(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透析液温度制御部は、前記第2制御部による制御を行う場合における透析液の温度を、前記第1制御部による制御を行う場合における透析液の温度より高くなるように前記温度調節部を制御する請求項1に記載の血液透析装置。
前記第1制御部は、前記透析液導入ラインから前記血液透析器に導入される透析液の流量が該血液透析器から前記透析液導出ラインに導出される透析液の流量以下となるように前記透析液回路における透析液の流量を制御し、
前記第2制御部は、前記透析液導入ラインから前記血液透析器に導入される透析液の流量が該血液透析器から前記透析液導出ラインに導出される透析液の流量よりも多くなるように前記透析液回路における透析液の流量を制御する請求項1又は2に記載の血液透析装置。
前記第2制御ステップにおいて、透析液の温度を、前記第1制御ステップにおける透析液の温度より高くなるように前記温度調節部を制御させる請求項6に記載のプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案された血液透析装置では、血液中の水分を除去する除水操作と、血液回路に透析液を注入する注水操作と、を所定の間隔で繰り返し行うことで、血液中の老廃物や水分の除去を効率的に行っている。
即ち、特許文献1で提案された血液透析装置によれば、注水操作により間欠的に体内における血液の循環量を増加させることで、血圧の低下を低減しつつ患者の血管を拡張させて末梢における血流を改善でき、その結果、血液中の老廃物や水分の除去を効率的に行える。
【0006】
今般、本発明者らは、HDF法による血液透析において、透析液の温度とを異ならせることにより、透析患者の体内における血流の更なる改善が期待できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って、本発明は、HDF法により血液透析を行う場合に、透析患者の体内においてより末梢まで効果的に血液を流すことのできる血液透析装置及び当該血液透析装置の制御を実行する制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透析膜を介して血液と透析液とを接触させる血液透析器と、一端側が対象者の動脈に接続され他端側が前記血液透析器に接続される動脈側ライン、及び一端側が前記血液透析器に接続され他端側が対象者の静脈に接続される静脈側ラインを有する血液回路と、前記血液透析器に透析液を導入する透析液導入ライン、及び前記血液透析器から透析液を導出する透析液導出ラインを有する透析液回路と、前記透析液回路を流通する透析液の温度を調節する温度調節部と、前記血液回路、前記透析液回路及び前記温度調節部を制御する制御装置と、を備える血液透析装置であって、前記制御装置は、前記静脈側ラインから静脈に供給される血液の量が動脈から前記動脈側ラインに取り出される血液の量以下となるように前記透析液回路における透析液の流量を制御する第1制御部と、前記静脈側ラインから静脈に供給される血液の量が動脈から前記動脈側ラインに取り出される血液の量よりも多くなるように前記透析液回路における透析液の流量を制御する第2制御部と、前記第2制御部による制御を行う場合における透析液の温度を、前記第1制御部による制御を行う場合における透析液の温度とは異なるように前記温度調節部を制御する透析液温度制御部と、を備える血液透析装置に関する。
【0009】
また、前記透析液温度制御部は、前記第2制御部による制御を行う場合における透析液の温度を、前記第1制御部による制御を行う場合における透析液の温度より高くなるように前記温度調節部を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記第1制御部は、前記透析液導入ラインから前記血液透析器に導入される透析液の流量が該血液透析器から前記透析液導出ラインに導出される透析液の流量以下となるように前記透析液回路における透析液の流量を制御し、前記第2制御部は、前記透析液導入ラインから前記血液透析器に導入される透析液の流量が該血液透析器から前記透析液導出ラインに導出される透析液の流量よりも多くなるように前記透析液回路における透析液の流量を制御することが好ましい。
【0011】
また、前記制御装置は、前記第1制御部による制御及び前記第2制御部による制御を切り替える切替制御部を更に備えることが好ましい。
【0012】
