(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る電波発生装置について、図を参照して説明する。
図1乃至
図3は、本発明の実施形態に係る電波発生装置2、5、5Bの使用状態を示しており、
図1は電波発生装置2をフライヤー1Aに使用した場合を示し、
図2及び
図3は夫々、電波発生装置2、5を冷蔵庫1Bに使用した場合を示している。また、
図4は電波発生装置5Bをコンテナ1Cで使用した状態を示している。なお、電波発生装置5Bは、電波発生装置5と寸法が異なる装置であるが、寸法以外の構成は基本的に同じである。
【0019】
図1の例では、電波発生装置2をフライヤー1Aの金属製の油槽内に設置している。電波発生装置2から、油槽内の食材に電波が照射されると、揚げ物の食味がより良いものになると同時に、油の酸化・劣化を効果的に抑制することができる。
また、
図2及び
図3の例では、電波発生装置2、5を冷蔵庫1Bの庫内に設置している。電波発生装置2、5から、庫内の食材に電波が照射されると、食材に含まれる水分が微振動すると共に、蒸散作用が抑制され、これにより食材の鮮度を保つことができる。特に、
図3の例では、食材に対して上下左右から電波を照射することができるため、より効果的に食材の鮮度を保つことができる。
また、
図4の例では、電波発生装置5Bをコンテナ1C内に設置している。電波発生装置5Bから、コンテナ1C内の食料品等に電波が照射されるとやはり、食料品等に含まれる水分が微振動すると共に、蒸散作用が抑制され、これにより食料品等の鮮度を保つことができる。
なお、以下では、電波発生装置2、5、5Bと共に、水分を内包する食材等を収容するフライヤー1Aの油槽、冷蔵庫1Bの庫内、あるいはコンテナ1Cなどをまとめて「収容部」と称することがある。
【0020】
電波発生装置2は
図5及び
図6に示されるように、一対の薄板電極21、22、当該一対の薄板電極21、22を連結する連結具3、及び薄板電極21に高周波電流を流す発振器を内蔵した中継装置から構成され、収容部の内壁と電気的に絶縁した状態で収容設置される。
【0021】
一対の薄板電極21、22はいずれも、L字形状に屈曲した導電性の金属板であって、それぞれ基板211、221と延長板212、222からなる。
基板211、221は、断面L字形状からなり、基底部2111、2211と、基底部2111、2211の一側縁部から上方へ直角に立ち上がった立設部2112、2212で構成され、基底部2111、2211は薄板電極21、22の底面部21A、22Aを構成している。
延長板212、222は、矩形状の平板であって、基板211、221の立設部2112、2212に着脱可能に取り付けられる。また、延長板212、222は、基板211、221の立設部2112、2212と共に、薄板電極21、22の側面部21B、22Bを構成している。
【0022】
なお、薄板電極21、22のL字形状は、角部が僅かに丸みを帯びたR状に屈曲されており、放射線状に収容部内に万遍なく電磁誘導を起こすことができるようになっている。
このようなL字形状とすることで、底面部21A、22Aと側面部21B、22Bの双方から電波を発生させられるので、底面部21A、22A間や側面部21B、22B間、あるいは底面部22A、22A上に載置される食材に対して万遍なく電波を照射でき、得られる効果が大きい。
この一対の薄板電極21、22は、間隙Sを設けて相対する形で収容部内に配置させられる。
【0023】
この一対の薄板電極21、22には、その底面部21A、22Bの下面側に絶縁体23が取り付けられている。この絶縁体23は外側に僅かに張り出しており、これにより電波発生装置2は、底面側や側面側において、収容部の内壁等の部材に当接することなく、電気的に絶縁した状態を確保している。
なお、絶縁体23の絶縁素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等のフッ素樹脂などを用いることができる。
【0024】
また、薄板電極21、22の底面部21A、22Aを構成する基板211、221の基底部2111、2211には、複数の六角形状の貫通孔21a、22aが穿設されている。六角形状の貫通孔21a、22aが設けられていることで、電波発生装置2をフライヤー1に使用した際、加熱時に、油槽内の調理用油が貫通孔21a、22aを通って下方から上方へ上昇すると、スパイラル状の流れを生みだす。そして、この対流にしたがって、油槽内の調理用油が常にかき混ぜられているような状態になり、油槽内の調理用油の温度が低下しにくくなっている。
なお、貫通孔21a、22aは、側面部21B、22Bにも設けられていてもよい。
【0025】
また、薄板電極21、22の底面部21A、22Aには、連結具3に連結して取り付けられるための複数のビス止め用の貫通孔21b、22bが穿設されている。この貫通孔21b、22bと、連結具3の貫通孔31a、32aにビス31c、32cを連通させて締結することで、薄板電極21、22と連結具3とを連結すると共に、一対の薄板電極21、22同士を連結することができる。
