(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、電子ペンの小径化を図ることができると共に、コイル特性を向上させ、しかも組立作業性が良好なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子ペン用コイル装置は、
電子ペンの内部に配置され、軸方向の反対側にそれぞれ位置する第1コア端と第2コア端とを持つコア体と、
前記コア体の外周に巻回されてコイル部を形成するワイヤとを有する電子ペン用コイル装置であって、
前記コア体の外周で前記第1コア端の近くには、ワイヤガイドが具備してあり、
前記ワイヤガイドは、前記コア体の前記第1コア端から軸方向に飛び出すように、端子を保持する端子保持部を有し、
前記端子は、前記端子保持部と周方向に離れた位置で、前記ワイヤのリード部と接続されるリード接続部を有する。
【0008】
本発明に係る電子ペン用コイル装置では、コア体の第1コア端から離れた位置で、ワイヤガイドの端子保持部が端子を保持してある。そのため、コアの第1コア端と端子との間に、金属や磁性体が存在しない空間を確保することが可能になり、Q値などのコイル特性が向上する。
【0009】
また、ワイヤガイドは、コア体の第1コア端から軸方向に飛び出すように、端子を保持する端子保持部を有するため、端子保持部に端子を取り付けるのみで、コアの第1コア端と端子との間を引き離すことが容易である。すなわち、端子などの取付が容易になり、組立作業性が向上する。
【0010】
さらに、端子は、端子保持部と周方向に離れた位置で、ワイヤのリード部と接続されるリード接続部を有するため、そのリード接続部とワイヤのリード部との接続が容易になる。しかも、端子保持部とリード接続部とは周方向に離れた位置にあるため、半径方向の外側には広がらず、電子ペンの小径化に寄与する。
【0011】
前記端子は、
前記端子保持部に保持される取付部と、
前記取付部から回路基板の方向に延びるベース部と、
前記取付部とリード接続部との間を周方向に延びる翼部と、をさらに有してもよい。
【0012】
このような構成によれば、空中配線が不要となり、配線が容易になると共に、半径方向の外側に飛び出さないので、電子ペンの小径化に寄与する。さらに、コア体の第1コア端の近くには、スペースを確保することができ、そのスペースにセンサなどを容易に配置することが可能になり、その点でも、電子ペンの小径化に寄与する。さらにまた、翼部が弾力性を持つことから、翼部の先端に形成してあるリード接続部を容易にかしめることが可能であり、ワイヤのリード部との接続が容易である。すなわち、端子の継線部に作用する負担を軽減することができる。
【0013】
一対の前記リード接続部は、前記端子保持部を挟んで180度略対称位置に配置されてもよい。このように構成することで、ワイヤのリード部をリード接続部に対して溶接する際などに、一方のリード接続部に伝達する溶接などの熱が、他方のリード接続部に伝達し難くなり、溶接の精度と品質が向上する。
【0014】
前記ワイヤガイドは、
前記ワイヤの巻始め位置を規制する巻始め位置規制部と、
前記巻始め位置規制部に対して周方向に離れて配置され、前記巻始め位置規制部に対して巻軸方向に前記第1コア端に向けて、少なくとも前記ワイヤの線径に相当する距離で引っ込んでいる位置で、前記ワイヤの巻き終わり位置を規制する巻き終わり位置規制部と、を有してもよい。
【0015】
本発明に係る電子ペン用コイル装置において、コア体の外周にワイヤを巻き付けてコイル部を形成する方法は、特に限定されない。たとえば、まず、ワイヤの第1リード部(ワイヤの両端部のうちの一方)を、コア体の第1コア端側に固定する。次に、ワイヤを、ワイヤガイドの巻始め位置規制部に係止させてから、ワイヤガイドと第2コア端との間に位置するコア体の外周に、第2コア端方向にコイル状に巻回して一層目の主コイル部を形成する。
【0016】
