特許第6642892号(P6642892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6642892ジメチルアミノミケリオリドを含む肺線維化の治療薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642892
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ジメチルアミノミケリオリドを含む肺線維化の治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20200130BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   A61K31/343
   A61P11/00
   A61K9/20
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K9/48
   A61K9/70
   A61K9/14
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-510880(P2018-510880)
(86)(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公表番号】特表2019-503335(P2019-503335A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】CN2016072445
(87)【国際公開番号】WO2017128163
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】518060457
【氏名又は名称】天津尚徳薬縁科技股▲ぶん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518060446
【氏名又は名称】天津国際生物医薬聯合研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】孫 涛
(72)【発明者】
【氏名】陳 悦
(72)【発明者】
【氏名】楊 誠
(72)【発明者】
【氏名】周 紅剛
(72)【発明者】
【氏名】劉 慧娟
(72)【発明者】
【氏名】劉 艶栄
(72)【発明者】
【氏名】王 静
(72)【発明者】
【氏名】張 成玉
(72)【発明者】
【氏名】張 強
(72)【発明者】
【氏名】張 向明
(72)【発明者】
【氏名】秦 源
(72)【発明者】
【氏名】荊 学双
【審査官】 金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104876899(CN,A)
【文献】 特表2013−542999(JP,A)
【文献】 特表2004−527224(JP,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02921757(CA,A1)
【文献】 PLOS One,2015年,10(2),e0116202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/343
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/14
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 9/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルアミノミケリオリド、前記ジメチルアミノミケリオリドの薬学的に許容可能な塩、前記ジメチルアミノミケリオリドの薬学的に許容可能な水和物又はそれらの組み合わせを含み
前記ジメチルアミノミケリオリドの分子構造式が、次のとおりである肺線維化の治療薬
【化1】
【請求項2】
生体の肺線維化レベルを反転して抑制し、肺細胞外マトリックスの過剰な蓄積を抑制し、肺の血液供給を改善するための薬物であることを特徴とする請求項1に記載の肺線維化の治療薬
【請求項3】
前記肺線維化の治療薬は、添剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の肺線維化の治療薬
【請求項4】
前記肺線維化の治療薬の剤型は、錠剤、カプセル剤、丸剤、座薬、エアロゾル、経口液剤、顆粒剤、散剤、注射剤、シロップ剤、薬酒、チンキ剤、ドロップ剤、フィルム剤又はそれらの組み合わせから選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の肺線維化の治療薬
【請求項5】
