(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、取っ手付きプラスチックボトル1を示す斜視図である。取っ手付きプラスチックボトル1は、プラスチックボトル50と、プラスチックボトル50に装着されたベルト部材10と、を備えている。ベルト部材10が、取っ手付きプラスチックボトル1の取っ手を構成している。
【0017】
[プラスチックボトル]
プラスチックボトル50は、本体部51および口部58を有している。本体部51は、液体が充填される部分である。本体部51は、例えば5リットル以上の液体を充填することができるよう構成されている。口部58は、本体部51に充填された液体をプラスチックボトル50の外部に注出するための部分である。
【0018】
本体部51は、円筒形状を有しており、頂部52と、頂部52に対向する底部54と、頂部52から底部54に至るよう広がる側部56と、を含んでいる。上述の口部58は、本体部51の頂部52に設けられている。
図1に示すように口部58が下を向いた状態でプラスチックボトル50がウォーターサーバーなどに装填される場合、底部54側にベルト部材10が取り付けられることが好ましい。例えば、
図1に示すように、ベルト部材10の両端は、プラスチックボトル50の底部54を跨ぐようにプラスチックボトル50の側部56に取り付けられる。なお図示はしないが、ベルト部材10の両端がプラスチックボトル50の底部54に取り付けられていてもよい。また、口部58が上を向いた状態でプラスチックボトル50が装填される場合など、使用時のプラスチックボトル50の姿勢によっては、ベルト部材10がプラスチックボトル50の頂部52側に取り付けられることもある。
【0019】
なお、本体部51が2リットル以上の液体を収容することができる限りにおいて、本体部51の形状が上述の円筒形状に限られることはない。
【0020】
プラスチックボトル50の本体部51および口部58はいずれも、熱可塑性を有する同一の材料から構成されている。このため、使用後にプラスチックボトル50を加熱によって溶かして再利用することができる。本体部51および口部58を構成する材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げることができる。
【0021】
[ベルト部材]
次に、ベルト部材10について説明する。ベルト部材10は、ベルト部材10の両端から所定の範囲に形成された一対の接着部20と、一対の接着部20の間の把持部30と、を備えている。接着部20は、プラスチックボトル50に接着される部分である。接着部20の表面には、接着剤17が塗布されている。把持部30は、使用者がベルト部材10を利用してプラスチックボトル50を持ち運ぶ際に把持される部分である。把持部30の表面には、接着剤17が塗布されていない。
【0022】
次に、
図2および
図3を参照して、ベルト部材10の接着部20および把持部30の構成について説明する。
図2は、プラスチックボトル50に取り付けられる前のベルト部材10を帯状基材の第1面側から見た場合を示す平面図である。また
図3は、ベルト部材10を長手方向に沿って切断した場合を示す縦断面図である。ベルト部材10は、可撓性を有する帯状基材12と、帯状基材12の第1面13に塗布された接着剤17と、を備えている。帯状基材12のうち接着部20を構成する領域には、接着剤17が塗布されている。一方、帯状基材12のうち把持部30を構成する領域には、接着剤17が塗布されていない。なお「第1面」とは、帯状基材12の面のうちプラスチックボトル50に装着される側の面である。また、後述する「第2面」は、帯状基材12の面のうち第1面13の反対側に位置する面である。
【0023】
図2において、符号L1は、長手方向における帯状基材12の寸法を表し、符号W1は、長手方向に直交する方向における帯状基材12の寸法を表している。また符号L2およびL3はそれぞれ、帯状基材12の長手方向における接着部20の寸法および把持部30の寸法を表している。
図3において、符号T1およびT2はそれぞれ、帯状基材12の厚さおよび接着剤17の厚さを表している。以下の説明において、帯状基材12の長手方向における各構成要素のことを「長さ」と称し、長手方向に直交する方向における各構成要素のことを「幅」と称することもある。
【0024】
