(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記復帰バネのうち、前記固定コアと、前記開口部の周囲との間を通過する領域のバネピッチが、他の領域のバネピッチよりも小さく設定されている請求項3に記載の電磁継電器。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態の電磁継電器100Aについて、
図1、
図2を用いて説明する。電磁継電器100Aは、所定の機器に対する電力供給を断続する装置(いわゆるリレー)である。電磁継電器100Aは、所定の機器として、例えば、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載される走行用駆動モータに対して、バッテリからの電力を変換(例えばDC−AC変換)して供給するインバータに適用されている。電磁継電器100Aは、バッテリとインバータとの間に配置されている。
【0019】
電磁継電器100Aは、図示しないケース内に、主要部を構成する励磁コイル110、固定コア120、ヨーク130、可動コア140、および復帰バネ150等が設けられて形成されている。ケースは、例えば、樹脂製となっており、ケース内には、内部の主要部を保持するための樹脂製のベースが設けられている。ベースは、接着または爪等の嵌合によりケースに固定されている。
【0020】
以下、各部材、あるいは各部材間の配置に対する方向を示すために、励磁コイル110の軸線方向(
図1中の上下方向)を基準にして説明することにする。この軸線方向は、例えば、後述する固定コア120と可動コア140の並ぶ方向に一致しており、軸線方向の可動コア140側を一方側と呼び、また、軸線方向の固定コア120側を他方側と呼ぶことにする。軸線方向は、本発明の軸方向に対応する。
【0021】
励磁コイル110は、円筒状を成して、通電時に磁界を形成するものであり、後述するヨーク130の底部(第1ヨーク131の底部)に固定配置されている。励磁コイル110は、ボビン111、およびコイル部112等を有している。ボビン111は、樹脂製の部材であり、筒状部と、この筒状部の軸線方向の両端部に一体的に形成された平板状の鍔部とを有している。コイル部112は、ボビン111の筒状部に導線が巻かれて形成されている。導線は、ボビン111の筒状部の周方向に沿って巻かれている。励磁コイル110の内径部(ボビン111の筒状部)の空間は、コイル中心孔部113となっている。本実施形態では、励磁コイル110の軸線方向は、
図1の上下方向となっている。
【0022】
固定コア120は、励磁コイル110のコイル中心孔部113内に配置された円柱状の部材であり、後述するヨーク130と共に磁気回路を構成する部材となっている。固定コア120は、磁性体金属材料から形成されている。固定コア120の中心軸の向きは、励磁コイル110の軸線方向と一致している。固定コア120は、テーパ部121、円形部122、小径部123、中心孔部124、およびストッパ部125等を有している。
【0023】
テーパ部121は、固定コア120における軸線方向の一方側となる端部(すなわち、可動コア140側の端部)から軸線方向の他方側に向かって拡径する部位となっている。円形部122は、テーパ部121における軸線方向の他方側の端部から更に他方側に向かって延びて、外径が一定に設定された部位となっている。小径部123は、円形部122における軸線方向の他方側の端部から更に他方側に向かって延びて、円形部122よりも外径寸法が小さく設定された部位となっている。
【0024】
中心孔部124は、固定コア120の中心軸に沿って貫通するように形成された孔である。中心孔部124の内径寸法は、円形部122、および小径部123の外径寸法に対応するように途中で徐変されている。ストッパ部125は、固定コア120の軸線方向の中間部となる外周面に設けられて、径方向の外側に突出する部位となっている。ストッパ部125は、後述する復帰バネ150の軸線方向の他方側の端部を支持するようになっている。
【0025】
固定コア120における軸線方向の一方側の端部(すなわち、テーパ部121の端面)には、中心部に円柱状凹部空間である凹部126が形成され、この凹部126の周りに環状に連続した突起状の凸部127が形成されている。
【0026】
固定コア120は、小径部123が、後述するヨーク130の底部(第1ヨーク131の底部)に穿設された孔に挿入、接合されて、ヨーク130に固定されている。
