(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、電流を検出して過負荷を検知する構成が開示されているが、電流を監視するのみでは、負荷の異常を検知できないことがある。例えば、ベルトコンベアの動力源としてギアモータを用いる場合、安全率を考慮し、要求される動力よりも大きな出力を有するモータが選定されることが多い。高出力のモータをベルトコンベアに用いた場合、モータにとっては負荷率の低い領域、即ち定格電流値未満の領域で運転される。この場合、ベルトコンベア側においては異常な過負荷状態となっても、モータの特性上、電流の変化は小さく、過負荷を適切に検出できないおそれがある(
図5参照)。また、モータの電流値は、電源電圧の変動によっても変化するため、正確な過負荷を検出できない(
図6参照)。
一方、被駆動装置に干渉しないように過負荷保護回路を配置する等、ギアモータの小型化が要求されている。
【0008】
本発明の目的は、電源電圧の変動に依存せず、また軽負荷領域であっても、モータ又は被駆動装置に係る負荷の異常を精度良く検知することができ、しかも被駆動装置との干渉が問題となる追加の回路装置を外部に配置する必要が無いモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るモータ装置は、モータと、該モータを交流電源に接続するための接続端子が収容される端子箱とを備えるモータ装置であって、前記モータに供給される電力を検出する電力検出回路と、該電力検出回路にて検出された電力に基づいて、前記モータ又は前記モータのトルクにて駆動される被駆動装置に係る負荷の異常が検知された場合、所定の制御を実行する制御部とを備え、前記電力検出回路及び前記制御部は前記端子箱に収容されている。
【0010】
本発明にあっては、モータに供給される電力を検出することによって、モータ又は被駆動装置における負荷の異常を検知する。負荷の異常には、所定の上限値を超えた過負荷のみならず、所定の下限値を下回った低負荷の状態も含まれる。電力検出によって負荷の異常を検知する構成であるため、電源電圧の変動に依存せず、また軽負荷領域であっても、モータ又は被駆動装置に係る負荷の異常を精度良く検知することができる(
図5、
図6参照)。
また、電力検出回路及び制御部は端子箱に収容されているため、被駆動装置との干渉が問題となる追加の回路装置を外部に配置する必要は無く、モータ装置を小型に構成することができる。
【0011】
本発明に係るモータ装置は、前記モータは、三相交流の電源接続端子に接続されるスター結線された三相コイルを有し、前記電力検出回路は、前記三相交流の電源接続端子にスター結線された3つの抵抗器と、一のコイルの相電圧に相当する一の前記抵抗器の両端電圧を検出する電圧検出部と、前記一のコイルに流れる相電流を検出する電流検出部とを備え、前記制御部は、前記一の抵抗器の両端電圧及び前記一のコイルに流れる相電流に基づいて、前記モータに供給される電力を算出する。
【0012】
本発明にあっては、トランスを備えない小型な回路構成で、モータに供給される電力を算出することができる。大型部品であるトランスを備えないため、電力検出回路を無理なく端子箱に収容することができる。
【0013】
本発明に係るモータ装置は、前記モータへの給電を遮断する遮断器を備え、前記制御部は、負荷の異常が検知された場合、前記遮断器を開状態に制御する。
【0014】
本発明にあっては、電力検出によって負荷の異常が検知された場合、遮断器を開状態とし、モータへの給電を遮断することができる。
【0015】
本発明に係るモータ装置は、前記制御部は、負荷の異常が検知された場合、負荷に異常がある旨を示す信号を出力する。
【0016】
本発明にあっては、電力検出によって負荷の異常が検知された場合、負荷の異常を示す信号を外部へ出力することができる。つまり、何らかの形で負荷の異常を外部に通知することができる。
【0017】
