(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空調対象空間(7a,7b)に形成された複数の吹出口(9a〜9h)に対してダクト(2)によって接続され、上記吹出口(9a〜9h)に送風する空気調和装置であって、
空気を取り入れる流入口(16)と上記ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に配置され、上記空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)と、
上記空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、
上記通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、
上記差圧計測器(53)の計測値に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調節する制御器(50)と、
上記空気流路に設けられて空気を浄化するエアフィルタ(21)とを備え、
上記通風部材(20)は、空気の温度を調節する熱交換器(22)であり、
通常運転時に、上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が設定差圧よりも小さいとき、上記送風ファン(25)の回転速度を上げる
ことを特徴とする空気調和装置。
空調対象空間(7a,7b)に形成された複数の吹出口(9a〜9h)に対してダクト(2)によって接続され、上記吹出口(9a〜9h)に送風する空気調和装置であって、
空気を取り入れる流入口(16)と上記ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に配置され、上記空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)と、
上記空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、
上記通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、
上記差圧計測器(53)の計測値に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調節する制御器(50)とを備え、
上記通風部材(20)は、空気を浄化するエアフィルタ(21)であり、
通常運転時に、上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が設定差圧よりも大きいとき、上記送風ファン(25)の回転速度を上げ、
上記制御器(50)は、リセット信号を受けると、上記送風ファン(25)の回転速度を上記通常運転が開始したときの回転速度に戻す
ことを特徴とする空気調和装置。
空調対象空間(7a,7b)に形成された複数の吹出口(9a〜9h)に対してダクト(2)によって接続され、上記吹出口(9a〜9h)に送風する空気調和装置であって、
空気を取り入れる流入口(16)と上記ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に配置され、上記空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)と、
上記空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、
上記通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、
上記差圧計測器(53)の計測値に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調節する制御器(50)とを備え、
上記ダクト(2)には、流量調整用の開度可変のダンパ(6a,6b)が配置され、
上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が第1所定時間内で第1所定値以上低下したとき、上記送風ファン(25)の回転速度を第1補正速度に引き下げる
ことを特徴とする空気調和装置。
空調対象空間(7a,7b)に形成された複数の吹出口(9a〜9h)に対してダクト(2)によって接続され、上記吹出口(9a〜9h)に送風する空気調和装置であって、
空気を取り入れる流入口(16)と上記ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に配置され、上記空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)と、
上記空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、
上記通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、
上記差圧計測器(53)の計測値に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調節する制御器(50)とを備え、
上記ダクト(2)には、流量調整用の開度可変のダンパ(8a〜8h)が配置され、
上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が第3所定時間内で第3所定値以上上昇したとき、上記送風ファン(25)の回転速度を下げる
ことを特徴とする空気調和装置。
空調対象空間(7a,7b)に形成された複数の吹出口(9a〜9h)に対してダクト(2)によって接続され、上記吹出口(9a〜9h)に送風する空気調和装置であって、
空気を取り入れる流入口(16)と上記ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に配置され、上記空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)と、
上記空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、
上記通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、
上記差圧計測器(53)の計測値に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調節する制御器(50)とを備え、
上記ダクト(2)には、流量調整用の開度可変のダンパ(8a〜8h)が配置され、
上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が第4所定時間内で第4所定値以上低下したとき、上記送風ファン(25)の回転速度を上げる
ことを特徴とする空気調和装置。
空気の流入口(16)と流出口(17)とが形成されたケーシング(10)と、上記ケーシング(10)の内部に配置され、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)とを備える空気調和装置(1)の送風ファンの回転速度調整方法であって、
上記空気流路に配置された通風部材(20)の前後の差圧に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調整する回転速度調整工程と、
上記回転速度調整工程の前に上記空気流路に上記通風部材(20)を設置する通風部材設置工程と、
上記回転速度調整工程の後に上記通風部材(20)を取り外す通風部材取り外し工程とを備える
