【実施例】
【0062】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を59.3質量%、Al
2O
3を19.0質量%、MgOを10.0質量%、CaOを11.0質量%、B
2O
3を0.5質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合してガラスバッチを得た。本実施例のガラス組成物は、SiO
2、Al
2O
3、MgO及びCaOの合計量が99.3質量%となっている。本実施例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表1に示す。
【0063】
次に、前記ガラスバッチを白金ルツボに入れ、電気炉中、1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した。このとき前記溶融ガラスの1000ポイズ温度と液相温度とを測定し、作業温度範囲(ΔT)を算出した。
【0064】
1000ポイズ温度は、回転粘度計付高温電気炉(芝浦システム株式会社製)を用い、白金ルツボ中でガラスカレットを溶融し、回転式ブルックフィールド型粘度計を用いて溶融温度を変化させながら連続的に溶融ガラスの粘度を測定し、回転粘度が1000ポイズのときに対応する温度を測定することにより求めた。
【0065】
また、液相温度は、以下の手順により求めた。まず、ガラスカレットを粉砕し、粒径0.5〜1.5mmのガラス粒子40gを180×20×15mmの白金製ボートに入れ、1000〜1400℃の温度勾配を設けた管状電気炉で8時間以上加熱した後、該管状電気炉から取り出し、偏光顕微鏡で観察して、ガラス由来の結晶(失透)が析出し始めた位置を特定した。管状電気炉内の温度をB熱電対を用いて実測し、析出が開始した位置の温度を求めて液相温度とした。
【0066】
また、上述の方法で測定した1000ポイズ温度と液相温度との差を作業温度範囲(ΔT)として算出した。
【0067】
次に、得られたガラスカレットを容器底部に1つの円形ノズルチップを有する小型の筒型白金製ブッシング内に入れ、所定の温度に加熱して溶融したのち、ノズルチップから吐出した溶融ガラスを所定の速度で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却固化して、真円状の円形断面を備え、繊維径13μmのガラス繊維を得た。
【0068】
次に、ノズルチップと巻き取り機の間の一本の繊維(モノフィラメント)を採取し、接触や摩擦による劣化のない状態のものをサンプルとして、本実施例で得られたガラス繊維の繊維強度、繊維弾性率を測定した。
【0069】
繊維強度は、接触、摩擦等による傷、劣化等のないモノフィラメントを、中央に直径25mmの穴の開いた所定の台紙に接着して試験片とし、該試験片を引張試験機(株式会社オリエンテック製)のつかみ具にセットし、台紙の端部を切除した後、クロスヘッド速度5mm/分で引張試験を行い、破断時の最大荷重値と繊維断面積から算出した。前記繊維断面積は、走査型電子顕微鏡(日立株式会社製、商品名:S−3400)にてモノフィラメントを観察して得られた繊維径から算出した。測定中に糸抜けや糸折れが生じた試験片は除外し、n=30の平均値を繊維強度の測定値とした。
【0070】
繊維弾性率は、前記モノフィラメントを、中央に直径50mmの穴の開いた所定の台紙に接着して試験片とし、該試験片を前記引張試験機のつかみ具にセットし、台紙の端部を切除した後、クロスヘッド速度5mm/分で引張試験を行い、初期の強度変動値とそれに対応する伸び率から算出した。測定中に糸抜けが生じた試験片は除外し、n=15の平均値を繊維弾性率の測定値とした。結果を表1に示す。
【0071】
次に、本実施例では、ガラス繊維製造において、稀に生じる赤色の結晶が発生する状況を再現することにより、前記ガラス組成物及び前記赤色結晶抑制成分と赤色の結晶との関係性を検証した。
【0072】
本実施例では、赤色の結晶が発生する状況を再現するために、前記ガラス組成物にCr
2O
3を添加するが、このCr
2O
3の添加量は、溶融ガラスに接触する部分が前記酸化クロムレンガからなるガラス溶融炉内に滞留しているガラス塊に含まれるCr
2O
3の最大濃度に基づいている。前記ガラス塊には、前記酸化クロムレンガから長時間をかけて溶出したCr
2O
3が凝縮しているため、前記溶融炉を短時間で通過して繊維化される溶融ガラスが含み得るCr
2O
3濃度は、該ガラス塊中のCr
2O
3の最大濃度を超えることはない。
【0073】
そこで、次に、本実施例のガラス組成物の全量に対し、0.10質量%の酸化クロム(Cr
2O
3)を含むようにガラスバッチを調合した。次に、前記酸化クロムを含むガラスバッチを白金製ルツボに入れ、電気炉中、1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した。
【0074】
得られたガラスカレット40gを60×30×15mmの白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、ブッシングの制御温度より低い1250℃に降温して12時間保持した。次に、前記白金製ボートからガラスを取り除き、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製、商品名:レーザー走査型顕微鏡 LEXT OLS)を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図1に示す。
【0075】
尚、顕微鏡倍率200倍の視野(1.30×1.05mm)で10μm以上の結晶物が5個以下であるときに、赤色結晶の析出が無いと判定した。
【0076】
〔実施例2〕
本実施例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.8質量%、B
2O
3を1.0質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるようにガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本実施例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表1に示す。
【0077】
次に、本実施例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、本実施例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を表1に示す。
【0078】
次に、本実施例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、得られたガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図2に示す。
【0079】
〔
参考例1〕
本
参考例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.3質量%、B
2O
3を1.5質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるようにガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本
参考例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を
表2に示す。
次に、本
参考例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本
参考例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、本実施例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を
表2に示す。
【0080】
次に、本
参考例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図3に示す。
【0081】
〔
参考例2〕
本
参考例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を59.2質量%、Li
2Oを0.6質量%含み、B
2O
3を全く含まないガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるようにガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本
参考例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を
表2に示す。
【0082】
次に、本
参考例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本
参考例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、本
参考例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を
表2に示す。
【0083】
次に、本
参考例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図4に示す。