本発明に係るモータ装置は、自装置の振動を検出する振動検出部を備え、前記制御部は、前記電力検出回路にて検出される電力と共に、前記振動検出部の検出結果に基づいて、自装置又は前記モータのトルクにて駆動される被駆動装置の異常を検知する。
【0018】
本発明にあっては、モータに供給される電力と共に、モータ装置の振動を検出することによって、負荷の異常をより精度良く検知することができる。
【0019】
本発明に係るモータ装置は、前記モータの回転を減じて出力する減速機を備え、前記振動検出部は、前記モータ、前記減速機、又は前記モータ及び前記減速機の連結箇所に配されている。
【0020】
本発明にあっては、モータ、減速機、又はモータ及び減速機の連結箇所における振動の異常を検出し、負荷の異常を検知することができる。
【0021】
本発明に係るモータ装置は、自装置の温度を検出する温度検出部を備え、前記制御部は、前記電力検出回路にて検出される電力と共に、前記温度検出部の検出結果に基づいて、自装置又は前記モータのトルクにて駆動される被駆動装置の異常を検知する。
【0022】
本発明にあっては、モータに供給される電力と共に、モータ装置の温度を検出することによって、負荷の異常をより精度良く検知することができる。
【0023】
本発明に係るモータ装置は、前記モータの回転を減速させて出力する減速機を備え、前記温度検出部は、前記モータ、前記減速機、又は前記モータ及び前記減速機の連結箇所に配されている。
【0024】
本発明にあっては、モータ、減速機、又はモータ及び減速機の連結箇所における温度の異常を検出し、負荷の異常を検知することができる。
【0025】
本発明に係るモータ装置は、自装置の振動を検出する振動検出部と、自装置の温度を検出する温度検出部と、前記モータへの給電を遮断する遮断器とを備え、前記制御部は、前記電力検出回路にて検出された電力が所定の電力上限閾値を超えた場合若しくは電力下限閾値未満になった場合、前記振動検出部にて検出された振動が所定の振動閾値を超えた場合、又は前記温度検出部にて検出された温度が所定の温度閾値を超えた場合、前記遮断器を開状態に制御する。
【0026】
本発明にあっては、モータに供給される電力と共に、モータ装置の振動及び温度を検出することによって、負荷の異常をより精度良く検知することができ、負荷の異常が検知された場合、モータへの給電を遮断することができる。
【0027】
本発明に係るモータ装置は、過負荷又は軽負荷を検知するための電力上限閾値又は電力下限閾値を設定するための閾値設定スイッチを備え、前記制御部は、前記閾値設定スイッチにて設定された電力上限閾値又は電力下限閾値と、前記電力検出回路にて検出された電力とを比較することによって、負荷の異常を検知する。
【0028】
本発明にあっては、閾値設定スイッチにて、負荷の異常を検知するための電力上限閾値又は電力下限閾値を設定することができる。
【0029】
本発明に係るモータ装置は、前記閾値設定スイッチにて設定された複数の電力上限閾値又は電力下限閾値を受信する通信部と、該通信部にて受信した複数の電力上限閾値又は電力下限閾値と、前記閾値設定スイッチの設定値とを対応付けて記憶する閾値記憶部とを備え、前記制御部は、前記閾値設定スイッチの設定値に対応する電力上限閾値又は電力下限閾値を前記閾値記憶部から読み出し、読み出された電力上限閾値又は電力下限閾値と、前記電力検出回路にて検出された電力とを比較することによって、負荷の異常を検知する。
【0030】
本発明にあっては、通信部を介して閾値設定スイッチの状態に対応する各設定値に、負荷の異常を検知するための電力上限閾値又は電力下限閾値を割り当てることができる。使用者は、閾値設定スイッチを切り換えて所望の設定値を選択することによって、電力上限閾値又は電力下限閾値を簡単に切り換えることができる。
【0031】
本発明に係るモータ装置は、前記電力検出回路にて間欠的に検出された直近の複数の電力値を記憶するログ記憶部を備える。
【0032】
