特許第6642862号(P6642862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6642862デュアルバンドスプラッシュプレートサポートを含むリフレクタアンテナ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642862
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】デュアルバンドスプラッシュプレートサポートを含むリフレクタアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/19 20060101AFI20200130BHJP
   H01Q 13/02 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   H01Q19/19
   H01Q13/02
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-39987(P2018-39987)
(22)【出願日】2018年3月6日
(62)【分割の表示】特願2014-539319(P2014-539319)の分割
【原出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2018-110450(P2018-110450A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年3月30日
(31)【優先権主張番号】11275137.5
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512276430
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ウィリアム ロバーツ
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06107973(US,A)
【文献】 特開平11−004116(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0082513(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第4200755(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/02
H01Q 19/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1伝送モードにおいて入力信号を受け取るように構成されたデュアルバンド導波管フィードであって、前記入力信号は上側周波数帯域および下側周波数帯域に配された複数の周波数を含み、前記導波管フィードは前記上側周波数帯域の伝送モードを第1伝送モードから前記第1伝送モードおよび第2伝送モードを含む混合伝送モードに変換するための手段を含む、前記デュアルバンド導波管フィードと、
リフレクタと、
前記導波管フィードのアパーチャから放射されたビームを前記リフレクタへ向けるように構成されたスプラッシュプレートと、
前記導波管フィードと係合するための第1係合部分、前記スプラッシュプレートと係合するための第2係合部分、および、前記第1係合部分を前記第2係合部分に結合させ、前記導波管フィードの前記アパーチャおよび前記スプラッシュプレートの間にスペースを画定するように配置された支持部分を含むスプラッシュプレートサポートと、を含み、
前記支持部分はλ/2に等しい厚さを持ち、かつ、複数の反射と前記支持部分を通る前記ビームの経路への干渉とを最小にすべく横断面において湾曲され、ここでλは前記支持部分の材料の中での前記ビームの波長であ
前記波長λは、前記ビームの前記下側周波数帯域の中心波長と、前記ビームの前記上側周波数帯域の中心波長との間の波長である、
リフレクタアンテナ。
【請求項2】
前記支持部分は、前記第1係合部分が前記導波管フィードと係合されているとき、前記スプラッシュプレートから遠ざかる方向に前記導波管フィードの前記アパーチャから距離を置かれるように構成される、請求項1に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項3】
記波長λは、前記導波管フィードの前記アパーチャから放射される前記ビームの前記上側周波数帯域および前記下側周波数帯域のうちの1つの中心周波数に対応する波長である、請求項1または2に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項4】
記波長λは、前記ビームの平均波長である、請求項1または2に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項5】
