特許第6642756号(P6642756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6642756冷媒を含有する組成物、熱移動媒体及び熱サイクルシステム
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  • 特許6642756-冷媒を含有する組成物、熱移動媒体及び熱サイクルシステム 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642756
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】冷媒を含有する組成物、熱移動媒体及び熱サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20200130BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K5/04 A
   C09K5/04 E
   F25B1/00 396A
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-78986(P2019-78986)
(22)【出願日】2019年4月18日
(65)【公開番号】特開2019-194310(P2019-194310A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2019年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-84358(P2018-84358)
(32)【優先日】2018年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一博
(72)【発明者】
【氏名】大久保 瞬
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】高桑 達哉
(72)【発明者】
【氏名】倉本 圭
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−214632(JP,A)
【文献】 特開2018−039986(JP,A)
【文献】 特表2018−508597(JP,A)
【文献】 特表2014−525975(JP,A)
【文献】 特表2007−536390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00− 5/24
F25B 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、CO(R744)、並びにトランス−1,2−ジフルオロエチレン[(E)−HFO−1132]、シス−1,2−ジフルオロエチレン[(Z)−HFO−1132]、フルオロエチレン(HFO−1141)及び3,3,3−トリフルオロプロピン(TFP)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物Aを含有し、
R744及び前記化合物Aの合計量を100質量%として、R744を30質量%以下含有する、組成物。
【請求項2】
R744及び前記化合物Aの合計量を100質量%として、R744を0.1〜30質量%含有し、前記化合物Aを70〜99.9質量%含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記冷媒が、更に、テトラフルオロメタン(FC−14)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,2−ジフルオロエタン(HFC−152)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン[(E)−HFO−1234ze]、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)及びジフルオロプロペン(HFO−1252)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物Bを含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R410Aの代替冷媒として用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を含む、熱移動媒体。
【請求項8】
請求項7に記載の熱移動媒体を用いた熱サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含有する組成物、熱移動媒体及び熱サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が深刻な問題として全世界で議論される中、環境への負担が少ない空調、冷凍装置等の熱サイクルシステムの開発は、益々重要性を増してきている。
【0003】
現在、家庭用エアコン等の空調用冷媒として用いられているR410Aに代替可能な低地球温暖化係数(GWP)の混合冷媒が種々提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−056374号
【特許文献2】特開2017−186563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2には、R410Aと比べてGWPが低いこと及びR410Aと同等のCoefficient Of Performance(以下、単にCOPともいう。)を有すること、という特性を有する冷媒について記載されていない。
【0006】
本開示は、R410Aと比べてGWPが低いこと及びR410Aと同等のCOPを有すること、という特性を有する冷媒を含有する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.
冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、CO(R744)、並びにトランス−1,2−ジフルオロエチレン[(E)−HFO−1132]、シス−1,2−ジフルオロエチレン[(Z)−HFO−1132]、フルオロエチレン(HFO−1141)及び3,3,3−トリフルオロプロピン(TFP)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物Aを含有する、組成物。
項2.
R744及び前記化合物Aの合計量を100質量%として、R744を0.1〜50質量%含有し、前記化合物Aを50〜99.9質量%含有する、項1に記載の組成物。
項3.
前記冷媒が、更に、テトラフルオロメタン(FC−14)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,2−ジフルオロエタン(HFC−152)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン[(E)−HFO−1234ze]、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)及びジフルオロプロペン(HFO−1252)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物Bを含有する、項1又は2に記載の組成物。
項4.
R410Aの代替冷媒として用いられる、項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
項5.
更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる、項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
項6.
項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍装置。
項7.
項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を含む、熱移動媒体。
項8.
