(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
地球の物質循環システムを破壊することなく、人類が持続可能な社会を構築するための必須課題の一つは、化石燃料やウラン等の枯渇性資源を用いない、また、資源環境を破壊しない再生可能なクリーンエネルギーの創出である。つまり、石油、石炭、天然ガス等を用いた化石エネルギー及びウラン等を用いた原子力エネルギーに代わり、電気や熱等の人類が活用する有効なエネルギーに変換する際の有害物質排出量(二酸化炭素、窒素酸化物等)が少なく、エネルギー源として永続的に利用可能な太陽光・太陽熱、風力、水力、地熱、波力・潮力、及び、バイオマス等を利用して製造することができる再生可能エネルギーを開発することである(非特許文献1)。
【0003】
このような中でも、太陽光発電、すなわち、太陽電池は次のような特徴があり、積極的に開発が進められている。第一に、エネルギー源を化学的反応により電気エネルギーに直接変換できるため、最小単位が極めて小さく、あらゆる機器・装置等に搭載することができる。第二に、電池に出力と耐久性を施したモジュール、更にそれを多数配列したアレイとすることにより、住宅、公共施設、産業・商業施設、発電事業用施設等にも適用できる。特に、シリコン系太陽電池は、電卓、時計、街路灯等の民生用途から、住宅、公共施設、各種産業、人工衛星等に使用する電力用途まで幅広い分野で実用化されてきた。現在、太陽光発電は、シリコン系太陽電池をシステム化し、住宅、公共施設、産業・商業施設、発電事業用施設等に設置されるようになり、温室効果ガス削減対策の大きな柱の一つとして実用化が最も進んでいる技術となっている。このようなシリコン系太陽電池にも課題があるが、低コスト化・大面積化・薄膜化を目指した有機太陽電池等によって克服されようとしている。
【0004】
更に、次世代の電池として、燃料電池が期待されている。これは、燃料電池が、地球上に無尽蔵に存在する水を構成する元素である水素と大気中に無尽蔵に存在する酸素を活用し、水の電気分解の逆反応によって電気を発生するもので、温室効果ガスを排出しない発電システムのためである。
【0005】
既に、民生用として、エネファーム(登録商標)に代表される家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの実用化実験が進められている。一方、輸送分野では、ガソリン車・ディーゼル車からハイブリッド車へ、ハイブリッド車から電気自動車へと、化石エネルギーから二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーへのシフトが進む中、電気自動車の蓄電池の性能に限界があるため、次世代の電気自動車として、燃料電池自動車が開発されている。将来的には、燃料電池の搭載が、鉄道車両、ジェット機、船舶、及び、産業用車両等に拡がり、産業・商業施設や発電事業用施設にも燃料電池を用いた水素発電システムが利用されるものと期待されている。
【0006】
特に、このような水素と酸素を原料とする燃料電池による水素発電システムを広く普及させる一つの大きな段階として、燃料自動車が、ガソリン車・ディーゼル車と同程度に実用化されることが期待されている。これは、ガソリン車・ディーゼル車に匹敵する性能の燃料電池自動車が開発されてきたからである。しかし、これには、再生可能エネルギーを用いた水素ガス生成システムと水素ガスを自動車に供給する水素ガス供給システムとを直結する水素ステーションシステムの構築という大きな課題がある。
【0007】
水素ステーションシステムは、水素製造をどこで行うかによって大別すると、二通りのシステムがある。一つは、オフサイト型であり、もう一つは、オンサイト型であるが、それぞれ次のような特徴がある(非特許文献2)。
【0008】
オフサイト型は、水素を供給する場所である水素ステーションとは別の場所で製造した水素を、水素ステーションまで圧縮水素や液体水素の形でカードルやローリーで輸送して水素タンクに貯蔵しておき、そこから水素を圧縮する圧縮機、所定の圧力の水素を貯蔵する蓄圧器、水素を供給するディスペンサーを経て燃料電池車両に水素を充填するシステムである。水素製造方法には、後述するように種々の方法があるが、製造方法を選ばず、大規模な水素製造設備を用いたロスの少ない水素の製造ができることや、水素ステーションにおける水素製造設備の立ち上げが不要であるという長所がある。しかし、従来のガソリン等のような大量輸送技術及び大量貯蔵技術が使えない上、水素ガスの大量輸送技術及び大量貯蔵技術が確立されていないため、圧縮水素、液体水素の形で水素ガスを輸送及び貯蔵するために、カードル、ローリー、及び、タンク等に掛かる費用が非常に高くなるという大きな短所がある。オフサイト型の一種として、圧縮機、蓄圧器、ディスペンサー等の水素を供給するための設備が全て車載されている移動式水素ステーションがあるが、あくまで定置式水素ステーションの利用エリアをカバーするものである。
【0009】
オンサイト型は、水素ステーション内に、原料の貯蔵タンクと水素製造装置を設けており、水素を製造しながら燃料電池車両に水素を充填するシステムである。水素ステーションの広さや立地に適した水素製造方法で、中規模乃至は小規模の水素製造設備に限定されるということや水素製造設備の立ち上げに時間を要するという短所がある。しかし、水素ガスの輸送費が不要で、水素を製造する原料の貯蔵に従来技術を採用することができ、燃料電池車両への水素供給量に応じた水素製造設備の稼働率とすることができるため、水素ガスを大量に貯蔵する必要がない。従って、全体的にロスのない水素ステーションシステムを構築できるという大きな長所がある。
【0010】
一方、水素生成システムにおける水素製造法には、現在、水蒸気改質法、部分酸化改質法、水電気分解法等があり、将来的には、石炭ガス化法、ジメチルエーテル改質法、高温水蒸気電気分解法、水の熱化学法等に期待が寄せられているが、次のような問題がある(非特許文献3)。
【0011】
水蒸気改質法は、メタンを主成分とする天然ガス、液化石油ガス、ナフサ、或いは、それから得られたメタノール、エタノール等の炭化水素を原料とし、触媒存在下、高温で、水蒸気と反応させることによって生成される水素や一酸化炭素を含むガスから、水素だけを分離する方法である。大規模で安価な製造方法として、最も一般的な方法であるが、原料並びに熱源共に化石燃料を用いており、クリーンエネルギーとは言えない。同様に、部分酸化改質法も、灯油、重油、天然ガス等の炭化水素を原料とし、空気を混合して少ない酸素量で燃焼させることによって生成された水素と一酸化炭素から水素だけを分離する方法であるため、クリーンエネルギーとは言えない。水電気分解法は、豊富に存在する水を原料として、その電気分解によって水素を製造するため、上述した化石燃料を使用する方法と異なるが、電気分解には莫大な電力が必要で、現在のところ火力発電等の化石燃料を用いなければならないため、クリーンエネルギーと認められるものではない。むしろ、化石燃料の改質によって水素を製造する方が効率的であるため、この方法が採用されることは少ない。
【0012】
そして、このような石油コンビナートから生成される燃料を用いる水素製造法を用いた水素生成システムは、規模が大きい程効率的であるため、石油コンビナートの立地条件、すなわち、住宅から離れた臨海部で、広く平坦で、地盤が強固な場所に設置されるので、このような水素生成システムは、オフサイト型水素ステーションシステムに適しており、水素ガスの輸送に多大な労力を要する。しかしながら、現状では、オンサイト型水素ステーションシステムの水素生成システムとしても使用されており、極めて効率の悪い水素生成システムとなっている。
【0013】
石炭ガス化法は、石炭を高温でガス化して生成される水素や一酸化炭素等から水素を分離する方法である。これは、石炭の豊富な埋蔵量と安定した価格に着目されたものであって、クリーンエネルギーの創出を目的とするものではない。特に、石炭は、温室効果ガスの発生量が大きい化石燃料であり、その回収にも多大な設備を必要とする。
【0014】
また、ジメチルエーテル改質法、高温水蒸気電気分解法、及び、水の熱化学法は、原子力発電の電力や熱を利用した方法として期待されている(非特許文献4)。ジメチルエーテル改質法は、天然ガスから化学合成されたジメチルエーテルと水から生成される水素と二酸化炭素から水素を分離するものであり、軽水炉の250℃程度の低温熱源を利用するものである。高温水蒸気電気分解法は、高温ガス炉で発生する高温の水蒸気を電気分解する方法で、通常の電気分解よりも効率的に水素を製造することができる。水の熱化学法は、硫酸の熱分解プロセス、ヨウ化水素の熱分解プロセス、及び、これらの熱分解の生成物と水から硫酸とヨウ化水素を生成するブンゼン反応とからなり、水と熱エネルギーだけで水素を製造する方法で、その熱源として、高温ガス炉が利用される。しかし、原子力発電は、ウランという枯渇性資源を使用するもので、再生可能エネルギーとは言えない。
【0015】
しかも、原子力発電の電力と熱を利用する水素製造方法を用いた水素生成システムは、原子炉との接続が必須であるため、原子力発電所に隣接させる必要があって、水素を製造する水素生成システムと水素を製造する水素ステーションとは別の場所であるオフサイト型水素ステーションシステムとならざるを得ない。
【0016】
更に、オフサイト型水素ステーションシステムにおける水素ガスの輸送及び貯蔵の問題を解決する方法も開発されている。トルエンの水素付加反応で生成するメチルシクロヘキサンによって、水素ガスを輸送及び貯蔵する有機ケミカルハイドライド法である(非特許文献5)。この方法によれば、製造された水素は、トルエンの水素付加反応で、常温・常圧で液体のメチルシクロヘキサンに転換されて輸送及び貯蔵でき、水素を使用する場所でメチルシクロヘキサンの脱水素反応によって水素を取出し、生成するトルエンは水素キャリアとして回収し再利用される。しかしながら、水素製造方法に関しては何ら言及されておらず、上述した再生可能エネルギーを用いた水素生成システムを解決するものではない。
【0017】
一方、再生可能エネルギーを用いた水素生成システムとして、バイオマスをエネルギー源として用いる方法がある。生物資源に由来する有機廃棄物を直接燃焼して得られる熱、或いは、炭化、液化、及び、ガス化した燃料を利用してエネルギーに変換するため、廃棄物の再利用や減少に繋がる循環型社会構造の構築に大きく寄与するものと期待されている。例えば、有機廃棄物を、低酸素下、高温で、ガス(水素、一酸化炭素、二酸化炭素、軽質炭化水素ガス等)、炭化物、炭化水素に分解し、その炭化物と高温水蒸気との熱分解反応により生成する水性ガス(水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスを主成分とする混合ガス)を発電燃料とするシステムが報告されており、有機廃棄物の炭化、ガス化、発電という一貫したバイオマス燃料製造プロセス及び発電システムとして興味が持たれる(特許文献1)。更に、木屑,廃プラスチック等の有機廃棄物の高温水蒸気による熱分解により発生する水素、一酸化炭素、軽質炭化水素ガス、並びに、重質炭化水素の水蒸気改質により生成する水素、一酸化炭素から、水素を分離精製する水素製造方法が報告されている(非特許文献6)。しかしながら、この場合、熱分解及び水蒸気改質によって生成するガス中の水素の割合が低く、効率よく水素を製造できないという問題がある。そのため、有機廃棄物から水素含有量が多い水性ガスを製造するための炭化炉(特許文献2)や熱分解炉(特許文献3)が検討されているが、満足できる水素含有量には至っていない。
【0018】
以上から明らかなように、水素製造設備を含む水素ガス生成システムと水素ガスを自動車に供給する設備を含む水素ガス供給システムとから成る従来の水素ステーションシステムは、オフライン型及びオンライン型のいずれの場合にも、再生可能エネルギーを用いた水素製造方法を用いた水素ガス生成システムではないという問題があった。更に、オフライン型の場合には、水素ガスを水素ガス生成システムから水素ガス供給システムに輸送し、大量に貯蔵しなければならないという問題があり、オンライン型の場合には、水素ガス供給システムの立地条件によって効率の悪い水素製造方法を採用しなければならないという問題がある。
【0019】
従って、地球の物質循環システムを破壊することがなく、化石燃料やウラン等の枯渇性資源を用いないエネルギーによって、燃料電池自動車を、ガソリン車・ディーゼル車と同様に広く普及させるためには、再生可能エネルギーを用いた水素ガス生成システムと水素ガスを自動車に供給する水素ガス供給システムとを直結するオンサイト型水素ステーションシステムを構築する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に描かれた一実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項にのみ特定されるものであり、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【0036】
