(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合液液膜形成工程に並行して、前記基板を静止状態とさせまたは回転軸線回りにパドル速度で前記基板を回転させるパドル工程をさらに含む、請求項3に記載の基板処理方法。
前記液膜除去領域拡大工程は、前記基板を前記混合液液膜形成工程時よりも高速度で回転させる高速回転工程を含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低表面張力液体(有機溶剤)は親水性を有しているものの、処理液(水)に対する置換性能はそれほど高くない。そのため、低表面張力液体の供給のみでは、基板の表面上の処理液を低表面張力液体に完全に置換させるのに長い時間を要する。低表面張力液体への置換に長時間を要する結果、基板の表面の乾燥時間が長くなるおそれがある。
そこで、本発明の目的は、基板の表面上の処理液を、低表面張力液体に短時間で完全置換でき、これにより、パターンの倒壊を抑制しながら基板の表面を短時間で乾燥できる、基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板の表面を処理液を用いて処理する基板処理方法であって、
前記基板の表面が上方を向いた状態で前記基板を水平に保持する基板保持工程と、前記処理液が残留している前記基板の表面に、前記処理液よりも沸点が高くかつ当該処理液よりも低い表面張力を有する低表面張力液体を供給することにより、前記基板の表面に、前
記処理液と前記低表面張力液体との混合液
の液膜を形成する混合液
液膜形成工程と、前記基板の表面に
形成されている前記混合液
の液膜から前記処理液を蒸発させて、前記混合液
の液膜における少なくとも前記基板の表面との間の界面の前記混合液を前記低表面張力液体に置換する置換工程と、前記低表面張力液体を前記基板の表面から除去して、当該基板の表面を乾燥させる乾燥工程とを含
み、前記置換工程は、前記混合液の液膜に含まれる前記処理液を蒸発させるべく、前記混合液の液膜によって前記基板の表面を覆った後に前記混合液の液膜を加熱する混合液加熱工程を含む、基板処理方法を提供する。
【0008】
この方法によれば、処理液が残留している基板の表面に低表面張力液体を供給する。これにより、処理液と低表面張力液体とが混ざり合い、基板の表面において混合液が形成される。そして、その混合液中に含まれる、沸点の低い処理液が蒸発し、その結果、基板の表面上の処理液を低表面張力液体に完全置換できる。
低表面張力液体の供給により混合液を形成し、その混合液中に含まれる処理液を蒸発させて低表面張力液体のみを残存させるので、処理液の低表面張力液体への置換速度を速めることができる。これにより、基板の表面上の処理液を、短時間で、低表面張力液体に完全置換できる。ゆえに、パターンの倒壊を抑制しながら基板の表面を短時間で乾燥できる。
【0009】
また、この明細書において「基板の表面に処理液が残留している」とは、基板の表面に処理液の液膜が形成されている状態や、基板の表面に処理液の液滴が存在している状態の他、基板の表面に液膜や液滴は存在していないが基板の表面のパターン内に処理液が進入している状態を含む趣旨である
。
【0011】
また、水平姿勢に保持されている基板の上面に低表面張力液体を供給する。これにより、処理液と低表面張力液体とが混ざり合い、基板の表面において混合液の液膜が形成される。そして、混合液の液膜を加熱することにより、その混合液の液膜中に含まれる、沸点の低い処理液を蒸発させることができる。その結果、液膜中の処理液を低表面張力液体に完全置換できる。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、前記混合液加熱工程は、前記処理液の沸点よりも高くかつ前記低表面張力液体の沸点よりも低い所定の高温で前記混合液を加熱する、請求項
1に記載の基板処理方法である。
この構成によれば、処理液の沸点よりも高くかつ低表面張力液体の沸点よりも低い温度で混合液を加熱すれば、混合液中の低表面張力液体はほとんど蒸発しない。その一方で、混合液中の処理液の蒸発は促進される。すなわち、混合液中の処理液だけを、効率良く蒸発させることができる。これにより、低表面張力液体による完全置換を、より短時間で実現できる。また、混合液加熱工程後に、基板の上面に所定の厚みを有する低表面張力液体の液膜を保持することもできる。
【0013】
前記の目的を達成するための請求項3に記載の発明は、基板の表面を処理液を用いて処理する基板処理方法であって、前記基板の表面が上方を向いた状態で前記基板を水平に保持する基板保持工程と、前記処理液が残留している前記基板の表面に、前記処理液よりも沸点が高くかつ当該処理液よりも低い表面張力を有する低表面張力液体を供給することにより、前記基板の表面に、前記処理液と前記低表面張力液体との混合液の液膜を形成する混合液液膜形成工程と、前記基板の表面に形成されている前記混合液の液膜から前記処理液を蒸発させて、前記混合液の液膜における少なくとも前記基板の表面との間の界面の前記混合液を前記低表面張力液体に置換する置換工程と、前記低表面張力液体を前記基板の表面から除去して、当該基板の表面を乾燥させる乾燥工程とを含み、前記乾燥工程は、前記混合液
の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とを含む、基板処理方法である。
【0014】
この方法によれば、
処理液が残留している基板の表面に低表面張力液体を供給する。これにより、処理液と低表面張力液体とが混ざり合い、基板の表面において混合液が形成される。そして、その混合液中に含まれる、沸点の低い処理液が蒸発し、その結果、基板の表面上の処理液を低表面張力液体に完全置換できる。
低表面張力液体の供給により混合液を形成し、その混合液中に含まれる処理液を蒸発させて低表面張力液体のみを残存させるので、処理液の低表面張力液体への置換速度を速めることができる。これにより、基板の表面上の処理液を、短時間で、低表面張力液体に完全置換できる。ゆえに、パターンの倒壊を抑制しながら基板の表面を短時間で乾燥できる。
また、水平姿勢に保持された基板の上面に混合液の液膜が形成される。その混合液の液膜に液膜除去領域が形成され、さらに、その液膜除去領域が基板全域を覆うまで拡大される。基板の上面では、混合液の液膜の気固液界面で混合液が蒸発しながら、液膜除去領域が拡大する。気固液界面では、沸点の低い処理液が主として蒸発させられ、その結果、低表面張力液体の濃度が上昇する。このとき、気固液界面では低表面張力液のみが存在し、混合液の液膜の界面付近部分では、気固液界面から離反するに従って低表面張力液体の濃度が低くなるような濃度勾配が形成される。すなわち、気固液界面において、処理液を低表面張力液体に完全置換できる。パターン間から液体が完全に除去されるときに、パターンに、当該液体の表面張力が作用すると考えられている。気固液界面において低表面張力液体に完全置換することにより、パターンから液体が完全に除去されるときのパターンに作用する表面張力を低く抑えることができるから、パターンの倒壊を抑制できる。