また、血液透析装置は、対象者の血流量を測定する血流測定部を更に備え、前記透析液温度制御部は、前記血流測定部により測定された血流量に基いて、前記第2制御部による制御を行う場合における透析液の温度、及び前記第1制御部による制御を行う場合における透析液の温度を決定することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、透析膜を介して血液と透析液とを接触させる血液透析器と、一端側が対象者の動脈に接続され他端側が前記血液透析器に接続される動脈側ライン、及び一端側が前記血液透析器に接続され他端側が対象者の静脈に接続される静脈側ラインを有する血液回路と、前記血液透析器に透析液を導入する透析液導入ライン、及び前記血液透析器から透析液を導出する透析液導出ラインを有する透析液回路と、前記透析液回路を流通する透析液の温度を調節する温度調節部と、前記血液回路、前記透析液回路及び前記温度調節部を制御する制御装置と、を備える血液透析装置において、前記制御装置に、前記静脈側ラインから静脈に供給される血液の量が動脈から前記動脈側ラインに取り出される血液の量以下となるように前記透析液回路における透析液の流量を制御する第1制御ステップと、前記静脈側ラインから静脈に供給される血液の量が動脈から前記動脈側ラインに取り出される血液の量よりも多くなるように前記透析液回路における透析液の流量を制御する第2制御ステップと、を切り替えて実行させ、前記第2制御ステップにおいて、透析液の温度を、前記第1制御ステップにおける透析液の温度とは異なるように前記温度調節部を制御させるためのプログラムに関する。
【0014】
また、前記第2制御ステップにおいて、透析液の温度を、前記第1制御ステップにおける透析液の温度より高くなるように前記温度調節部を制御させることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、透析膜を介して血液と透析液とを接触させる血液透析器と、一端側が対象者の動脈に接続され他端側が前記血液透析器に接続される動脈側ライン、及び一端側が前記血液透析器に接続され他端側が対象者の静脈に接続される静脈側ラインを有する血液回路と、前記血液透析器に透析液を導入する透析液導入ライン、及び前記血液透析器から透析液を導出する透析液導出ラインを有する透析液回路と、前記透析液回路を流通する透析液の温度を調節する温度調節部と、前記血液回路、前記透析液回路及び前記温度調節部を制御する制御装置と、を備える血液透析装置であって、前記制御装置は、第1温度で透析液を流通させるように前記温度調節部を制御する第1制御部と、前記第1温度とは異なる第2温度で透析液を流通させるように前記温度調節部を制御する第2制御部と、前記第1制御部による制御及び前記第2制御部による制御を切り替える切替制御部と、を備える血液透析装置に関する。
【0016】
また、血液透析装置は、対象者の血流量を測定する血流測定部を更に備え、前記血流測定部により測定された血流量に基づいて前記第1の温度及び前記第2の温度を決定する透析液温度制御部を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の血液透析装置によれば、HDF法により血液透析を行う場合に、透析患者の体内においてより末梢まで効果的に血液を流すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の血液透析装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の血液透析装置は、腎不全患者や薬物中毒患者の血液を浄化すると共に、血液中の余分な水分を除去し、必要に応じて血液中に水分を補充(補液)する。
まず、第1実施形態の血液透析装置1の全体構成につき、
図1を参照しながら説明する。血液透析装置1は、血液透析器としてのダイアライザ10と、血液回路20と、透析液回路30と、温度調節部としてのヒータ40と、制御装置50と、を備える。
【0020】
ダイアライザ10は、筒状に形成された容器本体11と、この容器本体11の内部に収容された透析膜(図示せず)と、を備え、容器本体11の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画される(いずれも図示せず)。容器本体11には、血液側流路に連通する血液導入口111及び血液導出口112と、透析液側流路に連通する透析液導入口113及び透析液導出口114と、が形成される。
【0021】
血液回路20は、動脈側ライン21と、静脈側ライン22と、薬剤ライン23と、オーバーフローライン24と、を備える。動脈側ライン21、静脈側ライン22、薬剤ライン23及びオーバーフローライン24は、いずれも液体が流通可能な可撓性を有するチューブを主体として構成される。
【0022】
動脈側ライン21は、一端側が対象者(透析患者)の動脈に接続され、他端側がダイアライザ10の血液導入口111に接続される。動脈側ライン21には、気泡センサ211、血液ポンプ212、及び動脈側チャンバ213が配置される。
