を不透明部分としてもよい。さらに、隠蔽層(機能層25)は、反対面11B側の全面上に形成されたものでもよいが、部分的に形成されたものであってもよい。
【0027】
また、機能層25は、図4に示すように、表面基材22及びPPフィルム11それぞれに接着剤層26、27を介して接着されてもよい。機能層25がセンサー部材等、表面基材22やPPフィルム11に接着しにくい部材であっても、接着剤層26、27を設けることで、表面基材22、機能層25、及びPPフィルム11を一体的な部材(後述する表面多層体29)として、容易にPE樹脂層12から剥離することが可能になる。ただし、接着剤層26、27の一方又は両方を適宜省略してもよい。接着剤層26、27は、接着剤又は粘着剤のいずれによって形成してもよい。
【0028】
また、擬似接着ラベル20、30には、図3、4に示すように、粘着剤層21にさらに剥離シート23を貼付して、剥離シート23により粘着剤層21の表面を保護することが好ましい。剥離シート23としては、例えば、各種の樹脂フィルムや紙基材等の剥離シート基材の少なくとも一方の面を剥離処理したもの等が挙げられる。剥離シート23は、剥離処理面が粘着剤層21に接触するようにして粘着剤層21に貼着される。
なお、擬似接着ラベルは、抜き加工されていることが好ましく、例えば、1枚の剥離シート23の上に、抜き加工が行われた複数の擬似接着ラベルが設けられてもよい。
ただし、擬似接着ラベルにおいて、剥離シート23は、省略してもよい。
【0029】
擬似接着ラベル20、30は、粘着剤層21により被着体に貼付される。このとき、粘着剤層21が剥離シート23により保護されている場合には、被着体に貼付する前に剥離シート23が粘着剤層21から剥離される。
被着体に貼付された擬似接着ラベル20、30は、表面基材22が被着体から取り除かれるが、その場合の剥離界面はPPフィルム11とPE樹脂層12の間となり、表面基材22からPPフィルム11までの層で構成される多層体(表面多層体29)が被着体から取り除かれることになる。ただし、擬似接着ラベルにて表面基材22が省略される場合には、通常、PPフィルム11単体が被着体から取り除かれることになるが、剥離界面は同様である。
なお、上記のようにPPフィルム11とPE樹脂層12の界面にて適切に剥離が起こるように、擬似接着ラベル30と被着体との粘着力は、PPフィルム11のPE樹脂層12に対する剥離力より高くなるように調整される。また、擬似接着ラベル20、30が被着体から剥がれるのを防止するために、粘着剤層21の被着体に対する粘着力は、好ましくは5〜10N/25mmである。
【0030】
擬似接着ラベルにおいても、紫外線印刷層13は、上記のようにPPフィルム11の反対面11B、PE樹脂層12の反対面12B上のいずれか一方又は両方に設けてもよいが、図3、4に示すように、PE樹脂層12の反対面12B上に設けることが好ましい。そして、PE樹脂層12が上記したように透明性を有するとともに、紫外線印刷層13は、表面基材21と擬似接着積層体10の間に設けられた隠蔽層(機能層25)に重なるように形成され、隠蔽層により隠蔽されることが好ましい。或いは、隠蔽層が設けられる代わりに、表面基材22又はPPフィルム11の不透明部分が、紫外線印刷層13に重なるように設けられ、紫外線印刷層13は、表面基材22又はPPフィルム11により隠蔽されてもよい。
このような態様によれば、表面多層体29(又はPPフィルム11単体)を取り除くと、隠蔽されていた紫外線印刷層13による情報表示が、PE樹脂層12を介して視認可能となる。紫外線印刷層13により表示される情報としては、例えば、表面多層体29(又はPPフィルム11単体)が、被着体から取り除かれたことを示す情報等が挙げられる。
【0031】
[擬似接着性積層体の製造方法]
本発明の擬似接着性積層体は、例えば、以下の工程(I)及び工程(II)を備える製造方法で製造する。
(I)PPフィルムの一方の面に、剥離可能なようにPE樹脂層を積層し、積層体を形成する工程
(II)上記積層体に紫外線硬化性インクを塗布しかつ紫外線を照射することで紫外線印刷層を形成する工程
【0032】
