(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イオン注入用マスクは、酸化シリコン(SiO
2)からなる絶縁膜を用いた場合、以下の工程により形成することができる。
【0005】
工程1:半導体層の上に酸化シリコン(SiO
2)からなる絶縁膜を形成する。
工程2:絶縁膜の上に、レジストパターンを形成する。
工程3:ドライエッチング又はウェットエッチングにより、絶縁膜を開口させる。
【0006】
しかし、酸化シリコン(SiO
2)からなる絶縁膜を用いてイオン注入用マスクを形成する場合には、工程1においてIII族窒化物系の半導体層の表面がシリコン(Si)で汚染されるおそれがあった。このような場合には、p型不純物のイオン注入の際に、半導体層にp型不純物とともに酸化シリコン(SiO
2)中のシリコン(Si)が打ち込まれてしまい、半導体装置の導電性の制御が困難になるおそれがあった。また、工程3において、ドライエッチングにより酸化シリコン(SiO
2)からなる絶縁膜を開口させる場合には、半導体層の表面にドライエッチングによるダメージが生じるおそれがあった。また、工程3において、フッ酸(HF)等を用いたウェットエッチングにより酸化シリコン(SiO
2)からなる絶縁膜を開口させる場合には、ウェットエッチングの等方性によって、絶縁膜の開口を所望のサイズに制御することが困難になるおそれがあった。そのため、酸化シリコン(SiO
2)からなる絶縁膜をイオン注入用マスクとして用いると、半導体層に所望のサイズのp型半導体領域を形成することが困難な場合があった。
【0007】
また、レジストをイオン注入用マスクとして用いる場合には、例えば、500℃のような比較的高温下でイオン注入が行われると、レジストが変形するおそれがあった。そのため、レジストをイオン注入用マスクとして用いると、半導体層に所望のサイズのp型半導体領域を形成することが困難な場合があった。
【0008】
そのため、イオン注入用マスクを用いてIII族窒化物系の半導体層にp型不純物をイオン注入する技術において、半導体層に汚染やダメージが与えられることを抑制しつつ、イオン注入用マスクの開口のサイズを制御可能な技術が求められていた。そのほか、半導体装置の製造方法においては、低コスト化、微細化、製造の容易化などが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本発明の一形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。この製造方法は;III族窒化物から主に成り第1の方向に沿って広がる半導体層の上に、イオン注入用マスクを形成するイオン注入用マスク形成工程と;前記イオン注入用マスクが形成された半導体層に、イオン注入によってp型不純物を注入するイオン注入工程と、を備え;前記イオン注入用マスク形成工程は;(a)前記半導体層の上に、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)の少なくとも一つから主になる第1層と、耐アルカリ性を有する金属から主になる第2層と、を順に積層する工程と;(b)前記第2層の上にレジストパターンを形成する工程と;(c)前記レジストパターンの上から前記第2層をドライエッチングして、第2マスク層を形成する工程と;(d)アルカリ性溶液によって、前記第1の方向において、前記第1層の端部の位置が、前記第2マスク層の端部の位置と同じ又は前記第2マスク層の端部の位置よりも内側になるように前記第1層をウェットエッチングして、第1マスク層を形成する工程と、を備える。この形態によれば、第1層は酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)の少なくとも一つから主になるため、III族窒化物からなる半導体層の表面がシリコン(Si)によって汚染されることを抑制することができる。また、ドライエッチング時には、第1層が半導体層の保護層として機能するため、半導体層にダメージが導入されることを抑制することができる。また、第2マスク層はドライエッチングによって形成されるため、第2マスク層の開口を所望のサイズに制御することができる。また、第2マスク層は耐アルカリ性を有するため、第2マスク層の形状がウェットエッチングによって変化することを抑制することができる。そのため、イオン注入用マスクを用いたイオン注入によって、半導体層に所望のサイズのp型半導体領域を形成することができ、微細化された半導体装置を製造することができる。
【0011】
(2)上記形態の製造方法において、前記耐アルカリ性を有する金属は、60℃、22質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)に浸漬した場合のエッチングレートが、5nm/min未満の性質を有してもよい。この形態によれば、第2マスク層の形状が、ウェットエッチングによって変化することを抑制することができる。
【0012】