ことを特徴とする送風ファンの回転速度調整方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された空気調和システムにおいて、差圧計測部は、空調機の外部に配置されている。このため、差圧計測部と空調機とを接続するための配線工事が必要となってしまう。
【0005】
本開示の目的は、空気調和装置において設置の際の工事の工数を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1
,第3,第4,第6,第7の
各態様は空調対象空間(7a,7b)に形成された複数の吹出口(9a〜9h)に対してダクト(2)によって接続され、上記吹出口(9a〜9h)に送風する空気調和装置(1)であって、空気を取り入れる流入口(16)と上記ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、上記ケーシング(10)内に配置され、上記空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)と、上記空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、上記通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、上記差圧計測器(53)の計測値に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調節する制御器(50)とを備えることを特徴とする。
【0007】
第1
,第3,第4,第6,第7の
各態様では、差圧計測器(53)は、ケーシング(10)内に配置された通風部材(20)の前後の差圧を計測する。このため、空気調和装置(1)の外側で、制御器(50)と差圧計測器(53)とを接続するための工事が不要になる。したがって、空気調和装置(1)の設置の際の工事の工数を抑制することができる。
【0008】
第3の態様は、
上記の構成に加えて、上記通風部材(20)は、空気を浄化するエアフィルタ(21)であることを特徴とする。
【0009】
第3の態様では、エアフィルタ(21)は、もともと空気調和装置(1)に設けられている。このため、通風部材(20)を構成するために別途特別な部材を用意する必要がなくなる。
【0010】
第1の態様は、
上記の構成に加えて、上記通風部材(20)は、空気の温度を調節する熱交換器(22)であることを特徴とする。
【0011】
第1の態様では、熱交換器(22)は、もともと空気調和装置(1)に設けられている。このため、通風部材(20)を構成するために別途特別な部材を用意する必要がなくなる。
【0012】
第3の態様は、
上記の構成に加えて、通常運転時に、上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が設定差圧よりも大きいとき、上記送風ファン(25)の回転速度を上げることを特徴とする。
【0013】
第3の態様では、例えば、エアフィルタ(21)に異物が付着してエアフィルタ(21)の前後の差圧が大きくなったときに、送風ファン(25)の回転速度を上げることができる。このため、流出口(17)から吹き出る風量が不足することを抑制できる。
【0014】
第1の態様は、
上記の構成に加えて、上記空気流路に空気を浄化するエアフィルタ(21)を備え、通常運転時に、上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が設定差圧よりも小さいとき、上記送風ファン(25)の回転速度を上げることを特徴とする。
【0015】
第1の態様では、例えば、エアフィルタ(21)に異物が付着して熱交換器(22)に流れる風量が減少したときに、送風ファン(25)の回転速度を上げることができる。このため、流出口(17)から吹き出る風量が不足することを抑制できる。
【0016】
第2の態様は、
第1の態様において、上記制御器(50)は、リセット信号を受けると、上記送風ファン(25)の回転速度を上記通常運転が開始したときの回転速度に戻すことを特徴とする。
【0017】
第3の態様は、上記の構成に加えて、上記制御器(50)は、リセット信号を受けると、上記送風ファン(25)の回転速度を上記通常運転が開始したときの回転速度に戻すことを特徴とする。
【0018】
第2,第3の
各態様では、作業者がリセット信号を送信することで、回転速度が上げられた送風ファン(25)をもとの回転速度に戻すことができる。
【0019】
本開示の
第4の態様は、
上記の構成に加えて、上記ダクト(2)には、流量調整用の開度可変のダンパ(6a,6b)が配置され、上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が第1所定時間内で第1所定値以上低下したとき、上記送風ファン(25)の回転速度を第1補正速度に引き下げることを特徴とする。
【0020】
第4の態様では、例えば、少なくとも1つのダンパ(6a,6b)が全閉したとき、短時間で差圧計速器の計測値が低下する。また、開かれたダンパ(6a,6b)に対応するダクト(2)を流れる空気の流量が増える。このため、開かれたダンパ(6a,6b)に対応するダクト(2)に対応する空調対象空間(7a,7b)への送風が過剰になることを抑制できる。
【0021】
本開示の
第5の態様は、
第4の態様において、上記制御器(50)は、上記送風ファン(25)が上記第1補正速度で回転し且つ上記差圧計測器(53)の計測値が第2所定時間内で第2所定値以上上昇したとき、上記送風ファン(25)の回転速度を上げることを特徴とする。
【0022】
第5の態様では、送風ファン(25)が第1補正速度で回転しているときに、例えば、全閉されたダンパ(6a)が元の開度に戻されると、短時間で差圧計速器の計測値が上昇する。このため、第1補正速度に引き下げられた送風ファン(25)の回転速度をもとの回転速度に戻すことができる。
【0023】
第6の態様は、
上記の構成に加えて、上記ダクト(2)には、流量調整用の開度可変のダンパ(8a〜8h)が配置され、上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が第3所定時間内で第3所定値以上上昇したとき、上記送風ファン(25)の回転速度を下げることを特徴とする。
【0024】
第6の態様では、例えば、ダンパ(8a〜8h)の開度が上げられると、ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で減少する。ダクト(2)内での風の抵抗が減少すると、流出口(17)から吹き出る風量が増加して、差圧計測器(53)での計測値が短時間で上昇する。このため、送風ファン(25)の回転速度を下げて、流出口(17)から吹き出る風量が過剰になることを抑制できる。
【0025】
第7の態様は、
上記の構成に加えて、上記ダクト(2)には、流量調整用の開度可変のダンパ(8a〜8h)が配置され、上記制御器(50)は、上記差圧計測器(53)の計測値が第4所定時間内で第4所定値以上低下したとき、上記送風ファン(25)の回転速度を上げることを特徴とする。
【0026】
第7の態様では、例えば、ダンパ(8a〜8h)の開度が下げられると、ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で増大する。ダクト(2)内での風の抵抗が増加すると、流出口(17)から吹き出る風量が減少して、短時間で差圧計測器(53)での計測値が低下する。このため、送風ファン(25)の回転速度を上げて、流出口(17)から吹き出る風量が不足することを抑制できる。