以下、本製造方法の各工程について詳細に説明する。
(工程(I))
工程(I)において、PE樹脂層をPPフィルムに積層する方法は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂をTダイ等を用いて溶融押出等によりPPフィルム上に形成すればよい。溶融されたポリエチレン系樹脂の押出温度は、ポリエチレン系樹脂が溶融している温度であればよいが、通常200〜400℃、好ましくは250〜320℃である。
このとき、ポリエチレン系樹脂が積層されるPPフィルムが、プラスチックフィルム等が積層されており多層体を構成する場合は、少なくともPPフィルムの層がPE樹脂層と接するように多層体の最表面側に設けられているものが使用される。
【0033】
(工程(II))
工程(II)では、工程(I)で得られたPE樹脂層とPPフィルムを含む積層体に紫外線硬化性インクを塗布する。紫外線硬化性インクを塗布する方法は、特に限定されず、従来のインクを塗布する方法から適宜選択して適用可能である。また、紫外線硬化性インクは、積層体のPE樹脂層側又はPPフィルム側の表面のいずれか少なくとも一方に塗布すればよいが、PE樹脂層側に紫外線印刷層を形成するために、PE樹脂層側の表面に塗布することが好ましい。
なお、紫外線硬化性インクを塗布する前、積層体のインクが塗布される面には適宜、上記した接着性改質処理を施してもよいし、積層体に任意の層をさらに積層してもよい。
また、紫外線硬化性インクは、積層体の一面全体に塗布してもよいが、所定の情報を表示するために一定のパターンで塗布することが好ましい。また、紫外線印刷層は1種類の紫外線硬化性インクに限らず、複数のインクを使った多色刷りで形成してもよい。
【0034】
次に、紫外線硬化性インクが塗布された積層体に紫外線を照射する。紫外線の照射方向は特に限定されないが、効率的に紫外線を照射するために、PE樹脂層側の表面に紫外線硬化性インクを塗布した場合、PE樹脂層側からPE樹脂層に向けて紫外線を照射することが好ましい。また、PPフィルム側の表面に紫外線硬化性インクを塗布した場合、PPフィルム側からPPフィルムに向けて紫外線を照射することが好ましい。
このように、紫外線硬化性インクに紫外線を照射すると、通常、PE樹脂層とPPフィルムの界面にも紫外線が照射されるが、そのように紫外線が照射されても、PPフィルムのPE樹脂層に対する剥離力は顕著に向上したりすることはなく、良好な剥離性が維持される。
【0035】
工程(II)における紫外線の光量は、特に限定されないが、40〜400J/2が好ましく、150〜400J/2がより好ましく、200〜400J/2がさらに好ましい。このような範囲の光量で紫外線を照射することで、紫外線硬化性インクを適切に硬化することが可能になる。また、上記範囲内の光量を照射しても、PE樹脂層に対するPPフィルムの剥離力が顕著に大きくならないため、上記したようにPE樹脂層に対するPPフィルムの剥離性能は良好となる。
【0036】
[擬似接着ラベルの製造方法]
擬似接着ラベルの製造方法は、上記工程(I)及び(II)に加えて、工程(II)で得た擬似接着性積層体、又は工程(I)で得た積層体のPE樹脂層側の表面に粘着剤層を形成する工程を有する。
具体的には、剥離シートの剥離処理面に粘着剤を塗布して剥離シートの上に粘着剤層を形成し、その剥離シート上に形成した粘着剤層を擬似接着性積層体(又は積層体)のPE樹脂層側の表面に貼り付けるとよい。このとき、剥離シートは、そのまま粘着剤層の表面を保護するための剥離シートとして使用することができる。
或いは、粘着剤をPE樹脂層側の表面に塗布して粘着剤層を形成してもよい。この場合、粘着剤層にさらに剥離シートを貼り合わせてもよい。
なお、粘着剤層の形成は、通常、上記工程(II)の後に行うが、図2に示すように、紫外線印刷層13がPEフィルム12の反対面12B上に設けられない場合には、工程(II)の前に行ってもよい。
【0037】
