(54)【発明の名称】コルチゾール分析用センサ、コルチゾール分析方法、ストレス評価試薬、ストレス評価方法、コルチゾール関連疾患の試験試薬、およびコルチゾール関連疾患の罹患可能性を試験する方法
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業研究成果最適プログラム シーズ育成タイプ「人工核酸によるバイオマーカー簡易検出センサの技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<コルチゾール分析用センサ>
本発明のコルチゾール分析用センサは、前述のように、ターゲットに結合する結合領域(A)とG−カルテット構造を形成するG形成領域(D)とを含む下記(I)、(II)および(III)からなる群から選択された少なくとも1つの核酸分子を含み、
前記ターゲットが、コルチゾールであり、
前記ターゲット非存在下、前記G形成領域(D)は、G−カルテット構造の形成が阻害され不活性型となり、
前記ターゲット存在下、前記G形成領域(D)は、G−カルテット構造を形成して活性型となることを特徴とする。
(I)前記G形成領域(D)および前記結合領域(A)を有し、
前記結合領域(A)は、ステム形成領域(S
D)、中間領域(C)およびステム形成領域(S
C)を有し、
前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)に対して相補的な配列を有し、
前記ステム形成領域(S
C)は、前記中間領域(C)に対して相補的な配列を有する一本鎖核酸分子。
(II)前記G形成領域(D)および前記結合領域(A)を有し、
前記G形成領域(D)が、第1領域(D1)と第2領域(D2)とを含み、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とによりG−カルテットを形成する領域であり、
前記結合領域(A)の一方の末端側に前記第1領域(D1)を有し、前記結合領域(A)の他方の末端側に前記第2領域(D2)を有する一本鎖核酸分子。
(III)第1鎖(ss1)と第2鎖(ss2)とから構成される二本鎖核酸分子であり、
前記第1鎖(ss1)は、前記G形成領域(D)と前記結合領域(A)とをこの順序で有し、
前記第2鎖(ss2)は、ステム形成領域(S
D)およびステム形成領域(S
A)をこの順序で有し、前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)に対して相補的な配列を有し、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)に対して相補的な配列を有する二本鎖核酸分子。
【0014】
以下、本発明において、領域を核酸領域、コルチゾールをターゲットともいう。本発明における前記一本鎖核酸分子および前記二本鎖核酸分子は、例えば、それぞれ、一本鎖核酸素子、二本鎖核酸素子ということもできる。また、前記G形成領域(D)について、G−カルテット構造の形成が阻害されることを、スイッチ−OFF(またはturn−OFF)、G−カルテット構造が形成されることを、スイッチ−ON(またはturn−ON)ともいう。
【0015】
本発明において、ある配列に対して他の配列が相補的であるとは、例えば、両者間でアニーリングが生じ得る配列であることを意味する。前記アニーリングを、ステム形成ともいう。本発明において、相補的とは、例えば、2種類の配列をアラインメントした際の相補性が、例えば、90%以上であること、好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上であり、より好ましくは99%以上であり、特に好ましくは100%、すなわち完全相補である。また、核酸分子内において、ある配列に対して他の配列が相補的であるとは、一方の5’側から3’側に向かう配列と、他方の3’側から5’側に向かう配列とを対比させた際に、互いの塩基が相補的であることを意味する。
【0016】
本発明のセンサにおいて、前記結合領域(A)は、コルチゾールに結合する核酸であり、コルチゾール結合核酸ともいう。前記結合領域(A)のコルチゾールに対する解離定数は、特に制限されない。
【0017】
前記結合領域(A)と前記コルチゾールとの結合は、例えば、表面プラズモン共鳴分子相互作用(SPR;Surface Plasmon resonance)解析等により決定できる。前記解析は、例えば、ProteON(BioRad社)が使用できる。
【0018】
前記コルチゾールは、下記式(1)で表わされる。前記コルチゾールは、例えば、異性体、塩、水和物、溶媒和物等の誘導体でもよい。以下、前記コルチゾールに関する記載は、前記誘導体に援用できる。
【化1】
【0019】
本発明のセンサにおいて、前記結合領域(A)は、例えば、L(a1)〜(a3)および(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。
【0020】
(a1)表1A〜Hの配列番号1〜279、表2の配列番号280〜299、および表3A〜Dの配列番号300〜427のいずれかの塩基配列における四角で囲った塩基配列からなるポリヌクレオチド
(a2)前記(a1)のいずれかの前記塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記コルチゾールに結合するポリヌクレオチド
(a3)前記(a1)のいずれかの前記塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記コルチゾールに結合するポリヌクレオチド
(a4)前記(a1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、前記コルチゾールに結合するポリヌクレオチド
【0021】
前記(a1)のポリヌクレオチドは、下記表1A〜Hの配列番号1〜279、表2の配列番号280〜299、および表3A〜Dの配列番号300〜427のいずれかの塩基配列における四角で囲った塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0035】
前記(a2)のポリヌクレオチドにおいて、「1もしくは数個」は、例えば、前記(a2)のポリヌクレオチドが、コルチゾールに結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(a1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個、1個である。本発明において、塩基数および配列数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1〜5塩基」との記載は、「1、2、3、4、5塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0036】
前記(a3)のポリヌクレオチドにおいて、「同一性」は、例えば、前記(a3)のポリヌクレオチドが、コルチゾールに結合する範囲であればよい。前記「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0037】
前記(a4)のポリヌクレオチドにおいて、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(a1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2
nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0038】
前記(a4)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2
nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0039】
本発明のセンサにおいて、前記結合領域(A)は、例えば、前記(a1)〜(a3)および(a4)のいずれかのポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。後者の場合、前記結合領域(A)は、例えば、前記ポリヌクレオチドの他に、さらに、リンカー配列および/または付加配列等を有してもよい。
【0040】
本発明のセンサにおいて、前記結合領域(A)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、12塩基長、15塩基長、18塩基長であり、上限は、例えば、140塩基長、80塩基長、60塩基長であり、その範囲は、例えば、12〜140塩基長であり、15〜80塩基長であり、18〜60塩基長である。
【0041】
前記(a1)のポリヌクレオチドが前記配列番号1〜279のいずれかの塩基配列における四角で囲った塩基配列からなるポリヌクレオチドである場合、前記(a2)〜(a4)のポリヌクレオチドは、例えば、下記表6の各配列番号の塩基配列において、対応する各保存塩基配列が保存されていることが好ましい。前記各配列番号の塩基配列において、前記保存塩基配列は、例えば、前記(a1)のポリヌクレオチドの各配列番号の塩基配列を基準として、アライメントを行い、対応する(一致する)塩基配列を保存されている塩基配列と判断できる。
【0043】
前記(a3)のポリヌクレオチドは、前記各配列番号の塩基配列において、対応する前記保存塩基配列が保存されている場合、同一性は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0044】
本発明のセンサにおいて、前記G形成領域(D)は、Gカルテット構造を形成すると、例えば、触媒機能および蛍光性を生起する。そして、本発明のセンサは、例えば、ターゲット非存在下、前記G形成領域(D)のGカルテット構造の形成が阻害され、ターゲット存在下、前記ターゲットと前記結合領域(A)との結合により、前記G形成領域(D)のGカルテット構造が形成される。このため、本発明のセンサは、例えば、前記Gカルテット構造の形成による触媒機能および蛍光の発生の少なくとも一方の検出により前記ターゲットを検出できる。このように、本発明のセンサにおいて、前記G形成領域(D)は、G−カルテット構造を形成すると、例えば、前記2種類の性質(触媒機能または蛍光性)を示すため、その性質に応じて、本発明のセンサを使用することができる。なお、本発明において、前記G形成領域(D)は、G−カルテット構造を形成できればよく、前記触媒機能および蛍光性の有無は特に制限されない。
【0045】
第1に、前記G形成領域(D)は、前記G−カルテット構造を形成すると、例えば、ポルフィリンとの複合体を形成し、これによって、前記複合体が蛍光を発する。この場合、前記G−カルテット核酸は、蛍光核酸ともいう。
【0046】
前記G形成領域(D)が前記蛍光核酸の場合、本発明のセンサは、ターゲット非存在下では、前記G形成領域(D)においてG−カルテット構造の形成が阻害されるため、例えば、前記ポリフィリンとの複合体は形成されず、したがって、前記複合体による蛍光を発することはなく、スイッチ−OFFとなり、他方、ターゲット存在下では、前記G形成領域(D)においてG−カルテット構造が形成され、ポルフィリンとの複合体を形成するため、前記複合体による蛍光を発し、スイッチ−ONとなる。このため、例えば、ターゲットの有無またはターゲット量を、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体形成による蛍光によって、分析できる。
【0047】
第2に、前記G形成領域(D)は、前記G−カルテット構造を形成すると、例えば、ポルフィリンとの複合体を形成し、これによって、酵素の触媒機能を生起する。この場合、前記G−カルテット核酸は、触媒核酸ともいう。前記触媒機能は、例えば、酸化還元反応の触媒機能である。前記酸化還元反応は、例えば、基質から生成物が生成される過程において、二つの基質の間に電子の授受を生じる反応である。前記酸化還元反応の種類は、特に制限されない。前記酸化還元反応の触媒機能は、例えば、酵素と同様の活性があげられ、具体的には、例えば、ペルオキシダーゼと同様の活性(以下、「ペルオキシダーゼ様活性」という)等があげられる。前記ペルオキシダーゼ活性は、例えば、西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP)活性があげられる。前記G形成領域(D)は、一般に、DNA配列の場合、DNAエンザイムまたはDNAzymeと呼ばれ、RNA配列の場合、RNAエンザイムまたはRNAzymeと呼ばれる。
【0048】
前記DNAzymeとしては、例えば、下記論文(1)〜(4)等の核酸分子が例示できる。
(1)Travascioら, Chem. Biol., 1998年, vol.5, p.505-517
(2)Chengら, Biochemistry, 2009年, vol.48, p.7817-7823
(3)Tellerら, Anal. Chem., 2009年, vol.81, p.9114-9119
(4)Taoら, Anal. Chem., 2009年, vol.81, p.2144-2149
【0049】
前記G形成領域(D)が前記触媒核酸の場合、本発明のセンサは、ターゲット非存在下では、前記G形成領域(D)においてG−カルテット構造の形成が阻害されるため、前記ポルフィリンとの複合体は形成されず、したがって、前記複合体による触媒機能が生起されず、スイッチ−OFFとなり、他方、ターゲット存在下では、前記G形成領域(D)においてG−カルテット構造が形成され、ポルフィリンとの複合体を形成するため、前記複合体による触媒機能が生起され、スイッチ−ONとなる。このため、例えば、前記触媒機能に対応する基質を併用することにより、ターゲットの有無またはターゲット量を、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体形成による触媒機能で、分析できる。
【0050】
なお、本発明の分析用センサは、例えば、前記G形成領域(D)の配列を変更することなく、例えば、前記複合体による蛍光の検出を行うこともできるし、前記基質の共存下、前記複合体による触媒機能の検出を行うこともできる。
【0051】
前記G形成領域(D)との複合体を形成するポルフィリンは、特に制限されず、例えば、無置換体のポルフィリンおよびその誘導体があげられる。前記誘導体は、例えば、置換体のポルフィリン、金属元素との錯体を形成した金属ポルフィリン等があげられる。前記置換体のポルフィリンは、例えば、N−メチルメソポルフィリン(NMM)、Zn−DIGP、ZnPP9およびTMPyP等があげられる。前記金属ポルフィリンは、例えば、三価鉄錯体であるヘミン等があげられる。
【0052】
前記G形成領域(D)について、前記触媒機能を生起させる場合、前記ポルフィリンは、例えば、前記金属ポルフィリンが好ましく、より好ましくはヘミンである。また、前記G形成領域(D)について、前記蛍光を発生させる場合、前記ポルフィリンは、例えば、NMM、Zn−DIGP、ZnPP9およびTMPyP等が好ましい。
【0053】
前記G形成領域(D)は、例えば、一本鎖型でもよいし、二本鎖型でもよい。前記一本鎖型は、例えば、一本鎖のG形成領域(D)内で、G−カルテット構造を形成できる。前記二本鎖型は、例えば、第1領域(D1)と第2領域(D2)とからなり、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間で、G−カルテット構造を形成できる。後者の二本鎖型は、例えば、前記第1領域と、前記第2領域とが、間接的に連結された構造があげられ、具体的には、後述する核酸分子(II)において説明する。
【0054】
前記G形成領域(D)が一本鎖型の場合、前記G形成領域(D)は、例えば、下記(d1)〜(d3)および(d4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。
【0055】