記波長λは、前記ビームの平均波長と、前記導波管フィードの前記アパーチャから放射される前記ビームの前記上側周波数帯域および前記下側周波数帯域のうちの1つの中心周波数に対応する波長との間の値である、請求項1または2に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項6】
前記支持部分は横断面において楕円形である、請求項1から5のいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項7】
前記支持部分は実質的に連続壁である、請求項1からのいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項8】
前記第1係合部分は前記導波管フィードの外面と係合するように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項9】
前記スプラッシュプレートサポートはポリテトラフルオロエチレンPTFEから形成される、請求項1からのいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項10】
前記伝送モードを変換するための前記手段は、前記上側周波数帯域については前記第1伝送モードおよび第2伝送モードの両方が前記アパーチャにおいて実質的に同位相であるように、前記アパーチャから所定の距離を置かれている、請求項1からのいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項11】
前記上側周波数帯域の前記伝送モードを変換するための前記手段は、前記導波管フィードの内径においてテーパ、1つ又は複数の段、またはプロファイリングされた変化を含み、第1直径Dのセクションを第2直径Dのセクションに結合させており、前記第2直径は前記第1直径より大きい、請求項1から10のいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項12】
前記第1伝送モードはTE11モードであり、前記第2伝送モードはTM11モードである、請求項1から11のいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項13】
前記導波管フィードの横断面は円形であり、前記アパーチャの直径は前記下側周波数帯域内の周波数の実質的に1波長である、請求項1から12のいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項14】
前記導波管フィードはKa帯域周波数で使用されるように構成される、請求項1から13のいずれか1項に記載のリフレクタアンテナ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のリフレクタアンテナを含む衛星。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルバンドスプラッシュプレートサポートを含むリフレクタアンテナに関する。特に、本発明は、デュアルバンド導波管フィードと、該導波管フィードのアパーチャと該リフレクタアンテナのスプラッシュプレートとの間にスペースを画定するように構成されたスプラッシュプレートサポートとを含むリフレクタアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
リフレクタアンテナは、例えば陸上、航空機搭載および艦載端末装置において、さらに通信衛星において、電磁放射のビームを整形して特定の位置の方へ向けるために広く用いられている。在来のリフレクタアンテナ100が図1Aおよび1Bに示されていて、導波管フィードホーン110と、主リフレクタ120と、スプラッシュプレート130と、該スプラッシュプレート130を導波管フィード110に結合させる支持誘電体140とを含んでいる。フィードホーン110は、入力信号iを受け入れて該信号をフィードホーン110のアパーチャへ向ける。該信号は、電磁放射のビームとして該アパーチャから放射され、スプラッシュプレート130によって主リフレクタ120の方へ反射され、これは該ビームを整形して、例えば特定の衛星または地球上の地域などの、所望の位置の方へ向ける。フィードホーン110、スプラッシュプレート130および主リフレクタ120は、該ビームを特定のアプリケーションの必要に応じて整形するように構成され得る。
【0003】