【0027】
本開示の
第8の態様は、第1
〜第7のいずれか一つの態様において、上記制御器(50)は、上記送風ファン(25)の回転速度を、上記差圧計測器(53)の計測値が設定差圧となるように調整する試運転を行うことを特徴とする。
【0028】
第8の態様では、試運転で差圧計測器(53)の計測値に基づいて送風ファン(25)の回転速度を調整するので、試運転における風量の調節が容易になる。
【0029】
本開示の
第9の態様は、
第8の態様において、上記差圧計測器(53)の計測値が上記設定差圧になったことを示す条件が成立すると上記試運転が終了し、上記試運転が終了したことを報知する報知部(57)を備えることを特徴とする。
【0030】
第9の態様では、試運転が終了したことを作業者に報知することができる。
【0031】
本開示の
第10の態様は、第1〜
第9のいずれか1つの態様において、上記空気流路に設けられて空気流の乱れを抑える整流部材(42a,42b)を備えることを特徴とする。
【0032】
第10の態様では、空気流路を流れる空気流の乱れを抑えて、差圧計測器(53)の計測値の変動を抑制できる。
【0033】
本開示の
第11の態様は、第1〜
第10のいずれか1つの態様において、上記差圧計測器(53)の計測値から換算した風量を表示する表示部(57)を備えることを特徴とする。
【0034】
第11の態様では、作業者が風量を容易に確認できる。
【0035】
本開示の
第12の態様は、空気の流入口(16)と流出口(17)とが形成されたケーシング(10)と、上記ケーシング(10)の内部に配置され、上記流入口(16)から上記流出口(17)に至る空気流路において上記流入口(16)から上記流出口(17)へ空気を送る送風ファン(25)とを備える空気調和装置の送風ファン(25)の回転速度調整方法であって、上記空気流路に配置された通風部材(20)の前後の差圧に基づいて上記送風ファン(25)の回転速度を調整する回転速度調整工程を備えることを特徴とする。
【0036】
第12の態様では、ケーシング(10)内に配置された通風部材(20)の前後の差圧を計測する。このため、空気調和装置(1)の外側で、制御器(50)と差圧計測器(53)とを接続するための工事が不要になる。したがって、空気調和装置(1)の設置の際の工事の工数を抑制することができる。
【0037】
本開示の
第12の態様は、
上記の構成に加えて、上記回転速度調整工程の前に上記空気流路に上記通風部材(20)を設置する通風部材設置工程と、上記回転速度調整工程の後に上記通風部材(20)を取り外す通風部材取り外し工程とを備えることを特徴とする。
【0038】
第12の態様では、通風部材(20)が必要な回転速度調整工程において通風部材(20)を設置して、回転速度調整工程の後に通風部材(20)を取り外すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態のエアハンドリングユニット(1)は、空気の温度調節と加湿とを行うように構成されている。エアハンドリングユニット(1)は、ビルなどの建物に設けられ、空気調和システム(3)の一部を構成している。
【0041】
−空気調和システムの構成−
図1に示すように、空気調和システム(3)は、エアハンドリングユニット(1)と吹出ダクト(2)と分配調整ダンパ(6a,6b)と風量調整ダンパ(8a〜8h)とを備えている。
【0042】
エアハンドリングユニット(1)は、空気調和装置を構成している。エアハンドリングユニット(1)は、例えば建物の機械室(4)に配置されている。エアハンドリングユニット(1)は、空調対象空間としての第1居室(7a)及び第2居室(7b)の天井にそれぞれ複数形成された吹出口(9a〜9h)に調和空気を送風する。エアハンドリングユニット(1)の構成については後述する。
【0043】
ダクトとしての吹出ダクト(2)は、機械室(4)から廊下(5)及び各居室(7a,7b)の天井裏の空間を通って各吹出口(9a〜9h)にまで延びている。吹出ダクト(2)は、エアハンドリングユニット(1)と各吹出口(9a〜9h)とを接続する。吹出ダクト(2)は、機械室(4)で分岐しており、機械室(4)から第1居室(7a)に向かって延びる第1吹出ダクト(2a)と、機械室(4)から第2居室(7b)に向かって延びる第2吹出ダクト(2b)とを備えている。
【0044】
分配調整ダンパ(6a,6b)は、開度可変の流量調整用のダンパである。分配調整ダンパ(6a,6b)は、第1分配調整ダンパ(6a)と第2分配調整ダンパ(6b)とからなる。第1分配調整ダンパ(6a)は、廊下(5)において第1吹出ダクト(2a)内に配置されている。第2分配調整ダンパ(6b)は、廊下(5)において第2吹出ダクト(2b)内に配置されている。第1分配調整ダンパ(6a)及び第2分配調整ダンパ(6b)の開度を調節することで、エアハンドリングユニット(1)から第1居室(7a)及び第2居室(7b)に供給される空気の割合を調節することができる。
【0045】
風量調整ダンパ(8a〜8h)は、各居室(7a,7b)において、それぞれの吹出口(9a〜9h)に対応して1つずつ設けられている。各風量調整ダンパ(8a〜8h)の開度を調節すると、その風量調整ダンパ(8a〜8h)に対応する吹出口(9a〜9h)から吹き出される空気の流量が変化する。
【0046】
−エアハンドリングユニットの構成−
図2に示すように、エアハンドリングユニット(1)は、中空直方体状のケーシング(10)を備えている。ケーシング(10)の内部空間は、第1隔壁板(11)と第2隔壁板(12)とによって、入口室(13)と中間室(14)と出口室(15)とに仕切られている。ケーシング(10)では、その長手方向の一端から他端へ向かって順に、入口室(13)と中間室(14)と出口室(15)とが配置されている。
【0047】
ケーシング(10)の天板は、入口室(13)に臨む部分に流入口(16)が形成され、出口室(15)に臨む部分に流出口(17)が形成されている。流入口(16)には、吸込ダクト(44)が接続されている。流出口(17)には、吹出ダクト(2)が接続されている。エアハンドリングユニット(1)は、吸込ダクト(44)から流入口(16)を通じてケーシング(10)の内部に空気を取り入れ、流出口(17)から吹出ダクト(2)へ空気を送る。ケーシング(10)は、流入口(16)から入口室(13)、中間室(14)、出口室(15)を順に通り流出口(17)に至る空気流路を形成する。ケーシング(10)の底板(34)は、中間室(14)に臨む部分が下方へ窪んだドレンパン(18)を構成している。
【0048】
第1隔壁板(11)には、第1開口(11a)が形成されている。入口室(13)は、この第1開口(11a)を介して中間室(14)に連通する。第2隔壁板(12)には、第2開口(12a)が形成されている。中間室(14)は、この第2開口(12a)を介して出口室(15)に連通する。
【0049】
エアハンドリングユニット(1)は、エアフィルタ(21)と、整流部材(42a,42b)と、熱交換器(22)と、加湿エレメント(23)と、ファンユニット(25)と、差圧計測器(53)と、制御器(50)と、インバータ(55)と、表示器(57)とを備えている。エアフィルタ(21)と入口側整流部材(42a)とは、入口室(13)に配置されている。熱交換器(22)と加湿エレメント(23)とは、中間室(14)に配置されている。中間室(14)において、加湿エレメント(23)は、熱交換器(22)の下流側に配置されている。ファンユニット(25)と出口側整流部材(42b)とは、出口室(15)に配置されている。
【0050】
