(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642613
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】押出プレス装置のエンドプラテン
(51)【国際特許分類】
B21C 25/10 20060101AFI20200127BHJP
B21C 25/02 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
B21C25/10
B21C25/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-77302(P2018-77302)
(22)【出願日】2018年4月13日
(65)【公開番号】特開2019-181535(P2019-181535A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年7月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】山本 武治
【審査官】
藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−258309(JP,A)
【文献】
特開平05−138233(JP,A)
【文献】
特開平10−314833(JP,A)
【文献】
特開平06−015347(JP,A)
【文献】
特開2012−006052(JP,A)
【文献】
特開2016−147274(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0186319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C23/00−35/06
B30B 11/00−11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスを介して、押出方向の荷重を作用させるプレッシャーリングを備える、押出プレス装置のエンドプラテンであって、
押出方向と直交し、前記プレッシャーリングが固定される取付面と、前記ダイスから後方に押し出される製品を前記エンドプラテンから排出させる貫通孔が形成された中空部材を備え、
前記ダイス及び、前記取付面に取り付けられた前記プレッシャーリングを介して、押出工程中に押出方向に作用する荷重以上の予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させる
ことを特徴とする、押出プレス装置のエンドプラテン。
【請求項2】
前記中空部材が、前記取付面が形成される側の大径部と、前記エンドプラテンの後方側端部に第1ねじ加工部が形成された側の小径部と、該大径部及び該小径部を連続させる受圧面と、から構成され、
前記小径部に形成された前記第1ねじ加工部と螺合する、第2ねじ加工部が形成された締結部材を前記エンドプラテンの後方側からねじ込むことにより、前記予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させる
ことを特徴とする、請求項1に記載の押出プレス装置のエンドプラテン。
【請求項3】
前記小径部の少なくとも一部を、前記エンドプラテンの後方側から突出させると共に、前記第1ねじ加工部が、前記エンドプラテンの後方側から突出させた部位を含む、前記エンドプラテンの後方側端部の外周面に加工された雄ねじ部であって、
前記第2ねじ加工部が、前記締結部材の内周面に形成された雌ねじ部である
ことを特徴とする、請求項2に記載の押出プレス装置のエンドプラテン。
【請求項4】
前記予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させることにより、前記エンドプラテンの、前記受圧面及び前記締結部材間の部位に、押出方向の圧縮応力を発生させる
ことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の押出プレス装置のエンドプラテン。
【請求項5】
前記予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させた状態において、少なくとも、前記中空部材の前記大径部の外周面と、該大径部が配置される前記エンドプラテンと、が接触しない
ことを特徴とする、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の押出プレス装置のエンドプラテン。