項7に記載の熱移動媒体を用いた熱サイクルシステム。
【発明の効果】
【0008】
本開示の冷媒を含有する組成物は、R410Aと比べてGWPが低いこと及びR410Aと同等のCOPを有すること、という特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】燃焼性(可燃又は不燃)の判別をするための実験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、冷媒としてCO(R744)、及び特定のエチレン系フルオロオレフィン等を含有する組成物が、上記特性を有していることを見出した。
【0011】
本開示は、かかる知見に基づき、更に研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
【0012】
<用語の定義>
本明細書中、語句「含有」及び語句「含む」は、語句「実質的にからなる」及び語句「のみからなる」という概念を意図して用いられる。
【0013】
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、更に冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。
【0014】
冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。
【0015】
本明細書において、用語「冷媒を含有する組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、(2)その他の成分を更に含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍装置用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍装置用作動流体とが少なくとも含まれる。
【0016】
本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。
【0017】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0018】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0019】
本明細書において用語「冷凍装置」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、広義には、冷凍装置は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。本開示において、広義には、冷凍装置はヒートポンプと同義である。
【0020】
また、本開示において、狭義には、利用する温度領域及び作動温度の違いにより冷凍装置はヒートポンプとは区別して用いられる。この場合、大気温度よりも低い温度領域に低温熱源を置くものを冷凍装置といい、これに対して低温熱源を大気温度の近くに置いて冷凍サイクルを駆動することによる放熱作用を利用するものをヒートポンプということもある。なお、「冷房モード」及び「暖房モード」等を有するエアコン等のように、同一の機器であるにもかかわらず、狭義の冷凍装置及び狭義のヒートポンプの機能を兼ね備えるものも存在する。本明細書においては、特に断りのない限り、「冷凍装置」及び「ヒートポンプ」は全て広義の意味で用いられる。
【0021】
本明細書において、「車載用空調機器」とは、ガソリン車、ハイブリッド自動車、電気自動車、水素自動車などの自動車で用いられる冷凍装置の一種である。車載用空調機器とは、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。
【0022】
本明細書において、「ターボ冷凍機」とは、大型冷凍装置の一種であって、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを遠心式圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。なお、上記「大型冷凍機」とは、建物単位での空調を目的とした大型空調機を指す。
【0023】
本明細書において冷媒が「不燃」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34−2013規格において冷媒許容濃度のうち最も燃えやすい組成であるWCF(Worst case of formulation for flammability)組成が「クラス1」と判断されることを意味する。
【0024】
本明細書において冷媒が「微燃性」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34−2013規格においてWCF組成が「クラス2L」と判断されることを意味する。
【0025】
本明細書において冷媒が「弱燃性」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34−2013規格においてWCF組成が「クラス2」と判断されることを意味する。
【0026】
本明細書において温度グライド(Temperature Glide)とは、冷媒システムの構成要素内における本開示の冷媒を含有する組成物の相変化過程の開始温度と終了温度の差の絶対値と言い換えることができる。
【0027】
本明細書において、GWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいた値を意味する。
【0028】
1.冷媒
1−1 冷媒成分
<R744及び化合物Aを含有する混合冷媒>
本開示の冷媒は、CO(R744)を必須成分として含有し、且つ、トランス−1,2−ジフルオロエチレン[(E)−HFO−1132]、シス−1,2−ジフルオロエチレン[(Z)−HFO−1132]、フルオロエチレン(HFO−1141)及び3,3,3−トリフルオロプロピン(CFC≡CH;TFP)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物Aを含有する、混合冷媒である。
【0029】
本開示の冷媒は、このような構成を有することによって、(1)GWPは、R410AのGWP(2088)よりも十分に低いこと、及び(2)R410Aと同等程度のCOPを有することR410A代替冷媒に通常求められる諸特性を有する。また、本開示の冷媒の少なくとも一部は、更に(3)R410Aと同等程度の冷凍能力を有することという、諸特性を有する。
【0030】