前記肺線維化の治療薬は、経口投与、注射投与、移植、外用、噴霧投与、吸入投与又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項4に記載の肺線維化の治療薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物化学分野に関し、具体的には、ジメチルアミノミケリオリドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルアミノミケリオリドは、ミケリオリドの誘導体であって、天然抽出物であるパルテノライドを原料として製造されるものであり、本明細書ではACT001と略称する。パルテノライドは草本植物であるヨモギギクから精製されたセスキテルペンラクトン化合物であり、抗炎症、抗腫瘍、抗血小板凝集等の特徴を有する。現在、ACT001についての研究は、主に皮膚感染、片頭痛、リウマチや腫瘍等の疾患の治療に集中している。研究から明らかなように、ACT001及びパルテノライドは、抗炎症、抗腫瘍、抗血小板凝集、血管平滑筋細胞の増殖阻害、破骨細胞活性阻害等の特徴を有しており、腫瘍壊死因子(TNF−α)、インターロイキン−1(interleukin−1,IL−1)、IL−12及びエポキシダーゼ−2(COX−2)等の発現を抑制することにより、抗炎症作用を奏し、又、NF−κBの活性化及びリン酸化を抑制することにより癌細胞のアポトーシスを促進するとともにL−8、血管内皮成長因子(vascular endothelial groth factor、VEGF)の発生を抑制することで抗腫瘍作用を奏する。
【0003】
現在に至るまで、肺線維化に対してACT001を使用することについて、明確な報道はない。肺線維化に関するサイトカインとして、トランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor−β,TGF−β)、表皮成長因子(epidermal growth factor,EGF)、血小板由来成長因子(platelet derived growth factor,PDGF)、インスリン様成長因子(insulin−like growth factors,IGF−1)、インターロイキン(interleukin,IL)、結合組織成長因子(connective tissue growth factor,CTGF)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factorα,TNF−α)、マトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinases,MMPs)等がある。肺線維化は、肺胞中隔内での線維細胞が増殖して、ECM蓄積を引き起こすことが特徴であることから、線維芽細胞の成長を抑制することが抗繊維化薬を開発するための重要な過程である。
【0004】
肺線維化の臨床症状は呼吸困難であり、軽度の肺線維化の場合には、激しい運動時に呼吸困難が発生するのに対して、肺線維が進行すると、休憩時にも呼吸困難が発生し、重篤な肺線維化患者では進行性呼吸困難が発症する可能性があり、肺線維化の重大な結果として、正常な肺組織の構造を変えて、機能を喪失させる。又、大量の気体交換機能を備えない線維組織が肺胞に代わることで、肺の気体交換能力を低下させ、酸素ガスの血液への供給を遮断して、患者の呼吸故障、低酸素、アシドーシス、労働能力喪失を引き起こし、重症例では、最終的に死に至る可能性もある。肺線維化は、肺胞中隔内での線維細胞が増殖して、細胞外マトリックスが過剰に蓄積することを特徴とする。線維細胞は肺胞細胞の代わりに気体交換を行うことができず、肺での血液のうっ滞が原因で、有害な物質が肺においてタイムリーに代謝できず、更には肺胞細胞へ損傷を与え、悪循環となったり、或いは、細胞外マトリックスの過剰な蓄積が毛細血管を圧迫して、肺の血液循環が順調に行われず、肺での血液のうっ滞を引き起こし、更には肺での血液供給レベルを低下させ、呼吸困難になったりする等の問題を招く。
【0005】
肺線維化に起因する肺疾患は発症率が高く、肺線維化は持続的な肺損傷により発生するため、肺線維化は一度発症すると、治癒が困難であり、人間の健康に大きな被害をもたらす。現在、肺線維化を治療するための特効薬はない。臨床上、抗炎症薬及び/又は免疫抑制剤、抗線維症薬、抗凝固薬、肺移植等の手段で治療するのが一般的であり、通常の薬物として、グルココルチコステロイド、ニトロイミダゾールチオピリミジン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、及びコラーゲン形成に影響を与えるコルヒチンやペニシラミン等がある。特発性肺線維症の治療にはグルココルチコイド薬が50年以上使用されており、さまざまな臨床研究結果をまとめた結果、グルココルチコイド薬による特発性肺線維症患者への著効率が最高で16%以下であることを見出した。又、特発性肺線維症の治療にアザチオプリンが20余年使用されているが、その有効性について依然論争がある。その他の薬物の臨床有効性についても、程度が異なるが、論争がある。肺線維症は深刻な疾患で、死亡率が高く、臨床上の治療手段が少なく、そのため、その病因を詳細に理解した上で、新規な肺線維化治療薬を開発することが期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、肺線維化の治療薬の製造におけるジメチルアミノミケリオリドの使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、肺線維化の治療薬の製造におけるジメチルアミノミケリオリドの使用を提供し、前記ジメチルアミノミケリオリドの分子構造式は、次のとおりである。
【0008】
【化1】
【0009】
上記使用では、生体の肺線維化レベルを反転して抑制し、肺細胞外マトリックスの過剰な蓄積を抑制し、肺の血液供給を改善する薬物において、前記ジメチルアミノミケリオリドの使用を含む。
【0010】
上記使用では、肺線維化の治療薬は、ジメチルアミノミケリオリド、ジメチルアミノミケリオリドの薬学的に許容可能な塩、エステル、水和物又はそれらの組み合わせと、添加剤とを含む。