本発明の一実施形態のオンライン型水素ステーションシステムは、
図1に示したように、水素ガス生成システムAと、水素ガス供給システムBと、圧力制御装置Cと、流量制御装置Dとを備えている。水素ガス生成システムAは、有機廃棄物供給装置A−1と、水性ガス生成装置A−2と、水素精製装置A−3とを備え、水素ガス供給システムBは、水素ガスを所定の圧力にする圧縮機B−1と、水素ガスを所定の圧力で貯蔵する蓄圧器B−2と、燃料電池自動車Eに流量や圧力を制御しながら水素ガスを供給するディスペンサーB−3と、余剰の水素ガスを各家庭等に届けるために水素ガスをボンベに充填する充填装置B−4とを備え、圧力制御装置Cと流量制御装置Dによって、水素ガスの消費量に応じて水素ガス生成システムの有機廃棄物供給装置A−1から水性ガス生成装置A−2に供給する有機廃棄物の供給量が制御される。
【0037】
このオンライン型水素ステーションシステムを構成する水素ガス生成システムAは、炭素を含む廃棄物である有機廃棄物を炭化させて炭化物を生成した後に、過熱された水蒸気をガス化剤として用いて炭化物を熱分解反応させることにより水性ガス(水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスを主成分とする混合ガス)を生成し、その水性ガスを精製することによって水素を製造するシステムである。
【0038】
有機廃棄物とは、例えば、食品廃棄物、建設廃材、シュレッダーダスト、畜産廃棄物、間伐材や剪定枝等の樹木製の廃材、汚泥、家庭から排出される一般廃棄物である。水性ガスを生成する原料として以上に例示されるような種々の有機廃棄物を用いることができるが、樹木製の廃材(「木質バイオマス」ともいう。)を用いるのが特に好ましい。
【0039】
更に、本発明の一実施形態であるオンライン型水素ステーションの水素ガス生成システムAは、
図2に示すような構成とすることが好ましい。有機廃棄物供給装置A−1は、有機廃棄物を乾燥させる乾燥機10と、乾燥機10へ投入する有機廃棄物を貯留するホッパ11と、乾燥機10にて乾燥された有機廃棄物を貯留するホッパ12と、炭化炉で生成した燃焼ガスを有効に利用する燃焼ガス流路200d及びeと、有機廃棄物の乾燥で排出される排ガスを処理する排ガス冷却洗浄装置13とを備える。水性ガス生成装置A−2は、乾燥された有機廃棄物から炭化物を生成する炭化炉20と、炭化炉20で生成された炭化物と過熱蒸気とを熱分解反応させる熱分解炉30と、水から飽和蒸気を生成する蒸気発生器80と、蒸気発生器80が生成した蒸気を過熱する蒸気過熱器81と、蒸気発生器80へ水を供給する水供給装置82と、炭化炉20で生成した燃焼ガスを各工程で有効に利用する燃焼ガス流路200a、200b、200c、200dと、熱分解炉30で生成された水性ガスを冷却する減温器40と、炭化炉20から排出された未燃の炭化物を回収するチャー回収装置41と、減温器40から供給される水性ガスから残渣を除去するサイクロン50と、サイクロン50で除去された残渣を回収する残渣回收装置51と、サイクロン50で残渣が除去された水性ガスを冷却する水性ガス冷却装置60と、水性ガス冷却装置60で冷却された水性ガスを貯蔵する水性ガスホルダ70と、水性ガス生成装置A−2の全体を制御する制御装置90とを備える。水素精製装置A−3は、水性ガスに含まれる一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の不純物を吸着や分離によって除去し、純度が高い水素ガス(例えば、純度99.995%以上の水素ガス)に精製することができる一般的な精製装置であればよい。
【0040】
次いで、有機廃棄物供給装置A−1、水性ガス生成装置A−2、並びに、水素精製装置A−3が備える各部について順次詳細に説明する。
【0041】
まず、有機廃棄物供給装置A−1について説明する。乾燥機10は、有機廃棄物を燃焼ガスにより乾燥させると共に乾燥された有機廃棄物を炭化炉20へ供給する装置である。乾燥機10には、有機廃棄物を貯蔵するホッパ11から原料供給路11aを介して有機廃棄物が供給される。また、乾燥機10には、有機廃棄物を乾燥させる熱源として、蒸気発生器80から排出された燃焼ガスが燃焼ガス流路200dを介して供給される。
【0042】
ホッパ11から乾燥機10に供給される有機廃棄物は、例えば、5mm以上かつ60mm以下の長さの木質チップである。また、有機廃棄物は、例えば、55%程度の重量比で水分を含有するものが用いられる。乾燥機10は、55%程度の重量比で水分を含有する木質チップを加熱して乾燥させることにより、有機廃棄物が含有する水分を15%程度の重量比まで低下させるものである。
【0043】
乾燥機10は、燃焼ガスの熱により乾燥させた有機廃棄物を、原料供給路10aを介してホッパ12へ供給する。また、乾燥機10は、有機廃棄物を乾操させる熱源として用いた燃焼ガスを、燃焼ガス流路200eを介して排ガス冷却洗浄装置13へ供給する。乾燥機10が排ガス冷却洗浄装置13へ供給する燃焼ガスの温度は、150℃以上かつ210℃以下となるように調整されている。
【0044】
排ガス冷却洗浄装置13は、燃焼ガスに含まれる硫黄酸化物(SO
X)、塩酸(HCl)等の有害物質を除去して燃焼ガスを無害化する装置である。排ガス冷却洗浄装置13は、有害物質が除去された燃焼ガス(排ガス)を無害化しつつ冷却した後に大気中に排出する。排ガス冷却洗浄装置13は、例えば、スクラバとされており、大気中に排出する燃焼ガスの温度が50℃以下となるように調整している。
【0045】
次いで、水性ガス生成装置A−2について説明する。炭化炉20は、乾燥した有機廃棄物を部分燃焼させることにより炭化物と燃焼ガスとを生成する装置である。炭化炉20には、有機廃棄物を貯蔵するホッパ12から原料供給路12aを介して乾燥した有機廃棄物が供給される。炭化炉20は、有機廃棄物の燃焼によって生成された炭化物を、炭化物供給路101を介して熱分解炉30へ供給する。また、炭化炉20は、有機廃棄物の燃焼によって生成された燃焼ガスを、燃焼ガス流路200aを介して熱分解炉30へ供給する。
【0046】
熱分解炉30は、炭化炉20が生成した炭化物を過熱蒸気と共に燃焼ガスにより加熱して熱分解反応させることにより水性ガスを生成する装置である。熱分解炉30には、炭化物供給路101を介して炭化炉20が生成した炭化物が供給される。また、熱分解炉30には、蒸気過熱器81が生成した過熱蒸気がガス化剤として供給される。また、熱分解炉30には、熱分解反応を促進させる熱源として燃焼ガス流路200aから燃焼ガスが供給される。
【0047】
熱分解炉30は、炭化物と過熱蒸気とを熱分解反応をさせて、水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスを主成分とする水性ガスを生成する。炭化物と過熱蒸気との熱分解反応は、主に以下の式(1)、(2)に示す反応である。式(1)に示す水性ガス反応は吸熱反応であり、式(2)に示す水性ガスシフト反応は発熱反応である。式(2)に示す発熱反応の発熱量よりも式(1)に示す吸熱反応の吸熱量の方が大きい。そのため、炭化物と過熱蒸気との熱分解反応は、全体として吸熱反応となる。
C+H
2O → CO+H
2 (1)
CO+H
2O → CO
2+H
2 (2)
【0048】
熱分解炉30に供給される炭化物の温度は、常温(例えば、25℃)以上かつ350℃以下となるように調整されている。また、熱分解炉30に供給される過熱蒸気の温度は、730℃以上かつ830℃以下となるように調整されている。また、熱分解炉30に供給される燃焼ガスの温度は、900℃以上かつ1300℃以下となるように調整されている。また、熱分解炉30が生成する水性ガスの温度は、750℃以上かつ950℃以下となるように調整されている。
【0049】
熱分解炉30は、熱分解反応により生成された水性ガスと炭化物の未反応分及び残渣を、水性ガス供給路102を介して減温器40へ供給する。また、熱分解炉30は、熱分解反応の熱源として用いられた燃焼ガスを、燃焼ガス流路200bを介して蒸気過熱器81へ供給する。蒸気過熱器81に供給される燃焼ガスの温度は、750℃以上かつ850℃以下となるように調整されている。
【0050】
減温器40は、液体である水を噴霧することにより水性ガス供給路102から供給される水性ガスの温度を低下させる装置である。減温器40には、水供給装置82から水供給ポンプ(図示略)により水が供給される。減温器40は、減温させた水性ガスを、水性ガス供給路103を介してサイクロン50へ供給する。また、減温器40は、水性ガス供給路102から供給される炭化物の未反応分及び残渣をチャー回収装置41へ供給する。減温器40は、750℃以上かつ950℃以下となるように熱分解炉30で調整された水性ガスを、250℃以上かつ450℃以下となるように水の噴霧量を調整する。
【0051】
チャー回収装置41は、炭化物の未反応分を回収して再び熱分解炉30へ供給する装置である。チャー回収装置41を設けることにより、炭化物の未反応分が水性ガスの生成に用いられず廃棄されることが回避される。そのため、チャー回収装置41を設けることにより、炭化物からの水性ガスの収率が向上する。
【0052】
サイクロン50は、水性ガス供給路103を介して供給される水性ガスに含まれる残渣を除去する装置である。サイクロン50は、水性ガス供給路103を介して供給される水性ガスを内部で旋回させることにより水性ガスに含まれる残渣を遠心分離して下方へ導いて残渣回収装置51へ供給する。また、サイクロン50は、残渣が除去された水性ガスを上方へ導いて水性ガス供給路104を介して水性ガス冷却装置60へ供給する。
【0053】
水性ガス冷却装置60は、液体である循環水にて洗浄・冷却することにより水性ガス供給路104から供給される水性ガスの温度を低下させる装置である。水性ガス冷却装置60は、水性ガス中に洗浄・冷却した冷却水を回収して循環ポンプ(図示略)により再び水性ガス中に洗浄・冷却させるように冷去水を循環させる。
【0054】
水性ガス冷却装置60は、冷却した水性ガスを水性ガスホルダ70へ供給する。水性ガス冷却装置60は水性ガスホルダ70へ供給する水性ガスの温度を検出する温度センサ(図示略)を備えており、検出する温度が目標温度と一致するように循環ポンプ(図示略)により循環させる冷却水の水量を制御する。水性ガス冷却装置60は、250℃以上かつ450℃以下となるように減温器40で調整された水性ガスを、30℃以上かつ50℃以下となるように水の循環量を調整する。
【0055】
水性ガスホルダ70は、水性ガス冷却装置60から供給される水性ガスを貯蔵し、貯蔵した水性ガスを水素精製装置A−3に供給する装置である。
【0056】
一方、蒸気発生器80は、燃焼ガスで加熱することにより水を気化させて飽和水蒸気を生成する装置である。蒸気発生器80には、水供給装置82から水供給ポンプ(図示略)を介して水が供給される。また、蒸気発生器80には、蒸気過熱器81から排出される燃焼ガスが燃焼ガス流路200cを介して供給される。蒸気発生器80に供給される燃焼ガスの温度は、750℃以上かつ850℃以下となるように調整されている。
【0057】
蒸気発生器80が生成した飽和水蒸気は蒸気過熱器81へ供給される。また、蒸気発生器80で水を気化させる熱源として用いられた燃焼ガスは、燃焼ガス流路200dを介して、有機廃棄物供給装置A−1の乾燥機10へも供給される(乾燥機10へ供給される燃焼ガスの温度は、540℃以上かつ640℃以下となるように調整されている)。
【0058】
蒸気過熱器81は、燃焼ガスで飽和水蒸気を加熱することにより飽和水蒸気から加熱蒸気を生成する装置である。蒸気過熱器81には、蒸気発生器80が生成した飽和水蒸気が供給される。また、蒸気過熱器81には、熱分解炉30から排出される燃焼ガスが燃焼ガス流路200bを介して供給される。蒸気過熱器81に供給される燃焼ガスの温度は、750℃以上かつ850℃以下となるように調整されている。蒸気過熱器81が生成した過熱蒸気は、熱分解炉30へガス化剤として供給される。また、蒸気過熱器81で過熱蒸気を生成する熱源として用いられた燃焼ガスは、燃焼ガス流路200cを介して蒸気発生器80へ供給される。
【0059】
このように、
図2に示す有機廃棄物供給装置A−1と水性ガス生成装置A−2とに亘って形成される燃焼ガス流路200a、200b、200c、200d、200eには、以下のように流通して燃焼ガスが有効に活用されため、ガス化剤として用いる過熱蒸気や有機廃棄物を乾燥させる熱源として専用の熱源を用いていた従来技術と比較し、装置全体の熱効率が飛躍的に向上する。
【0060】
