特許第6642851号(P6642851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642851
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/24 20060101AFI20200130BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   H01Q3/24
   H01Q9/04
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-226699(P2015-226699)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-98662(P2017-98662A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(72)【発明者】
【氏名】篠島 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 勝美
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−037157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/24
H01Q 9/04
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一平面上に設置される複数の導体板による第1導体板群と、
前記第1導体板群と平行に設置される複数の導体板による第2導体板群と、
前記第2導体板群の前記複数の導体板のうち少なくとも1つを接地に短絡するか否かを切り替えるスイッチと、
を備え
前記第1導体板群の前記複数の導体板は、一方向に配列された複数のSRR(Split Ring Resonator)を含む
アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、遠方の他の走行車や障害物等を検出するために、ミリ波を用いた車載レーダが使用されている。ミリ波を用いた車載レーダでは、送信波をビーム状にしてエネルギーの分散を最小にすることが求められる。このため、単一周波数のレーダでは、水平垂直方向の検出範囲が狭まることに対し、モータ等の駆動機構を設け物理的に送信波のビームを走査することで、検出範囲を広範囲にしている。また、基板上に液晶を用いて静電容量を可変させることでビームの方向を変える方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/013496号
【特許文献2】特開2015−026915号公報
【特許文献3】国際公開第2011/152055号
【特許文献4】特開2009−141660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ等の駆動機構により送信波のビームを走査する方法では、走査に要する時間や機械的な故障が問題となる。また、液晶により静電容量を可変させてビームを走査する方法では、液晶を使用することでコストが上がるという問題がある。
【0005】
また、複数の周波数を用いてビームを走査する方法もあるが、この場合、アンテナ設計で考慮すべき要素が増えるため、アンテナ設計の工数が増え、アンテナ設計後も製品ごとのばらつきが大きく、機械的にビームを走査する方法よりも精度が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、簡易にビームを走査することができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、第1の態様は、
一平面上に設置される複数の導体板による第1導体板群と、
前記第1導体板群と平行に設置される複数の導体板による第2導体板群と、
前記第2導体板群の前記複数の導体板のうち少なくとも1つを接地に短絡するか否かを切り替えるスイッチと、
を備えるアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易にビームを走査することができるアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、アンテナ装置の構成例を示す図である。
図2図2は、1つのSRRとその周囲の平板(第2導体板群)についての等価回路の例を示す図である。
図3図3は、アンテナ装置のビーム方位特性の例を示す図である。
図4図4は、スイッチパターンの例を示す図である。
図5図5は、アンテナ装置のビーム方位特性の例を示す図である。
図6図6は、アンテナ装置の変形例1の例を示す図である。