エアフィルタ(21)は、空気流路に配置され、空気を通過させる。エアフィルタ(21)は、通風部材(20)を構成する。エアフィルタ(21)は、空気に含まれる塵埃等の異物を捕集して空気を浄化するための部材である。エアフィルタ(21)は、第1開口(11a)を覆うように設けられる。エアフィルタ(21)の上方には、リセットスイッチ(41)が配置されている。リセットスイッチ(41)は、例えばボタンスイッチからなる。作業者は、異物を捕集したエアフィルタ(21)を新しいエアフィルタ(21)に交換したとき、リセットスイッチ(41)を押す。リセットスイッチ(41)が押されると、リセットスイッチ(41)は、制御器(50)にリセット信号を送信する。
【0051】
入口側整流部材(42a)は、入口室(13)において、流入口(16)の下方且つ空気流路におけるエアフィルタ(21)の上流側に配置されている。入口側整流部材(42a)は、空気流の乱れを抑える。入口側整流部材(42a)は、ケーシング(10)の奥行き方向(
図2における紙面に垂直な方向)に互いに所定の間隔をおいて配置された複数の整流板によって構成される。
【0052】
熱交換器(22)は、空気流路に配置され、空気を通過させる。熱交換器(22)は、いわゆるクロスフィン型のフィンアンドチューブ熱交換器である。この熱交換器(22)は、図外の熱源機器から供給された熱媒水を空気と熱交換させて空気の温度を調節する。熱源機器は、例えば、冷凍サイクルを行って熱媒水を冷却し又は加熱するチラー装置によって構成される。
【0053】
加湿エレメント(23)は、供給された水を空気と接触させて気化させるための部材である。加湿エレメント(23)は、スポンジ状または不織布状の樹脂からなり、ある程度の量の水を保持でき、且つ空気が通過できるように構成されている。加湿エレメント(23)は、ケーシング(10)の奥行き方向(
図2における紙面に垂直な方向)に並んで複数配置されている。
【0054】
ファンユニット(25)は、送風ファンを構成する。ファンユニット(25)は、羽根車(26)と、羽根車(26)を駆動するACモータからなるファンモータ(27)とを備えている。ファンモータ(27)はインバータ(55)に接続されている。羽根車(26)は、その吸込口が第2開口(12a)を覆うように配置され、吸込口から吸い込んだ空気を周方向へ吹き出す。ファンユニット(25)は、空気流路において流入口(16)から流出口(17)へ空気を送る。
【0055】
出口側整流部材(42b)は、出口室(15)において、流出口(17)の下方且つ空気流路におけるファンユニット(25)の下流側に配置されている。出口側整流部材(42b)は、空気流の乱れを抑える。出口側整流部材(42b)は、ケーシング(10)の奥行き方向(
図2における紙面に垂直な方向)に互いに所定の間隔をおいて配置された複数の整流板によって構成される。
【0056】
差圧計測器(53)は、エアフィルタ(21)の前後の差圧を計測する。具体的に、差圧計測器(53)は、空気流路におけるエアフィルタ(21)の上流部の静圧と空気流路におけるエアフィルタ(21)の下流部の静圧との差を計測する。差圧計測器(53)は、上流側差圧取出管(54a)と下流側差圧取出管(54b)とを備えている。上流側差圧取出管(54a)は、先端がエアフィルタ(21)の上流側に位置している。下流側差圧取出管(54b)は、先端がエアフィルタ(21)の下流側に位置している。差圧計測器(53)は、制御器(50)と通信可能に構成されている。差圧計測器(53)は、計測値を制御器(50)に送信する。
【0057】
制御器(50)は、リセットスイッチ(41)、差圧計測器(53)、インバータ(55)、及び表示器(57)と通信可能に構成されている。制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値に基づいてインバータ(55)を介してファンモータ(27)の回転速度を調節する。また、制御器(50)は、後述する試運転が終了したことを判定する。
【0058】
表示器(57)は、表示部及び報知部を構成する。表示器(57)は、差圧計測器(53)の計測値から換算した風量を表示する。表示器(57)は、制御器(50)から試運転が終了したことを受信する。表示器(57)は、試運転が終了したことを表示して作業者にそのことを報知する。表示器(57)としては、例えばスマートフォン等の端末や制御器(50)に設けられるモニタ等種々の表示装置が挙げられる。
【0059】
−運転動作−
〈試運転〉
エアハンドリングユニット(1)が機械室(4)に設置された後、流出口(17)から吹き出す空気の流量を調節するための試運転が行われる。試運転では、各吹出口(9a〜9h)の吹出風量がそれぞれの設定値となるように、作業者が分配調整ダンパ(6a,6b)及び風量調整ダンパ(8a〜8h)の開度を調整する。ファンモータ(27)の回転速度が一定の状態で分配調整ダンパ(6a,6b)及び風量調整ダンパ(8a〜8h)の開度を変更すると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が変わり、エアハンドリングユニット(1)の吹出風量が変化し、その結果、通風部材(20)の前後の差圧が変化する。そこで、制御器(50)は、試運転において、通風部材(20)の前後の差圧が所定の目標範囲となるようにファンモータ(27)の回転速度を制御する。
【0060】
具体的に、試運転では、制御器(50)は、ファンモータ(27)の回転速度を、差圧計測器(53)の計測値が通風部材(20)に応じて予め定められた設定差圧となるようにインバータ(55)を介して調整する。言い換えると、制御器(50)は、通風部材(20)としてのエアフィルタ(21)の前後の差圧に基づいてファンモータ(27)の回転速度を調整する(回転速度調整工程)。差圧計測器(53)の計測値が設定差圧になったことを示す条件(例えば、差圧計測器(53)の計測値が所定の目標範囲に収まること)が成立すると試運転が正常に終了する。また、適したファンユニットが用いられていなかったこと等により、所定時間内に差圧計測器(53)の計測値を設定差圧に調節できなかった場合でも異常が発生しているとして試運転が終了する。制御器(50)は、試運転が終了した旨の信号を表示器(57)に送信して、表示器(57)は試運転が終了したことを表示する。制御器(50)は、試運転で調整されたファンモータ(27)の回転速度を記憶する。
【0061】
〈通常運転〉
通常運転では、制御器(50)は、ファンモータ(27)が試運転で調整された速度で回転するように、ファンモータ(27)の回転速度を固定して運転させる。
【0062】
〈エアフィルタ目詰まり時の制御〉
図3は、エアハンドリングユニット(1)において、エアフィルタ(21)が汚れた際の挙動を示すグラフである。
図3中の特性曲線D1は、エアフィルタ(21)が新品であるときの、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と差圧計測器(53)の計測値との関係を示す。
図3中の特性曲線D2は、エアフィルタ(21)に異物が付着しているときの流出口(17)から吹き出る風量(Q)と差圧計測器(53)の計測値との関係を示す。
図3中の曲線N1は、試運転で差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図3中の符号P1)となるように、調整されたファンモータ(27)の回転速度を示す。
図3中の曲線N2は、エアフィルタ(21)に異物が付着しているときに、流出口(17)から吹き出る風量がQ1になるファンモータ(27)の回転速度を示す。