気泡センサ211は、動脈側ライン21の内部を流通する血液中に含まれる気泡を検出する。血液ポンプ212は、動脈側ライン21における気泡センサ211よりも下流側に配置される。血液ポンプ212は、動脈側ライン21を構成するチューブをしごくことにより、動脈側ライン21の内部の血液を送り出す。動脈側チャンバ213は、動脈側ライン21における血液ポンプ212よりも下流側に配置される。動脈側チャンバ213は、所定量(例えば、20ml)の血液を貯留する。
【0023】
静脈側ライン22は、一端側がダイアライザ10の血液導出口112に接続され、他端側が対象者(透析患者)の静脈に接続される。静脈側ライン22には、静脈圧センサ221、静脈側チャンバ222、気泡センサ223、静脈側クランプ224が配置される。
静脈圧センサ221は、静脈側ライン22を流通する血液の圧力を検出する。静脈側チャンバ222は、静脈側ライン22における静脈圧センサ221の下流側に配置される。静脈側チャンバ222は、所定量(例えば、20ml)の血液を貯留する。気泡センサ223は、静脈側ライン22における静脈側チャンバ222よりも下流側に配置される。気泡センサ223は、静脈側ライン22の内部を流通する血液中に含まれる気泡を検出する。静脈側クランプ224は、静脈側ライン22における気泡センサ223よりも下流側に配置される。静脈側クランプ224は、静脈側ライン22の流路を開閉する。
【0024】
薬剤ライン23は、血液透析中に必要な薬剤を動脈側ライン21に供給する。薬剤ライン23は、一端側(基端側)が薬剤を送り出す薬液ポンプ231に接続され、他端側(先端側)が動脈側ライン21における血液ポンプ212と動脈側チャンバ213との間に接続される。
【0025】
オーバーフローライン24は、一端側(基端側)が静脈側チャンバ222に接続される。オーバーフローライン24は、プライミング工程において静脈側ライン22を流通する生理食塩液、空気等を外部に排出する。オーバーフローライン24には、オーバーフロークランプ241が配置される。オーバーフロークランプ241は、オーバーフローライン24の流路を開閉する。
【0026】
以上の血液回路20によれば、対象者(透析患者)の動脈から取り出された血液は、血液ポンプ212により動脈側ライン21を流通してダイアライザ10の血液側流路に導入される。ダイアライザ10に導入された血液は、透析膜を介して後述する透析液回路30を流通する透析液により浄化される。ダイアライザ10において浄化された血液は、静脈側ライン22を流通して対象者の静脈に返血される。
【0027】
透析液回路30は、本実施形態では、いわゆる密閉容量制御方式の透析液回路30により構成される。この透析液回路30は、透析液チャンバ31と、透析液供給ライン32と、透析液導入ライン33と、透析液導出ライン34と、排液ライン35と、バイパスライン36と、除水/逆ろ過ポンプ37と、を備える。
【0028】
透析液チャンバ31は、一定容量(例えば、300ml〜500ml)の透析液を収容可能な硬質の容器311と、この容器311の内部を区画する軟質の隔膜(ダイアフラム)312と、を備える。透析液チャンバ31の内部は、隔膜312により送液収容部313及び排液収容部314に区画される。
【0029】
透析液供給ライン32は、基端側が透析液供給装置(図示せず)に接続され、先端側が透析液チャンバ31に接続される。透析液供給ライン32は、透析液チャンバ31の送液収容部313に透析液を供給する。
【0030】
透析液導入ライン33は、透析液チャンバ31とダイアライザ10の透析液導入口113とを接続し、透析液チャンバ31の送液収容部313に収容された透析液をダイアライザ10の透析液側流路に導入する。
【0031】
透析液導出ライン34は、ダイアライザ10の透析液導出口114と透析液チャンバ31とを接続し、ダイアライザ10から排出された透析液を透析液チャンバ31の排液収容部314に導出する。
排液ライン35は、基端側が透析液チャンバ31に接続され、排液収容部314に収容された透析液の排液を排出する。
【0032】
バイパスライン36は、透析液導出ライン34と排液ライン35とを接続する。
除水/逆ろ過ポンプ37は、バイパスライン36に配置される。除水/逆ろ過ポンプ37は、バイパスライン36の内部の透析液を排液ライン35側に流通させる方向(除水方向)及び透析液導出ライン34側に流通させる方向(逆ろ過方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。
【0033】
以上の透析液回路30によれば、透析液チャンバ31を硬質の容器311及びこの容器311の内部を区画するダイアフラム312により構成することで、透析液チャンバ31からの透析液の導出量(送液収容部313への透析液の供給量)と、透析液チャンバ31(排液収容部314)に回収される排液の量と、を同量にできる。