図7図7は、アンテナ装置の変形例2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明にかかるメタマテリアル構造、アンテナ装置について説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は開示の実施形態の構成に限定されない。
【0011】
〔実施形態〕
(メタマテリアル構造)
メタマテリアル構造は、自然界に存在しない特性を有する人工物等の構造である。メタマテリアル構造の一種であるEBG(Electromagnetic Band Gap)構造は、特定の周波数帯において電磁波伝搬が抑制される特性を有し、導体等で構成される複数個のセルを周期的に配列させて形成する構造である。EBG構造がアンテナに使用されることで、電磁波の放射効率の向上を図ることができる。EBG構造のセルとしてSRR(Sprit Ring Resonator:スプリットリング共振器)を用いる方法がある。SRRは、リングの一部を切除したC字型の導体による共振器である。本実施形態では、アンテナ素子として、SRRを用いる。
【0012】
(構成例)
図1は、本実施形態のアンテナ装置の構成例を示す図である。図1は、アンテナ装置1の斜視図である。アンテナ装置1は、第1導体板群10、第1導体板群10の少なくとも一部に対向する第2導体板群20、第2導体板群20を接地に短絡するか否かを切り替えるスイッチ30を備える。アンテナ装置1は、所定の周波数の電磁波を送受信しうる。図1の斜視図において、右下に示すように、奥から手前の方向をx方向(x軸)、左から右の方向をy方向(y軸)、下から上の方向をz方向(z軸)と呼ぶ。以下、他の同様の斜視図において同様である。
【0013】
第1導体板群10は、複数のC字型の導体であるSRR11及びT字型のマッチング素子12を含む。SRR11及びマッチング素子12は、同一平面上に配置される。SRR11及びマッチング素子12は、例えば、平らな板状である。1つのSRR11は、長方形(外側の長方形)から当該長方形より小さい長方形をくり抜き、さらに、外側の長方形の一辺の中央部分からくり抜かれた小さい長方形に接続する長方形をくり抜かれた形状を有する。くり抜かれた長方形の部分がSRRにおける切り欠け部分(スプリット部分)に相当する。1つのマッチング素子12は、第1の長方形の長辺の中央部分で第2の長方形の1辺に接続するT字型形状を有する。第1の長方形の第2の長方形に接続されない方の長辺は、SRR11の一辺と対向する。このようにすることで、アンテナの整合が取りやすくなる。図1の例では、2つのマッチング素子12の間に3つのSRR11が挟まれている。SRR11は、所定の間隔を置いてy方向に1列に配置されている。マッチング素子12とSRR11とは、所定の間隔を置いて配置されている。一方のマッチング素子12は、省略されてもよい。各SRR11及び各マッチング素子12は、それぞれ、電気的に絶縁されている。マッチング素子12には、信号の送信または受信に使用されるアンプのIC等が接続される。
【0014】
第1導体板群10のSRR11、マッチング素子12のサイズは、所望の周波数の電磁波(信号)を効率よく送受信できるように、設計される。SRR11のリングの位置、大
きさ、幅、リングの切欠部の大きさ、マッチング素子12の位置、大きさなどを変更することにより、アンテナ装置1のキャパシタンスやリアクタンスが調整される。アンテナ装置1で送受信される所望の周波数の電磁波の効率は、SRR11のキャパシタンスやリアクタンス等に依存する。第1導体板群10は、例えば、誘電体基板の1面に配線される。
【0015】
第2導体板群20は、複数の導体の平板21及び平板22を含む。第2導体板群20は、第1導体板群10と平行に設置される。平板21及び平板22は、例えば、平らな板状である。第2導体板群20の平板21には、接地に短絡するか否かを切り替えるスイッチ30が接続される。第1導体板群10及び第2導体板群20によって、コンデンサが形成される。ただし、平板21がスイッチ30により接地された場合、当該平板21と第1導体板群10とによるキャパシタンスCは、ほぼ0となる。即ち、平板21がスイッチ30により接地された場合、アンテナ装置1は、電気回路としては当該平板21が存在しない構成(当該平板によるコンデンサが存在しない構成)と同様の構成となる。よって、第1導体板群10及び第2導体板群20の接地されていない平板21及び平板22によって、コンデンサが形成される。第2導体板群20の各平板21及び各平板22は、同一の平面上に存在しなくてもよい。図1の例では、各平板21及び各平板22の形状は、長方形であるが、長方形に限定されるものではない。スイッチ30に接続されない平板22は、全く存在しなくてもよい。