図2に示すように、帯状基材12は、位置に依らず均一な幅W1を有していてもよい。このような帯状基材12は、例えば、ロール状に巻き取られた帯状基材12を所定の長さに切断することによって得られる。若しくは、図示はしないが、帯状基材12は、位置に応じて異なる幅W1を有していてもよい。例えば、接着部20の幅W1が、把持部30の幅W1よりも大きくなっていてもよい。このような帯状基材12は、例えば、シート状の基材を帯状に打ち抜くことによって得られる。
【0025】
帯状基材12の寸法は、一対の接着部20をそれぞれプラスチックボトル50に取り付けることができる程度にベルト部材10を曲げることができるよう、すなわちベルト部材10が十分な可撓性を有するよう、設定されている。例えば、帯状基材12の幅W1は、15mm以上かつ80mm以下であり、帯状基材12の長さL1は、200mm以上かつ800mm以下であり、帯状基材12の厚みT1は、38μm以上かつ225μm以下である。
【0026】
帯状基材12を構成する材料としては、好ましくは、熱可塑性を有し、リサイクルが可能な材料が用いられる。より好ましくは、帯状基材12を構成する材料として、プラスチックボトル50の材料と同一の材料、若しくは、プラスチックボトル50の材料との間に十分な密度差を有する材料が用いられる。帯状基材12を構成する材料として、プラスチックボトル50の材料と同一の材料が用いられる場合、リサイクル工程において接着剤17を溶かしてプラスチックボトル50からベルト部材10を取り外した後、プラスチックボトル50およびベルト部材10を共にリサイクルすることができる。また、帯状基材12を構成する材料として、プラスチックボトル50の材料との間に十分な密度差を有する材料が用いられる場合、リサイクル工程において接着剤17を溶かしてプラスチックボトル50からベルト部材10を取り外した後、プラスチックボトル50とベルト部材10とを容易に分離することができる。このため、プラスチックボトル50およびベルト部材10を別々にリサイクルすることができる。帯状基材12を構成する材料の例としては、PET、短軸配向ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、合成紙などを挙げることができる。
【0027】
接着部20および接着剤17の寸法は、ベルト部材10をプラスチックボトル50に安定に接着させることができるよう設定される。例えば、接着剤17の厚みT2は、25μm以上かつ200μm以下である。なお
図2および
図3においては、帯状基材12の長手方向における両端に達するように接着剤17が塗布される例が示されているが、これに限られることはなく、接着剤17が帯状基材12の長手方向における両端に達していなくてもよい。帯状基材12の幅方向についても同様に、接着剤17が帯状基材12の幅方向における端部に達していなくてもよい。
【0028】
次に、帯状基材12に塗布される接着剤17について説明する。接着剤17は、プラスチックボトル50のリサイクル工程においてベルト部材10が容易にプラスチックボトル50から取り外され得るよう、構成されている。例えば接着剤17は、加熱されたアルカリ水溶液に溶解する特性(以下、熱アルカリ剥離適性と称する)を有している。この場合、リサイクル工程において加熱されたアルカリ水溶液を用いてプラスチックボトル50を洗浄する処理を実施する際に、接着剤17を溶解させることが可能である。
【0029】
以下、熱アルカリ剥離適性について説明する。ここでは、PETボトルリサイクル推進協議会による「指定PETボトルの自主規制ガイドライン」の「機械剥離適性・分離適性」の「洗浄剥離(熱アルカリ)」の評価に基づいて、熱アルカリ剥離適性の有無を判断する例について説明する。具体的には、はじめに、接着剤17を介してベルト部材10の接着部20が接着されたプラスチックボトル50を8mm角に裁断して試験片を作成する。次に、85度以上に加熱された、1.5重量%の水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液の中に試験片を入れる。この際、アルカリ水溶液および試験片の合計重量に対する、試験片の重量の比率が10%になるようにする。その後、15分間にわたってアルカリ水溶液を撹拌する。撹拌中にベルト部材10の接着部20の片がプラスチックボトル50の片から剥離した場合、接着剤17が熱アルカリ剥離適性を有すると判定する。
