特許第6642869号(P6642869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642869
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20200130BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   E01C11/02 A
   E01D19/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-202955(P2015-202955)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2017-75476(P2017-75476A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(74)【代理人】
【識別番号】100148079
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 裕明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】辻本 博文
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−163104(JP,A)
【文献】 特開2004−100150(JP,A)
【文献】 実開昭62−114904(JP,U)
【文献】 実開平02−116505(JP,U)
【文献】 実開平02−078611(JP,U)
【文献】 特許第5606646(JP,B1)
【文献】 実開昭55−154705(JP,U)
【文献】 特開2002−188106(JP,A)
【文献】 特開昭60−238502(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0064602(US,A1)
【文献】 米国特許第05067297(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の桁端部に設けられる伸縮装置において、
一対の継手と、
前記継手間を塞ぐように配置されるシール層と
を備え、
一対の前記継手は、相手側へ向かって櫛歯状に突出した凹凸が形成された表面部を有し、
前記シール層の変形を防止する支持部が、保持部を介して前記表面部に固定されていることを特徴とする伸縮装置。
【請求項2】
前記表面部と前記支持部の間に、防塵層が形成されていることを特徴とする請求項記載の伸縮装置。
【請求項3】
前記支持部は、先端同士が、厚さ方向に重なるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の伸縮装置。
【請求項4】
前記支持部の先端同士は、厚さ方向に間隔が設けられていることを特徴とする請求項記載の伸縮装置。
【請求項5】
橋梁の桁端部に設けられる伸縮装置において、
一対の継手と、
前記継手間を塞ぐように配置されるシール層と
を備え、
一対の前記継手は、相手側へ向かって櫛歯状に突出した凹凸が形成された表面部を有し、
前記シール層の変形を防止する支持部が、前記表面部に固定され、
前記支持部は、一端が平坦であると共に他端に櫛歯状に突出した凹凸が繰り返し形成された板部材であり、
前記一端が相手側へ向かって配置され、前記他端に形成された凹凸を前記表面部に形成された凸凹にそれぞれ合わせて固定されている
ことを特徴とする伸縮装置。
【請求項6】
一対の前記継手の凹の一部が前記支持部の凸で塞がれていることを特徴とする請求項5記載の伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮装置に関し、特に橋桁の桁端部に設けられる伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮装置は、橋梁の種々の変位、主に環境における温度変化によって生じる橋桁の長さの変位を吸収するため、桁端部に設けられる。この伸縮装置は、桁端部間の平坦性を保つと共に、雨水などの浸透を防止する機能が求められている。
【0003】
このような伸縮装置として、一対の継手と、継手間に設けられたシール層とを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1)。上記特許文献1では、シール層を覆うように押え板を設けることにより、シール層が道路橋上に飛び出すことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−100150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に係る伸縮装置は、寒冷地で使用され、橋桁の長さが収縮した場合、桁端部間の遊間が広がるので、降雪や土砂等が継手間に入り込み、さらに通過する車両によって押え板及びシール層が変形し、シール性が低下してしまう、という懸念があった。
【0006】
本発明は、シール層の変形を防止することができる伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る伸縮装置は、橋梁の桁端部に設けられる伸縮装置において、一対の継手と、前記継手間を塞ぐように配置されるシール層とを備え、一対の前記継手は、相手側へ向かって櫛歯状に突出した凹凸が形成された表面部を有し、前記シール層の変形を防止する支持部が、前記表面部に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、隙間が広がった状態で雪が積り、通過する車両によって隙間に雪が押し込まれた場合、伸縮装置は、支持部が表面部に固定されていることにより、支持部の先端に作用する力によって生じるモーメントを低減することができるので、圧雪によってシール層が変形するのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る伸縮装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る伸縮装置の縦断面図である。
図3】本実施形態に係る支持部の平面図である。
図4】本実施形態に係る伸縮装置の平面図である。
図5】本実施形態の変形例(1)に係る伸縮装置の縦断面図である。