そして、第2コア端の近くの所定位置で、ワイヤガイド方向に巻き戻して、主コイル部の上に巻き戻し部を形成する。その後に、ワイヤの第2リード部(ワイヤの両端部のうちの他方)を、巻き終わり位置規制部に係止させてから第1コア端の方向に引き出す。巻き終わり位置規制部は、巻始め位置規制部に対して、巻軸方向に第1コア端に向けて、少なくともワイヤの線径に相当する距離で引っ込んでいる位置にある。
【0017】
このため、ワイヤの第2リード部が、巻き終わり位置規制部に係止する前に、ワイヤは、一層目の主コイル部と巻き終わり位置規制部との間の巻軸方向隙間に対応するコア体の外周に直接に巻回されることになる。すなわち、ワイヤの第2リード部は、一層目の主コイル部の上の二層目から巻き終わり位置規制部に係止するのではなく、一層目に落とさせてコア体の外周に直接に巻き付けられた後に、巻き終わり位置規制部に係止する。
【0018】
そのため、特に外径が太くなりやすいワイヤの巻き終わり位置において、コイル部の外径を最小にすることが可能になる。なお、第2コア端の近くの所定位置(巻き戻し開始位置)は、たとえばコア体の第2コア端近くを保持するチャッキング治具などで容易に位置決めすることができる。
【0019】
ワイヤを巻回する際には、ワイヤを巻回する軸方向の長さが、巻き戻し開始位置とワイヤガイドとにより仕切られた所定長さにより決定され、ワイヤを自動巻きしやすいと共に、ワイヤの位置決め精度が向上し、所定のインダクタンス(L)、Q特性および周波数特性などを高精度で実現することが可能になり、電子ペンによる位置検出精度も向上する。
【0020】
前記ワイヤガイドは、前記コア体とは別の材料で構成され、前記コア体の外周に取り付けてもよい。ワイヤガイドを、コア体とは別の材料で構成することで、ワイヤガイドの加工が容易になる。なお、巻始め位置規制部と巻き終わり位置規制部とは、少なくともいずれか一方は、コア体の外周に、凸部や凹部を付けることで、一体に形成することもできる。
【0021】
前記ワイヤガイドは、合成樹脂で構成されてもよい。このように構成することで、端子保持部に取り付けられる端子とコア体との間には、金属や磁性材を含まない空間を容易に形成することができる。
【0022】
前記ワイヤガイドには、前記ワイヤのリード部がそれぞれ案内される案内溝が形成してあってもよい。このように構成することで、案内溝にリード部を通すことで、リード部を端子のリード接続部に案内し易くなる。
【0023】
端子は、金属端子であることが好ましく、ワイヤの各リード部は、端子のリード接続部に対してカシメ止めされても良い。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0026】
図1に示す本発明の一実施形態に係る電子ペン用コイル装置2は、電子ペンの内部に装着され、電子ペンの位置情報と共に、その使用状態の変化情報、たとえば電子ペンに加わる圧力または変位などに関する情報を、たとえばタブレットなどの入力用表示画面に非接触式に伝達する装置の一部として使用される。
【0027】
まず、本実施形態において、電子ペンの位置情報と電子ペンの使用状態とを検出する原理を簡単に説明する。
【0028】
電子ペンが具備する同調回路(
図1に示すコイル部20を含む)は、タブレット(図示略)などの入力用表示画面から所定の同調周波数、例えば周波数f0の電波が発信されると、該電波を受けて励振され、
図1に示すコイル部20には誘導電圧が誘起される。そして、該電波の発信が停止されると、前記誘導電圧に基づく電流により、コイル部20から所定の周波数の電波が発信される。このコイル部20を含む同調回路から発信された電波をタブレット(図示略)で受信することで、タブレット(図示略)上における電子ペン(コイル装置2を含む)の位置を検知できる。
【0029】
また、電子ペン用芯体6のペン先6aは、タブレットの表面に押しつけるように操作される。この操作時には、芯体6がコイル部20の内部を軸方向に移動し、図示省略してある押圧部材を感圧素子の一面を押圧する。感圧素子は、たとえば容量可変コンデンサで構成してあり、素子に作用する押圧力(押圧変位)に応じて、静電容量が変化する。
