特許第6642712号(P6642712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6642712耐候性向上剤およびこれを含有する金属ナノワイヤ含有層被覆用樹脂組成物ならびに金属ナノワイヤ含有積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642712
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】耐候性向上剤およびこれを含有する金属ナノワイヤ含有層被覆用樹脂組成物ならびに金属ナノワイヤ含有積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20200130BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20200130BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20200130BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20200130BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20200130BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20200130BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20200130BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20200130BHJP
   C07C 65/03 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D4/00
   C09D7/48
   C09D7/61
   H01B5/00 H
   H01B1/00 H
   H01B5/14 A
   B32B27/18 Z
   !C07C65/03 D
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-526305(P2018-526305)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2017023523
(87)【国際公開番号】WO2018008464
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-133313(P2016-133313)
(32)【優先日】2016年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 俊之
(72)【発明者】
【氏名】栗村 宗稔
(72)【発明者】
【氏名】酒徳 綾
(72)【発明者】
【氏名】池田 直人
(72)【発明者】
【氏名】河口 知晃
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/196354(WO,A1)
【文献】 特開2013−016455(JP,A)
【文献】 特開平01−240579(JP,A)
【文献】 特開2001−335955(JP,A)
【文献】 特開平03−215574(JP,A)
【文献】 特表2010−521582(JP,A)
【文献】 特表2005−528485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B32B 27/18
H01B 1/00
H01B 5/00
H01B 5/14
C07C 65/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(A)と、化合物(B)および化合物(C)の少なくとも1つと、を含有する金属ナノワイヤ用耐候性向上剤。
化合物(A):下記一般式(1)または(2)で表わされる化合物
一般式(1)
一般式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基を有する(ジ)カルボキシアルキル基を表す。
一般式(2)
一般式(2)中、R2は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基を有する(ジ)カルボキシアルキル基を表す。
化合物(B):没食子酸、没食子酸誘導体またはタンニン酸
化合物(C):下記一般式(3)で表わされる化合物
一般式(3)
一般式(3)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、R3は水素原子、アセチル基、ピラゾイル基、またはアミノチアゾリル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基、またはベンゾチアゾリル基を表し、R5は炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルキル基を有するイソ酪酸アルキルエステル基を表す。
【請求項2】
前記化合物(A)の質量と、前記化合物(B)と前記化合物(C)の合計質量の比が、1/80≦化合物(A)/[化合物(B)+化合物(C)]≦80/1である請求項1に記載の金属ナノワイヤ用耐候性向上剤。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤである請求項1または2に記載の金属ナノワイヤ用耐候性向上剤。
【請求項4】
前記化合物(A)が、2−メルカプトチアゾリン、3−(2−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤ用耐候性向上剤。
【請求項5】
前記化合物(B)が、タンニン酸である請求項1〜のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤ用耐候性向上剤。
【請求項6】
前記化合物(C)が、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)である請求項1〜のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤ用耐候性向上剤。
【請求項7】
請求項3〜のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤ用耐候性向上剤と、光重合性開始剤および熱重合性開始剤の少なくとも1つと、重合性モノマーおよびマクロモノマーの少なくとも1つとを含む金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物。
【請求項8】
金属ナノワイヤ含有層と、前記金属ナノワイヤ含有層上に配置された前記金属ナノワイヤ含有層を保護するための保護層と、を有する金属ナノワイヤ含有積層体であって、前記保護層が、請求項に記載の金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物の硬化物である、金属ナノワイヤ含有積層体。
【請求項9】
前記金属ナノワイヤ含有層が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤ用耐候性向上剤を含む請求項に記載の金属ナノワイヤ含有積層体。
【請求項10】
前記金属ナノワイヤ含有層が、水性ポリエステル樹脂を含む請求項または請求項に記載の金属ナノワイヤ含有積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐候性向上剤、とりわけ金属ナノワイヤを用いた透明導電膜に用いることで耐候性を向上しうる耐候性向上剤に関する。また、本発明の耐候性向上剤を含有する金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物、金属ナノワイヤ含有積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネセンスディスプレイや電子ペーパーなどの表示デバイス、タッチパネルなどの入力センサー、薄膜型アモルファスSi太陽電池や色素増感太陽電池などの太陽光を利用した太陽電池などの利用が増えている。それに伴い、これらのデバイスに必須の部材である透明導電膜の需要も増えている。
【0003】
金属ナノワイヤの直径はナノオーダーと小さいため、可視光領域での光透過性が高く、ITO(酸化インジウムスズ)に代わる透明導電膜としての応用が期待されている。中でも高い導電性を有する銀ナノワイヤを用いた透明導電膜が提案されている(例えば、特許文献1、2および3参照)。