(d1)表1A〜Hの配列番号1〜279および表3A〜Dの配列番号300〜427のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(d2)前記(d1)のいずれかの前記塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記G−カルテット構造を形成するポリヌクレオチド
(d3)前記(d1)のいずれかの前記塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記G−カルテット構造を形成するポリヌクレオチド
(d4)前記(d1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、前記G−カルテット構造を形成するポリヌクレオチド
【0056】
前記(d1)のポリヌクレオチドは、前記表1A〜Hの配列番号1〜279および前記表3A〜Dの配列番号300〜427のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0057】
前記(d2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(d2)のポリヌクレオチドが、前記G−カルテット構造を形成する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(d1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0058】
前記(d3)において、「同一性」は、例えば、前記(d3)のポリヌクレオチドが、前記G−カルテット構造を形成する範囲であればよい。前記「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0059】
前記(d4)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(d1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。「ハイブリダイズ」および「ストリンジェントな条件」については、前述の記載を援用できる。
【0060】
本発明の分析用センサにおいて、前記G形成領域(D)は、例えば、前記(d1)〜(d4)のいずれかのポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。後者の場合、前記G形成領域(D)は、例えば、前記ポリヌクレオチドの他に、さらに、リンカー配列および/または付加配列等を有してもよい。
【0061】
前記一本鎖型のG形成領域(D)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、11塩基長、13塩基長、15塩基長であり、上限は、例えば、60塩基長、36塩基長、18塩基長である。
【0062】
前記G形成領域(D)が二本鎖の場合、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)の一方が、例えば、下記(e1)〜(e3)および(e4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、他方の領域が、下記(f1)〜(f3)および(f4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。下記(e2)〜(e4)のポリヌクレオチドは、例えば、下記(f1)〜(f3)および(f4)の少なくとも1つのポリヌクレオチドとG−カルテット構造を形成するポリヌクレオチドである。下記(f2)〜(f4)のポリヌクレオチドは、例えば、下記(e1)〜(e3)および(e4)の少なくとも1つのポリヌクレオチドとG−カルテット構造を形成するポリヌクレオチドである。
【0063】
(e1)表2の配列番号280〜299のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e2)前記(e1)のいずれかの前記塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e3)前記(e1)のいずれかの前記塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e4)前記(e1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0064】
(f1)前記(e1)の配列番号の塩基配列におけるかっこで囲んだ下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(f2)前記(f1)のいずれかの前記塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
(f3)前記(f1)のいずれかの前記塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド
(f4)前記(f1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0065】
前記(e1)のポリヌクレオチドは、前記表2の配列番号280〜299のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0066】
前記(e2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(e2)のポリヌクレオチドが、前記(f1)〜(f4)の少なくとも1つのポリヌクレオチドとG−カルテット構造を形成する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(e1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0067】
前記(e3)において、「同一性」は、例えば、前記(e3)のポリヌクレオチドが、前記(f1)〜(f4)の少なくとも1つのポリヌクレオチドと前記G−カルテット構造を形成する範囲であればよい。前記「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0068】
前記(e4)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(e1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。「ハイブリダイズ」および「ストリンジェントな条件」については、前述の記載を援用できる。
【0069】
前記(f1)のポリヌクレオチドは、前記表2の配列番号280〜299のいずれかの塩基配列におけるかっこで囲んだ下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0070】
前記(f2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(f2)のポリヌクレオチドが、前記(e1)〜(e4)の少なくとも1つのポリヌクレオチドとG−カルテット構造を形成する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(f1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0071】
前記(f3)において、「同一性」は、例えば、前記(f3)のポリヌクレオチドが、前記(e1)〜(e4)の少なくとも1つのポリヌクレオチドと前記G−カルテット構造を形成する範囲であればよい。前記「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0072】
前記(f4)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(f1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。「ハイブリダイズ」および「ストリンジェントな条件」については、前述の記載を援用できる。
【0073】
前記二本鎖型のG形成領域(D)において、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)の長さは、特に制限されず、両者は同じであっても異なってもよい。前記第1領域(D1)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。前記第2領域(D2)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。
【0074】
本発明のセンサにおける前記核酸分子について、前記(I)、(II)、および(III)のそれぞれを、以下に説明する。なお、特に示さない限り、各核酸分子の記載を、それぞれ援用できる。
【0075】
(1)核酸分子(I)
前記核酸分子(I)は、前記G形成領域(D)および前記結合領域(A)を有し、
前記結合領域(A)は、ステム形成領域(S
D)、中間領域(C)およびステム形成領域(S
C)を有し、
前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)に対して相補的な配列を有し、
前記ステム形成領域(S
C)は、前記中間領域(C)に対して相補的な配列を有する一本鎖核酸分子である。
【0076】
前記核酸分子(I)において、前記G形成領域(D)は、例えば、前記一本鎖型である。
【0077】
前記核酸分子(I)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記G形成領域(D)のG−カルテット形成が、ON−OFFに制御される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記核酸分子(I)は、ターゲット非存在下では、前記分子内で、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングすることで、前記G形成領域(D)のG−カルテット構造の形成が阻害され(スイッチ−OFF)、結果として、例えば、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体形成が阻害される。また、前記分子内で、前記中間領域(C)と前記ステム形成領域(S
C)とがアニーリングすることで、前記中間領域(C)の構造も固定されている。この状態の前記分子の構造を、不活性型ともいう。他方、前記核酸分子(I)は、ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記中間領域(C)と前記ステム形成領域(S
C)とのアニーリングが解除され、前記結合領域(A)の立体構造が、より安定な構造に変化する。これに伴い、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とのアニーリングが解除され、前記G形成領域(D)の領域内でG−カルテット構造が形成され(スイッチ−ON)、結果として、例えば、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体が形成され、例えば、触媒機能および蛍光性を生起する。この状態の前記分子の構造を、活性型ともいう。このため、前記核酸分子(I)は、例えば、ターゲット非存在下では、前記複合体形成による触媒機能および蛍光性を生起せず、ターゲット存在下でのみ、前記複合体形成による触媒機能および蛍光性を生起できるため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0078】
前記ステム形成領域(S
D)は、例えば、その全部または一部が、前記G形成領域(D)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。また、前記ステム形成領域(S
C)は、例えば、その全部または一部が、前記中間領域(C)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。
【0079】
前記核酸分子(I)の前記結合領域(A)において、前記各領域の順序は、前記分子内で、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングし、前記中間領域(C)と前記ステム形成領域(S
C)とがアニーリングする順序であればよい。具体例としては、以下の順序が例示できる。
(1) 5’− D−S
C−C−S
D −3’
(2) 5’− S
D−C−S
C−D −3’
【0080】
前記(1)および(2)の形態は、例えば、以下のように、G−カルテット構造の形成がON−OFFされる。ターゲット非存在下、前記中間領域(C)と前記ステム形成領域(S
C)、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)が、それぞれステムを形成し、前記G形成領域(D)のG−カルテット構造の形成を阻害する。そして、ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記それぞれのステム形成が解除され、前記G形成領域(D)において、G−カルテット構造が形成される。
【0081】
前記(1)および(2)において、前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)の5’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
C)は、前記中間領域(C)の5’側領域と相補的であることが好ましい。
【0082】
前記核酸分子(I)は、例えば、前記各領域間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、前記介在リンカー領域(「内部領域」ともいう)を介して結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。
【0083】
前記核酸分子(I)は、例えば、前記介在リンカー領域として、互いに非相補的な2つの介在リンカー領域を有することが好ましい。前記2つの介在リンカー領域の位置は、特に制限されない。
【0084】
具体例として、前記(1)および(2)が、さらに2つの介在リンカー領域を有する形態について、例えば、以下の順序が例示できる。以下の例示において、前記中間領域(C)に連結する介在リンカー領域を(L
1)(「内部領域(I
c)」ともいう)、前記G形成領域(D)に連結する介在リンカー領域を(L
2)(「内部領域(I
D)」ともいう)で示す。前記核酸分子(I)は、例えば、介在リンカー領域として、例えば、(L
1)および(L
2)の両方を有してもよいし、いずれか一方のみを有してもよい。
(1’) 5’− D−L
2−S
C−C−L
1−S
D −3’
(2’) 5’− S
D−L
1−C−S
C−L
2−D −3’
【0085】
前記(1’)および(2’)の形態は、例えば、以下のように、G−カルテット構造の形成がON−OFFされる。ターゲット非存在下において、例えば、前記中間領域(C)と前記ステム形成領域(S
C)、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)が、それぞれステムを形成し、これら2つのステムの間で、前記介在リンカー領域(L
1)と前記介在リンカー領域(L
2)が、内部ループを形成して、前記G形成領域(D)のG−カルテット構造の形成を阻害する。そして、ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記それぞれのステム形成が解除され、前記G形成領域(D)において、G−カルテット構造が形成される。
【0086】
前記核酸分子(I)において、前記ステム形成配列(S
C)および前記ステム形成配列(S
D)の長さは、特に制限されない。前記ステム形成配列(S