【0011】
上記使用では、肺線維化の治療薬の剤型は、錠剤、カプセル剤、丸剤、座薬、エアロゾル、経口液剤、顆粒剤、散剤、注射剤、シロップ剤、薬酒、チンキ剤、ドロップ剤、フィルム剤又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0012】
上記使用では、肺線維化の治療薬の投与方式は、経口投与、注射、移植、外用、噴霧投与、吸入投与又はそれらの組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る肺線維化の治療薬は以下の有益な効果を有する。すなわち、ジメチルアミノミケリオリド(ACT001)は生体の肺線維化レベルを反転して抑制し、肺細胞外マトリックスの過剰な蓄積を抑制し、肺の血液供給を改善し、肺の血液供給を増加することによって、呼吸困難を緩和させ、肺線維化に対して高い治療効果を有する。又、該薬物は、患者が受け入れやすいだけでなく、毒性や副作用が極めて小さく、安価で、由来が広範囲で入手しやすく、更には、患者の薬物に対する応答を把握しやすい。他方、ACT001は、従来の肺線維化の治療薬の市場構造を変えて、長期間服用が可能で、且つ肺線維化を効果的に抑制して、肺機能を改善する臨床用薬となっている。
【0014】
本発明に使用されるACT001はACT001フマル酸塩であり、白色粉末であって、天津尚徳薬縁科技股▲ふん▼有限公司により提供されたロット番号が20131112のものであり、ACT001フマル酸塩の化学構造式は、次のとおりである。
【0015】
【化2】
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】正常マウスの肺組織切片図である。
図2】マウス肺線維化をモデリングしてから三週後のマウスの肺組織切片の効果図である。
図3A】ACT001を投与してから二週後のマウスの肺組織外部形態の立体顕微鏡下での効果図である。
図3B】ACT001を投与してから二週後のマウスの肺組織切片の効果図である。
図4A】ACT001を投与してから三週後のマウスの肺組織外部形態の立体顕微鏡下での効果図である。
図4B】ACT001を投与してから三週後のマウスの組織切片の効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例の技術案を明瞭且つ完全に説明する。勿論、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて当業者が想到し得る全てのその他の実施例は本発明の保護範囲に属する。
【0018】
本発明に使用された試験材料及びその由来は以下を含む。
【0019】
(1)マウス
昆明マウス(雄性):中国人民解放軍軍事医学科学院の試験動物センターと、北京維通利華実験動物技術有限公司とにより提供された。
【0020】
動物が送られた後、専任者が動物を受け取って二重廊下バリア環境のマウス飼育室2内で飼育し、『試験動物受取記録表』(BG−017−V00)に記録し、受け取り時に動物の状況を観察して、動物をランダムに選択して体重を量り、試験動物が導入基準に合致することを確認した。実験動物の使用ライセンス番号はSYXK(津)2012−0003である。
【0021】
(2)被検体
ACT001フマル酸塩:白色粉末、天津尚徳薬縁科技股▲ふん▼有限公司から購入、ロット番号20131112。
【0022】
メチルビオロゲン水和物:白色結晶、北京百霊威科技有限公司から購入、生産メーカー:百霊威科技有限公司、ブランド名:J&K、純度:98%、製品番号:6045559、MDL:MFCD00150001、CAS番号:1910−42−5。
【0023】
被検体の保存:4℃
【0024】
(3)使用された薬物及び試薬の調製方法は以下を含む。
【0025】
a)ACT001溶液の調製:ACT001粉末1gを秤量して、0.9%生理食塩水溶液100mLに溶解し、10mg/mL溶液を調製し、十分に溶解した後、0.22μmフィルタで濾過し除菌して使用した。使用する度に、必要に応じて調製した。溶液の調製及び使用はいずれも無菌安全キャビネットで行った。
【0026】
b)メチルビオロゲン水和物溶液の調製:メチルビオロゲン水和物2gを秤量して、0.9%生理食塩水100mlに溶解し、20mg/ml溶液を調製し、十分に溶解した後、0.22μmフィルタで濾過し除菌して使用した。使用する度に、必要に応じて調製した。溶液の調製及び使用はいずれも無菌安全キャビネットで行った。
【0027】
c)10%ホルマリン固定液の調製:ホルマリン100mlと純水900mlを均一に混合した。
【0028】
実施例1 マウス肺線維化モデルの作成及びACT001薬力学試験
【0029】
実験方法及びステップ
1.マウス肺線維化モデルの作成及び投与治療
1.1 マウス肺線維化モデルの作成
各群を12匹として、マウス36匹を正常群、対照群(肺線維化モデル群)及びACT001群(モデリング後にACT001を投与)にランダムに分けた。正常群のそれぞれに対して0.9%生理食塩水0.15mLを一括して強制胃内投与し、対照群及びACT001群のそれぞれに対してメチルビオロゲン水和物の水溶液0.15mLを一括して強制胃内投与した。
【0030】
1.2 肺線維化マウスの投与治療
モデリングしてから三週後に、マウスに薬物を投与した。すなわち、正常群及び対照群に対して毎回0.9%生理食塩水0.1mLを強制胃内投与し、ACT001群に対して毎回ACT001水溶液0.1mLを強制胃内投与した。2日間置きに1回投与した。