【0027】
ヨーク130は、固定コア120と共に磁気回路を構成すると共に、励磁コイル110、固定コア120、および後述する復帰バネ150を内側に収容する部材となっており、第1ヨーク131、および第2ヨーク132等を有している。
【0028】
第1ヨーク131は、例えば、磁性体金属の帯板材料が、コの字状に折り曲げられて形成された部材となっており、ここでは、励磁コイル110の外周側で互いに対向する領域、および励磁コイル110の軸線方向の他方側を覆っている。
【0029】
第2ヨーク132は、磁性体金属材料から形成された板状部材となっており、第1ヨーク131の開口側(軸線方向の一方側の端部)に配置されている。そして、第2ヨーク132の両端部は、第1ヨーク131の開口側端部に接合されている。
【0030】
第2ヨーク132の固定コア120の位置に対応する領域(中心部領域)には、ヨーク孔部132aが形成されて、開口されている。ヨーク孔部132aは、例えば、円形状となっている。ヨーク孔部132aは、本発明の開口部に対応する。よって、第2ヨーク132は、励磁コイル110のコイル中心孔部113を除く領域において、励磁コイル110の軸線方向の一方側を覆っている。また、第2ヨーク132のヨーク孔部132aの周囲と、固定コア120の軸線方向の一方側の端部周囲との間には、所定寸法の隙間部132bが形成されている。
【0031】
可動コア140は、ヨーク孔部132aを介して固定コア120と対向するように配置されて、励磁コイル110への通電時に固定コア120側に吸引される部材となっている。可動コア140は、板部141、突出部142、およびシャフト部143等を有している。
【0032】
板部141は、固定コア120の中心軸に対して直交する方向に板面が延びる、例えば、円形状の板部材となっている。板部141の中心部には、円形の孔部141aが穿設されている。板部141の外径寸法は、ヨーク孔部132aの内径寸法よりも大きく設定されている。
【0033】
突出部142は、板部141の軸線方向の他方側の面の中心部領域から、固定コア120側に突出する円筒状の部材となっている。突出部142の外径寸法は、ヨーク孔部132aの内径寸法よりも小さく設定され、また、突出部142の内径寸法は、固定コア120の円形部122における外径寸法よりも大きく設定されている。そして、突出部142の軸線方向の他方側の先端部(突出側端部)は、可動コア140が固定コア120から最も離れた状態で(非通電時に)、隙間部132bに入り込む位置に設定されている。
【0034】
突出部142の内周面には、テーパ部142a、および円筒部142bが形成されている。テーパ部142aは、突出部142の内周面の軸線方向の一方側の領域において、内径寸法が一方側から他方側に向けて拡径されるように形成されている。円筒部142bは、テーパ部142aの他方側の端部から更に他方側に向けて内径寸法が一定になるように形成されている。
【0035】
シャフト部143は、例えば、断面円形の棒状の部材であり、軸線方向の一方側の端部が孔部141aに挿入されて、板部141に接合されている。そして、シャフト部143の軸線方向の他方側の端部が固定コア120の中心孔部124に摺動可能に挿入されている。
【0036】
よって、可動コア140は、シャフト部143が中心孔部124を摺動することで、固定コア120に対して、軸線方向に移動可能となっている。可動コア140が固定コア120側に移動したとき(通電時に)、固定コア120のテーパ部121、および円形部122の軸線方向の一方側における一部は、相対的に、可動コア140の突出部142の内部空間に入り込むことができるようになっている。
【0037】
可動コア140の中心部領域(突出部142の内側領域)における板部141と、固定コア120の凸部127との間が、エアギャップAGとして形成されている。
【0038】
励磁コイル110への非通電時において、固定コア120(凸部127)と、可動コア140(板部141)との間に形成される隙間(後述する最大のエアギャップAGに相当)は、第1隙間161となる。また、励磁コイル110への非通電時において、ヨーク130(第2ヨーク132)と、可動コア140(板部141、突出部142)との間に形成される隙間は、第2隙間162となる。第2隙間162は、励磁コイル110への通電時において、ヨーク130(第2ヨーク132)と、可動コア140(板部141、突出部142)との間において、励磁コイル110の軸線方向(可動コア140が固定コア110側に吸引される方向)への吸引力を発生し得る隙間となっている。
