(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の移動体(10、10b、10c、10d、10e)で用いられる第1の無線通信機(100、100a、100b、100c、100d、100e)と、第2の移動体(20)で用いられ、前記第1の無線通信機と通信を行う第2の無線通信機(200、200a、200d)とを備える移動体検知システムであって、
前記第1の無線通信機は、
前記第1の移動体の存在を前記第2の無線通信機に対して通知する移動体信号を逐次生成する信号生成部(103)と、
前記信号生成部が生成した前記移動体信号を逐次送信する送信部(102、102b)を備え、
前記第2の無線通信機は、
前記移動体信号を逐次受信する受信部(201)と、
前記受信部が受信する前記移動体信号の受信信号強度を逐次測定する信号強度測定部(202)と、
交差点と前記第2の移動体との距離である交差点距離を逐次取得する距離取得部(205)と、
第1の時刻に前記信号強度測定部が測定した前記受信信号強度である第1の受信信号強度と、前記第1の時刻に前記距離取得部が取得した前記交差点距離とを用いて前記交差点距離に対する前記受信信号強度の関係を推定する関係推定部(206)と、
前記関係推定部が推定した、前記交差点距離に対する前記受信信号強度の関係に、前記第1の時刻以降に前記移動体信号を受信した第2の時刻に前記距離取得部が取得した前記交差点距離を当てはめることにより、前記第1の移動体が前記第1の時刻から移動していないと仮定して前記第2の時刻における前記受信信号強度を推定した推定信号強度を決定する強度推定部(207)と、
前記第2の時刻に前記信号強度測定部が測定した前記受信信号強度である第2の受信信号強度と前記推定信号強度とを比較し、前記第2の受信信号強度が前記推定信号強度よりも大きい場合に、前記第1の移動体が前記交差点に接近する方向に移動していると判断する接近判断部(208)とを備える移動体検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態としての移動体検知システム1を図面に基づいて説明する。 移動体検知システム1は、自転車10に搭載された携帯機100と、自動車20に搭載された検知装置200とを備える。なお、自転車10は請求項の第1の移動体に相当し、携帯機100は請求項の第1の無線通信機に相当する。また、自動車20は請求項の第2の移動体に相当し、検知装置200は請求項の第2の無線通信機に相当する。
【0017】
[移動体検知システム1の概略作動]
移動体検知システム1の構成および作動の詳細な説明に入る前に、移動体検知システム1の概略作動を
図1の場面を例に説明する。
【0018】
図1では、自転車10および自動車20は、ともに交差点Pに向かって移動している。携帯機100は、自転車10の存在を通知する自転車信号を逐次送信する。自転車信号は請求項の移動体信号に相当する。検知装置200は、携帯機100が無線送信する自転車信号を受信すると、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かの判断を繰り返し行う。また、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断した場合、検知装置200は自転車10に対する注意が必要である旨を自動車20のユーザに報知する。
【0019】
[携帯機100の構成]
携帯機100の構成を
図2に沿って説明する。携帯機100は、携帯機制御部101と、送信部102とを備えて構成される。
【0020】
携帯機制御部101は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMなどの非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記憶されているプログラムを実行することで、自転車信号を生成する信号生成部103として作動する。なお、携帯機制御部101が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0021】
信号生成部103は、自動車20に対して自転車10の存在を通知する自転車信号を、自転車10を特定する自転車IDを含ませて生成する。送信部102は、信号生成部103が生成した自転車信号を送信する無線通信機である。送信部102が自転車信号を送信する際の周波数は、交差点Pにおける回り込みが大きい周波数が好ましいことから、例えば920MHz帯を用いればよい。また、送信する際の電力は、検知装置200が自転車信号を受信可能な距離が、自転車10に対する注意が必要となる距離よりも大きくなるように決定され、例えば検知装置200が50〜200m離れて受信可能な電力で送信すればよい。自転車信号を送信する周期は、例えば10ミリ秒とすればよい。
【0022】
[検知装置200の構成]
検知装置200の構成を
図3に沿って説明する。検知装置200は、受信部201と、信号強度測定部202と、GNSS受信機203と、検知装置制御部204と、地図データベース209と、報知部210とを備えて構成される。
【0023】
受信部201は、携帯機100が送信する自転車信号を受信する。信号強度測定部202は、受信部201が受信した信号の受信信号強度を測定する。
【0024】
GNSS受信機203は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信された測位信号を受信し、当該GNSS受信機203の位置を測位するために用いられる受信機である。
【0025】
検知装置制御部204は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMなどの非遷移的実体的記録媒体に記憶されているプログラムを実行することで、距離取得部205、関係推定部206、強度推定部207、接近判断部208として作動する。検知装置制御部204の詳細な作動は後述する。なお、検知装置制御部204が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0026】
地図データベース209は、道路地図と、地図上の交差点Pの位置を記憶したデータベースである。交差点Pの位置として記憶するデータは、例えば交差点Pの中央など交差点P内の一点の座標とすればよい。報知部210は、検知装置制御部204が出力する報知信号に応じて作動し、自動車20のユーザに交差点Pに接近する方向に移動する自転車10の存在を報知する。この報知部210には、ブザーやランプ、あるいはディスプレイなどを用いればよい。