(3)上記形態の製造方法において、前記耐アルカリ性を有する金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)の少なくとも一つであってもよい。この形態によれば、第2マスク層の形状が、ウェットエッチングによって変化することを抑制することができる。
【0013】
(4)上記形態の製造方法において、前記工程(d)では、前記第1の方向において、前記第1層の端部の位置と、前記第2マスク層の端部の位置と、の差が、前記第2マスク層の膜厚の半分以下になるように前記第1層をウェットエッチングして前記第1マスク層を形成してもよい。この形態によれば、第2マスク層が第1マスク層から剥離することを抑制することができる。また、イオン注入の方向が第1マスク層と第2マスク層とが積層される方向に対して傾斜する場合に、第2マスク層の開口の内側に位置する半導体層にイオンが注入されることを抑制することができる。
【0014】
(5)上記形態の製造方法において、前記工程(a)では、前記半導体層の上に、前記第1層を50nm以上500nm以下の厚さで形成してもよい。この形態によれば、第1層の厚さが50nm以上であるため、ドライエッチングによって半導体層にダメージが導入されることをより抑制することができる。また、第1層の厚さが500nm以下であるため、第1層の形成及び第1層のウェットエッチングに要する時間が増加することを抑制することができる。また、第1層の厚さが500nm以下であるため、ウェットエッチングによって第1マスク層の端部の位置と、第2マスク層の端部の位置との差が大きくなることを抑制することができる。そのため、第2マスク層が第1マスク層から剥離することを抑制できるとともに、イオン注入の方向が第1の方向に対して傾斜する場合に、第2マスク層の開口の内側に位置する半導体層にイオンが注入されることを抑制することができる。
【0015】
(6)上記形態の製造方法において、前記第1層は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)により形成されており;前記イオン注入工程の後に、フッ酸(HF)によって前記第1マスク層と前記第2マスク層とを除去する工程を備えてもよい。この形態によれば、第1マスク層と第2マスク層とをフッ酸によって一度に除去することができるので、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0016】
本発明は、上述した半導体装置の製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、イオン注入用マスクの製造方法、p型半導体領域の製造方法、イオン注入用マスク、p型半導体領域、半導体装置として実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1層は酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)の少なくとも一つから主になるため、III族窒化物からなる半導体層の表面がシリコン(Si)によって汚染されることを抑制することができる。また、ドライエッチング時には、第1層が半導体層の保護層として機能するため、半導体層にダメージが導入されることを抑制することができる。また、第2マスク層はドライエッチングによって形成されるため、第2マスク層の開口を所望のサイズに制御することができる。また、第2マスク層は耐アルカリ性を有するため、第2マスク層の形状がウェットエッチングによって変化することを抑制することができる。そのため、イオン注入用マスクを用いたイオン注入によって、半導体層に所望のサイズのp型半導体領域を形成することができ、微細化された半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.実施形態:
A1.半導体装置の構成:
図1は、本発明の製造方法により製造された半導体装置100の構成を模式的に示す図である。
図1には、本実施形態における半導体装置100の断面の一部を簡略化して示している。なお、
図1は、半導体装置100の技術的特徴をわかりやすく示すための図であり、各部の寸法を正確に示すものではない。
【0020】
図1には、説明を容易にするために、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応する。なお、以降の説明では、+Z軸方向側を「上」又は「上側」とも呼ぶ。
【0021】
半導体装置100は、III族窒化物から主になる半導体を用いて形成されている。本実施形態では、半導体装置100は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置100は、縦型トレンチMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態では、半導体装置100は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0022】