【0004】
透明導電膜は、前記した液晶ディスプレイやタッチパネルなどの入力センサー等の用途に利用されるため、その使用環境は屋内外を問わず、長時間、太陽光下で使用されることや、高湿高温条件下で使用されることも想定される。金属ナノワイヤを用いた透明導電膜には、太陽光の長時間暴露条件下で表面電気抵抗値を維持する光安定性と、高温高湿条件下で表面電気抵抗値を維持する高温高湿安定性の二つの安定性が同時に求められる。一方、金属ナノワイヤは、双方の環境下において、導電性を損失する傾向を有するため、光安定性と高温高湿安定性を併せて発現するための耐候性向上剤が求められる。
【0005】
また、光安定性については、金属ナノワイヤを用いた透明導電膜において太陽光に曝される照射部分の光安定性が必要であるとともに、照射部分と遮蔽物により太陽光が遮られる遮蔽部分との境界部においても光安定性が必要であるが、この境界部分で特に導電性が悪化しうることが報告されている(例えば、特許文献4および5参照)。特許文献4では、境界部において有効な光安定剤として、遷移金属塩、遷移金属錯体が記載され、特許文献5では、境界部において有効な光安定剤として、金属粒子、金属酸化物粒子、金属錯体化合物が記載されているが、高温高湿安定性に関する明確な記載はない。また、これらの金属を含む化合物は着色の問題、同時に使用する重合性モノマーおよびマクロモノマーのゲル化を促進する問題、析出と移行の問題を有するため、有機化合物による耐候性向上剤が好ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−324324号公報
【特許文献2】特開2005−317395号公報
【特許文献3】米国特許出願公開2007/0074316号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2015/0270024号明細書
【特許文献5】特開2016−1608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、太陽光長時間暴露下と高温高湿条件下の双方における、金属ナノワイヤを用いた透明導電膜の劣化を抑制するための耐候性向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の化合物の組み合わせからなる耐候性向上剤を用いた場合に、太陽光長時間暴露下と高温高湿条件下の双方における、金属ナノワイヤを用いた透明導電膜の劣化を抑制することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(i)化合物(A)と、化合物(B)および化合物(C)の少なくとも1つと、を含有する耐候性向上剤、
化合物(A):下記一般式(1)または(2)で表わされる化合物、
一般式(1)
【0010】
【化1】
一般式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基を有する(ジ)カルボキシアルキル基を表す。
一般式(2)
【0011】
【化2】
一般式(2)中、Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基を有する(ジ)カルボキシアルキル基を表す。
化合物(B):没食子酸、没食子酸誘導体またはタンニン酸
化合物(C):下記一般式(3)で表わされる化合物
一般式(3)
【0012】
【化3】
一般式(3)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Rは水素原子、アセチル基、ピラゾイル基、またはアミノチアゾリル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、またはベンゾチアゾリル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルキル基を有するイソ酪酸アルキルエステル基を表す。
(ii)化合物(A)の質量と、化合物(B)と化合物(C)の合計質量の比が、1/80≦化合物(A)/[化合物(B)+化合物(C)]≦80/1である、前記(i)に記載の耐候性向上剤、
(iii)金属ナノワイヤ用である、前記(i)または(ii)に記載の耐候性向上剤、
(iv)金属ナノワイヤが銀ナノワイヤである、前記(i)〜(iii)のいずれかに記載の耐候性向上剤、
(v)化合物(A)が、2−メルカプトチアゾリン、3−(2−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸から選ばれる少なくとも1種である、前記(i)〜(iv)のいずれかに記載の耐候性向上剤、
(vi)化合物(B)が、タンニン酸である、前記(i)〜(v)のいずれかに記載の耐候性向上剤、
(vii)化合物(C)が、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)である、前記(i)〜(vi)のいずれかに記載の耐候性向上剤、
(viii)前記(iii)〜(vii)のいずれかに記載の耐候性向上剤と、光重合性開始剤および熱重合性開始剤の少なくとも1つと、重合性モノマーおよびマクロモノマーの少なくとも1つとを含む金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物、
(ix)金属ナノワイヤ含有層と、金属ナノワイヤ含有層上に配置された金属ナノワイヤ含有層を保護するための保護層と、を有する金属ナノワイヤ含有積層体であって、前記保護層が、前記(viii)に記載の金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物の硬化物である、金属ナノワイヤ含有積層体、
(x)金属ナノワイヤ含有層が、前記(i)〜(vii)のいずれかに記載の耐候性向上剤を含む、前記(ix)に記載の金属ナノワイヤ含有積層体、
(xi)金属ナノワイヤ含有層が、水性ポリエステル樹脂を含む、前記(ix)または前記(x)に記載の金属ナノワイヤ含有積層体、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽光長時間暴露下、高温高湿条件下のいずれにおいても、金属ナノワイヤを用いた透明導電膜の劣化を抑制することができる耐候性向上剤が提供される 。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、金属ナノワイヤ含有積層体の一実施形態を示す概略断面図である。
図2図2は、金属ナノワイヤ含有積層体の他の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
[耐候性向上剤]
本発明における耐候性向上剤は、化合物(A)と、化合物(B)および化合物(C)の少なくとも1つと、を含有するものである。化合物(A)と、化合物(B)および化合物(C)の少なくとも1つと、を併用することが、太陽光の長時間暴露環境下、および高温高湿環境下、の両環境下で金属ナノワイヤの劣化を抑制するために必要であり、この効果は、化合物(A)と、化合物(B)および化合物(C)の少なくとも1つと、をそれぞれ単独で使用しただけでは不十分である。
【0017】
[化合物(A)]
化合物(A)は、下記一般式(1)または(2)で表わされる化合物である。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
一般式(1)
【0018】
【化4】
一般式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基を有する(ジ)カルボキシアルキル基を表す。
一般式(2)
【0019】
【化5】
一般式(2)中、Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基を有する(ジ)カルボキシアルキル基を表す。
【0020】
またはRの炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等が挙げられる。RまたはRの炭素数1〜3のアルキル基からなる(ジ)カルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、1−カルボキシエチル基、2−カルボキシエチル基、1,2−ジカルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、1,3−ジカルボキシプロピル基が挙げられる。
【0021】