【0030】
上述の熱アルカリ剥離適性を有する限りにおいて、接着剤17を構成する材料が特に限られることはない。例えば接着剤17として、東洋アドレ株式会社製のラベルメルトを用いることができる。
【0031】
[ベルト部材製造方法]
次に、ベルト部材10の製造方法について、
図4を参照して説明する。はじめに、長尺状の帯状基材12を準備する(準備工程)。次に、
図4に示すように、帯状基材12の第1面13上に、熱アルカリ剥離適性を有する接着剤17を塗布する(塗布工程)。この際、帯状基材12の所定の範囲内に接着剤17を塗布する。具体的には、帯状基材12のうち接着部20に対応する領域には接着剤17を塗布するが、帯状基材12のうち把持部30に対応する領域には接着剤17を塗布しない。例えば、
図4に示すように、帯状基材12の長手方向に沿って一定の間隔を空けて接着剤17を塗布する。一定の間隔は、帯状基材12を所定の長さL1に切断した際に、切断された帯状基材12の両端から所定の範囲に接着剤17が存在するよう、設定される。
【0032】
把持部30となる領域に接着剤17を塗布しないことにより、ラミネートによって帯状基材12に接着剤17を設ける場合に比べて、接着剤17の使用量を削減することができる。このことにより、接着剤17のコストを低減することができ、また、ベルト部材10のリサイクル性を高めることができる。その後、接着剤17が塗布された長尺状の帯状基材12をロール状に巻き取って巻回体を作成してもよい。
【0033】
次に、接着剤17が塗布された帯状基材12を巻回体から巻き出し、巻き出された帯状基材12を所定の長さL1に切断する(切断工程)。この際、
図4において点線で示すように、接着剤17が設けられている部分において帯状基材12を幅方向に切断する。このようにして、両端から所定の範囲に形成され、かつ接着剤17が表面に塗布された一対の接着部20と、接着剤17が表面に塗布されていない把持部30と、を有するベルト部材10を、効率良く準備することができる。
【0034】
好ましくは、接着剤17が塗布されロール状に巻きとられた帯状基材12を切断するための装置として、帯状基材12を切断する作業、および、切断によって得られたベルト部材10をプラスチックボトル50に貼り付ける作業の両方を実施することができる装置が用いられる。例えば、プラスチックボトル50にラベルを貼るためのラベル自動貼り機を利用して、帯状基材12を切断してベルト部材10をプラスチックボトル50に貼り付ける。これによって、ベルト部材10をプラスチックボトル50に装着する作業を自動化することができる。
【0035】
[ベルト部材の製造方法の変形例]
なお、上述の説明においては、接着剤17が塗布された長尺状の帯状基材12を切断してベルト部材10を製造する例を示したが、ベルト部材10の製造方法がこれに限られることはない。例えば、はじめに、シート状の基材を準備し、次に、基材に部分的に接着剤17を塗布し、その後、接着剤17が塗布された基材を所定の形状に打ち抜くことにより、枚葉方式でベルト部材10を製造してもよい。
【0036】
[第1の実施形態における効果]
以上説明した通り、第1の実施形態に係るベルト部材10およびその製造方法においては、ベルト部材10の接着部20に塗布される接着剤17が、熱アルカリ剥離適性を有している。このため、プラスチックボトル50のリサイクル工程においてアルカリ水溶液を用いてプラスチックボトル50を洗浄処理する際に、接着剤17を溶解させることができる。これによって、ベルト部材10をプラスチックボトル50から取り外すことができ、プラスチックボトル50をリサイクルすることができる。
【0037】
また第1の実施形態に係るベルト部材10において、把持部30には接着剤17が塗布されていない。このためアルカリ水溶液は、帯状基材12の幅方向における接着剤17の端面だけでなく、帯状基材12の長手方向における接着剤17の端面にも、把持部30側から接触することができる。これによって、接着剤17がアルカリ水溶液に溶解する速度を高めることができる。
【0038】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係るベルト部材10を帯状基材12の第1面13側から見た場合を示す平面図である。