【0030】
この素子は、コイル部20と、図示省略してある回路基板に実装してあるコンデンサとから成る同調回路に並列に接続してあり、素子に加わる圧力に応じて、同調回路の同調周波数が変化させる。この場合、タブレット(図示略)から周波数f0の無線信号を発信すると、同調回路の同調周波数が変化しているため、コイル部20に生じる誘導電圧は、非操作時とは位相がずれたものとなる。このため、同調回路からは、タブレット(図示略)から発信された電波とは位相がずれた電波が発信される。
【0031】
タブレット(図示略)から電波を発信して同調回路を励振するとともに、同調回路から発せられる電波における位相差を検知すれば、電子ペンの操作を検知することができる。電子ペンから検出された位相ズレに応じて、電子ペンにより実現しようとしている線の太さ、指定位置あるいは指定領域の色相や濃度(明度)等を検出することが可能である。
【0032】
なお、電子ペンにより実現しようとしている線の太さ、指定位置あるいは指定領域の色相や濃度(明度)等を検出するための方法は、上記の方法に限定されない。たとえば、芯体6のペン先6aとX軸方向の反対側に金属部材を取り付け、コイル部20に対する芯体6の軸方向移動により変化するQ特性を検出することで、電子ペンにより実現しようとしている線の太さなどを読み取っても良い。
【0033】
このような電子ペンの機能を実現するための本実施形態に係るコイル装置2は、電子ペンの内部に装着可能なコア体4を有する。コア体4は、その長手方向(X軸)に沿って貫通している軸孔4aを有し、中空筒体で構成してある。
コア体4は、磁性体で構成してあり、たとえばフェライト材、パーマロイなどの軟磁性材、金属圧粉成形の磁性材などで構成される。ただし、コア体4は、必ずしも磁性体である必要はなく、セラミックなどの非磁性体で構成しても良い。
【0034】
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、この実施形態では、X軸は、コア体4の長手方向であり、Y軸は、後述する第1リード部22aおよび第2リード部22bが離間する方向である。
【0035】
図2Aに示すように、円筒状のコア体4は、図示省略してある電子ペンの内部に沿ってX軸(巻軸)方向に細長く、X軸方向の反対側にそれぞれ位置する第1端としての基端4bと、第2端としての先端4cとを有する。基端4bには、下述するワイヤガイド10が、たとえば接着により接合される。
【0036】
図3に示すように、本実施形態では、ワイヤガイド10は、コア体4とは異なる非磁性材料、たとえば合成樹脂で構成してある。ワイヤガイド10は、コア体4の外周面形状に合わせた内周面11を持つ外周カバー12を有する。
【0037】
図5A〜
図5Cに示すように、内周面11には、位置決め用凸部11aが円周方向に複数、X軸方向に沿って延びるように形成してある。複数の凸部11aは、
図3に示すコア体4の基端側外周面に当接し、コア体4の外周にワイヤガイド10を、略同芯状に取り付けることができる。円周方向に所定間隔で配置された凸部11a間の隙間には、接着剤などを塗布しても良く、コア体4に対してワイヤガイド10を所定位置に固定することができる。
【0038】
外周カバー12の円周方向の2箇所、すなわち、外周カバー12のY軸方向の両側には、それぞれX軸方向に沿ってリード案内溝13a,13bが形成してある。リード案内溝13a,13bの途中には、溝幅が狭い仮止め部14が形成してあるが、仮止め部14は必ずしも無くても良い。仮止め部14の溝幅は、コイル部20を構成するワイヤ22のリード部22a,22bの線径と同程度以下であり、そこに、リード部22a,22bが係止されて仮止め可能になっている。リード案内溝13a,13bの溝幅および溝深さは、リード部22a,22bの線径よりも大きく、1.1倍〜1.5倍程度である。