化合物(A)の具体例として、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプトチアゾリンメチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールメチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールエチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールプロピルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールブチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールイソブチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールドデシルエーテル、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)酢酸、2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、3−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、耐候性の観点で、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールメチルエーテル、3−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸が好ましく、2−メルカプトチアゾリン、3−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸が特に好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0023】
[化合物(B)]
化合物(B)は、没食子酸、没食子酸誘導体またはタンニン酸である。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0024】
没食子酸は、公知の方法により化学合成したものでもよく、マメ科植物、ウルシ科植物等から単離したものでもよい。また、これらの植物から単離したものに、更に化学合成を加えたものでもよく、これらの植物から得られた没食子酸を含有するエキスを、そのまま用いてもよい。また、没食子酸としては、市販品を使用することができる。
【0025】
没食子酸誘導体は、例えば没食子酸エステルが挙げられる。炭素数1〜20のアルキル基を分子内に含む没食子酸のアルキルエステルが一般に知られている。没食子酸誘導体は、公知の方法により化学合成したものでもよく、五倍子等の植物などから単離したものでもよい。また、五倍子等の植物から単離したものに、更に化学合成を加えたものでもよく、五倍子等の植物から得られる没食子酸誘導体を含有するエキスを、そのまま用いてもよい。また、没食子酸誘導体としては、市販品を使用することができる。
【0026】
タンニン酸としては、ポリフェノール(タンニン)骨格を有する化合物であればよく、植物由来のタンニン酸を用いることができる。耐候性の観点で、五倍子または没食子由来のタンニン酸がさらに好ましい。
【0027】
化合物(B)の具体例として、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸イソブチル、没食子酸イソアミル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸ステアリル、タンニン酸等が挙げられる。これらの中でも、耐候性の観点で、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸イソブチル、没食子酸イソアミル、没食子酸オクチル、タンニン酸が好ましく、タンニン酸が特に好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0028】
[化合物(C)]
化合物(C)は、下記一般式(3)で表わされる化合物である。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
一般式(3)
【0029】
【化6】
一般式(3)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Rは水素原子、アセチル基、ピラゾイル基、アミノチアゾリル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、またはベンゾチアゾリル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルキル基を有するイソ酪酸アルキルエステル基を表す。
【0030】
ならびにRの炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0031】
化合物(C)の具体例として、メトキシイミノ酢酸、(2Z)−[(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)イミノ]-(1H-ピラゾール−5−イル)酢酸、(Z)−2−(メトキシイミノ)−3−オキソ酪酸メチル、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)酢酸エチル、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)酢酸、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)、(Z)-t-ブチル 2-({[1-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イルチオ)-2-オキソエチリデン]アミノ}オキシ)-2-メチルプロパノアートが挙げられる。
これらの中でも、耐候性の観点で、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)酢酸エチル、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)、(Z)-t-ブチル 2-({[1-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イルチオ)-2-オキソエチリデン]アミノ}オキシ)-2-メチルプロパノアートが好ましく、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)が特に好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0032】
本発明において、耐候性向上剤は各化合物(A)〜(C)を予め混合したものである必要はなく、最終的に耐候性を向上させたい材料に含有されていれば構わない。化合物(A)の質量と、化合物(B)と化合物(C)の合計質量の比は、1/800≦化合物(A)/[化合物(B)+化合物(C)]≦800/1であることが好ましく、1/80≦化合物(A)/[化合物(B)+化合物(C)]≦80/1であることがより好ましく、1/8≦化合物(A)/[化合物(B)+化合物(C)]≦8/1であることがさらに好ましい。
【0033】
[金属ナノワイヤ含有積層体]
金属ナノワイヤ含有積層体は、基板上に形成される。金属ナノワイヤ含有積層体とは、金属ナノワイヤ含有組成物を製膜して得られる金属ナノワイヤ含有層と、金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物を製膜して得られる、金属ナノワイヤ含有層上に配置された金属ナノワイヤ含有層を保護するための保護層とを、少なくとも1層ずつ有する積層体である。保護層 は、金属ナノワイヤ含有層の上に設けられるのであれば特に位置に制限はなく、例えば、金属ナノワイヤ含有層の第一主面側及び第二主面側のいずれか一方、または両面側に配置することができる。具体的には、図1に示すように、基板1上に形成された金属ナノワイヤ含有層2の第一主面上に保護層3を配置することができる。また、図2に示すように、金属ナノワイヤ含有層2の第一、第二主面の両面に保護層3を配置することもできる。金属ナノワイヤ含有層を保護する観点から、保護層は少なくも金属ナノワイヤ含有層の第一主面上に配置されることが好ましい。
金属ナノワイヤ含有層と保護層が互いに接する例を挙げて説明したが、金属ナノワイヤ含有層に接触しているか否かは問わない。そのため、金属ナノワイヤ含有層と保護層の間に他の層を介在させて配置してもよい。