図1Bに示されているように、支持誘電体140は、フィードホーン110のスロートに挿入される細長い部分140aと、該細長い部分140aから外へスプラッシュプレート130の方へ延びる円錐形部分140bとを含む。支持誘電体140は、それ自体が、所要の放射パターンを提供するとともにリターンロスを最小にするように内側および外側を整形され得る。例えば、円錐形部分140bは種々の段および溝を含むことができ、導波管フィードの内側の部分140aは階段状にされ、あるいはプロファイリングされることができる。しかし、支持誘電体140は、単に或る特定の周波数または狭い周波数帯域のために特別に設計され最適化されるにすぎない。従って、在来のスプラッシュプレートリフレクタアンテナ100は、整形され向けられるべきビームが広い範囲の周波数を含んでいる広帯域(例えば>20%帯域幅)および/またはデュアルバンドアプリケーションでの使用には不向きである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従ってリフレクタアンテナが提供され、該リフレクタアンテナは:第1伝送モードにおいて入力信号を受け取るように構成されたデュアルバンド導波管フィードであって、該入力信号は上側周波数帯域および下側周波数帯域に配された複数の周波数を含み、該導波管フィードは該上側周波数帯域の伝送モードを第1伝送モードから該第1伝送モードおよび第2伝送モードを含む混合伝送モードに変換するための手段を含む、該デュアルバンド導波管フィード;リフレクタ;該導波管フィードのアパーチャから放射されたビームを該リフレクタへ向けるように構成されたスプラッシュプレート;及び、該導波管フィードと係合するための第1係合部分、該スプラッシュプレートと係合するための第2係合部分、および、該第1係合部分を該第2係合部分に結合させ、該導波管フィードアパーチャおよび該スプラッシュプレートの間にスペースを画定するように配置された支持部分を含むスプラッシュプレートサポートを含む。
【0005】
該支持部分は、該第1係合部分が該導波管フィードと係合されているとき、該スプラッシュプレートから遠ざかる方向に該導波管フィードの該アパーチャから所定の距離を置くように構成され得る。
【0006】
該支持部分は実質的にλ/2より小さいか等しい厚さを持つことができ、ここでλは該支持部分の内側の該ビームの特性波長である。
【0007】
該特性波長は、該導波管フィードの該アパーチャから放射される該ビームの伝送帯域の中心周波数に対応する波長、または該ビームの平均波長、または該平均波長と該中心周波数に対応する該波長との間の値であり得る。
【0008】
該支持部分は、該導波管フィードから放射された該ビームの、それが該スプラッシュプレートから反射された後の、波面に対応する形状を持ち得る。
【0009】
該支持部分は横断面において湾曲しているかあるいは楕円形であり得る。
【0010】
該支持部分は実質的に連続壁であり得る。
【0011】
該第1係合部分は該導波管フィードの外面と係合するように構成され得る。
【0012】
該スプラッシュプレートサポートはポリテトラフルオロエチレンPTFEから形成され得る。
【0013】
伝送モードを変換するための該手段は、該上側帯域については該第1伝送モードおよび第2伝送モードの両方が該アパーチャにおいて実質的に同位相であるように、該アパーチャから所定距離を置くことができる。
【0014】
該上側周波数帯域の伝送モードを変換するための該手段は、該導波管フィードの内径においてテーパ、1つ又は複数の段、またはプロファイリングされた変化を含むことができ、第1直径Dのセクションを第2直径Dのセクションに結合させることができ、該第2直径は該第1直径より大きい。
【0015】
該第1伝送モードはTE11モードであり得、該第2伝送モードはTM11モードであり得る。
【0016】
該導波管フィードの横断面は円形であり得、該アパーチャの直径は該下側周波数帯域内の周波数の実質的に1波長であり得る。
【0017】
該導波管フィードはKa帯域周波数で使用されるように構成され得る。
【0018】
本発明に従って、該リフレクタアンテナを含む衛星も提供される。
【0019】
次に、添付図面と関連して単なる例として本発明の実施態様が記述される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】在来のリフレクタアンテナを示す。
図1B】在来のリフレクタアンテナを示す。
図2】本発明の実施態様に従う、リフレクタアンテナに用いられるスプラッシュプレートサポートの横断面を示す。
図3A図2のスプラッシュプレートサポートを透視図で示す。
図3B図2のスプラッシュプレートサポートを透視図で示す。
図3C図2のスプラッシュプレートサポートを透視図で示す。
図4図2の導波管フィードを横断面図で示す。
図5A図4の導波管フィードについて下側および上側周波数帯域のコポーラ放射パターンを示す。
図5B図4の導波管フィードについて下側および上側周波数帯域のクロスポーラ放射パターンを示す。
図6A図2のスプラッシュプレートアセンブリにおける下側および上側周波数帯域についてのコポーラ放射パターンを示す。
図6B図2のスプラッシュプレートアセンブリにおける下側および上側周波数帯域についてのクロスポーラ放射パターンを示す。