【0039】
外周カバー12の円周方向の1箇所、すなわち、外周カバー12のZ軸方向の上部には、
図1および
図3に示すように、コア体4の基端4bからX軸方向に飛び出すように、端子30a,30bを保持する端子保持部としての端子保持片18が外周カバー12と一体に成形してある。本実施形態では、端子保持片18は、円弧片形状を有し、一対のリード案内溝13a,13bの間に軸方向に突出するように形成してある。端子保持片18の円周方向の幅は、筒状の外周カバー12の全周長さの1/6〜1/2が好ましく、さらに好ましくは1/5〜1/3程度である。
【0040】
外周カバー12は、コア体4の基端4bの外周面を覆っているが、端子保持片18は、コア体4の基端4bからX軸方向に飛び出している。端子保持片18の外周面には、X軸方向に沿って平行に端子取付溝17a,17bが形成してある。端子取付溝17a,17bの間には、分離用凸部15が形成してあり、これらの端子取付溝17a,17bは、相互に分離されている。
【0041】
端子取付溝17a,17bには、それぞれに連続して、周方向外側に案内する翼案内溝16a,16bが形成してある。これらの取付溝17a,17bおよび案内溝16a,16bは、コア体4の基端4bからX軸方向に飛び出している保持片18の外周面に形成してある。
【0042】
外周カバー12のZ軸方向の下部には、補助突出片19が、X軸方向の反コイル側に延びるように一体的に形成してある。補助突出片19は、端子保持片18とは円周方向に所定隙間を持って形成してあり、そのX軸方向の突出長さは、端子保持片18のX軸方向の突出長さよりも短くなっている。
【0043】
図3に示すように、補助突出片19のX軸方向の先端は、コア体4の基端4bに一致するように、ワイヤガイド10は、コア体4の外周面に取り付けられることが好ましい。そして、端子保持片18は、コア体4の基端4bよりもX軸方向に沿って反コイル側に突出していることが好ましい。なお、
図5Dに示すように、補助突出片19は、必ずしも設ける必要はなく、外周カバー12には、端子保持片18のみがX軸方向に突出して形成してもよい。
【0044】
各端子取付溝17a,17bには、
図1に示すように、金属製の第1端子30aの第1取付部32aおよび金属製の第2端子30bの第2取付部32bが嵌合されて取り付けられる。なお、これらは、各端子取付溝17a,17bの内部に接着剤で取り付けられてもよい。接着剤で取り付ける場合には、各端子取付溝17a,17bは、取付部32a,32bよりもX軸方向に長く形成してあることが好ましく、端子取付溝17a,17bに取付部32a,32bがそれぞれ取り付けられた状態で、X軸方向に多少の隙間が形成されることが好ましい。なお、これらの取付部32a,32bは、端子取付溝17a,17bが形成される位置で、保持片18の内部に一体化されていてもよい。一体化のための手段としては、インサート成形が例示される。
【0045】
第1端子30aの第1取付部32aと第2端子30bの第2取付部32bには、それぞれ第1翼片31aと第2翼片31bとが一体に成形してあり、これらは、それぞれ翼案内溝16a,16bを通して端子保持片18から周方向の両側に向けて広がるようになっている。第1翼片31aと第2翼片31bのそれぞれの先端には、それぞれ第1リード接続部としての第1カシメ片34aと、第2リード接続部としての第2カシメ片34bとが一体に形成してある。
【0046】
第1カシメ片34aと第2カシメ片34bとは、端子保持片18を挟んで180度略対称位置に配置されるが、それに限らない。たとえば第1翼片31aおよび第2翼片31bの周方向の長さを調節することにより、第1カシメ片34aおよび第2カシメ片34bの位置を調節することができる。たとえば第1翼片31aおよび第2翼片31bの周方向の長さを短くすれば、第1カシメ片34aおよび第2カシメ片34bの位置は、端子保持片18の近くに配置され、長くすれば、周方向で遠くに配置される。いずれにしても、これらの翼片31a,31bを含む端子30a,30bは、