半導体装置100は、基板110と、半導体層111と、半導体層113と、半導体層114と、を備える。半導体装置100は、また、p型不純物のイオン注入によって形成されたp型半導体領域112を備える。半導体装置100は、これらの半導体層及び半導体領域に形成された構造として、トレンチ122と、リセス124と、段差部126と、終端部129とを有する。半導体装置100は、更に、絶縁膜130と、ゲート電極142と、ソース電極144とドレイン電極148とを備える。本実施形態では、半導体装置100は、更に、絶縁膜150と、配線電極160とを備える。
図1には、これらの構造の他に、ソース電極144とドレイン電極148と、の間に流れる電流を制御するための制御領域Cが示されている。
【0023】
基板110は、第1の方向(X軸方向およびY軸方向)に沿って広がる板状を成す半導体である。本実施形態では、基板110は、窒化ガリウム(GaN)から主になる。なお、「窒化ガリウム(GaN)から主になる」とは、モル分率において窒化ガリウム(GaN)を90%以上含有することを意味する。本実施形態では、基板110は、シリコン(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。本実施形態では、基板110に含まれるシリコン(Si)濃度の平均値は、約1×10
18cm
−3である。
【0024】
半導体層111は、基板110の上(+Z軸方向側)に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる半導体層である。本実施形態では、半導体層111は、窒化ガリウム(GaN)から主になる。本実施形態では、半導体層111は、n型の特性を有するn型半導体である。本実施形態では、半導体層111は、シリコン(Si)をドナー元素として含有する。本実施形態では、半導体層111に含まれるシリコン(Si)濃度の平均値は、約8×10
15cm
−3である。本実施形態では、半導体層111の厚さ(Z軸方向の長さ)は、5〜30μm(マイクロメートル)の間の厚さであり、例えば、10μm(マイクロメートル)である。半導体層111は、例えば、基板110の上に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって形成される。半導体層111を形成する原料ガスのV/III比は、例えば、900以上3000以下である。V/III比は、III族原料に対するV族原料のモル比である。
【0025】
p型半導体領域112は、半導体層111の一部に対するp型不純物のイオン注入によって形成された領域である。p型半導体領域112における半導体は、p型の特性を有する。本実施形態では、p型半導体領域112は、半導体層111及び半導体層113に隣接する。p型半導体領域112は、ソース電極144とドレイン電極148と、の間に流れる電流を制御するための制御領域Cから離れて位置している。また、本実施形態では、
図1に示す複数のp型半導体領域112のうち、
図1の−X軸方向側におけるp型半導体領域112は、後述の段差部126に位置している。本実施形態では、p型半導体領域112は、半導体層111と同様に、窒化ガリウム(GaN)から主になる。本実施形態では、p型半導体領域112は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素(p型不純物)として含有する。p型半導体領域112に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、例えば、約1×10
20cm
−3である。p型半導体領域112のZ軸方向の厚さは、約0.6μm(マイクロメートル)である。p型半導体領域112を形成する方法については、後述する。
【0026】
半導体層113は、半導体層111及びp型半導体領域112の上に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる半導体層である。本実施形態では、半導体層113は、窒化ガリウム(GaN)から主になる。本実施形態では、半導体層113は、p型の特性を有するp型半導体である。本実施形態では、半導体層113は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有する。本実施形態では、半導体層113に含まれるマグネシウム(Mg)濃度の平均値は、約2×10
18cm
−3である。本実施形態では、半導体層113の厚さ(Z軸方向の長さ)は、0.5〜1.0μm(マイクロメートル)の間の厚さであり、例えば、0.7μm(マイクロメートル)である。半導体層113は、例えば、p型半導体領域112が形成された半導体層111の上に、MOCVD法によって形成される。半導体層113を形成する原料ガスのV/III比は、例えば、900以上3000以下である。
【0027】
半導体層114は、半導体層113の上に位置し、X軸及びY軸に沿って広がる半導体層である。本実施形態では、半導体層114は、窒化ガリウム(GaN)から主になる。本実施形態では、半導体層114は、n型の特性を有するn型半導体である。本実施形態では、半導体層114は、シリコン(Si)をドナー元素として含有する。本実施形態では、半導体層114に含まれるシリコン(Si)濃度の平均値は、約6×10