【0015】
請求項
4に記載の発明は、前記混合液液膜形成工程に並行して、前記基板を静止状態とさせまた
は回転軸線回りにパドル速度で前記基板を回転させるパドル工程をさらに含む、請求項
3に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、混合液液膜形成工程に並行してパドル工程を実行するから、基板からの低表面張力液体の排出を抑制できる。これにより、低表面張力液体の使用量の低減を図ることができる。
【0016】
請求項
5に記載の発明は、前記液膜除去領域形成工程は、前記基板の上面に気体を吹き付ける気体吹き付け工程を含む、請求項
3または
4に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、混合液の液膜に気体を吹き付けることにより、混合液の液膜に含まれる混合液が部分的に吹き飛ばされて除去される。これにより、液膜除去領域を簡単に形成できる。
【0017】
請求項
6に記載の発明は、前記液膜除去領域
拡大工程は、前記基板を前記混合液液膜形成工程時よりも高速度で回転させる高速回転工程を含む、請求項
3〜
5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、基板を高速回転させることにより発生する強い遠心力により、液膜除去領域を拡大させることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記気体は、常温よりも高温の高温気体を含む、請求項
5に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、高温気体を基板の上面に供給することにより、混合液の液膜の気固液界面における処理液の蒸発を促進させることができる。これにより、混合液の液膜の界面付近部分の低表面張力液体の濃度勾配を急激とすることができ、ゆえに、気固液界面において、低表面張力液のみを存在させることが可能である。
【0019】
請求項
8に記載の発明は、前記処理液は水を含み、前記低表面張力液体はエチレングリコールを含む、請求項1〜
7のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、水が残留している基板の表面にエチレングリコール(以下、「EG」という)を供給する。これにより、水とEGとが混ざり合い、基板の表面において混合液が形成される。そして、その混合液中に含まれる、沸点の低い水が主として蒸発し、その結果、基板の表面上の水をEGに完全置換できる。
【0020】
EGの供給により混合液を形成し、その混合液中に含まれる水を蒸発させてEGのみを残存させるので、水のEGへの置換速度を速めることができる。これにより、基板の表面上の水を、短時間で、EGに完全置換できる。ゆえに、パターンの倒壊を抑制しながら基板の表面を短時間で乾燥できる。これにより、乾燥時間を短縮したり、有機溶剤の使用量の低減を図ったりできる。
【0021】
この方法によれば、水が残留している基板の表面にEGを供給する。これにより、水とEGとが混ざり合い、基板の表面において混合液が形成される。そして、その混合液中に含まれる、沸点の低い水が蒸発し、その結果、基板の表面上の水をEGに完全置換できる。
EGの供給により混合液を形成し、その混合液中に含まれる水を蒸発させてEGのみを残存させるので、水のEGへの置換速度を速めることができる。これにより、基板の表面上の水を、短時間で、EGに完全置換できる。ゆえに、パターンの倒壊を抑制しながら基板の表面を短時間で乾燥できる。
【0022】
前記の目的を達成するための請求項9に記載の発明は、基板を水平に、かつその表面が上方を向いた状態で保持する基板保持ユニットと、前記基板の表面に処理液を供給するための処理液供給ユニットと、前記基板の表面に、前記処理液よりも沸点が高くかつ前記処理液よりも低い表面張力を有する低表面張力液体を供給するための低表面張力液体供給ユニットと、前記基板の表面に形成されてい
る液膜を加熱するための加熱ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記低表面張力液体供給ユニットおよび
前記加熱ユニットを制御して、前記処理液が残留している前記基板の表面に、前記低表面張力液体を供給することにより、前記処理液と前記低表面張力液体との混合液の液膜を、当該基板の表面を覆うように形成する混合液液膜形成工程と、前記基板の表面に形成されている前記混合液の液膜から前記処理液を蒸発させて、前記混合液の液膜における前記基板の表面との間の界面の前記混合液を前記低表面張力液体に置換する置換工程と、前記低表面張力液体を前記基板の表面から除去して、当該基板の表面を乾燥させる乾燥工程とを実行する制御ユニットとを含み、前記制御ユニットが、前記置換工程において、前記混合液の液膜に含まれる前記処理液を蒸発させるべく、前記混合液の液膜によって前記基板の表面を覆った後に前記混合液の液膜を加熱する混合液加熱工程を実行する、基板処理装置を提供する。
【0023】
この構成によれば、
請求項1に記載の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0024】
前記の目的を達成するための請求項10に記載の発明は、基板を水平に、かつその表面が上方を向いた状態で保持する基板保持ユニットと、前記基板の表面に処理液を供給するための処理液供給ユニットと、 前記基板の表面に、前記処理液よりも沸点が高くかつ前記処理液よりも低い表面張力を有する低表面張力液体を供給するための低表面張力液体供給ユニットと、前記処理液供給ユニットおよび前記低表面張力液体供給ユニットを制御して、前記処理液が残留している前記基板の表面に、前記低表面張力液体を供給することにより、前記処理液と前記低表面張力液体との混合液の液膜を、当該基板の表面を覆うように形成する混合液液膜形成工程と、前記基板の表面に形成されている前記混合液の液膜から前記処理液を蒸発させて、前記混合液の液膜における前記基板の表面との間の界面の前記混合液を前記低表面張力液体に置換する置換工程と、前記低表面張力液体を前記基板の表面から除去して、当該基板の表面を乾燥させる乾燥工程とを実行する制御ユニットとを含み、前記制御ユニットが、前記乾燥工程において、前記混合液
の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とを実行する、基板処理装置を提供する。
【0025】
この構成によれば、請求項3に関連して記載した作用効果と同等の作用効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0028】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