【0027】
検知装置制御部204の作動を
図4のフローチャートに沿って説明する。検知装置200の電源が入ると、検知装置制御部204は、GNSS受信機203が測位した位置を逐次取得する。この位置を、以下、自車位置とする。検知装置制御部204は、自車位置と、地図データベース209に記憶された複数の交差点Pのうち、自動車20の進行方向に存在する交差点Pとの距離が、所定の距離以内であるか否かを逐次判断する。所定の距離は、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知を受けた自動車20のユーザが、自動車20が交差点Pに到達するまでに自動車20を減速させるなどの操作を行うことが可能となるように決定され、例えば50〜100mとすればよい。所定の距離以内であると判断した場合、自動車20が交差点Pに接近する方向に移動しているとして、
図4に示す処理をステップS1(以下、ステップを省略)から順に実行する。なお、自動車20の進行方向は、例えば自車位置の軌跡を地図データベース209に記憶された道路地図に当てはめることによって求めればよい。
【0028】
図4に示す処理を行うことにより、検知装置制御部204は、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かを判断する。接近する方向に移動していると判断した場合は、報知部210を作動させることにより、自動車20のユーザに対して、自転車10に対する注意が必要である旨を報知する。なお、報知が行われ、フローチャートに示す処理が終了した後も、再び自動車20が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かの判断を逐次行い、自動車20が交差点Pに接近する方向に移動していると判断した場合は、再び
図4に示す処理をS1から順に行う。
【0029】
S1は、自動車20が交差点Pを通過したか否かを判断する処理である。換言すれば、自動車20が、
図4に示す処理を開始した際に接近する方向に移動しているとした交差点Pに、引き続き接近する方向に移動しているか否かを判断する処理である。自動車20が交差点Pを通過していないと判断した場合はS2の処理に進み、自動車20が交差点Pを通過したと判断した場合は
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0030】
S2では、受信部201が自転車信号を受信したか否かを判断する。自転車信号を受信したか否かは、例えば、受信信号強度(以下、RSSI)の値から判断し、かつ、その信号のヘッダ情報に自転車信号を意味する情報が含まれているか否かにより判断する。自転車信号を受信したと判断した場合はS3に進み、自転車信号を受信していないと判断した場合は再びS1の処理を行う。
【0031】
S3では、S2で受信したと判断した自転車信号のRSSIを信号強度測定部202から取得する。S4では、GNSS受信機203が測位した位置すなわち自車位置を、GNSS受信機203から取得する。
【0032】
S5では、S4で取得した自車位置と、地図データベース209に記憶された交差点Pの位置とを用いて、自動車20と交差点Pとの距離Dcを算出する。加えて、S2で取得したと判断した自転車信号に含まれる自転車IDと、S3で取得したRSSIを、このS5で算出した距離Dcとともにデータセットとして、このデータセットを、検知装置制御部204が備えるメモリに記憶する。S5の処理は、距離取得部205としての処理である。
【0033】
S6では、今回のS5の処理でメモリに記憶したデータセットに含まれる自転車IDと同一の自転車IDを含む他のデータセット(以下、第1のデータセット)が、メモリに記憶されているか否かを判断する。なお、今回のS5の処理でメモリに記憶したデータセットを以下では第2のデータセットと表す。
【0034】
第2のデータセットが備える自転車信号に含まれている自転車IDと同一の自転車IDを含むデータセットがメモリに記憶されている場合はS7に進み、記憶されていない場合は再びS1の処理を行う。なお、同一の自転車IDを含むデータセットが複数記憶されている場合、以降の処理では、第2のデータセットに含まれる距離Dc(以下、Dc2)と10m以上異なる距離Dcを含むデータセットを第1のデータセットとして用いることが好ましい。
【0035】
S7では、第1のデータセットに含まれるRSSI(以下、RSSI1)が、第2のデータセットに含まれるRSSI(以下、RSSI2)よりも大きいか否かを判断する。換言すれば、第1のデータセットを取得した時点から、第2のデータセットを取得した時点までの間に、RSSIが低下したか否かを判断する。なお、第1のデータセットを取得した時点が第1の時刻であり、第2のデータセットを取得した時点が第2の時刻である。
【0036】
RSSI1がRSSI2より大きいと判断した場合、すなわちRSSIが低下していると判断した場合は再びS1の処理を行い、RSSI1がRSSI2よりも大きくない場合、すなわちRSSIが低下していないと判断した場合はS8の処理を行う。
【0037】
S8では、距離DcとRSSIとの関係を推定する。この関係の推定方法を
図5および
図6に沿って説明する。携帯機100が送信した自転車信号の信号強度は、自転車10からの距離に従って対数曲線で減少する。従って、交差点Pにおける自転車信号の信号強度は、自転車10と交差点Pとの距離Dbに従って、
図5のグラフに示すように変化し、Db=10mであればR1、Db=20mであればR2、Db=30mであればR3、Db=40mであればR4となる。
【0038】
自転車信号の信号強度は、
図6に示すように、自転車10と交差点Pとの距離Dbにより定まる、交差点Pにおける信号強度R1、R2、R3、R4から、交差点Pと自動車20との距離Dcに従ってさらに減衰した状態で検知装置200に受信される。交差点Pにおける自転車信号の信号強度が、距離Dbの値によって信号強度R1、R2、R3、R4のように異なった値となるので、検知装置200の受信部201が受信する自転車信号のRSSIと、距離Dcの値の関係を表すグラフGは、距離Dbの値によって異なった軌跡となる。
【0039】
このRSSIと距離Dcとの関係を表すグラフGは、具体的には、Db=10mの場合はグラフG1、Db=20mの場合はグラフG2、Db=30mの場合はグラフG3、Db=40mの場合はグラフG4となる。それぞれのグラフGは、距離Dbが一定である場合の、距離Dcに対するRSSIの関係を示す。
【0040】