図7図2のスプラッシュプレートアセンブリについて下側および上側周波数帯域をカバーするリターンロス対周波数のグラフである。
図8A】本発明のさらなる実施態様に従う、リフレクタアンテナに用いられるスプラッシュプレートサポートを示す。
図8B】本発明のさらなる実施態様に従う、リフレクタアンテナに用いられるスプラッシュプレートサポートを示す。
図8C】本発明のさらなる実施態様に従う、リフレクタアンテナに用いられるスプラッシュプレートサポートを示す。
図9】本発明のさらに他の1つの実施態様に従う、複数の支持ストラットを含むスプラッシュプレートサポートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで図2を参照すると、本発明の実施態様に従う、リフレクタアンテナにおけるスプラッシュプレートアセンブリが横断面図で示されている。ここで、'スプラッシュプレートアセンブリ'という用語は、導波管フィード210、スプラッシュプレート230およびスプラッシュプレートサポート240を指す。添付図面の図2および他の図は一定比率で描かれてはいなくて、単に説明を目的として提供されている。該リフレクタアンテナは導波管フィード210、スプラッシュプレート230、スプラッシュプレートサポート240、および主リフレクタを含む。該主リフレクタは図2には示されていない。スプラッシュプレート230は、導波管フィード210のアパーチャ210aから放射されたビームを主リフレクタの方へ向けるように構成される。具体的には、アパーチャ210aから放射されたビームはスプラッシュプレート230によって主リフレクタの方へ反射され、これは該ビームをターゲットの方へ反射する。該主リフレクタは、指定された利得、クロスポーラおよびサイドローブ性能を達成するように整形され得る。
【0022】
導波管フィード210はデュアルバンド入力信号、すなわち複数の周波数を含む信号を受け取るように構成され、該周波数は2つの別々の伝送帯域に分けられる。導波管フィード210およびスプラッシュプレート230は、両方とも、該リフレクタアンテナがそのために設計されているところの周波数において電導性である1つまたは複数の材料から形成される。例えば、該リフレクタアンテナがマイクロ波周波数で用いられるように設計されているならば、導波管フィード210およびスプラッシュプレート230はアルミニウムから形成され得る。本実施態様では、導波管フィードはK帯域内の周波数を含む入力信号を受け取るように構成される。具体的には、該入力信号は19.7から212ギガヘルツ(GHz)までの下側帯域内の周波数と、29.5から31.0GHzまでのより高い帯域内の周波数とを含む。しかし、これらの周波数範囲は単なる代表であり、本発明はK帯域での使用に限定されない。本発明の他の実施態様は異なる周波数で使用されるように構成され得る。
【0023】
スプラッシュプレート230は、リフレクタの照明のために望ましいパターンを生じさせるとともに両方の帯域で良好なマッチング(VSWR)を提供するためにアパーチャ210aから放射されたビームのサイズ、位置および形状を定めるように構成され得る。例えば、スプラッシュプレートパターンは本質的に、図2に破線として示されているスプラッシュプレートフィード軸からビームピークがオフセットしているリングフォーカスであり得る。この構成は、反射されたビームにおいてサイドローブを最小化することを可能にし得る。さらに、導波管フィード210は、図5Aに描かれているように下側および上側帯域の両方で該アパーチャにおいて同様のフィードパターンを生じさせるように構成され得る。このことは、スプラッシュプレートパターン、すなわち、スプラッシュプレート230から反射された後の該ビームのパターン、が該下側および上側帯域の両方について同様であって該帯域間のリフレクタ整形およびアンテナ性能に関してのトレードオフを最小にすることを保証することができる。
【0024】
本実施態様では、スプラッシュプレート230はスプラッシュプレートサポート240により支持され、該スプラッシュプレートサポートは、第1係合部分240aと、第2係合部分240cと、該スプラッシュプレート230が導波管フィード210に関して所定の位置に支持され得るように該第1および第2係合部分240a、240cを結合させる支持部分240bとを含む。本実施態様では、支持部分240bは、連続壁として形成され、以後"支持壁"と称される。第1係合部分240aは導波管フィード210の外面と係合するように構成され、第2係合部分240cはスプラッシュプレート230の外縁と係合するように構成される。本実施態様では、サポート240は、約2.1の誘電率を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成される。
【0025】