【0039】
復帰バネ150は、固定コア120の外周側に配置されて、可動コア140を軸線方向の一方側(吸引方向とは反対方向)に付勢する部材となっている。復帰バネ150は、例えば、金属製のコイルバネが使用されており、固定コア120の外周部に挿通されている。そして、復帰バネ150の軸線方向の他方側の端部は、固定コア120のストッパ部125に当接されている。また、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部は、可動コア140の突出部142の突出側端部(軸線方向の他方側の端部)に当接されている。
【0040】
復帰バネ150は、可動コア140の位置によらず、常に、軸線方向の一方側の端部が、可動コア140に接触している。また、復帰バネ150が可動コア140を軸線方向の一方側に付勢しているとき(非通電時)、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部は、隙間部132bに隣接するように配置されている。
【0041】
本実施形態では、復帰バネ150は、磁性材料から形成されている。尚、復帰バネ150は、例えば、非磁性材料から形成されたものを、熱加工処理等することで、磁性材料から形成されるものとすることができる。
【0042】
復帰バネ150は、上記のように磁性材料から形成されていることから、固定コア120と可動コア140との間、即ち、第1隙間161において、両コア120、140を磁気的に繋ぐように配置されている。
【0043】
尚、図示しないケース内において、可動コア140の軸線方向の一方側には、可動コア140の動きに連動して、所定機器に対する電力供給線の断続を行う図示しない接点部が設けられている。可動コア140が固定コア120に吸引されていないときには(非通電時)、復帰バネ150の付勢力によって、可動コア140が軸線方向の一方側へ移動され、接点部は切断されるようになっている。このとき、例えば、接点部の位置規制部により、可動コア140は、固定コア120から最も離れた状態で停止されるようになっている。このときのエアギャップAGは、最大のエアギャップとなり、例えば、2.5mm〜3mm程度の設定となっている。
【0044】
逆に、可動コア140が固定コア120に吸引されているときには(通電時)、吸引力によって、可動コア140が軸線方向の他方側へ移動され、接点部は接続されるようになっている。このとき、可動コア140(板部141)は、固定コア120(凸部127)に当接して停止されるようになっている。このときのエアギャップAGは、最小のエアギャップ(ゼロ)となるように設定されている。
【0045】
電磁継電器100Aは、以上のように構成されており、以下、
図2を加えて、その作動および作用効果について説明する。
【0046】
まず、励磁コイル110への通電が遮断されているとき(非通電時)、励磁コイル110による磁界の形成は行われず、可動コア140に対する吸引力の発生がなく、
図1に示すように、可動コア140は、復帰バネ150により軸線方向の一方側に駆動される。これにより、図示しない接点部は、切断状態となって、所定機器への電力供給は行われない状態となる。
【0047】
尚、励磁コイル110への通電が遮断されている状態では、固定コア120のテーパ部121の一部が可動コア140の突出部142内に位置して、可動コア140の円筒部142bにおける軸線方向の他方側の端部と、固定コア120のテーパ部121とが、軸線方向に対して直交する方向に重なる。
【0048】
また、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部は、可動コア140の突出部142の突出側端部に当接していることから、隙間部132bに隣接するように位置している。そして、エアギャップAGは、最大値をとっている。
【0049】
一方、励磁コイル110に通電すると(通電時)、励磁コイル110により、固定コア120と可動コア140との間、および可動コア140とヨーク130との間に磁界が形成される。
【0050】
ここで、復帰バネ150は磁性材料から形成されており、第1隙間161(固定コア120と可動コア140との間)を磁気的に繋ぐように配置されているので、第1隙間161における通電時の吸引力の発生は低下する。