【0084】
〔
参考例3〕
本
参考例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.8質量%、Li
2Oを1.0質量%含み、B
2O
3を全く含まないガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるようにガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本
参考例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を
表2に示す。
次に、本
参考例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本
参考例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、本
参考例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を
表2に示す。
【0085】
次に、本
参考例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図5に示す。
【0086】
〔
実施例3〕
本実施例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.9質量%、B
2O
3を0.6質量%、Li
2Oを0.3質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるようにガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本実施例のガラス組成物は、全量に対して、B
2O
3とLi
2Oとをその混合物として0.9質量%含んでいる。本実施例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表1に示す。
次に、本実施例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、本実施例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を表1に示す。
【0087】
次に、本実施例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図6に示す。
【0088】
〔
実施例4〕
本実施例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を59.6質量%、Al
2O
3を18.2質量%、MgOを9.2質量%、CaOを11.8質量%、B
2O
3を0.9質量%、Li
2Oを0.1質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本実施例のガラス組成物は、全量に対して、B
2O
3とLi
2Oとをその混合物として1.0質量%含んでいる。本実施例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表1に示す。
次に、本実施例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、本実施例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を表1に示す。
【0089】
次に、本実施例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図7に示す。
【0090】
〔
実施例5〕
本実施例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.8質量%、Al
2O
3を19.5質量%、MgOを9.0質量%、CaOを12.0質量%、B
2O
3を0.5質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本実施例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を
表1に示す。
【0091】
次に、本実施例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラス組成物の1000ポイズ温
度、液相温度、作業温度範囲と、本実施例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を
表1に示す。
【0092】
次に、本実施例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図8に示す。
【0093】
〔
実施例6〕
本実施例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.8質量%、Al
2O
3を19.0質量%、MgOを9.0質量%、CaOを12.0質量%、B
2O
3を1.0質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本実施例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を
表1に示す。
【0094】
次に、本実施例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、本実施例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を
表1に示す。
【0095】
次に、本実施例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図9に示す。
【0096】
〔
参考例4〕
本
参考例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.8質量%、Al
2O
3を18.5質量%、MgOを9.0質量%、CaOを12.0質量%、B
2O
3を1.5質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本
参考例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表2に示す。
【0097】
次に、本
参考例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本
参考例のガラス組成物の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲と、
本参考例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を表2に示す。
【0098】
次に、本
参考例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果
を
図10に示す。
【0099】
〔
実施例7〕
本実施例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を62.0質量%、Al
2O
3を16.0質量%、MgOを8.8質量%、CaOを12.0質量%、B
2O
3を1.0質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本実施例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を
表1に示す。
【0100】
次に、本実施例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本実施例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を
表1に示す。
【0101】
次に、本実施例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図11に示す。
【0102】
〔
参考例5〕
本
参考例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を59.0質量%、Al
2O
3を18.0質量%、MgOを8.0質量%、CaOを13.8質量%、B
2O
3を1.0質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本
参考例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表2に示す。
【0103】
次に、本
参考例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本
参考例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を表2に示す。
【0104】
次に、本
参考例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図12に示す。
【0105】
〔
参考例6〕
本
参考例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を58.3質量%、Al
2O
3を18.0質量%、MgOを9.0質量%、CaOを13.5質量%、B