しかし、本発明はこの材料には限定されなくて、一般的にどんな低誘電率材料もサポート240に用いられ得る。誘電率が大きくされると、それに応じて壁厚は小さくされるべきであり、設計敏感性は大きくなるであろう。スプラッシュプレートアセンブリがK帯域周波数で使用されるように構成される本実施態様では、誘電体スプラッシュプレートサポート240の比誘電率εは4未満、好ましくは3未満であるべきである。本発明はスプラッシュプレートサポートについてεのこの範囲には限定されなくて、異なる周波数で用いられるように構成される他の実施態様では、εの他の値が適切であるかもしれない。或る実施態様では、レドーム(レーダードーム)構造と同様に、支持壁240bを形成するためにいろいろな材料の層状構造が使用され得る。
【0026】
図2に示されているように、スプラッシュプレートサポート240は中空である。すなわち、支持壁240b自体は中実であるけれども、サポート240およびスプラッシュプレート230が導波管フィードアパーチャ210aとスプラッシュプレート230との間にスペース、あるいは空隙、を画定するように、整形される。本実施態様では、支持部分240bは連続壁であるので、スプラッシュプレートサポート240は該スペースを囲む。
【0027】
導波管フィード210は支持壁240bの開口部を通って該スペースの中へ延びる。サポート240は導波管フィード210の外面と係合するように構成されるので、導波管フィード210の中空の内側は誘電体無しに保たれ得る。このことは、同時に2つの別々の周波数帯域で動作するように導波管フィード210が同調させられ得る帯域幅を最大にするとともに、該導波管フィードなどのアイテムをスプラッシュプレートアセンブリ全体から独立に最適化することを可能にすることによって設計プロセスを簡単化することも可能にする。さらに、中空のスプラッシュプレートサポートは、在来の中実サポートとは対照的に、放射パターンに極めて小さな影響を及ぼすにすぎないので、該スプラッシュプレート自体は、初めはスプラッシュプレートサポートの効果を考慮する必要無しで設計され得る。対照的に、在来のスプラッシュプレートサポートは、誘電体サポートが、特にフィードアパーチャ内で、顕著な影響を及ぼすので、単一の周波数帯域での使用に限定される。さらに、在来のスプラッシュプレートアセンブリは、完全なアセンブリとして設計されなければならず、より複雑で時間のかかる設計プロセスを必要とする。
【0028】
さらに、本実施態様では、サポート240は、第1係合部分240aが導波管フィード210の外面に係合させられるときに該サポート240がアパーチャ210aから距離を置いているように、構成される。具体的には、第1係合部分240aおよび支持壁240bは、スプラッシュプレート230から遠ざかる方向においてアパーチャ210aから距離Xを置く。サポート240を導波管フィード210の外側に置き、サポート240をこのようにアパーチャ210aから離すことにより、サポート240の誘電体ボディーが該アパーチャ210aの周辺付近で電磁界に干渉することが防止される。同様に、サポート240をスプラッシュプレート230の中央領域から離してあるので、該誘電体がスプラッシュプレート230の電気的に敏感な中央領域の付近で界に干渉することが防止される。従って、図2に示されているサポート240はスプラッシュプレートパターンにおけるロスおよび歪を最小にすることができる。
【0029】
好ましくはスプラッシュプレートサポート240は本実施態様の場合のように導波管アパーチャ210aから距離を置くように構成されるけれども、他の実施態様では、スプラッシュプレートサポートが導波管フィードと一旦係合させられたならば該サポートとアパーチャとの間に距離は無くても良い。
【0030】
本実施態様では、支持壁240bは厚さが実質的に均一であるように構成される。好ましくは、支持壁240bは約λ/2より小さいか等しい厚さを有し、ここでλは支持壁240bの誘電体材料の中でのビームの特性波長である。特に、厚さの好ましい範囲は0.4ないし0.6λであり得るけれども、或る実施態様では必要ならば他の厚さが使用され得るであろう。デュアルバンド信号が導波管フィード210に入力されるので、該ビームには或る範囲の波長が存在するであろう。該特性波長は、例えば、導波管フィードアパーチャから放射されるビームの1つの伝送帯域の中心周波数に対応する波長であり得、あるいは該ビームに含まれる複数の波長の算術的平均波長などの、該ビームの平均波長であり得る。本実施態様では、該特性波長は上側および下側帯域の実質的に中間の波長、すなわち25〜26GHzの間の周波数に対応する波長、と解される。支持壁240bの厚さを大きくすれば、上側周波数帯域を犠牲にして、スプラッシュプレートサポート240を下側周波数帯域の方へ同調させることとなる。
【0031】