【0026】
薄板電極21、22の側面部21B、22Bには夫々、一端部に、中継装置内に集約される導線の一端を接続するための端子210、220が設けられている。
この端子210、220は、側面部21B、22Bの一端側の上部に、上方に突出して取り付けられた棒状の部材として構成され、電波発生装置2をフライヤー1Aに使用し、油槽内に設置した際には、調理用油の投入量を調整することで、油面から突き出た状態とすることができる。
【0027】
薄板電極21、22の側面部21B、22Bは夫々、基板211、221の立設部2112、2212と延長板212、222によって構成されている。
側面部21B、22Bは共に、同様の構造を有しているが、以下では、側面部21Bについて説明する。
【0028】
立設部2112は、底面部21Aを構成する基底部2111に連設し、直角に立設した平板状の部分であり、所定の高さを有している。この立設部2112の幅方向の両端近傍には夫々、高さ方向に沿って二箇所、延長板212をビス止めするための貫通孔2112a、2112bが設けられている。
【0029】
一方、延長板212は、矩形の平板形状からなり、立設部2112に対して着脱可能に取り付けられる。この延長板212には、立設部2112の貫通孔2112a、2112bに対応して、幅方向の両端近傍に夫々、貫通孔212a、212bが設けられている。
【0030】
そして、立設部2112の貫通孔2112a、2112bと、延長板212の貫通孔212a、212bに対し、ビス212cを連通させ、ナット212dで締結することにより、立設部2112に延長板212を一体的に取り付け、側面部21Bを構成させることができる。
【0031】
ここで、貫通孔2112a、2112bと貫通孔212a、212bの対応のさせ方によって、側面部21Bの高さを3段階に調整することができる。
即ち、貫通孔2112bと貫通212aとを対応させて、立設部2112と延長板212をビス212cとナット212dで締結することにより、側面部21Bの高さを最も低いものとすることができる。一方、貫通孔2112aと貫通孔212a、及び貫通孔2112bと貫通孔212bとを対応させて、立設部2112と延長板212をビス212cとナット212dで締結することにより、貫通孔2112bと貫通212aとを対応させた場合よりも側面部21Bの高さを高いものとすることができる。さらに、貫通孔2112aと貫通孔212bとを対応させて、立設部2112と延長板212をビス212cとナット212dで締結することにより、側面部21Bの高さを最も高いものとすることができる。
【0032】
以上においては、側面部21Bについて説明したが、側面部22Bも側面部21Bと同様の構造を有している。
即ち、立設部2212は、底面部22Aを構成する基底部2211に連設すると共に、直角に立設し、幅方向の両端近傍には夫々、高さ方向に沿って二箇所、延長板222をビス止めするための貫通孔2212a、2212bが設けられている。また、延長板222は、立設部2212の貫通孔2212a、2212bに対応して、幅方向の両端近傍に夫々、貫通孔222a、222bを有し、立設部2212に着脱可能に取り付けられる。
そして、立設部2212の貫通孔2212a、2212bと、延長板222の貫通孔222a、222bに対し、ビス222cを貫通させ、ナット222dで締結することにより、立設部2212に延長板222を一体的に取り付け、側面部22Bを構成させることができる。この際、側面部21Bと同様にして、三段階の高さに調整することができる。
【0033】
連結具3は、一対の薄板電極21、22の裏面側に取り付けられ、収容部内において薄板電極21、22を下方から支持すると共に、一対の薄板電極21、22を連結している。
この連結具3は、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等のフッ素樹脂などの絶縁性材料からなる長方形状の薄板であって、複数の貫通孔3aが穿設されている。ここで、貫通孔3aは、貫通孔21a、22aと同様に六角形状からなり、電波発生装置2をフライヤー1Aに使用した際には、油槽内に対流を起こすことができる。なお、この3aは、連結具3に薄板電極21、22をビス止めするためのビス止め用の孔を兼ねることもできる。
【0034】
一対の薄板電極21、22の連結においては、一端側で薄板電極21を下面側から支持した状態で、薄板電極21の貫通孔21bと連結具3の貫通孔31aとにビス31cが連通して締結されると共に、他端側で薄板電極22を下面側から支持した状態で、薄板電極22の貫通孔22bと連結具3の貫通孔32aとにビス32cが連通して締結され、これにより薄板電極21、22同士が連結されている。
【0035】