保護層と金属ナノワイヤ含有層は隣接して配置されることが好ましく、保護層と金属ナノワイヤ含有層が接して配置されることがより好ましい。保護層(耐候性向上剤)が金属ナノワイヤ層に移行し、耐候性が向上するからである。
【0034】
[基板]
基板は、用途に応じて適宜選択し、堅くてもよく、曲がり易くてもよい。また、着色されていてもよい。本発明における基板は、公知の方法で得られる、あるいは市販品の基板であれば特に制限なく用いることができる。基板の材料の具体例として、ガラス、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルが挙げられる。基板には、有機機能性材料および無機機能性材料が、さらに形成されても良い。また、基板は多数積層されても良い。
【0035】
[金属ナノワイヤ含有組成物]
金属ナノワイヤ含有組成物は、金属ナノワイヤと、バインダーと、金属ナノワイヤ分散媒を含有し、さらに必要に応じて適宜耐候性向上剤、ならびに後述するその他の添加剤を含有してなる組成物である。
【0036】
[金属ナノワイヤ]
本発明において金属ナノワイヤとは、断面直径が1μm未満であり、アスペクト比(長軸長/直径)が10以上である、断面直径がナノレベルのワイヤ状の金属構造体である。
【0037】
金属ナノワイヤの直径は、5nm以上250nm未満であることが好ましく、10nm以上150nm未満であることがより好ましい。
【0038】
金属ナノワイヤの長軸長は、0.5μm以上500μm以下であることが好ましく、2.5μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0039】
金属ナノワイヤの金属種は、特に限定されない。金属種の具体例としては、金、銀、銅、白金およびこれらの金属の合金が挙げられる。性能面や製造の容易さ、コスト等を考慮すると、総合的には銀が好ましい。銀ナノワイヤは公知の製造方法で得られたものを用いることができる。本発明においては、N置換アクリルアミド含有重合体をワイヤ成長制御剤として、銀化合物をポリオール中において25〜180℃で反応させる工程を含む製造方法から得られた銀ナノワイヤが特に好ましい。
【0040】
[バインダー]
バインダーは、多糖類、水性ポリエステル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、多糖類単独、多糖類と水性ポリエステル樹脂との組み合わせが好ましく、多糖類と水性ポリエステル樹脂との組み合わせがさらに好ましい。
【0041】
[多糖類]
多糖類は、多糖およびその誘導体を言う。多糖の具体例としては、デンプン、プルラン、グアーガム、キサンタンガム、セルロース、キトサンおよびローカストビーンガム、並びに、それらの酵素分解物等を挙げることができる。また、多糖の誘導体の具体例としては、多糖に、メチル、エチル、プロピル等のアルキル基、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル等のヒドロキシアルキル基、カルボキシメチル、カルボキシエチル等のカルボキシアルキル基、およびその金属塩、の少なくともひとつを導入した部分エーテル化多糖の誘導体;多糖や部分エーテル化多糖の誘導体に、(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合した多糖の誘導体や部分エーテル化多糖の誘導体等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合した部分エーテル化多糖の誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合したヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0042】
[水性ポリエステル樹脂]
水性ポリエステル樹脂は、水系溶媒あるいは水系分散媒に、溶解あるいは分散しうるポリエステル樹脂であればよい。水性ポリエステル樹脂の具体例としては、多価カルボン酸およびそのエステル形成性誘導体と、ポリオールおよびそのエステル形成性誘導体と、の重縮合物が挙げられる。また、水性ポリエステル樹脂には、水性ポリエステル樹脂からの誘導体も含まれる。水性ポリエステル樹脂の誘導体の具体例としては、水性ポリエステルに(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合した、(メタ)アクリル変性水性ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル変性水性ポリエステル樹脂が好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0043】
上記の多価カルボン酸は2個以上のカルボン酸基を有する化合物であればよく、具体的には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;直鎖、分岐および脂環式のシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリカルボン酸;スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の金属スルホネート基含有ジカルボン酸とそのアルカリ金属塩等が挙げられる。多価カルボン酸のエステル形成性誘導体として、多価カルボン酸の無水物、エステル、酸クロライド、ハロゲン化物等の誘導体が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0044】
上記のポリオールは2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、エチレングリコールおよびジエチレングリコール、トリメチロールプロパンおよびグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール等のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等が挙げられる。ポリオールのエステル形成性誘導体として、ポリオールのヒドロキシル基がアセテート化された誘導体等が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0045】
[水性ポリウレタン樹脂]
水性ポリウレタン樹脂は、水系溶媒あるいは水系分散媒に、溶解あるいは分散しうるポリウレタン樹脂であればよい。水性ポリウレタン樹脂の具体例として、ジイソシアネートと、ポリオールと、を重付加反応させ、さらに、中和および鎖伸長し、水性化したもの等を挙げることができる。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0046】
[水性アクリル樹脂]
水性アクリル樹脂は、水系溶媒あるいは水系分散媒に、溶解あるいは分散しうるアクリル樹脂であればよい。水性アクリル樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル類とアニオン性の重合性モノマーとの共重合体である、アニオン性の水性アクリル樹脂や、(メタ)アクリル酸エステル類とカチオン性の重合性モノマーとの共重合体である、カチオン性の水性アクリル樹脂が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0047】
[水性エポキシ樹脂]
水性エポキシ樹脂は、水系溶媒あるいは水系分散媒に、溶解あるいは分散しうるエポキシ樹脂であればよい。水性エポキシ樹脂の具体例としては、a)ビスフェノール型エポキシオリゴマー、b)ビスフェノール型エポキシオリゴマーと、脂肪酸およびその誘導体、脂肪酸アミド、不飽和基含有アミン類、のいずれかと反応させた変性エポキシ樹脂、c)ビスフェノール型エポキシオリゴマーとポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとの混合物にビスフェノールAを反応させた変性エポキシ樹脂、のいずれかを原料として、前記a)〜c)原料樹脂中のエポキシ基にアミン化合物を反応させ、導入したアミン基の一部を酸で中和して水溶化または水分散性化した水性エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0048】
[金属ナノワイヤ分散媒]