C)の長さは、例えば、1〜60塩基長、1〜10塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成配列(S
D)の長さは、例えば、1〜30塩基長、0〜10塩基長、1〜10塩基長、0〜7塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成配列(S
C)と前記ステム形成配列(S
D)は、例えば、同じ長さでもよいし、前者が長くてもよいし、後者が長くてもよい。
【0087】
前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、特に制限されない。前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、それぞれ、例えば、0〜30塩基長、1〜30塩基長、1〜15塩基長、1〜6塩基長である。また、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、例えば、同じでも、異なってもよい。後者の場合、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さの差は、特に制限されず、例えば、1〜10塩基長、1または2塩基長、1塩基長である。
【0088】
前記核酸分子(I)において、前記結合領域(A)は、例えば、前記(a1)〜(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(a1)のポリヌクレオチドを、前記表1A〜Hの配列番号1〜279のいずれかの塩基配列における四角で囲った塩基配列からなるポリヌクレオチドに読み替えたポリヌクレオチドであり、前記読み替えを行った上で、その説明を援用できる。
【0089】
前記核酸分子(I)において、前記G形成領域(D)は、例えば、前記(d1)〜(d4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(d1)のポリヌクレオチドを、前記表1A〜Hの配列番号1〜279のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチドに読み替えたポリヌクレオチドであり、前記読み替えを行った上で、その説明を援用できる。
【0090】
具体例として、前記核酸分子(I)は、例えば、下記(s1)〜(s3)および(s4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドである。
【0091】
(s1)配列番号1〜279のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(s2)前記(s1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記(s1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(s3)前記(s1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記(s1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(s4)前記(s1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、前記(s1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
【0092】
本発明において、「前記(s1)と同等の機能を奏する」とは、前記ターゲット非存在下で、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成せず、且つ、前記ターゲット存在下で、前記結合領域(A)に前記ターゲットが結合し、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成することを意味する。
【0093】
前記(s1)のポリヌクレオチドは、配列番号1〜279のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0094】
前記(s2)のポリヌクレオチドにおいて、「1もしくは数個」は、例えば、前記(s1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0095】
前記(s3)のポリヌクレオチドにおいて、「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0096】
前記(s4)のポリヌクレオチドにおいて、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(s1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。「ハイブリダイズ」および「ストリンジェントな条件」については、前述の記載を援用できる。
【0097】
前記(s2)〜(s4)のポリヌクレオチドは、前記各配列番号の塩基配列において、前記結合領域(A)および前記G形成領域(D)の少なくとも一方の塩基配列が保存されていることが好ましい。前記各配列番号の塩基配列において、前記保存塩基配列は、例えば、前記(s1)のポリヌクレオチドの各配列番号の塩基配列を基準として、アライメントを行い、対応する塩基配列を前記保存されている塩基配列と判断できる。
【0098】
前記(s3)のポリヌクレオチドは、前記各配列番号の塩基配列において、前記保存塩基配列が保存されている場合、同一性は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0099】
前記核酸分子(I)の長さは、特に制限されない。前記核酸分子(I)の長さは、例えば、40〜120塩基長、45〜100塩基長、50〜80塩基長である。
【0100】
(2)核酸分子(II)
前記核酸分子(II)は、前記G形成領域(D)および前記結合領域(A)を有し、
前記G形成領域(D)が、第1領域(D1)と第2領域(D2)とを含み、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とによりG−カルテットを形成する領域であり、
前記結合領域(A)の一方の末端側に前記第1領域(D1)を有し、前記結合領域(A)の他方の末端側に前記第2領域(D2)を有する一本鎖核酸分子である。
【0101】
前記核酸分子(II)において、前記G形成領域(D)は、例えば、前記二本鎖型(以下、「スプリット型」ともいう)である。前記スプリット型のG形成領域(D)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とを含み、両者が一対となりG−カルテット構造を形成する分子である。前記核酸分子(II)において、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)は、それぞれ、前記G−カルテット構造を形成する配列であればよく、より好ましくは、グアニン四重鎖構造を形成する配列である。
【0102】
前記核酸分子(II)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記G形成領域(D)のG−カルテット形成が、ON−OFFに制御される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記核酸分子(II)は、前述のように、一対となってG−カルテット構造を形成する前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが、前記結合領域(A)を介して、それぞれ離れて配置されている。このように、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが距離を置いて配置されているため、ターゲット非存在下では、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間で、G−カルテット構造の形成が阻害され(スイッチ−OFF)、結果として、例えば、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体形成が阻害される。この状態の前記分子の構造を、不活性型ともいう。他方、前記核酸分子(II)は、ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)の立体構造が、ステムループ構造を有するより安定な構造に変化する。この前記結合領域(A)の立体構造の変化に伴い、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが接近し、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間で、G−カルテット構造が形成され(スイッチ−ON)、結果として、例えば、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体が形成され、触媒機能および蛍光性を生起する。この状態の前記分子の構造を、活性型ともいう。このため、前記核酸分子(II)は、例えば、ターゲット非存在下では、前記複合体形成による触媒機能および蛍光性を生起せず、ターゲット存在下でのみ、前記複合体形成による触媒機能および蛍光性を生起するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0103】
前記核酸分子(II)は、前述のように、G形成領域(D)として、二本鎖型を使用し、前記結合領域(A)を介して、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とを配置している。このため、例えば、コルチゾールに結合する結合核酸分子の種類ごとに条件設定を行う必要がなく、前記結合領域(A)として所望のコルチゾール結合核酸分子をセットできることから、汎用性に優れる。
【0104】
前記核酸分子(II)において、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)は、前記結合領域(A)を介して配置されていればよく、いずれが前記結合領域(A)の5’側または3’側に配置されてもよい。以下、特に説明しない限り、便宜上、前記結合領域(A)の5’側に前記第1領域(D1)、前記結合領域(A)の3’側に前記第2領域(D2)が配置されている例を示す。
【0105】
前記核酸分子(II)は、例えば、前記第1領域(D1)と前記結合領域(A)との間が、直接的または間接的に連結してもよいし、前記第2領域(D2)と前記結合領域(A)との間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、前記介在リンカー領域を介して結合していることを意味し、具体的には、一方の領域の3’末端と前記介在リンカー領域の5’末端とが直接結合し、前記介在リンカー領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。
【0106】
前記核酸分子(II)は、前述のように、前記第1領域(D1)と前記結合領域(A)との間に前記介在リンカー領域(第1リンカー領域(L
1))を有し、前記第2領域(D2)と前記結合領域(A)との間に前記介在リンカー領域(第2リンカー領域(L
2))を有することが好ましい。前記第1リンカー領域(L
1)および前記第2リンカー領域(L
2)は、いずれか一方でもよく、両方を有することが好ましい。前記第1リンカー領域(L
1)と前記第2リンカー領域(L
2)の両方を有する場合、それぞれの長さは、同じ長さでもよいし異なってもよい。
【0107】
前記リンカー領域の長さは、特に制限されず、その下限は、例えば、1、3、5、7、9塩基長であり、その上限は、例えば、20、15、10塩基長である。
【0108】
また、前記第1リンカー領域(L
1)の5’末端側からの塩基配列と前記第2リンカー領域(L
2)の3’末端側からの塩基配列とは、例えば、互いに非相補的であることが好ましい。この場合、前記第1リンカー領域(L
1)の5’末端側からの塩基配列と前記第2リンカー領域(L
2)の3’末端側からの塩基配列は、アライメントした状態で、前記核酸分子(II)の分子内で内部ループを形成する領域ともいえる。このように、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)と前記結合領域(A)との間に、非相補的な前記第1リンカー領域(L
1)と前記第2リンカー領域(L
2)を有することで、例えば、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との距離を十分に保つことができる。このため、例えば、ターゲット非存在下における、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とによるG−カルテット構造の形成を、十分に抑制し、ターゲット非存在下での、触媒機能および蛍光性に基づくバックグラウンドを十分に低下することができる。
【0109】
前記核酸分子(II)は、例えば、D1−W−D2で表すことができ、具体的には、下記式(I)で表すことができる。
【化2】
【0110】
前記式(I)中、
5’側の配列(N)
n1-GGG-(N)
n2-(N)
n3-が、前記第1領域(D1)の配列(d1)であり、
3’側の配列-(N)
m3-(N)
m2-GGG-(N)
m1が、前記第2領域(D2)の配列(d2)であり、
Wが、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間の領域であって、前記結合領域(A)を含み、
Nは、塩基を示し、n1、n2およびn3ならびにm1、m2およびm3は、それぞれ塩基Nの繰り返し個数を示す。
【0111】
前記式(I)は、前記核酸分子(II)において、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とを分子内アライメントした状態を示すが、これは、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との配列の関係を示すための模式図であって、本発明において、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが、この状態を取ることを限定するものではない。
【0112】
前記第1領域(D1)の配列(d1)および前記第2領域(D2)の配列(d2)は、例えば、(N)
n1と(N)
m1とが、下記条件(1)を満たし、(N)
n2と(N)
m2とが、下記条件(2)を満たし、(N)
n3と(N)
m3とが、下記条件(3)を満たすことが好ましい。
【0113】
条件(1)
(N)
n1および(N)
m1は、(N)
n1の5’末端側からの塩基配列と(N)
m1の3’末端側からの塩基配列とが、互いに相補的であり、n1およびm1は、同じ0または正の整数である。
条件(2)
(N)
n2および(N)
m2は、(N)
n2の5’末端側からの塩基配列と(N)
m2の3’末端側からの塩基配列とが、互いに非相補的であり、n2およびm2は、それぞれ、正の整数であり、同じでも異なってもよい。
条件(3)
(N)
n3および(N)
m3は、n3およびm3が、それぞれ、3または4であり、同じでも異なってもよく、3つの塩基Gを有し、n3またはm3が4の場合、(N)
n3および(N)
m3は、2番目または3番目の塩基がG以外の塩基Hである。
【0114】
前記条件(1)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とをアライメントした場合の5’末端の(N)
n1と3’末端の(N)
m1との条件である。前記条件(1)において、前記(N)
n1の5’末端側からの塩基配列と前記(N)
m1の3’末端側からの塩基配列とは、互いに相補的であり、同じ長さである。(N)
n1と(N)