【0016】
第2導体板群20の平板21、平板22の位置やサイズは、所望の周波数の電磁波(信号)を所望の方向に効率よく送受信できるように、設計される。平板21、平板22の位置、大きさなどを変更することにより、アンテナ装置1のキャパシタンスやリアクタンスが変更される。また、平板21、平板22と、第1導体板群10との距離を変更することによって、キャパシタンス等が変更されてもよい。アンテナ装置1で送受信される所望の周波数の電磁波のビーム方向は、アンテナ装置1のキャパシタンスやリアクタンス等に依存する。
【0017】
xy平面に直交する方向(z方向)からアンテナ装置1を見た時に、第1導体板群10と第2導体板群20とが、重なる部分があっても、重ならない部分があってもよい。第1導体板群10と第2導体板群20とが重なる部分では結合が強くなり、第1導体板群10と第2導体板群20とが重ならない部分では結合が弱くなる。図1の例では、z方向から見たとき、第2導体板群20のうち、右側の3つの平板(2つの平板21と1つの平板22)と、左側の3つの平板(2つの平板21と1つの平板22)とは、第1導体板群10のSRR11と重なっている。また、図1の例では、z方向から見たとき、第2導体板群20の他の平板は、隣接する2つのSRR11の間の空間に存在する。
【0018】
第1導体板群10及び第2導体板群20は、例えば、それぞれ、1枚の基板(誘電体基板)の一方の面及び他方の面に配置される。このとき、第1導体板群10と第2導体板群20との間は、基板の誘電体によって満たされる。第1導体板群10及び第2導体板群20は、それぞれ、別々の基板の1つの面に配置され、第1導体板群10と第2導体板群20とが平行に対向するように設置されてもよい。このとき、第1導体板群10と第2導体板群20との間の誘電体は空気となる。また、第1導体板群10及び第2導体板群20は、それぞれ、別々の基板の1つの面に配置され、2つの基板が平行に重ねられて設置されてもよい。第1導体板群10及び第2導体板群20の配線は、例えば、誘電体基板に対する既存のプリント配線によって実現できる。
【0019】
スイッチ30は、第2導体板群20の平板21と接地との間に配置される。スイッチ30は、接続された平板21を接地するか否かを切り替える。平板21を接地しない場合、当該平板21は、電気的に浮いた状態なる。スイッチ30の数がn個であるとすると、アンテナ装置1は、2種類のパターンのアンテナに切り替えることができる。図1の例で
は、スイッチ30が4個であるので、16種類のパターンのアンテナに切り替えることができる。スイッチ30がONの場合に平板21が接地され、スイッチ30がOFFの場合に平板21が接地されない。図1の例では、1つのスイッチ30に対して、2つの平板21が接続されている。1つのスイッチ30に接続される平板21の数は、2つに限定されない。図1の例では、4つのスイッチが存在するが、右側から順に、SW1、SW2、SW3、SW4と呼ぶ。スイッチ30の切り替えによって、第1導体板群10及び第2導体板群20によるキャパシタンスが変更されることにより、所望の周波数の電磁波のビーム方向が変更される。
【0020】
図2は、1つのSRRとその周囲の平板(第2導体板群)についての等価回路の例を示す図である。図2の(A)は、スイッチ30がONにされた場合の等価回路の例である。スイッチ30がONにされると、SRR11と接地されていない平板22によるコンデンサC1が現れるが、接地された平板21によるコンデンサは、等価回路には現れない。コンデンサC1には、SRR11自体による分も含まれる。図2の(B)は、スイッチ30がOFFにされた場合の等価回路の例である。スイッチ30がONにされると、SRR10と接地されていない平板22によるコンデンサC1、接地されていない平板21によるコンデンサC2、C3が小等価回路に現れる。等価回路のコンデンサC1、C2、C3は、並列に接続される。当該コンデンサ群(コンデンサC1、C2、C3)は、直列に、他のSRR11に接続される。スイッチ30をOFFからONに切り替えることで、現れるコンデンサが変化し、1つのSRRの周囲のキャパシタンスの大きさが変化する。
【0021】
図3及び図4は、アンテナ装置のビーム方位特性の例とスイッチパターンの例を示す図である。図3は、図1の中央のSRR11の中央を原点として、アンテナ装置1のxz平面の、所望の周波数の電磁波におけるビーム方位特性の例を示す図である。図3の横軸は方位を表し、縦軸はビームの強度を表す。方位は、図1の+x方向が90度であり、+z方向が0度であり、−x方向が−90度である。また、図3のグラフのピークにつけられている数字は、スイッチ30のパターンの番号を表す。図4は、スイッチ30の16種類のパターンの番号とスイッチ30のON、OFFの関係を示す。