図6】本実施形態の変形例(1)に係る伸縮装置の平面図である。
図7】本実施形態の変形例(2)に係る伸縮装置の縦断面図である。
図8】本実施形態の変形例(3)に係る伸縮装置の縦断面図である。
図9】本実施形態の変形例(4)に係る伸縮装置の縦断面図である。
図10】本実施形態の変形例(5)に係る伸縮装置の縦断面図である。
図11】本実施形態の変形例(5)に係る支持部の平面図である。
図12】本実施形態の変形例(5)に係る伸縮装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1に示す伸縮装置10Aは、鋼製であって、橋桁の幅と同じ長さを有する一対の継手12と、継手12の長手方向にそれぞれ複数設けられたアンカー部材13とを備える。
【0011】
継手12は、逆L字型の部材からなり、橋桁表面側に配置される表面部14と、表面部14と一体に形成された腹板部16とを有する。表面部14は、橋桁の幅方向(図中Y方向)長さと同じ長さを有する略矩形状の板部材からなり、長手方向の一側面(以下、「先端」という)が相手側の表面部14の先端と対向するように配置されている。
【0012】
表面部14の先端は、相手側へ向かって櫛歯状に突出した凹凸が繰り返し形成されている。表面部14の先端間には、隙間18が形成されている。表面部14の先端間に形成された隙間18は、表面部14の凹凸を組み合わせて形成されている。すなわち一方の継手12の表面部14に形成された凹が、他方の継手12の表面部14に形成された凸と対となっており、一方の継手12の表面部14に形成された凸が、他方の継手12の表面部14に形成された凹と対になっている。このように表面部14に形成された凹凸を組み合わせることによって、表面部14の先端間の隙間18はジグザグ状に形成されている。
【0013】
腹板部16は、表面部14の基端に一体形成されており、表面部14に対し直角に設けられた板部材からなる。腹板部16の外側表面には、アンカー部材13が設けられている。アンカー部材13は、略矩形状の板部材からなり、腹板部16の表面から橋軸方向(図中X方向)に平行に突出するように設けられている。アンカー部材13は、設置後において、除雪グレーダのブレードを上方へ逃がすように誘導することにより、ブレードによって継手12が損傷しないように保護する。
【0014】
一対の継手12間には、図2に示すように、防塵層22と、支持部21Aと、シール層24と、バックアップ層25が表面部14の直下であって、上から順に配置されている。防塵層22は、EPDMフォームなど弾性を有する発泡体からなる。発泡体としては、連続気泡で構成されているだけでなく、独立気泡と連続気泡が混在していてもよい。
【0015】
支持部21Aは、継手12の長手方向長さと同じ長さを有する矩形の板部材であって、一対の継手12にそれぞれ設けられており、シール層24の変形を防止する。支持部21Aは、保持部23としての例えば六角ナットを介して表面部の下面に、図示しないが皿ボルト又は丸頭ボルトで固定されている。皿ボルト又は丸頭ボルトを用いることにより、シール層24の傷つきを防止することができる。
【0016】
シール層24は、桁端部27へ雨水などが浸透するのを防止すると共に、隙間18の拡大及び収縮に追従して伸縮し得るように形成されている。シール層24は、弾性ゴム、伸縮フォーム等で形成することができる。
【0017】
図3に示すように、支持部21Aは、一方の長手方向側面(以下、「基端」という)が腹板部に突き当たっており、他方の長手方向側面(以下、「先端」という)間に直線状の隙間28が形成されている。この支持部21Aによって形成された隙間28は、表面部14の先端間に形成されたジグザグ状の隙間18の略中央に配置される(図4)。
【0018】
バックアップ層25は、シール層24よりも軟質の部材で構成され、例えばウレタンフォームで形成することができる。バックアップ層25は、下面において、腹板部16に固定された受プレート26によって支持されている。
【0019】
上記のように構成された伸縮装置10Aは、その長手方向を橋桁の幅方向に合わせ、橋桁の桁端部27に固定される。気温が低下し、橋桁が橋軸方向において収縮した場合、桁端部27間の遊間t(図2)が広がる。これにより桁端部27に固定された伸縮装置10Aは、隙間18(28)が広がる。桁端部27間の遊間tが広がるとき、継手12間に配置された防塵層22及びシール層24は、桁端部27間の拡大に追従して伸長する。したがって隙間18に入り込んだ雨水や埃などが桁端部27に入り込むことを防止することができる。
【0020】
さらに、隙間18が広がった状態で雪が積り、通過する車両によって隙間18に雪が押し込まれた場合、伸縮装置10Aは、シール層24の上側に配置された支持部21Aが当該雪による荷重を受けることにより、圧雪によってシール層24が変形するのを防ぐことができる。
【0021】
本実施形態の場合、支持部21Aは表面部14の下面に保持部23を介して固定されていることにより、支持部21Aの先端に作用する力によって生じるモーメントを低減することができる。従来、支持部21Aは、基端において腹板部16に固定されていたため、基端を原点とした場合、先端に作用する力によって生じるモーメントは大きくなる。これに対し本実施形態の場合、支持部21Aを表面部14に固定し、原点(この場合、保持部23の位置)と、支持部21Aの先端までの距離を短くした。これにより伸縮装置10Aは、支持部21Aに生じるモーメントを低減することができるので、より確実にシール層24の変形を防止することができる。
【0022】
また、支持部21Aによって形成された直線状の隙間28が、表面部14の先端間に形成されたジグザグ状の隙間18の略中央に配置されることにより、表面部14の隙間18と支持部21Aの隙間28の重なりを小さくすることができるので、伸縮装置10Aは、シール層24の変形をより確実に防止することができる。
【0023】
気温が上昇し、橋桁が橋軸方向において伸長した場合、桁端部27間の遊間tが狭くなる。これにより桁端部27に固定された伸縮装置10Aは、隙間18(28)が狭くなる。桁端部27間の遊間tが狭くなるとき、継手12間に配置された防塵層22及びシール層24は、桁端部27間の収縮に追従して収縮する。シール層24は、収縮すると、下側に配置されたバックアップ層25がシール層よりも軟質の部材で構成されていることにより、下側に変形する。すなわちシール層24の下側に設けられたバックアップ層25が、シール層24の下側への変形を吸収する。これにより伸縮装置10Aは、シール層24が継手12の表面部14の隙間18から橋桁表面へ飛び出すことはない。
