【課題を解決するための手段】
【0009】
目的は、最初に特定されたような、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイスによって満たされ、このデバイスを用いて、内部空間内で互いに面する電極のエッジが丸められる。電圧が電極に印加される場合、アークのリスクは、鋭い輪郭変化(エッジ)の領域において、又は電界の不均一性が活性セグメントの電極表面に非常に近接して生じるときに、大幅に増大する。驚くべきことに、近傍の電極に面する電極のエッジを丸めることにより、結果として、そのような電界勾配が大幅に低減し、このため、さらにはアークのリスクが大幅に低減する。本発明によれば、チャンバの内部空間内、及び特に電極セグメント間の間隙の領域内の電極表面の近くにおける電界の均一化が、内部空間のルーメンに面する第1の電極表面から、第1の電極表面に対し直交する第2の電極表面への平滑な形状遷移を与えることによって達成され、この平滑な形状遷移によって第2の電極表面は電極間隙に面する。特に、平滑な形状遷移は、湾曲した電極表面、すなわち、より大きなフィレット半径からより小さなフィレット半径まで(例えば、幾つかの接線方向に連結した円セグメント又はスプライン)によって与えられる。
【0010】
さらに、電界勾配の低減及び電界の均一化の結果として、内部空間内の電界の散乱も減少する。したがって、チャンバの内部空間内の互いに面する電極の丸められたエッジは、高い電界密度が回避されるという驚くべき効果を有する。
【0011】
本発明の例示的な実施形態によれば、電極の丸められたエッジのフィレット半径は最大にされる。驚くべきことに、丸められたエッジのフィレット半径を最大にすることによって、電界の不均一性を低減することにより、結果としてアークの尤度が大幅に減少することがわかった。すなわち、丸められたエッジの半径が大きいほど、アークのリスクが低くなる。
【0012】
本発明の別の例示的な実施形態では、間隙の幅及び/又は2つの近傍の電極間の距離は最小にされる。細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞は間隙の周りの内部空間内で十分に処理されないので、間隙(すなわち、2つの近隣の電極間の距離)は可能な限り小さくするべきである。したがって、間隙の幅が小さくなると、処理の効率が高くなる。
【0013】
例えば、本発明によるデバイスの設計は、フィレット半径と間隙の幅との最適な比を求めることによって最適化することができる。すなわち、電極の丸められたエッジのフィレット半径は最大にされなくてはならない一方、間隙の幅は最小にされなくてはならない。理想的な設計により、アークの非常に低いリスク及び非常に高い処理効率が確保される。
【0014】
多くの用途に適した例示的な実施形態では、電極のうちの少なくとも1つの電極の丸められたエッジのフィレット半径は約0.3mm〜2.0mmの範囲内にある。例えば、半径は、約0.3〜1.8、0.3〜1.6、0.3〜1.4、0.3〜1.2、0.3〜1.0、0.5〜2.0、0.7〜2.0、0.9〜2.0、1.0〜2.0、0.4〜1.9、0.5〜1.8、0.6〜1.7、0.7〜1.6、0.8〜1.5、0.9〜1.4、又は1.0〜1.2の範囲内にすることができる。
【0015】
同様に多くの用途に適した同じ又は別の例示的な実施形態において、間隙の幅及び/又は2つの近傍の電極間の距離は約0.5〜2.0mmの範囲内にある。例えば、幅は、0.5〜1.8、0.5〜1.6、0.5〜1.4、0.5〜1.2、0.5〜1.0、0.6〜2.0、0.7〜2.0、0.9〜2.0、1.0〜2.0、0.6〜1.9、0.7〜1.8、0.8〜1.7、0.9〜1.6、1.0〜1.5、1.1〜1.4、又は1.1〜1.3の範囲内にすることができる。
【0016】
本発明の別の例示的な実施形態では、内部空間に面する絶縁材料の表面は、少なくとも1つの電極の表面を適切な角度で留め継ぎする。絶縁材料の表面を、電極の表面に対して垂直に配置されるように設計することによって、電界の等電位線は、電極の表面に直交し、偏向されない。結果として、チャンバ内で電界の残りの不均一性を回避するか、又は少なくとも、絶縁材料の領域に動かすか若しくは活性セグメントの電極表面から離れるように動かし、アークの尤度がさらに低減されるようにすることができる。さらに、活性電極の近くの最大電界密度が減少する。
【0017】
同じ又は別の例示的な実施形態において、本発明によるデバイスの設計は、チャンバの内部空間のルーメンに面する電極表面の半径を最大にするために電極の曲率半径を変動させ、同時に間隙の幅を最小にすることによって最適化することができる。すなわち、例示的な実施形態では、内部空間のルーメンに面する電極表面の半径は、間隙の絶縁材料に面する電極表面の半径よりも大きくすることができる。
【0018】
特に、例示的な実施形態では、内部空間のルーメンに面する電極表面の半径は、約1.0mm〜2.0mmの範囲内にあり、間隙の絶縁材料に面する電極表面の半径は、0.3mm〜2.0mmの範囲内にある。この実施形態のさらなる態様として、内部空間に面する絶縁材料の表面は、厳密に電極表面曲率の半径変化の位置で、又はこの位置の近傍で、少なくとも1つの電極の表面を適切な角度で留め継ぎする。