【請求項6】
前記中空部材が、前記エンドプラテンと縦弾性係数が同じ金属、または、前記エンドプラテンよりも縦弾性係数の大きな金属からなる
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の押出プレス装置のエンドプラテン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金等の金属押出成形に用いられる押出プレス装置のエンドプラテンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属材料、例えば、アルミニウム又はその合金材料等による押出材(ビレット)を押出成形する一般的な押出プレス装置100は、
図1に示すように、油圧で前進駆動させるメインシリンダ12Aのメインラム12Bの先端部に、メインクロスヘッド22を介して押出ステム24が取り付けられている。押出プレス装置100により押出材(以後:ビレット20)を押出成形する場合、図示しない保持手段により、エンドプラテン10側にプレッシャーリング10Bを介して配置されたダイス16に、コンテナシリンダ28でコンテナ18(コンテナホルダ19)を押し付ける。そして、押出ステム24を前進させて、コンテナ18内に収納されたビレット20をダイス16に押圧させた後(アプセット工程)、メインラム12Aをさらに前進させることにより、ビレット20を押出ステム24によりダイス16に押圧させて、ダイス16から後方へ、所定の製品を連続して押出成形する(押出工程)。尚、メインクロスヘッド22には、サイドシリンダ26のシリンダロッドも固定され、サイドシリンダ26は押出工程時(メインクロスヘッド22の前進時)及びメインクロスヘッド22の後退時に駆動される。
【0003】
一方、メインシリンダ12Aは、エンドプラテン10と対向するように配置されたメインシリンダハウジング12の略中央に配置され、サイドシリンダ26は、メインシリンダハウジング12のメインシリンダ12Aの周囲に配置されている。そして、エンドプラテン10は、タイロッドナット13及びタイロッド14によりこのメインシリンダハウジング12と連結されている。タイロッドナット13及びタイロッド14はエンドプラテン10の四隅及び対応するメインシリンダハウジング12の四隅を連結しており、押出工程中に、エンドプラテン10にはダイス16(プレッシャーリング10B)を介して、また、メインシリンダハウジング12にはメインシリンダ12Aを介して、タイロッド14の大径部を構成するタイロッドナット13により、エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12を互いに離間させる方向への移動を拘束すると共に、タイロッド14により、これらを互いに離間させる方向に作用する力(押圧作用力の反力)に抗するように構成されている。
【0004】
このように、押出作用力の反力がエンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12に作用した場合にエンドプラテン10に発生する撓み(たわみ)について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、押出作用力の反力が作用した場合にエンドプラテンに発生する撓みを説明するための概略平面図(一部断面含む)である。
図2(a)が、押出作用力やその反力、またその反力に抗する抗力を図示した概略平面図であり、
図2(b)が、理解を容易にするために、エンドプラテンの撓みを誇張して図示した概略平面図である。
【0005】
図2(a)に示すように、押出作用力Fの反力fは、エンドプラテン10の略中央部にダイス16(プレッシャーリング10B)を介して押出方向(
図2(a)左側)に作用する。一方、この反力fに対しては、エンドプラテン10の略中央部から離間した四隅に配置されたタイロッド14に発生する、反力fと逆向きの抗力f’によりに抗する。具体的には、タイロッド14は押出方向に弾性域内で変形(伸張)することによりこの反力fに抗する。その結果、エンドプラテン10には、エンドプラテン10の略中央部を押出方向(
図2(a)左側)に突出させるように弯曲させようとする曲げモーメントMが発生する。しかしながら、その後方に製品を連続して押出成形(排出)するために、後面(
図2(a)左側)に押出用開口部10Aが形成されているエンドプラテン10は、該押出用開口部10A近傍に、曲げモーメントMに抗する十分な剛性を確保することが物理的に困難であるため、押出工程において、
図2(b)に示すような撓み(弯曲変形)が発生する。