これにより、除水/逆ろ過ポンプ37を停止させた状態では、ダイアライザ10に導入される透析液の流量とダイアライザ10から導出される透析液(排液)の量とを同量にできる。
【0034】
また、除水/逆ろ過ポンプ37を除水方向に送液するように駆動させた場合には、透析液導出ライン34を流通する透析液の量は、透析液チャンバ31に回収される透析液の量(即ち、透析液導入ライン33を流通する透析液の量)に、バイパスライン36を流通する透析液の量を加えた量となる。これにより、透析液導出ライン34を流通する透析液の量は、バイパスライン36を通って排液ライン35に排出される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン33を流通する透析液の量よりも多くなる。即ち、除水/逆ろ過ポンプ37を除水方向に送液するように駆動させた場合は、ダイアライザ10において、血液から所定量の除水が行われる(
図3参照)。
【0035】
一方、除水/逆ろ過ポンプ37を逆ろ過方向に送液するように駆動させた場合には、透析液チャンバ31から排出された排液の一部がバイパスライン36及び透析液導出ライン34を通って再び透析液チャンバ31に回収される。そのため、ダイアライザ10から導出される透析液の量は、透析液チャンバ31に回収される量(即ち、透析液導入ライン33を流通する透析液の量)から、バイパスライン36を流通する透析液の量を減じた量となる。これにより、ダイアライザ10から導出される透析液の量は、バイパスライン36を通って再び透析液チャンバ31に回収される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン33を流通する透析液の流量よりも少なくなる。即ち、除水/逆ろ過ポンプ37を逆ろ過方向に送液するように駆動させた場合は、ダイアライザ10において、血液回路20に所定量の透析液が注入(逆ろ過)される(
図4参照)。
【0036】
ヒータ40は、透析液回路30を流通する透析液を所定の温度に加温する。
【0037】
制御装置50は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、血液透析装置1の動作を制御する。
具体的には、制御装置50は、血液回路20及び透析液回路30に配置された各種のポンプやクランプ、並びにヒータ40等の動作を制御して、血液透析装置1により行われる各種工程(運転(透析)工程、洗浄工程、プライミング工程、脱血工程、補液工程、返血工程等)を実行する。
【0038】
ここで、本実施形態では、制御装置50は、血液中の水分を除去する除水操作と、血液回路20に透析液を注入する注水操作としての逆ろ過操作と、を所定の間隔で切り替えると共に、除水操作時における透析液の温度と逆ろ過操作時における透析液の温度とを異ならせることで、透析患者の体内における血流の更なる改善を実現している。
【0039】
以上の機能を実現するために、制御装置50は、
図2に示すように、第1制御部51と、第2制御部52と、透析液温度制御部53と、切替制御部54と、を備える。
【0040】
第1制御部51は、静脈側ライン22から静脈に供給される血液(血液及び透析液)の量(返血量)が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の量(脱血量)以下となるように透析液回路30における透析液の流量を制御する。即ち、第1制御部51は、血液中の水分を除去する除水制御を行う。
【0041】
本実施形態では、
図3に示すように、第1制御部51は、透析液供給ライン32から所定量(例えば、500ml/min)の透析液を透析液チャンバ31に供給すると共に、除水/逆ろ過ポンプ37を除水方向に送液するように駆動させて所定量(例えば、10ml/min)の透析液をバイパスライン36から排液ライン35にバイパスさせる。また、血液ポンプ212を駆動させて所定量(例えば、200ml/min)の血液を動脈から動脈側ライン21に取り出す。これにより、例えば、ダイアライザ10において、動脈側ライン21から導入される血液中の水分の一部(この場合10ml/min)が除水され、静脈側ライン22から静脈に供給される血液の量(例えば、190ml/min)が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の量(例えば、200ml/min)以下になる。
【0042】
第2制御部52は、静脈側ライン22から静脈に供給される血液の流量が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の流量よりも多くなるように透析液回路30における透析液の流量を制御する。即ち、第2制御部52は、血液回路20に所定量の透析液を注入する逆ろ過制御を行う。
【0043】
本実施形態では、