なお、薄板電極21、22の貫通孔21b、22bが、薄板電極21、22同士が連結する方向に沿って複数設けられていることから、複数設けられている貫通孔21b、22bのうち任意に選択した貫通孔21b、22bと、貫通孔31a、32aを対応させて、薄板電極21、22と連結具3をビス31c、32cで連結することにより、薄板電極21、22間の間隙Sを所望の長さに設定することができる。
また、連結具3が絶縁性素材からなることで、薄板電極21、22同士、さらには加熱装置12と薄板電極21、22との絶縁性が担保されている。
【0036】
中継装置は、薄板電極21に高周波電流を流す発振器と、薄板電極21、22間の電流値を測定する測定器を内蔵しており、外部電源と接続して、これらの発振器や測定器に電力が供給される。
一対の薄板電極21、22夫々の端子210、220には、導線の一端が接続されており、他端は中継装置内に集約されている。
【0037】
中継装置内において、薄板電極21の端子210と接続する導線は発振器と接続しており、発振器からは、薄板電極21に対して高周波電流が流される。
一方、薄板電極22の端子42と接続する導線はアースに接続されている。
なお、薄板電極22には、薄板電極21、22間に大きな電流が流れた場合に、装置の故障を防ぐため、ヒューズや電流遮断装置など、装置を保護するための部品や装置を取り付けておいてもよい。
【0038】
さらに、端子210、220と接続する導線は、薄板電極21、22間の抵抗値を測定する測定器に接続している。この測定器は、導線を流れる電流に基づいて、薄板電極21、22間の電流値ないしは抵抗値を常時、又は断続的に測定している。
発振器は、この測定器による測定に基づき、薄板電極21、22間の電流値を所定の値に保つべく、高周波電流の強度を調整することができる。
【0039】
以上の構成からなる電波発生装置2において、薄板電極21に高周波電流が流されると、間隙Sによって絶縁された一対の薄板電極21、22間に振動電流が発生する。そして、振動電流は電波(電波)を発生させ、この電波が薄板電極21上、あるいは薄板電極21間に載置された食材に照射される。
【0040】
この点、本例では、電波として150kHz以下の長波を用いるのが好適である。長波を用いることで、電波発生装置2周辺をシールドする必要がないし、対象物内の水分に対してエネルギーを付加しすぎることなく微小振動させることができる。なお、本例で用いる電波としては150kHz以下であれば好適であって、長波のほか、超長波、あるいは極超長波であっても適用可能である。
【0041】
なお、本例で用いる電波として150kHz以下の長波を用いることが好適なことは、
図16に示されるデータから明らかである。即ち、誘電分光による水のダイナミクスを明らかにした
図16に示されるデータによれば、電波を氷(Ice)に照射するのに、150kHz以下の周波数帯が最も好適であることが把握される。したがって、特に冷凍保存されている食品等に対しては、電波発生装置2によってこの150kHz以下の長波を照射することが最適である。
【0042】
そして、例えば50kHzの高周波電流であれば、5万回/秒の極性変化を伴う電磁界振動にのった長波(電波)が発信されることになる。電磁界振動が双極子を持つ食材に到達すると、静電誘導現象が発現する。
静電誘導現象を発現させることで斥力を生み、食材内の水分を微小振動させ続けることで、食材の鮮度を保持することができる。また、フライヤー1Aに使用した際は、食材に対する油分の浸透が妨げられると共に、静電吸着効果と食材から浸み出すドリップ及び水分を微細化し、凝縮することで油跳ねが抑制され、さらには摩擦熱で食材自体が加温されるため、油温を10℃程度下げることが可能となり、油の酸化抑制にも効果を発揮することができる。
【0043】
なお、本実施形態に係る電波発生装置2は、薄板電極21、22に設けられている複数の貫通孔21b、22bのうちの所定の貫通孔21b、22bと、連結具3に設けられている貫通孔31a、32aとをビス止めすることにより、間隙Sの長さを可変としたが、このような間隙Sの長さを可変とする構造は、他の構造によることもできる。
【0044】
例えば、上面が開口したガイドレールと、当該ガイドレール内に嵌め込まれ、外周面にネジ溝が切られた調整ボルトからなる絶縁性の支持具を用いることができる。
調整ボルトには、調整ボルトに螺合すると共に、この調整ボルトを回すことによって、調整ボルト及びガイドレール上を長さ方向に摺動する支持板を取り付けておき、支持板上に一対の薄板電極21、22を支持させる。調整ボルトを回して、支持板を調整ボルト及びガイドレールの長さ方向に摺動させることによって、一対の薄板電極21、22は互いに接近したり、離間したりすることができる。これにより、一対の薄板電極21、22間に所望の長さの間隙Sを設けることができる。