本発明にあっては、電力検出回路にて間欠的に検出された直近の複数の電力値をログ情報として記憶することができる。ログ情報は、負荷の異常の原因を特定するための情報として利用することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、電源電圧の変動に依存せず、また軽負荷領域であっても、モータ又は被駆動装置に係る負荷の異常を精度良く検知することができ、しかも被駆動装置との干渉が問題となる追加の回路装置を外部に配置すること無く、上記負荷の異常を検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1はギアモータ1の一例を示す側面図である。本実施形態に係るギアモータ1は、三相モータ2、減速機3、端子箱4及び過負荷保護回路5を備える。ギアモータ1は、本発明に係るモータ装置の一例である。
【0036】
三相モータ2は、スター結線された三相コイルと、該三相コイルに流れる交流にて回転する回転子と、該回転子のトルクを出力する回転軸とを有する。
【0037】
減速機3は三相モータ2の回転軸に連結されており、回転軸の回転を減じて、当該三相モータ2のトルクを出力する歯車機構及び出力軸を有する。歯車機構は例えば、ヘリカルギア機構、ハイポイドギア機構、ウォームギア機構等、公知の減速歯車機構である。
【0038】
端子箱4は、三相モータ2の駆動に係る各種端子が収容される中空略直方体形状の収容体であり、三相モータ2のケーシング側面の適宜箇所に設けられている。端子箱4は、ギアモータ1が設置される被駆動装置と干渉しないように、三相モータ2の中心線方向から見た端子箱4の横幅が、三相モータ2のケーシングの直径よりも小寸法に形成されている。また、言うまでも無く、縦幅も小寸法であることが望ましい。
【0039】
本実施形態に係る過負荷保護回路5は、三相モータ2に供給される電力を検出することによって、三相モータ2又は被駆動装置の負荷の異常を検知する回路である。過負荷保護回路5は端子箱4に収容されている。
【0040】
図2は過負荷保護回路5の一例を示す回路ブロック図、
図3は過負荷保護回路5の回路基板の一例を示す模式図である。過負荷保護回路5は、電源接続端子5a、モータ接続端子5b、電源回路50、制御部51、遮断器52、電力検出回路53、振動検出部54、温度検出部55、ログ記憶部56、閾値記憶部57、閾値設定スイッチ58及び通信部59を備える。なお、ログ記憶部56及び閾値記憶部57は、機能部として分けて図示しているが、一つのハードウェアであるメモリで構成しても良い。
図3に示すように過負荷保護回路5は、2段重ねで配された略長方形の第1回路基板5c及び第2回路基板5dを有する。第1回路基板5cは下側の親基板、第2回路基板5dは上側の子基板である。第1回路基板5cの一短辺側には電源接続端子5aが配されている。また、第1回路基板5cには、モータ接続端子5b、電源回路50、遮断器52、電力検出回路53等が配されている。第2回路基板5dの一長辺側には閾値設定スイッチ58が配され、他長辺側には通信部59が配されている。また、第2回路基板5dには、制御部51、ログ記憶部56及び閾値記憶部57等が配されている。
【0041】
電源接続端子5aは三相の交流電圧を出力する交流電源6に、ギアモータ1を接続するための3つの端子を備える。モータ接続端子5bは三相モータ2に接続された3つの端子を備える。モータ接続端子5bを構成する3つの端子と、電源接続端子5aを構成する3つの端子とはそれぞれ各別に給電線5eによって接続されている。
【0042】
モータ接続端子5bに接続された三相モータ2は、スター結線されたU相コイル21、V相コイル22及びW相コイル23を有する(
図4参照)。U相コイル21、V相コイル22及びW相コイル23は例えば固定子に巻回されており、該U相コイル21、V相コイル22及びW相コイル23に交流電圧が印加されると回転磁界が発生する。回転子は回転磁界によって回転し、トルクを出力する。
【0043】
電源接続端子5aには、三相モータ2に印加される交流電圧を、過負荷保護回路5の駆動用電圧に変換して、各部へ供給する電源回路50が接続されている。電源回路50は、例えば、交流電源6の交流電圧を降圧させる変圧器と、変圧器によって降圧した交流電圧を整流する整流回路と、整流回路によって整流された直流電圧を安定化させるレギュレータとを有する。