【0063】
例えば、試運転が正常に終了した直後の通常運転では、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧となるように、ファンモータ(27)の回転速度を試運転で調整された
図3中の符号N1として運転する。このとき、流出口(17)から吹き出る風量は、
図3中の符号Q1になる。
【0064】
通常運転の運転時間が経過するにつれて、エアフィルタ(21)に異物が付着する。このため、流出口(17)から吹き出る風量は、
図3中の符号Q2に下がる。この結果、差圧計測器(53)の計測値が、設定差圧よりも大きくなり
図3中のP2になる。すなわち、図中のa点からb点に移行する。制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値(
図3中のP2)と設定差圧(
図3中のP1)との差に応じてファンモータ(27)の回転速度を
図3中のN1からN2に引き上げる。このとき、差圧計測器(53)の計測値と設定差圧との差が大きいほどファンモータ(27)の回転速度を上げる。このことにより、風量(Q)と差圧(P)との関係は、
図3中のb点からc点に移行して、流出口(17)から吹き出る風量は、
図3中の符号Q1に戻る。そうすることにより、エアフィルタ(21)に異物が付着しても、流出口(17)から吹き出る風量が減少することを抑制できる。
【0065】
上述したように、作業者は、異物を捕集したエアフィルタ(21)を新しいエアフィルタ(21)に交換したとき、リセットスイッチ(41)を押す。制御器(50)は、上述のリセット信号を受けると、ファンモータ(27)の回転速度を通常運転が開始したときの回転速度(
図3中の符号N1)に戻す。そうすることにより、エアフィルタ(21)を交換した後に、流出口(17)から吹き出る風量が多くなりすぎることを抑制できる。
【0066】
〈分配調整ダンパ全閉時の制御〉
図4は、エアハンドリングユニット(1)において、分配調整ダンパ(6a,6b)のうち例えば第1分配調整ダンパ(6a)が全閉したときの挙動を示すグラフである。
図4中の特性曲線Dは、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と差圧計測器(53)の計測値との関係を示す。
図4中の特性曲線R1は、第1分配調整ダンパ(6a)及び第2分配調整ダンパ(6b)が開かれた状態で、試運転が正常に終了したときまたはエアフィルタ(21)に異物が付着してファンモータ(27)の回転速度が引き上げられたときの、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と空気流路での風の抵抗と吹出ダクト(2)での風の抵抗との合計(全体抵抗)との関係を示す。
図4中の特性曲線R2は、特性曲線R1の状態から第1分配調整ダンパ(6a)が全閉したときの流出口(17)から吹き出る風量(Q)と全体抵抗との関係を示す。
図4中の曲線N1は、試運転で差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図4中の符号P1)となるように、調整されたファンモータ(27)の回転速度を示す。
図4中の曲線N2は、第1分配調整ダンパ(6a)が全閉したときに、流出口(17)から吹き出る風量がQ3になるファンモータ(27)の回転速度を示す。
【0067】
通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図4中の符号P1)となるように、ファンモータ(27)の回転速度を、試運転で調整された、またはエアフィルタ(21)に異物が付着して調節された
図4中の符号N1として運転する。このとき、全体抵抗は、
図4中の符号a’になる。
【0068】
例えば、第1居室(7a)が使用されなくなったとき等に、第1分配調整ダンパ(6a)が全閉されると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で増大する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が増大すると、流出口(17)から吹き出る風量がQ1からQ2に減少して、差圧計測器(53)での計測値がP1からP2に低下する(
図4中の符号b点に移動する)。そして、全体抵抗は、短時間でa’からb’に上昇する。
【0069】
制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第1所定時間として10秒以内でP1とP2との差に相当する値(第1所定値)以上低下したことを検知して、ファンモータ(27)の回転速度を
図4中のN2(第1補正速度)に引き下げる。このことにより、流出口(17)から吹き出る風量がQ2からQ3に減少して、差圧計測器(53)での計測値がP2からP3に低下する(
図4中の符号c点に移動する)。そして、全体抵抗は、b’からc’に低下する。このことにより、第2吹出ダクト(2b)を流れる空気の流量が増大して、第2居室(7b)への送風が過剰になることを抑制できる。
【0070】
また、全閉された第1分配調整ダンパ(6a)が元の開度に戻されると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で減少する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が減少すると、流出口(17)から吹き出る風量がQ3からQ4に増加して、差圧計測器(53)での計測値がP3からP4に増加する(
図4中の符号d点に移動する)。そして、全体抵抗は、短時間でc’からd’に低下する。
【0071】
制御器(50)は、ファンモータ(27)が、
図4中のN2(第1補正速度)で回転しているときに、差圧計測器(53)の計測値が第2所定時間として10秒以内でP3とP4との差に相当する値(第2所定値)以上上昇したことを検知して、ファンモータ(27)の回転速度を
図4中のN1に上げる。このことにより、流出口(17)から吹き出る風量がQ4からQ1に増加して、差圧計測器(53)での計測値がP4からP1に上昇する(
図4中の符号d点に移動する)。そして、全体抵抗は、d’からa’に上昇する。このことにより、第2吹出ダクト(2b)を流れる空気の流量をもとに戻すことができる。
【0072】
〈風量調整ダンパの開度上昇時の制御〉
図5は、エアハンドリングユニット(1)において、風量調整ダンパ(8a〜8h)のうち例えば第1風量調整ダンパ(8a)の開度が上昇したときの挙動を示すグラフである。
図5中の特性曲線Dは、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と差圧計測器(53)の計測値との関係を示す。
図5中の特性曲線R1は、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と各風量調整ダンパ(8a〜8h)が開かれた状態で試運転が正常に終了したとき、またはエアフィルタ(21)に異物が付着してファンモータ(27)の回転速度が引き上げられたときの全体抵抗との関係を示す。
図5中の特性曲線R2は、特性曲線R1の状態から第1風量調整ダンパ(8a)の開度が上昇したときの、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と全体抵抗との関係を示す。
図5中の曲線N1は、試運転で差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図5中の符号P1)となるように調整されたファンモータ(27)の回転速度を示す。