【0051】
しかしながら、磁性材料から成る復帰バネ150によって、第1隙間161における磁気抵抗を低減することができ、励磁コイル110への通電時に、固定コア120、可動コア140、およびヨーク130を通る全体の磁束を増加させることができる。
【0052】
そして、全体の磁束の増加に伴い、第2隙間162において発生する吸引力(可動コア140が固定コア120側に吸引される方向の吸引力)を大きくすることができる。総じて、この増加された吸引力によって、可動コア140に作用する固定コア120側への吸引力を向上させることができる。
【0053】
そして、可動コア140は、この吸引力により復帰バネ150に抗して固定コア120側に吸引される。これにより、図示しない接点部は、接続状態となって、所定機器への電力供給が行われる状態となる。
【0054】
尚、励磁コイル110に通電すると、可動コア140は、可動コア140の板部141の中心部領域が固定コア120の凸部127に当接する位置まで移動する。つまり、エアギャップAGが最大値からゼロとなる。板部141の中心部領域が凸部127に当接した状態では、固定コア120のテーパ部121、および円形部122の軸線方向の一方側の一部は、移動した可動コア140の突出部142内に位置する。
【0055】
また、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部の位置は、可動コア140の移動量分(最大エアギャップAGの分)だけ、軸線方向の他方側に移動して、隙間部132bから軸線方向の他方側へ離れることになる。
【0056】
非通電時において、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部は、隙間部132bに隣接するように配置されているので、通電時における固定コア120とヨーク130(第2ヨーク132)との間の磁気抵抗を低減することができる。よって、励磁コイル110における通電開始時の磁束を増やして、可動コア140の固定コア120側への吸引力を向上させることができる。
【0057】
図2は、本実施形態において、理論解析に基づくエアギャップAGと、可動コア140に作用する吸引力との関係を示したものである。本実施形態では、エアギャップAGが最大値から中間値に至る領域で、従来技術に対して吸引力が向上されている。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態の電磁継電器100Bを
図3、
図4に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部の位置を変更したものである。
【0059】
固定コア120において、可動コア140の突出部142内に入り込み得る領域から外れる位置と、ストッパ部125との間で、円形部122には、外径寸法が更に大きく設定された大径部122aが形成されている。
【0060】
可動コア140において、突出部142の外周面には、段部142cが形成されている。段部142cは、突出部142の軸線方向の他方側(先端部側)において、外径寸法が一回り小さく設定されることで形成されている。
【0061】
復帰バネ150は、固定コア120の大径部122aに挿入可能な内径寸法に設定されており、軸線方向の一方側の端部は、段部142cにより外径寸法が変化する境界部に当接されている。よって、復帰バネ150が可動コア140を軸線方向の一方側に付勢しているとき(非通電時)、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部は、隙間部132bの領域に入り込むように配置されている。
【0062】
尚、通電時においては、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部の位置は、吸引力による可動コア140の移動量分(最大エアギャップAGの分)だけ、軸線方向の他方側に移動して、隙間部132bから軸線方向の他方側へ離れる。
【0063】
本実施形態では、可動コア140の固定コア120側への吸引力を向上させる理屈は、上記第1実施形態と同一である。
【0064】