すなわち、炭化炉20が生成した燃焼ガスの流れを整理すると次のようになる。第1に、炭化炉20が生成した燃焼ガスは、燃焼ガス流路200aによって熱分解炉30へ供給される。第2に、熱分解炉30から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200bによって蒸気過熱器81へ供給される。第3に、蒸気過熱器81から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200cによって蒸気発生器80へ供給される。第4に、蒸気発生器80から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200dによって乾燥機10へ供給される。第5に、乾操機10から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200eによって排ガス冷却洗浄装置13へ供給される。第6に、排ガス冷却洗浄装置13が無害化した燃焼ガスは、排ガス冷却洗浄装置13によって大気中に排出される。
【0061】
ここで、炭化炉20が生成した燃焼ガスを他の熱媒体との熱交換をさせないで熱分解炉30へ供給しているのは、高温な状態が維持された燃焼ガスを用いて熱分解炉30における熱分解反応を促進して炭化物からの水性ガスの収率を向上させるためである。炭化炉20が生成した燃焼ガスを他の熱媒体との熱交換をさせた後に熱分解炉30へ供給する場合に比べ、熱分解炉30の内部を高温に維持することができるため、熱分解反応が促進されて炭化物からの水性ガスの收率が向上する。
【0062】
また、制御装置90は、水性ガス生成装置A−2を制御する装置である。制御装置90は、水性ガス生成装置A−2を構成する各部が備える制御部(図示略)と通信可能となっている。制御装置90は、水性ガス生成装置A−2を構成する各部が備える制御部に制御指令を伝達することにより、各部を制御することができ、水性ガス生成装置A−2を構成する各部から温度、圧力等の各部の状態を示す信号を受信可能となっている。制御装置90は、記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、水性ガス生成装置A−2を構成する各部に所望の動作を実行させることができる。
【0063】
最後に、水素精製装置A−3について説明する。水性ガスに含まれる一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分を除去することで純度が高い水素ガス(例えば、純度99.995%以上の水素ガス)に精製する装置である。例えば、水素精製装置73は、水性ガスを圧縮機(図示略)にて所定の圧力まで加圧して吸着剤(一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分の除去に適したもの)を充填した吸着塔(図示略)に供給し、吸着剤により、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分を吸着除去し、純度が高い水素ガスに精製する。吸着終了後は、吸着塔を減圧することで、吸着剤から、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分を脱着する。複数の吸着塔を交互に使用することで、水素を連続的に精製、送出できる。また、水素精製装置A−3として、水素以外の物質を全く透過しないパラジウム合金膜を用いた水素精製モジュールを用いることもできる。
【0064】
一方、このような水素ガス生成システムAと直結して水素ステーションシステムを形成する水素ガス供給システムBは、水素ガス生成システムAとは異なり、従来から使用されている一般的な圧縮機B−1、蓄圧器B−2、ディスペンサーB−3、及び、充填装置B−4により十分目的を達成することができる。
【0065】
しかし、水素生成ガス生成システムAと水素ガス供給システムBとを直結するだけでなく、蓄圧器B−2と有機廃棄物供給装置A−1との間には、水素ガスの消費量に伴って変化する蓄圧器B−2の圧力を制御すると共に、その変化に応じて、有機廃棄物の供給量を指示する圧力制御装置Cと、その指示に従って、有機廃棄物の供給量を制御する流量制御装置Dとを備える必要がある。これらの制御装置によって、水素ガスの消費量に連動した有機廃棄物供給装置A−1から水性ガス生成装置A−2への有機廃棄物の供給量が決定され、水性ガス生成装置A−2の無駄のない適切な稼働率が実現する。
【0066】
以下、本発明の水素ステーションシステムが効率的に運用されるための水素ガス生成システムAに適した各構成装置について詳細に説明する。下記に示す構成装置とすることによって、従来の炭化炉や熱分解炉と比較し、燃焼効率、炭化効率が高く、熱分解反応が速やかに進行するため、より純度が高い水性ガスがより効率的に生成することができ、水素の精製が容易となり、効率的に水素が製造され、水素ステーションシステムに適した水素ガス生成システムを提供することが可能となる。
【0067】
図3から
図6には、本発明の水素ステーションシステムを構成する水素ガス生成システムAの水性ガス生成装置A−2に適した炭化炉の一実施形態について詳細に示した。
【0068】
図3は、
図2に示す炭化炉20の縦断面図である。
図3において、軸線Xは、炭化炉20が設置される設置面(図示略)に対して直交する鉛直方向(重力方向)を示している。
【0069】
図3に示すように、本実施形態の炭化炉20は、本体部21と、円筒部22(筒部)と、有機廃棄物投入部23(投入部)と、炭化物排出部24と、1次空気供給部25と、2次空気供給部26と、燃焼ガス排出部27と、温度センサ28a(温度検出部)と、温度センサ28b(温度検出部)と、温度センサ28c(温度検出部)と、レベルセンサ28d(堆積量検出部)と、着火バーナ20cと、炭化炉制御部29(制御部)とを備える。
【0070】
本体部21は、軸線Xに沿って延びる略円筒状に形成されると共に炭化炉20の外装となる部材である。本体部21は、その内部に有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼領域R2と、有機廃棄物から生成された燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼
領域R4とを形成している。本体部21は、炭化炉20の外装を形成する金属製(例えば鉄製)のハウジング21aと、ハウジング21aの内周面に貼り付けられる断熱材21bと、断熱材21bの内周面に貼り付けられる耐火材21cとを有する。
【0071】
円筒部22は、軸線Xに沿って延びる略円筒状に形成される部材である。円筒部22は、本体部21の内周面21dとの間で有機廃棄物を燃焼させて炭化物を生成するための間隙20aを形成する外周面22aを有する。円筒部22は、有機廃棄物の燃焼によって高温となるため、耐熱性の材料(例えば、ステンレス等の金属材料)によって形成するのが好ましい。
図2に示すように、円筒部22の内部は中空の閉空間となっておりこの閉空間は他の空間と連通しない状態となっている。そのため、円筒部22は一定の熱量を畜熱可能であり、外部の温度変化による影響を受けにくくなっている。
【0072】
円筒部22は、後述するターンテーブル24aに取り付けられておりターンテーブル24aが軸線X回りに回転するのに応じて軸線X回りに回転するようになっている。円筒部22が軸線X回りに回転することにより、間隙20aとその上部に存在する有機廃棄物は間隙20aに沿って上方から下方へ導かれる。
【0073】
間隙20aに供給された有機廃棄物は、1次燃焼領域R2において1次空気供給部25から供給される1次燃焼用空気によって部分燃焼し、炭化物を多く含む固形分と可燃性ガスを含む燃焼ガスとが生成される。炭化物を多く含む固形分は間際20aに沿って下方の炭化物精錬・冷却領域R1へ導かれ、可燃性ガスを含む燃焼ガスは2次燃焼領域R4へ導かれる。炭化物精錬・冷却領域R1は、上方が有機廃棄物で閉塞されていると共に1次空気供給部25からの1次燃焼用空気が供給されない領域となっている。そのため、炭化物は、炭化物精錬・冷却領域R1において冷却されながら精錬される。
【0074】
有機廃棄物投入部23は、本体部21に設けられると共にホッパ12から原料供給路12aを介して供給される有機廃業物(図示略)を本体部21の内部へ投入する開口部である。有機廃棄物投入部23の下方には軸線Xに近付くにつれて上方から下方へ傾斜する傾斜面23aが形成されている。有機廃棄物投入部23から供給された有機廃棄物は、傾斜面23aに沿って円筒部22の上面22b及び間隙20aに導かれる。
【0075】
図3に示すように有機廃棄物投入部23が配置される領域が原料投入領域R3である。原料投入領域R3において、軸線Xに対して有機廃棄物投入部23と反対側には点検窓20bが設けられている。点検窓20bは、炭化炉20の内部を視認可能にするものである。
【0076】
炭化物排出部24は、間隙20aにおいて有機廃棄物が部分燃焼することにより生成される炭化物を炭化物供給路101へ排出する機構である。炭化物排出部24から炭化物供給路101へ排出された炭化物は、熱分解炉30へ供給される。
図2及び
図4に示すように、炭化物排出部24は、ターンテーブル24a(回転体)と、駆動部24bと、炭化物排出口24cとを有する。
【0077】
ターンテーブル24aは、
図4に示すように間隙20aの軸線X方向の下端と対向する位置に設けられる部材であり、軸線X回りの周方向に延びる円環状の回転体である。ターンテーブル24aは、駆動部24bから伝達される駆動力によって軸線X回りに回転する。
図4に示すように、間隙20aの下端と対向するターンテーブル24aの面は軸線Xから遠ざかるに従って下方へ傾斜する傾斜面となっている。そのため、間隙20aの下端とターンテーブル24aの傾斜面との間には隙間が形成されている。
【0078】
間隙20aの下端に存在する炭化物(図示略)は、ターンテーブル24aが軸線X回りに回転するのに応じてターンテーブル24aの傾斜面に沿って下方へ移動して炭化物排出口24cへと導かれる。そのため、ターンテーブル24aの回転速度が増加するのに応じて、間隙20aの下端から炭化物排出口24cへ導かれる炭化物の量が増加する。同樣に、ターンテーブル24aの回転速度が減少するのに応じて、間隙20aの下端から炭化物排出口24cへ導かれる炭化物の量が減少する。
【0079】
駆動部24bは、ターンテーブル24aに駆動力を伝達し、ターンテーブル24aを軸線X回りに回転させる装置である。
図3に示すように、駆動部24bは、駆動モータ24eと、減速機24fと、駆動ベルト24gと、駆動軸24hとを有する。
【0080】
駆動モータ24eは、炭化炉制御部29から伝達される制御信号によって回転数が制御されるインバータモータである。駆動モータ24eの回転動力は、駆動ベルト24gによって減速機24fに伝達される。減速機24fは駆動ベルト24gによって駆動モータ24eから伝達される回転動力の回転速度を減速させつつトルクを増加させる装置である。減速機24fは、トルクを増加させた回転動力を軸線X回りに延びる駆動軸24hに伝達する。ターンテーブル24aは駆動軸24hに連結されている。そのため、駆動軸24hが軸線X回りに回転するのに伴って、ターンテーブル24aが軸線X回りに回転する。
【0081】
炭化物排出ロ24cは、炭化物を炭化物供給路101へ排出する開口部である。炭化物排出口24cから炭化物供給路101へ排出された炭化物は、炭化物供給路101を介して熱分解炉30へ供給される。
【0082】
クリンカクラッシャ24dは、間隙20aの下端とターンテーブル24aの傾斜面との間に形成される隙間よりも大きな塊であるクリンカを破砕するための部材である。ここでクリンカとは、1次燃焼領域R2での有機廃棄物の燃焼により生成された燃焼灰が溶融して塊となったものである。
図5(a)に示すように、クリンカクラッシャ24dは、軸線X回り配置される略円環状の部材となっており、周方向の複数の位置に径方向の内側に突出する爪24iが設けられている。
図5(b)(
図5(a)のC−C矢視端面図)に示すように、爪24iはターンテーブル24aの傾斜面に沿うように上方に向けて折れ曲がった形状となっている。
【0083】
図4に示すように、クリンカクラッシャ24dは、締結ボルトによって本体部21に取り付けられている。クリンカクラッシャ24dは、ターンテーブル24aが軸線X回りに回転しても本体部21に対して固定されたままとなる。そのため、ターンテーブル24aの回転に伴ってクリンカが移動すると、クリンカがクリンカクラッシャの爪24iに衝突して破砕される。
【0084】
次に、1次空気供給部25について説明する。1次空気供給部25は、間隙20aに堆積する有機廃棄物に向けて有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼用空気を供給する装置である。1次空気供給部25は、1次燃焼ファン25a(送風部)と、カバー部25bと、空気供給口25cとを有する。
【0085】
1次燃焼ファン25aは、外部から導入した空気(大気)を送風する装置であり、インバータモータ(図示略)とインバータモータにより駆動されるファン(図示略)を有している。1次燃焼ファン25aは、インバータモータの回転数を制御することにより送風する風量を調整することができる。