m1とは、同じ長さの相補的な配列であるため、アライメントした状態で、ステムを形成するステム領域ともいえる。
【0115】
n1およびm1は、同じ0または正の整数であればよく、例えば、それぞれ、0、1〜10であり、好ましくは、1、2または3である。
【0116】
前記条件(2)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とをアライメントした場合の(N)
n2と(N)
m2との条件である。前記条件(2)において、前記(N)
n2の塩基配列と前記(N)
m2の塩基配列とは、互いに非相補的であり、n2およびm2は、同じ長さでも異なる長さでもよい。(N)
n2と(N)
m2とは、非相補的な配列であるため、アライメントした状態で、内部ループを形成する領域ともいえる。
【0117】
n2およびm2は、正の整数であり、例えば、それぞれ、1〜10であり、好ましくは、1または2である。n2とm2とは、同じでも異なってもよく、例えば、n2=m2、n2>m2、n2<m2のいずれでもよく、好ましくはn2>m2、n2<m2である。
【0118】
前記条件(3)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とをアライメントした場合の(N)
n3と(N)
m3との条件である。前記条件(3)において、前記(N)
n3の塩基配列と前記(N)
m3の塩基配列とは、それぞれ、3つの塩基Gを有する3塩基長または4塩基長の配列であり、同じでも異なってもよい。n3またはm3が4の場合、(N)
n3および(N)
m3は、2番目または3番目の塩基がG以外の塩基Hである。3つのGを有する(N)
n3および(N)
m3は、(N)
n1と(N)
n2との間のGGGおよび(N)
m1と(N)
m2との間のGGGとともに、G−カルテット構造を形成するG形成領域(D)である。
【0119】
n3およびm3は、例えば、n3=m3、n3>m3、n3<m3のいずれでもよく、好ましくはn3>m3、n3<m3である。
【0120】
G以外の塩基である前記塩基Hは、例えば、A、C、TまたはUがあげられ、好ましくは、A、CまたはTである。
【0121】
前記条件(3)は、具体例として、下記条件(3−1)、(3−2)または(3−3)があげられる。
条件(3−1)
(N)
n3および(N)
m3のうち、一方の5’側からの配列がGHGGであり、他方の5’側からの配列がGGGである。
条件(3−2)
(N)
n3および(N)
m3のうち、一方の5’側からの配列がGGHGであり、他方の5’側からの配列がGGGである。
条件(3−3)
(N)
n3および(N)
m3の両方の配列がGGGである。
【0122】
前記核酸分子(II)において、前記結合領域(A)は、例えば、前記(a1)〜(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(a1)のポリヌクレオチドが、前記表2の配列番号280〜299のいずれかの塩基配列における四角で囲った塩基配列からなるポリヌクレオチドである場合であり、その説明を援用できる。
【0123】
前記核酸分子(II)において、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)の一方が、例えば、前記(e1)〜(e4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(e1)のポリヌクレオチドを、前記表2の配列番号280〜299のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチドに読み替えたポリヌクレオチドであり、前記読み替えを行った上で、その説明を援用できる。また、他方の領域が、例えば、前記(f1)〜(f4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(e1)のポリヌクレオチドを、前記表2の配列番号280〜299のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチドに読み替えたポリヌクレオチドであり、前記読み替えを行った上で、その説明を援用できる。
【0124】
前記第1領域(D1)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。前記第2領域(D2)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)の長さは、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0125】
具体例として、前記核酸分子(II)は、例えば、下記(t1)〜(t3)および(t4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドである。
【0126】
(t1)配列番号280〜299のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(t2)前記(t1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記(t1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(t3)前記(t1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記(t1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(t4)前記(t1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、前記(t1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
【0127】
本発明において、「前記(t1)と同等の機能を奏する」とは、前記ターゲット非存在下で、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成せず、且つ、前記ターゲット存在下で、前記結合領域(A)に前記ターゲットが結合し、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成することを意味する。
【0128】
前記(t1)のポリヌクレオチドは、配列番号280〜299のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0129】
前記(t2)のポリヌクレオチドにおいて、「1もしくは数個」は、例えば、前記(t1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0130】
前記(t3)のポリヌクレオチドにおいて、「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0131】
前記(t4)のポリヌクレオチドにおいて、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(t1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。「ハイブリダイズ」および「ストリンジェントな条件」については、前述の記載を援用できる。
【0132】
前記(t2)〜(t4)のポリヌクレオチドは、前記各配列番号の塩基配列において、前記結合領域(A)および前記G形成領域(D)の少なくとも一方の塩基配列が保存されていることが好ましい。前記各配列番号の塩基配列において、前記保存塩基配列は、例えば、前記(t1)のポリヌクレオチドの各配列番号の塩基配列を基準として、アライメントを行い、対応する塩基配列を前記保存されている塩基配列と判断できる。
【0133】
前記(t3)のポリヌクレオチドは、前記各配列番号の塩基配列において、前記保存塩基配列が保存されている場合、同一性は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0134】
前記核酸分子(II)の長さは、特に制限されない。前記核酸分子(II)の長さは、下限は、例えば、25塩基長、30塩基長、35塩基長であり、上限は、例えば、200塩基長、100塩基長、80塩基長、その範囲は、例えば、25〜200塩基長、30〜100塩基長、35〜80塩基長である。
【0135】
(3)核酸分子(III)
前記核酸分子(III)は、第1鎖(ss1)と第2鎖(ss2)とから構成される二本鎖核酸分子であり、
前記第1鎖(ss1)は、前記G形成領域(D)と前記結合領域(A)とをこの順序で有し、
前記第2鎖(ss2)は、ステム形成領域(S
D)およびステム形成領域(S
A)をこの順序で有し、前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)に対して相補的な配列を有し、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)に対して相補的な配列を有する二本鎖核酸分子である。
【0136】
前記核酸分子(III)において、前記G形成領域(D)は、例えば、前記一本鎖型である。
【0137】
前記核酸分子(III)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記G形成領域(D)のG−カルテット形成が、ON−OFFに制御される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記核酸分子(III)は、ターゲット非存在下では、前記第1鎖(ss1)の前記G形成領域(D)と前記第2鎖(ss2)の前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングすることで、前記G形成領域(D)のG−カルテット構造の形成が阻害され(スイッチ−OFF)、結果として、例えば、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体形成が阻害される。また、前記分子内で、前記第1鎖(ss1)の前記結合領域(A)と前記第2鎖(ss2)の前記ステム形成領域(S
A)とがアニーリングすることで、前記結合領域(A)の構造も固定されている。この状態の前記分子の構造を、不活性型ともいう。他方、前記核酸分子(III)は、ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とのアニーリングが解除され、前記結合領域(A)の立体構造が、より安定な構造に変化する。これに伴い、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とのアニーリングが解除され、前記G形成領域(D)の領域内でG−カルテット構造が形成され(スイッチ−ON)、結果として、例えば、前記G形成領域(D)とポルフィリンとの複合体が形成され、触媒機能および蛍光性を生起する。この状態の前記分子の構造を、活性型ともいう。このため、前記核酸分子(III)は、ターゲット非存在下では、前記複合体形成による触媒機能および蛍光性を生起せず、ターゲット存在下でのみ、前記複合体形成による触媒機能および蛍光性を生起するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0138】
前記ステム形成領域(S
D)は、例えば、その全部または一部が、前記G形成領域(D)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。また、前記ステム形成領域(S
A)は、例えば、その全部または一部が、前記結合領域(A)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。
【0139】
前記核酸分子(III)において、前記各領域の順序は、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングし、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とがアニーリングする順序であればよい。具体例としては、以下の順序が例示できる。
(1) ss1 5’− A−D −3’
ss2 3’− S
A−S
D −5’
(2) ss1 5’− D−A −3’
ss2 3’− S
D−S
A −5’
【0140】
前記(1)において、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の3’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)の5’側領域と相補的であることが好ましい。前記(2)において、前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)の3’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の5’側領域と相補的であることが好ましい。
【0141】
前記核酸分子(III)は、例えば、前記各領域間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、前記介在リンカー領域を介して結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。
【0142】
前記核酸分子(III)は、例えば、前記第1鎖(ss1)における前記結合領域(A)と前記G形成領域(D)との間、および、前記第2鎖(ss2)における前記ステム形成領域(S
D)と前記ステム形成領域(S
A)との間に、前記介在リンカー領域を有することが好ましい。前記第1鎖(ss1)における介在リンカー領域(L
1)と、前記第2鎖(ss2)における介在リンカー領域(L
2)とは、互いに非相補的な配列であることが好ましい。
【0143】
具体例として、前記(1)および(2)が、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)に前記介在リンカー領域を有する形態について、例えば、以下の順序が例示できる。以下の例示において、前記結合領域(A)と前記G形成領域(D)とを連結する介在リンカー領域を(L
1)、前記ステム形成領域(S
D)と前記ステム形成領域(S
A)とを連結する介在リンカー領域を(L
2)で示す。前記核酸分子(III)は、例えば、介在リンカー領域として、例えば、(L
1)および(L
2)の両方を有してもよいし、いずれか一方のみを有してもよい。
(1’) ss1 5’− A−L
1−D −3’
ss2 3’− S
A−L
2−S
D −5’
(2’) ss1 5’− D−L
1−A −3’
ss2 3’− S
D−L
2−S
A −5’
【0144】
前記(1’)および(2’)の形態は、例えば、以下のように、G−カルテット構造の形成がON−OFFされる。ターゲット非存在下において、例えば、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)が、それぞれステムを形成し、これら2つのステムの間で、前記介在リンカー領域(L
1)と前記介在リンカー領域(L
2)が、内部ループを形成して、前記G形成領域(D)のG−カルテット構造の形成を阻害する。そして、ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記それぞれのステム形成が解除され、前記G形成領域(D)において、G−カルテット構造が形成される。
【0145】
前記核酸分子(III)において、前記ステム形成配列(S
A)および前記ステム形成配列(S
D)の長さは、特に制限されない。前記ステム形成配列(S
A)の長さは、例えば、1〜60塩基長、1〜10塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成配列(S
D)の長さは、例えば、1〜30塩基長、0〜10塩基長、1〜10塩基長、0〜7塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成配列(S