処理ユニット2は、箱形の処理チャンバ4と、処理チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に薬液を供給するための薬液供給ユニット6と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に、処理例の一例としての水を供給するための水供給ユニット(処理液供給ユニット)7と、基板Wの上面(表面)に、水(処理液)よりも沸点が高くかつ当該水(処理液)よりも低い表面張力を有する低表面張力液体の一例としてのエチレングリコール(以下、「EG」という)を供給するEG供給ユニット(低表面張力液体供給ユニット)8と、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面に対向配置され、基板Wの上面に形成された水/EG混合液の液膜(以下、「混合液の液膜」という)50(
図5B等参照)を、基板Wを介して下方から加熱するためのホットプレート(加熱ユニット)9と、スピンチャック5を取り囲む筒状の処理カップ10とを含む。
【0029】
処理チャンバ4は、箱状の隔壁11と、隔壁11の上部から隔壁11内(処理チャンバ4内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)12と、隔壁11の下部から処理チャンバ4内の気体を排出する排気装置(図示しない)とを含む。
FFU12は隔壁11の上方に配置されており、隔壁11の天井に取り付けられている。FFU12は、隔壁11の天井から処理チャンバ4内に清浄空気を送る。排気装置は、処理カップ10内に接続された排気ダクト13を介して処理カップ10の底部に接続されており、処理カップ10の底部から処理カップ10の内部を吸引する。FFU12および排気装置により、処理チャンバ4内にダウンフロー(下降流)が形成される。
【0030】
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、鉛直に延びる筒状のスピン軸14と、スピン軸14の上端に水平姿勢に取り付けられた円板状のスピンベース15と、スピンベース15に等間隔で配置された複数個(少なくとも3個。たとえば6個)の挟持ピン16と、スピン軸14に連結されたスピンモータ17とを含む。複数個の挟持ピン16は、スピンベース15の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けてたとえば等間隔に配置されている。複数の挟持ピン16は、それぞれ、上向きの挟持ピン(下側が支持された挟持ピン)であり、基板Wの周縁部と当接して基板Wを挟持することができる挟持位置と、この挟持位置よりも基板Wの径方向外方の開放位置との間で変位されるようになっている。スピンチャック5は、各挟持ピン16を基板Wの周縁部に当接させて挟持することにより、基板Wがスピンチャック5に強固に保持される。各挟持ピン16には、当該挟持ピン16を変位させるための駆動機構(図示しない)が結合されている。また、挟持部材として、挟持ピン16に代えて、下向きの挟持ピン(上側が支持された挟持ピン)が採用されていてもよい。
【0031】
スピンモータ17は、たとえば電動モータである。挟持ピン16によって保持された基板Wは、スピンモータ17からの回転駆動力がスピン軸14に伝えられることにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりにスピンベース15と一体的に回転させられる。
ホットプレート9は、たとえば水平平坦な表面を有する円板状に形成されており、基板Wの外径と同等の外径を有している。ホットプレート9は、円形を有する上面が、スピンチャック5に保持された基板Wの下面(裏面)に対向している。ホットプレート9は、スピンベース15の上面と、スピンチャック5に保持される基板Wの下面との間に水平姿勢で配置されている。ホットプレート9は、セラミックや炭化ケイ素(SiC)を用いて形成されており、その内部にヒータ18が埋設されている。ヒータ18の加熱によりホットプレート9全体が温められて、ホットプレート9が基板Wを加熱するように機能する。ホットプレート9の上面の全域において、ヒータ18のオン状態における当該上面の単位面積当たりの発熱量は均一に設定されている。ホットプレート9は、スピンベース15およびスピン軸14を上下方向に貫通する貫通穴19を回転軸線A1に沿って鉛直方向(スピンベース15の厚み方向)に挿通する支持ロッド20により支持されている。支持ロッド20の下端は、スピンチャック5の下方の周辺部材に固定されている。ホットプレート9がスピンモータ17に連結されていないので、基板Wの回転中であっても、ホットプレート9は回転せずに静止(非回転状態)している。
【0032】
支持ロッド20には、ホットプレート9を昇降させるためのヒータ昇降ユニット21が結合されている。ホットプレート9は、ヒータ昇降ユニット21により水平姿勢を維持したまま昇降される。ヒータ昇降ユニット21は、たとえばボールねじやモータによって構成されている。ホットプレート9は、ヒータ昇降ユニット21の駆動により、スピンチャック5に保持された基板Wの下面から離間する下位置(
図5A等参照)と、スピンチャック5に保持された基板Wの下面に微小間隔を隔てて接近する上位置(
図5B参照)との間で昇降させられる。
【0033】
ホットプレート9の上面が上位置にある状態で、基板Wの下面とホットプレート9の上面との間の間隔はたとえば0.3mm程度に設定されており、ホットプレート9の上面が下位置にある状態で、基板Wの下面とホットプレート9の上面との間の間隔は、たとえば10mm程度に設定されている。このように、ホットプレート9と基板Wとの間隔を変更させることができる。
【0034】
薬液供給ユニット6は、薬液ノズル23を含む。薬液ノズル23は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。薬液ノズル23には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液配管24が接続されている。薬液配管24の途中部には、薬液ノズル23からの薬液の供給/供給停止を切り換えるための薬液バルブ25が介装されている。薬液バルブ25が開かれると、薬液配管24から薬液ノズル23に供給された連続流の薬液が、薬液ノズル23の下端に設定された吐出口から吐出される。また、薬液バルブ25が閉じられると、薬液配管24から薬液ノズル23への薬液の供給が停止される。
【0035】
薬液の具体例は、エッチング液および洗浄液である。さらに具体的には、薬液は、フッ酸、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、フッ化アンモニウム、バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などであってもよい。