また、擬似接着ラベルは、擬似接着性積層体のPPフィルム側の表面に表面基材、又は表面基材及び機能層を設ける場合、例えば、擬似接着性積層体、又は積層体のPPフィルム側の表面に接着剤層を形成し、その接着剤層を介して表面基材、又は機能層と表面基材を含む多層体を積層すればよい。或いは、接着剤層を表面に形成した、表面基材、又は機能層と表面基材含む多層体を、接着剤層を介して、擬似接着性積層体、又は積層体のPPフィルム側の表面に貼付すればよい。また、PPフィルム側の表面に、接着剤層、機能層、接着剤層及び表面基材を順次積層してもよい。ただし、以上の各方法において、接着剤層の形成は適宜省略してもよい。
なお、接着剤層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、剥離シートの剥離処理面に粘着剤を塗布して剥離シートの上に粘着剤層を形成し、その剥離シート上に形成した粘着剤層をPPフィルム側の表面、機能層、又は表面基材の上に貼り付けるとよい。或いは、粘着剤又は接着剤をPPフィルム側の表面、機能層の表面、又は表面基材の表面に塗布して形成してもよい。
なお、表面基材及び機能層の積層は、いかなる段階で行ってもよく、例えば、工程(II)の前に行ってもよいし、工程(II)の後に行ってもよい。さらに、PE樹脂層側の表面に粘着剤層を形成した後に行ってもよいし、形成前に行ってもよい。また、PE樹脂層をPPフィルムに積層する前(すなわち、積層体形成前)に行ってもよい。
【0038】
さらに、擬似接着ラベルは、適宜抜き加工が行われてもよい。抜き加工は、例えば、所定のラベルの外郭に沿った抜き刃を使用して、剥離シートを打抜かないように表面基材から粘着剤層までをカットして、剥離シートの上に複数の擬似接着ラベルが配列するように形成する。必要に応じて、外郭周りの不要部をカスとして取り除いてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0040】
本発明における剥離力の測定方法は以下のとおりである。
[剥離力]
積層体において、PPフィルム等のフィルムを、PE樹脂層等の樹脂層から剥離速度0.3m/min、剥離角度180°で剥離することで剥離力を測定した。なお、剥離力測定用のサンプルは、幅50mm、長さ150mmのものを使用し、剥離力の測定は、温度23℃、RH50%の条件下で行った。
【0041】
[実施例1]
繰り出しロールから基材として二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、商品名「トレファン」、厚さ40μm)を繰り出し、Tダイから熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「LC8001」、MFR値20.0g/10min、融点105℃)を厚さ15μmとなるように300℃でフィルム面へ溶融押し出しして、PPフィルムとPE樹脂層からなる積層体を得た。その積層体のポリエチレン側の面にコロナ処理を施し、その後、積層体をロール状に巻き取った。ついで、積層体を繰り出し、紫外線印刷層を形成することを想定して、積層体のポリエチレン側の面に、高圧水銀ランプを使用して紫外線照射を行い、紫外線照射後の積層体において、PPフィルムのPE樹脂層に対する剥離力を測定した。なお、剥離力の測定は、紫外線の光量を200mJ/m2、400mJ/m2としたそれぞれの場合について行った。また、紫外線照射前の積層体についても、同様に剥離力を測定した。
また、PPフィルムから剥離して測定したPE樹脂層の引張強度は、120N/mであった。
【0042】
[実施例2]
Tダイから押し出す熱可塑性樹脂を、中密度ポリエチレン(住友化学株式会社製、商品名「L5721」、MFR値8.0g/10min、融点128℃)に変更した以外は実施例1と同様に実施した。また、PPフィルムから剥離して測定したPE樹脂層の引張強度は、150N/mであった。
【0043】
[実施例3]
Tダイから押し出す熱可塑性樹脂を、低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製、商品名「L405」、MFR値3.7g/10min、融点111℃)に変更した以外は実施例1と同様に実施した。また、PPフィルムから剥離して測定したPE樹脂層の引張強度は、180N/mであった。
【0044】