【0006】
尚、
図2は概略平面図であるが、タイロッド14はエンドプラテン10の四隅に配置されているため、側面からの矢視においても平面図と同様にエンドプラテン10の撓みが発生する。すなわち、3次元的にはエンドプラテン10の略中央部が押出方向に突出するような撓みとなる。
【0007】
また、押出工程における押出作用力Fによるこのようなエンドプラテン10の撓みは、
図2(b)に示すように、エンドプラテン10に固定されているプレッシャーリング10Bを変形させる。また、プレッシャーリング10Bを介してエンドプラテン10に配置され、コンテナ18によりエンドプラテン10側(プレッシャーリング10B)に押圧されているダイス16をも変形させる。
【0008】
ここで、押出工程中にエンドプラテン10の撓みが略一定に維持されれば、プレッシャーリング10Bやダイス16の変形も略一定に維持される。そのため、押出工程中のエンドプラテン10の撓みやプレッシャーリング10Bの変形に起因するダイス16の変形を予め加味したダイス16を設計・製造することにより、所望する寸法精度で製品を押出成形することができるはずである。
【0009】
しかしながら、押出工程において所定の製品を連続して押出成形する場合、ビレット20に付与すべき押出作用力Fは、押出工程開始時が最も大きく、押出工程の進行に伴い徐々に減少する。これを、
図3を参照しながら説明する。
図3は、押出作用力Fの押出工程中の変動を示すグラフであって、横軸は、コンテナ18内のビレット20のビレット長Lで、原点が最大ビレット長Lmaxである。縦軸は押出作用力Fを示す。
【0010】
押出工程中、コンテナ18内に収納されたビレット20を押出ステム24によりダイス16に押圧させる場合、ビレット20に付与される押圧作用力Fによりビレット20がコンテナ18内で円周方向に塑性変形して、ビレット20の外周面が、ビレット20を収納するコンテナ18内周面に面接触する状態となる(アプセット工程)。そのため、押出工程中、ビレット20外周面と、ビレット20を収納するコンテナ18内周面との間に摩擦力Fbが発生する。その結果、押出ステム24によりビレット20に付与すべき押出作用力Fは、ビレット20を介してダイス16に作用する所要押出力Faと摩擦力Fbとの和、すなわち、F=Fa+Fbで表される。
【0011】
所要押出力Faは、上記摩擦力Fbが無い状態での、ビレット20をダイス16から押出成形する際のダイス16の押出抵抗力であって、押出工程中のビレット20の温度が変動しなければ押出工程中略均一である。一方、摩擦力Fbは、押出工程開始時、ビレット20及びコンテナ18との接触面積(ビレット20の押出方向のコンテナ18内のビレット長L)が一番大きな状態(最大ビレット長Lmax)が最も大きく(最大摩擦力Fbmax)、押出工程の進行に伴うビレット20及びコンテナ18との接触面積の減少に比例して減少し、押出完了時、ビレット20及びコンテナ18との接触面積が一番小さな状態(最小ビレット長Lmin)が最も小さい(最小摩擦力Fbmin)。そのため、
図3に示すように、押出工程開始時の押出作用力F(Fa+Fbmax)は、押出工程完了時にFa+Fbminまで減少する。
【0012】
このように、押出工程中の押出作用力Fが変動(減少)するため、押出工程中にエンドプラテン10の撓み(撓み量)が略一定に維持されることはなく、該撓み量は変動(減少)し、プレッシャーリング10Bやダイス16の変形(変形量)も変動することが一般的である。そのため、押出工程の開始から完了までの間、ダイス16から押出成形される製品の寸法が変動し、ダイス16の変形の変動の程度によっては、製品について所望する寸法精度を得ることが困難になるという問題がある。
【0013】
前述したような問題を鑑み、変動(減少)する押出作用力Fに起因するエンドプラテン10の撓み(撓み量)や該撓み量の変動を抑制する構成を備える押出プレス装置が開示されている。
【0014】
例えば、特許文献1には、押出時(押出工程時)の撓みを抑制することができるプレッシャーリングと、該プレッシャーリングを用いた押出機(押出プレス装置)が開示されている。具体的には、プレッシャーリングが外側部材と内側部材とを備える2重構造であり、外側部材が内側部材に焼き嵌めされている。そのため、「
図3(ロ)に矢印で示すように、内側方向に応力が内側部材29に掛かっている。従って、
図3(イ)の矢印で示す荷重を受けても、図の左右方向に広がるような応力に対抗して、
図3(イ)の図の点線25の如き変形が抑制されるのである。(同特許文献1明細書段落[0010]、