図4に示すように、第2制御部52は、透析液供給ライン32から所定量(例えば、500ml/min)の透析液を透析液チャンバ31に供給すると共に、除水/逆ろ過ポンプ37を逆ろ過方向に送液するように駆動させて排液ライン35に排出された排液のうちの所定量(例えば、100ml/min)をバイパスライン36及び透析液導出ライン34を通じて透析液チャンバ31に再び回収させる。また、血液ポンプ212を駆動させて所定量(例えば、50ml/min)の血液を動脈から動脈側ライン21に取り出す。これにより、ダイアライザ10において、所定量(この場合100ml/min)の透析液が血液回路20に導入され、静脈側ライン22から静脈に供給される血液の量(例えば、150ml/min)が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の量(例えば、50ml/min)よりも多くなる。
【0044】
透析液温度制御部53は、第2制御部52による逆ろ過制御を行う場合における透析液の温度を、第1制御部51による除水制御を行う場合における透析液の温度とは異なるようにヒータ40を制御する。本実施形態では、透析液温度制御部53は、逆ろ過制御を行う場合における透析液の温度を、除水制御を行う場合における透析液の温度よりも2℃〜3℃高くなるように制御する。
【0045】
これにより、第2制御部52により逆ろ過制御を行う場合に、血液回路20に導入される透析液の温度を高くできるので、静脈側ライン22から透析患者に供給(返血)される血液量を増加させると共に、この血液の温度を効果的に上昇させられる。よって、逆ろ過制御時に体内における血液の循環量を増加させると共にこの血液の温度も上昇させることで、血圧の低下を低減しつつ患者の血管を拡張させる効果をより向上させられる。その結果、末梢における血流をより改善でき、血液中の老廃物や水分の除去を更に効率的に行える。
【0046】
透析液温度制御部53によるヒータ40の温度制御は、例えば、除水/逆ろ過ポンプ37の送液方向に基いて行うことができる。この場合、透析液温度制御部53は、除水/逆ろ過ポンプ37を除水方向に送液するように駆動させるときにヒータ40を第1温度(例えば、35℃〜37℃)に設定し、除水/逆ろ過ポンプ37を逆ろ過方向に送液するように駆動させるときにヒータ40を第1温度よりも高い第2温度(例えば、37℃〜40℃)に設定する。
【0047】
また、透析液温度制御部53によるヒータ40の温度制御は、第1制御部51による制御と第2制御部52による制御との切り替えのタイミングとずらして行ってもよい。即ち、ヒータ40の設定温度を変更してから透析液の温度が設定温度に到達するまでにはある程度の時間がかかるため、透析液温度制御部53は、第1制御部51による制御から第2制御部52による制御への切り替えを行う数分(3〜5分)前に、ヒータ40の設定温度を第1温度から第2温度に変更してもよい。
【0048】
切替制御部54は、第1制御部51による制御及び第2制御部52による制御を切り替える。切替制御部54は、例えば、透析患者の血圧に基いて第1制御部51による除水制御と、第2制御部52による逆ろ過制御と、を切り替えることができる。この場合、切替制御部54は、透析患者に取り付けた血圧計により測定される血圧値を取得し、この取得した血圧値に応じて制御を切り替える。
【0049】
また、切替制御部54は、透析患者の血流の変化率に基いて第1制御部51による除水制御と、第2制御部52による逆ろ過制御と、を切り替えることができる。この場合、切替制御部54は、透析患者の末梢(例えば、指先)に取り付けた血流計により測定される血流値を取得し、この取得した血流値の変化率に応じて制御を切り替える。
【0050】
また、切替制御部54は、予め設定した所定の時間間隔で第1制御部51による除水制御と、第2制御部52による逆ろ過制御と、を切り替えることができる。
【0051】
以上説明した第1実施形態の血液透析装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0052】
(1)血液透析装置1を、静脈側ライン22から静脈に供給される血液の量が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の量以下となるように透析液回路30における透析液の流量を制御する第1制御部51と、静脈側ライン22から静脈に供給される血液の量が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の量よりも多くなるように透析液回路30における透析液の流量を制御する第2制御部52と、第2制御部52による制御を行う場合における透析液の温度を第1制御部51による制御を行う場合における透析液の温度とは異なるようにヒータ40を制御する透析液温度制御部53と、を含んで構成した。