スプラッシュプレートサポート240は図3A、3Bおよび3Cにさらに詳しく示されており、これらはスプラッシュプレートサポート240の前透視図および後透視図である。図3Aに示されているように、第2係合部分240cはスプラッシュプレートを受け入れ係合するように構成され、これは明確性を目的として図3Aでは省略されている。さらに、図3Bに示されているように、本実施態様では第1係合部分240aは、導波管フィード210の周りに固定されるように構成されたカラーとして形成されている。図3Cはスプラッシュプレート230が据え付けられているスプラッシュプレートサポート240を示す。第1係合部分240aを導波管フィード210に固定し、第2係合部分240cをスプラッシュプレート230に固定するために様々な方法が使用され得る。例えば、第1および第2係合部分240a、240cは締りばめ、スナップフィット、スクリューフィット、接着剤、あるいはネジなどの機械的留め金具を用いて固定され得る。第1係合部分210aは、該サポート、導波管フィードおよびスプラッシュプレートが互いに組み立てられた後に該サポート240およびアパーチャ210aの間の離隔距離X(図2を参照)が変更され得るように、調整可能に構成され得る。
【0032】
第1および第2係合部分240a、240cは図2、3A、3Bおよび3Cに示されている形状に限定されず、他の実施態様では該第1および第2係合部分は別様に整形され得る。さらに、本実施態様では第1および第2係合部分240a、240cならびに支持壁240bは単一のボディーとして一体的に形成されるけれども、他の実施態様では、これらは別々に形成された後にサポート240を形成するために結合され得る。
【0033】
好ましくは、該支持壁は、スプラッシュプレートから放射された界の同位相波面におおよそ対応するように整形される。このことは、該パターンに対する該誘電体サポートの影響を最小にすることを可能にし、従って該リフレクタアンテナがより広い伝送帯域で動作することを可能にする。具体的には、該支持壁の位置および厚さは両方の帯域でのリターンロスおよびクロスポーラ性能に基づいて決定され得、該支持壁は適宜に湾曲あるいはプロファイリングされることができる。本実施態様では支持壁240bは実質的に半球形に形成されていて楕円形プロファイルに基づいているけれども、本発明はこの特定のデザインには限定されない。例えば、他の1つの実施態様では該支持壁は平坦であるかあるいはジオデシックであり得る。該支持壁は、反射と、該支持壁を通る該ビームの経路への干渉を最小にするように構成され得る。
【0034】
ここで図4を参照すると、図2のデュアルバンド導波管フィードが横断面図で示されている。図2と関連して上で記述されたように、デュアルバンド導波管フィード210は、デュアルバンド入力信号、すなわち第1伝送帯域および第2伝送帯域に分布する複数の周波数を含む信号、を受け取るように構成されている。具体的には、デュアルバンド導波管フィード210は、本実施態様ではTE11モードである第1伝送モードで入力信号を受け取るように構成されている。図4に示されているように、デュアルバンド導波管フィード210は上側周波数帯域の伝送モードを第1伝送モードから混合伝送モードに変換するための手段210bを含み、該混合伝送モードは該第1伝送モードおよび第2伝送モードを含む。本実施態様では、該第2伝送モードはTM11モードである。該第1伝送モードを該混合伝送モードに変換するための該手段は、"モードランチャー"または"モードコンバータ"と称され得る。該モードランチャー210bは、下側伝送帯域の周波数に著しい影響を及ぼさないように構成される。従ってアパーチャ210aにおいて、上側周波数帯域内の周波数は該混合モード、すなわちTE11+TM11、で伝播され、下側周波数帯域内の周波数は該第1伝送モードだけ、すなわちTE11、で伝送される。
【0035】
より詳しくは、本実施態様ではモードランチャー210bは導波管フィード210内のテーパが付けられた領域を含み、ここで導波管フィード210の内径は第1直径Dから第2直径Dまで大きくされる。第1直径Dより大きい第2直径Dは、導波管アパーチャ210aの直径である。本実施態様では、導波管アパーチャ210aの直径Dは、下側周波数帯域内の信号の自由空間波長にほぼ等しい。このことは、アパーチャ210aにおいて、下側帯域におけるTE11モードのEおよびHプレーンパターンが同様であり、結果として生じるクロスポーラが低いことを保証する。
【0036】