【0019】
2つの近傍の電極間の間隙内の絶縁材料は、例えば、ポリカーボネートを含むか又はポリカーボネートからなることができる。
【0020】
本発明の別の例示的な実施形態では、電極のうちの少なくとも1つは他の電極よりも大きい。例えば、より大きな電極は、より小さな電極の反対側に配置される対電極又は接地電極とすることができる。この実施形態では、より小さな電極は、高電圧に設定された活性電極又は接地電位に設定された電極のいずれかとすることができる。
【0021】
多くの用途に適した例示的な実施形態では、少なくとも1つの電極は、5mm〜20mmの幅を有し、少なくとも1つの電極は20mm〜80mmの範囲の幅を有する。
【0022】
本発明の別の例示的な実施形態では、間隙は、少なくとも1つの電極の一部が上記間隙の反対側に配設されるように配置される。この有利な配置では、各間隙は、別の間隙の反対側に配置されるのではなく、代わりに電極の反対側に配置されるので、効率的な処理に十分な電界に曝されないチャンバの内部空間内の領域は最小にされるか又はさらには除去される。結果として、この手段によって全体的な処理効率が効果的に増大する。
【0023】
本発明のさらに別の例示的な実施形態では、各セグメントには少なくとも1つの第1の電極及び少なくとも1つの第2の電極が設けられ、第2の電極は、少なくとも2つのセグメントの共通電極である。そのような構成は、本発明によるデバイスの構築及び組み立てを容易にし、複雑な配線をさらに回避する。
【0024】
例えば、本発明によるデバイスのチャンバは、互いに取り付けることができる対応する構成要素を備えることができる。すなわち、本発明によるデバイスは、例えば、2つの構成要素を互いに取り付けることによって組み立てることができ、各構成要素は、他の構成要素の凹部に対応する凹部を備える。これらの2つの構成要素が互いに取り付けられている場合、これらの構成要素の位置合わせされた凹部がチャンバの内部空間を形成する。内部空間内で電界を生成することができるように、各凹部に少なくとも1つの電極を設けることができる。電極のうちの少なくとも幾つかを分割することができる。例えば、(対称軸の一方の側にある)電極の半分を分割することができる一方、(対称軸の他方の側にある)電極の他方の半分は、対電極として用いることができる単一の非分割電極とすることができる。有利な実施形態では、2つの構成要素は同一であり、それによってコスト効率の良い生成が確保される。同一の構成要素は回転対称であるので、構成要素を互いに取り付けることによる容易な組み立てが確保される。
【0025】
本発明の例示的な実施形態では、少なくとも1つのセグメントは、約10μl〜500μl又は20μl〜400μl又は30μl〜300μl又は50μl〜200μlの範囲内の容量を有する。
【0026】
同じ又は別の例示的な実施形態では、チャンバの内部空間のルーメンは、少なくとも500μl又は少なくとも800μl又は少なくとも1mlの容量を有する。
【0027】
本発明はさらに、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイス、例えば、実施形態で説明したような本発明によるデバイスを生成するための方法であって、懸濁液を保持するための少なくとも1つの内部空間を備える少なくとも1つのチャンバが設けられ、内部空間は少なくとも2つのセグメントを備え、各セグメントは少なくとも1つの電極を備え、近傍の電極を互いに分離する少なくとも1つの間隙内に、絶縁材料が少なくとも部分的に満たされ、内部空間内で互いに面する電極のエッジは、これらのエッジが丸められるように機械加工される、方法に関する。この有利な設計により、電圧が電極に印加される場合のアークのリスクが大幅に低減される。
【0028】
この方法の例示的な実施形態によれば、電極の丸められたエッジのフィレット半径が最大にされる。本発明の別の例示的な実施形態では、間隙の幅及び/又は2つの近傍の電極間の距離が最小にされる。例えば、本発明によるデバイスの設計は、フィレット半径と間隙幅との最適な比を求めることによって最適化することができる。すなわち、電極の丸められたエッジのフィレット半径は最大にされる一方、間隙の幅は最小にされなくてはならない。最適な設計は、アークの非常に低いリスク及び非常に高い処理効率を確保する。
【0029】
本方法の別の例示的な実施形態では、内部空間に面する絶縁材料の表面は、少なくとも1つの電極の表面を適切な角度で留め継ぎするように形成される。絶縁材料の表面を、電極の表面に対し垂直に配置されるように形成することによって、電界の等電位線は、電極の表面に直交し、偏向されない。結果として、チャンバ内で電界の残りの不均一性を回避するか、又は少なくとも、絶縁材料の領域に、及び/若しくは活性セグメントの電極面から離れるように動かし、アークの尤度がさらに低減されるようにすることができる。さらに、活性電極の近くの最大電界密度が減少する。
【0030】