また、本実施形態では、通電開始時に固定コア120とヨーク130との間、および可動コア140とヨーク130との間に復帰バネ150が位置している。よって、復帰バネ150の一部(軸線方向の一方側)は、通電開始時(エアギャップAGの最大時)における隙間部132b、つまり固定コア120とヨーク孔部132aの周囲との間における磁束、更には、可動コア140(突出部142)とヨーク孔部132aの周囲との間における磁束を増やすことができるので、通電開始時の可動コア140に働く吸引力を効果的に向上させることができる。
【0065】
図4は、本実施形態において、理論解析に基づくエアギャップAGと、可動コア140に作用する吸引力との関係を示したものである。本実施形態では、エアギャップAGが最大のとき(通電開始時)において、従来技術に対して吸引力が向上されている。
【0066】
(第3実施形態)
第3実施形態の電磁継電器100Cを
図5、
図6に示す。第3実施形態は、上記第2実施形態に対して、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部の位置を、更に変更したものである。
【0067】
可動コア140において、第2実施形態で説明した段部142cは、廃止されており、可動コア140の突出部142の外径寸法は、段部142cを形成した際の一回り小さい外径寸法が軸線方向にわたって与えられている。
【0068】
復帰バネ150は、固定コア120の大径部122aに挿入可能な内径寸法に設定されており、軸線方向の一方側の端部は、可動コア140の突出部142を通り、板部141の固定コア120側の面に当接されている。よって、
図5(a)に示すように、復帰バネ150が可動コア140を軸線方向の一方側に付勢しているとき(非通電時)、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部は、板部141の固定コア120側の面の位置にあり、復帰バネ150の軸線方向の一方側は、隙間部132bを通過するように配置されている。
【0069】
また、
図5(b)に示すように、通電時においては、復帰バネ150の軸線方向の一方側の端部の位置は、吸引力による可動コア140の移動量分(最大エアギャップAGの分)だけ、軸線方向の他方側に移動するものの、隙間部132bの領域に残っている。
【0070】
つまり、本実施形態では、復帰バネ150の一部(軸線方向の一方側)は、通電開始から吸引完了までの間、可動コア140(固定コア120)と、ヨーク130(ヨーク孔部132aの周囲)との間を通過するように配置されている。
【0071】
本実施形態では、可動コア140の固定コア120側への吸引力を向上させる理屈は、上記第1実施形態と同一である。
【0072】
また、本実施形態では、通電開始から吸引完了までの間、可動コア140(固定コア120)と、ヨーク130との間に復帰バネ150が位置している。よって、復帰バネ150の一部(軸線方向の一方側)は、通電開始から吸引完了までの間、固定コア120とヨーク孔部132aの周囲との間における磁束、更には、可動コア140(突出部142)とヨーク孔部132aの周囲との間における磁束を増やすことができるので、通電開始時から吸引完了までの可動コア140に働く吸引力を向上させることができる。
【0073】
図6は、本実施形態において、理論解析に基づくエアギャップAGと、可動コア140に作用する吸引力との関係を示したものである。本実施形態では、微量ではあるが、エアギャップAGの全領域、つまり、通電開始時から吸引完了までにおいて、従来技術に対して吸引力が向上されている。特に、本実施形態では、エアギャップAGが最小側(吸引完了近く)で、吸引力の向上効果が高く得られている。
【0074】
(第4実施形態)
第4実施形態の電磁継電器100Dを
図7〜
図9に示す。第4実施形態は、上記第3実施形態に対して、復帰バネ150のバネピッチを変更したものである。
【0075】
復帰バネ150の軸線方向の一方側において、可動コア140に働く吸引力によって隙間部132bを通過する領域については、他の領域よりもバネピッチが小さく設定されている。上記のようにバネピッチを設定することで、バネピッチの小さい領域151は、バネ自身の密度が相対的に高くなっており、バネピッチの大きい領域152は、バネ自身の密度が相対的に低くなっている。
【0076】
本実施形態では、可動コア140の固定コア120側への吸引力を向上させる理屈は、上記第1実施形態と同一である。
【0077】
また、本実施形態では、バネピッチの小さい領域151は、通電開始時から吸引完了までにおいて、磁気抵抗をより大きく低減することができるので、可動コア140に働く吸引力の向上効果を高めることができる。