【0044】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、計時部、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータである。制御部51は、各構成部の動作を制御することによって、三相モータ2又は被駆動装置における負荷の異常を電力にて検知する処理を実行する。また、制御部51は、異常を検知した場合、三相モータ2への給電を遮断する処理、外部へ異常を通知する処理等を実行する。制御部51は、全部又は一部を、専用LSI(Large-Scale Integration)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等で構成しても良い。
【0045】
遮断器52は、交流電源6から三相モータ2への給電を遮断するスイッチである。遮断器52は、例えば、U相及びW相の給電線5eに設けられたトライアック等のソリッドステートリレーである。なお、遮断器52のスイッチを設ける箇所はU相及びW相に特に限定されるものでは無い。遮断器52は、通常は閉状態であり、負荷の異常が発生した際、制御部51の制御によって遮断器52の開閉が制御される。
【0046】
電力検出回路53は、一の相電圧及び相電流を検出することによって、三相モータ2に供給される電力を検出する回路である。
【0047】
図4は電力検出回路53の一例を示す回路図である。図中左図は交流電源6の等価回路であり、中性点Nの基準電圧に対して、交流の第1相(R)の交流電圧を出力する電源と、第2相(S)の交流電圧を出力する電源と、第3相(T)の交流電圧を出力する電源で表される。
【0048】
図中右図は、三相モータ2の等価回路であり、所定の抵抗値を有するスター結線されたU相コイル21、V相コイル22及びW相コイル23によって表される。なお、
図4においては、各コイルの抵抗成分に着眼し、抵抗器として図示してある。
具体的には、U相コイル21、V相コイル22及びW相コイル23の一端は、共通の中性点Nに接続されており、U相コイル21の他端はU相端子に接続され、V相コイル22の他端は、V相端子に接続され、W相コイル23の他端はW相端子に接続されている。
【0049】
電力検出回路53は、三相モータ2と同様の抵抗成分を有する回路である。具体的には、電力検出回路53は、電源接続端子5a又はモータ接続端子5bの3つの端子にスター結線された第1抵抗器R1、第2抵抗器R2及び第3抵抗器R3を有する。第1抵抗器R1、第2抵抗器R2及び第3抵抗器R3の一端は、共通の中性点Nに接続されており、第1抵抗器R1の他端は第1相(R)の端子及びU相端子に接続され、第2抵抗器R2の他端は、第2相(S)の端子及びV相端子に接続され、第3抵抗器R3の他端は第3相(T)の端子及びW相端子に接続されている。第1抵抗器R1、第2抵抗器R2及び第3抵抗器R3の抵抗値の比は、U相コイル21、V相コイル22及びW相コイル23との抵抗値の比と略同一である。例えば、U相コイル21、V相コイル22及びW相コイル23の抵抗値が同一である場合、第1抵抗器R1、第2抵抗器R2及び第3抵抗器R3の抵抗値も同一の抵抗値である。
【0050】
また、電力検出回路53は、U相コイル21の相電圧に相当する第1抵抗器R1の両端電圧を検出する電圧検出部53bと、U相コイル21に流れる相電流を検出する電流検出部53aとを備える。以下、第1抵抗器R1の両端電圧を相
電圧と呼ぶ。そして、電力検出回路53は、電圧検出部53b及び電流検出部53aにて検出された相電圧及び相電流の位相差より力率を算出し、一相の電力を算出する。そして、電力検出回路53は、当該一相の電力を3倍することにより、三相モータ2に供給される電力を算出し、算出して得た電力を示す情報を制御部51へ出力する。三相モータ2に供給される電力は下記式で表される。
P=3×Ve×Ie×cosθ・・・(1)
但し、
Ve:相電圧の実効値