【0086】
カバー部25bは、1次燃焼ファン25aから送風される空気が導入されると共に空気供給口25cへ空気を供給する閉空間25dを形成する部材である。
図6(a)(
図2に示す炭化炉20のA−A矢視端面図)に示すように、カバー部25bは、本体部21の外周面21eとの間に軸線X回りに延びる閉空間25dを形成する。
【0087】
空気供給口25cは、1次燃焼ファン25aから閉空間25dに送風された空気を閉空間25dから本体部21の内部の1次燃焼領域R2へ供給する流路である。
図3に示すように、空気供給口25cは、有機廃棄物を1次燃焼用空気により部分燃焼させる1次燃焼領域R2において、軸線Xに沿って鉛直方向の複数箇所に設けられている。
【0088】
また、
図6(a)に示すように、空気供給口25cは軸線X回りの周方向に沿った等間隔(
図6(a)では30°間隔)で本体部21に設けられている。また、
図6(a)に示すように、空気供給口25cは、本体部21の外周面21eから軸線Xに向けた延びる直線状の流路となっている。なお、
図6(a)に示す例は軸線X回りの周方向に沿った30°間隔で空気供給口25cを配置するものとしたが、他の間隔(例えば、20°、45°等)としてもよいし、等間隔でなく任意の間隔で配置してもよい。
【0089】
図3に示す1次空気供給部25は、1次燃焼ファン25aから送風される空気を加熱する加熱部(図示略)を有する。空気供給口25cは、加熱部によって加熱された空気を空気供給口25cへ供給する。そのため、1次燃焼ファン25aから送風される空気を加熱しない場合に比べ、1次燃焼領域R2の雰囲気温度を高温に維持することができる。
【0090】
1次空気供給部25が備える加熱部として、
図7及び
図8に示す放熱フィン25eを採用してもよい。
図7及び
図8に示す1次空気供給部25の変形例は、炭化炉20の間隙20aから本体部21を介して伝達される熱を利用して1次燃焼ファン25aから送風される空気を加熱する放熱フィン25eを備えるものである。
図7及び
図8に示すように、放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eに接触すると共に外周面21eに沿って軸線X回りに延びる環状の部材である。放熱フィン25eは、軸線Xに沿った複数箇所に設けられている。放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eに対して溶接等によって取り付けられている。
【0091】
図7は、1次空気供給部25の第1変形例を示す縦断面図である。
図3に示す1次空気供給部25のカバー部25bは、空気供給ロ25cと軸線X方向の略同じ位置のみに設けられる。それに対して、
図7に示す1次空気供給部25のカバー部25bは、空気供給口25cと軸線X方向の略同じ位置に加えて空気供給口25cよりも下方の位置も包含するように設けられる。
【0092】
図7に示す放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eを介して間隙20aの雰囲気温度が伝熱される伝熱部材である。本体部21の外周面21eは、耐火材21cと断熱材21bによってハウジング21aが加熱しすぎないように保護されているものの、50℃〜70℃程度に加熱された状態となっている。そのため、放熱フィン25eによって1次燃焼ファン25aから送風される空気(大気)を加熱することができる。
【0093】
図7に示すように、1次燃焼ファン25aは、間隙20aの下方の外周側に位置する本体部21の外周面21eに向けて外部から導入した空気を送風するようになっている。このようにしているのは、間隙20aの下方の外周側に位置する本体部21の外周面21eを外部から導入した空気によって冷却するためである。
【0094】
図7に示すように、間隙20aの下方は炭化物精錬・冷却領域R1となっている。炭化物精錬・冷却領域R1は、1次燃焼領域R2で生成された炭化物を冷却しながら精錬する領域であるため、ある程度低い温度に維持されるのが望ましい。そこで、本実施形態では、炭化物精錬・冷却領域R1が冷却されるように1次燃焼ファン25aが空気を送風する位置を設定している。
【0095】
図8は、1次空気供給部25の第2変形例を示す断面図である。
図8に示す1次空気供給部25の第2変形例は、放熱フィン25eが配置される位置における断熱材21bの厚さ及び本体部21の外周面21eの位置が異なっている点を除き、
図7に示す第1変形例と同様である。
【0096】
図8に示すように、空気供給口25cが配置される位置における本体部21の内周面21dから外周面21eまでの距離は、距離D1となっている。一方、放熱フィン25eが配置される位置における本体部21の内周面21dから外周面21eまでの距離は、距離D2となっている。
図8に示すように距離D1よりも距離D2の方が短くなっている。
【0097】
図8に示す1次空気供給部25の第2変形例によれば、
図7に示す1次空気供給部25の第1変形例に比べ、放熱フィン25eが配置される位置において、間隙20aの雰囲気温度が外周面21eに伝達されやすくなっている。そのため、第2変形例によれば、第1変形例よりも放熱フィン25eがより高温に加熱される。よって、第2変形例の1次空気供給部25によれば、1次燃焼ファン25aが送風する空気をより高い温度に加熱した状態で空気供給口25cへ供給することができる。
【0098】
なお、
図7及び
図8に示す放熱フィン25eは、軸線X回りに延びる環状の部材であるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、放熱フィン25eを、本体部21の外周面21eに接触すると共に外周面21eに沿って軸線X回りに下方から上方へ向けて旋回する螺旋状の流路を形成するような構造としてもよい。
【0099】
次に、2次空気供給部26について説明する。2次空気供給部26は、1次燃焼領域R2において有機廃棄物の燃焼により生成される燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼用空気を本体部21の内部へ供給する装置である。
図3に示すように、2次空気供給部26は2次燃焼領域R4に設けられており、2次燃焼領域R4に向けて2次燃焼用空気を供給する。2次空気供給部26は、2次燃焼ファン26aと、カバー部26bと、空気供給口26cとを有する。
【0100】
2次燃焼ファン26aは、外部から導入した空気(大気)を送風する装置であり、インバータモータ(図示略)とインバータモータにより駆動されるファン(図示略)を有している。2次燃焼ファン26aは、インバータモータの回転数を制御することにより送風する風量を調整することができる。
【0101】
カバー部26bは、2次燃焼ファン26aから送風される空気が導入されると共に空気供給口26cへ空気を供給する閉空間26dを形成する部材である。
図6(b)(
図3に示す炭化炉20のB−B矢視端面図)に示すように、カバー部26bは、本体部21の外周面2leとの間に軸線X回りに延びる閉空間26dを形成する。
【0102】
空気供給口26cは、2次燃焼ファン26aから閉空間26dに送風された空気を閉空間26dから本体部21の内部の2次燃焼焼領域R4へ供給する流路である。
図2に示すように、空気供給口26cは、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを2次燃焼用空気により燃焼させる2次燃焼領域R4において、軸線Xに沿った鉛直方向の複数箇所に設けられている。
【0103】
また、
図6(b)に示すように、空気供給口26cは軸線X回りの周方向に沿った等間隔(
図6(b)では30°間隔)で本体部21に設けられている。また、
図6(b)に示すように、空気供給口26cは、本体部21の外周面21eから軸線Xに向けた延びる直線状の流路となっている。なお、
図6(b)に示す例は軸線X回りの周方向に沿った30°間隔で空気供給口26cを配置するものとしたが、他の間隔(例えば、20°、45°等)としてもよいし、等間隔でなく任意の間隔で配置してもよい。
【0104】
燃焼ガス排出部27は、1次燃焼領域R2で生成されて2次燃焼領域R4で可燃性ガス成分を燃焼させた燃焼ガスを燃焼ガス流路200aへ排出する排出口である。燃焼ガス流路200aへ排出された燃焼ガスは、熱分解反応の熱源として利用するために熱分解炉30へ供給される。
【0105】
温度センサ28aは、燃焼ガス排出部27から排出される燃焼ガスの温度を検出するセンサである。温度センサ28aは、検出した温度を示す温度検出信号を炭化炉制御部29へ伝達する。
図3に示すように、温度センサ28aは2次燃焼焼領域R4の中でも燃焼ガス流路200aに近接した領域に配置されている。そのため、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgは、燃焼ガス流路200aに排出される燃焼ガスの温度と略一致した温度となる。
【0106】
温度センサ28bは、1次燃焼焼領域R2の雰囲気温度を検出するセンサである。温度センサ28bは、検出した温度を示す温度検出信号を炭化炉制御部29へ伝達する。
【0107】
温度センサ28cは、間隙20aの下端側に堆積する炭化物の温度である炭化物温度Tcを検出するセンサである。温度センサ28cは、検出した炭化物温度Tcを示す温度検出信号を炭化炉制御部29へ伝達する。
【0108】
レベルセンサ28dは、間隙20aに堆積する有機廃棄物の堆積量を検出するセンサである。レベルセンサ28dは、1次燃焼領域R2において、
図3に示す軸線Y方向に存在する有機廃棄物の堆積量を堆積量に応じた出力信号を得ることにより検出する。レベルセンサ28dは、出射した光や超音波等の反射を受信することで堆積量を検出する反射型のセンサであってもよい。また、レベルセンサ28dは、出射したX線等を受信する受信部を円筒部22に設けた透過型のセンサであってもよい。
【0109】
後述するように、レベルセンサ28dは、有機廃棄物供給部23からの新たな有機廃棄物の投入が停止される場合等、間隙20aに存在する有機廃棄物の堆積量が減少したことを検出するためのセンサである。そのため、レベルセンサ28dは、取り付け位置から鉛直方向の下方に向けた軸線Yに沿った堆積量を検出するようになっている。炭化炉制御部29は、レベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量である堆積量Aoが0である旨の検出信号を出力する場合、間隙20aに存在する有機廃棄物の堆積量が所定の第1堆積量Ao1以下へ減少したと判定する。
【0110】
着火バーナ20cは、炭化炉20における有機廃棄物の燃焼を開始させる際に、有機廃棄物を着火させるために用いられる装置である。
図3に示すように、着火バーナ20cは、間隙20aの下端側に設けられている。また、
図3に示すように、着火バーナ20cは、軸線Xに対して対向する2箇所に配置されている。
【0111】
着火バーナ20cは、灯油等の着火用燃料を利用して火炎を発生させることにより間隙20aの下端側に堆積する有機廃棄物を燃焼させる。着火バーナ20cは、炭化炉制御部29からの制御指令によって炭化炉20における有機廃棄物の燃焼を開始させる際に火炎を発生させる。また、着火バーナ20cは、炭化炉制御部29からの制御指令によって所定のタイミングで火炎の発生を停止させる。
【0112】
炭化炉制御部29は、炭化炉20が備える各部から各部の状態を示す検出信号を受信すると共に検出信号に基づいて各部に制御信号を伝達することで各部を制御する装置である。また、炭化炉制御部29は、制御装置90へ炭化炉20の状態を示す信号を伝達すると共に制御装置90から伝達される制御信号に応答して炭化炉20を制御する装置である。
【0113】
炭化炉制御部29は、温度センサ28a、28b、28cのそれぞれが検出する温度を示す温度検出信号と、レベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量Aoを示す堆積量検出信号とを受信する。また、炭化炉制御部29は、1次燃焼ファン25aの送風量を制御する制御信号を1次空気供給部25へ伝達する。また、炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aの送風量を制御する制御信号を2次空気供給部26へ伝達する。また、炭炭化炉制御部29は、着火バーナ20cに制御信号を伝達して有機廃棄物の燃焼を開始させる際に火炎を発生させると共に所定のタイミングで制御信号を伝達して火炎の発生を停止させる。また、炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を制御する制御信号を駆動モータ24eへ伝達する。
【0114】