【0078】
図8は、本実施形態において、理論解析に基づくエアギャップAGと、可動コア140に作用する吸引力との関係を示したものである。本実施形態では、エアギャップAGの全領域、つまり、通電開始時から吸引完了までにおいて、従来技術に対して吸引力が向上されている。
【0079】
尚、復帰バネ150のバネピッチの小さい領域151に代えて、可動コア140の突出部142の外径寸法を、バネピッチの小さい領域151の外径寸法に相当するように(肉厚を厚くするように)設定した場合であると、磁束経路は、単純に突出部142から第2ヨーク132側へ水平方向となる磁束経路が形成されて、下向き(軸線方向)の吸引力は得られない。
【0080】
しかしながら、
図9に示すように、復帰バネ150のバネピッチの小さい領域151では、復帰バネ150の実体のある部位と、ない部位とで周方向の全体にわたって疎となる部分と密となる部分とから形成されたものとなって、斜め下向きとなる磁束経路が形成される。よって、この斜め下向きの磁束経路によって、分力として下向き(軸線方向)の吸引力が得られ、吸引力の向上に繋がる。
【0081】
(第5実施形態)
第5実施形態の電磁継電器100Eを
図10、
図11に示す。第5実施形態は、上記第1実施形態に対して、固定コア120および可動コア140の形状を変更すると共に、復帰バネ150の配置を変更したものである。
【0082】
固定コア120は、第1実施形態で説明したテーパ部121、ストッパ部125、凹部126、および凸部127は廃止されており、円形部122、小径部123、および中心孔部124を有している。固定コア120における軸線方向の一方側で可動コア140と対向する面(向かい合う面)は、平坦な対向面128となっている。
【0083】
可動コア140は、第1実施形態で説明した突出部142におけるテーパ部142a、および円筒部142bは廃止されており、突出部142は、扁平な円柱状に形成されている。可動コア140における軸線方向の他方側で固定コア120と対向する面(向かい合う面)は、平坦な対向面144となっている。
【0084】
そして、第1実施形態と同様に、固定コア120(対向面128)と可動コア140(対向面144)との間が第1隙間161として形成されており、また、可動コア140とヨーク130(第2ヨーク132)との間が第2隙間162として形成されている。
【0085】
復帰バネ150は、第1隙間161において、固定コア120と可動コア140とを磁気的に繋ぐように配置されている。つまり、復帰バネ150のそれぞれの端部側が対向面128および対向面144に当接するように配置されている。
【0086】
非通電時において、復帰バネ150によって付勢される可動コア140の軸線方向の他方側の端部(対向面144)は、第2ヨーク132の位置と同等の位置となるように設定されている。そして、可動コア140の板部141と、ヨーク130の第2ヨーク132との間がエアギャップAGに相当する部位となっている。
【0087】
また、
図11に示すように、通電時において、可動コア140が固定コア120側に吸引されたとき(吸引状態でエアギャップAGがゼロのとき)の固定コア120と可動コア140との距離(第1隙間161の軸線方向の距離)は、復帰バネ150が最大に縮められたときの最小長さと等しくなるように設定されている。
【0088】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、可動コア140の固定コア120側への吸引力を向上させることができる。
【0089】
即ち、励磁コイル110に通電すると(通電時)、励磁コイル110により、固定コア120と可動コア140との間、および可動コア140とヨーク130との間に磁界が形成される。
【0090】
ここで、復帰バネ150は、磁性材料から形成されており、第1隙間161(固定コア120と可動コア140との間)を磁気的に繋ぐように配置されているので、磁束は、復帰バネ150に沿って螺旋状に流れる。そして、第1隙間161における通電時の吸引力の発生は低下する。
【0091】
しかしながら、磁性材料から成る復帰バネ150によって、第1隙間161における磁気抵抗を低減することができ、励磁コイル110への通電時に、固定コア120、可動コア140、およびヨーク130を通る全体の磁束を増加させることができる。