Ie:相電流の実効値
cosθ:力率
θ:相電圧と、相電流の位相差
【0051】
振動検出部54は、例えば3軸加速度センサであり、各軸方向の加速度を検出して、各軸方向の加速度を示す情報を制御部51へ出力する。振動検出部54は、三相モータ2のケーシングに配されている。
なお、3軸加速度センサを備える構成は振動検出部54の一例であり、公知の振動センサを用いることができる。また、振動検出部54に設置箇所は必ずしも三相モータ2のケーシングに限定されるものでは無く、三相モータ2と、減速機3との連結箇所に設けても良い。また、減速機3に振動検出部54を設けても良い。更に言うまでもなく、複数の振動検出部54をギアモータ1の複数箇所に設けても良い。
【0052】
温度検出部55は、例えば、サーミスタを備える。温度検出部55のサーミスタは、例えば、三相モータ2のケーシングに配されている。温度検出部55は、サーミスタの両端電圧を検出し、検出された両端電圧を温度に換算し、温度を示す情報を制御部51へ出力する。
なお、サーミスタを備える構成は温度検出部55の一例であり、測温抵抗体、半導体温度センサ、熱電対等を用いて温度を検出する等、公知の温度センサを用いることができる。また、温度検出部55に設置箇所は必ずしも三相モータ2のケーシングに限定されるものでは無く、三相モータ2と、減速機3との連結箇所に設けても良い。また、減速機3に温度検出部55を設けても良い。更に言うまでもなく、複数の温度検出部55をギアモータ1の複数箇所に設けても良い。
【0053】
ログ記憶部56は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、電力検出回路53にて検出された相電圧、相電流、電力、振動検出部54にて検出された加速度、温度検出部55にて検出された温度等の時間的変化を示す情報を記憶する。制御部51は、使用者によって設定されたサンプリング間隔で、電力検出回路53から間欠的に相電圧、相電流及び電力の情報を取得し、取得された直近の所定時間における各情報を記憶する。例えば、制御部51は、20個の時点で、相電圧、相電流及び電力の情報を取得してログ記憶部56に記憶させる。同様にして、制御部51は、振動検出部54及び温度検出部55から間欠的に、加速度及び温度の情報を取得し、取得された直近の所定時間における各情報を記憶する。
【0054】
閾値記憶部57は、ログ記憶部56と同様のEEPROM等の不揮発性のメモリであり、三相モータ2又は被駆動装置における負荷の異常を検出するための各種閾値を記憶している。例えば、負荷の上限を規定する電力上限閾値、負荷の下限を規定する電力下限閾値、負荷の異常を振動で検知するための振動閾値、負荷の異常を温度で検知するための温度閾値、検出値のサンプリング間隔等の情報を記憶する。また、閾値記憶部57は、各閾値の組み合わせを複数組み記憶させることができる。
【0055】
閾値設定スイッチ58は、閾値記憶部57が記憶する閾値の組み合わせを適宜変更するためのスイッチである。例えば、閾値設定スイッチ58はロータリスイッチであり、使用者は、閾値設定スイッチ58を切り換え、設定値「0」、「1」、「2」、「3」等を選択することができる。閾値記憶部57は、各設定値「0」、「1」、「2」、「3」に対応付けて、上記閾値の組み合わせを記憶している。
【0056】
通信部59は、例えば外部装置、例えばコンピュータと通信を行うためのUSBポートを有する。制御部51は、通信部59を介して外部装置と情報を送受信する。例えば、制御部51は、コンピュータにて入力された各種閾値及び設定値の組み合わせを示す情報を、通信部59を介して受信し、当該設定値及び閾値を対応付けて閾値記憶部57に記憶させることができる。
また、制御部51は、ログ記憶部56が記憶する電力、相電圧、相電流、振動、温度等の検出値のログ情報を、通信部59を介して外部のコンピュータへ送信する。
更に、制御部51は、負荷の異常を検知した場合、通信部59を介して外部へ、負荷の異常を示す信号を出力するように構成しても良い。
【0057】