図3他)」としている。すなわち、特許文献1は、プレッシャーリングの曲げ応力に対する剛性の向上で押出工程中のエンドプラテンの撓みに抗するものである。
【0015】
また、
図4に示すように、エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12を連結するタイロッド14に、予め所定の初期荷重(引張応力)を発生させるプリストレス構造の押出プレス装置が公知である。
図4(a)は、押出プレス装置の主要構成のみを図示した概略正面図及び概略側面図で、
図4(b)は
図4(a)の要部Aの拡大図である。
【0016】
このプリストレス構造においては、予め、タイロッド14にコンプレッションチューブ14Bを装着させた押出プレス装置において、メインシリンダ12A及びサイドシリンダ26を実際に駆動させて、エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12間に押出作用力Fの反力fを発生させる。この反力fは、押出プレス装置の仕様としての最大押出作用力(定格荷重)よりも大きい荷重(例えば定格荷重より10〜15%大きい)を作用させて発生させることが好ましいとされている。尚、
図4(a)において、説明に直接関係ない構成の図示は割愛している。
【0017】
先に説明したように、この反力fに対しては、エンドプラテン10の略中央部から離間した四隅に配置されたタイロッド14に発生する、反力fと逆向きの抗力f’によりに抗するため、タイロッド14は押出方向に弾性域内で、例えば、
図4(b)に示すように距離dだけ伸張(変形)する。この状態において、エンドプラテン10及びコンプレッションチューブ14B間にこの距離dを補い、タイロッド14の伸張状態を維持するためのスペーサブロック14Cを挿入する。スペーサブロック14Cは、一体化した際にタイロッド14よりも若干大きい貫通孔が構成される二分割の部材で、抗力f’による圧縮応力に抗する強度があれば、特に材質や形状等の制約はない。また、説明や
図4の理解を容易にするために、エンドプラテン10及びコンプレッションチューブ14B間にスペーサブロック14Cを挿入するとしたが、コンプレッションチューブ14B及びメインシリンダハウジング12間に挿入する場合もある。
【0018】
スペーサブロック14Cを挿入することにより、押出プレス装置に作用する押出作用力Fの反力fの有無によらず、タイロッド14の伸張状態が維持され、エンドプラテン10の、タイロッドナット13及びスペーサブロック14C間の部位には、反力fと逆向きの抗力f’と、エンドプラテン10を介してタイロッドナット13側に発生する、該抗力f’の反力であるf”により圧縮応力Cが発生する。その結果、タイロッド14により、エンドプラテン10が、メインシリンダハウジング12から離間する方向への移動を拘束されるだけの状態から、エンドプラテン10の四隅がタイロッド14と強固に固定された構造となる。言い換えれば、エンドプラテン10が、両端が自由端の両持ち梁から、両端が固定端の両持ち梁になり、押出工程中におけるエンドプラテン10の撓みが抑制されるとされている。
【0019】
また、
図2(a)に示す曲げモーメントMに起因するエンドプラテン10の撓み対して、このエンドプラテン10の四隅に発生した圧縮応力Cはエンドプラテン10の中央部に対して、曲げモーメントMと真逆のモーメント(所謂、バックモーメント)としてエンドプラテン10に作用するため、
図4に示すようなプリストレス構造が採用された押出プレス装置のエンドプラテン10は、プリストレス構造が採用されていないエンドプラテン10に対して撓みが抑制されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平10−258309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献1に開示されているようなプレッシャーリングは、通常のプレッシャーリングに対して、自身の内部に発生させる応力により、エンドプラテン10の撓みに伴う
図2(b)、あるいは、特許文献1の
図3(イ)に示すようなプレッシャーリングの変形を抑制できるとしている。しかしながら、全体に、曲げモーメントMが作用するエンドプラテン10の大きさ(面積)に対して小さく、また、エンドプラテン10の略中央部にのみ配置されるプレッシャーリングの剛性向上だけで、エンドプラテン10の撓みに抗するには限界がある。
【0022】
一方、