金属ナノワイヤ含有組成物は、金属ナノワイヤ分散媒を含有する。金属ナノワイヤ分散媒は、金属ナノワイヤが分散可能であるとともに、金属ナノワイヤ含有組成物中の他の成分を溶解させ、成膜時に蒸発することで均一な塗膜を形成する化合物であればよい。金属ナノワイヤ分散媒としては、水、アルコール類が挙げられる。アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1,1−ジメチルエタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。これらの中でも、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが好ましく、水がさらに好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0049】
[その他]
金属ナノワイヤ含有組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、pH調製剤、導電補助剤、増粘剤、無機または有機の微粒子、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、レベリング剤、滑り賦活剤、帯電防止剤、染料、充填剤などを用いることができる。
【0050】
金属ナノワイヤ含有組成物中の、金属ナノワイヤの質量と、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)の合計質量との比は、金属ナノワイヤ含有組成物を塗布した塗膜の導電性と透明性の観点から、1/100≦[化合物(A)+化合物(B)+化合物(C)]/金属ナノワイヤ≦1/1であることが好ましく、1/50≦[化合物(A)+化合物(B)+化合物(C)]/金属ナノワイヤ≦1/2であることがさらに好ましい。
【0051】
[金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物]
金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物は、光重合開始剤および熱重合開始剤の少なくとも1つと、重合性モノマーおよびマクロモノマーの少なくとも1つと、耐候性向上剤とを含有し、さらに必要に応じて適宜溶媒、硬化助剤ならびに後述するその他の添加剤を含有してなる組成物である。
なお、金属ナノワイヤ含有層被覆用樹脂組成物を硬化させることにより、所定の成形品が得られる。
【0052】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は特に限定なく、公知の方法で得られる、あるいは市販品の光重合開始剤でよい。光重合開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、キサントン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン等が挙げられる。これらの中でも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが好ましく、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンがさらに好ましい。これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0053】
[熱重合開始剤]
熱重合開始剤は特に限定なく、公知の方法で得られる、あるいは市販品の熱重合開始剤でよい。熱重合開始剤の具体例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物類;過硫酸塩類や過酸化物類と亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、ブドウ糖、アスコルビン酸等の還元剤との組み合わせによるレドックス開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物類、が挙げられる。これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0054】
[重合性モノマーおよびマクロモノマー]
重合性モノマーおよびマクロモノマーとしては、可視光、または紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接または開始剤の作用を受けて重合反応を生じるモノマーおよびマクロモノマーであれば、特に限定はなく用いることができる。1分子中に1個の官能基を有する重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アリルアルコール、グリセロールモノ(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリル化合物;スチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。また、1分子中に2個以上の官能基を有する重合性モノマーの具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタエリスリトール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸トリアクリレート等が挙げられる。マクロモノマーの具体例としては、1分子あたり平均1個以上重合性不飽和基を有する重合性ウレタンアクリレート樹脂、重合性ポリウレタン樹脂、重合性アクリル樹脂、重合性エポキシ樹脂、重合性ポリエステル樹脂、を用いることができる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタエリスリトール、重合性ウレタンアクリレート樹脂、重合性ポリウレタン樹脂が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、がさらに好ましい。これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0055】
[溶媒]
金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物には、更に溶媒を含有することができる。溶媒は金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物中の他の成分を溶解させ、製膜時に蒸発することで均一な塗膜を形成する化合物であればよい。溶媒の具体例として、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコール、メチルエチルジグリコール、およびN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、1−プロパノール、2−プロパノール、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0056】
[硬化助剤]
金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物には、更に硬化助剤を含有することができる。硬化助剤は、1分子中に反応性官能基を2個以上有する化合物であればよい。反応性官能基の具体例としては、イソシアネート基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0057】
[その他]
金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、有機の微粒子、難燃剤、難燃助剤、耐酸化安定剤、レベリング剤、滑り賦活剤、帯電防止剤、染料、充填剤などを用いることができる。
【0058】
本発明において、金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物における耐候性向上剤の合計含有量は、金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物の不揮発性分に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
[製膜]
金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物、ならびに金属ナノワイヤ含有組成物の塗布方法としては、公知な塗布方法を用いることができる。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、ブレードコート法、バーコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法、ディスペンス法およびインクジェット法等が挙げられる。また、これらの塗布方法を用いて複数回塗り重ねてもよい。