【0022】
例えば、スイッチ30のSW1がON、SW2がOFF、SW3がON、SW4がOFFの場合、パターン6となる。図3のグラフでは、スイッチ30のパターン6は、−10°の方向にピークを有する。即ち、スイッチ30のSW1をON、SW2をOFF、SW3をON、SW4をOFFとすると、アンテナ装置1は、所望の周波数の電磁波について−10°の方向にピークを有する。図3のグラフは、すべてのスイッチ30のパターンについてのビーム方位特性を足し合わせて1つのグラフに示したものである。スイッチ30のパターンにより、ピークとなる方位が異なる。1つのパターンのビーム方位特性では、ピークの方位以外の強度がピークの強度より低くなる。ピークの方向とスイッチ30のパターンとの関係は、スイッチ30の各パターンについて、ピークの方向を調べることで、実験的に求めることができる。所望のピークの方向が得られない場合には、SRR11、平板21、平板22の位置、大きさ等を変更することにより、ピークの方向を調整することができる。
【0023】
図5は、アンテナ装置のビーム方位特性の例を示す図である。図5は、図1の中央のSRR11の中央を原点として、アンテナ装置1のxz平面の、所望の周波数の電磁波におけるビーム方位特性の例を示す図である。方位は、図3と同様に、図1の+x方向が90度であり、+z方向が0度であり、−x方向が−90度である。図5に表わされるように、0°±70°の範囲に、ピークが見られる。従来型のアンテナ装置では、0°±30°程度である。したがって、アンテナ装置1は、スイッチ30のパターンを切り替えることにより、広範囲にビームの方向を変更することができる。
【0024】
(変形例1)
図6は、アンテナ装置の変形例1の例を示す図である。図6のアンテナ装置1は、図1のアンテナ装置1と第2導体板群20の構成が異なる。図6のアンテナ装置1では、1つのスイッチ30に対して、1つの平板21が接続される。また、第2導体板群20にスイッチに接続されない平板22が存在しない。このようにすることにより、構成をより簡易にすることができる。
【0025】
(変形例2)
図7は、アンテナ装置の変形例2の例を示す図である。図7のアンテナ装置1は、図1のアンテナ装置1と第2導体板群20、スイッチ30の構成が異なる。図7のアンテナ装置1では、21個の平板21が表され、各平板21にそれぞれスイッチ30が接続されている。このようにすることにより、様々なパターンのキャパシタンスを形成することができ、適切なパターンを使用することで、ビームの方向についてより細かい制御を行うことができる。
【0026】
(変形例3)
図1等のアンテナ装置1では、第1導体板群10のアンテナとして、SRR11が使用されたが、第1導体板群10のアンテナとして、SRR11以外のアンテナが使用されてもよい。例えば、第1導体板群10のアンテナとして、アレーアンテナが使用され得る。アレーアンテナのアンテナ素子の近傍に複数の平板を配置し、当該平板に、当該平板を接地するか否かを切り替えるスイッチを接続することで、スイッチによってアンテナ素子と平板との間のキャパシタンスを変更し、図1等のアンテナ装置1と同様に、アレーアンテナのビームの方向を制御することができる。
【0027】
(実施形態の作用、効果)
本実施形態のアンテナ装置1は、第1導体板群10のSRR11及びマッチング素子12と、第2導体板群20の平板21及び平板22による複層構造でアンテナを形成する。接地されていない複数の平板21及び平板22によって、結合キャパシタンスが生成される。アンテナ装置1には、第2導体板群20の平板21を選択的に接地することができるスイッチ30が設けられる。アンテナ装置1は、スイッチ30の切り替えにより、第1導体板群10及び第2導体板群20によるキャパシタンスが変動する。このキャパシタンスの変動により、アンテナ装置1におけるビーム角を拡大、縮小、若しくは、ビーム方向をチルトさせることが可能となる。
【0028】
アンテナ装置1は、キャパシタンスの変動をスイッチ30の切り替えによって実現するため、構成が簡易であり、キャパシタンスを液晶で変更する構成等に比べて、低コストでアンテナ装置1を形成することができる。アンテナ装置1は、スイッチ30の切り替えで、ビームの方向を変更することができるので、物理的(機械的)にアンテナの向きを変える構成に比べて、簡易に、ビームの方向を走査することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 アンテナ装置
10 第1導体板群
11 SRR
12 マッチング素子
20 第2導体板群
21 平板
22 平板
30 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7