図6に示すように、コア体4の基端4bからX軸方向に所定距離X0で引き離されるように、
図1に示すように、端子保持片18に保持される。
【0047】
図4に示すように、ワイヤ22の第1リード部22aおよび第2リード部22bは、それぞれ第1端子30aの第1カシメ片34aおよび第2端子30bの第2カシメ片34bに接続される。接続の方法としては、これらのカシメ片34a,34bにリード部22a,22bを取り付けてカシメた後に抵抗溶接すればよい。あるいは、ハンダ付けやレーザ溶接などでもよい。なお、第1リード部22aおよび第2リード部22bのカシメ片34a,34bへの各々の接続は、コイル部20が形成された後に行われることが好ましい。
【0048】
これらの第1端子30aおよび第2端子30bは、本実施形態では、完全に分離された2つの金属端子で構成してあり、金属板から打ち抜き成形された金属片を折り曲げ成形することで形成される。第1端子30aは、X軸方向に延びる第1端子ベース36aを有する。第1端子ベース36aのX軸方向のコイル側一端に、第1取付部32aが形成してあり、第1端子ベース36aのX軸方向の反コイル側一端には、第1基板接続爪38aが折り曲げ成形などにより一体に形成してある。第1基板接続爪38aは、たとえば図示省略してある回路基板に接続される。回路基板には、コンデンサやその他の回路素子などが装着してあり、第1基板接続爪38aは、回路基板に装着された回路や素子に電気的に接続される。
【0049】
第2端子30bは、第1端子30aと対にして用いられる。
図4に示すように、第2端子30bのX軸方向のコイル側一端に、第2取付部32bが形成してあり、第2端子ベース36bのX軸方向の反コイル側一端には、第2基板接続爪38bが折り曲げ成形などにより一体に形成してある。第2基板接続爪38bは、たとえば図示省略してある回路基板に接続される。回路基板には、コンデンサやその他の回路素子などが装着してあり、第2基板接続爪38bは、回路基板に装着された回路や素子に電気的に接続される。
【0050】
図5Aおよび
図5Bに示すように、外周カバー12のX軸方向のコイル側端部には、巻始め位置規制部を構成する略半円弧状の第1端面12aと、巻き終わり位置規制部を構成する略半円弧状の第2端面12bとが形成してある。これらの端面12a,12bは、Z軸方向の上部と下部に形成してある段差12cにより接続されている。すなわち、第1端面12aと第2端面12bとは、X軸方向に位置ズレして配置してある。
【0051】
図6に示すように、第1端面12aと第2端面12bとは、X軸方向に位置ズレしており、第2端面12bは、第1端面12aに対してX軸(巻軸)方向に基端4bに向けて、少なくともワイヤ22の線径に相当する所定距離x1以上で引っ込んでいる。
【0052】
次に、コア体4およびコイル部20について詳細に説明する。前述したように、コア体4の外周で基端4bの近くには、コア体4の外周を覆う外周カバー12を有するワイヤガイド10が装着してある。
【0053】
本実施形態では、ワイヤガイド10に形成してある外周カバー12の第1端面12aおよび第2端面12bと、巻き戻し開始位置21との間に位置するコア体4の外周がワイヤを巻回してコイル部20を形成するための空間となる。巻き戻し開始位置21は、ワイヤを自動巻作業するための装置に設けられたチャッキング治具がワイヤをチャッキングする位置であり、コア体4の基端4bよりも先端4cに近い任意の位置に設定可能である。
【0054】
図6に示すコイル部20を形成するワイヤ22としては、特に限定されず、たとえばリッツ線、USTC線、ウレタンワイヤなどが用いられる。特に、リッツ線などの撚り線を用いることで、高周波におけるQ特性などが向上し、電子ペン用コイル装置として特に好ましい。
【0055】