図6は、ベルト部材10を、複数の孔15を通り長手方向に延びる線VI−VIに沿って切断した場合を示す縦断面図である。
図5および
図6に示すように、ベルト部材10の帯状基材12の一対の接着部20には、帯状基材12の第1面13から第2面14まで貫通する複数の孔15が形成されていてもよい。
【0039】
図5に示すように、複数の孔15は、平面視において四角格子状に形成されていてもよい。なお四角格子状とは、第1方向に延びる複数の第1直線と、第1方向に交差する第2方向に延びる複数の第2直線と、によって、複数の孔15を結ぶことができることを意味している。言い換えると、格子状とは、複数の孔15が、第1方向において規則的に所定の間隔で並んでおり、かつ、第1方向に交差する第2方向においても規則的に所定の間隔で並んでいることを意味している。
【0040】
図示はしないが、複数の孔15は、平面視において四角格子状以外の形態で規則的に形成されていてもよい。例えば、複数の孔15は、平面視において六角格子状、八角格子状などに形成されていてもよい。その他にも、複数の孔15は、平面視においてランダムに形成されていてもよい。
【0041】
孔15の寸法Sは、プラスチックボトル50のリサイクル工程においてベルト部材10の帯状基材12の第2面14に接触したアルカリ水溶液が孔15を通って第1面13側に至ることができるよう、設定されている。また好ましくは、孔15の寸法Sは、帯状基材12に接着剤17を塗布する際に接着剤17が孔15の内部に全くまたはほとんど浸入しないよう、設定されている。例えば孔15の寸法Sは、0.01mm以上かつ3mm以下になっている。このため、アルカリ水溶液は、帯状基材12の幅方向や長手方向における接着剤17の端面だけでなく、接着剤17の帯状基材12側の面にも、孔15を通って接触することができる。これによって、接着剤17がアルカリ水溶液に溶解する速度を高めることができる。
孔15の寸法Sは、帯状基材12の第2面14に接触したアルカリ水溶液が毛細管現象によって孔15を通って第1面13側に至ることができるよう、設定されていてもよい。これによって、重力に依らず、言い換えるとベルト部材10の姿勢に依らず、アルカリ水溶液が孔15を通って接着剤17に接触することができる。毛細管現象を利用する場合、孔15の寸法Sは、例えば1mm未満に設定される。
【0042】
図5において、隣接する2つの孔15の間の間隔が符号Dで表されている。孔15の間隔Dは、リサイクル工程における所定の処理時間の間に、例えば15分以内に接着剤17を溶解させることができるよう設定されており、例えば0.1mm以上かつ8mm以下になっている。
【0043】
好ましくは、
図5および
図6に示すように、複数の孔15は、帯状基材12のうち接着部20を構成する領域だけでなく把持部30を構成する領域にも形成される。この場合、好ましくは、接着部20を構成する帯状基材12に形成された複数の孔15の配置の規則性と、把持部30を構成する帯状基材12に形成された複数の孔15の配置の規則性とは、同一になっている。以下、このように複数の孔15を形成することの利点について説明する。
【0044】
はじめに、比較のため、孔15が帯状基材12のうち接着部20を構成する領域にのみ形成されている場合について考える。この場合、帯状基材12に接着剤17を塗布する塗布工程において、長尺状の帯状基材12のうち複数の孔15が形成されている部分に接着剤17を塗布するという制御を行う必要がある。一方、塗布工程においては、上述のとおり、一定の間隔を空けて長尺状の帯状基材12に接着剤17を塗布するという制御を行う必要もある。このように、孔15が帯状基材12のうち接着部20を構成する領域にのみ形成されている場合、塗布工程における制御要素が増加し、このため塗布工程が複雑になってしまう。
【0045】
これに対して、本変形例においては、複数の孔15が同一の規則性で帯状基材12の全域に形成されているので、接着剤17が塗布される前の状態の帯状基材12には、接着部20と把持部30の区別がない。このため、塗布工程において、孔15の位置に対して接着剤17の塗布位置を調整するという制御を行う必要がない。このことにより、ベルト部材10の製造効率を高めることができる。
【0046】
なお上述の説明においては、帯状基材12に複数の孔15が平面視において格子状またはランダムに形成される例を示したが、これに限られることはない。例えば