18cm
−3である。本実施形態では、半導体層114の厚さ(Z軸方向の長さ)は、0.1〜0.5μm(マイクロメートル)の間の厚さであり、例えば、0.2μm(マイクロメートル)である。半導体層114は、例えば、半導体層113の上に、MOCVD法によって形成される。半導体層114を形成する原料ガスのV/III比は、例えば、900以上3000以下である。
【0028】
トレンチ122は、半導体層114から半導体層113を貫通し半導体層111にまで落ち込んだ溝部である。トレンチ122の下面は、半導体層111内に位置する。本実施形態では、トレンチ122は、半導体層114、113、111に対するドライエッチングによって形成された構造である。
【0029】
リセス124は、半導体層114の上側から半導体層113にわたって窪んだ凹部である。本実施形態では、リセス124は、半導体層114、113に対するドライエッチングによって形成された構造である。
【0030】
段差部126は、半導体層114の上側から半導体層113を貫通し半導体層111にまで落ち込んだ部位である。本実施形態では、段差部126は、半導体層114、113、111に対するドライエッチングによって形成された構造である。半導体装置100の終端部129は、段差部126に隣接し、半導体層114、113、111の終端を構成する部位である。本実施形態では、終端部129は、ダイシングによって形成された構造である。
【0031】
半導体装置100の絶縁膜130は、電気絶縁性を有する膜である。本実施形態では、絶縁膜130は、トレンチ122の内側から外側にわたって形成されている。本実施形態では、絶縁膜130は、二酸化シリコン(SiO
2)から主になる。
【0032】
ゲート電極142は、絶縁膜130を介してトレンチ122に形成された電極である。本実施形態では、ゲート電極142は、トレンチ122の内側に加え、トレンチ122の外側にわたって形成されている。本実施形態では、ゲート電極142は、アルミニウム(Al)から主になる。ゲート電極142に電圧が印加された場合、p型の半導体層113に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、ソース電極144とドレイン電極148との間に導通経路が形成される。
【0033】
ソース電極144は、リセス124に形成され、半導体層114にオーミック接触する電極である。本実施形態では、ソース電極144は、チタン(Ti)から主になる層にアルミニウム(Al)から主になる層を積層した後に熱処理を加えた電極である。
【0034】
ドレイン電極148は、基板110の−Z軸方向側の表面にオーミック接触する電極である。本実施形態では、ドレイン電極148は、チタン(Ti)から主になる層にアルミニウム(Al)から主になる層を積層した後に熱処理を加えた電極である。
【0035】
本実施形態では、半導体装置100は、トレンチ122に絶縁膜130およびゲート電極142を形成した複数のトレンチ構造と、リセス124にソース電極144を形成した複数のリセス構造とを備える。本実施形態では、トレンチ構造およびリセス構造は、X軸方向において交互に配置されている。本実施形態では、トレンチ構造およびリセス構造は、Y軸方向に延びている。本実施形態では、複数のゲート電極142は、半導体装置100の面内において並列に接続されている。本実施形態では、複数のソース電極144は、配線電極160を通じて並列に接続されている。
【0036】
絶縁膜150は、段差部126、絶縁膜130、ゲート電極142およびソース電極144を被覆する。本実施形態では、絶縁膜150は、二酸化シリコン(SiO
2)から主になる。
【0037】
配線電極160は、絶縁膜150の上に形成された電極である。配線電極160は、絶縁膜150を貫通しソース電極144の各々に接続する接続部を有する。本実施形態では、配線電極160は、アルミニウム(Al)から主になる。本実施形態では、配線電極160は、段差部126において配線電極160と共にフィールドプレート構造を形成する。
【0038】
本実施形態の半導体装置100によれば、トレンチ122の下面が存在する半導体層111内に、p型半導体領域112が位置するため、p型半導体領域112によって、トレンチ122の下面に発生する電界集中を緩和することができる。
【0039】
また、段差部126の箇所におけるp型半導体領域112によって、段差部126における電界集中を緩和することができる。
【0040】
また、配線電極160は、段差部126において配線電極160とともにフィールドプレート構造を形成するため、段差部126に現れるpn接合界面の端部における電界集中を緩和できる。
【0041】
また、本実施形態の半導体装置100では、後述の方法によってp型半導体領域112が形成されるため、半導体層111の表面の汚染及びダメージが抑制されている。以下、半導体装置100の製造方法のうち、特に、p型半導体領域112を形成する方法について説明する。