本実施形態において、コア体4の外周にワイヤ22を巻き付けてコイル部20を形成する方法は、特に限定されないが、たとえば、まず、ワイヤ22の第1リード部22aを、第1カシメ片34aにカシメなどで仮固定する。あるいは、ワイヤ22の第1リード部22aを、コア体4の基端4b側に固定してあるワイヤガイド10の案内溝13aに仮固定する。その時点では、ワイヤ22の第1リード部22aには、第1端子30aは、完全には接続されていないが、接続されていても良い。
【0056】
次に、ワイヤ22を、ワイヤガイド10の案内溝13aを通して、ワイヤガイド10の巻始め位置規制部である第1端面12aに係止させてから、ワイヤガイド10と先端4cとの間に位置するコア体4の外周に、コア先端4c方向にコイル状に密に巻回して一層目の主コイル部20a(
図2参照)を形成する。そして、コア先端4cの近くの所定位置21で、ワイヤガイド10方向に巻き戻して、主コイル部20aの上(外周)に巻き戻し部20d(
図2参照)を形成する。巻き戻し部20dは、第1巻密度で巻き戻してある第1区画20bと、第1巻密度よりも疎らな第2巻密度で巻き戻してある第2区画20cと、を有する。
【0057】
その後に、ワイヤ22の第2リード部22bを、案内溝13bを通して、コア基端4bの方向に引き出す。その際に、
図6に示すように、ワイヤ22の第2リード部22bを、巻き終わり位置規制部としての第2端面12bに係止させてから案内溝13bに引き出す。第2端面12bは、第1端面12aに対して、X軸(巻軸)に沿って基端4bに向けて、少なくともワイヤ22の線径に相当する所定距離x1で引っ込んでいる位置にある。
【0058】
このため、ワイヤ22の第2リード部22bが、第2端面12bに係止する前に、ワイヤ22は、一層目の主コイル部20aと第2端面12bとの間の巻軸方向隙間に対応するコア体4の外周に直接に巻回されることになる。すなわち、ワイヤ22の第2リード部22bは、一層目の主コイル部20aの上の二層目から第2端面12bに係止するのではなく、一層目に落とさせてコア体4の外周に直接に巻き付けられた後に、第2端面12bに係止する。
【0059】
そのため、特に外径が太くなりやすいワイヤ22の巻き終わり位置において、コイル部20の外径を最小にすることが可能になる。また本実施形態では、カシメ止めされた取付部32a,32bが、ワイヤガイド10の取付凹部16a,16b内に収容されることで、取付部32a,32bにおいて、外径が大きくなることを有効に防止することができる。
【0060】
さらに本実施形態では、ワイヤガイド10は、コア体4とは別の材料(たとえば合成樹脂)で構成され、コア体4の外周に取り付けてあることから、ワイヤガイド10に、第1端面12aと第2端面12bとをX軸方向に位置ズレさせて容易に形成することができる。
【0061】
また、主コイル部20aにおけるワイヤ22の巻方向と、巻き戻し部20dにおけるワイヤ22の巻方向は同一巻方向である。そのため、チャッキング治具などでコア体4のコア先端4cの外周をチャッキングして、コア体4を軸芯回りに同じ方向に回転さればよい。そして、ノズルからワイヤを繰り出し、ノズルをX軸方向に沿って移動させ、ノズルのX軸方向移動速度を変化させるのみで、
図6に示すような巻線が可能になり、コイル部20が容易に形成される。
【0062】
ワイヤ22を巻回する際には、ワイヤ22を巻回する軸方向の長さが、巻き戻し開始位置21とワイヤガイド10とにより仕切られた所定長さにより決定され、ワイヤ22を自動巻きしやすいと共に、ワイヤ22の位置決め精度が向上し、所定のインダクタンス(L)、Q特性および周波数特性などを高精度で実現することが可能になり、電子ペンによる位置検出精度も向上する。
【0063】