【0060】
[積層方法]
金属ナノワイヤ含有積層体の製造方法は特に限定されない。例えば、基材上に金属ナノワイヤ含有組成物を製膜することで金属ナノワイヤ含有層を形成し、さらにその上面に金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物を製膜することで金属ナノワイヤ含有層の保護層を形成する方法、あるいは、基材上に予め保護層を形成しておき、その上に順に金属ナノワイヤ含有層、保護層を形成する方法などが挙げられる。
【0061】
金属ナノワイヤ含有組成物は、塗布方法に応じて任意の濃度に希釈して塗布することができる。希釈分散媒として、水、アルコール類が挙げられる。アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1,1−ジメチルエタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0062】
金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物は、塗布方法に応じて任意の濃度に希釈して塗布することができる。希釈溶剤の具体例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコール、メチルエチルジグリコール、およびN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0063】
本発明の耐候性向上剤は、太陽光長時間暴露下と高温高湿条件下の双方における、金属ナノワイヤを用いた透明導電膜の劣化を抑制することができるため、例えば、液晶ディスプレイ用電極材、プラズマディスプレイ用電極材、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ用電極材、電子ペーパー用電極材、タッチパネル用電極材、薄膜型アモルファスSi太陽電池用電極材、色素増感太陽電池用電極材、電磁波シールド材、帯電防止材等の各種デバイスの透明導電膜を形成するために幅広く適用される。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例では金属種として銀を用いているため、本発明で規定する金属ナノワイヤを便宜的に銀ナノワイヤと読み替えた。なお、実施例、比較例中の「部」および「%」は特に断らない限り質量基準である。実施例、比較例中において、構成成分としての水は純水を用いた。
【0065】
[銀ナノワイヤの直径]
走査型電子顕微鏡(SEM;日本電子(株)製、JSM−5610LV)を用い、100個の銀ナノワイヤを観察し、その算術平均値から銀ナノワイヤの直径を求めた。
【0066】
[銀ナノワイヤの長軸長]
走査型電子顕微鏡(SEM;日本電子(株)製、JSM−5610LV)を用い、100個の銀ナノワイヤを観察し、その算術平均値から銀ナノワイヤの長軸長を求めた。
【0067】
[銀ナノワイヤ含有積層体の平均表面電気抵抗値]
銀ナノワイヤ含有積層体上の異なる10部位の表面電気抵抗値(Ω/□)を測定し、その算術平均値から銀ナノワイヤ含有積層体の平均表面電気抵抗値を求めた。表面電気抵抗値の測定には、非接触式表面抵抗測定器EC−80P(ナプソン(株)製)を用いた。
【0068】
[銀ナノワイヤ含有積層体による基板の全光線透過率変化量]
何も施されていない基板と、銀ナノワイヤ含有積層体を有する基板の全光線透過率を測定し、その差から銀ナノワイヤ含有積層体による基板の全光線透過率変化量を求めた。全光線透過率変化量は、その値が低い方が、銀ナノワイヤ含有積層体の透明性が高い。測定には、NDH5000(日本電色工業(株)製)を用いた。
【0069】
[銀ナノワイヤ含有積層体による基板のヘイズ変化量]
何も施されていない基板と、銀ナノワイヤ含有積層体を有する基板のヘイズを測定し、その差から銀ナノワイヤ含有積層体による基板のヘイズ変化量を求めた。ヘイズ変化量は、その値が低い方が、銀ナノワイヤ含有積層体の濁度が低い。測定には、NDH5000(日本電色工業(株)製)を用いた。
【0070】
[銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性]
PETフィルム上に形成された銀ナノワイヤ含有積層体上に、光学弾性樹脂(3M(株)製、商品名8146−2、膜厚50μm)を片面のセパレータを剥がして貼り合せた。さらに、貼り合わせた光学弾性樹脂の残る片面のセパレータを剥がした上からガラス基板を貼り合わせ、PETフィルム上に、銀ナノワイヤ含有積層体、光学弾性樹脂、ガラスが順に積層された積層体を調製した。この積層体の全面の半分を覆うように、ガラス面側に黒テープ(ニチバン(株)製、ビニールテープVT−50黒)を貼り付けて、光安定性試験用試料を調製した。
【0071】
調製された光安定性試験用試料について、そのPETフィルム面から表面電気抵抗値を測定した。表面電気抵抗値の測定には、非接触式表面抵抗測定器EC−80P(ナプソン(株)製)を用いた。表面電気抵抗値は、照射部(黒テープが貼り付けていない領域)、境界部(黒テープを貼り付けた領域と貼り付けていない領域の境界部)と遮光部(黒テープが貼り付けた領域)の3箇所について測定し、この表面電気抵抗値を各部の各々の初期値(Rp0)とした。
【0072】
次いで、光安定性試験用試料について、光安定性試験機(アトラス マテリアルテクノロジー社製、SUNTEST CPS+)を用いてキセノンランプを照射した。試験条件は、昼光フィルター装填、ブラックパネル温度70℃、照射強度750W/m(波長300nm〜800nmの分光放射照度の積算値)、試験槽内の温度は42℃、湿度は50%RH、試験時間500時間とした。キセノンランプは、光安定性試験用試料の黒テープ貼り付け面側から照射した。光安定性試験後、室温で1日静置してから、改めて照射部、境界部と遮光部の表面電気抵抗値を測定した。この表面電気抵抗値を光安定性試験後の表面電気抵抗値(Rp1)とした。
【0073】
銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性を、光安定性試験前後の表面電気抵抗値Rp0、Rp1に基づき、以下に従って評価した。
AA ; Rp1/Rp0 ≦ 1.1
A ; 1.1 < Rp1/Rp0 ≦ 1.2
BB ; 1.2 < Rp1/Rp0 ≦ 1.3
B ; 1.3 < Rp1/Rp0 ≦ 1.5
BC ; 1.5 < Rp1/Rp0 ≦ 2.0
C ; 2.0 < Rp1/Rp0
なお、光安定性の優劣の順序は以下の通りである。
光安定性: AA(優)→A→BB→B→BC→C(劣)
【0074】
[銀ナノワイヤ含有積層体の高温高湿安定性]
銀ナノワイヤ含有積層体について、恒温恒湿器試験機(いすゞ製作所製、TPAV−48−20)を用いて、85℃85%RHの環境下で240時間静置することにより、高温高湿安定性試験を行った。高温高湿安定性試験前の表面電気抵抗値を測定し、この表面電気抵抗値を初期値(Rw0)とした。表面電気抵抗値の測定には、非接触式表面抵抗測定器EC−80P(ナプソン(株)製)を用いた。高温高湿安定性試験後、室温で1日静置してから、改めて表面電気抵抗値を測定した。この表面電気抵抗値を高温高湿安定性試験後の表面電気抵抗値(Rw1)とした。
【0075】
銀ナノワイヤ含有積層体の高温高湿安定性を、高温高湿安定性試験前後の表面電気抵抗値Rw0、Rw1に基づき、以下に従って評価した。
AA ; Rw1/Rw0 ≦ 1.1
A ; 1.1 < Rw1/Rw0 ≦ 1.2
BB ; 1.2 < Rw1/Rw0 ≦ 1.3
B ; 1.3 < Rw1/Rw0 ≦ 1.5
C ; 1.5 < Rw1/Rw0 ≦ 2.0
CC ; 2.0 < Rw1/Rw0
なお、高温高湿安定性の優劣の順序は以下の通りである。
高温高湿安定性: AA(優)→A→BB→B→C→CC(劣)
【0076】
[銀ナノワイヤ分散液の調製]