図4に示すような、公知のプリストレス構造の押出プレス装置においても、タイロッド14及びエンドプラテン10の連結を強固なものにすることにより、また、エンドプラテン10の四隅に発生するバックモーメントにより、エンドプラテン10の撓み自体を抑制できるとしている。そのため、押出工程中のエンドプラテン10の撓み(撓み量)の変動や、これに起因するダイス16の変形(変形量)の変動を抑制することが期待できる。しかしながら、エンドプラテン10の撓み自体が無くなる訳ではないので、
図2(b)に示すようなプレッシャーリング10Bやダイス16の変形(変形量)の変動を、製品について高い寸法精度を得るために十分な程度まで抑制することは難しい。
【0023】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、押出工程におけるエンドプラテンの撓みを抑制すると共に、エンドプラテンの撓みがダイスに影響することを抑制することができる、押出プレス装置のエンドプラテンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の上記目的は、ダイスを介して、押出方向の荷重を作用させるプレッシャーリングを備える、押出プレス装置のエンドプラテンであって、
押出方向と直交し、前記プレッシャーリングが固定される取付面と、前記ダイスから後方に押し出される製品を前記エンドプラテンから排出させる貫通孔が形成された中空部材を備え、
前記ダイス及び、前記取付面に取り付けられた前記プレッシャーリングを介して、押出工程中に押出方向に作用する荷重以上の予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、
前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させる
ことを特徴とする、押出プレス装置のエンドプラテンによって達成される。
【0025】
また、本発明に係る、押出プレス装置のエンドプラテンにおいては、前記中空部材が、前記取付面が形成される側の大径部と、前記エンドプラテンの後方側端部に第1ねじ加工部が形成された側の小径部と、該大径部及び該小径部を連続させる受圧面と、から構成され、
前記小径部に形成された前記第1ねじ加工部と螺合する、第2ねじ加工部が形成された締結部材を前記エンドプラテンの後方側からねじ込むことにより、前記予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明に係る、押出プレス装置のエンドプラテンにおいては、前記小径部の少なくとも一部を、前記エンドプラテンの後方側から突出させると共に、前記第1ねじ加工部が、前記エンドプラテンの後方側から突出させた部位を含む、前記エンドプラテンの後方側端部の外周面に加工された雄ねじ部であって、
前記第2ねじ加工部が、前記締結部材の内周面に形成された雌ねじ部であっても良い。
【0027】
一方、本発明に係る、押出プレス装置のエンドプラテンにおいては、前記予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させることにより、前記エンドプラテンの、前記受圧面及び前記締結部材間の部位に、押出方向の圧縮応力を発生させることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る、押出プレス装置のエンドプラテンにおいては、前記予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記中空部材を前記エンドプラテンの略中央内部に配置させた状態において、少なくとも、前記中空部材の前記大径部の外周面と、該大径部が配置される前記エンドプラテンと、が接触しないことが好ましく、さらに、前記中空部材が、前記エンドプラテンと縦弾性係数
が同じ金属、または、前記エンドプラテンよりも縦弾性係数の大きな金属からなっていても良い
。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る、押出プレス装置のエンドプラテンは、ダイスを介して、押出方向の荷重を作用させるプレッシャーリングを備える、押出プレス装置のエンドプラテンであって、
押出方向と直交し、前記プレッシャーリングが固定される取付面と、前記ダイスから後方に押し出される製品を前記エンドプラテンから排出させる貫通孔が形成された中空部材を備え、