これにより、第2制御部52により制御を行う場合に、静脈側ライン22から透析患者に供給(返血)される血液量を増加させられると共に、血液回路20に導入される透析液の温度を第1制御部51により制御を行う場合とは異なった温度にできる。よって、HDF法により血液透析を行う場合に、第2制御部52による制御時において体内における血液の循環量を増加させると共に所定時間のみ(即ち、第1制御部51による制御時又は第2制御部52による制御時のいずれかにおいてのみ)血液の温度を上昇させられる。その結果、末梢における血流をより改善でき、血液中の老廃物や水分の除去を更に効率的に行える。また、所定時間のみ(即ち、第1制御部51による制御時又は第2制御部52による制御時のいずれかにおいてのみ)血液の温度を上昇させるので、長時間血液透析を受ける透析患者の体温が上昇しすぎてしまうことを防げる。
【0053】
(2)透析液温度制御部53に、第2制御部52による制御を行う場合における透析液の温度を第1制御部51による制御を行う場合における透析液の温度より高くなるようにヒータ40を制御させた。これにより、静脈側ライン22から透析患者に供給(返血)される血液量を増加させると共に、この血液の温度を効果的に上昇させられる。よって、血圧の低下を低減しつつ患者の血管を拡張させる効果をより向上させられる。また、透析患者の体内への返血量を増加させる第2制御部52による制御時のみ透析液の温度を上昇させるので、長時間血液透析を受ける透析患者の体温が上昇しすぎてしまうことを防げる。
【0054】
(3)第1制御部51に、透析液導入ライン33からダイアライザ10に導入される透析液の量がダイアライザ10から透析液導出ライン34に導出される透析液の量以下となるように透析液回路30における透析液の流量を制御させ、第2制御部52に、透析液導入ライン33からダイアライザ10に導入される透析液の量がダイアライザ10から透析液導出ライン34に導出される透析液の量よりも多くなるように透析液回路30における透析液の流量を制御させた。これにより、第1制御部51により除水制御を行わせられると共に、第2制御部52によりダイアライザ10において透析膜を介して温度を上昇させた透析液を血液回路20に導入する逆ろ過制御を行わせられる。よって、逆ろ過制御時に静脈側ライン22を通じて透析患者の体内に供給される血液の温度を効果的に上昇させられる。
【0055】
(4)制御装置50を、第1制御部51による制御と第2制御部52による制御とを切り替える切替制御部54を含んで構成した。これにより、例えば、透析患者の血圧や血流等の患者の生体情報を監視しながら、除水制御及び逆ろ過制御を切り替えられるので、より効果的に血液透析を行え、また、透析患者の身体に与える負担を軽減できる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態に係る血液透析装置1Aにつき、
図5を参照しながら説明する。第2実施形態の血液透析装置1Aは、主として、透析液を静脈側ライン22に直接導入する送液ライン60を備える点で、第1実施形態と異なる。尚、第2実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0057】
第2実施形態の血液透析装置1Aは、いわゆるオンラインHDF法による血液透析に用いられる血液透析装置1Aであり、第1実施形態の血液透析装置1の構成に加えて、送液ライン60及び補充液ポンプ61を更に備える。
【0058】
送液ライン60は、透析液導入ライン33と静脈側チャンバ222とを接続する。送液ライン60は、透析液導入ライン33を流通する透析液の一部を補充液として直接静脈側ライン22に供給する。
補充液ポンプ61は、送液ライン60に配置され、送液ライン60を構成するチューブをしごくことにより、送液ライン60の内部の透析液を静脈側ライン22に向けて送り出す。
【0059】
第2実施形態では、
図6に示すように、第1制御部51は、透析液供給ライン32から所定量(例えば、500ml/min)の透析液を透析液チャンバ31に供給すると共に、除水/逆ろ過ポンプ37を除水方向に送液するように駆動させて所定量(例えば、10ml/min)の透析液をバイパスライン36から排液ライン35にバイパスさせる。また、補充液ポンプ61を駆動させて所定量(例えば、100ml/min)の透析液を補充液として静脈側ライン22(静脈側チャンバ222)に供給する。更に、血液ポンプ212を駆動させて所定量(例えば、200ml/min)の血液を動脈から動脈側ライン21に取り出す。これにより、静脈側ライン22において所定量(この場合100ml/min)の透析液が供給される一方、ダイアライザ10において、静脈側ライン22に供給された透析液量(100ml/min)に相当する水分及び動脈側ライン21から導入される血液中の水分の一部(この場合10ml/min)が除水される。その結果、静脈側ライン22から静脈に供給される血液の量(例えば、190ml/min)が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の量(例えば、200ml/min)以下になる。