[実施例4]
Tダイから押し出す熱可塑性樹脂を低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「LC605Y」、MFR値7.3g/10min、融点106℃)に変更し、かつPE樹脂層の厚さを14μmとした以外は実施例1と同様に実施した。また、PPフィルムから剥離して測定したPE樹脂層の引張強度は、120N/mであった。
【0045】
[比較例1]
繰り出しロールから繰り出す基材をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「PET38T−100」、厚さ38μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0046】
[比較例2]
繰り出しロールから繰り出す基材を両面に易接着処理をしたPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「A4300」、厚さ38μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0047】
[比較例3]
PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「PET38T−100」、厚さ38μm)に、剥離剤としてシリコーン樹脂(信越化学株式会社製、商品名「KS835」)を塗布して得たフィルム(剥離フィルム)を基材としてロールから繰り出し、剥離フィルムの剥離処理面に熱可塑性樹脂を押し出した以外は実施例1と同様に実施した。
【0048】
[比較例4]
繰り出しロールから基材としてPETフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「PET38T−100」、厚さ38μm)を繰り出し、Tダイから熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、商品名「PHA03A」、MFR値42g/10min)を押し出した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0049】
[実施例5〜8]
実施例1〜4で作製した積層体(紫外線照射前)に、高圧水銀ランプを使用して光量400mJ/m2で紫外線を照射した後に、湿熱環境下(40℃、80%RH)に1週間静置し、1週間放置後の積層体の剥離力を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
【表1】

※表1において、“1000以上”とは、剥離力が1000mN/以上であり、フィルムを樹脂層から剥離できなかったことを示す。
※“測定不可”とは、フィルムと樹脂層の接着力が弱すぎて、積層体にできなかったことを示す。
【0051】
【表2】
【0052】
以上のように、実施例1〜4では、PPフィルム(基材)とPE樹脂層からなる積層体に、紫外線印刷にて一般的に使用される程度の光量で紫外線を照射しても、PPフィルムとPE樹脂層の界面で、剥離力が上昇しなかった。そのため、実施例1〜4の積層体を擬似接着ラベルに適用して、紫外線印刷を行っても、擬似接着フィルムの剥離性能を良好に維持できる。
それに対して、比較例1〜4では、積層体にPPフィルムとPE樹脂層の組み合わせを使用していないため、紫外線照射後の剥離力が上がりすぎ、或いは、基材と樹脂層の剥離力が低くなりすぎ、実用的に使用できない剥離性能であった。
また、表2の結果から明らかなように、ポリエチレン系樹脂のMFR値を3.0〜10g/10min程度とすることで、高温多湿の環境下で所定時間おいた後でも、剥離力の変化が抑えられ、より剥離性能の安定性を高めることができた。
【符号の説明】
【0053】
10 擬似接着性積層体
11 ポリプロピレン系樹脂フィルム(PPフィルム)
12 ポリエチレン系樹脂層(PE樹脂層)
11B,12B 反対面
13 紫外線印刷層
13A 基材
13B 剥離剤層
20,30 擬似接着ラベル
21 粘着剤層
22 表面基材
23 剥離シート
25 機能層
26、27 接着剤層
図1
図2
図3
図4