前記ダイス及び、前記取付面に取り付けられた前記プレッシャーリングを介して、押出工程中に押出方向に作用する荷重以上の予備荷重により、前記中空部材に、予め押出方向に引張応力を発生させた状態で、前記エンドプラテンの略中央内部に配置させるため、押出工程におけるエンドプラテンの撓みを抑制すると共に、エンドプラテンの撓みがダイスに影響することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】エンドプラテンにプレッシャーリングを介してダイスが配置される一般的な押出プレス装置を説明するための概略平面図(一部断面含む)である。
【
図2】押出作用力の反力が作用した場合にエンドプラテンに発生する撓み(たわみ)を説明するための概略平面図(一部断面含む)である。
【
図3】押出作用力Fの押出工程中の変動を示すグラフである。
【
図4】タイロッドに所定の初期荷重(引張応力)を発生させるプリストレス構造の押出プレス装置を説明する概略正面図及び概略側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る、押出プレス装置のエンドプラテンの概略平面図(一部断面含む)である。
【
図6】第1実施形態に係る、押出プレス装置のエンドプラテンの、別の形態を示す概略平面図(一部断面含む)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0032】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る、押出プレス装置のエンドプラテンについて、
図5を参照しながら説明する。
図5は、第1実施形態に係る、押出プレス装置のエンドプラテンの概略平面図(一部断面含む)である。尚、第1実施形態に係る押出プレス装置は、
図1に示す押出プレス装置100と、エンドプラテン110においてのみ相違する。そのため、第1実施形態に係る押出プレス装置については説明を割愛し、エンドプラテン110及び関連構成についてのみ説明する。
図5(a)は、エンドプラテン110及びその関連構成を示し、
図5(b)は、エンドプラテン110に撓みが発生した状態の関連構成要部を示す。
【0033】
図5(a)に示すように、エンドプラテン110は、押出方向と直交し、プレッシャーリング10Bが固定される取付面130Aと、ダイス16から後方へ押し出される製品をエンドプラテン110から排出させる貫通孔130Bが形成された中空部材130を備える。中空部材130は、ダイス16及び、取付面130Aに図示しないボルト等で取り付けられたプレッシャーリング10Bを介して、押出工程中に押出方向に作用する荷重以上の予備荷重MFにより、中空部材130に、予め押出方向に引張応力PFを発生させた状態で、エンドプラテン110の略中央内部に配置されている。
【0034】
また、中空部材130は、取付面130Aが形成される側の大径部130Cと、エンドプラテン110の後方側端部に第1ねじ加工部130Eが形成された側の小径部130Dと、大径部130C及び小径部130Dを連続させる受圧面130Fと、から構成されている。受圧面130Fと、該面と接触するエンドプラテン110側の面は、押出方向に直交するように図示されているが、大径部130Cから小径部130Dへと所定の角度で連続するテーパ面であっても良い。
【0035】
そして、小径部130Dに形成された第1ねじ加工部130Eと螺合する、第2ねじ部140Eが形成された締結部材140をエンドプラテン110の後方側からねじ込むことにより、予備荷重MFにより、中空部材130に、予め押出方向に引張応力PFを発生させた状態で、エンドプラテン110の略中央内部に配置されている。
【0036】
第1実施形態においては、小径部130Dの少なくとも一部を、エンドプラテン110の後方側から突出させると共に、第1ねじ加工部130Eが、エンドプラテン110の後方側から突出させた部位を含む、エンドプラテン110の後方側端部の外周面に加工された雄ねじ部であって、第2ねじ加工部140Eが、締結部材140の内周面に形成された雌ねじ部である。
【0037】
一方、締結部材140は、エンドプラテン110の後方側から中空部材130の小径部130側にねじ込むことが可能であって、また、ダイス16から後方へ押し出される製品をエンドプラテン110から排出させる貫通孔130B’が形成されれば、
図6に示すように、中空部材130’の小径部130Dの内周面に加工された雌ねじ部と、締結部材140’の外周面に加工された雄ねじ部と、が螺合する形態であっても良く、さらに、図示はしていないが、中空部材の小径部の外周面に加工された雄ねじ部と、締結部材の内周面に加工された雌ねじ部と、が、螺合する形態であっても良い。
【0038】
ここで、予備荷重MFにより、中空部材130に、予め押出方向に引張応力PFを発生させた状態で、エンドプラテン110の略中央内部に配置させる方法について簡単に説明する。