【0031】
1.3 マウス肺線維化の病理学的検査
モデリングしてから三週後と、投与してから二週後と、投与してから三週後とに、それぞれ正常群、対照群、ACT001群から4匹のマウスを選択して、頸椎脱臼により屠殺後、肺組織を取り、10%ホルマリンで2日間固定した後、肺組織表面における固定液を流水で洗浄し、病理組織脱水装置を用いて肺組織に対して脱水処理を行い、パラフィンで包埋し、包埋組織を切片して、H.E染色をして、スライドガラスを載せて、顕微鏡下で肺組織の変化を観察した。
【0032】
実験結果及び評価
1)モデル作成結果
図1に、正常マウスの肺組織切片図を示す。図2に、マウス肺線維化をモデリングしてから三週後のマウスの肺組織切片の効果図を示す。図2から明らかなように、モデリング群には明らかな肺線維化が発生した。具体的には、細胞外マトリックス成分が肺胞と間質内に蓄積し、線維組織が過剰に修復し、肺繊維が増殖し、肺間質が繊維化され、コラーゲンが蓄積して、肺胞構造が変化した。
【0033】
2)ACT001薬力学試験
ACT001を投与してから二週後にマウスを解剖して、ACT001の肺線維化への薬効を検出した。解剖後、マウスの肺組織を観察した。その結果を図3Aに示す。図3AはACT001を投与してから二週後のマウスの肺組織外部形態の立体顕微鏡下での効果図であり、図3Aから明らかなように、対照群と比べて、ACT001投与群は、肺組織がより一層赤くつやつやして、肺組織の血液供給が大幅に改善しており、肺組織の色は鮮やかな赤であり、肺組織の表面はより一層赤くつやつやしており、正常群のマウスの外観に相当する。これに対して、モデリングした非投与群のマウスは、肺組織表面の色が暗く、肺組織の表面は赤くつやつやしていなかった。以上から分かるように、ジメチルアミノミケリオリド(ACT001)投与群のマウスの肺組織では、血液供給が著しく改善された。ACT001の投与によって、肺の血液供給を改善して、生体の呼吸困難等の症状を緩和できることが分かった。
【0034】
立体顕微鏡下で肺を観察したところ、モデリングした非投与群は、肺組織表面の色が蒼白く、肺組織の周縁では血管が細く小さく且つ少数であり、肺組織に実質的な変化が発生しており、肺の実質的に比較的広い範囲において繊維増殖があり、肺胞構造が著しく破壊されていた。
【0035】
マウスの肺組織切片は図3Bに示されるとおりであり、図3BはACT001を投与してから二週後のマウスの肺組織切片の効果図であり、図3Bから明らかなように、健康な正常マウスと比べて、メチルビオロゲン水和物を注射した対照群(すなわち非投与群)は顕著な繊維化が肺に発生しているのに対して、ACT001投与群は、肺組織に実質的な変化がなく、肺では繊維増殖の現象が実質的になく、肺胞構造が破壊されておらず、肺部の繊維化程度が著しく改善し、肺間質での沈着が著しく減少し、肺胞組織が正常に回復した。
【0036】
ACT001を投与してから三週後の肺組織の画像及び肺組織切片の画像は、図4A及び4Bに示されるとおりであり、そのうち、図4AはACT001を投与してから三週後のマウスの肺組織外部形態の立体顕微鏡下での効果図であり、図4BはACT001を投与してから三週後のマウスの組織切片の効果図である。そして、図4A図4Bから明らかなように、対照群と比べて、ACT001投与群は、肺線維化程度が著しく改善しており、マウスの肺部繊維化レベルを著しく低下させ、正常群の肺外観に相当する。
【0037】
又、投与してから三週間後、正常群、対照群及びACT001投与群のマウスの体重を観察して、各群の肺係数を計算した。各群のマウスの平均体重は次のとおりであった。正常群マウスの平均体重は49.2352gであり、対照群マウスの平均体重は45.4575であり、ACT001投与群のマウスの平均体重は47.576であった。各群マウスの平均肺重量については、正常群マウスの平均肺重量は0.4012gであり、対照群マウスの平均肺重量は0.5983gであり、ACT001投与群のマウスの平均肺重量は0.4034gであった。肺係数=肺湿重量(mg)/体重(g)*100%という公式に基づいて計算したところ、各群マウスの肺係数については、正常群マウスの平均肺係数は0.81%であり、対照群マウスの平均肺係数は1.32%であり、ACT001投与群の平均肺係数は0.85%であった。対照群の肺係数は正常群よりも顕著に高く、ACT001投与群の肺係数は正常群の肺係数との有意的な差異がなかった。肺係数は肺線維化程度を示すものであり、対照群と比べると、ACT001投与群の平均肺係数は0.85%であり、0.47%低下しており、正常群マウスの平均肺係数である0.81%に近づいており、このことから、ACT001は肺繊維化レベルを反転して改善し、細胞外マトリックスの過剰な蓄積を改善し、肺部繊維化細胞の過剰な増殖を抑制できることが示された。
【0038】
以上の実施例から明らかなように、ACT001は、生体の肺線維化レベルを反転して抑制し、肺細胞外マトリックスの過剰な蓄積を抑制し、肺の血液供給を改善して肺の血液供給量を増加させて呼吸困難を緩和させることができ、肺線維化を治療する作用を有する。
【0039】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の精神及び原則を脱逸せずに行う修正、均等な置換、改良等はいずれも本発明の保護範囲に属する。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B