図7に示すように、複数の孔15は、帯状基材12の長手方向に沿って破線状に形成されていてもよい。また図示はしないが、複数の孔15は、帯状基材12の長手方向以外の所定の方向に沿って破線状に形成されていてもよい。これらの場合も、孔15の寸法Sは、アルカリ水溶液が孔15を通ることができるよう設定される。このため、接着剤17がアルカリ水溶液に溶解する速度を高めることができる。
【0047】
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態に係るベルト部材10を帯状基材12の第1面13側から見た場合を示す平面図である。
図8に示すように、接着部20において、接着剤17は、複数の領域に分散して帯状基材12に塗布されていてもよい。この場合、
図8に示すように、接着部20に塗布された接着剤17の間に隙間18が存在する。このため、プラスチックボトル50のリサイクル工程においてアルカリ水溶液が接着剤17の隙間18に浸入することができ、これによって、アルカリ水溶液に接触する接着剤17の面積をさらに高めることができる。このことにより、接着剤17がアルカリ水溶液に溶解する速度をさらに高めることができる。
【0048】
なお、接着剤17の厚みT2は、25μm以上かつ200μm以下である。接着剤17によって接着された帯状基材12とプラスチックボトル50との間の間隔も、接着剤17の厚みT2と同等である。従って、接着剤17の隙間18において帯状基材12とプラスチックボトル50との間に形成されるアルカリ水溶液の流路の寸法も、接着剤17の厚みT2と同等になる。このため、接着剤17の隙間18において帯状基材12とプラスチックボトル50との間に形成されるアルカリ水溶液の流路においては、アルカリ水溶液が毛細管現象によって移動することができる。
【0049】
図9(a)および
図9(b)は、それぞれ、第3の実施形態の変形例に係るベルト部材10を長手方向に沿って切断した場合を示す縦断面図である。
図9(a)および
図9(b)に示すように、第3の実施形態に係るベルト部材10においても、上述の第2の実施形態の場合と同様に、帯状基材12に複数の孔15が形成されていてもよい。これによって、孔15を通って第1面13側に至るアルカリ水溶液を接着剤17に接触させることができる。このことにより、接着剤17がアルカリ水溶液に溶解する速度をさらに高めることができる。
【0050】
好ましくは、
図9(a)に示すように、帯状基材12の第1面13の法線方向に沿って見た場合に接着剤17の隙間18と帯状基材12の孔15とが少なくとも部分的に重なるよう、孔15および接着剤17が配置される。この場合、孔15を通って第1面13側に至ったアルカリ水溶液が、接着剤17の隙間18に浸入することができる。このことにより、接着剤17がアルカリ水溶液に溶解する速度をさらに高めることができる。なお、
図9(b)に示すように、接着剤17によってその全体が覆われる孔15が帯状基材12に存在していてもよい。
【0051】
なお
図8においては、接着剤17の複数の領域および隙間18が帯状基材12の長手方向に延びる例を示したが、これに限られることはない。例えば、接着剤17の複数の領域および隙間18が、帯状基材12の幅方向に延びていてもよい。また
図8においては、接着剤17が複数の領域に分散して接着部20に塗布される例を示したが、接着剤17に隙間18が形成される限りにおいて、接着剤17の分布が特に限られることはない。例えば、接着剤17は、隙間18が設けられるように網目状に塗布されていてもよい。
【0052】
<第4の実施形態>
上述の各実施形態においては、帯状基材12のうち把持部30を構成する領域に接着剤17が塗布されていない例を示した。本実施形態においては、帯状基材12のうち把持部30を構成する領域にも接着剤17が塗布されている例について説明する。
図10は、第4の実施形態に係るベルト部材10を長手方向に沿って切断した場合を示す縦断面図である。
【0053】
ベルト部材10は、可撓性を有する帯状基材12と、帯状基材12の第1面13の全域に塗布された接着剤17と、接着剤17上に設けられた被覆材19と、を備えている。帯状基材12のうち接着部20を構成する領域に塗布されている接着剤17は、被覆材19によって覆われておらず、ベルト部材10の表面に露出している。一方、帯状基材12のうち把持部30を構成する領域に塗布されている接着剤17は、被覆材19によって覆われており、ベルト部材10の表面に露出していない。このため、使用者は、ベルト部材10を利用してプラスチックボトル50を持ち運ぶ際に把持部30を把持することができる。