【0039】
最初に、プレッシャーリング10Bを図示しないボルト等で中空部材130の取付面130Aに固定する。引き続き、プレッシャーリング10Bが固定された中空部材130をクレーンや、専用の挿入治具等でエンドプラテン110の開口部に挿入させる。中空部材130の小径部130Dの外径と該小径部130Dが挿入されるエンドプラテン110の開口部径とが、エンドプラテン110に対する中空部材130の位置決め基準を満たすクリアランスを有しており、エンドプラテン110に対する中空部材13の位置決めは特に必要ない。一方、中空部材130の大径部130Cの外径に対して、該大径部130Cが挿入されるエンドプラテン110の開口部径は大きく、所定のクリアランスSが確保される。この理由については後述する。この状態において、エンドプラテン110の後方側から突出させた中空部材130の小径部130D(第1ねじ加工部130E)に、締結部材140をクレーンや専用の挿入治具等で取り付け、落下が防止できる程度にねじ込む。
【0040】
次に、エンドプラテン110及びメインシリンダハウジング12間に、押出工程中に押出方向に作用する荷重(定格荷重)以上の予備荷重MFを作用させる。具体的には、ダイス16の代わりに、製品形状を模した開口部のないダミーダイス等を、図示しない保持手段によりプレッシャーリング10Bに配置させ、該ダミーダイスに、コンテナシリンダ28で、ビレット20を挿入していないコンテナ18を押し付ける。
【0041】
そして、メインシリンダ12A及びサイドシリンダ26を駆動させて、前端に押出治具等(図示なし)を取り付けた押出ステム24をコンテナ18内で前進させて、押出治具にてダミーダイスに直接押出作用力を作用させる。この時、ダミーダイスを介して、エンドプラテン110及びメインシリンダハウジング12間に作用させる押出作用力(予備荷重MF)が、押出工程中に押出方向に作用する荷重(定格荷重)以上になるよう、メインシリンダ12A及びサイドシリンダ26へ供給する作動油圧力を制御する。予備荷重MFは、定格荷重の105〜110%とすることが好ましい。
【0042】
定格荷重よりも大きなこの予備荷重MFを作用させることにより、エンドプラテン110は、中空部材130の受圧面130Fを介して、定格荷重での押出工程時よりもさらに押出方向に圧縮される。
【0043】
そして、この状態において、専用のねじ込み治具等で、締結部材140を、エンドプラテン110の後方側から中空部材130の小径部130側にねじ込む。中空部材130には予備荷重MFが押出方向に作用しているため、エンドプラテン110に対する中空部材130の相対的な回転運動を拘束させる周り止め手段は不要であり、また、受圧面130Fの押出方向への投影面積に含まれるエンドプラテン110が、定格荷重での押出工程時よりもさらに圧縮されている。そのため、大きなねじ込み力を掛けずとも、締結部材140を中空部材130の小径部130側にねじ込むことにより、予備荷重MFを開放すると、中空部材130の押出方向に、予備荷重MFに準じた引張応力PFを発生させることができる
【0044】
また、中空部材130の押出方向に発生する引張応力PFは、エンドプラテン110の、中空部材130の受圧面130F及び締結部材140間の部位に圧縮応力CFを発生させる。このような引張応力PFや圧縮応力CFは、定格荷重よりも大きな予備荷重MFに準じた応力であるため、押出工程中に押出方向に作用する荷重が、最大、定格荷重と略同じであったとしても、中空部材130内の引張応力PFや、中空部材130の受圧面130F及び締結部材140間の圧縮応力CFは減少しつつも維持される。そのため、タイロッド14の伸張やエンドプラテン110の撓みが発生しても、中空部材130及び締結部材140による、エンドプラテン110の略中央部の締結状態を維持することができる。
【0045】
このように、押出工程中、中空部材130及び締結部材140による、エンドプラテン110の略中央部の締結状態が維持されることにより、エンドプラテン110の後方側に製品を押し出す(排出)させるための開口部(貫通孔130B)が形成されていても、エンドプラテン110の撓みを発生させる曲げモーメントM(
図2(a))に対抗するための十分な剛性を確保することができ、エンドプラテン110の撓みを抑制することができる。
【0046】
また、上記により、エンドプラテン110の撓みを抑制することができるとしても、これを完全に無くすことは困難である。そのため、
図2(b)に示したエンドプラテン10と同様に、エンドプラテン110に撓みが発生する。これを