【0042】
A2.半導体装置の製造方法:
図2は、半導体装置100の製造方法について示す工程図である。
図2には、半導体装置100の製造方法のうち、特に、p型半導体領域112の形成方法が示されている。p型半導体領域112は、半導体層111に対するp型不純物のイオン注入によって形成される。本実施形態では、まず、基板110の上に形成された半導体層111の上に、イオン注入用マスクが形成されるイオン注入用マスク形成工程が行われる(S110)。
【0043】
図3は、イオン注入用マスク形成工程について示す工程図である。
図4〜
図9は、イオン注入用マスク20を形成する様子を示す説明図である。
【0044】
イオン注入用マスク20の形成工程では、半導体層111の上に、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)の少なくとも一つから主になる第1層21pが形成される(
図3、S111)。なお、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)の少なくとも一つから主になるとは、モル分率において、これらの材料の含有率の合計が90%以上であることを意味する。
【0045】
図4は、第1層21pが形成された、製造過程における半導体装置100aを示す図である。
図4及び以降の図に示す半導体装置では、半導体層111の−Z軸方向に位置する基板110を省略して示す。本実施形態では、第1層21pは、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から主になる。なお、第1層21pの厚さは、50nm(ナノメートル)以上であることが好ましく、500nm(ナノメートル)以下であることが好ましい。本実施形態では、第1層21pの厚さは、200nm(ナノメートル)である。第1層21pは、例えば原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)により、半導体層111上に積層される。なお、後の工程において行われるウェットエッチングから、半導体層111の−Z軸方向に位置する基板110の−Z軸方向側の表面を保護するために、基板110の−Z軸方向側の表面に、保護膜を形成することが好ましい。保護膜として、例えば、酸化シリコン(SiO
2)を用いることができる。保護膜は、例えば、プラズマCVD法により形成することができる。保護膜の厚さは、例えば、300nm(ナノメートル)である。
【0046】
第1層21pが形成されると、第1層21pの上に、耐アルカリ性を有する金属から主になる第2層22pが形成される(
図3、S112)。
図5は、第2層22pが形成された、製造過程における半導体装置100bを示す図である。本実施形態において、耐アルカリ性を有する金属は、60℃、22質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが、5nm/min(ナノメートル/分)未満の性質を有する。耐アルカリ性を有する金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、又はマンガン(Mn)のうちの少なくとも一つから選択されることが好ましい。本実施形態では、第2層22pは、チタン(Ti)である。第2層22pの厚さは、例えば、1um(マイクロメートル)である。第2層22pは、例えば、電子ビーム蒸着(EB蒸着)により第1層21p上に積層される。他の実施形態では、第2層22pは、抵抗加熱蒸着により形成されてもよく、スパッタによって形成されてもよい。半導体層111の上に、第1層21p及び第2層22pが順に積層される工程(
図3、S111、S112)をまとめて、「工程(a)」とも呼ぶ。
【0047】
第1層21p及び第2層22pが形成されると、第2層22pの上に、レジストパターン23が形成される(
図3、S113)。
図6は、レジストパターン23が形成された、製造過程における半導体装置100cを示す図である。本実施形態では、第2層22pの上に、フォトレジストからなる層が形成された後、フォトリソグラフィ技術によって、レジストパターン(レジストパターン23)が形成される。レジストパターン23は、p型半導体領域112が形成される領域に対応する箇所が開口するように形成される。本工程を「工程(b)」とも呼ぶ。
【0048】
レジストパターン23が形成されると、レジストパターン23の上から第2層22pがドライエッチングされることによって、第2マスク層22が形成される(
図3、S114)。
図7は、第2マスク層22が形成された、製造過程における半導体装置100dを示す図である。本工程では、レジストパターン23をマスクとして第2層22pがドライエッチングされる。本工程を「工程(c)」とも呼ぶ。ドライエッチングは、例えば、塩素系ガスを用いて行われる。
【0049】
ドライエッチングが行われると、半導体装置100cからレジストパターン23が除去される(
図3、S115)。