図6に示す複数の距離Dbの値に対応する各グラフGと、
図6の距離0mの電力値を決定するために必要となる
図5のグラフは、予め自由空間伝搬損失などの伝搬損失モデルを用いて決定されている。そして、
図6のグラフGは検知装置制御部204が備えるメモリに記憶される。例えば0mから50mまで5mごとに距離Dbの値を変化させ、それぞれの値について決定したグラフGをメモリに記憶すればよい。
【0041】
このように、メモリに、距離DcとRSSIとの関係を表す複数のグラフGが記憶されているので、S8では、メモリに記憶されている複数のグラフGの中から一つのグラフGを選択する。グラフGを選択することが、距離DcとRSSIの関係を推定することに相当する。従って、S8の処理は関係推定部206としての処理である。
【0042】
グラフGを選択するために、RSSI1および距離Dc1に対応する点を
図6にプロットし、どのグラフ上に位置するかを判断する。例えば、RSSI1=R5、Dc1=60mの点P1は、Db=20mの場合のグラフであるグラフG2上に位置する。なお、プロットした点P1がグラフG上でない位置にある場合、プロットした点P1からの距離が最も近いグラフG上に位置するとすればよい。
【0043】
続くS9では、S8で選択したグラフと、第2のデータセットに含まれている距離Dc2とから、自転車10が第1の時刻から移動していない、すなわち、自転車10が停止していると仮定した場合のRSSI2の推定値を決定する。以下、この推定値をRSSIeとする。RSSIeは、自転車10が移動していない場合のRSSI2の値であることから、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かを判断するための閾値である。
【0044】
S8でグラフG2を選択している、すなわち第1の時刻においてDb1=20mであり、第2の時刻においてDc2=30mであるとした場合を例に、第2の時刻においてもDb2=20mであると仮定した場合のRSSI2であるRSSIeの決定方法を説明する。
【0045】
ある時刻において、自転車10が第1の時刻における位置と同様にDb=20mとなる位置である場合、その時刻における距離DcとRSSIとの値に対応する点は、第1の時刻における点P1と同様にグラフG2上となる。従って、第2の時刻において、距離Dc2と、Db=20mと仮定した場合のRSSI2の推定値であるRSSIeとによってプロットされる点P2もグラフG2上に位置する。すなわち、点P2はグラフG2上かつDc2=30mとなる位置となる。従って、点P2は
図6に示す位置となることから、RSSIe=R6と決定する。S9の処理は強度推定部207としての処理である。
【0046】
S10では、S8でプロットした点P1が、予め決定したDb=0mの場合のグラフGよりも上に位置するか否かを判断する。Db=0mの場合のグラフGよりも上に位置している場合、自転車10は交差点Pよりも自動車20に近い位置であると判断することができる。すなわち、自転車10の位置が、自動車20との間に交差点Pを挟んだ位置ではないと判断することができる。本実施形態においては、自転車10の位置が自動車20との間に交差点Pを挟んだ位置ではないと判断した場合、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かの判断を行わない。従って、点P1が予め決定したDb=0mのグラフよりも上に位置すると判断した場合、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かの判断を行うS11の処理を行うことなく、再びS1の処理を行う。点P1が予め決定したDb=0mのグラフよりも上でないと判断した場合、S11の処理を行う。
【0047】
S11では、第2のデータセットに含まれるRSSI2の値が、S9の処理で決定したRSSIeの値より大きいか否かを判断する。RSSI2の値がRSSIeの値より大きいと判断した場合はS12の処理に進んで報知を行い、大きくないと判断した場合は再びS1の処理を行う。S11の処理は接近判断部208としての処理である。
【0048】
S11の処理における、RSSIeの値と、RSSI2の値との比較の例を説明する。第1のデータセットがRSSI1=R5、Dc1=60mであり、第2のデータセットがRSSI2=R7、Dc2=30mであるとする。この場合、S8の処理では、プロットした点PがDb=20mの場合のグラフであるグラフG2上であることからグラフG2が選択されている。S9の処理では、グラフG2上かつDc2=30mとなる点P2に対応するRSSIの値がR6であることから、RSSIe=R6と決定されている。
【0049】
RSSI2=R7、RSSIe=R6であるから、S11の処理において、RSSI2がRSSIeよりも大きいと判断され、S12の処理に進み報知が行われる。すなわち、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨が報知される。
【0050】
次に、第1のデータセットがRSSI1=R5、Dc1=60mであり、第2のデータセットがRSSI2=R8、Dc=30mである場合を考える。この場合、S8の処理では、プロットした点PがDb=20mの場合のグラフであるグラフG2上であることからグラフG2が選択されている。S9の処理では、グラフG2上かつDc2=30mとなる点P2に対応するRSSIの値がR6であることから、RSSIe=R6と決定されている。
【0051】
RSSI2=R8、RSSIe=R6であるから、S11の処理において、RSSI2がRSSIeよりも小さいと判断され、S12の処理に進むことなくS1の処理を行うため、報知は行われない。すなわち、自転車10が交差点Pから遠ざかっていると判断され、報知が行われない。
【0052】
S12では、報知部210を作動させる報知信号を出力し、報知部210を作動させることによりユーザに自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨を報知して、
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0053】
なお、本実施形態では、自転車10が、交差点Pを挟んだ位置ではなく、自動車20の後方に位置する場合においても、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知を行う場合がある。
【0054】