次に、炭化炉制御部29による1次燃焼ファン25aの送風量の制御方法について説明1する。炭化炉制御部29は、温度センサ28bが検出する1次燃焼領域R2の雰囲気温度に基づいて1次燃焼焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御する。1次燃焼ファン25aが送風する空気の送風量は空気供給口25cから炭化炉20の1次燃焼領域R2へ供給される1次燃焼用空気の空気量と一致している。そのため、炭化炉制御部29は、1次燃焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御することにより、1次燃焼領域R2に送風される1次燃焼用空気の空気量を調整することができる。
【0115】
炭化炉制御部29は、間隙20aに堆積した有機廃葉物を炭化させるのに適した燃焼状態が維持されるように温度センサ28bが検出する1次燃焼領域R2の雰囲気温度に基づいて1次燃焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御する。具体的に、炭化炉制御部29は、1次燃焼領域R2の雰囲気温度が1000℃以上かつ1200℃以下の範囲に収まるように1次燃焼焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御する。
【0116】
次に、炭化炉制御部29による2次燃焼ファン26aの送風量の制御方法について、
図9フローチャートを用いて説明する。炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgに基づいて2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御する。2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量は空気供給口26cから炭化炉20の2次燃焼領域R4へ供給される2次燃焼用空気の空気量と一致している。そのため、炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御することにより、2次燃焼領域R4に送風される2次燃焼用空気の空気量を調整することができる。
【0117】
炭化炉制御部29は、2次燃焼焼領域R4の燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させるのに適した燃焼状態が維持されるように温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgに基づいて2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御する。具体的に、炭化炉制御部29は、
図9に示すフローチャートに従って2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御する。
図9に示すフローチャートにおける各処理は、炭化炉制御部29が有する演算部(図示略)が記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを実行することにより行われる処理である。
【0118】
図9のフローチャートに示す処理に先立って、炭化炉制御部29は、炭化炉20における有機廃棄物の燃焼を開始させる際に、着火バーナ20cによって火炎を発生させて間隙20aに堆積する有機廃棄物の燃焼を開始させる。炭化炉制御部29は、その後に2次燃焼ファン26aによる外部の空気(大気)の送風を開始させる。炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第1燃焼焼ガス温度Tg1以上となるまでは一定の送風量となるように2次燃焼ファン26aを制御する。温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1以上となった後に、
図9のフローチャートに示す各処理が開始される。
【0119】
なお、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1以上となるまでに2次燃焼ファン26aが送風する2次燃焼用空気の送風量は、2次燃焼領域R4に存在すると想定される可燃性ガスを完全燃焼させるのに必要な量に一定の余剰量を加算した量となっている。
【0120】
ステップS800で炭化炉制御部29は、温度センサ28aから伝達される温度検出信号を受信することにより、
燃焼ガス排出部27から排出される燃焼ガスの温度である燃焼焼ガス温度Tgを検出する。
【0121】
ステップS801で炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1より低いか否かを判定する。炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼焼ガス温度Tg1よりも低いと判定した場合はステップS802に処理を進め、そうでなければステップS803に処理を進める。
【0122】
ステップS802で炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aの送風量を減少させるための制御信号を2次燃焼ファン26aに伝達する。2次燃焼ファン26aは、炭化炉制御部29から制御信号を受信したのに応答して送風量を減少させる。ここで、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1よりも低いと判定した場合に2次燃焼ファン26aの送風量を減少させているのは次の理由による。
【0123】
2次空気供給部26が2次燃焼領域R4へ供給する2次燃焼用空気の量は、2次燃焼領域R4に存在する燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを完全燃焼させる量よりも一定量だけ多い量とするのが好ましい。すなわち、2次燃焼領域R4における空気過剰率を1.0より大きい一定値とするのが好ましい。
【0124】
しかしながら、2次燃焼領域R4に存在する可燃性ガスの量は、有機廃棄物の性状や1次燃焼領域R2における有機廃棄物の燃焼状態等の要因により変動するのが一般的である。そのため、2次空気供給部26が2次燃焼領域R4へ供給する2次燃焼用空気の量を一定としたままでは可燃性ガスを完全燃焼させるのに適した空気量を維持することができない。
【0125】
そして、2次燃焼用空気の量が可燃性ガスを完全燃焼させる量に対して過剰に多くなる場合、可燃性ガスの燃焼に用いられない余剰空気が2次燃焼領域R4に多量に供給されることとなる。2次燃焼ファン26aが送風する空気(大気)の温度は2次燃焼焼領域R4の雰閉気温度よりも低いため、多量の余剰空気によって2次燃焼領域R4の雰囲気温度が低下してしまう。
【0126】
そうすると、2次燃焼領域R4における可燃性ガスの燃焼効率が悪化し、可燃性ガスを多く含んだままの燃焼ガスが燃焼ガス排出部27から排出されてしまうこととなる。可燃性ガスには、凝固してタールとなる成分である高分子炭化水素が含まれている。そのため、可燃性ガスに凝固してタールとなる成分が多量に含まれたままであると、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に損傷を与える可能性がある。そのため燃焼ガスに凝固してタールとなる成分が多量に含まれないようにし、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に与える損傷を抑制するのが望ましい。そこで、炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1よりも低いと判定した場合に、2次燃焼領域R4に供給される余剰空気量を減少させるために、2次燃焼ファン26aの送風量を減少させている。
【0127】
ステップS803で炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2より高いか否かを判定する。炭化炉制御部29は、検出した燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2よりも高いと判定した場合はステップS804に処理を進め、そうでなければステップS801に処理を進める。
【0128】
ステップS804で炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aの送風量を増加させるための制御信号を2次燃焼ファン26aに伝達する。2次燃焼ファン26aは、炭化炉制御部29から制御信号を受信したのに応答して送風量を増加させる。炭化炉制御部29は、
図9に示すフローチャートの処理を終了すると、再び
図9に示す処理の実行を開始する。ここで、燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2よりも高いと判定した場合に2次燃焼ファン26aの送風量を増加させているのは次の理由による。
【0129】
燃焼ガス温度Tgに上限を定めずに炭化炉20を運転させる場合、想定される最高の燃焼ガス温度を想定し、その燃焼ガス温度でも十分に耐熱性が保たれるように炭化炉20及び燃焼ガス流路200aを設計する必要がある。この場合、耐熱性の高い高価な部材を用いて炭化炉20等を製造する必要があり、炭化炉20等の製造コストが増加してしまう。炭化炉20等の製造コストを増加させないようにするためには、燃焼ガス温度Tgが予め定めた上限温度以下となるようにするのが好ましい。
【0130】
そこで、炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2よりも高いと判定した場合に2次燃焼ファン26aの送風量を増加させている。前述したように、2次燃焼ファン26aの送風量を増加させることにより多量の余剰空気が2次燃焼領域R4に供給されると、2次燃焼領域R4の雰囲気温度が低下することとなる。
【0131】
以上のように、炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgに基づいて2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御することにより、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1以上かつ第2燃焼ガス温度Tg2以下となるようにしいる。ここで、第1燃焼ガス温度Tg1及び第2燃焼ガス温度Tg2として、例えば、第1燃焼ガス温度Tg1を900℃とし、第2燃焼ガス温度Tg2を1300℃と設定することができる。
【0132】
第1燃焼ガス温度Tg1を900℃としているのは、2次燃焼領域R4の温度を900℃以上に維持することにより、燃焼ガスから高分子炭化水素の大部分を除去することができるからである。高分子炭化水素は、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスのうち凝固してタールとなる成分である。そのため、燃焼ガスから高分子炭化水素の大部分を除去することにより、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に与える損傷を抑制することができる。
【0133】
また、第1燃焼ガス温度Tg1及び第2燃焼ガス温度Tg2として、例えば、第1燃焼ガス温度Tg1を1000℃とし、第2燃焼ガス温度Tg2を1200℃と設定するようにしてもよい。また、例えば、第1燃焼ガス温度Tg1及び第2燃焼ガス温度Tg2の双方を1100℃に設定するようにしてもよい。この場合、炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1より低い場合は送風量を減少させ、燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2より高い場合は送風量を増加させるよう2次燃焼ファン26aを制御する。
【0134】
次に、炭化炉制御部29によるターンテーブル24aの回転速度の制御方法について
図10のフローチャートを用いて説明する。
図10に示すフローチャートにおける各処理は、炭化炉制御部29が有する演算部(図示略)が記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを実行することにより行われる処理である。
【0135】
図10に示すフローチャートにおいて、炭化炉制御部29は、炭化物排出部24が排出する炭化物の排出量を制御している。本実施形態において炭化物排出部24が排出する炭化物の排出量を制御しているのは、有機廃棄物投入部23から間隙20aへの有機廃棄物の投入が停止されるのに伴って炭化物排出部24から排出される炭化物の温度が上昇してしまうことを防ぐためである。
【0136】