水供給ユニット7は、水ノズル26を含む。水ノズル26は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。水ノズル26には、水供給源からの水が供給される水配管27が接続されている。水配管27の途中部には、水ノズル26からの水の供給/供給停止を切り換えるための水バルブ28が介装されている。水バルブ28が開かれると、水配管27から水ノズル26に供給された連続流の水が、水ノズル26の下端に設定された吐出口から吐出される。また、水バルブ28が閉じられると、水配管27から水ノズル26への水の供給が停止される。水は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。水(DIW)の沸点および表面張力は、常温で、それぞれ100℃および72.75である。
【0036】
なお、薬液ノズル23および水ノズル26は、それぞれ、スピンチャック5に対して固定的に配置されている必要はなく、たとえば、スピンチャック5の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、このアームの揺動により基板Wの上面における処理液(薬液または水)の着液位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
【0037】
EG供給ユニット8は、EGを吐出するためのEGノズル29と、EGノズル29が先端部に取り付けられた第1のノズルアーム30と、第1のノズルアーム30を移動させることにより、EGノズル29を移動させる第1のノズル移動ユニット31とを含む。EGノズル29は、たとえば、連続流の状態でEGを吐出するストレートノズルであり、その吐出口をたとえば下方に向けた状態で、水平方向に延びる第1のノズルアーム30に取り付けられている。
【0038】
また、EG供給ユニット8は、EGノズル29に接続され、EG供給源からのEGをEGノズル29に供給するEG配管32と、EGノズル29からのEGの供給/供給停止を切り換えるためのEGバルブ33と、EG配管32の開度を調節して、EGノズル29から吐出されるEGの流量を調整するための第1の流量調整バルブ34とを含む。第1の流量調整バルブ34は、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。他の流量調整バルブについても同様である。また、EGの沸点および表面張力は、常温で、それぞれ197.5℃および47.3である。すなわち、EGは、水よりも沸点が高くかつ水よりも低い表面張力を有する液体である。
【0039】
図2に示すように、処理カップ10は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。処理カップ10は、スピンベース15を取り囲んでいる。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いた処理カップ10の上端部10aは、スピンベース15よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液や水などの処理液は、処理カップ10によって受け止められる。そして、処理カップ10に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または廃液装置に送られる。
【0040】
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御ユニット3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ17、ヒータ昇降ユニット21および第1のノズル移動ユニット31等の動作を制御する。また、制御ユニット3は、薬液バルブ25、水バルブ28、EGバルブ33、第1の流量調整バルブ34等の開閉動作等を制御する。さらに、制御ユニット3は、ヒータ18のオンオフを制御する。
【0041】
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図5A〜5Cは、混合液形成工程(
図4のS4)、混合液加熱工程(
図4のS5)、および乾燥工程(
図4のS6)の様子を説明するための図解的な断面図である。
図6A〜6Fは、リンス工程(
図4のS3)、混合液形成工程(
図4のS4)、混合液加熱工程(
図4のS5)および乾燥工程(
図4のS6)における、基板Wの表面の状態を示す図解的な断面図である。
図1〜
図6Fを参照しながら基板処理について説明する。
【0042】
未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、処理チャンバ4内に搬入され、基板Wがその表面(処理対象面。この実施形態ではパターン形成面)を上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡され、スピンチャック5に基板Wが保持される(S1:基板搬入工程(基板保持工程))。基板Wの搬入に先立って、EGノズル29は、スピンチャック5の側方に設定されたホーム位置に退避させられている。また、ホットプレート9は、基板Wの下面から離間する下位置に配置されている。このとき、ヒータ18はオフ状態にある。
【0043】
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、制御ユニット3は、スピンモータ17を制御して、基板Wを回転開始させ、所定の液処理回転速度(たとえば約800rpm)まで加速させる。
また、制御ユニット3は、ヒータ18をオンにする。これにより、ヒータ18が発熱し、ホットプレート9の上面温度が予め定める所定の高温まで昇温させられる。なお、ヒータ18のオンによりホットプレート9の表面は高温状態になるのであるが、ホットプレート9が、下位置に配置されているので、ホットプレート9からの熱によって基板Wはほとんど温められない。
【0044】
次いで、制御ユニット3は、薬液工程(ステップS2)を実行する。具体的には、基板Wの回転速度が液処理速度に達した後、制御ユニット3は、薬液バルブ25を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、薬液ノズル23から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡り、基板Wに薬液を用いた薬液処理が施される。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、薬液バルブ25を閉じて、薬液ノズル23からの薬液の吐出を停止する。
【0045】