図5中の曲線N2は、第1風量調整ダンパ(8a)の開度が上昇したときに、流出口(17)から吹き出る風量をQ1に戻すファンモータ(27)の回転速度を示す。
【0073】
通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図5中の符号P1)となるように、ファンモータ(27)の回転速度を、試運転で調整された、またはエアフィルタ(21)に異物が付着して調節された
図5中の符号N1として運転する。このとき、全体抵抗は、
図5中の符号a’になる。
【0074】
例えば、第1居室(7a)への送風を増やすとき等に、第1風量調整ダンパ(8a)の開度が上げられると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で減少する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が減少すると、流出口(17)から吹き出る風量がQ1からQ2に増加して、差圧計測器(53)での計測値がP1からP2に上昇する(
図5中の符号b点に移動する)。そして、全体抵抗は、短時間でa’からb’に低下する。
【0075】
制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第3所定時間として10秒以内でP1とP2との差に相当する値(第3所定値)以上上昇したことを検知して、ファンモータ(27)の回転速度を
図5中のN2に引き下げる。このことにより、流出口(17)から吹き出る風量がQ2からQ1に減少して、差圧計測器(53)での計測値がP2からP1に低下する(
図5中の符号c点(a点と等しい)に移動する)。そして、全体抵抗は、b’からc’に低下する。このことにより、流出口(17)から吹き出る風量が過剰になることを抑制できる。
【0076】
〈風量調整ダンパの開度低下時の制御〉
図6は、エアハンドリングユニット(1)において、風量調整ダンパ(8a〜8h)のうち例えば第1風量調整ダンパ(8a)の開度が低下したときの挙動を示すグラフである。
図6中の特性曲線Dは、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と差圧計測器(53)との関係を示す。
図6中の特性曲線R1は、各風量調整ダンパ(8a〜8h)が開かれた状態で試運転が正常に終了したときまたはエアフィルタ(21)に異物が付着してファンモータ(27)の回転速度が引き上げられたときの、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と全体抵抗との関係を示す。
図6中の特性曲線R2は、特性曲線R1の状態から第1風量調整ダンパ(8a)の開度が低下したときの、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と全体抵抗との関係を示す。
図6中の曲線N1は、試運転で差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図6中の符号P1)となるように調整されたファンモータ(27)の回転速度を示す。
図6中の曲線N2は、第1風量調整ダンパ(8a)の開度が低下したときに、流出口(17)から吹き出る風量をQ1に戻すファンモータ(27)の回転速度を示す。
【0077】
通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図6中の符号P1)となるように、ファンモータ(27)の回転速度を、試運転で調整された、またはエアフィルタ(21)に異物が付着して調節された
図6中の符号N1として運転する。このとき、全体抵抗は、
図6中の符号a’になる。
【0078】
例えば、第1居室(7a)への送風を減らすとき等に、第1風量調整ダンパ(8a)の開度が下げられると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で増大する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が増大すると、流出口(17)から吹き出る風量がQ1からQ2に減少して、差圧計測器(53)での計測値がP1からP2に低下する(
図6中の符号b点に移動する)。そして、全体抵抗は、短時間でa’からb’に上昇する。
【0079】
制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第4所定時間として10秒以内でP1とP2との差に相当する値(第4所定値)以上低下したことを検知して、ファンモータ(27)の回転速度を
図6中のN2に引き上げる。なお、第4所定値は、上記第1所定値よりも小さい値である。このことにより、流出口(17)から吹き出る風量がQ2からQ1に増加して、差圧計測器(53)での計測値がP2からP1に上昇する(
図6中の符号c点(a点と等しい)に移動する)。そして、全体抵抗は、b’からc’に上昇する。このことにより、流出口(17)から吹き出る風量が不足することを抑制できる。
【0080】
−実施形態1の効果−
上述したように、試運転では、各吹出口(9a〜9h)の吹出風量がそれぞれの設定値となるように、作業者が分配調整ダンパ(6a,6b)及び風量調整ダンパ(8a〜8h)の開度を調整する。ファンモータ(27)の回転速度が一定の状態で分配調整ダンパ(6a,6b)及び風量調整ダンパ(8a〜8h)の開度を変更すると、エアハンドリングユニット(1)の吹出風量が変化し、その結果、通風部材(20)の前後の差圧が変化する。このため、従来、作業者は、試運転において、吹出ダクトに配置されたダンパの開度の調整と、ファンモータ(27)の回転速度の調整とを何度も繰り返す必要があり、試運転の工数が嵩んでいた。
【0081】
本実施形態のエアハンドリングユニット(1)は、第1居室(7a)及び第2居室(7b)に形成された複数の吹出口(9a〜9h)に対して吹出ダクト(2)によって接続され、吹出口(9a〜9h)に送風するエアハンドリングユニット(1)であって、空気を取り入れる流入口(16)と吹出ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、流入口(16)から流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、ケーシング(10)内に配置され、空気流路において流入口(16)から流出口(17)へ空気を送るファンユニット(25)と、空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、差圧計測器(53)の計測値に基づいてファンモータ(27)の回転速度を調節する制御器(50)とを備える。
【0082】
本実施形態では、制御器(50)がファンモータ(27)の回転速度を調節するので、作業者は、試運転時には分配調整ダンパ(6a,6b)及び風量調整ダンパ(8a〜8h)の開度の調節だけを行えばよい。このため、試運転の工数を削減すると共に吹出風量の調整を容易にすることができる。
【0083】
また、差圧計測器(53)は、ケーシング(10)内に配置された通風部材(20)の前後の差圧を計測する。このため、エアハンドリングユニット(1)の外側で、制御器(50)と差圧計測器(53)とを接続するための工事が不要になる。したがって、エアハンドリングユニット(1)の設置の際の工事の工数を抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、制御器(50)は、ファンモータ(27)の回転速度を、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧となるように調整する試運転を行う。