A)と前記ステム形成配列(S
D)は、例えば、同じ長さでもよいし、前者が長くてもよいし、後者が長くてもよい。
【0146】
前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、特に制限されない。前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、それぞれ、例えば、0〜30塩基長、1〜30塩基長、1〜15塩基長、1〜6塩基長である。また、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、例えば、同じでも、異なってもよい。後者の場合、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さの差は、特に制限されず、例えば、1〜10塩基長、1または2塩基長、1塩基長である。
【0147】
前記核酸分子(III)において、前記結合領域(A)は、例えば、前記(a1)〜(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(a1)のポリヌクレオチドが、前記表3A〜Dの配列番号300〜427いずれかの塩基配列における四角で囲った塩基配列からなるポリヌクレオチドである場合であり、その説明を援用できる。
【0148】
前記核酸分子(III)において、前記G形成領域(D)は、例えば、前記(d1)〜(d4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(d1)のポリヌクレオチドが、前記表3A〜Dの配列番号300〜427のいずれかの塩基配列における下線部の塩基配列からなるポリヌクレオチドである場合であり、その説明を援用できる。
【0149】
具体例として、前記核酸分子(III)において、前記第1鎖(ss1)は、例えば、下記(u1)〜(u3)および(u4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドである。
【0150】
(u1)配列番号300〜427のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(u2)前記(u1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記(u1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(u3)前記(u1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記(u1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(u4)前記(u1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、前記(u1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
【0151】
本発明において、「前記(u1)と同等の機能を奏する」とは、前記ターゲット非存在下で、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成せず、且つ、前記ターゲット存在下で、前記結合領域(A)に前記ターゲットが結合し、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成することを意味する。
【0152】
前記(u1)のポリヌクレオチドは、配列番号300〜427のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0153】
前記(u2)のポリヌクレオチドにおいて、「1もしくは数個」は、例えば、前記(u1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0154】
前記(u3)のポリヌクレオチドにおいて、「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0155】
前記(u4)のポリヌクレオチドにおいて、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(u1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。「ハイブリダイズ」および「ストリンジェントな条件」については、前述の記載を援用できる。
【0156】
前記(u2)〜(u4)のポリヌクレオチドは、前記各配列番号の塩基配列において、前記結合領域(A)および前記G形成領域(D)の少なくとも一方の塩基配列が保存されていることが好ましい。前記各配列番号の塩基配列において、前記保存塩基配列は、例えば、前記(u1)のポリヌクレオチドの各配列番号の塩基配列を基準として、アライメントを行い、対応する塩基配列を前記保存されている塩基配列と判断できる。
【0157】
前記(u3)のポリヌクレオチドは、前記各配列番号の塩基配列において、前記保存塩基配列が保存されている場合、同一性は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0158】
また、前記核酸分子(III)において、前記第2鎖(ss2)は、例えば、下記(v1)〜(v3)および(v4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドである。
【0159】
(v1)配列番号428〜555のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(v2)前記(v1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記(v1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(v3)前記(v1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記(v1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
(v4)前記(v1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、前記(v1)と同等の機能を奏するポリヌクレオチド
【0160】
本発明において、「前記(v1)と同等の機能を奏する」とは、前記ターゲット非存在下で、前記第1鎖(ss1)とのアニーリングにより、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成せず、且つ、前記ターゲット存在下で、前記結合領域(A)に前記ターゲットが結合し、前記第1鎖(ss1)とのアニーリングが解除され、前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成することを意味する。
【0161】
前記(v1)のポリヌクレオチドは、下記表4AおよびBの配列番号428〜555のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0164】
前記(v2)のポリヌクレオチドにおいて、「1もしくは数個」は、例えば、前記(v1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0165】
前記(v3)のポリヌクレオチドにおいて、「同一性」は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0166】
前記(v4)のポリヌクレオチドにおいて、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(v1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。「ハイブリダイズ」および「ストリンジェントな条件」については、前述の記載を援用できる。
【0167】
前記核酸分子(III)の前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)の組合せは、特に制限されず、例えば、下記表5の(1)〜(127)および(128)からなる群から選択された少なくとも1つの組合せであり、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)が、それぞれ、前記組合せに対応する配列番号の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む。前記第1鎖(ss1)は、例えば、前記(u1)〜(u4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(u1)のポリヌクレオチドを、前記組合せに対応する配列番号の塩基配列からなるポリヌクレオチドに読み替えたポリヌクレオチドでもよく、前記読み替えを行った上で、その説明を援用できる。前記第2鎖(ss2)は、例えば、前記(v1)〜(v4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドにおいて、前記(v1)のポリヌクレオチドが、前記組合せに対応する配列番号の塩基配列からなるポリヌクレオチドに読み替えたポリヌクレオチドでもよく、前記読み替えを行った上で、その説明を援用できる。
【0169】
前記核酸分子(III)において、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)の長さは、特に制限されない。前記第1鎖(ss1)の長さは、例えば、40〜200塩基長、42〜100塩基長、45〜60塩基長である。前記第2鎖(ss2)の長さは、例えば、4〜120塩基長、5〜25塩基長、10〜15塩基長である。
【0170】
前記核酸分子(III)は、例えば、第3鎖(ss3)を含み、前記第3鎖は、ステム形成領域(S’
D)およびステム形成領域(S’
A)をこの順序で有し、前記ステム形成領域(S’
D)は、前記G形成領域(D)に対して相補的な配列を有し、前記ステム形成領域(S’
A)は、前記結合領域(A)に対して相補的な配列を有してもよい。前記第3鎖(ss3)は、例えば、2つの前記第1鎖(ss1)の結合領域(A)およびG形成領域(D)と結合できる。すなわち、前記第3鎖(ss3)は、例えば、2つの前記第1鎖(ss1)を架橋できる。このため、前記核酸分子(III)が前記第3鎖(ss3)を含む場合、前記第3鎖(ss3)は、例えば、複数の第1鎖(ss1)を架橋することにより、ターゲットを検出する前記第1鎖(ss1)を集積でき、前記センサの感度を向上できる。以下、複数の核酸分子(III)(第1鎖(ss1))が前記第3鎖(ss3)により架橋された分子を、核酸複合体(III)ともいう。
【0171】
前記第3鎖(ss3)において、前記各領域の順序は、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S’
D)とがアニーリングし、前記第1鎖(ss1)の結合領域(A)と前記ステム形成領域(S’
A)とがアニーリングし、前記ステム形成領域(S’
D)がアニーリングしている第1鎖(ss1)と前記ステム形成領域(S’
A)がアニーリングしている第1鎖(ss1)とが、異なる第1鎖(ss1)となる順序であればよい。具体例としては、以下の順序が例示できる。
(3) ss1 5’− A−D −3’
ss3 3’− S’
D −S’
A−5’
(4) ss1 5’− D−A −3’
ss3 3’− S’
A −S’
D−5’
【0172】
前記(3)において、前記ステム形成領域(S’
A)は、前記結合領域(A)の5’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S’
D)は、前記G形成領域(D)の3’側領域と相補的であることが好ましい。前記(4)において、前記ステム形成領域(S’
D)は、前記G形成領域(D)の5’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S’
A)は、前記結合領域(A)の3’側領域と相補的であることが好ましい。
【0173】
前記第3鎖(ss3)は、例えば、前記各領域間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的および間接的な連結は、例えば、前述の説明を援用できる。
【0174】
前記第3鎖(ss3)は、例えば、前記ステム形成領域(S’
A)と前記ステム形成領域(S’
D)との間に、前記介在リンカー領域(L
3)を有することが好ましい。前記介在リンカー領域(L
3)と、例えば、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)とは、互いに非相補的な配列であることが好ましい。
【0175】
具体例として、前記(3)および(4)が、前記第1鎖(ss1)および前記第3鎖(ss3)に前記介在リンカー領域を有する形態について、例えば、以下の順序が例示できる。以下の例示において、前記結合領域(A)と前記G形成領域(D)とを連結する介在リンカー領域を(L
1)、前記ステム形成領域(S’
D)と前記ステム形成領域(S’
A)とを連結する介在リンカー領域を(L
3)で示す。前記核酸分子(III)は、例えば、介在リンカー領域として、例えば、(L
1)、(L
2)および(L
3)のうちいずれか1つを有してもよいし、2つ以上を有してもよいし、全てを有してもよい。
(3’) ss1 5’− A−L
1−D −3’
ss3 3’− S’
D−L
3−S’
A −5’
(4’) ss1 5’− D−L
1−A −3’
ss3 3’− S’
A−L
3−S’
D −5’
【0176】
前記第3鎖(ss3)において、前記ステム形成配列(S’
A)および前記ステム形成配列(S’
D)の長さは、特に制限されない。前記ステム形成配列(S’
A)の長さは、例えば、1〜60塩基長、1〜10塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成配列(S’
D)の長さは、例えば、1〜30塩基長、1〜10塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成配列(S’
A)と前記ステム形成配列(S’
D)は、例えば、同じ長さでもよいし、前者が長くてもよいし、後者が長くてもよい。
【0177】
前記介在リンカー領域(L
3)の長さは、特に制限されない。前記介在リンカー領域(L
3)の長さは、例えば、1〜30塩基長、1〜15塩基長、1〜6塩基長である。また、前記介在リンカー領域(L
3)の長さは、例えば、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さと同じでも、異なってもよい。
【0178】
本発明のセンサが、前記核酸複合体(III)を含む場合、前記核酸複合体(III)に含まれる前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)の個数は、特に制限されない。
【0179】
前記核酸分子(III)は、例えば、前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)との間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とが連結している場合、前記核酸分子(III)は、例えば、一本鎖型核酸センサということができ、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)は、それぞれ、第1領域および第2領域ということができる。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、介在リンカー領域(L