【0060】
また、第2制御部52は、
図7に示すように、透析液供給ライン32から所定量(例えば、500ml/min)の透析液を透析液チャンバ31に供給すると共に、除水/逆ろ過ポンプ37を逆ろ過方向に送液するように駆動させて排液ライン35に排出された排液のうちの所定量(例えば、100ml/min)をバイパスライン36及び透析液導出ライン34を通じて透析液チャンバ31に回収させる。また、補充液ポンプ61を駆動させて所定量(例えば、100ml/min)の透析液を静脈側ライン22(静脈側チャンバ222)に供給する。更に、血液ポンプ212を駆動させて所定量(例えば、50ml/min)の血液を動脈から動脈側ライン21に取り出す。これにより、静脈側ライン22において所定量(この場合100ml/min)の透析液が供給される一方、ダイアライザ10においては、動脈側ライン21を流通する血液からの水分の除去及び透析液回路30から血液回路20への透析液の導入は行われない。その結果、静脈側ライン22から静脈に供給される血液の量(例えば、150ml/min)が動脈から動脈側ライン21に取り出される血液の量(例えば、50ml/min)よりも多くなる。
即ち、第2実施形態では、第2制御部52による制御において、透析液はダイアライザ10を通じてではなく、補充液として直接血液回路20(静脈側ライン22)に導入される。
【0061】
以上説明した第2実施形態の血液透析装置1Aによれば、上述した(1)、(2)及び(4)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0062】
(5)血液透析装置1Aを、送液ライン60及び補充液ポンプ61を含んで構成した。これにより、第2制御部52による制御時に、送液ライン60を通じて温度を上昇させた透析液を補充液として直接静脈側ライン22に導入できる。よって、オンラインHDF法による血液透析を行う場合においても、第2制御部52による制御時において体内における血液の循環量を増加させると共にこの血液の温度も上昇させることで、血圧の低下を低減しつつ患者の血管を拡張させる効果をより向上させられる。その結果、末梢における血流をより改善でき、血液中の老廃物や水分の除去を更に効率的に行える。また、透析患者の体内への返血量を増加させる第2制御時のみ透析液の温度を上昇させるので、長時間血液透析を受ける透析患者の体温が上昇しすぎてしまうことを防げる。
【0063】
次に、本発明の第3実施形態に係る血液透析装置につき、
図9を参照しながら説明する。第3実施形態の血液透析装置は、制御装置による制御内容において第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
第3実施形態では、制御装置50Bは、血液中の水分量を変化させない状態(つまり、透析中(血液浄化中)であって除水操作も逆ろ過操作も行っていない状態)において、透析回路における透析液の温度を変化させる。
【0064】
具体的には、第3実施形態では、制御装置50Aは、第1制御部55と、第2制御部56と、切替制御部57と、透析液温度制御部58と、を備える。
第1制御部55は、第1温度で透析液を流通させるように温度調節部としてのヒータ40を制御する第1モードで血液透析装置を動作させる。
第2制御部56は、第1温度とは異なる第2温度で透析液を流通させるようにヒータ40を制御する第2モードで血液透析装置を動作させる。
【0065】
本実施形態では、第2温度は、例えば、第1温度よりも2℃〜3℃高く設定することができる。また、第1温度及び第2温度は、予め設定値として制御装置50Bに設定しておいてもよく、後述の透析液温度制御部58により決定してもよい。
【0066】
切替制御部57は、第1制御部55による制御(第1モード)と、第2制御部56による制御(第2モード)と、を切り替える。例えば、切替制御部57は、予め設定した所定の時間間隔で第1制御部55による制御と、第2制御部56による制御と、を切り替えることができる。
また、切替制御部57は、透析患者の血流の変化率に基いて第1制御部55による制御と、第2制御部56による制御と、を切り替えることができる。この場合、切替制御部57は、透析患者の末梢(例えば、指先)に取り付けた血流計により測定される血流値を取得し、この取得した血流値の変化率に応じて制御を切り替える。
【0067】