図5(b)に示す。2点鎖線が、撓みが発生する前のエンドエンドプラテン110の外形を示す。
図5(b)に示すように、中空部材130の大径部130Cの外径に対して、該大径部130Cが挿入されるエンドプラテン110の開口部径の所定のクリアランスSが、予備荷重MFによる撓みにより減少した場合でも、中空部材130の大径部130Cの外周面と、該大径部130Cが配置されるエンドプラテン110の開口部内周面と、が接触しないように構成される。
【0047】
この構成によれば、該エンドプラテン110の撓みがプレッシャーリング10Bの変形に直接影響しない。そのため、エンドプラテン110の撓みが発生し、押出作用力Fの変動(減少)により該撓み(撓み量)が変動した場合でも、プレッシャーリング10Bに図示しない保持手段により配置されているダイス16を変形させることがない。また、先に説明したように、中空部材130の小径部130Dの外径と該小径部130Dが挿入されるエンドプラテン110の開口部径との間には、エンドプラテン110に対する中空部材13の位置決め基準を満たすクリアランスしか有していないが、エンドプラテン110の撓みが発生する状態において、小径部130Dが挿入されるエンドプラテン110の開口部内周面の大部分は、中空部材130の小径部130Dの外周面から離間する方向に変形する。そのため、エンドプラテン110が撓む際に、このクリアランスの小ささがプレッシャーリング10Bの変形に影響する虞はない。尚、
図5(a)における所定のクリアランスSや、
図5(b)のエンドプラテン110の撓みは、説明の理解を容易にするために誇張して図示している。
【0048】
一方、押出工程中、中空部材130及び締結部材140による、エンドプラテン110の略中央部の締結状態が維持されることで確保される、エンドプラテン110の撓みを発生させる曲げモーメントMに対抗するための剛性は、中空部材130がエンドプラテン110と縦弾性係数が略同じ金属材料であっても構造上確保することが可能である。そのため、中空部材130をエンドプラテン110よりも縦弾性係数が大きな金属材料で製造することにより、エンドプラテン110の略中央部に発生させる圧縮応力CFに加えて、該中央部の強度自体を向上させて、この剛性をさらに高めることも可能である。
【0049】
このような、中空部材130及び締結部材140による、エンドプラテン110の略中央部の剛性向上、すなわち、定格荷重よりも大きな予備荷重MFに準じて、エンドプラテン110の略中央部に予め発生させた中空部材130内の引張応力と、中空部材130の受圧面130F及び締結部材140間の圧縮応力CFとによる、エンドプラテン110の略中央部の剛性向上により、押出工程中のエンドプラテン110の撓み(撓み量)を抑制することができる。
【0050】
また、このように抑制されたエンドプラテン110の撓み(撓み量)が、押出作用力Fの変動(減少)により、押出工程中に変動したとしても、中空部材130の大径部130Cの外周面と、該大径部130Cが配置されるエンドプラテン110の開口部内周面と、が接触しない構成により、所定のクリアランスSが減少しつつも確保されるため、エンドプラテン110の撓みがプレッシャーリング10Bの変形に直接影響しない。
【0051】
その結果、特許文献1に開示された押出プレス装置や、
図4を参照しながら説明した公知のプリストレス構造の押出プレス装置に対して、押出工程中の、プレッシャーリング10Bやダイス16の変形(変形量)やその変動を大幅に抑制することができ、押出工程の開始から完了までの間、ダイス16から押出成形される製品について、所望する寸法精度で得ることができる。
【0052】
以上、発明を実施するための形態について、第1実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で、色々な形で実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10/110 エンドプラテン、10A 押出用開口部、10B プレッシャーリング、13 タイロッドナット、14 タイロッド、14B コンプレッションチューブ、14C スペーサブロック、16 ダイス、130/130’ 中空部材、130A 取付面、130B/130B’ 貫通孔、130C 大径部、130D 小径部、130E 第1ねじ加工部、130F 受圧面、140/140’ 締結部材、140E 第2ねじ加工部、C/CF 圧縮応力、F 押出作用力、f/f” 反力、f’ 抗力、M 曲げモーメント、MF 予備荷重、PF 引張応力