本開示の化合物Aとは、(E)−HFO−1132、(Z)−HFO−1132、HFO−1141及びTFPからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0031】
上記化合物Aを単独で使用する場合は、上記化合物Aの中でも、R410Aと同等程度のCOP及びR410Aと同等程度又はそれ以上の冷凍能力を有する観点から、(E)−HFO−1132、HFO−1141又はTFPが好ましく、(E)−HFO−1132又はHFO−1141がより好ましい。
【0032】
上記化合物Aを2種以上組み合わせて使用する場合は、R410Aと同等程度のCOP、及びR410Aと同等程度又はそれ以上の冷凍能力を有する観点から、(E)−HFO−1132及びHFO−1141からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を使用することが好ましい。
【0033】
本開示の冷媒は、該冷媒が、R744及び上記化合物Aの合計量を100質量%として、R744を0.1〜50質量%含有し、上記化合物Aを50〜99.9質量%含有する混合冷媒が好ましい。この場合、本開示の冷媒は、GWPが1以下であり、R410Aと同等程度のCOPを有し、且つR410Aを基準とする冷凍能力比がより優れたものとなる。
【0034】
本開示の冷媒は、該冷媒が、R744及び上記化合物Aの合計量を100質量%として、R744を2.5〜10質量%含有し、上記化合物Aを90〜97.5質量%含有する混合冷媒がより好ましい。この場合、本開示の冷媒は、GWPが1以下であり、温度グライドが15℃以下であり、R410Aと同等程度のCOPを有し、且つR410Aを基準とする冷凍能力比がより一層優れたものとなる。
【0035】
本開示の冷媒は、化合物として、(E)−HFO−1132、(Z)−HFO−1132、HFO−1141又はTFPを99.9質量%以下含有する混合冷媒であることが好ましく、95質量%以下含有する混合冷媒であることがより好ましい。当該化合物の含有量がこのような範囲内にある場合、例えば、圧縮機では200℃以上及び8MpaG以上の環境下(温度及び圧力が高い環境下)で局所的に起こり得る冷媒の重合反応を抑制することができ、それ故冷媒を安定に保持することができる。
【0036】
<R744、化合物A及び化合物Bを含有する混合冷媒>
本項目における化合物Aとしては、<R744及び化合物Aを含有する混合冷媒>の項目に記載した化合物Aを使用することができる。
【0037】
本開示の冷媒は、CO(R744)及び上記化合物Aに加えて、更に、テトラフルオロメタン(FC−14)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,2−ジフルオロエタン(HFC−152)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン[(E)−HFO−1234ze]、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)及びジフルオロプロペン(HFO−1252)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物Bを含有する、混合冷媒であることが好ましい。
【0038】
本開示の冷媒は、このような構成を有することによって、(1)GWPが十分に小さいこと、(2)R410Aと同等のCOPを有すること、及び(3)R410Aと同等の冷凍能力を有することという、R410A代替冷媒として望ましい諸特性を有する。
【0039】
本開示の化合物Bとしては、FC−14、HFC−23、HFC−32、HFC−125、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HFC−152、HFC−143a、HFC−143、HFC−227ea、HFO−1234yf、(E)−HFO−1234ze、HFO−1225ye、HFO−1243zf又はHFO−1252が挙げられる。これらの化合物Bは、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
上記化合物Bを単独で使用する場合は、上記化合物Bの中でも、GWP、COP及び冷凍能力の観点から、HFC−32、HFC−134、HFC−134a、HFC−152a、HFC−152、HFO−1234yf、(E)−HFO−1234ze、HFO−1225ye、HFO−1243zf又はHFO−1252が好ましく、HFC−32又は(E)−HFO−1234zeがより好ましく、HFC−32が特に好ましい。
【0041】
上記化合物Bを2種以上組み合わせて使用する場合は、燃焼性、GWP、COP及び冷凍能力の観点から、HFC−134とHFC−32との組み合わせ、HFC−134aとHFC−32との組み合わせ、又はHFC−134とHFC−134aとHFC−32との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせの中でも、HFC−134aとHFC−32との組み合わせがより好ましい。
【0042】
本開示の冷媒は、該冷媒が、R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量を100質量%として、R744を0.1〜10質量%含有し、上記化合物Bを10〜50質量%含有する混合冷媒が好ましい。この場合、本開示の冷媒は、GWPが750以下であること、及びR410Aと同等のCOPを有することという性能を有し、且つR410Aを基準とする冷凍能力比がより優れたものとなる。
【0043】
本開示の冷媒は、以下の(1)〜(6)のいずれかに示される混合冷媒であることが好ましい。
(1)R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量を100質量%として、R744を0.1〜10質量%含有し、上記化合物Bとして、HFC−134aを30〜52質量%含有し、残部が上記化合物Aである混合冷媒。
(2)R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量を100質量%として、R744を0.1〜10質量%含有し、上記化合物Bとして、HFC−134aを30〜52質量%含有し、HFC−32を0.1〜30質量%含有し、残部が上記化合物Aである混合冷媒。
(3)R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量を100質量%として、R744を0.1〜10質量%含有し、上記化合物Bとして、HFC−134を30〜52質量%含有し、残部が上記化合物Aである混合冷媒。