遮光下において、攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコ(以下、「攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコ)を「四つ口フラスコ」と略する)に窒素を送入しながら、銀ナノワイヤ成長制御剤として重量平均分子量29万のN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド重合体1.00質量部と、1,2−プロパンジオール117.9質量部とを加え、120℃で攪拌し溶解させた。ここに、1,2−プロパンジオール9.0質量部と塩化アンモニウム0.0054質量部とを加え、140℃に昇温し、15分間攪拌した。さらに1,2−プロパンジオール40.0質量部と硝酸銀0.85質量部とを加え、140℃で45分間攪拌し、銀ナノワイヤを作成した。得られた銀ナノワイヤ分散液に大過剰の純水を加え、銀ナノワイヤ成分を濾別し、残渣を銀ナノワイヤ分散媒である水に再分散させた。この操作を複数回繰り返すことで銀ナノワイヤ成分を精製し、銀ナノワイヤ含有量12.5質量%の銀ナノワイヤ分散液を調製した。得られた銀ナノワイヤは平均長軸長14μm、平均直径41nmであった。
【0077】
[バインダー(a)の調製]
四つ口フラスコにヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)品、製品名 メトローズ90SH15000)20質量部、純水950質量部を仕込んだ後、5質量%燐酸0.3質量部を添加し、50℃まで昇温した。続けて、N−メチロールアクリルアミド0.1質量部を添加し、6時間攪拌した。さらに、70℃まで昇温し、窒素ガスを通しながら、メチルメタクリレート15質量部、n−ブチルアクリレート5質量部、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液8質量部を添加し、3時間攪拌し、(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合したヒドロキシプロピルメチルセルロース分散液である4.0質量%のバインダー(a)を合成した。
【0078】
[バインダー(b)の調製]
四つ口フラスコに、窒素ガスを通しながら、テレフタル酸ジメチル106質量部、イソフタル酸ジメチル78質量部、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム18質量部、エチレングリコール124質量部、無水酢酸ナトリウム0.8質量部を仕込んだ後、攪拌しながら150℃まで昇温した。生成するメタノールを反応系外に留去しながら、さらに180℃まで昇温し、3時間攪拌した。テトラ−n−ブチルチタネート0.2質量部を添加し、攪拌しながら230℃まで昇温し、10hPaの減圧下で、生成するエチレングリコールを反応系外に留去しながら、7時間攪拌した後、180℃まで冷却した。無水トリメリット酸1質量部を添加し、3時間攪拌した後、室温まで冷却することで、水性ポリエステル樹脂(b−1)を合成した。四つ口フラスコに、上記の水性ポリエステル樹脂(b−1)200質量部、純水298質量部を仕込んだ後、攪拌しながら60℃まで昇温し、水性ポリエステル樹脂を溶解させた。グリシジルメタクリレート2.5質量部を添加し、1時間攪拌した。さらに、純水279質量部を添加し、40℃まで攪拌しながら冷却し、メチルメタクリレート37.5質量部、n−ブチルアクリレート12.5質量部を添加し、70℃まで攪拌しながら昇温した。窒素ガスを通しながら、1質量%過硫酸アンモニウム4質量部を添加し、4時間攪拌した後、純水167部を添加し、10.0質量%の(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合した水性ポリエステル樹脂分散液であるバインダー(b)を合成した。
【0079】
[銀ナノワイヤ含有組成物(1)の調製]
四つ口フラスコに、12.5質量%の銀ナノワイヤ分散液0.48質量部、バインダーとして、バインダー(a)2.00質量部、分散媒として純水97.52質量部を仕込んだ後、均一な分散液になるまで攪拌し、銀ナノワイヤ含有組成物(1)を調製した。
【0080】
[銀ナノワイヤ含有組成物(2)の調製]
四つ口フラスコに、12.5質量%の銀ナノワイヤ分散液0.48質量部、バインダーとして、バインダー(a)2.00質量部、耐候性向上剤として3−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸(東京化成工業(株)品)0.006質量部、分散媒として純水97.514質量部を仕込んだ後、均一な分散液になるまで攪拌し、銀ナノワイヤ含有組成物(2)を調製した。
【0081】
[銀ナノワイヤ含有組成物(3)の調製]
四つ口フラスコに、12.5質量%の銀ナノワイヤ分散液0.48質量部、バインダーとして、バインダー(a)1.50質量部、バインダー(b)0.20質量部、分散媒として純水97.82質量部を仕込んだ後、均一な分散液になるまで攪拌し、銀ナノワイヤ含有組成物(3)を調製した。
【0082】
[銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物の調製]
四つ口フラスコに、重合性モノマーおよびマクロモノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート15.00質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート5.00質量部、重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.80質量部、耐候性向上剤として2−メルカプトベンゾチアゾール(東京化成工業(株)品)0.40質量部、没食子酸(東京化成工業(株)品)0.40質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル80.00質量部を仕込んだ後、均一な溶液になるまで攪拌し、銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物(1)を調製した。
【0083】
銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物(1)の調整例の耐候性向上剤を以下の表1および表2のようにした以外は同様にして銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物(2)〜(34)を得た。
【0084】
【表1】
【0085】

















































【表2】
【0086】
なお、表中の耐候性向上剤は、以下のものを用いた。
2−メルカプトベンゾチアゾール:東京化成工業(株)品
2−メルカプトベンゾチアゾールメチルエーテル:東京化成工業(株)品
2−メルカプトチアゾリン:東京化成工業(株)品
3−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸:東京化成工業(株)品
(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸:Hammond Group社品 (製品名 HALOX FLASH-X 350D)
没食子酸:東京化成工業(株)品
没食子酸プロピル:東京化成工業(株)品
没食子酸オクチル:東京化成工業(株)品
タンニン酸:関東化学(株)品
(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)酢酸エチル:東京化成工業(株)品
(Z)-t-ブチル 2-({[1-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イルチオ)-2-オキソエチリデン]アミノ}オキシ)-2-メチルプロパノアート:Ark Pharm社品
(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル) :東京化成工業(株)品
5-メルカプト-1-フェニル-1H-テトラゾール:東京化成工業(株)品
トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム(III) :東京化成工業(株)品
4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール:BASFジャパン(株)品 (製品名 イルガノックス565)
2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール:BASFジャパン(株)品 (製品名 TINUVIN P)
3,3'-チオジプロピオン酸ジドデシル:三菱化学(株)品 (製品名 DLTP「ヨシトミ」)
メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル:(株)アデカ品 (製品名 アデカスタブLA-82)
トリフェニルフォスフィン:東京化成工業(株)品