間隙20aに堆積する有機廃棄物の量が徐々に少なくなると、炭化物を消火させる炭化物精錬・冷却領域R1が徐々に狭くなる。この場合、ターンテーブル24aの回転速度を一定のままで維持すると、炭化物が十分に冷却されない状態で間隙20aの下端から排出されてしまう。これは、1次燃焼領域R2で炭化されて高温となった炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1で十分に冷却されないためである。そこで、炭化炉制御部29は、炭化物排出部24が排出する炭化物の排出量を制御することにより、炭化物排出部24が排出する炭化物の温度を調整している。
【0137】
本実施形態において、炭化炉制御部29は、温度センサ28cとレベルセンサ28dの双方を用いて、炭化物排出部24が排出する炭化物の温度を調整している。前者は炭化物の温度を直接的に検出するセンサであり、後者は炭化物の堆積量から炭化物の温度が高温となる状態を間接的に検出するセンサである。
【0138】
以下、
図10のフローチャートの各ステップについて説明する。ステップS900で炭化炉制御部29は、温度センサ28cから伝達される温度検出信号を受信することにより、間隙20aの下端側に堆積する炭化物の温度である炭化物温度Tcを検出する。ステップS901で炭化炉制御部29は、レベルセンサ28dから伝達される堆積量検出信号を受信することにより、間際20aに堆積する有機廃棄物の堆積量である堆積量Aoを検出する。
【0139】
ステップS902で炭化炉制御部29は、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上であるか否かを判定する。炭化炉制御部29は、検出した炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上であると判定した場合はステップS903に処理を進め、そうでなければステップS904に処理を進める。ここで、第1炭化物温度Tc1として、例えば、250℃以上かつ300℃以下の範囲の任意の温度を設定することができる。
【0140】
ステップS903で炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を第2回転速度Rs2で回転させるよう駆動部24bを制御する。第2回転速度Rs2は後述する第1回転速度Rs1よりも低速度である。ここで、第1回転速度Rs1は、炭化炉20が通常運転状態を維持するために必要な量の炭化物を炭化物排出部24から排出させるための速度である。ステップS903では、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上となった場合に炭化物排出部24が排出する炭化物の温度が低下するように、ターンテーブル24aの回転速度を第1回転速度Rs1よりも低い第2回転速度Rs2としている。ターンテーブル24aの回転速度を低下させることにより炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1に滞留する時間が長くなり、それに伴って炭化物排出部24が排出する炭化物の温度が低下する。
【0141】
ステップS904で炭化炉制御部29は、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下であるか否かを判定する。炭化炉制御部29は、検出した堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下であると判定した場合はステップS905に処理を進め、そうでなければステップS906に処理を進める。
【0142】
ステップS905で炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を第2回転速度Rs2で回転させるよう駆動部24bを制御する。第2回転速度Rs2は後述する第1回転速度Rs1よりも低速度である。ステップS905では、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下となった場合に炭化物排出部24が排出する炭化物の温度が低下するように、ターンテーブル24aの回転速度を第1回転速度Rs1よりも低い第2回転速度Rs2としている。
【0143】
ステップS906で炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を第1回転速度Rs1で回転させるよう駆動部24bを制御する。前述したように、第1回転速度Rs1は、炭化炉20が通常運転状態を維持するために必要な量の炭化物を炭化物排出部24から排出させるための速度である。炭化炉制御部29は、ステップS906において、炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1よりも低くかつ堆積量Aoが第1堆積量Ao1よりも多いことから、運転状態を推持するために必要な量の炭化物を炭化物排出部24から排出させるように駆動部24bを制御する。
【0144】
炭化炉制御部29は、
図10に示すフローチャートの処理を終了すると、再び
図10に示す処理の実行を開始する。このようにして、炭化炉制御部29は、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tc及びレベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量Aoに基づいて駆動部24bがターンテーブル24aを回転させる回転速度を制御する。
【0145】
以上の
図10に示すフローチャートにおいては、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上であるか否かに応じてターンテーブル24aの回転速度を2段階に切り替えるものであったが他の態様であってもよい。例えば、炭化物温度Tcに応じて2段階以上の複数段階でターンテーブル24aの回転速度を切り替えるようにしてもよい。また例えば、ターンテーブル24aの回転速度を段階的に切り替えず、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcと反比例する速度となるようにターンテーブル24aの回転速度を制御するようにしてもよい。
【0146】
また、以上の
図10に示すフローチャートにおいては、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoが第1堆積量Ao1以上であるか否かに応じてターンテーブル24aの回転速度を2段階に切り替えるものであったが他の態様であってもよい。例えば、堆積量Aoに応じて2段階以上の複数段階でターンテーブル24aの回転速度を切り替えるようにしてもよい。また例えば、ターンテーブル24aの回転速度を段階的に切り替えず、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoと比例する速度となるようにターンテーブル24aの回転速度を制御するようにしてもよい。
【0147】
また、以上の
図10に示すフローチャートにおいては、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcとレベルセンサ28dが検出する堆積量Aoの双方を用いてターンテーブル24aの回転速度を制御するものであったが他の態様であってもよい。例えば、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcとレベルセンサ28dが検出する堆積量Aoの何れか一方を用いてターンテーブル24aの回転速度を制御するようにしてもよい。
【0148】
次に、
図11から
図13を用いて、本発明の水素ステーションシステムを構成する水素ガス生成システムの水性ガス生成装置A−2に適した熱分解炉30本体の一実施形態について詳細に説明する。
図11は、
図2に示す熱分解炉30本体の縦断面図である。
図11において、軸線Zは、熱分解炉30が設置される設置面(図示略)に対して直交する鉛直方向(重力方向)を示している。
【0149】
図11に示すように、本実施形態の熱分解炉30は、本体部31と、反応管32と、反応管ヘッド33(供給部)と、水性ガス出口ノズル34(水性ガス出口部)と、燃焼ガス供給部35(加熱用ガス供給部)と、燃焼ガス排出部36(加熱用ガス排出部)と、グランドパッキン37(第1シール部)と、グランドパッキン38(第2シール部)と、グランドパッキン39(第3シール部)とを備える。
【0150】
本体部31は、軸線Zに沿って延びる略円筒状に形成される部材である。本体部31はその内部に反応管32を収容する空間を形成している。本体部31は、熱分解炉30の外装を形成する金属製(例えば鉄製)のハウジング31aと、ハウジング31aの内周面に貼り付けられる断熱材31bと、断熱材31bの内周面に貼り付けられる耐熱材31cとを有する。
【0151】
略円筒状の本体部31の上面は平面視円環状の上板31dで構成されており、本体部31の底面は平面視円環状の底板31eで構成されている。また、本体部31の側面31fの上端には上端フランジ31g(第1フランジ部)が設けられており、本体部31の側面31fの下端には下端フランジ31i(第2フランジ部)が設けられている。
【0152】
上板31dと上端フランジ部31gとは、軸線Z回りの複数箇所で上板31dと上端フランジ部31gとの間に図示しないガスケット(第4シール部)を挟んだ状態で締結ボルト31h(締結部材)によって締結されている。同様に、底板31eと下端フランジ31iとは、軸線Z回りの複数箇所で底板31eと下端フランジ31iとの間に図示しないガスケット(第5シール部)を挟んだ状態で締結ボルト31j(締結部材)によって締結されている。
【0153】
反応管32は、軸線Zに沿って延びる略円筒状に形成される機構である。反応管32は、本体部31の内周面との間に燃焼ガス(加熱用ガス)を流通させるための燃焼ガス流路30aを形成する外周面32dを有する。反応管32は、センターパイプ32a(管状部材)と、上端フランジ32b(第3フランジ部)と、複数の第1傾斜板32fと、複数の第2傾斜板32gと、複数の保持棒32h(保持部)とを有する。
【0154】
図10に示すように、反応管32の上端フランジ32b及び上端フランジ32b側のセンターパイプ32aの端部は、本体部31の上板31d(上面)から上方へ突出している。また、反応管32の下端部32cは、本体部31の底板31d(底面)から下方へ突出している。
【0155】
センターパイプ32aは、軸線Zに沿って延びる円筒状に形成される部材である。センターパイプ32aの内部には、複数の第1傾斜板32fと複数の第2傾斜板32gと複数の保持棒32h(保持部)からなる熱分解促進機構が収容されている。熱分解促進機構は、炭化物をセンターパイプ32aの上端側から下端側まで段階的に導いて炭化物を反応管32の内部に滞留させることにより、炭化物と過熱蒸気との熱分解反応を促進させる機構である。
【0156】
図11及び
図12に示すように、複数の第1傾斜板32f及び複数の第2傾斜板32gは、軸線Zに沿った複数箇所で4本の保持棒32hによって保持されている。また、第1傾斜板32f及び第2傾斜板32gは、軸線Zに沿って交互に配置されている。4本の保持棒32hの上端は、反応管ヘッド33の下端フランジ33aの下面に取り付けられている。反応管32の上端フランジ32bと反応管ヘッド33の下端フランジ33aとの締結を解除することにより、熱分解促進機構はセンターパイプ32aから上方に取り外す(着脱する)ことが可能となっている。
【0157】
図12(a)に示す第1傾斜板32fは、炭化物を反応管32の内周面32eの一端部(
図12(a)中の左端部)から他端部(
図12(a)中の右端部)に設けられた第1開口部32iへ導くように傾斜した第1傾斜面を形成するように配置されている。また、
図12(b)に示す第2傾斜板32fは、炭化物を反応管32の内周面32eの他端部(
図12(b)中の右端部)から一端部(
図12(b)中の左端部)に設けられた第2開口部32jへ導くように傾斜した第2傾斜面を形成するように配置されている。
【0158】
図11に示すように、第1傾斜板32fが形成する第1傾斜面は第2開口部32jから落下した炭化物を下方へ導くように傾斜しており、第2傾斜板32gが形成する第2傾斜面は第1開口部32iから落下した炭化物を下方へ導くように傾斜している。このように、熱分解促進機構は、軸線Zに沿って交互に配置される第1傾斜板32fと第2傾斜板32gとを用いて炭化物をセンターパイプ32aの上端側から下端側まで段階的に導くことができる。
【0159】
第1傾斜面及び第2傾斜面の軸線Zに直交する平面に対する傾斜角度は、炭化物の性状に応じて任意に設定することができるが、炭化物を確実に傾斜面に沿って移動させるために炭化物の安息角以上の角度とするのが好ましい。一方、傾斜角度を大きくしすぎると炭化物の反応管32内での滞留時間が短くなり、熱分解反応が十分に促進されない。そのため、第1傾斜面及び第2傾斜面の軸線Zに直交する平面に対する傾斜角度は、20°以上かつ60°以下の範囲で炭化物の安息角以上となるように定めるのが特に好ましい。
【0160】