1)を介して結合していることを意味し、具体的には、一方の領域の3’末端と前記介在リンカー領域の5’末端とが直接結合し、前記介在リンカー領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。前記介在リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、1〜60塩基長である。
【0180】
前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とが連結している場合、前記核酸分子(III)において、前記各領域の順序は、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングし、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とがアニーリングする順序であればよい。具体例としては、以下の順序が例示できる。
(5)5’− A−D−S
D−S
A −3’
(6)5’− S
D−S
A−A−D −3’
(7)5’− A−D−L
1−S
D−S
A −3’
(8)5’− S
D−S
A−L
1−A−D −3’
【0181】
前記(5)および(7)において、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の3’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)の5’側領域と相補的であることが好ましい。前記(6)および(8)において、前記ステム形成領域(S
D)は、前記G形成領域(D)の3’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の5’側領域と相補的であることが好ましい。
【0182】
前記核酸分子(III)は、例えば、前記各領域間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、前記介在リンカー領域を介して結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。
【0183】
前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とが連結している場合、前記核酸分子(III)は、例えば、前記第1領域における前記結合領域(A)と前記G形成領域(D)との間、および、前記第2領域における前記ステム形成領域(S
D)と前記ステム形成領域(S
A)との間に、前記介在リンカー領域を有することが好ましい。前記第1領域における介在リンカー領域(L
2)と、前記第2領域における介在リンカー領域(L
3)とは、互いに非相補的な配列であることが好ましい。
【0184】
具体例として、前記(5)〜(8)が、前記第1領域および前記第2領域に前記介在リンカー領域を有する形態について、例えば、以下の順序が例示できる。以下の例示において、前記結合領域(A)と前記G形成領域(D)とを連結する介在リンカー領域を(L
2)、前記ステム形成領域(S
D)と前記ステム形成領域(S
A)とを連結する介在リンカー領域を(L
3)で示す。前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とが連結している場合、前記核酸分子(III)は、例えば、介在リンカー領域として、例えば、(L
2)および(L
3)の両方を有してもよいし、いずれか一方のみを有してもよい。
(5’)5’− A−L
2−D−S
D−L
3−S
A −3’
(6’)5’− S
D−L
3−S
A−A−L
2−D −3’
(7’)5’− A−L
2−D−L
1−S
D−L
3−S
A −3’
(8’)5’− S
D−L
3−S
A−L
1−A−L
2−D −3’
【0185】
前記(5’)〜(8’)の形態は、例えば、以下のように、G−カルテット構造の形成がON−OFFされる。ターゲット非存在下において、例えば、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)、前記G形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)が、それぞれステムを形成し、これら2つのステムの間で、前記介在リンカー領域(L
2)と前記介在リンカー領域(L
3)が、内部ループを形成して、前記G形成領域(D)のG−カルテット構造の形成を阻害する。そして、ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記それぞれのステム形成が解除され、前記G形成領域(D)において、G−カルテット構造が形成される。
【0186】
前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とが連結している場合、前記核酸分子(III)において、前記ステム形成配列(S
A)および前記ステム形成配列(S
D)の長さは、特に制限されず、例えば、前述の説明を援用できる。
【0187】
前記介在リンカー領域(L
2)および(L
3)の長さは、特に制限されない。前記介在リンカー領域(L
2)および(L
3)の長さは、それぞれ、例えば、0〜30塩基長、1〜30塩基長、1〜15塩基長、1〜6塩基長である。また、前記介在リンカー領域(L
2)および(L
3)の長さは、例えば、同じでも、異なってもよい。後者の場合、前記介在リンカー領域(L
2)および(L
3)の長さの差は、特に制限されず、例えば、1〜10塩基長、1または2塩基長、1塩基長である。
【0188】
本発明のセンサは、例えば、前記核酸分子を含むセンサでもよいし、前記核酸分子からなるセンサでもよい。
【0189】
本発明のセンサは、ヌクレオチド残基を含む分子であり、例えば、ヌクレオチド残基のみからなる分子でもよいし、ヌクレオチド残基を含む分子でもよい。前記ヌクレオチドは、例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドおよびそれらの誘導体である。具体的に、前記センサは、例えば、デオキシリボヌクレオチドおよび/またはその誘導体を含むDNAでもよいし、リボヌクレオチドおよび/またはその誘導体を含むRNAでもよいし、前者と後者とを含むキメラ(DNA/RNA)でもよい。前記センサは、好ましくは、DNAである。
【0190】
前記ヌクレオチドは、塩基として、例えば、天然塩基(非人工塩基)および非天然塩基(人工塩基)のいずれを含んでもよい。前記天然塩基は、例えば、A、C、G、T、Uおよびこれらの修飾塩基があげられる。前記修飾は、例えば、メチル化、フルオロ化、アミノ化、チオ化等があげられる。前記非天然塩基は、例えば、2’−フルオロピリミジン、2’−O−メチルピリミジン等があげられ、具体例としては、2’−フルオロウラシル、2’−アミノウラシル、2’−O−メチルウラシル、2’−チオウラシル等があげられる。前記ヌクレオチドは、例えば、修飾されたヌクレオチドでもよく、前記修飾ヌクレオチドは、例えば、2’−メチル化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−メチル化−シトシンヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−アミノ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−アミノ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−チオ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−チオ化−シトシンヌクレオチド残基等があげられる。前記核酸分子は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)等の非ヌクレオチドを含んでもよい。
【0191】
本発明のセンサは、例えば、さらに、リンカー領域(L)を含んでもよく、前記核酸分子の末端に、前記リンカー領域(L)が連結していることが好ましい。前記リンカー領域(L)は、例えば、前記核酸分子の3’末端および5’末端の少なくとも一方または両方に連結してもよく、前記核酸分子の3’末端に連結していることが好ましい。
【0192】
本発明のセンサが、前記リンカー領域(L)を有する場合、前記リンカー領域(L)により、担体等に固定化されてもよい。本発明の分析用センサは、例えば、前記リンカー領域(L)の3’末端または5’末端で、固定化してもよく、前述のように、前記核酸分子の3’末端に前記リンカー領域(L)が連結している場合は、前記リンカー領域(L)の3’末端で、固定化されていることが好ましい。
【0193】
本発明のセンサにおいて、例えば、前記リンカー領域(L)の長さは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、1塩基長、3塩基長、5塩基長であり、上限は、例えば、200塩基長、50塩基長、20塩基長、12塩基長、9塩基長であり、その範囲は、例えば、1〜200塩基長、1〜50塩基長、1〜20塩基長、3〜12塩基長、5〜9塩基長である。
【0194】
前記リンカー領域(L)は、例えば、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり、構成単位が、例えば、ヌクレオチド残基である。前記ヌクレオチド残基は、例えば、前述の例示を援用できる。前記リンカー領域(L)は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記リンカーの具体例として、例えば、ポリデオキシチミン(ポリdT)、ポリデオキシアデニン(ポリdA)、AとTの繰り返し配列であるポリdAdT等があげられ、好ましくはポリdT、ポリdAdTである。
【0195】
本発明の分析用センサにおいて、前記核酸分子は、例えば、一本鎖ポリヌクレオチドであってもよい。前記一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、自己アニーリングによりステム構造およびループ構造を形成可能であることが好ましく、具体的に、例えば、ステムループ構造、インターナルループ構造および/またはバルジ構造等を形成可能であることが好ましい。
【0196】
本発明において、「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実際にステム構造およびループ構造を形成すること、ならびに、ステム構造およびループ構造が形成されていなくても、条件によってステム構造およびループ構造を形成可能なことも含む。「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実験的に確認した場合、および、コンピュータ等のシミュレーションで予測した場合の双方を含む。
【0197】
本発明のセンサにおいて、前記核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。前記核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、前記修飾化ヌクレオチド残基および/または前記人工核酸モノマー残基を有することが好ましい。また、本発明の分析用センサにおいて、前記核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、5’末端または3’末端に、数10kDaのPEG(ポリエチレングリコール)またはデオキシチミジン等が結合してもよい。
【0198】
本発明のセンサは、例えば、さらに、担体を含み、前記担体に、前記核酸分子が固定化されていることが好ましい。本発明の分析用センサが前記担体を有する場合、前記核酸分子は、例えば、その3’末端および5’末端のいずれかにおいて、直接的または間接的に固定化することができ、前記間接的に固定化する場合、前記核酸分子は、例えば、前記リンカー領域を有して固定化することができる。前記核酸分子の固定化方法は、特に制限されず、例えば、公知の核酸固定化方法により実施できる。
【0199】
本発明のセンサは、例えば、さらに前記G形成領域(D)と反応する試薬を含んでもよい。前記試薬は、例えば、G−カルテット構造を形成した前記G形成領域(D)との複合体を形成するポルフィリンを含むことが好ましい。前記ポルフィリンは、例えば、前述の説明を援用できる。
【0200】
また、本発明のセンサは、例えば、ターゲットの分析において前記G形成領域(D)のいずれの機能を利用するかによって、前記試薬を設定することができる。前記G形成領域(D)の前記触媒機能を利用する場合、本発明の分析用センサは、前記試薬として、例えば、前記酸化還元反応の基質を含むことが好ましく、前記ポルフィリンと前記基質の両方を含んでもよい。
【0201】
前記基質は、特に制限されず、例えば、3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine(TMB)、1,2−Phenylenediamine(OPD)、2,2’−Azinobis(3−ethylbenzothiazoline−6−sulfonic Acid) Ammonium Salt(ABTS)、3,3’−Diaminobenzidine(DAB)、3,3’−Diaminobenzidine Tetrahydrochloride Hydrate(DAB4HCl)、3−Amino−9−ethylcarbazole(AEC)、4−Chloro−1−naphthol(4C1N)、2,4,6−Tribromo−3−hydroxybenzoic Acid、2,4−Dichlorophenol、4−Aminoantipyrine、4−Aminoantipyrine Hydrochloride、ルミノール等があげられる。
【0202】
本発明のセンサにおいて、例えば、前記核酸分子が、さらに標識物質を有し、前記標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体、酵素等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy(登録商標)3色素、Cy(登録商標)5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa(登録商標)488、Alexa(登録商標)647等のAlexa色素等があげられる。前記酵素は、例えば、ルシフェラーゼ等があげられる。
【0203】
前記標識物質は、例えば、前記核酸分子に直接的に連結してもよいし、前記リンカー領域(L)を介して、間接的に連結してもよい。
【0204】
本発明のセンサによれば、後述するように、例えば、試料中のコルチゾールを検出できる。
【0205】
<コルチゾール分析方法>
本発明の分析方法は、前述のように、試料と前記本発明のコルチゾール分析用センサとを接触させる接触工程、および前記試料中のコルチゾールと前記コルチゾール分析用センサにおける結合領域(A)とを結合させることにより、前記試料中のコルチゾールを検出する検出工程を含むことを特徴とする。本発明の分析方法は、前記本発明のセンサを使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。
【0206】
本発明の分析方法によれば、前記本発明のセンサにおける前記結合領域(A)に、コルチゾールが特異的に結合し、且つ、コルチゾールが結合した際に、前記本発明のセンサにおける前記G形成領域(D)がG−カルテット構造を形成して活性型となるため、例えば、コルチゾールと前記センサとの結合を、前記G形成領域(D)の活性型の性質を使用して検出することによって、試料中のコルチゾールを特異的に分析可能である。具体的には、例えば、試料中のコルチゾールの有無またはコルチゾールの量を分析可能であることから、定性または定量も可能といえる。
【0207】