本実施形態は、第2の時刻に測定したRSSIであるRSSI2が、強度推定部207が推定した、距離Dbが第1の時刻と第2の時刻で同じと仮定した場合のRSSI2であるRSSIeよりも大きい場合に、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断する。
【0055】
この判断は、距離Dcの減少に加えて距離Dbも減少した場合のRSSI2は、距離Dcのみが減少し距離Dbが一定であると仮定した場合のRSSI2であるRSSIeより大きくなることを用いている。換言すれば、RSSIの変化を用いて、自動車20の移動距離以上に、自動車20と自転車10との距離が減少していると判断した場合に、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知を行う。
【0056】
ここで、第1の時刻と第2の時刻との間に自転車10が移動した距離を距離ΔDb、第1の時刻と第2の時刻との間に自動車20が移動した距離を距離ΔDcとする。自転車10が、自動車20の後方から交差点Pに接近する方向に移動している場合、自転車10と自動車20との距離の減少量はΔDb−ΔDcとなる。この減少量が、自動車20の移動距離であるΔDcより大きい場合、すなわちΔDb−ΔDc>ΔDc(式1)である場合にも、自動車20の移動距離以上に、自動車20と自転車10との距離が減少することとなる。
【0057】
式1を変形すると、ΔDb>2×ΔDcとなる。従って、第1の時刻と第2の時刻との間で、自動車20の後方から交差点Pに接近する方向に移動する自転車10が自動車20の2倍以上の距離を移動している場合にも、自動車20の移動距離以上に自動車20と自転車10との距離が減少することとなる。そのため、このような場合においても、S10の処理で自転車10が交差点Pよりも遠いと判断されていれば、接近判断部208としての処理であるS11の処理が行われ、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断される。従って、S12の処理が行われ、報知部210を作動させて自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知を行う。
【0058】
すなわち、本実施形態では、第1の時刻において自動車20から距離Dc以上後方に位置する自転車10が自動車20の2倍以上の速度で交差点Pに接近する方向に移動する場合においても、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知を行う。このような自転車10は、速度が速く、かつ、自動車20の運転者にとって気づきにくい後方に存在していることから、この自転車10の存在を報知することは好ましいと考えることができる。ただし、このような、自転車10が自動車20の後方に位置する場合を、自転車10の位置が自動車20との間に交差点Pを挟んだ位置である場合と区別できる方が好ましい場合もある。自転車10が自動車20の後方に位置する場合を、自転車10の位置が自動車20との間に交差点Pを挟んだ位置である場合と区別する構成は、後述する第2実施形態で説明する。
【0059】
[第1実施形態のまとめ]
以上、説明した第1実施形態によれば、検知装置200が備えるメモリには、予め、自転車10と交差点Pとの距離Dbが一定である場合の、自動車20と交差点Pとの距離Dcと、RSSIとの関係を示すグラフGが、複数の距離Dbの値について記憶されている。
【0060】
関係推定部206は、これらのグラフGに第1のデータセットに含まれる距離Dc1およびRSSI1を示す点P1をプロットし、複数のグラフGの中で点P1に最も近いグラフGを、距離DcとRSSIとの関係を示すグラフGとして選択する。
【0061】
強度推定部207は、関係推定部206が選択したグラフGにおける、第2のデータセットに含まれる距離Dc2に対応するRSSIの値を、距離Dbが一定であると仮定した場合のRSSI2の値、すなわち接近する方向に移動しているか否かの閾値であるRSSIeの値として決定する。
【0062】
接近判断部208は、強度推定部207が推定したRSSIeと、第2のデータセットに含まれる信号強度測定部が測定したRSSI2とを比較し、RSSIeよりもRSSI2の値が大きい場合に、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断する。
【0063】
このようにして自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かを判断することから、自転車10が位置検出器を備えていない場合であっても、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かを判断できる。
【0064】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0065】
第2実施形態における移動体検知システム1aは、自転車10の進行する方位と、自動車20の進行する方位とを用いて、自転車10が自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを判断する。
【0066】
移動体検知システム1aが備える携帯機100aの構成を
図7に沿って説明する。携帯機100aは、地磁気センサ104を備える。また、携帯機制御部101aは、第1実施形態における携帯機制御部101の機能に加えて、方位測定部105としての機能を備える。
【0067】
地磁気センサ104は、地磁気を検知するセンサである。方位測定部105は、地磁気センサ104が検知する地磁気を用いて、携帯機100aを搭載した自転車10が進行する方位を測定する。
【0068】
信号生成部103aは、第1実施形態の信号生成部103と同様に、自転車信号を逐次生成する。ただし、信号生成部103aが生成する自転車信号は、第1実施形態の信号生成部103が生成する自転車信号に含まれるデータに加えて、方位測定部105が測定する、携帯機100aを搭載した自転車10が進行する方位をさらに含む。
【0069】
第2実施形態の移動体検知システム1aが備える検知装置200aの構成を
図8に沿って説明する。検知装置200aが備える検知装置制御部204aは、第1実施形態における検知装置制御部204の機能に加えて、方位取得部211と、方向推定部212としての機能をさらに備える。また、第2実施形態における報知部210aは、第1実施形態における報知部210の機能に加えて、自転車10が、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを報知する機能を備える。第2実施形態における報知部210aは、例えば複数のランプを用いて、自転車10が、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から接近する方向に移動しているかによって異なるランプが点灯するなどの方法によって自転車10が左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを報知すればよい。