図8は、レジストパターン23が除去された、製造過程における半導体装置100eを示す図である。レジストパターン23は、例えば、半導体装置100cを剥離液に浸漬することによって除去することができる。
【0050】
レジストパターン23が除去されると、アルカリ性溶液を用いて第1層21pがウェットエッチングされることによって、第1マスク層21が形成される(
図3、S115)。
図9は、第1マスク層21が形成された、製造過程における半導体装置100fを示す図である。本工程では、半導体装置100dがアルカリ性溶液に浸漬されることによって第1層21pが開口し、第1マスク層21が形成される。第2マスク層22は耐アルカリ性を有するため、本工程の前後において、第2マスク層22の開口のサイズ及び第2マスク層22の端部22tの形状の変化は、抑制される。本工程を「工程(d)」とも呼ぶ。
【0051】
本工程では、第1の方向において、第1層21pの端部21tの位置が、第2マスク層22の端部22tの位置と同じ、又は、第2マスク層22の端部22tの位置よりも内側になるように、ウェットエッチングが行われる。本実施形態では、第1の方向において、第1層21pの端部21tの位置が、第2マスク層22の端部22tの位置よりも内側になるように、ウェットエッチングが行われる。
図9には、端部の位置が、第2マスク層22の端部22tの位置よりも内側に位置する第1マスク層21が示されている。また、本実施形態では、第1の方向において、第1層21pの端部21tの位置と、第2マスク層22の端部22tの位置と、の差dが、第2マスク層22の膜厚の半分以上になるようにウェットエッチングが行われる。ウェットエッチングは、例えば、第1層21pが、40nm/minのエッチングレートでエッチングされる条件で行われる。
【0052】
以上のようにして、第1マスク層21と第2マスク層22を備えるイオン注入用マスク20が形成される。
【0053】
図2に戻り、イオン注入用マスク20が形成されると、イオン注入によって半導体層111にp型不純物が注入されるイオン注入工程が行われる(
図2、S130)。
図10は、イオン注入工程の様子を示す図である。本実施形態では、+Z軸方向側から半導体層111にp型不純物が注入される。こうすることにより、+Z軸方向側における半導体層111のイオン注入用マスク20(第2マスク層22)の開口に対応する領域に、p型不純物が注入されたp型注入領域112pが形成される。本実施形態では、イオン注入されるp型不純物はマグネシウム(Mg)であり、ドーズ量は3×10
15cm
−2である。また、イオン注入の温度は500℃であり、イオン注入エネルギーは350keVである。なお、このエネルギーは、形成すべきp型半導体領域112の厚さ(イオン注入の深さ)により適宜変更することができる。本実施形態では、イオン注入の方向は、第1マスク層21と第2マスク層22とが積層される方向(Z軸方向)に対して、ほぼ等しい。
図10には、p型注入領域112pが形成された半導体装置100gが示されている。
【0054】
イオン注入工程が行われた後、イオン注入用マスク除去工程が行われる(
図2、S140)。イオン注入用マスク20は、ウェットエッチングによって半導体層111の上から除去される。
図11は、イオン注入用マスク20が除去された、製造過程における半導体装置100hを示す図である。本実施形態では、イオン注入用マスク除去工程において、フッ酸(HF)を用いたウェットエッチングが行われる。そのため、本工程では、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から主になる第1マスク層21と、チタン(Ti)から主になる第2マスク層22と、がともに除去される。また、基板110の−Z軸方向側の表面に形成された酸化シリコン(SiO
2)からなる保護膜も、第1マスク層21及び第2マスク層22とともに除去される。
【0055】
なお、第1マスク層21が窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)で形成されている場合には、イオン注入用マスク除去工程において、第2マスク層22をフッ酸で除去した後、第1層21pを水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などのアルカリ性溶液で除去してもよい。
【0056】
イオン注入用マスク除去工程が行われた後、イオン注入されたp型不純物を活性化させる活性化工程が行われる(
図2、S150)。活性化工程は、例えば、1150℃の温度において、アンモニア(NH
3)を含む雰囲気下で、2分間行われる。熱処理の温度は、不純物をより確実に活性化させる観点から、1000℃以上であることが好ましく、1050℃以上であることがより好ましい。また、熱処理温度は1200℃以下であることが好ましく、1150℃以下であることがより好ましい。熱処理の時間は、1分以上であることが好ましく、10分以下であることが好ましい。熱処理はアンモニアを含む雰囲気、水素を含む雰囲気、アンモニア及び水素を含む雰囲気、窒素を含む雰囲気で行われてもよく、アンモニア(NH