ジブチルヒドロキシトルエン:東京化成工業(株)品
α-テルピネオール:東京化成工業(株)品
D-ペニシラミン:東京化成工業(株)品
【0087】
[銀ナノワイヤ含有層(1)の調製]
銀ナノワイヤ含有組成物(1)を、膜厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ(株)製、商品名「ルミラーU403」)上に24g/mで均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で1分間乾燥し、銀ナノワイヤ含有層(1)を調製した。
【0088】
[銀ナノワイヤ含有層(2)の調製]
銀ナノワイヤ含有組成物(2)を、膜厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ(株)製、商品名「ルミラーU403」)上に24g/mで均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で1分間乾燥し、銀ナノワイヤ含有層(2)を調製した。
【0089】
[銀ナノワイヤ含有層(3)の調製]
銀ナノワイヤ含有組成物(3)を、膜厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ(株)製、商品名「ルミラーU403」)上に24g/mで均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で1分間乾燥し、銀ナノワイヤ含有層(3)を調製した。
【0090】
[銀ナノワイヤ含有層(4)の調製]
銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物(12)をプロピレングリコールモノメチルエーテルで40倍に希釈し、膜厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ(株)製、商品名「ルミラーU403」)上に24g/mで均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で5分間乾燥した後、紫外線照射装置UV1501C-SZ(セルエンジニア(株)製)を用いて、PET基板上に、上方から500mJ/cmの条件でUV光を照射することで、銀ナノワイヤ層の保護層を形成した。この保護層上に、銀ナノワイヤ含有組成物(1)を24g/mで均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で1分間乾燥し、銀ナノワイヤ含有層(4)を調製した。
【0091】
[実施例1]
〈銀ナノワイヤ含有積層体(1)の調製〉
銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物(1)をプロピレングリコールモノメチルエーテルで40倍に希釈し、銀ナノワイヤ含有層(1)上に、に24g/mで均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で5分間乾燥した後、紫外線照射装置UV1501C-SZ(セルエンジニア(株)製)を用いて、PET基板上に、上方から500mJ/cmの条件でUV光を照射することで、銀ナノワイヤ含有積層体(1)を調製した。表3に実施例1の銀ナノワイヤ含有積層体の各構成成分、評価結果を示す。
【0092】
[実施例2〜21]
銀ナノワイヤ含有積層体(1)の調製例の銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物と金属ナノワイヤ含有層を以下の表3、表4のようにした以外は同様にして銀ナノワイヤ含有積層体(2)〜(23)を調製した。表3、表4に実施例2〜21の銀ナノワイヤ含有積層体の各構成成分、評価結果を示す。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
[比較例1〜14]
銀ナノワイヤ含有積層体(1)の調整例の銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物を以下の表5のようにした以外は同様にして銀ナノワイヤ含有積層体(24)〜(37)を得た。表5に比較例1〜14の銀ナノワイヤ含有積層体の各構成成分、評価結果を示す。
【0096】
【表5】
【0097】
得られた銀ナノワイヤ含有積層体の平均表面電気抵抗値は、いずれも60Ω/□以下であり、良好な平均表面電気抵抗値を確保できていた。
【0098】
得られた銀ナノワイヤ含有積層体による基板の全光線透過率変化量は、いずれも1%以下であり、高い透明性を確保できていた。
【0099】
得られた銀ナノワイヤ含有積層体による基板のヘイズ変化量は、いずれも1%以下であり、低い濁度を確保できていた。
【0100】
比較例1、5〜14は、耐候性向上剤として化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)の何れも含有しないため、実施例1に比べ、銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性と高温高湿安定性が低いことがわかる。
【0101】
比較例2は、耐候性向上剤として化合物(B)、化合物(C)を含有しないため、実施例1に比べ、銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性が低いことがわかる。
【0102】
比較例3、4は、耐候性向上剤として化合物(A)を含有しないため、実施例1に比べ、銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性と高温高湿安定性が低いことがわかる。
【0103】
実施例1は、金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物における耐候性向上剤の合計含有量が、金属ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物の不揮発性分に対して、1質量%以上5質量%以下であることから、その範囲外にある実施例2、3に比べて、銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性と高温高湿安定性が高いことがわかる。
【0104】
実施例1、5、7、8は、化合物(A)の質量と、化合物(B)と化合物(C)の合計質量の比が、1/80≦化合物(A)/[化合物(B)+化合物(C)]≦80/1であるため、実施例4、6に比べて銀ナノワイヤ含有積層体の高温高湿安定性が高いことがわかる。
【0105】
実施例9〜13は、化合物(A)として3−(2−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸が含まれるため、実施例1に比べて銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性が高いことがわかる。
【0106】
実施例14〜16は、化合物(B)としてタンニン酸が含まれるため、実施例9〜13に比べて銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性が高いことがわかる。
【0107】
実施例17〜19は、化合物(C)として(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)が含まれるため、実施例9〜13に比べて銀ナノワイヤ含有積層体の光安定性が高いことがわかる。
【0108】
実施例20は、化合物(B)としてタンニン酸が、化合物(C)として(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)が含まれるため、実施例14〜19と同様に銀ナノワイヤ含有積層体は高い光安定性を示すことがわかる。
【0109】
実施例21は、銀ナノワイヤ含有層に耐候性向上剤として化合物(A)が含まれるため、実施例14に比べて銀ナノワイヤ含有積層体の高温高湿安定性が高いことがわかる。
【0110】
実施例22は、銀ナノワイヤ含有層にポリエステル樹脂が含まれるため、実施例14に比べて銀ナノワイヤ含有積層体の高温高湿安定性が高いことがわかる。
【0111】
実施例23は、銀ナノワイヤ含有層の両面に銀ナノワイヤ含有層被膜用樹脂組成物による保護層が積層されているため、実施例14に比べて銀ナノワイヤ含有積層体の高温高湿安定性が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0112】
1 基板
2 金属ナノワイヤ含有層
3 保護層
図1
図2