【0070】
検知装置制御部204aは、接近判断部208としての処理によって自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断すると、方位取得部211および方向推定部212としての処理を行う。
【0071】
方位取得部211は、自動車20が進行する方位を取得する。自動車20が進行する方位は、自車位置の軌跡を地図データベース209に記憶された道路地図に当てはめることによって求めればよい。
【0072】
方向推定部212は、受信部201が受信した自転車信号に含まれる、自転車10が進行する方位と、方位取得部211が取得した自動車20が進行する方位とを用いて、自転車10が自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを推定する。
【0073】
例えば、自動車20が進行する方位が北であり、自転車10が進行する方位が東であるとする。方向推定部212が処理を実行する時点では、自転車10および自動車20はともに交差点Pに接近する方向に移動している状態であるので、自動車20に対する交差点Pの方位が北であり、自転車10に対する交差点Pの方位が東であることとなる。この場合には、自転車10は、自動車20から見た交差点P、すなわち自動車20の進行方向より左に存在していると判断できる。つまり、自転車10は、自動車20の進行方向に対して左側から交差点Pに接近する方向に移動していると判断できる。
【0074】
なお、例えば自動車20と自転車10の進行する方位がともに北である場合、自転車10は、自動車20が走行する道路を、自動車20と同じ方向から交差点Pに接近する方向に移動していることとなる。検知装置制御部204aは、自動車20と交差点Pの間に自転車10が位置する場合、S10の処理がYESとなるため、S11以降の処理を行わない。S11は接近判断部208としての処理であり、前述したように、本実施形態では、接近判断部208としての処理によって自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断すると、方位取得部211および方向推定部212としての処理を行う。つまり、S11以降の処理を行わない場合、方位取得部211および方向推定部212としての処理を行わないことになる。
【0075】
換言すれば、方向推定部212としての処理が行われる場合、自転車10の位置は自動車20との交差点Pとの間ではない。このため、接近判断部208が、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断し、さらに、方向推定部212において、自転車10が、自動車20が走行する道路を自動車20と同じ方向から交差点Pに接近する方向に移動していると判断された場合、方向推定部212は、自転車10が自動車20の後方から接近する方向に移動していると判断することができる。これにより、自転車10が自動車20の後方に位置する場合を、自転車10が交差点Pを挟んで位置する場合と区別することが可能となる。自転車10が自動車20の後方に位置すると判断した場合は、後方から自転車10が接近する方向に移動している旨を報知する処理を行うとしてもよいし、自転車10を報知対象とせず報知を行わないとしてもよい。
【0076】
検知装置制御部204aは、報知信号に、第1実施形態で出力した報知信号が含む情報に加えて、方向推定部212が推定した方向を含ませて報知部210aに出力する。報知部210aは、検知装置制御部204aが出力する報知信号が入力されると、報知信号に含まれる方向に従って、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動している旨と、自転車10が、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを自動車20のユーザに報知する。
【0077】
以上、説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られることに加え、検知装置制御部204aが方位取得部211および方向推定部212として作動する。これにより、検知装置制御部204aは、報知部210aを作動させ、自動車20のユーザに対して、交差点Pに接近する方向に移動する自転車10が、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを報知する。これにより、自動車20のユーザは、自転車10が左右いずれの方向から飛び出してくる可能性があるかを知ることができる。
【0078】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態を説明する。移動体検知システム1bの概略作動を
図9の場面を例として説明する。移動体検知システム1bが備える携帯機100bおよび100cは互いに同一の構成であり、それぞれ搭載された自転車10bおよび自転車10cの速度を含む速度信号を互いに送信することにより速度を共有し、最も速い自転車10のみ自転車信号を送信する。
【0079】
図9の場面においては自転車10bの速度が自転車10cの速度よりも高いとする。この場合、携帯機100bが自転車信号の送信を行い、携帯機100cは自転車信号の送信を行わない。これにより、自転車信号の混信を抑制する。
【0080】
携帯機100bと携帯機100cの構成は互いに同一であるため、携帯機100b、携帯機100cの構成を、携帯機100bを例に
図10に沿って説明する。携帯機100bは、第1実施形態における携帯機100の構成に加えて、送信部102bが送信する速度信号を受信する携帯機受信部107を備える。携帯機受信部107は請求項の第1無線機受信部に相当する。
【0081】
また、送信部102bは、可変増幅部109を備える。可変増幅部109は、速度信号および自転車信号を、携帯機制御部101bから入力された増幅率指示信号に従って増幅し、信号の送信電力を変更する。携帯機100cにおいては、送信部102cが送信部102bと互いに同一の構成である。
【0082】