【0054】
被覆材19としては、可撓性を有し、かつ把持部30の接着剤17が使用者の手に触れることを防ぐことができるものが用いられる。例えば、被覆材19は、紙、フィルム、インクなどである。被覆材19は、ラミネートによって接着剤17上に設けられてもよく、印刷によって接着剤17上に設けられてもよい。
【0055】
[ベルト部材製造方法]
本実施形態によるベルト部材10の製造方法について説明する。はじめに、長尺状の帯状基材12を準備する(準備工程)。次に、帯状基材12の第1面13の全域に、熱アルカリ剥離適性を有する接着剤17を塗布する(塗布工程)。その後、帯状基材12のうち把持部30に対応する領域に塗布された接着剤17の上に被覆材19を設ける。次に、帯状基材12、接着剤17および被覆材19を含む長尺状の積層体をロール状に巻き取って巻回体を作成する。
【0056】
次に、積層体を巻回体から巻き出し、巻き出された積層体を所定の長さL1に切断する(切断工程)。この際、接着剤17が表面に塗布されている領域において積層体を幅方向に切断する。このようにして、帯状基材12の両端から所定の範囲に形成され、かつ接着剤17が表面に塗布された一対の接着部20と、接着剤17が表面に塗布されていない把持部30と、を有するベルト部材10を、効率良く準備することができる。
【0057】
なお、本実施の形態においても、上述の第2実施形態の場合と同様に、帯状基材12に複数の孔15が形成されていてもよい。また、本実施の形態においても、上述の第3実施形態の場合と同様に、接着剤17は、複数の領域に分散して帯状基材12上に塗布されていてもよい。
【0058】
[ベルト部材の製造方法の変形例]
なお、上述の説明においては、帯状基材12、接着剤17および被覆材19を含む長尺状の積層体を切断してベルト部材10を製造する例を示したが、ベルト部材10の製造方法がこれに限られることはない。例えば、はじめに、シート状の基材を準備し、次に、基材上に接着剤17を塗布し、その後、接着剤17上に部分的に被覆材19を設けて接着剤の一部を被覆材19で覆い、次に、帯状基材12、接着剤17および被覆材19を含む積層体を所定の形状に打ち抜くことにより、枚葉方式でベルト部材10を製造してもよい。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0061】
[リサイクル性]
(実施例A1)
はじめに、接着剤17を介して帯状基材12が接着されたプラスチックボトル50を8mm角に裁断して試験片を作成した。試験片としては、接着剤17の厚みが25μmのもの、40μmのもの、60μmのものをそれぞれ作成した。接着剤17としては、熱アルカリ剥離適性を有する、東洋アドレ株式会社製のラベルメルトを用いた。帯状基材12としては、OPPからなり、かつ孔15が形成されていないものを用いた。次に、85度以上に加熱された、1.5重量%の水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液の中に試験片を入れた。この際、アルカリ水溶液および試験片の合計重量に対する、試験片の重量の比率が10%になるようにした。その後、15分間にわたってアルカリ水溶液を撹拌し、撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から剥離するかどうかを観察した。撹拌機としては、ASONE株式会社製のPM204を用いた。撹拌の回転数は340rpmとした。
【0062】
(実施例A2)
帯状基材12として、
図5に示すように複数の孔15が格子状に形成されたものを用いたこと以外は、上述の実施例A1の場合と同様にして、アルカリ水溶液の撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から剥離するかどうかを観察した。
【0063】
(実施例A3)
帯状基材12として、
図7に示すように複数の孔15が破線状に形成されたものを用いたこと以外は、上述の実施例A1の場合と同様にして、アルカリ水溶液の撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から剥離するかどうかを観察した。