次いで、制御ユニット3は、リンス工程(ステップS3)を実行する。リンス工程(S3)は、基板W上の薬液を水に置換して基板W上から薬液を排除する工程である。具体的には、制御ユニット3は、水バルブ28を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、水ノズル26から水が供給される。供給された水は遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。この水によって、基板W上に付着している薬液が洗い流される。
【0046】
水の供給開始から予め定める期間が経過すると、基板Wの上面全域が水に覆われている状態で、制御ユニット3は、スピンモータ17を制御して、基板Wの回転速度を液処理速度からパドル速度(零または約40rpm以下の低回転速度。たとえば約10rpm)まで段階的に減速させる。その後、基板Wの回転速度をパドル速度に維持する。これにより、基板Wの上面に、基板Wの上面全域を覆う水の液膜がパドル状に支持される。この状態では、基板Wの上面の水の液膜に作用する遠心力が水と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗している。基板Wの減速により、基板W上の水に作用する遠心力が弱まり、基板W上から排出される水の量が減少する。これにより、
図6Aに示すように、基板Wの上面にパドル状の水の液膜45が形成される。その後、基板Wの回転速度は、パドル速度に維持される。水の液膜45の形成後、基板Wへの水の供給が停止されるが、パドル状の水の液膜の形成後において、基板Wへの水の供給が続行されてもよい。
【0047】
次いで、混合液形成工程(
図4のステップS4)が実行される。
具体的には、基板Wの減速後予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、第1のノズル移動ユニット31を制御して、EGノズル29をホーム位置から基板Wの上方の処理位置に移動させる。その後、制御ユニット3は、EGバルブ33を開いて、EGノズル29から基板Wの上面に向けてEGを吐出させる。さらに、制御ユニット3は、基板Wの上面に対するEGの供給位置を中央部と周縁部との間で移動させる。これにより、水の供給位置が、基板Wの上面全域を走査し、基板Wの上面全域にEGが直接塗布される。EGの吐出開始後しばらくの間、EGは、液膜45の内部に十分に拡がらない。その結果、
図6Bに示すように、液膜45の表層部分にEGが滞留し、かつ液膜45の基層部分に水が滞留する。この状態では、液膜45において、表層部分と基層部分との中間部分にのみ、水とEGとの混合液(以下「水/EG混合液」という)が形成される。その後、時間の経過に伴って、EGが液膜45の全域に行き渡り、水の液膜45の全域が水/EG混合液によって置換される。すなわち、基板Wの上面に、混合液の液膜50が形成される(
図5Aおよび
図6C参照)。
【0048】
次いで、制御ユニット3は、混合液加熱工程(
図4のステップS5)を実行する。
具体的には、制御ユニット3は、ヒータ昇降ユニット21を制御して、
図5Bに示すように、ホットプレート9を下位置(
図5A等参照)から上位置まで上昇させる。ホットプレート9が上位置に配置されることにより、上位置にあるホットプレート9の上面からの熱輻射により基板Wが加熱される。また、基板Wが高温に熱せられるから、基板Wの上面上の混合液の液膜50も、基板Wの温度と同程度の高温に昇温させられる。この混合液の液膜50に対する加熱温度は、水の沸点よりも高くかつEGの沸点よりも低い所定の高温(たとえば約150℃)に設定されている。
【0049】
混合液の液膜50の加熱により、
図6Dに示すように、混合液の液膜50中に含まれる水が沸騰し、混合液の液膜50から水が蒸発する。その結果、混合液の液膜50から水が完全に除去され、
図6Eに示すように、液膜がEGのみを含むようになる。すなわち、基板Wの上面にEGの液膜51が形成される。これにより、基板Wの上面の水をEGに完全置換できる。
【0050】
ホットプレート9の上昇から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、
図5Cに示すように、制御ユニット3は、ヒータ昇降ユニット21を制御して、ホットプレート9の位置を上位置(
図5B参照)から下位置まで下降させる。これにより、ホットプレート9による基板Wの加熱は終了する。
次いで、制御ユニット3は、スピンモータ17を制御して、
図5Cに示すように、基板Wの回転速度を振り切り乾燥速度(たとえば1500rpm)まで加速させる。これにより、基板Wの上面のEGの液膜51が振り切られて基板Wが乾燥される(スピンドライ。
図4のS6:乾燥工程)。この乾燥工程(S6)では、
図6Fに示すように、パターンPの構造体P1の間からEGが除去される。EGは、水よりも低い表面張力を有しているので、乾燥工程(S6)におけるパターン倒れを抑制できる。
【0051】
乾燥工程(S6)の開始から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、スピンモータ214を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。また、制御ユニット3は、ヒータ18をオフにする。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、処理済みの基板Wを処理ユニット2外へと搬出する(
図4のステップS7)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0052】
以上により、第1の実施形態によれば、基板Wの水の液膜45にEGが供給される。これにより、水とEGとが混ざり合い、基板Wの上面において、混合液の液膜50が形成される。そして、混合液の液膜50が加熱されることにより、その混合液の液膜50中に含まれる水が蒸発し、その結果、混合液の液膜50中の水をEGに完全置換できる。
EGの供給により混合液の液膜50を形成し、この混合液の液膜50中に含まれる水を蒸発させてEGのみを残存させるので、水のEGへの置換速度を速めることができる。これにより、基板Wの上面上の水を、短時間でEGに完全置換できる。ゆえに、パターンPの倒壊を抑制しながら、基板Wの上面を短時間で乾燥できる。これにより、基板Wの乾燥時間の短縮化を図ることができ、かつEGの使用量の低減を図ることができる。
【0053】
また、混合液加熱工程(
図4のS5)において、混合液の液膜50に対する加熱温度が、水の沸点よりも高くかつEGの沸点よりも低い所定の高温(たとえば約150℃)に設定されている。そのため、水/EG混合液中のEGはほとんど蒸発しないが、水/EG混合液中の水の蒸発は促進される。すなわち、混合液の液膜50中の水だけを、効率良く蒸発させることができる。これにより、低表面張力液体による完全置換を、より一層短時間で実現できる。
【0054】
また、混合液の液膜50に対する加熱温度がEGの沸点よりも低いので、混合液加熱工程(
図4のS5)後において、基板Wの上面に、所定の厚みを有するEGの液膜を保持できる。