【0024】
支持部21Aは、防塵層22の下側に配置されているので、表面部16の先端間に形成された隙間18から視認されることはない。したがって、伸縮装置10Aは、支持部21Aが外部から視認されないので、外観上の美観を向上することができる。
【0025】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態の場合、支持部21Aは、先端間に隙間18が形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。
【0026】
図5に示す変形例(1)に係る伸縮装置10Bは、支持部21Bの構成が、上記実施形態と異なる。支持部21Bは、先端部分が厚さ方向に重なるように形成されている。この場合、一方の支持部21Bを保持する保持部23と、他方の支持部21Bを保持する保持部23の長さを適宜変えることにより、支持部21Bの先端部分を厚さ方向に重なるように保持することができる。このような支持部21Bを備える伸縮装置10Bは、表面部14の先端間に形成された隙間18に対し、シール層25を支持部21Bで完全に覆うことができる(図6)。本変形例に係る伸縮装置10Bは、支持部21Bが表面部14に保持部23を介して固定されていることにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
支持部21Bの先端部分が重なる長さは、適宜設定することができるが、桁端部27間の遊間tが最大に広がった際にも重なりを保つように設定されるのが好ましい。このようにすることで、シール層24を支持部21Bで常に覆うことができるので、遊間tが最大になるとき、すなわち降雪による圧雪が生じるときにもシール層24の変形をより確実に防止することができる。
【0028】
また図7に示す変形例(2)に係る伸縮装置10Cのように、支持部21Cは、保持部23にそれぞれ固定された第1支持部30と、一方の第1支持部30の先端部分に固定された第2支持部31とで構成することとしてもよい。第2支持部31は、基端において一方の第1支持部30に溶接などにより固定されており、先端において他方の第1支持部30の先端部分と厚さ方向に重なるように設けられている。この場合、上記変形例(1)と異なり、第1支持部30と表面部14の間に設けられる保持部23の共通化を図ることができる。第2支持部31は、先端において他方の第1支持部30の先端部分と厚さ方向に重なるように設けられていることにより、上記変形例(1)と同様の効果を得ることができる。
【0029】
図8に示す変形例(3)に係る伸縮装置10Dは、支持部21Dの構成のみが変形例(2)と異なる。本変形例に係る支持部21Dは、保持部23にそれぞれ固定された第1支持部30と、一方の第1支持部30の先端部分に間隔保持部32を介して固定された第2支持部31とで構成されている。一方の第1支持部30と間隔保持部32、間隔保持部32と第2支持部31は、それぞれ溶接により固定することができる。このように間隔保持部32を介して第2支持部31を固定することにより、第2支持部31と他方の第1支持部30の先端部分との間に、厚さ方向に間隔が設けられている。これにより伸縮装置10Dは、橋軸方向に傾斜した状態で設置されている場合、橋桁が橋軸方向に伸縮することにより桁端部27が回転方向に移動しても、第1支持部30と第2支持部31が干渉することを防止することができる。
【0030】
間隔保持部32は、図9に示す変形例(4)に係る伸縮装置10Eのように、六角ナット33を用いてもよい。一方の第1支持部30と六角ナット33は溶接、六角ナット33と第2支持部31は図示しない皿ネジ又は丸頭ボルトにより固定することができる。支持部21Eは、第2支持部31と他方の第1支持部30の先端部分との間に、厚さ方向に間隔が設けられている。これにより、伸縮装置10Eは、上記変形例(3)と同様の効果を得ることができる。
【0031】
また上記実施形態の場合、支持部21Aは、保持部23を介して表面部14に固定されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。図10に示す変形例(5)に係る伸縮装置10Fは、支持部21Fが、表面部14の下面に直接固定されている。支持部21Fを表面部14に直接固定する手段は、特に限定されないが、例えば、溶接により固定することとしてもよいし、表面部14にタップ穴を形成し皿ボルト又は丸頭ボルトにより固定することとしてもよい。支持部21Fは、図11に示すように、継手12の長手方向長さと同じ長さを有する板部材であって、先端が平坦であると共に、基端に櫛歯状に突出した凹凸が繰り返し形成されている。支持部21Fは、基端に形成された凹凸を、表面部14に形成された凸凹にそれぞれ合わせて固定されている(図12)。これにより、伸縮装置10Fは、表面部14の先端間に形成された隙間18のうち、中央部分を残して支持部21Fによってシール層24が覆われる。本変形例に係る伸縮装置10Fは、支持部21Fが表面部14に固定されていることにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また伸縮装置10Fは、支持部21Fを表面部14に直接固定することとしたことにより、保持部23を省略することができるので、その分、上記実施形態に比べ部品点数を低減することができる。
【0032】
上記実施形態の場合、支持部21Aは、先端が平坦である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、先端に櫛歯状に突出した凹凸を形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10A,10B,10C,10D,10E,10F 伸縮装置
12 継手
14 表面部
18 隙間
21A,21B,21C,21D,21E,21F 支持部
22 防塵層
24 シール層
27 桁端部
28 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12