また、主コイル部20aの外周に巻き戻し部20dを設け、第1リード部22aおよび第2リード部22bの双方が、ワイヤガイド10のワイヤ通路13a,12bにより案内されるために、空中配線が不要となる。さらに、巻き戻し部20dの巻密度などを調整することで、インダクタンス(L)やQ特性を制御することが容易である。また、コア体4の軸方向長さを短くしたり、コイル部20の巻幅を短くすることなどで、省スペース化を図ることができる。さらに、主コイル部20aの外周に巻き戻し部2dを形成することで、巻崩れを防止することができる。
【0064】
しかも本実施形態では、
図2Aに示すように、巻き戻し部20dは、第1巻密度で巻き戻してある第1区画20bと、第1巻密度よりも疎らな第2巻密度で巻き戻してある第2区画20cと、を有する。巻き戻し部20dの第1区画20bでは、比較的に密に巻回してあるために、主コイル部20aに対する補助コイル部として機能し、インダクタンスの向上に寄与する。また、第2区画20cでは、比較的に疎らに巻回してあるために、コイル部20の電気抵抗Rおよび寄生容量Cを低減することができ、Q特性にも優れている。特に比較的に密に巻回してある第1区画20bでは、コイル部20の巻崩れを有効に防止することができる。なお、第2区画20cにおいても、巻き戻し部が全くない場合に比較すれば、多少はコイル部20の巻崩れ防止機能は期待できる。
【0065】
なお、Q特性は、(√(L/C))×1/Rであり、コイル部20の電気抵抗Rおよび寄生容量Cが大きくなると、Q特性は低下し、Lが大きくなるとQ特性は向上する。
【0066】
第1区画20bにおけるワイヤ22の第1巻密度は、主コイル部20aの巻密度と略同等な巻密度で密着巻にされることが好ましい。「略同等な」とは、第1区画20bが補助コイルとして機能する限りにおいて、主コイル部20aの巻密度よりも多少低くとも良いという趣旨である。たとえば第1巻密度は、主コイル部20aの巻密度に対して1/2〜1倍の巻密度でも良い。また、第2区画20cの第2巻密度は、第1巻密度よりも疎らであれば特に限定されず、たとえば主コイル部20aの巻密度に対して、好ましくは1/30〜1倍、さらに好ましくは1/10〜1倍の巻密度である。
【0067】
なお、巻密度とは、単位軸方向長さ当たりのワイヤの巻数として定義される。また、主コイル部20aの巻密度は、いわゆる密着巻(同一層の隣り合うワイヤが接着して巻回される)により実現される巻密度であり、ワイヤ22の外径などにより決定される。
【0068】
しかも本実施形態では、第1区画20bが、コア先端4c近くの主コイル部20aの外周に位置する。このように構成することで、特にコイル部20の巻崩れを防止することができると共に、L特性の向上および安定化に寄与する。なお、コア先端4cの近くの巻き戻し開始位置21は、たとえばコア体4のコア先端4c近くを保持するチャッキング治具などで容易に位置決めすることができる。
【0069】
特に本実施形態では、コア体4の基端4bから離れた位置で、ワイヤガイド10の端子保持片18が端子を保持してある。そのため、コア4の基端4bと端子30a,31aとの間に、金属や磁性体が存在しない空間を確保することが可能になり、Q値などのコイル特性が向上する。
【0070】
また、ワイヤガイド10は、コア体4の基端4bから軸方向に飛び出すように、端子30a,30bを保持する端子保持片18を有するため、端子保持片18に端子を取り付けるのみで、コア4の基端4bと端子30a,30bとの間を引き離すことが容易である。すなわち、端子30a,30bなどの取付が容易になり、組立作業性が向上する。
【0071】
さらに、端子30a,30bは、端子保持片18と周方向に離れた位置で、ワイヤ22のリード部22a,22bと接続されるリード接続部としてのカシメ片34a,34bを有するため、各カシメ片34a,34bとワイヤ22のリード部22a,22bとの接続が容易になる。しかも、端子保持片18とカシメ片34a,34bとは周方向に離れた位置にあるため、半径方向の外側には広がらず、電子ペンの小径化に寄与する。
【0072】