携帯機制御部101bは、第1実施形態における携帯機制御部101の機能に加えて、速度検知部106および速度比較部108としての機能を備える。携帯機100cにおいては、携帯機制御部101cが携帯機制御部101bと互いに同一の構成である。速度検知部106は、自転車10bが備えるハブダイナモ11が出力する自転車10bの速度に応じた周波数の交流を整流することによって得られる、周波数に応じた直流電圧値を用いて自転車10bの速度を検出する。また、第3実施形態における信号生成部103bは、第1実施形態における信号生成部103としての自転車信号を生成する機能に加えて、周囲の自転車10cとの間で速度をやり取りする速度信号を生成する機能を有する。携帯機100cにおいては、信号生成部103cが信号生成部103bと互いに同一の機能である。なお、速度信号は自転車信号と区別可能に生成される。具体的には、本実施形態ではヘッダ部分に、信号の種類が速度信号であるか自転車信号であるかを示す情報を含ませる。
【0083】
携帯機制御部101bの作動を
図11に沿って説明する。携帯機制御部101bは、携帯機100bの電源が入ると、
図11に示す処理をS31から順に所定の周期で実行することにより、速度信号および自転車信号を所定の周期で送信する。所定の周期は、例えば100ミリ秒である。
【0084】
S31では、ハブダイナモ11が出力する交流を整流することによって得られた直流電圧値を用いて、携帯機100bを用いる自転車10bの速度を測定する。S31の処理は速度検知部106としての処理である。
【0085】
S32では、自転車10bの速度を通知する速度信号を、自転車10bを特定する自転車IDと、自転車10bの速度とを含ませて生成する。S32の処理は信号生成部103bとしての処理に相当する。
【0086】
S33では、S32の処理で生成した速度信号と、予め定めた第1の増幅率を表す増幅率指示信号とを送信部102bに入力することにより、送信部102bが、可変増幅部109によって第1の増幅率で増幅された速度信号を送信する。なお、第1の増幅率は、自転車10bと、自転車10cなどの他の自転車10との間で通信が成立するように決定され、例えば5〜10m離れた携帯機100cが受信可能な送信電力となる増幅率とすればよい。
【0087】
S34では、所定の期間に自転車10cなどの他の自転車10が送信する速度信号を受信していたか否かを判断する。所定の期間は、例えば前回のS34の処理を行ってから、今回のS34の処理を行う時点までとすればよい。この場合、より速い速度を含む速度信号を受信した場合、その直後の自転車信号の送信を停止することとなる。あるいは、例えば500ミリ秒などの送信を停止する時間を設定し、今回のS34の処理を行う時点から、設定した時間前までを所定の期間としてもよい。この場合、より速い速度を含む速度信号を受信した場合、その時点から設定した時間自転車信号の送信を停止することとなる。速度信号を受信したか否かは、例えば、RSSIの値から信号を受信したと判断し、かつ、その信号のヘッダ情報に速度信号を意味する情報が含まれているか否かにより判断する。速度信号を受信したと判断した場合はS35の処理に進み、速度信号を受信していないと判断した場合はS36の処理に進む。
【0088】
S35の処理では、S31の処理で取得した自転車10bの速度と、S34の処理で受信していたと判断した速度信号に含まれる自転車10cの速度とを比較し、自転車10bの速度が、自転車10cの速度よりも高いか否かを判断する。なお、S34の処理で受信していたと判断した速度信号が複数存在する場合、自転車10bの速度が、受信していたと判断したすべての速度信号に含まれる速度よりも高いか否かを判断する。自転車10bの速度が受信していたと判断したすべての速度信号に含まれる速度よりも高いと判断した場合はS36の処理に進み、自転車10bの速度以上の速度を含む速度信号を受信していたと判断した場合には再びS31の処理を行う。S35の処理は速度比較部108としての処理に相当する。
【0089】
S36の処理では、自転車10bの存在を通知する自転車信号を、自転車10bを特定する自転車IDを含ませて生成する。S36の処理は信号生成部103bとしての処理に相当する。
【0090】
S37の処理では、S36の処理で生成した自転車信号と、あらかじめ定めた第2の増幅率とを送信部102bに入力することにより、送信部102bが、可変増幅部109によって第2の増幅率で増幅された自転車信号を送信する。第2の増幅率は、自転車信号の送信電力が、第1実施形態と同様に検知装置200が50〜200m離れて受信可能となるように決定される。なお、自転車10bから自動車20までの距離は自転車10bから自転車10cまでの距離よりも遠いため、第2の増幅率が第1の増幅率よりも大きな値となるよう増幅率が決定されることとなる。
【0091】
以上、説明した第3実施形態によれば、信号生成部103bは自転車10bの速度を含む速度信号を生成する。送信部102bは、携帯機100cなどの同一の構成の携帯機100に対して、信号生成部103bが生成した速度信号を、自転車信号よりも小さい送信電力で送信する。
【0092】
速度比較部108は、自転車10bの速度が、携帯機受信部107が受信した、携帯機100c等の同一の構成の無線通信機から送信された速度信号に含まれる速度より速いか否かを判断する。
【0093】
送信部102bは、速度信号を受信していない場合と、速度信号を受信したが、速度比較部108によって速度信号に含まれる速度が自転車10bの速度より低いと判断された場合に、速度信号よりも大きな送信電力で自転車信号を送信する。一方、速度信号を受信し、速度信号に自転車10bの速度と同じか自転車10bの速度より高い速度が含まれている場合は、自転車信号を送信しない。
【0094】
これにより、携帯機100bと同一の構成の携帯機100を用いる自転車10が、互いに速度信号を受信可能な、自転車信号を受信可能な距離よりも短い距離に存在する場合、最も速い自転車10で用いられる携帯機100のみ自転車信号を送信する。従って、自転車信号の混信を抑制することが可能となる。
【0095】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態の移動体検知システム1dを説明する。まず、移動体検知システム1dの概略作動を
図12の場面を例として説明する。移動体検知システム1dが備える携帯機100dおよび100eは互いに同一の構成であり、それぞれ、自転車10dおよび自転車10eに搭載されている。
【0096】
これら携帯機100d、100eは、それぞれ、自転車10dおよび自転車10eの速度と、進行方向を含む自転車信号を送信する。