【0064】
(実施例A4)
帯状基材12上に縞模様状に接着剤17を塗布したこと以外は、上述の実施例A1の場合と同様にして、アルカリ水溶液の撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から剥離するかどうかを観察した。
【0065】
(比較例A1)
接着剤17として、熱アルカリ剥離適性を有さないアクリル系のものを用いたこと以外は、上述の実施例A1の場合と同様にして、アルカリ水溶液の撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から剥離するかどうかを観察した。
【0066】
実施例A1〜A4および比較例A1における評価結果を表1にまとめて示す。表1において、「○」は、15分間の撹拌中にアルカリ水溶液の撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から完全に剥離したことを意味している。「△」は、15分間の撹拌中にアルカリ水溶液の撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から部分的に剥離したことを意味している。「×」は、15分間の撹拌中にアルカリ水溶液の撹拌中に帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片からほとんど剥離しなかったことを意味している。上述のとおり、撹拌の回転数は340rpmであり、この回転数は、実際のリサイクル工程における回転数よりも低い。このため、実施例A1〜A4および比較例A1における撹拌能力は、実際のリサイクル工程における撹拌能力に比べて小さい。従って、今回の評価では帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から完全には剥離せず、評価結果を「△」とした条件であっても、より高速でアルカリ水溶液が撹拌される実際のリサイクルにおいては、帯状基材12の片がプラスチックボトル50の片から適切に剥離される可能性がある。なお、実施例A4においては、接着剤17の厚みが40μmおよび60μmの場合の評価結果が「○」であったので、接着剤の分量がより少なく、より良好な評価結果が得られると予想される厚み25μmの場合については、評価を実施しなかった。同様に、比較例A1においては、接着剤17の厚みが25μmの場合の評価結果が×であったため、接着剤17の厚みを40μmおよび60μmとする評価は実施しなかった。
【表1】
【0067】
実施例A1〜A3から分かるように、熱アルカリ剥離適性を有する接着剤17を用いることにより、接着剤17の厚みが25μmである場合に、帯状基材12の片をプラスチックボトル50の片から剥離させることができた。また、実施例A2、A3から分かるように、帯状基材12に孔15を形成することにより、接着剤17の厚みが40μmまたは60μmの場合であっても、帯状基材12の片をプラスチックボトル50の片から剥離させることができた。また、実施例A4から分かるように、接着剤17を縞模様状に塗布することにより、接着剤17の厚みが60μmの場合であっても、帯状基材12の片をプラスチックボトル50の片から剥離させることができた。
【0068】
[180°剥離強度]
(実施例B1)
はじめに、接着剤17を介して帯状基材12が接着された、100μmの厚みを有するPETフィルムを、35mm角に裁断して、試験片を作成した。接着剤17および帯状基材12としては、上述の実施例A1の場合と同一のものを用いた。次に、株式会社IMADA製の引張り試験機MX2-500N-L-FAを用いて、180°剥離試験を実施し、帯状基材12をPETフィルムから剥離するのに必要な力(以下、剥離強度と称する)を測定した。
【0069】
(実施例B2)
帯状基材12として、
図5に示すように複数の孔15が格子状に形成されたものを用いたこと以外は、上述の実施例B1の場合と同様にして、剥離強度を測定した。
【0070】
(実施例B3)
帯状基材12として、
図7に示すように複数の孔15が破線状に形成されたものを用いたこと以外は、上述の実施例B1の場合と同様にして、剥離強度を測定した。
【0071】