【0085】
本実施形態では、試運転で差圧計測器(53)の計測値に基づいてファンモータ(27)の回転速度を調整するので、試運転における風量の調節が容易になる。
【0086】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧になったことを示す条件が成立すると試運転が終了し、試運転が終了したことを報知する表示器(57)を備える。
【0087】
本実施形態では、試運転が終了したことを作業者に報知することができる。このため、作業者の作業効率を向上できる。
【0088】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、通風部材(20)は、空気を浄化するエアフィルタ(21)である。
【0089】
本実施形態では、エアフィルタ(21)は通常エアハンドリングユニット(1)に設けられている。このため、通風部材(20)を構成するために別途特別な部材を用意して、取付工事を行う必要がなくなる。また、エアフィルタ(21)の汚れを検知するために用いられていた差圧計測器(53)を用いてファンモータ(27)の回転速度を調節することができる。
【0090】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧よりも大きいとき、ファンモータ(27)の回転速度を上げる。
【0091】
本実施形態では、エアフィルタ(21)に異物が付着してエアフィルタ(21)の前後の差圧が大きくなったときに、ファンモータ(27)の回転速度を上げることができる。このため、流出口(17)から吹き出る風量が不足することを抑制できる。
【0092】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、制御器(50)は、リセット信号を受けると、ファンモータ(27)の回転速度を通常運転が開始したときの回転速度に戻す。
【0093】
本実施形態では、作業者が異物を捕集したエアフィルタ(21)を新しいエアフィルタ(21)に交換したとき、リセットスイッチ(41)を押して制御器(50)にリセット信号を送信することで、回転速度が上げられたファンモータ(27)をもとの回転速度に戻すことができる。
【0094】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、吹出ダクト(2)には、流量調整用の開度可変の分配調整ダンパ(6a,6b)が配置され、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第1所定時間内で第1所定値以上低下したとき、ファンモータ(27)の回転速度を第1補正速度に引き下げる。
【0095】
本実施形態では、第1分配調整ダンパ(6a)が全閉したとき、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で増大する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が増大すると、流出口(17)から吹き出る風量が減少して、差圧計測器(53)での計測値が短時間で低下する。また、第1分配調整ダンパ(6a)が全閉しているので、第2吹出ダクト(2b)を流れる空気の流量が増える。このため、本実施形態によれば、第2居室(7b)への送風が過剰になることを抑制できる。
【0096】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、制御器(50)は、ファンモータ(27)が第1補正速度で回転し且つ差圧計測器(53)の計測値が第2所定時間内で第2所定値以上上昇したとき、ファンモータ(27)の回転速度を上げる。
【0097】
本実施形態では、ファンモータ(27)が第1補正速度で回転しているときに、全閉された第1分配調整ダンパ(6a)が元の開度に戻されると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で減少する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が減少すると、流出口(17)から吹き出る風量が増加して、差圧計測器(53)での計測値が短時間で上昇する。このため、本実施形態によれば、第1補正速度に引き下げられたファンモータ(27)の回転速度をもとの回転速度に戻すことができる。
【0098】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、吹出ダクト(2)には、流量調整用の開度可変の風量調整ダンパ(8a〜8h)が配置され、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第3所定時間内で第3所定値以上上昇したとき、ファンモータ(27)の回転速度を下げる。
【0099】
本実施形態では、第1風量調整ダンパ(8a)の開度が上げられると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で減少する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が減少すると、流出口(17)から吹き出る風量が増加して、差圧計測器(53)での計測値が短時間で上昇する。このため、本実施形態によれば、ファンモータ(27)の回転速度を下げて、流出口(17)から吹き出る風量が過剰になることを抑制できる。
【0100】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第4所定時間内で第4所定値以上低下したとき、ファンモータ(27)の回転速度を上げる。
【0101】
本実施形態では、第1風量調整ダンパ(8a)の開度が下げられると、吹出ダクト(2)内での風の抵抗が短時間で増大する。吹出ダクト(2)内での風の抵抗が増大すると、流出口(17)から吹き出る風量が減少して、差圧計測器(53)での計測値が短時間で低下する。このため、本実施形態によれば、流出口(17)から吹き出る風量が不足することを抑制できる。
【0102】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、空気流路に設けられて空気流の乱れを抑える整流部材(42a,42b)を備える。
【0103】
本実施形態では、空気流路を流れる空気流の乱れを抑えて、差圧計測器(53)の計測値の変動を抑制できる。
【0104】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、差圧計測器(53)の計測値から換算した風量を表示する表示器(57)を備える。
【0105】
本実施形態では、作業者が風量を容易に確認できる。
【0106】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態のエアハンドリングユニット(1)は、実施形態1のエアハンドリングユニット(1)において、差圧計測器(53)の差圧取出管(54a,54b)の位置を変更したものである。ここでは、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)について、実施形態1のエアハンドリングユニット(1)と異なる点を説明する。
【0107】