2O
3を1.0質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本
参考例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表2に示す。
【0106】
次に、本
参考例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本
参考例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を表2に示す。
【0107】
次に、本
参考例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図13に示す。
【0108】
〔
参考例7〕
本
参考例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を59.8質量%、Al
2O
3を20.0質量%、MgOを8.0質量%、CaOを11.0質量%、B
2O
3を1.0質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本
参考例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表2に示す。
【0109】
次に、本
参考例のガラスバッチを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを用いた以外は実施例1と全く同一にしてガラス繊維を紡糸した。次に、実施例1と全く同一にして、本
参考例で得られたガラス繊維(モノフィラメント)の繊維強度、繊維弾性率とを測定した。結果を表2に示す。
【0110】
次に、本
参考例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図14に示す。
【0111】
〔比較例1〕
本比較例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を59.8質量%含み、B
2O
3を全く含まないガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるようにガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本比較例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表3に示す。
【0112】
次に、本比較例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図15に示す。
【0113】
〔比較例2〕
本比較例では、B
2O
3に代えてNa
2Oを用いた以外は、実施例2と全く同一にしてガラスバッチを得た。本比較例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表3に示す。
【0114】
次に、本比較例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図16に示す。
【0115】
〔比較例3〕
本比較例では、B
2O
3に代えてK
2Oを用いた以外は、実施例2と全く同一にしてガラスバッチを得た。本比較例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表3に示す。
【0116】
次に、本比較例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図17に示す。
【0117】
〔比較例4〕
本比較例では、B
2O
3に代えてSrOを用いた以外は、実施例2と全く同一にしてガラスバッチを得た。本比較例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表3に示す。
【0118】
次に、本比較例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図18に示す。
【0119】
〔比較例5〕
本比較例では、B
2O
3に代えてY
2O
3を用いた以外は、実施例2と全く同一にしてガラスバッチを得た。本比較例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表3に示す。
【0120】
次に、本比較例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図19に示す。
【0121】
〔比較例6〕
本比較例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を61.0質量%、Al
2O
3を20.0質量%、MgOを12.0質量%、CaOを5.8質量%、B
2O
3を1.0質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本比較例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表3に示す。
【0122】
次に、本比較例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図20に示す。
【0123】
〔比較例7〕
本比較例では、溶融したときに、全量に対し、SiO
2を57.1質量%、Al
2O
3を20.7質量%、MgOを12.0質量%、CaOを9.0質量%、B
2O
3を1.0質量%、その他の成分としてNa
2O、K
2O及びFe
2O
3を0.2質量%含むガラス組成物の溶融物(溶融ガラス)となるように、ガラス原料を調合した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスバッチを得た。本比較例のガラスバッチを溶融して得られたガラス組成物の組成を表3に示す。
【0124】
次に、本比較例で得られたガラスバッチを用いた以外は、実施例1と全く同一にして酸化クロムを含むガラスカレットを作製し、該ガラスカレットを実施例1と全く同一にして白金製ボートに入れ、電気炉中1550℃で2時間溶融した後、1250℃に降温して12時間保持した。次に、実施例1と全く同一にして、白金表面上の該ガラスとの界面部分をレーザー顕微鏡を用いて倍率200倍で観察し、赤色結晶の析出の有無を調べた。結果を
図21に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
図15〜19及び表3から、B
2O
3及びLi
2Oを全く含有しない(比較例1)か、B
2O
3又はLi
2Oに代えて、Na
2O
3、K
2O、SrO、Y
2O
3のいずれか1種を含む場合(比較例2〜5)には、白金表面上のガラスとの界面部分に微小な粒子(赤色の結晶)が生じていることがわかる。
【0129】
これに対し、
図1〜14及び表1〜2から、B
2O
3、Li
2Oのいずれか、又はB
2O
3とLi
2Oとの混合物を、ガラス組成物の全量の0.5〜1.5質量%の範囲で含む場合(実施例1〜7)には、白金表面上のガラスとの界面部分に微小な粒子(赤色の結晶)が全く生じていないことがわかる。
【0130】
しかしながら、
図20〜21及び表3から、B
2O
3をガラス組成物の全量の1.0質量%含んでいても、CaOの含有量が9.0質量%未満である(比較例6)か、Al
2O
3の含有量が20.0質量%を超える(比較例7)場合には、白金表面上のガラスとの界面部分に微小な粒子が生じており、赤色の結晶の発生を抑制できていないことがわかる。
【0131】
従って、本発明の製造方法によれば、実施例1〜14のガラス組成物を用いることにより、ガラス繊維に赤色の結晶が混入することなく安定に紡糸を行うことができることが明らかである。
【0132】
また、表1〜2から、本発明の製造方法によれば、80GPa以上の十分な繊維弾性率と、4.0GPa以上の十分な繊維強度とを備えるガラス繊維を得ることができることが明らかである。
【0133】
〔実施例15〕
本実施例では、実施例1で得られたガラスバッチを、溶融ガラスに接触する部分が酸化クロムレンガからなる大型溶融炉で溶融し、得られた溶融ガラスを、1300℃の温度に調整されたブッシングのノズルチップから吐出させた。前記ノズルチップは長円形状のオリフィス孔を有する。
【0134】
この結果、断面形状が長円形であり、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が4である異形断面を備えるガラス繊維を得た。
【0135】
得られた異形断面を備えるガラス繊維には、赤色の結晶が含まれず、8時間以上にわたり紡糸切断が生じずに紡糸を行うことができた。
【0136】
〔実施例16〕
本実施例では、実施例1で得られたガラスバッチを、溶融ガラスに接触する部分が酸化クロムレンガからなる大型溶融炉で溶融し、得られた溶融ガラスを、1350℃の温度に調整されたブッシングのノズルチップから吐出させた。前記ノズルチップは直径1mmの円形状のオリフィス孔を有する。
【0137】
この結果、断面形状が円形であり、繊維径が5μmであるガラス繊維を得た。
【0138】
得られた断面形状が円形であり、繊維径が5μmのガラス繊維には、赤色の結晶が含まれず、8時間以上にわたり紡糸切断が生じずに紡糸を行うことができた。