反応管ヘッド33は、反応管32に取り付けられると共に反応管32の内部へ炭化物と過熱蒸気とを供給して反応管32の内部で水性ガスを生成させるものである。反応管ヘッド33は、反応管32と取り付けられる下端フランジ33a(第4フランジ)と、炭化物供給路101に取り付けられる上端フランジ33bと、蒸気過熱器81から過熱蒸気が供給される流路(図示略)に取り付けられる側方フランジ33cとを有する。
【0161】
反応管ヘッド33の下端フランジ33aと反応管32の上端フランジ32bとは、軸線Z回りの複数箇所でこれらの間に図示しないガスケット(第6シール部)を挟んだ状態で締結ボルト33dによって締結されている。
【0162】
水性ガス出口ノズル34は、反応管32の下端部32cに取り付けられる略筒状の部材である。水性ガス出口ノズル34は、反応管32の内部で炭化物の熱分解反応により生成された水性ガス、炭化物の未反応分、及び灰分等の残渣を、水性ガス供給路102を介して減温器40へ導く。
【0163】
燃焼ガス供給部35は、本体部31の上方に設けられると共に燃焼ガス流路200aから導かれる燃焼ガスを燃焼ガス流路30aへ供給する開口部である。燃焼ガス排出部36は、本体部31の下方に設けられると共に燃焼ガス流路30aから燃焼ガス流路200bへ燃焼ガスを排出する開口部である。燃焼ガス供給部35から燃焼ガス流路30aへ供給される燃焼ガスは、センターパイプ32aの外周面32dを加熱しながらセンターパイプ32aの上端側から下端側に向けて流通し、燃焼ガス排出部36から排出される。
【0164】
グランドパッキン37は、本体部31の上板31dから燃焼ガス流路30a内の燃焼ガスが外部へ流出することを遮断する部材である。グランドパッキン37は、本体部31の上板31dの下面と接するように設けられると共に反応管32の外周面32dと接触する内周面37dを有する平面視円環状の部材である。
【0165】
グランドパッキン37は、セラミックボード37aとセラミックボード37bとセラミックファイバー37cとを互いに密着させた状態で構成されている。比較的容易に変形可能な繊維状の素材であるセラミックファイバー37cを用いることにより、断熱材31b及び耐熱材31cと接触する部分におけるシール性を高めている。
【0166】
グランドパッキン38は、本体部31の底面31eから燃焼ガス流路30a内の燃焼ガスが外部へ流出することを、遮断する部材である。グランドパッキン38は、本体部31の底板31eの上面と接するように設けられると共に反応管32の外周面32dと接触する内周面38dを有する平面視円環状の部材である。
【0167】
グランドパッキン38は、セラミックボード38aとセラミックボード38bとセラミックファイバー38cとを互いに密着させた状態で構成されている。比較的容易に変形可能な繊維状の素材であるセラミックファイバー38cを用いることにより、断熱材31b及び耐熱材31cと接触する部分におけるシール性を高めている。
【0168】
グランドパッキン39は、
図12に示すように、反応管32の下端部32cと水性ガス出口ノズル34との取付位置において、取付位置からの水性ガスの流出を遮断する部材である。グランドパッキン39は、反応管32の外周面32d及び水性ガス出ロノズル34の外周面34aのそれぞれと接触する内周面39dを有する平面視円環形状の部材となっている。
【0169】
図13に示すように、グランドパッキン39は、円環状のパッキン部材39aと、円環状のパッキン部材39bと、パッキン押さえ部材39cとを有する。パッキン押さえ部材39cを底板31eに締結ボルトで締結することにより、パッキン部材39a及びパッキン部材39bが軸線Z方向に収縮すると共に軸線Zに直交する径方向に膨張する。グランドパッキン39が径方向に膨張することにより、グランドパッキン39の内周面39dが反応管32の外周面32d及び水性ガス出口ノズル34の外周面34aのそれぞれと接触してシール領域を形成する。
【0170】
引き続き、
図14を用いて、本発明の水素ステーションシステムを構成する水素ガス生成システムの水性ガス生成装置A−2に適した熱分解炉30、減温器40、サイクロン50、蒸気発生器80、蒸気過熱器81、及び、その周辺機器の一実施形態について詳細に説明する。
図14に示すように、炭化物供給路101は、スクリューコンベア101aと、クリンカ除去装置101bと、ベルトコンベア101cと、磁選機101dと、スクリューコンベア101eと、スクリューコンベア101fとを有する。
【0171】
スクリューコンベア101aは、炭化炉20から排出された炭化物を運搬する装置である。スクリューコンベア101aは、直線状に延びる筒体の内部にスクリューを収容したものである。スクリューコンベア101aは、モータの駆動力によってスクリューを筒体の内部で回転させることにより、炭化物を筒体の延びる方向に沿って運搬する。
【0172】
クリンカ除去装置101bは、スクリューコンベア101aから排出される炭化物から一定以上の粒径のクリンカをネット等により除去する装置である。クリンカが除去された炭化物はベルトコンベア101cによって磁選機101dまで運搬される。磁選機101dは、炭化物に含まれる釘等の鉄製の屑を磁石により除去する装置である。鉄製の屑が除去された炭化物は、スクリューコンベア101eへ供給される。
【0173】
スクリューコンベア101e及びスクリューコンベア101fは、それぞれ炭化物を運搬する装置である。スクリューコンベア101fは、炭化物を熱分解炉30が有する窒素置換器30bへ供給する。なお、スクリューコンベア101e及びスクリューコンベア101fの構造は、スクリューコンベア101aと同様であるので説明を省略する。
【0174】
スクリューコンベア101eとスクリューコンベア101fとで熱分解炉30の上方まで炭化物を運搬しているのは、炭化物を熱分解炉30の上方から供給し、炭化物の自重によって熱分解炉30の反応管32中に炭化物を通過させるためである。炭化物の自重によって熱分解炉30の反応管32を通過させることにより、反応管32の上端から下端までの全領域を、熱分解反応を促進する領域として利用することができる。また、炭化物の自重によって反応管32中に炭化物を通過させるため、炭化物を移動させるための特段の動力を必要としない。
【0175】
なお、スクリューコンベア101eとスクリューコンベア101fとの2段階で炭化物を運搬しているのは、各スクリューコンベアがスクリューを回転させるのに必要とする動力を少なくして駆動力の大きな高価なモータを必要としないようにするためである。
【0176】
窒素置換器30bは、熱分解炉30を構成する機器であり、炭化物と共にスクリューコンベア101fから供給される空気に含まれる酸素を不活性な窒素ガスと置換するための装置である。窒素置換器30bは、スクリューコンベア101fと連結される上方と反応管ヘッド33と連結される下方のそれぞれに配置され、制御装置90によって開閉状態が制御される電動式の制御弁(例えば、ボール弁)を有する。
【0177】
制御装置90は、上方の制御弁を開状態とし下方の制御弁を閉状態とすることで窒素置換器30bの内部に炭化物を供給する。制御装置90は、窒素置換器30bの内部に供給される炭化物が一定量に達した場合、スクリューコンベア101fによる炭化物の運搬を停止させると共に、窒素置換器30bの上方の制御弁を閉状態とする。
【0178】
窒素置換器30bには、空気分離装置等の窒素ガスを生成する装置から窒素ガスが常時供給されるようになっている。そのため、窒素置換器30bの上方及び下方の制御弁を閉状態として一定時間が経過すると、炭化物と共に窒素置換器30bの内部に供給された空気が外部に排出されて内部が窒素ガスで置換された状態となる。
【0179】
制御装置90は、窒素置換器30bの内部が窒素ガスで置換された状態となった後に、窒素置換器30bの下方の制御弁を開状態に切り替えて窒素置換器30bから反応管ヘッド33へ炭化物を供給する。制御装置90は、窒素置換器30bから反応管ヘッド33へ炭化物を供給した後、窒素置換器30bの下方の制御弁を閉状態とする。また、制御装置90は、その後に窒素置換器30bの上方の制御弁を開状態として窒素置換器30bの内部に新たな炭化物を供給する。
【0180】
制御装置90は、以上のように窒素置換器30bの上方及び下方の制御弁の開閉を制御することにより、反応管ヘッド33へ炭化物と共に供給される気体を窒素ガスとしている。この窒素ガスは、反応管32で生成される水性ガスと反応しない不活性ガスである。そのため、炭化物と共に酸索を含む空気が反応管32へ供給され、酸素と水性ガスとが反応して水性ガスの収率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0181】
チャー回収装置41は、窒素置換器41aとチャー回収部41bとを有する。窒素置換器41aは、炭化物の未反応分と共に減温器40から供給される水性ガスを不活性な窒素ガスと置換するための装置である。チャー回収部41bは、炭化物の未反応分を回収して図示しない供給経路から窒素置換器30bへ供給する装置である。窒素置換器41aは、減温器40と連結される上方とチャー回収部41bと連結される下方のそれぞれに配置され、制御装置90によって開閉状態が制御される電動式の制御弁(例えば、ボール弁)を有する。
【0182】
制御装置90は、上方の制御弁を開状態とし下方の制御弁を閉状態とすることで窒素置換器41aの内部に炭化物の未反応分を供給する。制御装置90は、窒素置換器41aの内部に供給される炭化物の未反応分が一定量に達した場合、窒素置換器41aの上方の制御弁を閉状態とする。
【0183】
窒素置換器41aには、空気分離装置等の窒素ガスを生成する装置から窒素ガスが常時供給されるようになっている。そのため、窒素置換器41aの上方及び下方の制御弁を閉状態として一定時間が経過すると、炭化物の未反応分と共に窒素置換器41aの内部に供給された水性ガスが外部に排出されて内部が窒素ガスで置換された状態となる。なお、窒素置換器41aから排出される水性ガスは、フレアースタック(図省略)に供給され、燃焼処理されるようになっている。
【0184】
制御装置90は、窒素置換器41aの内部が窒素ガスで置換された状態となった後に、窒素置換器41aの下方の制御弁を開状態に切り替えて窒素置換器41aからチャー回収部41bへ炭化物の未反応分を供給する。制御装置90は、窒素置換器41aからチャー回収部41bへ炭化物の未反応分を供給した後、窒素置換器41aの下方の制御弁を閉状態とする。また、制御装置90は、その後に窒素置換器41aの上方の制御弁を開状態として窒素置換器41aの内部に新たな炭化物の未反応分を供給する。
【0185】
制御装置90は、以上のように窒素置換器41aの上方及び下方の制御弁の開閉を制御することにより、チャー回収部41bへ炭化物の未反応分と共に供給される水性ガスがチャー回収部41bへ供給されるのを防止している。
【0186】
残渣回収装置51は、窒素置換器51aと残渣回収部51bとを有する。窒素置換器51aは、残渣と共にサイクロン50から供給される水性ガスを不活性な窒素ガスと置換するための装置である。残渣回収部51bは、窒素置換器51aから排出される残渣を回収する装置である。
【0187】
窒素置換器51aは、サイクロン50と連結される上方と残渣回収部51bと連結される下方のそれぞれに配置され、制御装置90によって開閉状態が制御される電動式の制御弁(例えば、ボール弁)を有する。窒素置換器51aには、空気分離装置等の窒素ガスを生成する装置から窒素ガスが常時供給されるようになっている。
【0188】
なお、制御装置90は、窒素置換器41aの制御弁を制御するのと同様に窒素置換器51aの制御弁を制御し、水性ガスが残渣回収部51bへ供給されるのを防止するものである。制御装置90が窒素置換器51aの制御弁を制御する方法は、制御装置90が窒素置換器41aの制御弁を制御する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0189】
蒸気発生器80は、蒸気発生部80aと蒸気循環タンク80bとを有する。蒸気発生部80aは、燃焼ガスと熱交換する水を内部に流通させる伝熱管(図示略)と、伝熱管を覆うように形成される筒体に設けられると共に水を内部に流通させるジャケット(図示略)とを有する。伝熱管とジャケットには、それぞれ蒸気循環タンク80bから水が供給されるようになっている。
【0190】
蒸気循環タンク80bは、水供給装置82から水が供給されると共に水を蒸気発生部80aの伝熱管及びジャケットに供給する。ジャケットで熱された温水と、伝熱管が燃焼ガスによって加熱されて生成した蒸気とは、それぞれ蒸気循環タンク80bに回収される。蒸気循環タンク80bは、蒸気発生部80aの伝熱管から供給された蒸気(飽和蒸気)を、蒸気過熱器81へ供給する。
【0191】
最後に、
図15を用いて、本発明の水素ステーションシステムを構成する水素ガス生成システムの有機廃棄物供給装置A−1に適した乾燥機及びその周辺機器について説明する。乾燥機10は、ロータリキルンと呼ばれる方式の乾燥機であり、燃焼ガス導入部10bと、回転体10cと、排出部10dとを有する。燃焼ガス導入部10bは、燃焼ガス流路200dから供給される燃焼ガスを乾燥機10の内部へ導入すると共に導入した燃焼ガスを回転体10cの内部へ導くものである。