さらにまた本実施形態では、端子30a,30bは、取付部32a,32bと、取付部32a,32bから回路基板の方向に延びるベース部36a,36bと、取付部32a,32bとの間を周方向に延びる翼片31a,31bと、をさらに有する。このような構成によれば、空中配線が不要となり、配線が容易になる。また、
図2Bに示すように、翼片31a,31bおよびカシメ片34a,34bを含む端子30a,30bは、コア体4の外側で、外周カバー10の半径方向の外側に飛び出さない位置に配置されるため、電子ペンの小径化に寄与する。
【0073】
さらに、ワイヤガイド10の端子保持片18もコア体4の外側で、外周カバー10の半径方向の外側に飛び出さない位置に配置されるため、コア体4の基端4bの近くには、スペースを確保することができる。そのため、そのスペースにセンサなどを容易に配置することが可能になり、その点でも、電子ペンの小径化に寄与する。なお、翼片31a,31bの一部およびカシメ片34a,34bは、コア体4とは軸方向に重なっていないため、X軸方向から見て多少コア体4の側に入り込んでいてもよい。
【0074】
また、翼片31a,31bは弾力性を持つことから、翼片31a,31bの先端に形成してあるリード接続部としてのカシメ片34a,34bを容易にかしめることが可能であると共に、ワイヤ22のリード部22a,22bとの接続が容易である。すなわち、端子30a,30bの継線部(カシメ片34a,34b)に作用する負担を軽減することができる。
【0075】
また、本実施形態では、一対のカシメ片34a,34bは、前記端子保持部を挟んで180度略対称位置に配置されるため、ワイヤ22のリード部22a,22bをカシメ片34a,34bに対して溶接する際などに、一方のカシメ片34a,34bに伝達する溶接などの熱が、他方のカシメ片34b,34aに伝達し難くなり、溶接の精度と品質が向上する。
【0076】
さらに本実施形態のワイヤガイド10は、合成樹脂で構成されているため、端子保持片18に取り付けられる端子30a,30bとコア体4との間には、X軸に沿って金属や磁性材を含まない空間を容易に形成することができる。
【0077】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0078】
たとえば前述した実施形態では、コア体4に、その長手方向(X軸)に沿って貫通している軸孔4aを形成し、この軸孔4aに芯体6を通したが、コア体4には必ずしも軸孔を形成しなくても良い。たとえば静電容量を変化させずにインダクタンスを変化させて筆圧などを検知するタイプの電子ペンでは、コア体4には必ずしも軸孔を形成しなくても良い。
【0079】
さらに、コア体4は、円筒以外の多角筒形状、楕円筒形状、あるいはその他の筒形状、あるいは軸孔が無くても良く、円柱以外の角柱形状、あるいはその他の柱形状でも良い。また、コア体4は、X軸方向に沿って断面形状が変化するような形状であっても良い。
【0080】
また本実施形態では、芯体6の材質は、特に限定されないが、たとえば合成樹脂などの非磁性材料で構成しても良い。芯体6を非磁性材で構成することにより、Q特性の向上を図ることができる。
【0081】
さらに本発明の別の実施形態では、
図2に示す第1区画20bおよび第2区画20c共に、軸方向に沿って均一な巻密度で巻回してあっても良く、巻密度を軸方向に沿って変化させても良い。さらに、本発明のさらに別の実施形態では、主コイル部20aの上に、第1区画20bおよび第2区画20c以外の区画を有していても良い。
【0082】
さらに他の実施形態では、コア体4とは別にワイヤガイドを形成するのではなく、巻始め位置規制部と巻き終わり位置規制部との少なくともいずれか一方は、コア体の外周に、凸部や凹部を付けることで、一体に形成することもできる。
【0083】
また、上述した実施形態では、各端子30a,30bのリード接続部としてカシメ片34a,34bを形成しているが、リード接続部としては、カシメ片のみでなく、爪部などであっても良く、ワイヤ22のリード部22a,22bを接続できる形状であれば特に限定されない。