(4)R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量を100質量%として、R744を0.1〜10質量%含有し、上記化合物Bとして、HFC−134を30〜52質量%含有し、HFC−32を0.1〜30質量%含有し、残部が上記化合物Aである混合冷媒。
(5)R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量を100質量%として、R744を0.1〜10質量%含有し、上記化合物Bとして、HFC−134a及びHFC−134をこれらの合計量が30〜52質量%となるように含有し、残部が上記化合物Aである混合冷媒。
(6)R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量を100質量%として、R744を0.1〜10質量%含有し、上記化合物Bとして、HFC−134a及びHFC−134をこれらの合計量が30〜52質量%となるように含有し、HFC−32を0.1〜30質量%含有し、残部が上記化合物Aである混合冷媒である。
【0044】
本開示の冷媒が、上記(1)〜(6)のいずれかに示される混合冷媒である場合、GWPが750以下であること、不燃であること、及びR410Aと同等のCOPを有することという性能を有し、且つR410Aを基準とする冷凍能力比がより一層優れたものとなる。
【0045】
本開示の冷媒は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、R744、上記化合物A及び上記化合物Bに加えて、更に他の追加的な冷媒を含有する混合冷媒であってもよい。この場合、R744、上記化合物A及び上記化合物Bの合計量が、本開示の冷媒全体に対して、99.5質量%以上100質量%未満であることが好ましく、99.75質量%以上100質量%未満であることがより好ましく、99.9質量%%以上100質量%未満であることが更に好ましい。
【0046】
上記追加的な冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。上記混合冷媒は、上記追加的な冷媒を単独で含んでいてもよいし、上記追加的な冷媒を2種以上を含んでいてもよい。
【0047】
1−2 用途
本開示の冷媒は、冷凍装置における作動流体として好ましく使用することができる。
【0048】
本開示の冷媒を含有する組成物は、R410A、R407C、R404A等のHFC冷媒、及びR22等のHCFC冷媒の代替冷媒としての使用に適している。これらの中でも、本開示の冷媒を含有する組成物は、R410Aの代替冷媒としての使用に特に適している。
【0049】
2.冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。
【0050】
また、本開示の冷媒組成物は、更に少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍装置用作動流体を得るために用いることができる。
【0051】
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、更に少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。
【0052】
上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍装置における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。
【0053】
従って、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0〜0.5質量%であり、更に好ましくは0〜0.25質量%であり、特に好ましくは0〜0.1質量%である。
【0054】
2−1
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。
【0055】
冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0〜0.1質量%であることが好ましいく、0〜0.075質量%であることがより好ましく、0〜0.05質量%であることが更に好ましく、0〜0.025質量%であることが特に好ましい。
【0056】
冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0057】
2−2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0058】
本開示の冷媒組成物は、上記トレーサーを一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0059】
上記トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。好ましくは、本開示の冷媒に不可避的に混入する不純物とはなり得ない化合物をトレーサーとして選択する。
【0060】
上記トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(NO)等が挙げられる。これらの中でも、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが好ましい。
【0061】
上記トレーサーとしては、具体的には、以下の化合物(以下、トレーサー化合物とも称する)がより好ましい。
HCC−40(クロロメタン、CHCl)
HFC−41(フルオロメタン、CHF)
HFC−161(フルオロエタン、CHCHF)
HFC−245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、CFCHCHF
HFC−236fa(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、CFCHCF
HFC−236ea(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、CFCHFCHF
HCFC−22(クロロジフルオロメタン、CHClF
HCFC−31(クロロフルオロメタン、CHClF)
CFC−1113(クロロトリフルオロエチレン、CF=CClF)
HFE−125(トリフルオロメチル−ジフルオロメチルエーテル、CFOCHF)HFE−134a(トリフルオロメチル−フルオロメチルエーテル、CFOCHF)HFE−143a(トリフルオロメチル−メチルエーテル、CFOCH