図12の場面においては、自転車10dおよび自転車10eはそれぞれ交差点Pに接近する方向に移動しており、自転車10dの速度が自転車10eの速度よりも高いとする。この場合、携帯機100dおよび携帯機100eが送信する自転車信号を受信した検知装置200dは、最も速い自転車10dについて交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知を行い、自転車10eについては報知を行わない。これにより、報知部210aが報知する対象が自転車10bと自転車10eとの間で頻繁に切り替わることを抑制し、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを示す報知内容が頻繁に切り替わることを抑制する。
【0097】
携帯機100dと携帯機100eの構成は互いに同一であるため、携帯機100b、携帯機100eの構成を、携帯機100dを例に
図13に沿って説明する。携帯機制御部101dは、第2実施形態における携帯機制御部101aとしての機能に加えて、速度検知部106としての機能を備える。携帯機100eにおいては、携帯機制御部101eが携帯機制御部101bと互いに同一の構成である。
【0098】
また、信号生成部103dは、自転車10dの存在を通知する自転車信号を、方位測定部105が測定する自転車10dが進む方位と、速度検知部106dが測定する自転車10dの速度とを含めて生成する。
【0099】
検知装置200dの構成を
図14に沿って説明する。検知装置200dが備える検知装置制御部204dは、第2実施形態における検知装置制御部204aの機能に加えて、報知判断部213としての機能を備える。
【0100】
報知判断部213は、接近判断部208によって、交差点Pに接近する方向に移動していると判断された自転車10について、交差点Pに接近する方向に移動している旨を報知するか否かを判断する。具体的には、例えば自転車10dが交差点Pに接近していると判断された場合、自転車10eなどの接近判断部208によって交差点Pに接近する方向に移動していると判断された他の自転車10よりも速度か高いか否かを判断する。接近する方向に移動していると判断された他の自転車10が存在しないか、他の自転車10が存在するが、自転車10dの速度が最も高いと判断した場合に、自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している旨を報知すると判断する。一方、接近する方向に移動していると判断された他の自転車10が存在し、その速度が自転車10dの速度よりも高いと判断した場合は、自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している旨を報知しないと判断する。
【0101】
報知部210aは、報知判断部213が例えば自転車10dについて報知を行うと判断した場合、自転車10dが自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかの報知を行う。一方、自転車10dについて報知を行わないと判断された場合は、自転車10d報知を行わず、それ以前に報知を行うと判断された自転車10、例えば自転車10eについての報知を継続する。
【0102】
検知装置制御部204の作動について、
図15に沿って説明する。検知装置200を用いる自動車20が交差点Pに接近する方向に移動していると判断すると、検知装置制御部204dは、
図15のフローチャートに示す処理をS1から順に行う。これにより、交差点Pに接近する方向に移動する自転車10の中で最も速度が高い自転車10について、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを報知する。例えば、自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している自転車10の中で最も速いと判断した場合は、自転車10dが、交差点Pに接近する方向に移動している旨と、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかとを報知する。なお、報知が行われ、フローチャートに示す処理が終了した後も、再び自動車20が交差点Pに接近する方向に移動しているか否かの判断を逐次行い、自動車20が交差点Pに接近する方向に移動していると判断した場合は、再び
図15に示す処理をS1から順に行う。
【0103】
S1からS11までの処理、およびS12の処理は、
図4のフローチャートに示す処理と同一である。本実施形態では、S11の処理における判断で、RSSIeよりもRSSI2が大きいと判断されると、S11aの処理に進む。なお、以下、S11aの処理の説明では、今回のS11の処理によって交差点Pに接近する方向に移動していると判断された自転車10が自転車10dであるとして説明する。
【0104】
S11の処理に続く、S11aの処理は、S11aの処理を行う以前の所定の時間の範囲内において、今回のS11の処理によって接近する方向に移動していると判断された自転車10dよりも速度が高く、かつ交差点Pに接近する方向に移動していると判断された自転車10が存在するか否かを判断する。所定の時間は、自動車20が交差点Pに接近する方向に移動していると判断され、
図15の処理を開始してから、交差点Pを通過するまでに必要とする時間であり、例えば20秒程度とすればよい。自転車10dよりも速度が高く、かつ交差点Pに接近する方向に移動していると判断された自転車10が存在すると判断した場合は、S12に進むことなく再びS1の処理を行うことから報知を行わない。存在しないと判断した場合は、S12の処理に進み、自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している旨と、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかの報知を行う。S11aの処理は、報知判断部213としての処理である。
【0105】
S11aの処理の例を説明する。所定の時間が20秒であり、今回のS11の処理で自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動していると判断し、その5秒前に自転車10dより速度の低い自転車10eが交差点Pに接近する方向に移動していると判断していたとする。自転車10eは、所定の時間の範囲内で交差点Pに接近する方向に移動しているが、自転車10dより速度が低い。従ってS11aの判断はNOとなり、S12の処理によって自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している旨が報知される。