図5は軽負荷領域におけるモータ負荷と、電流及び電力との関係を示すグラフである。横軸はモータ負荷を示し、縦軸は三相モータ2に供給される電力又は電流の検出値を示す。太線は電力を示し、破線は電流を示している。「負荷変化」の両矢印で示された軽負荷の領域においては、モータ負荷の変化量に対する電流の変化量は小さく、当該領域における負荷の異常を電流検出で検知することは困難である。一方、軽負荷の領域においても、モータ負荷の変化量に対する電力の変化量は大きく、電力を監視することによって当該領域における負荷の異常を検知することが可能である。
【0058】
図6は電源電圧変動時におけるモータ負荷と、電流及び電力との関係を示すグラフである。横軸はモータ負荷を示し、縦軸は三相モータ2に供給される電力又は電流の検出値を示す。太線は電力を示し、破線及び一点鎖線は電流を示している。
図6に示すように交流電源6の電圧が変化すると、電流も変化する。破線は電圧200Vのときの電流、一点鎖線は電圧が220Vのときの電流である。このように電源電圧が変化する状況においては、電流も変化してしまうため、電流検出ではモータ負荷を正確に検知することができない。一方、電力については、交流電源6の電圧が変化しても大きな影響を受けることは無く、安定的にモータ負荷を検知することができる。
【0059】
以上の通り、本実施形態に係る過負荷保護回路5は、電力を検出することによって、電源電圧の変動に依存せず、また軽負荷領域であっても、三相モータ2又は被駆動装置に係る負荷の異常を精度良く検知することが可能となる。
制御部51は、電力検出回路53にて検出された電力と、電力上限閾値及び電力下限閾値とを比較することによって、負荷の異常を検知する。具体的には、電力検出回路53にて検出された電力が電力上限閾値を超えている場合、電力下限閾値未満である場合、負荷に異常があると判定する。
また、制御部51は、電力による負荷の異常判定に加えて、振動検出部54にて検出された振動が振動閾値以上である場合、又は温度検出部55にて検出された温度が振動閾値以上である場合、負荷に異常があると判定する。なお、制御部51は、検出された電力、振動及び温度を用いて、負荷の異常を総合的に判定しても良い。例えば、制御部51は、電力、振動及び温度と、各閾値との差分を算出し、負荷の異常を示す指標値として当該差分の平均又は加重平均を算出し、指標値を所定の閾値と比較することによって、負荷の異常を判定しても良い。負荷の異常が検知された場合、制御部51は、開信号を遮断器52へ出力することによって、三相モータ2への給電を遮断する。また、負荷の異常を示す信号を通信部59にて外部へ出力する。
【0060】
図7は閾値設定画面7の一例を示す模式図、
図8は過負荷検出時における電力値のログを示す概念図である。制御部51は、通信部59を介して外部のコンピュータと情報を送受信することができる。例えば、制御部51は、コンピュータ側のブラウザに表示可能な構造化データを送信することによって、閾値設定を行うための設定画面7を表示させ、各種閾値、電力のサンプリング間隔等の設定を受け付けることができる。また、制御部51は、コンピュータからの要求に応じて、過負荷検知時のログ情報を読み出し、読み出したログ情報を、通信部59を介してコンピュータへ送信することによって、過負荷発生時の電力変化のグラフ等をブラウザに表示させることができる。
【0061】
設定画面7はブラウザ画像である。設定画面7は、閾値入力部71、波形表示部72、表示切替ボタン73及び波形選択ボタン74を含む。
閾値入力部71は、ブラウザ画面の左側に表示されており、過負荷を検知するための電力上限閾値を受け付けるための入力フィールド「過電力設定0」〜「過電力設定3」、過負荷検出を行わないモータ始動時の時間を受け付けるための入力フィールド「スタートタイム0」〜「スタートタイム3」、過負荷と判断される閾値超過の継続期間を受け付けるための入力フィールド「ショックタイム0」〜「ショックタイム3」、温度閾値を受け付けるための入力フィールド「過熱設定」、振動閾値を受け付けるための入力フィールド「過衝撃設定」を有する。使用者は、各入力フィールドの各種閾値を入力することによって、各閾値を過負荷保護回路5に設定することができる。なお、「0」〜「3」の数値は、ロータリスイッチである閾値設定スイッチ58の設定値に対応する数値である。なお、