また、基板Wの上面にパドル状の水の液膜45を形成し、その水の液膜45にEGを供給することにより、混合液の液膜50を基板Wの上面に形成するので、基板WからのEGの排出を抑制できる。これにより、EGの使用量の更なる低減を図ることができる。
【0055】
図7は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置201に備えられた処理ユニット202の構成例を説明するための図解的な断面図である。
第2の実施形態において、前述の第1の実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図6Fの場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
処理ユニット202が、第1の実施形態に係る処理ユニット2と相違する主たる一の点は、スピンチャック5に代えてスピンチャック(基板保持ユニット)205を備えた点である。すなわち、処理ユニット2は、ホットプレート9を備えていない。
【0056】
また、処理ユニット202が、第1の実施形態に係る処理ユニット2と相違する主たる他の点は、スピンチャック205に保持されている基板Wの上面に気体を供給するための気体ユニット237をさらに含む点である。
スピンチャック205として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック205は、スピンモータ214と、このスピンモータ214の駆動軸と一体化されたスピン軸215と、スピン軸215の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース216とを含む。
【0057】
スピンベース216は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面216aを含む。上面216aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材217が配置されている。複数個の挟持部材217は、スピンベース216の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けてたとえば等間隔に配置されている。
【0058】
気体ユニット237は、不活性ガスの一例としての窒素ガスを基板Wの上面に向けて吐出する気体ノズル235と、気体ノズル235が先端部に取り付けられた第2のノズルアーム236と、第2のノズルアーム236を移動させることにより、気体ノズル235を移動させる第2のノズル移動ユニット238とを含む。気体ノズル235は、その吐出口をたとえば下方に向けた状態で、水平方向に延びる第2のノズルアーム236に取り付けられている。
【0059】
気体ノズル235には、不活性ガス供給源からの高温(常温よりも高温。たとえば30〜300℃)の不活性ガスが供給される気体配管239が接続されている。気体配管239の途中部には、気体ノズル235からの不活性ガスの供給/供給停止を切り換えるための気体バルブ240と、気体配管239の開度を調節して、気体ノズル235から吐出される不活性ガスの流量を調整するための第2の流量調整バルブ241とが介装されている。気体バルブ240が開かれると、気体配管239から気体ノズル235に供給された不活性ガスが、吐出口から吐出される。また、気体バルブ240が閉じられると、気体配管239から気体ノズル235への不活性ガスの供給が停止される。不活性ガスは、窒素ガスに限らず、CDA(低湿度の清浄空気)であってもよい。
【0060】
図8は、基板処理装置201の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御ユニット3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ214、第1および第2のノズル移動ユニット31,238等の動作を制御する。さらに、制御ユニット3は、薬液バルブ25、水バルブ28、EGバルブ33、気体バルブ240、第1および第2の流量調整バルブ34,241等の開閉動作等を制御する。
【0061】
図9は、基板処理装置201による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図10A〜10Fは、混合液形成工程(
図9のS14)、液膜除去領域形成工程(
図9のS15)および液膜除去領域拡大工程(
図9のS16)の様子を説明するための図解的な断面図である。
図8〜
図10Fを参照しながら、基板処理装置201による基板処理について説明する。
【0062】
未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによって、処理チャンバ204内に搬入され、基板Wがその表面(処理対象面。この実施形態ではパターン形成面)を上方に向けた状態でスピンチャック205に受け渡され、スピンチャック205に基板Wが保持される(S11:基板搬入工程(基板保持工程))。基板Wの搬入に先立って、EGノズル29および気体ノズル235は、スピンチャック205の側方に設定されたホーム位置に退避させられている。
【0063】
搬送ロボットCRが処理ユニット202外に退避した後、制御ユニット3は、基板Wの回転を開始し、薬液工程(ステップS12)、リンス工程(ステップS13)および混合液形成工程(ステップS14)を順に実行する。薬液工程(S12)、リンス工程(S13)および混合液形成工程(S14)は、それぞれ、第1の実施形態に係る薬液工程(S2)、リンス工程(S3)および混合液形成工程(S4)と同等の工程であるので、それらの説明を省略する。
【0064】
混合液形成工程(S14)では、基板Wの上面に、混合液の液膜50が形成される(
図10Aおよび
図6C参照)。混合液形成工程(S14)の終了に先立って、制御ユニット3は、第2のノズル移動ユニット238を制御して、
図10Bに示すように、気体ノズル235をスピンチャック205の側方のホーム位置から、基板Wの上方に配置する。
混合液形成工程(S14)の開始から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、乾燥工程を実行する。乾燥工程では、液膜除去領域形成工程(S15)と、液膜除去領域拡大工程(S16)と、加速工程(S17)とがこの順で実行される。液膜除去領域形成工程(S15)は、混合液の液膜50の中央部に、混合液が除去された液膜除去領域55を形成する工程である。液膜除去領域拡大工程(S16)は、液膜除去領域55を基板Wの上面全域まで拡大させる工程である。
【0065】