【0106】
一方、所定の時間が20秒であり、今回のS11の処理で自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動していると判断し、その5秒前に自転車10dより速度の高い自転車10eが交差点Pに接近する方向に移動していると判断していたとする。自転車10eは、所定の時間の範囲内で交差点Pに接近する方向に移動しており、かつ自転車10dより速度が高い。従ってS11aの判断はYESとなり、S12の処理が行われない。従って、自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知が行われない。
【0107】
これにより、自転車10dなどの、携帯機100dと同一の構成の携帯機100を用いる複数の自転車10が交差点Pに接近する方向に移動していると判断される状況であっても、それらのうち最も速度が高い自転車10についてのみ、交差点Pに接近する方向に移動している旨と、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを報知する。そのため、左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを示す報知内容が切り替わることなく報知し続けることとなる。
【0108】
以上、説明した第4実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果が得られる。また、接近判断部208によって、例えば自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動していると判断された場合、報知判断部213が、自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している旨を報知するか否かの判断を行う。
【0109】
さらに、報知部210aは、報知判断部213が、自転車10dについて報知を行わないと判断した場合、自転車10dが交差点Pに接近する方向に移動している旨の報知を行わず、それ以前の報知を継続する。
【0110】
これにより、自転車10dや自転車10eなどの複数の自転車が同時に交差点Pに接近する方向に移動している場合、最も速度の高い自転車、例えば自転車10dについて、交差点Pに接近する方向に移動している旨と自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかの報知を行う。従って、自動車20の進行方向に対して左右いずれの方向から交差点Pに接近する方向に移動しているかを示す報知内容が頻繁に切り替わることなく、連続して報知が行われるため、ユーザの混乱を抑制することが可能となる。
【0111】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0112】
<変形例1>
実施形態において、第1の移動体は自転車10であり、第2の移動体は自動車20であるとしていたが、その他の移動体であってもよい。例えば、第1の移動体が歩行者であってもよいし、第1の移動体と第2の移動体がともに自転車10であってもよい。
【0113】
<変形例2>
実施形態において、速度検知部106は、ハブダイナモ11の出力波形から車輪の回転数を計測し、車輪の回転数から速度を求めるとしていた。しかし、速度検知部106が速度を測定する方法はこれに限られない。例えば、自転車10のフォーク部に取り付けたリードスイッチと、スポーク部に取り付けた磁石とを用いて自転車10の車輪の回転数を計測し、車輪の回転数から速度を求めるとしてもよい。また、第1の移動体が歩行者など車輪を備えていない移動体の場合は、例えば加速度センサを用いて速度を求めればよい。
【0114】
<変形例3>
実施形態において、接近判断部208は、強度推定部207が推定したRSSIeよりも、信号強度測定部202が測定したRSSI2が大きい場合に、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しているものとして、自転車10に対する注意が必要である旨を報知するとしていた。しかし、自転車10に対する注意が必要であると判断する条件はこれに限られない。例えば、これらの条件と、自動車20および自転車10の速度を組み合わせて用いるとしてもよい。例えば、自転車10が交差点Pに接近する方向に移動しており、自動車20および自転車10の速度がともに所定の速度以上である場合に自転車10に対する注意が必要であると判断してもよい。所定の速度は、移動しているか否かを判断する速度であり、例えば3m/sである。
【0115】
<変形例4>
実施形態において、距離取得部205は、GNSS受信機203を用いて取得した自動車20の位置と、地図データベース209に記憶された交差点Pの位置とを用いて、交差点Pと自動車20との距離Dcを取得するとしていた。しかし、距離Dcを取得する方法はこれに限られない。例えば、自動車20が、自動車20の前方を撮像範囲とするカメラを備えている場合、カメラから取得した車両前方の画像を用いて距離Dcを求めるとしてもよい。
【0116】
具体的には、車両前方の画像に含まれる、自動車20が走行する道路と交差する道路などの交差点Pの特徴形状を探索し、予め決定した、画像中における交差点Pの特徴形状の位置と距離Dcとの関係に従って距離Dcを求めればよい。またこの場合、
図4のフローチャートの処理を開始する条件を車両前方の画像に交差点Pの特徴形状が含まれている場合とすればよい。
【0117】
<変形例5>
実施形態において、関係推定部206は、予め決定された
図6のグラフを用いて距離DcとRSSIの関係を求めるとしていた。しかし、距離DcとRSSIの関係を求める方法はこれに限られない。例えば、伝搬損失モデルから導かれる、Db+DcとRSSIとの関係式に距離Dc1およびRSSI1を代入することによって距離Dbを求め、求めた距離Dbをこの関係式に代入することによって距離DcとRSSIの関係式を求めるとしてもよい。
【0118】
<変形例6>
実施形態において、方位測定部105は、地磁気センサ104が検知する地磁気を用いて、自転車10が進行する方位を測定するとしていた。しかし、自転車10が進行する方位を検知する方法はこれに限られない。例えば、ジャイロセンサを用いて自転車10が進行する方位を検知するとしてもよい。