3)を含む雰囲気下で行われることが好ましい。なお、熱処理時に、p型注入領域112pが形成された半導体層111の上面が荒れることを抑制するために、保護膜を形成してもよい。保護膜の材料としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)を用いることができる。保護膜が形成されている場合、保護膜は熱処理後に除去される。活性化工程が行われることで、p型注入領域112pのドナー元素が活性化し、p型半導体領域112が形成される。
図13は、p型半導体領域112が形成された、製造過程における半導体装置100iを示す図である。
【0057】
以上のようにして、イオン注入用マスク20を用いたイオン注入によってp型半導体領域112が形成される。
【0058】
本実施形態では、p型半導体領域112が形成された半導体層111の上に、半導体層113、半導体層114が順に積層された積層体が形成される。その後、積層体に対してドライエッチングが行われることによってトレンチ122及びリセス124が形成され、各絶縁膜及び各電極が形成されて、半導体装置100が製造される。
【0059】
図13は、イオン注入用マスク20の断面SEM像を示す図である。
図13には、上述のイオン注入用マスク20の形成工程(
図3、S111〜S116)によって形成された、イオン注入用マスク20が示されている。
図13には、第1の方向であるX方向と、第2マスク層22の端部22tと、のなす角θが示されている。
図13に示す角θは、86.4°である。一般的に、ドライエッチングによって形成される形状は、ウェットエッチングによって形成される形状よりも明確である。本実施形態では、第2層22pのドライエッチングによって第2マスク層22が形成されるため、
図13に示すように、形成されたイオン注入用マスク20は、第2マスク層22の端部22tの垂直性がよい。なお、
図13に示すイオン注入用マスク20において、第1マスク層21(ウェットエッチングされた第1層21p)の端部21tの位置と、第2マスク層22の端部22tの位置と、の差dは、第2マスク層22の膜厚Dの半分以下である。
【0060】
A3.効果:
本実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、第1層21pは酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)の少なくとも一つから主になるため、III族窒化物からなる半導体層111の表面がシリコン(Si)によって汚染されることを抑制することができる。また、ドライエッチング時には、第1層21pが半導体層111の保護層として機能するため、半導体層111にダメージが導入されることを抑制することができる。また、第2マスク層22はドライエッチングによって形成されるため、第2マスク層22の開口を所望のサイズに制御することができる。そのため、イオン注入用マスク20を用いたイオン注入によって、半導体層111に所望のサイズのp型半導体領域112を形成することができる。また、第2マスク層22は耐アルカリ性を有するため、第2マスク層22の形状がウェットエッチングによって変化することを抑制することができる。そのため、イオン注入用マスク20を用いたイオン注入によって、半導体層111に所望のサイズのp型半導体領域112を形成することができ、微細化された半導体装置100を製造することができる。
【0061】
また、第1マスク層21は酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)の少なくとも一つから主に成り、第2マスク層22は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)の少なくとも一つから主になることにより、イオン注入用マスク20を用いて、500℃のような比較的高温でイオン注入を行うことができる。そのため、イオン注入によって半導体層111にダメージが与えられることを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、耐アルカリ性を有する金属は、60℃、22質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが、5nm/min未満の性質を有しているため、第2マスク層22の形状が、ウェットエッチングによって変化することを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1の方向において、第1層21pの端部21tの位置と、第2マスク層22の端部22tの位置と、の差dが、第2マスク層22の膜厚Dの半分以下になるように第1層21pをウェットエッチングするため、第2マスク層22が第1マスク層21から剥離することを抑制することができる。また、イオン注入の方向が第1マスク層21と第2マスク層22とが積層される方向に対して傾斜する場合に、第2マスク層22の開口の内側に位置する半導体層111にイオンが注入されることを抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、第1層21pの厚さが50nm以上であるため、ドライエッチングによって半導体層111にダメージが導入されることをより抑制することができる。また、第1層21pの厚さが500nm以下であるため、第1層21pの厚さが500nmより厚い場合と比較して、第1層21pの形成及び第1層21pのウェットエッチングに要する時間が増加することを抑制することができる。