本発明において、前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、生体試料があげられる。また、前記生体試料は、例えば、血液、血清、血漿、間質液、尿、唾液、汗、涙、および鼻水等があげられる。
【0208】
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記試料は、例えば、前記核酸分子と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、液体試料が好ましい。前記固体試料の場合、例えば、溶媒を用いて、混合液、抽出液、溶解液等を調製し、これを使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0209】
前記接触工程において、前記試料と前記分析用センサとの接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記分析用センサとの接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0210】
前記接触工程において、前記試料と前記センサとの接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4〜37℃、18〜25℃であり、接触時間は、例えば、10〜120分、30〜60分である。
【0211】
前記接触工程において、前記センサは、例えば、前記核酸分子が担体に固定化された固定化センサでもよいし、前記核酸分子が未固定で遊離した未固定センサでもよい。後者の場合、例えば、容器内で、前記試料と前記未固定センサとを接触させる。前記センサは、例えば、取扱性に優れることから、前記固定化センサが好ましい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記センサにおける前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。
【0212】
前記検出工程は、前述のように、前記試料中のコルチゾールと前記センサにおける前記結合領域(A)との結合を検出する工程である。前記検出工程は、例えば、さらに、前記検出工程の結果に基づいて、前記試料中のコルチゾールの有無または量を分析する工程を含んでもよい。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中のコルチゾールの有無を分析(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中のコルチゾールの量を分析(定量)できる。前者の場合、本発明の分析方法は、例えば、検出方法ということもできる。
【0213】
そして、前記コルチゾールと前記センサにおける前記結合領域(A)との結合が検出できなかった場合は、前記試料中にコルチゾールは存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中にコルチゾールが存在すると判断できる。また、前記検出工程において得られた結合量と、前記コルチゾールの量および前記両者の結合量の相関関係とに基づき、例えば、前記試料中のコルチゾールの量を算出できる。
【0214】
前記コルチゾールと前記センサにおける前記結合領域(A)との結合の検出方法は、特に制限されず、例えば、前記結合領域(A)と連動している前記G形成領域(D)の活性型の機能があげられる。前記活性型の機能は、特に制限されず、例えば、前述のように、前記G形成領域(D)の触媒機能、前記G形成領域(D)の蛍光性等があげられる。
【0215】
<分析試薬および分析キット>
本発明の分析試薬は、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含むことを特徴とする。本発明の分析キットは、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含むことを特徴とする。本発明の分析試薬および分析キットは、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含んでいればよく、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の分析試薬および分析キットを使用すれば、前述のように、例えば、コルチゾールの検出を行うことができる。
【0216】
本発明の分析試薬および分析キットは、例えば、後述する本発明のストレス評価方法および本発明のコルチゾール関連疾患の罹患可能性を試験する方法に使用できる。このため、前記分析試薬は、例えば、ストレス評価試薬、コルチゾール関連疾患の試験試薬(診断試薬)ということもできる。また、前記分析キットは、例えば、ストレス評価キット、コルチゾール関連疾患の試験キット(診断キット)ということもできる。
【0217】
本発明の分析試薬および分析キットは、例えば、さらに、前記コルチゾール分析用センサのG形成領域(D)と反応する試薬を含んでもよい。前記試薬は、例えば、G−カルテット構造を形成した前記G形成領域(D)と複合体を形成するポルフィリン、G−カルテット構造を形成した前記G形成領域(D)の触媒機能に対する基質等があげられる。前記ポルフィリンは、例えば、前述の説明が援用できる。
【0218】
本発明の分析キットは、例えば、前記本発明のセンサの他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、前記試薬、緩衝液、使用説明書等があげられる。
【0219】
本発明の分析試薬および分析キットは、例えば、本発明のセンサの説明を援用でき、また、その使用方法についても、本発明のセンサおよび本発明の分析方法の説明を援用できる。
【0220】
<ストレス評価試薬および評価キット>
本発明のストレス評価試薬は、前述のように、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含むことを特徴とする。本発明のストレス評価キットは、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含むことを特徴とする。本発明の評価試薬および評価キットは、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含んでいればよく、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の評価試薬および評価キットを使用すれば、後述するように、例えば、ストレス評価を行うことができる。本発明の評価試薬および評価キットは、例えば、前記本発明のセンサ、分析試薬、および分析キット等の説明を援用でき、また、その使用方法についても、本発明のセンサ、分析試薬、分析キット、および後述する本発明の評価方法等の説明を援用できる。
【0221】
<ストレス評価方法>
本発明のストレス評価方法は、前述のように、被検者の試料と前記本発明のコルチゾール分析用センサとを接触させる接触工程、前記試料中のコルチゾールと前記コルチゾール分析用センサにおける前記結合領域(A)とを結合させることにより、前記試料中のコルチゾールを検出する検出工程、および前記検出工程における前記コルチゾール量を、基準値と比較することにより、ストレスに関する情報を取得する取得工程を含むことを特徴とする。本発明の評価方法は、前記本発明のセンサを使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。
【0222】
本発明の評価方法は、例えば、本発明のセンサおよび本発明の分析方法等の説明を援用できる。また、本発明の評価方法において、前記接触工程および前記検出工程は、前記本発明の分析方法の説明を援用できる。
【0223】
前記被検者は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、前述のように、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類があげられる。
【0224】
前記基準値は、例えば、ストレスを負荷していない状態(非負荷状態)および/またはストレスを負荷した状態(負荷状態)の健常者から単離した試料を用いて、得ることができる。前記基準値は、例えば、前記被検者の試料と同時に測定してもよいし、予め測定してもよい。前記非負荷状態および前記負荷状態は、例えば、公知のストレステストにより実施できる。
【0225】
前記取得工程において、前記被検者のストレスに関する情報の取得方法は、特に制限されず、前記基準値の種類によって適宜決定できる。具体例として、前記被検者の試料におけるコルチゾールの量が、前記非負荷状態の健常者の試料におけるコルチゾールの量より高い場合、前記負荷状態の健常者の試料におけるコルチゾール量と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記負荷状態の健常者の試料におけるコルチゾール量より有意に高い場合、前記被検者は、ストレス状態であるとの情報を取得できる。また、前記被検者の試料におけるコルチゾールの量が、前記非負荷状態の健常者の試料におけるコルチゾールの量より低い場合、前記非負荷状態の健常者の試料におけるコルチゾール量と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記負荷状態の健常者の試料におけるコルチゾール量より有意に低い場合、前記被検者は、非ストレス状態であるとの情報を取得できる。
【0226】
<コルチゾール関連疾患の試験試薬および試験キット>
本発明のコルチゾール関連疾患の試験試薬(診断試薬)は、前述のように、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含むことを特徴とする。本発明のコルチゾール関連疾患の試験キット(診断キット)は、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含むことを特徴とする。本発明の試験試薬および試験キットは、前記本発明のコルチゾール分析用センサを含んでいればよく、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の試験試薬および試験キットを使用すれば、後述するように、例えば、コルチゾール関連疾患の罹患可能性の試験を行うことができる。本発明の試験試薬および試験キットは、例えば、前記本発明のセンサ、分析試薬、および分析キット等の説明を援用でき、また、その使用方法についても、本発明のセンサ、分析試薬、分析キット、および後述する本発明の試験方法等の説明を援用できる。
【0227】
<コルチゾール関連疾患の罹患可能性を試験する方法>
本発明のコルチゾール関連疾患の罹患可能性を試験する方法は、前述のように、被検者の試料と前記本発明のコルチゾール分析用センサとを接触させる接触工程、前記試料中のコルチゾールと前記コルチゾール分析用センサにおける結合領域(A)とを結合させることにより、前記試料中のコルチゾールを検出する検出工程、および前記検出工程における前記コルチゾールの量を、基準値と比較することにより、コルチゾール関連疾患の罹患の可能性を試験する試験工程を含むことを特徴とする。本発明の評価方法は、前記本発明のセンサを使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。
【0228】
本発明の試験方法は、例えば、本発明のセンサおよび本発明の分析方法、評価方法等の説明を援用できる。また、本発明の試験方法において、前記接触工程および前記検出工程は、前記本発明の分析方法の説明を援用できる。
【0229】
本発明の試験方法によれば、例えば、コルチゾール関連疾患(以下、「関連疾患」ともいう)の発症の可能性、関連疾患の発症の有無、関連疾患の進行度および予後の状態等を評価できる。前記関連疾患は、例えば、前記コルチゾールの増加または減少により生じる疾患である。具体例として、前記コルチゾールの減少により生じる関連疾患としては、例えば、アジソン病、先天性副腎低形成症、先天性副腎皮質過形成症、下垂体腫瘍、下垂体性副腎皮質機能低下症、視床下部性副腎皮質機能低下症等があげられる。前記コルチゾールの増加により生じる関連疾患としては、例えば、クッシング病、クッシング症候群、グルココルチコイド不応症等があげられる。
【0230】
前記基準値は、特に制限されず、例えば、健常者、関連疾患患者および関連疾患のステージごとの関連疾患患者のコルチゾールの量があげられる。予後の評価の場合、前記基準値は、例えば、同じ被検者の治療後(例えば、治療直後)のコルチゾールの量であってもよい。
【0231】
前記基準値は、例えば、健常者および/または関連疾患患者から単離した試料(以下、「基準試料」ともいう。)を用いて、得ることができる。また、予後の評価の場合、例えば、同じ被検者から治療後に単離した基準試料を用いてもよい。前記基準値は、例えば、前記被検者の試料と同時に測定してもよいし、予め測定してもよい。
【0232】
前記試験工程において、被検者の関連疾患の罹患危険度の評価方法は、特に制限されず、前記関連疾患および前記基準値の種類によって適宜決定できる。具体例として、コルチゾールの増加により生じる疾患の場合、前記被検者の試料におけるコルチゾールの量が、前記健常者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に高い場合、前記関連疾患患者の基準試料におけるコルチゾールの量と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記関連疾患患者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に高い場合、前記被検者は、関連疾患に罹患する危険性があるまたは危険性が高いと評価できる。また、前記被検者の試料におけるコルチゾールの量が、前記健常者の基準試料におけるコルチゾールの量と同じ場合(有意差が無い場合)、前記健常者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に低い場合、および/または、前記関連疾患患者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に低い場合、前記被検者は、関連疾患に罹患する危険性が無いまたは危険性が低いと評価できる。他方、コルチゾールの減少により生じる疾患の場合、前記被検者の試料におけるコルチゾールの量が、前記健常者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に低い場合、前記関連疾患患者の基準試料におけるコルチゾールの量と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記関連疾患患者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に低い場合、前記被検者は、関連疾患に罹患する危険性があるまたは危険性が高いと評価できる。また、前記被検者の試料におけるコルチゾールの量が、前記健常者の基準試料におけるコルチゾールの量と同じ場合(有意差が無い場合)、前記健常者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に高い場合、および/または、前記関連疾患患者の基準試料におけるコルチゾールの量よりも有意に高い場合、前記被検者は、関連疾患に罹患する危険性が無いまたは危険性が低いと評価できる。
【実施例】
【0233】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【0234】
[実施例1]
本発明の分析用センサを作製し、これを用いた蛍光検出によりコルチゾールの分析を行った。
【0235】
(1)分析用センサ