【0092】
そして、全体の磁束の増加に伴い、第2隙間162において発生する吸引力、つまり、
図10、
図11中に示した両矢印の吸引力の軸線方向の成分の力(可動コア140が固定コア120側に吸引される方向の吸引力)を大きくすることができる。総じて、この増加された吸引力によって、可動コア140に作用する固定コア120側への吸引力を向上させることができるのである。
【0093】
(第6実施形態)
第6実施形態の電磁継電器100Fを
図12、
図13に示す。第6実施形態は、上記第1実施形態に対して、固定コア120の形状を変更すると共に、復帰バネ150の配置を変更したものである。
【0094】
固定コア120は、第1実施形態で説明したストッパ部125が廃止されたものとなっている。
【0095】
そして、第1実施形態と同様に、固定コア120と可動コア140との間が第1隙間161として形成されており、また、可動コア140とヨーク130(第2ヨーク132)との間が第2隙間162として形成されている。
【0096】
復帰バネ150は、第2隙間162において、ヨーク130と可動コア140とを磁気的に繋ぐように配置されている。つまり、復帰バネ150のそれぞれの端部側が第2ヨーク132および板部141に当接するように配置されている。
【0097】
非通電時において、固定コア120の凸部127と、可動コア140の板部141との間がエアギャップAGとなっている。
【0098】
また、
図13に示すように、通電時において、可動コア140が固定コア120側に吸引されたとき(エアギャップAGがゼロのとき)のヨーク130(第2ヨーク132)と可動コア140(板部141)との距離(第2隙間162の軸線方向の距離)は、復帰バネ150が最大に縮められたときの最小長さと等しくなるように設定されている。
【0099】
本実施形態では、励磁コイル110に通電すると(通電時)、励磁コイル110により、固定コア120と可動コア140との間、および可動コア140とヨーク130との間に磁界が形成される。
【0100】
ここで、復帰バネ150は、磁性材料から形成されており、第2隙間162(ヨーク130と可動コア140との間)を磁気的に繋ぐように配置されているので、磁束は、復帰バネ150に沿って螺旋状に流れる。そして、第2隙間162における通電時の吸引力の発生は低下する。
【0101】
しかしながら、磁性材料から成る復帰バネ150によって、第2隙間162における磁気抵抗を低減することができ、励磁コイル110への通電時に、固定コア120、可動コア140、およびヨーク130を通る全体の磁束を増加させることができる。
【0102】
そして、全体の磁束の増加に伴い、第1隙間161において発生する吸引力、つまり、可動コア140が固定コア120側に吸引される方向の吸引力を大きくすることができる。総じて、この増加された吸引力によって、可動コア140に作用する固定コア120側への吸引力を向上させることができる。
【0103】
(第7実施形態)
第7実施形態の電磁継電器100Gを
図14、
図15に示す。第7実施形態は、上記第5実施形態に対して、復帰バネ150Aを変更したものである。
【0104】
復帰バネ150Aは、帯状の薄肉板材が円錐状に巻かれた円錐状バネである。この帯状の薄肉板材が用いられた円錐状バネは、いわゆる竹の子バネと呼ばれるものである。復帰バネ150Aは、第1隙間161において、固定コア120と可動コア140とを磁気的に繋ぐように配置されている。つまり、復帰バネ150Aのそれぞれの軸線方向の端部側が対向面128および対向面144に当接するように配置されている。復帰バネ150Aの円錐底面側に対応する端部は、対向面128に当接している。また、復帰バネ150Aの円錐頂点側に対応する端部は、対向面144に当接している。
【0105】
非通電時において、復帰バネ150Aによって付勢される可動コア140の軸線方向の他方側の端部(対向面144)は、第2ヨーク132の位置と同等の位置となるように設定されている。そして、可動コア140の板部141と、ヨーク130の第2ヨーク132との間がエアギャップAGに相当する部位となっている。
【0106】
また、
図15に示すように、通電時において、可動コア140が固定コア120側に吸引されたとき(エアギャップAGがゼロのとき)の固定コア120と可動コア140との距離(第1隙間161の軸線方向の距離)は、復帰バネ150Aが最大に縮められて筒状になったときの軸線方向の長さ(最小長さ)と等しくなるように設定されている。