上側周波数帯域内の周波数に対するモードランチャー210bの作用が次に記述される。モードランチャー210bにおける導波管フィード210の直径の割合に急激な変化はTM11モードの発生という結果をもたらし、これは上側帯域だけで伝播する。具体的には、関連する直径DおよびDは、TM11モードについてのカットオフ周波数が上側および下側周波数帯域の間にあることを保証するように選択される。モードランチャー210bのサイズとアパーチャ210aからの距離Yは、導波管アパーチャ210aにおける電界を制御するために変更されることができるとともに、在来のデュアルモードフィードホーンまたはポッターホーンと同様に、一様なアパーチャ界および低いエッジ界曲率を伴う最適な混合モードTE11+TM11フィード挙動を与えるように選択され得る。より詳しくは、図4に示されているように、モードランチャー210bは、上側帯域におけるTE11モードおよびTM11モードの両方がアパーチャ210aにおいて実質的に同位相であることを保証する所定距離Yだけ導波管アパーチャ210aから離されている。具体的には、TE11モードおよびTM11モードの間の位相差はモードランチャー210bからの距離に応じて変化する。従って距離Yは、アパーチャ210aにおける位相差がゼロに近いように、すなわち上側帯域におけるTE11およびTM11モードがアパーチャ210aにおいて実質的に同位相であるように、選択されることができる。
【0037】
従って、モードランチャー210bのサイズおよび位置、すなわち内径DおよびDならびに導波管アパーチャ210aからの離隔距離Y、を制御することにより、両方のプレーンにおいて一様な界パターンが達成されることができ、クロスポーラ成分が低減されることができる。下側帯域パターンはモードランチャー210bによる影響を受けないままであり得るけれども、モードランチャー210bを設計するときには依然として両方の帯域についてリターンロスが考慮されるべきである。本実施態様ではモードランチャー210bは導波管フィード210のテーパが付けられたセクションとして形成されているけれども、本発明はこのジオメトリーには限定されない。例えば、他の実施態様ではモードランチャー210bは内径の1つ又は複数の段として、あるいは隆起のあるジオメトリーなどの他の何らかのプロファイリングされたジオメトリーを用いて、形成され得る。
【0038】
上記のフィーチャは、導波管フィード210が下側および上側の帯域の両方において最適で同様のパターン性能を有することを保証することができる。
【0039】
本実施態様ではTM11およびTE11モードが使用されるけれども、本発明はこの場合に限定されない。他の実施態様は他のモードで使用されるように構成され得、例えばアパーチャのサイズはTE12モードを利用するために約40%大きくされ得る。或る実施態様では、波形の導波管フィードが使用され得る。
【0040】
図5A図4の導波管フィードにおける下側および上側帯域についてのコポーラ放射パターンを示し、図5B図4の導波管フィードにおける下側および上側帯域についてのクロスポーラ放射パターンを示す。同様に、図6A図2のスプラッシュプレートアセンブリにおける下側および上側帯域についてのコポーラ放射パターンを示し、図6B図2のスプラッシュプレートアセンブリにおける下側および上側帯域についてのクロスポーラ放射パターンを示す。図5A図5B、6Aおよび6Bにおいて、0度の角はボアサイト方向、すなわちビームが該アパーチャから放射されるとともに伝送されるビームが向けられる方向、に対応する。図5A図5B、6Aおよび6Bに示されているように、上側および下側帯域の両方が順方向に同様のコポーラおよびクロスポーラ成分を示す。図5Aおよび5Bの導波管フィードパターンは外側へ、スプラッシュプレートに対する角に対応する約60°まで基本的に重要であり、0°のボアサイトにビームピークを有する。図6Aおよび6Bのスプラッシュプレートアセンブリパターンは外側へ約80°まで基本的に重要であり、30°および60°の間の方向において名目上オフアクシスであるコポーラピークを有する。
【0041】
ここで図7を参照すると、図2のデュアルバンドスプラッシュプレートアセンブリについて周波数に対するリターンロスのグラフが示されている。該して、アンテナが使用される周波数での最大の容認可能なリターンロスは約20デシベル(dB)であるけれども、容認可能限界はアプリケーションに応じて様々であろう。例えば、或る場合には15dBのリターンロスが容認可能であり得る。図7において、下側および上側帯域内の設計周波数は、明確性を目的として影付けされている。図7に示されているように、下側および上側帯域の両方においてリターンロスは20dBの容認可能限界より低い。さらに、20dbより低いリターンロスを有する容認可能領域は、必要とされる周波数帯域を十分に超えて延びており、従って本実施態様のスプラッシュプレートアセンブリは、より広い周波数帯域で用いられるのにも適するであろう。該上側および下側帯域の間でおよそ26および27GHzにリターンロスピークがある。これらのピークは、モードランチャーに起因して生じ、モードランチャーおよび導波管フィードの寸法を変えることによってより高いまたはより低い周波数へ移され得る。従って約26GHzの周波数で使用されるように意図されている本発明の1つの実施態様においては、モードランチャーは、図4の寸法D1およびD2を適宜変更することによってリターンロスピークが所望の伝送帯域に属さないことを保証するように適宜調整され得る。
【0042】