また、切替制御部57は、透析患者の血圧に基いて第1制御部55による制御と、第2制御部56による制御と、を切り替えることができる。この場合、切替制御部57は、透析患者に取り付けた血圧計により測定される血圧値を取得し、この取得した血圧値に応じて制御を切り替える。
【0068】
透析液温度制御部58は、第1温度及び第2温度を決定する。この透析液温度制御部58により第1温度及び第2温度を決定する場合には、血液透析装置1を、対象者(透析患者)の血流量を測定する血流測定部を含んで構成する。血流測定部としては、血流計又は血圧計が挙げられる。そして、透析液温度制御部58は、血流計により測定された血流量又は、血圧計により測定された血圧値から推定される血流量に基づいて第1の温度及び第2の温度を決定する。
【0069】
以上説明した第3実施形態の血液透析装置によれば、以下のような効果を奏する。
【0070】
(6)血液透析装置1を、第1温度で透析液を流通させるようにヒータ40を制御する第1制御部55と、第1温度とは異なる第2温度で透析液を流通させるようにヒータ40を制御する第2制御部56と、第1制御部による制御及び第2制御部による制御を切り替える切替制御部57と、を含んで構成した。これにより、第2制御部56により制御を行う場合に、血液回路20に導入される透析液の温度を第1制御部55により制御を行う場合とは異なった温度にできる。よって、血液透析を行う場合に、第2制御部56による制御時において所定時間のみ(即ち、第1制御部55による制御時又は第2制御部56による制御時のいずれかにおいてのみ)血液の温度を上昇させられる。その結果、血液中の水分量を変化させない状態であっても、末梢における血流をより改善でき、血液中の老廃物や水分の除去を更に効率的に行える。また、所定時間のみ(即ち、第1制御部55による制御時又は第2制御部56による制御時のいずれかにおいてのみ)血液の温度を上昇させるので、長時間血液透析を受ける透析患者の体温が上昇しすぎてしまうことを防げる。
【0071】
(7)血液透析装置を、対象者(透析患者)の末梢血管における血流量を測定する血流測定部(血流計又は血圧計)を含んで構成し、透析液温度制御部58に、血流測定部により測定された血流量に基づいて第1温度及び第2温度を決定させた。これにより、透析患者の末梢血管の血流量に応じて、より好ましい透析液の第1温度及び第2温度を設定できるので、末梢における血流の改善効果をより向上させられる。
【0072】
尚、第3実施形態の制御装置50Bにおける制御は、第1実施形態(HDF方式)及び第2実施形態(オンラインHDF方式)のいずれの方式の血液透析装置にも適用できる。
【0073】
以上、本発明の血液透析装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第2実施形態では、送液ライン60を、静脈側ライン22(静脈側チャンバ222)に接続して血液透析装置1Aを構成したが、これに限らない。即ち、送液ラインを動脈側ライン(動脈側チャンバ)に接続して血液透析装置を構成してもよい。
【0074】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、血液透析装置1,1Aを、密閉容量制御方式の透析液回路30を含んで構成したが、これに限らない。即ち、血液透析装置を、他の方式の透析液回路を含んで構成してもよい。
【0075】
また、第2実施形態では、本発明を、オンラインHDF方式の血液透析装置に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、オフラインHDF方式の血液透析装置に適用してもよい。
【0076】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、第2制御部52による制御時における透析液の温度を、第1制御部51による制御時における透析液の温度より高くしたが、これに限らない。即ち、第1制御部による制御時における透析液の温度を、第2制御部における制御時における透析液の温度よりも高くしてもよい。
【0077】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、血液透析装置を、対象者(透析患者)の末梢血管における血流量を測定する血流測定部(血流計又は血圧計)を含んで構成してもよい。この場合、透析液温度制御部53は、第2制御部52による制御(逆ろ過制御)を行う場合における透析液の温度、及び第1制御部による制御(除水制御)を行う場合における透析液の温度を決定する。これにより、透析患者の末梢血管の血流量に応じて、より好ましい透析液の第1温度及び第2温度を設定できるので、末梢における血流の改善効果をより向上させられる。
また、末梢血管における血流状態を確認する方法は、血流測定以外に、体温/皮膚組織灌流圧(SPP)検査等の他の方法を用いてもよい。