【0107】
本実施形態においても、上記第5実施形態と同様に、第2隙間162において発生する吸引力を大きくして、可動コア140の固定コア120側への吸引力を向上させることができる。
【0108】
加えて、本実施形態では、復帰バネ150Aとして、竹の子バネを使用している。竹の子バネにおいては、通電時において、竹の子バネの巻線と対向面128との間に発生する漏れ磁束、および竹の子バネの巻線と対向面144との間に発生する漏れ磁束によって、固定コア120と復帰バネ150Aとの間、および可動コア140と復帰バネ150Aとの間で吸引力を発生させて、バネを縮ませる力を得ることができる。よって、復帰バネ150Aの見かけ上のバネ反力を弱めることができ、相対的な可動コア140の固定コア120側への吸引力を高めることができる。
【0109】
また、
図15に示すように、通電時において、エアギャップAGがゼロとなったとき、復帰バネ150Aは、第1隙間161において、あたかも円筒状を成すように縮められる。このとき、復帰バネ150Aを通る磁束は、円筒状の軸線方向に沿う流れとなり、径方向の成分を持たないものとなる。よって、可動コア140を吸引するための軸線方向の力を発生させる際のロスとなる磁束を低減することができる。
【0110】
(第8実施形態)
第8実施形態の電磁継電器100Hを
図16、
図17に示す。第8実施形態は、上記第7実施形態に対して、復帰バネ150Aを復帰バネ150Bに変更したものである。
【0111】
復帰バネ150Bは、断面円形の線状材料が円錐状に巻かれた円錐状バネである。この線状材が用いられた円錐状バネは、いわゆる円錐コイルバネと呼ばれるものである。復帰バネ150Bは、上記第7実施形態と同様に、第1隙間161において、固定コア120と可動コア140とを磁気的に繋ぐように配置されている。つまり、復帰バネ150Bのそれぞれの軸線方向の端部側が対向面128および対向面144に当接するように配置されている。復帰バネ150Bの円錐底面側に対応する端部は、対向面128に当接している。また、復帰バネ150Bの円錐頂点側に対応する端部は、対向面144に当接している。
【0112】
非通電時において、復帰バネ150Bによって付勢される可動コア140の軸線方向の他方側の端部(対向面144)は、第2ヨーク132の位置と同等の位置となるように設定されている。そして、可動コア140の板部141と、ヨーク130の第2ヨーク132との間がエアギャップAGに相当する部位となっている。
【0113】
また、
図17に示すように、通電時において、可動コア140が固定コア120側に吸引されたとき(エアギャップAGがゼロのとき)の固定コア120と可動コア140との距離(第1隙間161の軸線方向の距離)は、復帰バネ150Bが最大に縮められて円板状になったときの軸線方向の長さ(最小長さ)と等しくなるように設定されている。
【0114】
本実施形態においても、上記第1、7実施形態と同様に、可動コア140の固定コア120側への吸引力を向上させると共に、バネ力を弱めること、およびロスとなる磁束を低減することができる。
【0115】
特に、復帰バネ150Bにおいては、最大に縮められたときの長さ(最小長さ)を、第7実施形態における復帰バネ150Aに比べて小さく設定することができ、固定コア120と可動コア140との距離を小さくすることができるので、吸引中(エアギャップAGがゼロ)の磁気抵抗を小さくして吸引力を高めることができる。
【0116】
尚、復帰バネ150Bは、線状材料として断面が四角い平角線を用いてもよい。この場合であると、上記の断面円形の場合に比べて、復帰バネが縮められている途中段階での固定コア120、可動コア140との対向面積、および、復帰バネが最小長さになったときの固定コア120、可動コア140との接触面積を増やすことができるため、磁気抵抗を低下させて更に吸引力を高めることができる。
【0117】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、電磁継電器100A〜100Hを使用する所定機器として、例えば、電力変換用のインバータとしたが、これに限らず、オンオフの制御を必要とする電気機器に広く適用可能である。
【0118】
また、復帰バネとして、コイルバネ(150)、円錐状バネ(150A、150B)を使用した例を示したが、その他、板バネ等を使用してもよい。