前記表1〜4に示す配列番号1〜555のポリヌクレオチドを合成し、前記分析用センサとして使用した。なお、配列番号300〜555のポリヌクレオチドは、前記表5に示す(1)〜(128)の組合せで、前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とを組合せ、二本鎖核酸センサとして使用した。具体的に、前記分析用センサを含むセンサ試薬は、下記の手順で調製した。
【0236】
前記一本鎖核酸センサを含むセンサ試薬は以下の手順で調製した。まず、前記配列番号1〜299のポリヌクレオチドを、それぞれ、前記ポリヌクレオチドの終濃度が10μmol/Lとなるように蒸留水に溶解し、ポリヌクレオチド溶液を調製した。つぎに、25μLの緩衝液Aに、2μLのポリヌクレオチド溶液を添加し、希釈ポリヌクレオチド溶液を調製した。前記緩衝液Aの組成は、0.05%Triton(商標)X−100を含む100mmol/L Tris−HCl(pH7.4)緩衝液とした。
【0237】
つぎに、1.5μLの5mol/L NaCl水溶液を、前記希釈ポリヌクレオチド溶液に添加した。得られた溶液を混合後、ヒートブロックを用いて、95℃、5分の条件でインキュベートした。前記インキュベート後、室温(25℃前後)でインキュベートし、前記溶液の温度を室温に調整した。さらに、25μLの蒸留水、1μLの10μmol/L NMM水溶液および1μLの1mol/L KCl水溶液を添加し、混合し、センサ試薬を調製した。
【0238】
つぎに、前記二本鎖核酸センサを含むセンサ試薬は以下の手順で調製した。まず、配列番号300〜427のポリヌクレオチドを、それぞれ、終濃度が10μmol/Lとなるように蒸留水に溶解し、第1鎖溶液を調製した。また、配列番号428〜555のポリヌクレオチドを、それぞれ、終濃度が10μmol/Lとなるように蒸留水に溶解し、第2鎖溶液を調製した。つぎに、25μLの緩衝液Aに、2μLの第1鎖溶液および4μLの第2鎖溶液を添加し、希釈ポリヌクレオチド溶液を調製した。この点を除き、前記一本鎖核酸センサを含むセンサ試薬と同様にして調製した。
【0239】
(2)試料
100mmol/L コルチゾールとなるように、DMSOに溶解したコルチゾール試料を調製し、以下の分析に使用した。
【0240】
(3)蛍光分析
前記コルチゾール試料を、コルチゾールの終濃度が1mmol/Lとなるように、各センサ試薬に添加し、反応液を調製した。各反応液を混合後、384wellのブラックフラットプレート(Greiner社製)に添加し、各反応液の蛍光強度を測定した。蛍光強度の測定は、測定装置(TECAN infinite M1000 PRO、TECAN社製)を使用し、励起波長は399nmとし、発光波長は605nmとした。また、コントロールは、前記コルチゾール試料を未添加とした以外は、同様にして、蛍光強度を測定した。そして、各分析センサについて、前記試料未添加の反応液と前記試料添加の反応液との蛍光強度の比であるS/N比を求めた。
【0241】
この結果を下記表7A〜Cに示す。下記表7A〜Cにおいて、一本鎖型センサは、各センサが含むポリヌクレオチドの配列番号、二本鎖核酸センサは、各センサが含む第1鎖(ss1)の配列番号で示している。下記表7に示すように、いずれのセンサもS/N比が1以上であり、コルチゾールを分析できることがわかった。
【0242】
【表7A】
【0243】
【表7B】
【0244】
【表7C】
【0245】
[実施例2]
本発明の分析用センサを作製し、これを用いた蛍光検出により異なる濃度のコルチゾールの分析を行った。
【0246】
前記センサ試薬として、配列番号142および288のポリヌクレオチドをそれぞれ含むセンサ試薬を用い、前記反応液におけるコルチゾールの終濃度を所定濃度(0、100、300または1000μmol/L)とした以外は、前記実施例1と同様にして蛍光強度を測定した。また、コントロールは、前記センサ試薬を添加しなかった以外は同様にして蛍光強度を測定した。
【0247】
この結果を
図1に示す。
図1は、分析用センサの蛍光強度を示すグラフである。
図1において、横軸は、コルチゾールの濃度を示し、縦軸は、蛍光強度を示す。
図1に示すように、いずれのセンサも、コントロールに対して高い蛍光強度を示した。また、いずれのセンサも、コルチゾールの濃度が増加するにつれて、蛍光強度が増加した。これらの結果から、本発明の分析用センサを用い、蛍光強度を測定することで、試料中のコルチゾール濃度を分析できることがわかった。
【0248】
[実施例3]
本発明の分析用センサを作製し、これを用いた発色検出によりコルチゾールの分析を行った。
【0249】
(1)分析用センサ
前記配列番号142のポリヌクレオチドを、前記ポリヌクレオチドの終濃度が100μmol/Lとなるように蒸留水に溶解し、ポリヌクレオチド溶液を調製した。つぎに、50μLの前記緩衝液Aに、1μLのポリヌクレオチド溶液を添加し、希釈ポリヌクレオチド溶液を調製した。前記調製後の溶液を混合後、ヒートブロックを用いて、95℃、5分の条件でインキュベートした。前記インキュベート後、室温(25℃前後)でインキュベートし、前記溶液の温度を室温に調整した。さらに、39μLの蒸留水、1μLの100μmol/L ヘミン水溶液および2μLの1mol/L KCl水溶液を添加し、混合し、センサ試薬を調製した。
【0250】
(2)発色分析
前記コルチゾール試料を、コルチゾールの終濃度が所定濃度(0、111、333、または1000μmol/L)となるように、センサ試薬に添加し、反応液を調製した。各反応液を混合後、96wellのプレート(Greiner社製)に添加し、さらに、各Wellに、5μLの20mmol/L ABTS(2,2'-Azinobis(3-ethylbenzothiazolin-6-sulfonic Acid))溶液および1μLの10mmol/L 過酸化水素水溶液を添加し、混合した。前記混合後、すぐに各反応液の吸光度を測定した。吸光度の測定は、前記測定装置(TECAN infinite M1000 PRO、TECAN社製)を使用し、測定波長は415nmとした。また、コントロールは、前記センサ試料を未添加とした以外は、同様にして、吸光度を測定した。
【0251】
この結果を
図2に示す。
図2は、分析用センサの吸光度を示すグラフである。
図2において、横軸は、コルチゾールの濃度を示し、縦軸は、吸光度を示す。
図2に示すように、いずれのセンサも、コントロールに対して高い吸光度を示した。また、いずれのセンサも、コルチゾールの濃度が増加するにつれて、吸光度が増加した。これらの結果から、本発明の分析用センサを用い、吸光度を測定することで、試料中のコルチゾール濃度を分析できることがわかった。
【0252】
[実施例4]
本発明の分析用センサを作製し、これを用いたキャピラリー電気泳動によりコルチゾールの分析を行った。
【0253】
(1)分析用センサ
前記配列番号142のポリヌクレオチドの5’末端を、蛍光色素(TYE(商標)665、Integrated DNA Technologies、MBL社製)で標識した。前記標識後のポリヌクレオチドを、前記ポリヌクレオチドの終濃度が0.2μmol/Lとなるように緩衝液Bに溶解し、センサ試薬を調製した。前記緩衝液Bの組成は、125mmol/L NaCl、5mmol/L KClおよび1mmol/L MgCl
2を含む40mmol/L HEPES(pH7.5)緩衝液とした。
【0254】
(2)キャピラリー電気泳動
前記センサ試薬を等量のサンプルバッファーと混合後、95℃、5分の条件でインキュベート後、さらに、氷上で5分間インキュベートした。前記サンプルバッファーの組成は、20mmol/L KClおよび0.01% Tween20を含む40mmol/L HEPES緩衝液(pH7.5)とした。前記インキュベート後、前記コルチゾール試料を、コルチゾールの終濃度が所定濃度(0、2、または5mmol/L)となるように、混合液に添加し、反応液を調製した。そして、10μLの各反応液について、それぞれ、泳動ゲル(0.6%ヒドロキシプロピルメチルセルロースゲル、SIGMA社製)、測定チップ(i−チップ12、Hitachi Chemical社製)および測定装置(SV12120形コスモアイ、日立ハイテクノロジー社製)を用いて、電気泳動を行った。なお、前記電気泳動において、濃縮電圧は、600V、濃縮時間は、120秒、分離電圧は、350V、分離時間は、240秒とした。そして、前記泳動ゲルについて、前記測定装置を用い、励起波長を635nm、発光波長を660nmとし、泳動開始点を基準として各泳動距離における蛍光強度を測定した。
【0255】
この結果を
図3に示す。
図3は、前記泳動ゲルの各泳動距離における蛍光強度を示すグラフである。
図3において、横軸は、泳動開始点を基準とした泳動距離を示し、縦軸は、蛍光強度を示す。また、
図3において、400nm前後のピークが、前記分析用センサおよびコルチゾールの複合体の検出ピークであり、440nm前後のピークが前記分析用センサのみの検出ピークである。
図3に示すように、コルチゾールの濃度が増加するにつれて、400nm前後のピークの蛍光強度が上昇し、440nm前後のピークの蛍光強度が減少した。これらの結果から、本発明の分析用センサを用い、キャピラリー電気泳動により、試料中のコルチゾール濃度を分析できることがわかった。
【0256】
[実施例5]
本発明の分析用センサを作製し、これを用いた金コロイドの検出によりコルチゾールの分析を行った。
【0257】
(1)分析用センサ
前記配列番号28および142のポリヌクレオチドを、それぞれ、前記ポリヌクレオチドの終濃度が、2μmol/Lとなるように蒸留水に溶解し、センサ試薬を調製した。
【0258】
(2)金コロイドの検出
前記ポリヌクレオチドの終濃度が、0.2μmol/Lになるように、5μLの前記センサ試薬および45μLの10nm金コロイド分散液(SIGMA社製、カタログ番号:G1527-25ML)を96Well Uボトムプレート(Greiner社製)に添加し、前記室温、10秒、1000rpmの条件で、プレートシェーカーを用いて撹拌した。前記撹拌後、室温、1時間の条件でインキュベートした。さらに、前記コルチゾール試料を、コルチゾールの終濃度が所定濃度(0、4、40、または400μmol/L)となるように、各Wellに添加し、反応液を調製した。前記反応液を、前記室温、10秒、1000rpmの条件で、プレートシェーカーを用いて撹拌した。
【0259】
前記撹拌後、室温、20分の条件でインキュベートした。つぎに、前記プレートの各Wellについて、前記測定装置(TECAN infinite M1000 PRO、TECAN社製)を使用し、450〜650nmの吸光度を測定した(凝集前吸光度)。さらに、1.5μLの5mol/L NaCl水溶液を各Wellに添加後、前記測定装置で10秒攪拌した。前記撹拌後、前記室温、5分の条件でインキュベートした。そして、前記プレートの各Wellについて、前記測定装置を使用し、450〜650nmの吸光度を測定した(凝集後吸光度)。また、コントロールは、前記センサ試薬を添加しない以外は同様にして、凝集前吸光度および凝集後吸光度を測定した。そして、各波長について、前記凝集後吸光度から前記凝集前吸光度を引いて補正した後、補正後の520nmの吸光度に対する650nmの吸光度の相対値を算出した。さらに、コルチゾール濃度が0μmol/Lの反応液の吸光度を1とし、各濃度の吸光度の相対値を算出した。
【0260】
この結果を
図4に示す。
図4は、吸光度の相対値を示すグラフである。
図4において、横軸は、コルチゾールの濃度を示し、縦軸は、吸光度の相対値を示す。
図4に示すように、いずれのセンサも、コントロールに対して高い吸光度の相対値を示した。また、いずれのセンサも、コルチゾールの濃度が増加するにつれて、吸光度の相対値が増加した。これらの結果から、本発明の分析用センサを用い、金コロイドの検出により、試料中のコルチゾール濃度を分析できることがわかった。
【0261】
[実施例6]
本発明の分析用センサが、メラトニン、L−トリプトファン、コルチゾン、ノルエピネフリン、エピネフリン、およびコール酸に対する交差反応性が低いことを確認した。
【0262】
(1)分析用センサ
前記分析用センサとしては、配列番号421のポリヌクレオチドおよび配列番号549のポリヌクレオチドを、それぞれ、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)として組合せた、二本鎖核酸センサを使用した。
【0263】
まず、配列番号549のポリヌクレオチドの5’末端を、前記蛍光色素(TYE(商標)665)で標識した。前記標識後のポリヌクレオチドを、前記ポリヌクレオチドの終濃度が100μmol/Lとなるように蒸留水に溶解し、第2鎖溶液を調製した。
【0264】
つぎに、配列番号421のポリヌクレオチドを、前記ポリヌクレオチドの終濃度が100μmol/Lとなるように蒸留水に溶解し、第1鎖溶液を調製した。さらに、25μLの緩衝液Dに、5μLの前記第1鎖溶液および前記第2鎖溶液を、それぞれ添加し、希釈ポリヌクレオチド溶液を調製した。前記緩衝液Dの組成は、0.1%Triton(商標)X−100および300mmol/L NaClを含む100mmol/L Tris−HCl(pH7.4)緩衝液とした。そして、前記希釈ポリヌクレオチド溶液を、ヒートブロックを用いて、95℃、5分の条件でインキュベートした。前記インキュベート後、室温(25℃前後)で15分間インキュベートし、前記溶液の温度を室温(25℃前後)に調整した。
【0265】
(2)試料
後述する反応液を調製した際に、前記反応液において、各化合物の終濃度が所定濃度(0、100、500、または1000μmol/L)となるように、コルチゾール、メラトニン、L−トリプトファン、コルチゾン、DL−ノルエピネフリン塩酸塩、(±)−エピネフリン塩酸塩、およびコール酸をそれぞれ、DMSOに溶解し、コルチゾール試料、メラトニン試料、L−トリプトファン試料、コルチゾン試料、ノルエピネフリン試料、エピネフリン試料、およびコール酸試料を調製した。
【0266】
(3)蛍光偏光法
35μLの前記希釈ポリヌクレオチド、1μLの1mol/L KCl水溶液、13.5μLの蒸留水、および0.5μLの前記試料を含む反応液を、前記試料毎に、調製した。前記反応液を撹拌後、それぞれ、384Well フラットボトムブラックプレート(Greiner社製)に添加後、前記測定装置を使用し、励起波長635nm、蛍光波長670nmにおける蛍光偏光度を測定した。なお、前記蛍光偏光度は、前記配列番号421のポリヌクレオチドおよび前記試料を添加しないサンプルの対照偏光度を20mPとした場合の相対値として、算出した。
【0267】
この結果を
図5に示す。
図5は、蛍光偏光度を示すグラフである。
図5において、横軸は、各試料の濃度を示し、縦軸は、蛍光偏光度(mP)を示す。
図5に示すように、前記分析用センサは、前記コルチゾール試料においては、コルチゾールの濃度依存的に、蛍光偏光度が低下した。すなわち、コルチゾールに結合した。これに対し、前記分析用センサは、メラトニン試料、L−トリプトファン試料、コルチゾン試料、ノルエピネフリン試料、エピネフリン試料、およびコール酸試料においては、各試料の濃度依存的に、蛍光偏光度が低下しなかった。すなわち、前記分析用センサは、これらのメラトニン、L−トリプトファン、コルチゾン、ノルエピネフリン、エピネフリン、およびコール酸に対して、結合しないまたは結合性が低いことが分かった。これらの結果から、本発明の分析用センサが、メラトニン、L−トリプトファン、コルチゾン、ノルエピネフリン、エピネフリン、およびコール酸に対する交差反応性が低いことわかった。また、本発明の分析用センサを用い、蛍光偏光法により、試料中のコルチゾール濃度を分析できることがわかった。
【0268】
以上のことから、本発明のセンサは、様々な検出方法で使用できることがわかった。
【0269】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0270】
この出願は、2015年12月11日に出願された日本出願特願2015−241924を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。