本発明のさらに別の例示的な実施形態では、デバイス内に統合された電極のうちの少なくとも1つは、他の電極よりも大きい。例えば、より大きな電極は、より小さな電極の反対側に配置される対電極又は接地電極として用いることができる。そのような実施形態では、より小さな電極は、高電圧に設定された活性電極又は接地電位に設定された電極のいずれかとすることができる。この実施形態では、各セグメントには少なくとも1つの第1の電極及び少なくとも1つの第2の電極が設けられ、第2の電極は、少なくとも2つのセグメントの共通電極である。そのような構成は、本発明によるデバイスの構築及び組み立てを容易にし、デバイスの製造中の複雑な配線をさらに回避する。
【0031】
本発明のさらに別の例示的な実施形態では、間隙は、少なくとも1つの電極の一部が上記間隙の反対側に配設されるように配置される。この有利な配置では、各間隙は、別の間隙の反対側に配置されるのではなく、代わりに電極の反対側に配置されるので、効率的な処理に十分な電界に曝されないチャンバの内部空間内の領域は最小にされるか又はさらには除去される。結果として、全体的な処理効率はこの基準によって効率的に増大される。
【0032】
目的は、最初に特定されたような、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するための方法であって、電圧が少なくとも1つの活性電極に印加される一方で、活性電極の隣及び/又は反対側にある電極又は電極セグメントは接地電位に設定される、方法によってさらに満たされる。活性電極を取り囲む近傍の電極を接地電位に設定することにより、結果として、内部空間内の電界の散乱が減少し、それによって電気的に活性の領域が局所的に制限され、電界線が、活性電極の付近で収束され、このため、特に、分割されたチャンバ内で多くの量が処理される場合に、プロセスの制御が向上する。
【0033】
本発明の例示的な及び有利な実施形態では、電圧は、1つのみの活性電極に印加される一方、内部空間内の全ての他の電極又は電極セグメントは接地電位に設定される。活性電極を除くチャンバの内部空間内の全ての電極を接地電位に設定することによって、電界線が活性電極の近くの内部空間内に、このためチャンバの活性セグメント内にのみ収束され、近傍の電極に向けて局所的にフェードアウトすることが確保される。
【0034】
本発明の別の例示的な実施形態では、内部空間内の少なくとも2つの電極又は電極セグメントに電圧が順番に印加される。チャンバの内部空間の各セグメントを個々に電気的にアドレス指定し、チャンバ内の電界の制御された生成を厳密に達成することができるようにすることが本発明の利点である。例えば、アーク及び/又は懸濁液の望ましくない加熱を回避するために、電圧パルスは異なるセグメントに順番に印加することができる。このために、各セグメントには、個々にアドレス指定することができる少なくとも1つの電極が設けられ、電圧パルスをチャンバのセグメントに順番に印加することができるようにされる。
【0035】
例えば、チャンバの出口ポートに最も近いセグメントが、第1のセグメントとして処理され、続いて、近傍セグメントが処理され、このシーケンスの最終セグメント、すなわち、出口ポートから最も遠いセグメントが処理されるまで続く。すなわち、電圧は、まず、チャンバの出口ポートに最も近いセグメントに印加され、続いて、近傍セグメントに印加され、このシーケンスの最終セグメント、すなわち、出口ポートから最も遠い前記セグメントに電圧が印加されるまで続く。本発明のこの例示的な実施形態では、出口ポートに最も近いセグメントが、第1のセグメントとして処理され、続いて、近傍セグメントが処理され、このシーケンスの最終セグメント、すなわち、出口ポートから最も遠いセグメントが処理されるまで続く。この処理シーケンスは、細胞懸濁液に高い電圧を印加する間に発生する気泡が、未処理の試料を出口方向及び/又は出口外に推進せず、処理済みの試料のみを推進することを確実にする。
【0036】
本発明のさらに別の例示的な実施形態では、各セグメントには、少なくとも1つの第1の電極及び少なくとも1つの第2の電極が設けられ、電圧は、第1の電極に印加され、第2の電圧は、少なくとも2つのセグメントの共通電極である。したがって、デバイスの内部空間内の電極数は、処理の制御が容易になるように大幅に低減することができる。
【0037】
本明細書において用いられるとき、「丸められた」という用語は、平坦な領域から別の平坦な領域への形状遷移が接線方向である湾曲した均一な表面を指す。
【0038】
本明細書において用いられるとき、「活性電極」という用語は、電圧が印加されるが接地電位に設定されない電極を指す。例えば、「活性電極」は、高い電圧電位に設定された電極とすることができる。
【0039】
本明細書において用いられるとき、「電極セグメント」という用語は、分割電極、すなわち、複数の部分に分けられた電極の、別々の部分を指し、分割電極の別々の部分は、互いに電気的に結合されない。
【0040】
本明細書において用いられるとき、「セグメント」という用語は、少なくとも1つの電極又は電極セグメントを含むチャンバの内部空間の領域を指す。
【0041】
本明細書において用いられるとき、「活性セグメント」という用語は、少なくとも1つの活性電極を含むチャンバのセグメントを指す。
【0042】
本発明は、図面を参照して詳細にさらに例示的に説明される。