(実施例B4)
帯状基材12上に縞模様状に接着剤17を塗布したこと以外は、上述の実施例B1の場合と同様にして、剥離強度を測定した。
【0072】
(比較例B1)
接着剤17として、熱アルカリ剥離適性を有さないアクリル系のものを用いたこと以外は、上述の実施例B1の場合と同様にして、剥離強度を測定した。
【0073】
実施例B1〜B4および比較例B1において測定された剥離強度を表2にまとめて示す。表2に示すように、実施例B1〜B3では、ほぼ同等の剥離強度が得られた。すなわち、帯状基材12に孔15を形成することに起因する剥離強度の低下は見られなかった。また、実施例B4から分かるように、接着剤17を縞模様状に塗布することに起因する剥離強度の低下も見られなかった。また、実施例B1〜B4と比較例B1との比較から分かるように、熱アルカリ剥離適性を有する接着剤17を用いた場合には、熱アルカリ剥離適性を有さないアクリル系の接着剤17を用いた場合に比べて、高い接着強度が得られた。
【表2】
【0074】
[吊り下げ試験および落下試験]
(実施例C1)
はじめに、接着剤17を介してベルト部材10が接着された、12リットルの容量を有するプラスチックボトル50を準備した。接着剤17および帯状基材12としては、上述の実施例A1の場合と同一のものを用いた。次に、水平方向に延びる支持棒にベルト部材10を引っ掛けて、プラスチックボトル50の口部58が下を向いた状態になるようにプラスチックボトル50を吊り下げた。この吊り下げ状態を1時間にわたって維持できるかどうかを観察した。
【0075】
また、基準面に載置されたプラスチックボトル50に接着されたベルト部材10の把持部30を掴んで、プラスチックボトル50を基準面から30cmの高さまで持ち上げ、その後、把持部30を離してプラスチックボトル50を落下させた。落下を10回繰り返し、ベルト部材10がプラスチックボトル50から外れるかどうかを観察した。
【0076】
(実施例C2)
帯状基材12として、
図5に示すように複数の孔15が格子状に形成されたものを用いたこと以外は、上述の実施例C1の場合と同様にして、吊り下げ試験および落下試験を行った。
【0077】
(実施例C3)
帯状基材12として、
図7に示すように複数の孔15が破線状に形成されたものを用いたこと以外は、上述の実施例C1の場合と同様にして、吊り下げ試験および落下試験を行った。
【0078】
(実施例C4)
帯状基材12上に縞模様状に接着剤17を塗布したこと以外は、上述の実施例C1の場合と同様にして、落下試験を行った。
【0079】
(比較例C1)
接着剤17として、熱アルカリ剥離適性を有さないアクリル系のものを用いたこと以外は、上述の実施例C1の場合と同様にして、吊り下げ試験および落下試験を行った。
【0080】
実施例C1〜C4および比較例C1における、吊り下げ試験および落下試験の結果を表3にまとめて示す。吊り下げ試験に関して、「○」は、吊り下げ状態を1時間にわたって維持できたことを意味している。落下試験に関して、「○」は、落下を10回繰り返した後にベルト部材10がプラスチックボトル50から外れていなかったことを意味している。実施例C1〜C3から分かるように、熱アルカリ剥離適性を有する接着剤17を用いた場合に、吊り下げおよび落下に対する十分な耐性を確保できた。また、実施例C4から分かるように、熱アルカリ剥離適性を有する接着剤17を縞模様状に塗布した場合にも、落下に対する十分な耐性を確保できた。
【表3】
【0081】
[毛細管現象の評価]
はじめに、縞模様状に塗布された接着剤17を介して帯状基材12が接着されたプラスチックボトル50を裁断して試験片を作成した。縞模様状に塗布された複数の接着剤17の領域の間の、帯状基材12の面に沿った方向における隙間の寸法は、2mm〜4.5mmの範囲内であった。接着剤17の厚みは、60μmであった。
【0082】
次に、試験片の下端を、ビーカーに収容された水溶液に浸した。その後、水溶液が試験片の内部を上方へ移動するか否かを、目視で確認した。結果、水溶液が移動することを確認した。接着剤17の厚みを60μmとし、これによって縞模様状の複数の接着剤17の領域の間の流路の幅を約60μmとすることにより、毛細管現象によって水溶液が移動したと考えられる。なお、本評価においては、水溶液の移動を目視で容易に確認できるようにするため、着色した水溶液を用いた。