図7では、電力上限閾値のみを受け付けているが、同様にして電力下限値も受け付けることができる。
【0062】
波形表示部72は、過負荷が検出された直前の電力値のログを波形で表示する表示部である。具体的には、
図8に示すように、時間を示す横軸と、電力値を示す縦軸と、過電力であるか否かを判定するための閾値を示す破線、電力値の波形が表示される。波形上に表示されている丸印は、サンプリングタイミングで検出された電力値を示している。
また、波形表示部72は、過負荷検出時における相電圧、相電流、温度、振動加速度の波形を表示することもできる。
【0063】
また、設定画面7の右側には波形表示部72に表示する電力波形をリアルタイムで検出されている検出値波形と、ログとして記憶された過負荷発生時点直前における検出値波形とを切り換えるための表示切替ボタン73が表示される。当該表示切替ボタン73が操作された場合、制御部51は、操作に応じてリアルタイムで検出されている検出値、又はログ記憶部56が記憶する検出値の情報のいずれかを通信部59を介してコンピュータへ送信する。
また、設定画面7の右側には、波形表示部72に表示する波形として、表示する内容を選択するための波形選択ボタン74、例えば「電圧」ボタン、「電流」ボタン、「電力」ボタン、「温度」ボタン、「加速度X軸」ボタン、「加速度Y軸」ボタン、「加速度Z軸」ボタンが表示される。制御部51は、選択されたボタンに応じて、ログ記憶部56が記憶する電圧、電流、電力、温度、各加速度のログ情報を、通信部59を介してコンピュータへ送信する。
【0064】
このように構成されたギアモータ1によれば、電源電圧の変動に依存せず、また軽負荷領域であっても、三相モータ2又は被駆動装置に係る負荷の異常を精度良く検知することができる。
また、電力検出回路53及び制御部51は端子箱4に収容されているため、被駆動装置との干渉が問題となる追加の回路装置を外部に配置する必要は無く、ギアモータ1を小型に構成することができる。
【0065】
更に、大型部品であるトランスを備えない小型な回路構成で、三相モータ2に供給される電力を算出することができる。従って、電力検出回路53を無理なく端子箱4に収容することができる。
【0066】
更にまた、電力検出によって負荷の異常が検知された場合、遮断器52を開状態とし、三相モータ2への給電を遮断することができる。
【0067】
更にまた、電力検出によって負荷の異常が検知された場合、外部へ負荷の異常を示す信号を出力することができる。
【0068】
更にまた、三相モータ2に供給される電力と共に、ギアモータ1の振動及び温度を検出することによって、負荷の異常をより精度良く検知することができ、負荷の異常が検知された場合、三相モータ2への給電を遮断することができる。
特に、三相モータ2、減速機3、又は三相モータ2及び減速機3の連結箇所における振動及び温度の異常を検出し、負荷の異常を検知することができる。
【0069】
更にまた、閾値設定スイッチ58にて、負荷の異常を検知するための閾値を設定することができる。
【0070】
更にまた、使用者は、通信部59を介して閾値設定スイッチ58の状態に対応する各設定値に、負荷の異常を検知するための閾値を割り当てることができ、閾値設定スイッチ58を切り換えて所望の設定値を選択することによって、閾値を簡単に切り換えることができる。
【0071】
更にまた、電力検出回路53にて間欠的に検出された直近の複数の電圧、電流、電力、振動、温度等のログ情報をログ記憶部56に記憶しており、使用者は負荷の異常発生時直前の電力、振動、温度等の状態を確認することができる。特に、電力のログ情報は負荷異常の原因を特定するための重要な情報である。
【0072】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。