【0065】
また、第1層21pの厚さが、比較的厚い場合には、ウェットエッチングによって第1層21pを開口させる間に、ウェットエッチングの等方性により、第2マスク層22の下側(−Z軸方向側)に位置する第1層21pのウェットエッチングが進行しすぎるおそれがある。このような場合には、ウェットエッチングされた第1層21pの端部(第1マスク層21の端部21t)の位置と、第2マスク層22の端部22tの位置との差dが大きくなり、第2マスク層22が第1マスク層21から剥離するおそれがある。しかし、本実施形態では、第1層21pの厚さが500nm以下であるため、ウェットエッチングされた第1層21pの端部(第1マスク層21の端部21t)の位置と、第2マスク層22の端部22tの位置との差dが大きくなることを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、第1層21pは、酸化アルミニウム(Al
2O
3)により形成されており、イオン注入工程後に、フッ酸(HF)によって第1マスク層21と第2マスク層22とが一度に除去されるため、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0067】
B.変形例:
上述の実施形態では、耐アルカリ性を有する金属は、60℃、22質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが、5nm/min未満の性質を有している。これに対し、耐アルカリ性を有する金属は、60℃、22質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬した場合のエッチングレートが、5nm/min以上であってもよく、例えば、6nm/min、10nm/min等の他の値であってもよい。
【0068】
上述の実施形態では、第1の方向において、第1層21pの端部21tの位置と、第2マスク層22の端部22tの位置と、の差dが、第2マスク層22の膜厚Dの半分以下になるように第1層21pがウェットエッチングされている。これに対し、差dは、膜厚Dの半分よりも大きくてもよい。
【0069】
上述の実施形態では、第1層21pの厚さは、50nm以上500nm以下である。これに対し、第1層21pの厚さは、50nmよりも小さくてもよく、例えば、40nm、35nm等であってもよい。また、第1層の厚さは、500nmよりも大きくてもよく、例えば、550nm、600nmであってもよい。
【0070】
上述の実施形態において、第1層21pをウェットエッチングするアルカリ性溶液には、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH
4OH)、水酸化ナトリウム(NaOH)などの他のアルカリ系のエッチャントを用いてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、各半導体層は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されており、半導体装置100は、GaN系の半導体装置である。これに対し、半導体層111は、III族窒化物から主になればよく、各半導体層は窒化アルミニウム(AlN)や窒化インジウム(InN)といった他の材料により構成されていてもよい。
【0072】
本発明が適用される半導体層は、上述の半導体層111に限られず、他の半導体層であってもよい。また、本発明が適用される半導体装置は、上述の実施形態で説明したトレンチMOSFETに限られず、イオン注入によってp型半導体領域が形成された半導体装置であればよく、例えば、ショットキーバリアダイオード、接合型トランジスタ、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、MESFET(metal-semiconductor field effect transistor)及びサイリスタなどであってもよい。
【0073】
本発明は、上述した実施形態、実施例及び変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、実施形態、実施例及び変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替え及び組み合わせを行うことが可能である。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除することが可能である。