スプラッシュプレートサポートの代わりの実施態様が図8Aから8Cまでに示されている。この実施態様では、リフレクタアンテナのためのスプラッシュプレートアセンブリは、図2の導波管フィードおよびスプラッシュプレートと類似する導波管フィード810およびスプラッシュプレート830を含む。さらに、本実施態様のスプラッシュプレートサポート840は、導波管フィード810の外面と係合する第1係合部分840a、スプラッシュプレート830と係合する第2係合部分840c、および2つの係合部分840a、840cの間に延びる支持壁840bを含む点において図2のそれと類似する。しかし、図2の実施態様とは違って、本実施態様では支持壁840bは、横断面で見られたときには湾曲してはいなくて直線形である。従って、本実施態様のスプラッシュプレートサポート840は、3次元で見られたときには円錐形である。この実施態様および他の実施態様では、壁厚は性能を最適化するために支持壁840bの輪郭に沿って変化させられ得る。
【0043】
係合部分を結合させて空隙、すなわち誘電体材料の無いスペース、を囲む連続壁を含む本発明の実施態様が記述されたけれども、他の実施態様では他のタイプの支持部分が使用され得る。例えば、壁の代わりに、第1および第2係合部分は、間に開けたスペースのある1つ又は複数の誘電体ストラットなどの支持部分によって結合されても良い。すなわち、或る実施態様では該支持部分は壁として形成されなくても良く、連続的でなくても良い。図9は本発明の1つの実施態様に従うスプラッシュプレートサポート940を示し、この実施態様では支持部分940bは第1および第2係合部分940a、940cを結合させる複数のストラットを含む。図2、3Aないし3Cおよび8Aないし8Cの実施態様における支持壁と同じく、本実施態様のストラット940bはアパーチャとスプラッシュプレートとの間にスペースを画定するように配置される。
【0044】
導波管フィードアパーチャとスプラッシュプレートとの間にスペースを画定するようにスプラッシュプレートサポートが構成されているので、スプラッシュプレート型リフレクタアンテナでのデュアルバンド動作を可能にすることができる本発明の実施態様が記述された。該サポートにより画定されるスペースはアパーチャからスプラッシュプレートへの電磁放射のビームにより取られる経路を含むので、該ビームの経路は該サポートによって妨げられない。従って上側および下側帯域の両方の周波数は該サポートの存在による影響を受けない。対照的に、在来のスプラッシュプレートサポートおよび導波管フィードではデュアルバンド動作は可能ではなかった。本発明の実施態様は、円偏光および直線偏光アプリケーションの両方に使用され得る。
【0045】
さらに、導波管フィードの横断面が円形である本発明の実施態様が記述されているけれども、本発明はこの構成に限定されない。何らかの放射対称性を有する他の横断面が使用され得、例えば或る実施態様では導波管フィードホーンは正方形横断面を有することができ、スプラッシュプレートサポートは同様に正方形横断面を有することができる。
【0046】
加えて、アパーチャの近くでの内径が導波管フィードへの入力での内径よりも大きいモードランチャーを導波管フィードが含む本発明の実施態様が記述されている。このことは、アパーチャにおける直径が入力における直径よりも電気的に大きいこと、すなわちより大きな数の波長に対応することを保証する。しかし、或る実施態様では内径はアパーチャ付近で物理的により大きくなくても良い。例えば、誘電体内では波長は小さくされるので、内径を物理的に大きくすることなく誘電体プラグまたはリングを挿入することによって導波管フィードをアパーチャにおいて電気的により大きくすることができる。従って、モードランチャーは物理的寸法の変化として具体化されなくても良い。このアプローチは性能に有害な影響を及ぼすであろうが、それにもかかわらず、例えばサイズの制約のためにアパーチャにおいてより大きな物理的直径を使用できないアプリケーションなど、一定のアプリケーションにおいて用途を見出すことができるであろう。
【0047】
また、スプラッシュプレートサポートが導波管フィードの外面と係合する本発明の実施態様が記述されているけれども、本発明はこの構成に限定されない。或る実施態様では、第1係合部分は、例えば導波管アパーチャに挿入されるべき細いカラーとして、別様に形成され得る。このような構成は、性能を或る程度劣化させるであろうけれども、スペースの制約があるために該サポートを導波管フィードの外面と係合させることができない実施態様において必要とされるかもしれない。
【0048】
本発明の一定の実施態様が上に記述されているけれども、当業者であれば、添付の特許請求の範囲において定義される発明の範囲から逸脱することなく、多くのバリエーションおよび改変が可能であることを認識するであろう。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9