HFE−227ea(トリフルオロメチル−テトラフルオロエチルエーテル、CFOCHFCF
HFE−236fa(トリフルオロメチル−トリフルオロエチルエーテル、CFOCH2CF
【0062】
上記トレーサー化合物は、10重量百万分率(ppm)〜1000ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在し得る。トレーサー化合物は30ppm〜500ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが好ましく、50ppm〜300ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することがより好ましく、75ppm〜250ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが更に好ましく、100ppm〜200ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが特に好ましい。
【0063】
2−3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0064】
上記紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0065】
上記紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ナフタルイミド及びクマリンが好ましい。
【0066】
2−4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0067】
上記安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0068】
上記安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類、アミン類等が挙げられる。
【0069】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、及びニトロベンゼン、ニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0070】
エーテル類としては、例えば、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0071】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0072】
上記安定剤としては、上記ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類以外にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0073】
上記安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01〜5質量%であり、0.05〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.25〜1.5質量%が更に好ましく、0.5〜1質量%が特に好ましい。
【0074】
なお、本開示の冷媒組成物の安定性の評価方法は、特に限定されず、一般的に用いられる手法で評価することができる。そのような手法の一例として、ASHRAE標準97−2007にしたがって遊離フッ素イオンの量を指標として評価する方法等が挙げられる。その他にも、全酸価(total acid number)を指標として評価する方法等も挙げられる。この方法は、例えば、ASTM D 974−06にしたがって行うことができる。
【0075】
2−5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0076】
上記重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0077】
上記重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0078】
上記重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01〜5質量%であり、0.05〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.25〜1.5質量%が更に好ましく、0.5〜1質量%が特に好ましい。
【0079】
3.冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍装置における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍装置の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。
【0080】
上記冷凍機油の含有割合は、特に限定されず、冷凍機油含有作動流体全体に対して、通常、10〜50質量%であり、12.5〜45質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましく、17.5〜35質量%が更に好ましく、20〜30質量%が特に好ましい。
【0081】
3−1 冷凍機油
本開示の組成物は、冷凍機油を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0082】
上記冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、本開示の冷媒の混合物(本開示の混合冷媒)との相溶性(miscibility)及び本開示の混合冷媒の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0083】
上記冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0084】
上記冷凍機油は、上記基油に加えて、更に添加剤を含んでいてもよい。
【0085】
上記添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0086】
上記冷凍機油としては、潤滑の点から、40℃における動粘度が5〜400cStであるものが好ましい。
【0087】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、更に少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0088】