【0192】
回転体10cは、軸線Wに沿って延びる方向に形成される円筒状の部材であり駆動モータによって回転動力を与えられることにより軸線W回りに回転する。また、回転体10cの内部には、原料供給路11aから有機廃棄物が供給される。回転体10cの内部に供給された有機廃棄物は、燃焼ガス導入部10bから導かれる燃焼ガスによって乾燥されながら排出部10dに向けて導かれる。有機廃棄物は、回転体10cの回転によって撹拌されながら燃焼ガスによって直接的に加熱され、回転体10cの一端から他端まで燃焼ガスの流れによって搬送される。
【0193】
排出部10dは、回転体10cによって搬送されながら乾燥した有機廃棄物を回収して原料供給路10aへ供給する。原料供給路10aへ供給された有機廃棄物は、ホッパ12を介して炭化炉20へ供給される。また、排出部10dは、燃焼ガス導入部10bから回転体10cの内部を通過して導かれた燃焼ガスを燃焼ガス流路200eへ供給する。燃焼ガス流路200eへ供給された燃焼ガスは、排ガス冷却洗浄装置13へ供給される。
【0194】
以上、説明した本発明の一実施形態の水素ステーションシステムが奏する作用及び効果について、それぞれ説明する。
【0195】
本発明のオンライン型水素ステーションシステムは、水素ガス生成システムAと、水素ガス供給システムBとが、圧力制御装置Cと流量制御装置Dとを介して直結しており、水素ガス生成システムAは、バイオマスである有機廃棄物を燃料として、その部分燃焼で生成した炭化物を過熱蒸気と共に熱分解することによって得られる水性ガスを精製して水素を製造するため、石油コンビナートから生成される燃料を用いる水素製造法を用いた水素ガス生成システムと異なり、住宅から離れた臨海部に設置される石油コンビナートに隣接する必要はなく、立地条件に制限がない。すなわち、燃料電池自動車に水素を供給する水素ガス供給システムに直結したオンサイト型ガスステーションを構築することができる。
【0196】
その上、蓄圧器B−2と有機廃棄物供給装置A−1との間に備えられた圧力制御装置Cと流量制御装置Dが、水素供給量に応じた有機廃棄物の供給量を制御し、水素ガス生成システムの不要な稼働を抑制することができる。
【0197】
従って、水素ガスの輸送費が不要で、水素を製造する原料の貯蔵に特別な装置を設けることもなく、燃料電池車両への水素供給量に応じた水素製造設備の稼働率とすることができるため、水素ガスを大量に貯蔵する必要がなく、全体的にロスのない水素ステーションシステムを構築できる。
【0198】
また、生物資源に由来する有機廃棄物を直接燃焼して得られる熱及び炭化物を利用して水性ガスに変換し、水素を取り出すため、地球の物質循環システムを破壊することがなく、化石燃料やウラン等の枯渇性資源を用いないエネルギーによって水素を製造でき、廃棄物の再利用や減少に繋がる循環型社会構造の構築に大きく寄与することができるという効果がある。
【0199】
特に、本発明の水性ガス生成装置A−2は、燃焼効率が高く、燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出する、炭化効率の高い炭化炉20と、加熱用ガスの外部流出が抑制され、熱分解反応が速やかに進行する熱分解炉30とを用いているため、より純度が高い水性ガスをより効率的に生成することができ、水素の精製が容易で、効率的に水素が製造され、水素ステーションシステムに適した水素ガス生成システムを構築することができる。
【0200】
以下、この点について、詳細に説明する。
【0201】
第一に、上記炭化炉20は、従来の問題点、すなわち、1)有機廃棄物の部分燃焼により生成する可燃性ガスに含まれる、冷却に伴って凝固して高い粘性を示す液体(「タール」ともいう)となる高分子炭化水素の問題、2)有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の冷却が不十分で、炭化物搬送機構の損傷や排出された炭化物と空気との接触による発火の問題、及び、3)有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の炭化効率の問題、を解決するものであり、良質な炭化物を安定して熱分解炉30に供給することができる。
【0202】
そのため、上記炭化炉20は、炭化炉制御部29が、温度センサ28b及びレベルセンサ28dが検出する炭化物の温度に応じて、ターンテーブル24aの回転速度を制御し、炭化物排出部24が外部へ排出する炭化物の排出量を適正化することによって、炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1で十分に冷却され、適切に冷却された状態で炭化物が間隙20aの下端より排出され、炭化物が空気に触れることで再度発火してしまうという問題を解消している。
【0203】
また、上記炭化炉20は、1次燃焼ファン25aにより送風された空気を放熱フィン25eによって加熱し、加熱された空気を空気供給口25cから間隙20aへ供給するようにしたことにより、間隙20aへ供給される空気が放熱フィン25eによって加熱されるため、間隙20aへ供給される空気を加熱しない場合に比べ、1次燃焼領域R2の雰囲気温度が低下することを抑制することができ、有機廃棄物の燃焼用空気として外部の空気を供給しつつ有機廃葉物の炭化効率を向上させることが可能な構成となっている。
【0204】
第二に、上記熱分解炉は、従来の問題点、すなわち、外筒と内筒との間の空隙に供給される炭化炉で生成された燃焼ガス及び熱分解炉で生成する水性ガスの外部への流出の問題、並びに、水性ガスの収率の問題を解決したものであり、炭化炉20から供給された良質の炭化物を、効率よく、水素ガス濃度の高い(高純度の)水性ガスを生成することができる。
【0205】
そのため、上記熱分解炉30は、本体部31の上板31dの下方に上板31dと接するように設けられるグランドパッキン37を備えていること、並びに、本体部31の底板31eの上方に底板31eと接するように設けられると共に反応管32の外周面32dと接触する内周面38dを有するグランドパッキン38を備えている。その結果、本体部31との間に流通する燃焼ガスによって熱分解反応が内部で行われる反応管32が熱膨張する場合に、本体部31の上板31dと反応管32の外周面32dとの隙間から燃焼ガスが外部へ流出すること、並びに、本体部31の底板31eと反応管32の外周面32dとの隙間から燃焼ガスが外部へ流出することが抑制される。その他、実施例に記載した様々なパッキンも併用して燃焼ガスの流出を防き、効率的に水性ガスを生成することができる。
【0206】
また、上記熱分解炉30は、燃焼ガス流路30aへ燃焼ガスを供給する燃焼ガス供給部35を本体部31の上方に設け、燃焼ガス流路30aから燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出部36を本体部31の下方に設け、更に、熱分解炉30を構成する反応管32は、軸線Zに沿って延びる円筒状に形成されるセンターパイプ32aと、その内部に収容されると共に上端から供給される炭化物を上端から段階的に下端部32cまで導くことで炭化物と過熱蒸気との熱分解反応を促進させる複数の第1傾斜板32fと複数の第2傾斜板32gと、これらを保持する複数本の保持棒32hとからなる熱分解促進機構を有している。これにより、炭化物が反応管32の内部に滞留する時間が長くなり、それに伴って熱分解反応が促進されて水性ガスの収率が向上するという効果を奏する。
【0207】
更に、上記熱分解炉39の外部に、熱分解炉30の水性ガス出口ノズル34から排出される未反応の炭化物(チャー)を回収して熱分解炉30の反応管ヘッド33へ再び供給するチャー回収装置41を備えており、チャー回収装置41が回収した未反応の炭化物が再び熱分解されることによって、水性ガスの収率を更に向上させる構成としている。
【0208】
このように、本発明の水性ガス生成装置A−2は、水性ガスを、効率よく、安定して、高純度で、水素精製装置A−3に供給されるため、水素ガスが効率よく製造される。
【0209】
一方、本発明の水素ガス生成システムAを構成する有機廃棄物供給装置A−1及び水性ガス生成装置A−2が、従来の水性ガス生成システムの問題点、すなわち、炭化物のガス化剤として用いる過熱蒸気を生成する熱源や有機廃棄物を乾燥させる熱源として専用の熱源を用いるため、システム全体の熱効率が低いという問題を解決したものである。その結果、水素ステーションシステムの生産性を高め、水素ガスの低コスト化を図ることができる。
【0210】
そのため、まず、水性ガス生成装置A−2は、次のように構成されている。炭化炉20は、有機廃棄物を部分燃焼させて炭化物と燃焼ガスとを生成し、炭化物を熱分解炉30の反応管ヘッド33へ供給され、同じく反応管ヘッド33に供給される過熱蒸気と共に反応管32のセンターパイプ32aの上端側からセンターパイプ32a内に供給される。一方、炭化炉20から燃焼ガス流路200aへ排出された燃焼ガスは、高温を維持したまま熱分解炉30の燃焼ガス供給口35へ供給される。燃焼ガス供給口35から燃焼ガス流路30aへ供給された燃焼ガスは、反応管32のセンターパイプ32aの上端側を加熱しながら下方へ導かれセンターパイプ32aの下端側の燃焼ガス排出口36から燃焼ガス流路200bへ排出される。このように、反応管32の内部は燃焼ガスによって高温状態が維持されるため、その内部で炭化物と過熱蒸気との熱分解反応が促進され、水性ガスの収率を向上させることができる。
【0211】
更に、熱分解炉30における熱分解反応の促進に用いられた燃焼ガスが、その後に蒸気過熱器81の熱源として用いられ、更にその後に蒸気発生器80の熱源として用いられる。蒸気過熱器81とは、蒸気発生器80で発生した飽和水蒸気を等圧のまま加熱することで飽和温度以上の過熱蒸気を生成するものであり、蒸気発生器80とは、液体である水を加熱して飽和水蒸気を生成するものである。そのため、蒸気過熱器81は蒸気発生器80よりも高温の熱源を必要とするので、燃焼ガスを蒸気過熱器81の後に蒸気発生器80へ供給することにより、液体である水から水蒸気を生成した上でそれを加熱して過熱蒸気を生成して熱分解炉30へガス化剤として供給することができる。従って、蒸気過熱器90で適切な温度まで上昇した過熱蒸気を生成することにより、熱分解炉30内で過熱蒸気の温度が熱分解反応(吸熱反応)により低下しても水蒸気が熱分解炉30内で凝縮しないようにすることができる効果があり、熱分解炉30における熱分解反応の促進に用いられた燃焼ガスが、水から過熱蒸気を生成するための熱源としても利用されるため、過熱蒸気を生成する熱源として専用の熱源を用いる場合に比べ、水性ガス生成装置A−2全体の熱効率を向上させることができる。
【0212】
次いで、有機廃棄物供給装置A−1にも、蒸気発生器80で水蒸気を発生させるための熱源として用いられた燃焼ガスは、その後に燃焼ガス流路200dによって乾燥機10に供給され、木質バイオマス等の有機廃棄物が含む水分を低下させるために利用されている。有機廃棄物を乾燥させる熱源として専用の熱源を用いる場合に比べ、水性ガス生成システム100全体の熱効率を向上させることができる。
【0213】
より更に好ましいことに、炭化炉20から排出された燃焼ガスは、熱分解炉30、蒸気過熱器81、蒸気発生器81、及び、乾燥機10の熱源として用いられた後、排ガス冷却洗浄装置13へ供給される。排ガス冷却洗浄装置l3は、燃焼ガスを大気中に排出するために燃焼ガスの温度を低下させる必要があるが、排ガス冷却洗浄装置13へ供給される燃焼ガスの温度は、有機廃棄物を乾燥させる熱源として利用され、十分に低下した状態となっているため、排ガス冷却洗浄装置13を安価に製造することができる。
【0214】
このように、炭化物のガス化剤として用いる過熱蒸気を生成する専用の熱源を用いずに熱効率を向上させると共に熱分解炉30における熱分解反応を促進させることができ、水性ガス生成システム100を提供することができる。それと共に、燃焼ガスは、有機廃棄物を乾燥させる熱源として利用され、有機廃棄物供給装置A−1及び水性ガス生成装置A−2全体の熱効率を向上させることができる上、排ガス冷却洗浄装置13を安価に製造することができる。
【0215】
以上、本発明の水素ガス生成システムAは、燃焼効率が高く、燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出する、炭化効率の高い炭化炉、加熱用ガスの外部流出が抑制され、熱分解反応が進行する熱分解炉、並びに、炭化炉で生成した燃焼ガスを有効に活用することができる燃焼ガス流路とを適用することによって、高純度の水性ガスを効率的に生成することができ、水素精製装置で水素ガスを効率的に分離することができるので、水素ステーションシステムに好ましい水素ガス生成システムを提供することができる。