図7に示すように、差圧計測器(53)は、熱交換器(22)の前後の差圧を計測する。上流側差圧取出管(54a)は、先端が熱交換器(22)の上流側に位置している。下流側差圧取出管(54b)は、先端が熱交換器(22)の下流側に位置している。したがって、本実施形態では、通風部材(20)は、熱交換器(22)となっている。
【0108】
−運転動作−
〈エアフィルタ目詰まり時の制御〉
図8は、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、エアフィルタ(21)が汚れた際の挙動を示すグラフである。
図8中の特性曲線D1は、流出口(17)から吹き出る風量(Q)と差圧計測器(53)の計測値との関係を示す。
図8中の曲線N1及びN2は、ファンモータ(27)の回転速度を示す。
【0109】
例えば、試運転が正常に終了した直後の通常運転では、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧(
図8中のP1)となるように、ファンモータ(27)の回転速度を試運転で調整された速度で運転する。このとき、流出口(17)から吹き出る風量は、
図8中の符号Q1になる。
【0110】
通常運転の運転時間が経過するにつれて、エアフィルタ(21)に異物が付着する。このため、熱交換器(22)を通過する風量は、
図8中の符号Q2に下がる。この結果、差圧計測器(53)の計測値が、設定差圧よりも小さくなり
図8中のP2になる。すなわち、図中のa点からb点に移行する。制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値(
図8中のP2)と設定差圧(
図8中のP1)との差に応じてファンモータ(27)の回転速度を引き上げる。このとき、差圧計測器(53)の計測値と設定差圧との差が大きいほどファンモータ(27)の回転速度を上げる。このことにより、風量(Q)と差圧(P)との関係は、
図8中のb点からa点に戻って、流出口(17)から吹き出る風量は、
図8中の符号Q1に戻る。そうすることにより、エアフィルタ(21)に異物が付着しても、流出口(17)から吹き出る風量が減少することを抑制できる。
【0111】
−実施形態2の効果−
本実施形態のエアハンドリングユニット(1)は、通風部材(20)は、空気の温度を調節する熱交換器(22)である。
【0112】
本実施形態では、熱交換器(22)は通常エアハンドリングユニット(1)に設けられている。このため、通風部材(20)を構成するために別途特別な部材を用意して、取付工事を行う必要がなくなる。
【0113】
また、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が設定差圧よりも小さいとき、ファンモータ(27)の回転速度を上げる。
【0114】
本実施形態では、エアフィルタ(21)に異物が付着して熱交換器(22)に流れる風量が減少したときに、ファンモータ(27)の回転速度を上げることができる。このため、流出口(17)から吹き出る風量が不足することを抑制できる。
【0115】
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形態のエアハンドリングユニット(1)は、上記実施形態のエアハンドリングユニット(1)において、差圧計測器(53)は試運転のときのみに設けられるものである。ここでは、本実施形態のエアハンドリングユニット(1)について、上記実施形態のエアハンドリングユニット(1)と異なる点を説明する。
【0116】
図9は、エアハンドリングユニット(1)の試運転時の構成を示す。本実施形態では、エアハンドリングユニット(1)が機械室(4)に設置された後、且つ試運転を行う前に、空気流路におけるエアフィルタ(21)と熱交換器(22)との間に通風部材(22)を設置する(通風部材設置工程)。通風部材(20)としては、空気を通過させる部材であればよく、例えば複数の貫通孔が空けられたパンチングボードが挙げられる。そして、差圧計測器(53)が、通風部材(20)の前後の差圧を計測可能に設置される。具体的に、上流側差圧取出管(54a)の先端が通風部材(20)の上流側に位置し、且つ下流側差圧取出管(54b)の先端が熱交換器(22)の下流側に位置するように設置される。
【0117】
試運転では、制御器(50)は、通風部材(20)の前後の差圧に基づいてファンモータ(27)の回転速度を調整する(回転速度調整工程)。そして、試運転が終了すると、通風部材(20)及び差圧計測器(53)をエアハンドリングユニット(1)から取り外す(通風部材取り外し工程)。すなわち、本実施形態では、エアハンドリングユニット(1)から差圧計測器(53)が取り外された状態で通常運転が行われる。
【0118】
−実施形態3の効果−
本実施形態のエアハンドリングユニット(1)のファンユニット(25)の回転速度調整方法は、回転速度調整工程の前に空気流路に通風部材(20)を設置する通風部材設置工程と、回転速度調整工程の後に通風部材(20)を取り外す通風部材取り外し工程とを備える。
【0119】
本実施形態では、通風部材(20)が必要な回転速度調整工程において通風部材(20)を設置して、回転速度調整工程の後に通風部材(20)を取り外すことができる。
【0120】
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0121】
上記各実施形態では、通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第1所定時間内で第1所定値以上低下したとき、ファンモータ(27)の回転速度を第1補正速度に引き下げていた。しかし、この制御は、試運転で行われてもよい。
【0122】
上記各実施形態では、通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第3所定時間内で第3所定値以上上昇したとき、ファンモータ(27)の回転速度を下げていた。しかし、この制御は、試運転で行われてもよい。
【0123】
上記各実施形態では、通常運転時に、制御器(50)は、差圧計測器(53)の計測値が第4所定時間内で第4所定値以上低下したとき、ファンモータ(27)の回転速度を上げていた。しかし、この制御は、試運転で行われてもよい。
【0124】
上記各実施形態では、整流部材(42a,42b)は、入口室(13)及び出口室(15)の両方に配置されていたが、整流部材(42)は、入口室(13)及び出口室(15)の一方に配置されてもよく、整流部材(42a,42b)は設けられなくてもよい。
【0125】
上記各実施形態では、試運転において、回転速度調整工程では、制御器(50)は、通風部材(20)の前後の差圧に基づいてインバータ(55)を介してファンモータ(27)の回転速度を調整していた。しかし、制御器(50)は、インバータ(55)と通信可能に構成されていなくてもよい。その場合、回転速度調整工程では、作業者は、表示器(57)に表示された風量を参照しながら、インバータ(55)を手動で調整する。
【0126】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【解決手段】空気を取り入れる流入口(16)と吹出ダクト(2)が接続される流出口(17)とを有し、流入口(16)から流出口(17)に至る空気流路を形成するケーシング(10)と、ケーシング(10)内に配置され、空気流路において流入口(16)から流出口(17)へ空気を送るファンユニット(25)と、空気流路に配置され、空気を通過させる通風部材(20)と、通風部材(20)の前後の差圧を計測する差圧計測器(53)と、差圧計測器(53)の計測値に基づいてファンユニット(25)の回転速度を調節する制御器(50)とを設ける。