液膜除去領域形成工程(S15)では、制御ユニット3は、気体バルブ240を開いて、気体ノズル235から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを吐出すると共に(気体吹き付け工程)、スピンモータ214を制御して基板Wを所定の穴開け速度(たとえば約50rpm)まで加速させる(高速回転工程)。基板Wの上面の混合液の液膜50の中央部に不活性ガスが吹き付けられることにより、混合液の液膜50の中央部にある水/EG混合液が、吹き付け圧力(ガス圧)によって当該基板Wの上面の中央部から吹き飛ばされて除去される。また、基板Wの回転速度が前記の穴開け速度(たとえば約50rpm)に達することにより、基板W上の混合液の液膜50に比較的強い遠心力が作用する。これらにより、
図10Cに示すように、基板Wの上面中央部に円形の液膜除去領域55が形成される。穴開け速度は、約50rpmとしたが、それ以上の回転速度であってもよい。液膜除去領域形成工程(S15)に次いで液膜除去領域拡大工程(S16)が実行される。
【0066】
液膜除去領域拡大工程(S16)では、制御ユニット3は、スピンモータ214を制御して、基板Wの回転速度を、所定の第1の乾燥速度(たとえば1000rpm)まで上昇させる。この基板Wの回転速度の上昇に伴って、
図10D,10Eに示すように液膜除去領域55が拡大する。液膜除去領域55の拡大により、混合液の液膜50の、液膜除去領域55および基板W上面との気固液界面60が基板Wの径方向外方に向けて移動する。そして、
図10Fに示すように、液膜除去領域55が基板Wの全域に拡大させられることにより、混合液の液膜50が全て基板W外に排出される。
【0067】
液膜除去領域55が基板Wの上面の全域に拡大した後、液膜除去領域拡大工程が終了する。液膜除去領域拡大工程の終了に伴い、制御ユニット3は、気体バルブ240を閉じて、気体ノズル235からの不活性ガスの吐出を停止させる。
次いで、制御ユニット3は、加速工程(S17)を実行する。具体的には、制御ユニット3は、基板Wの回転速度を約1500rpmまで上昇させる。これにより、基板Wの上面への、より一層の乾燥が図られる。
【0068】
加速工程(S17)の開始から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、スピンモータ214を制御してスピンチャック205の回転を停止させる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット202に進入して、処理済みの基板Wを処理ユニット202外へと搬出する(ステップS18)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0069】
図11は、混合液の液膜50の内周部分を説明するための拡大断面図である。
液膜除去領域55の形成後において、気固液界面60では、沸点の低い水が主として蒸発させられ、その結果、EGの濃度が上昇する。このとき、混合液の液膜の内周部分70では、気固液界面60から離反するに従ってEGの濃度が低くなるような濃度勾配が形成される。この実施形態では、気固液界面60ではEGのみが存在するように、混合液の液膜50のEG濃度が定められている(すなわち、混合液形成工程(S14)におけるEGの供給量が定められている)。この場合、気固液界面60において、水をEGに完全置換できる。
【0070】
以上により、この実施形態によれば、基板Wの水の液膜45にEGが供給される。これにより、水とEGとが混ざり合い、基板Wの上面において、混合液の液膜50が形成される。
そして、その混合液の液膜50に液膜除去領域55が形成され、さらに、その液膜除去領域55が基板W全域を覆うまで拡大される。基板Wの上面では、混合液の液膜50の気固液界面60で水/EG混合液が蒸発しながら、液膜除去領域55が拡大する。気固液界面60では、沸点の低い水が主として蒸発させられ、その結果、EGの濃度が上昇する。このとき、気固液界面60ではEGのみが存在し、混合液の液膜の内周部分70では、気固液界面60から離反するに従ってEGの濃度が低くなるような濃度勾配が形成される。すなわち、気固液界面60において、水をEGに完全置換できる。パターンP間から液体が完全に除去されるときに、パターンPに、当該液体の表面張力が作用すると考えられている。気固液界面60においてEGに完全置換することにより、パターンPから液体が完全に除去されるときのパターンPに作用する表面張力を低く抑えることができるから、パターンPの倒壊を抑制できる。
【0071】
また、EGの供給により混合液の液膜50を形成し、この混合液の液膜50中に含まれる水を蒸発させてEGのみを残存させるので、水のEGへの置換速度を速めることができる。これにより、基板Wの上面上の水を、短時間でEGに完全置換できる。ゆえに、パターンPの倒壊を抑制しながら、基板Wの上面を短時間で乾燥できる。これにより、基板Wの乾燥時間の短縮化を図ることができ、かつEGの使用量の低減を図ることができる。
【0072】
また、高温の不活性ガスを基板Wの上面に供給することにより、混合液の液膜50の気固液界面60における水の蒸発を促進させることができる。これにより、混合液の液膜50の気固液界面60において、EGに完全置換させることができる。
また、基板Wの上面にパドル状の水の液膜45を形成し、その水の液膜45にEGを供給することにより、混合液の液膜50を基板Wの上面に形成するので、基板WからのEGの排出を抑制できる。これにより、EGの使用量の更なる低減を図ることができる。
【0073】
本発明は、バッチ式の基板処理装置に適用することもできる。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置301の概略構成を説明するための模式図である。
基板処理装置301は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の基板処理装置である。基板処理装置301は、薬液を貯留する薬液貯留槽302と、水を貯留する水貯留槽303と、EG混合液を貯留するEG貯留槽304と、EG貯留槽304に貯留されているEGに基板Wを浸漬させるリフタ305と、リフタ305を昇降させるためのリフタ昇降ユニット306とを含む。リフタ305は、複数枚の基板Wの各々を、鉛直な姿勢で支持する。リフタ昇降ユニット306は、リフタ305に保持されている基板WがEG貯留槽304内に位置する処理位置(
図12に実線で示す位置)と、リフタ305に保持されている基板WがEG貯留槽304の上方に位置する退避位置(
図12に二点鎖線で示す位置)との間でリフタ305を昇降させる。
【0074】
EG貯留槽304には、貯留されているEG中に浸漬され、当該EGを加熱して温度調節するヒータ307が設けられている。ヒータ307として、シースヒータを例示できる。また、EG貯留槽304には、EGの液温を計測する温度計(図示しない)や、EG貯留槽304内の液量を監視する液量センサ(図示しない)等がさらに設けられている。EG貯留槽304に貯留されているEGの液温は、たとえば約150℃に温度調整されている。
【0075】