3−2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0089】
上記相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0090】
上記相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、1,1,1−トリフルオロアルカン等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが好ましい。
【0091】
4.冷凍装置の運転方法
本開示の冷凍装置の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍装置を運転する方法である。
【0092】
具体的には、本開示の冷凍装置の運転方法は、本開示の冷媒を含む組成物を作動流体として冷凍装置において循環させる工程を含む。
【0093】
上記冷凍装置としては、例えば、空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0094】
5.熱移動媒体及びそれを用いた熱サイクルシステム
本開示の熱移動媒体は、本開示の冷媒を含む組成物を含有する。
【0095】
本開示の熱移動媒体は、各種の熱サイクルシステムに好適に使用することができる。熱サイクルシステムは、本開示の熱移動媒体を備えることで、冷却能力の高い熱サイクルシステムとなり得る。
【0096】
また、本開示の冷媒は、GWPが十分に小さいため、既存の冷媒を使用した場合に比べて、本開示の熱移動媒体を備えることで、高い安全性を熱サイクルシステムに付与することができる。
【0097】
しかも、本開示の熱移動媒体は、温度クライドも低いので、安定性の高い熱サイクルシステムを提供することができる。
【0098】
熱サイクルシステムの種類は特に限定されない。熱サイクルシステムの例としては、ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、一以上の室内機及び室外機を冷媒配管で接続したセパレート型エアコン、ウインドウ型エアコン、ポータブル型エアコン、ダクトで冷温風を搬送するルーフトップ型又はセントラル型エアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍冷蔵庫、製氷機、一体型冷凍装置、自動販売機、カーエアコン、海上輸送等のコンテナ又は冷蔵庫を冷却するための冷凍装置、車載用空調機器、ターボ冷凍機、もしくは、暖房サイクル専用機を挙げることができる。当該暖房サイクル専用機とは、例えば、給湯装置、床暖房装置、融雪装置等が挙げられる。
【0099】
上記例示列挙した熱サイクルシステムは、本開示の熱移動媒体を備える限り、その他の構成については、特に限定されず、例えば、公知の熱サイクルシステムと同様の構成とすることができる。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0101】
実施例1〜18及び比較例1〜3
各実施例及び比較例で調製した混合冷媒のGWP、並びに、R410A(R32=50%/R125=50%)のGWPは、IPCC(IntergovernmentalPanelonClimateChange)第4次報告書の値に基づき評価した。
【0102】
また、各実施例及び比較例で調製した混合冷媒のCOP及び冷凍能力、並びに、R410AのCOP及び冷凍能力は、NationalInstituteofScienceandTechnology(NIST)、ReferenceFluidThermodynamicandTransportPropertiesDatabase(Refprop9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
蒸発温度 45℃
凝縮温度 5℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
【0103】
また、これらの結果をもとに算出したGWP、COP及び冷凍能力を表1〜6に示す。なお、COP比及び冷凍能力比については、R410Aに対する割合(%)を示す。
【0104】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0105】
混合冷媒の燃焼性は混合冷媒の混合組成をWCF濃度とし、ANSI/ASHRAE34−2013規格に従い燃焼速度を測定した。燃焼速度が10cm/s以下となるものは「クラス2L(微燃性)」であるとした。
【0106】
燃焼速度試験は以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%又はそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0〜9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1〜1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
【0107】
混合冷媒の燃焼範囲は、ASTM E681−09に基づく測定装置を用いて測定を実施した(図1を参照)。
【0108】
具体的には、燃焼の状態が目視および録画撮影できるように内容積12リットルの球形ガラスフラスコを使用し、ガラスフラスコは燃焼により過大な圧力が発生した際には上部のふたからガスが開放されるようにした。着火方法は底部から1/3の高さに保持された電極からの放電により発生させた。試験条件は以下の通りである。
【0109】
<試験条件>
試験容器:280mmφ球形(内容積:12リットル)
試験温度:60℃±3℃
圧力:101.3kPa±0.7kPa
水分:乾燥空気1gにつき0.0088g±0.0005g
冷媒組成物/空気混合比:1vol.%刻み±0.2vol.%
冷媒組成物混合:±0.1 重量%
点火方法:交流放電、電圧15kV、電流30mA、ネオン変圧器
電極間隔:6.4mm(1/4inch)
スパーク:0.4秒±0.05秒
判定基準:
・着火点を中心に90度より大きく火炎が広がった場合=火炎伝播あり(可燃)
・着火点を中心に90度以下の火炎の広がりだった場合=火炎伝播なし(不燃)
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【符号の説明】
【0116】
1:Ignition source
2:Sample inlet
3:Springs
4:12-liter glass flask
5:Electrodes
6:Stirrer
7:Insulated chamber
図1