基板処理装置301における一連の処理では、基板処理装置301の処理ユニットに搬入された複数枚の基板Wは、薬液貯留槽302に貯留されている薬液に浸漬される。これにより、薬液処理(洗浄処理やエッチング処理)が各基板Wに施される。薬液への浸漬開始から予め定める期間が経過すると、複数枚の基板Wは薬液貯留槽302から引き上げられ、水貯留槽303へと移される。次いで、複数枚の基板Wは、水貯留槽303に貯留されている水に浸漬される。これにより、リンス処理が基板Wに施される。水への浸漬開始から予め定める期間が経過すると、基板Wは水貯留槽303から引き上げられ、EG貯留槽304へと移される。
【0076】
そして、リフタ昇降ユニット306が制御されて、リフタ305が退避位置から処理位置に移動させられることにより、リフタ305に保持されている複数枚の基板WがEGに浸漬される。この浸漬により、基板Wの表面(処理対象面。この実施形態ではパターン形成面)に残留している水にEGが供給される。これにより、水とEGとが混ざり合い、基板Wの上面に水/EG混合液が供給される。
【0077】
EG貯留槽304に貯留されているEGが約150℃に温度調整されているので、基板Wの上面の水/EG混合液が加熱される(混合液加熱工程)。その結果、基板Wの上面に供給されている水/EG混合液に含まれる水が沸騰し、水/EG混合液から水が蒸発する。基板Wの表面の液体がEGのみを含むようになる。これにより、基板Wの表面の水をEGに完全置換できる。ゆえに、EGからの基板Wの引上げ時における基板Wの表面のパターン倒れを抑制できる。
【0078】
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
また、第1の実施形態において、ホットプレート9を昇降により、基板Wの加熱/非加熱を切り換える構成を例に挙げて説明したが、ホットプレート9に内蔵されているヒータ18のオンオフによって基板Wの加熱/非加熱を切り換える構成が採用されていてもよい。
【0079】
また、第1の実施形態において、混合液の液膜50を基板Wを介して下方から加熱する構成を説明したが、この構成に代えて、基板Wの上方から混合液の液膜50をヒータによって加熱する構成が採用されていてもよい。この場合、ヒータが基板Wよりも小径を有する場合には、ヒータが基板Wの上面に沿って移動しながら混合液の液膜50を照射することが望ましい。また、ヒータが基板Wと同等かそれ以上の径を有する場合には、ヒータが基板W上に対向配置された状態で混合液の液膜50を照射する構成であってもよい。
【0080】
第1および第3の実施形態において、混合液の液膜50に対する加熱温度、およびEG貯留槽304に貯留されているEGの液温を、それぞれ約150℃に設定したが、これらの温度は、水の沸点よりも高くかつEGの沸点よりも低い範囲で、所定の高温に設定することが可能である。
また、第1および第2の実施形態において、基板Wの上面にパドル状の水の液膜45を形成し、その水の液膜45にEGを供給することにより、混合液の液膜50を基板Wの上面に形成した。しかしながら、パドル速度よりも高速(たとえば液処理速度)で回転している基板Wの上面にEGを供給することにより、混合液の液膜50を形成するようにしてもよい。
【0081】
また、基板Wの上面に形成した水の液膜45にEGを供給することにより、混合液の液膜50を基板Wの上面に形成したが、水の液膜が基板Wの上面に形成されていない状態(基板Wの上面に水の液滴が存在している状態や、基板の表面に液膜や液滴は存在していないが基板の表面のパターンP内に水が進入している状態)の基板Wの上面にEGを供給して、混合液の液膜50を形成するようにしてもよい。
【0082】
また、第2の実施形態において、基板W上面にパドル状の混合液の液膜50を形成し、このパドル状の混合液の液膜50に液膜除去領域55を設ける構成について説明したが、混合液の液膜50はパドル状に限られず、パドル速度よりも高速で回転されている水の液膜に液膜除去領域55を設けるようにしてもよい。
また、第2の実施形態において、基板Wの上面に供給する気体として、不活性ガスを用いる場合を例に挙げて説明したが、気体として、水より低い表面張力を有する有機溶剤(たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)やHFE(ハイドロフルオロエーテル))の蒸気を採用することもできる。
【0083】
また、第2の実施形態において、基板Wの上面に供給する気体として、不活性ガスと有機溶剤の蒸気との混合気体を採用することもできる。
また、第2の実施形態において、基板Wの上面に供給する気体として、高温気体を用いるとして説明したが、常温気体を用いるようにしてもよい。
また、第2の実施形態において、基板Wの回転速度を上昇させ、かつ基板Wの上面に気体を供給することの双方により、混合液の液膜50に液膜除去領域55を形成した。しかしながら、基板Wの回転速度を上昇させることなく、基板Wの上面への気体の吹き付けのみにより液膜除去領域55を形成してもよいし、逆に、基板Wの回転速度を上昇させることのみによって液膜除去領域55を形成してもよい。
【0084】
さらに、第2の実施形態では、液膜除去領域拡大工程において、液膜除去領域55を基板Wの全域に拡げるために、基板Wの回転を第1の乾燥速度まで加速させるようにしたが、基板Wの回転の加速に代えて、または基板Wの回転の加速に併せて、基板Wの上面への気体の吹き付け流量を増大させることにより、液膜除去領域55を拡げるようにしてもよい。
【0085】
また、気体ユニット237が、スピンチャック205に保持された基板Wの上面(表面)に対向する対向部材を、気体ノズルと一体移動可能に含む構成であってもよい。この対向部材は、気体ノズル235の吐出口を基板Wの上面に接近させた状態で、基板Wの表面に近接対向する対向面を有していてもよい。この場合、下向きの吐出口を有する気体ノズル235に、横向きの環状の吐出口が別途設けられていてもよい。
【0086】
また、基板Wの上面に気体を供給しない場合には、気体ユニット237を廃止することもできる。
また、第2の実施形態の乾燥工程において、加速工程(S16)を省略してもよい。
また、前述の各実施形態では、処理液と、当該処理液よりも沸点が高くかつ当該処理液よりも低い表面張力を有する低表面張力液体との組合せとして、水とEGとの組合せを例示したが、その他の組合せとして、IPAとHFEとの組合せや、水とPGMEA(propyleneglycol monomethyl ether acetate)との組合せを例示することもできる。
【0087】
また、前述の各実施形態では、基板処理装置1,201,301が円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1,201,301が、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。