なお、このような支持具を、中継装置の制御に基づいて動作可能なものとし、測定器による測定に基づき、薄板電極21、22間の電流値を所定の値に保つべく、間隙Sの長さを調整することができるようにしてもよい。
【0045】
なお、上述した本実施形態に係る電波発生装置2では、薄板電極21、22について、側面部21B、22Bの高さを三段階に調整可能としたが、これに限らず、他の構造により、高さをより細かく自由に調整可能とすることもでき、そのような他の例に係る電波発生装置4を
図7に示す。
【0046】
図7に示されるように、電波発生装置4が備える薄板電極41、42は、薄板電極21、22と同様、底面部41A、42Aと側面部41B、42Bから構成され、側面部41B、42Bは夫々、基板411、421の立設部4112、4212と延長板412、422から構成されている。
側面部41B、42Bは共に、同様の構造を有しているが、以下ではまず、側面部41Bについて説明する。
【0047】
立設部4112は、底面部41Aを構成する基底部4111に連設し、直角に立設した平板状の部分であり、所定の高さを有している。この立設部4112の幅方向の両端近傍には夫々、延長板412をビス止めするため、高さ方向に長さを有する貫通溝4112aが設けられている。
【0048】
延長板412は、矩形の平板形状からなり、立設部4112に対して着脱可能に取り付けられる。この延長板412には、立設部4112の貫通溝4112aに対応して、幅方向の両端近傍に夫々、貫通孔412aが設けられている。
【0049】
そして、立設部4112の貫通溝4112aと、延長板412の貫通孔412aに対し、ビス412bを連通させ、ナット412cで締結することにより、立設部4112に延長板412を一体的に取り付け、側面部41Bを構成させることができる。
【0050】
ここで、貫通溝4112aと貫通孔412aの対応のさせ方によって、側面部41Bの高さを、貫通溝4112aの長さの範囲で調整することができる。
即ち、貫通溝4112aの下端部と貫通412aとを対応させて、立設部4112と延長板412をビス412bとナット412cで締結することにより、側面部41Bの高さを最も低いものとすることができる。また、貫通溝4112aの上端部と貫通孔412aとを対応させて、立設部4112と延長板412をビス412bとナット412cで締結することにより、側面部41Bの高さを最も高いものとすることができる。一方で、貫通溝4112aの上端部から下端部までの間の任意の位置と貫通孔412aとを対応させて、立設部4112と延長板412をビス412bとナット412cで締結することにより、貫通溝4112aの長さの範囲で、側面部41Bの高さを任意の高さとすることができる。
【0051】
以上においては、側面部41Bについて説明したが、側面部42Bも側面部41Bと同様の構造を有している。
即ち、立設部4212は、底面部42Aを構成する基底部4211に連設すると共に、直角に立設し、幅方向の両端近傍には夫々、延長板422をビス止めするための貫通溝4212aが設けられている。また、延長板422は、立設部4212の貫通溝4212aに対応して、幅方向の両端近傍に夫々、貫通孔422aを有し、立設部4212に着脱可能に取り付けられる。
そして、立設部4212の貫通溝4212aと、延長板422の貫通孔422aに対し、ビス422bを連通させ、ナット422cで締結することにより、立設部4212に延長板422を一体的に取り付け、側面部42Bを構成させることができる。この際、側面部41Bと同様にして、貫通溝4212aの長さの範囲で任意の高さに調整することができる。
【0052】
以上のとおり、電波発生装置2、4により、その側面部21B、22B、41B、42Bの高さを調整する構造の例を示したが、これらの例に関わらず、他の各種の構造によっても、側面部21B、22B、41B、42Bの高さを調整することができ、本発明の実施において採るべき構造が限定されることはない。
【0053】
次に、上述した電波発生装置2について、他の変形例に係る電波発生装置5について説明する。
図8に示されるように、電波発生装置5が備える一対の薄板電極51、52はいずれも、断面略コの字(U字)状からなり、それぞれ基板511、521と延長板512、522からなる。
【0054】
基板511、521は、断面L字形状からなり、基底部5111、5211と、基底部5111、5211の一側縁部から上方へ直角に立ち上がった立設部5112、5212で構成されている。
また、延長板512、522は、基板511、521の立設部5112、5212に着脱可能に取り付けられる延設部5121、5221と、延設部5121、5221の上端から基底部5111、5211と平行に延び出した延出部5122、5222で構成されている。
【0055】
そして、基底部5111、5211は薄板電極51、52の底面部51A、52Aを構成している。
また、基板511、521の立設部5112、5212は、延長板512、522の延設部5121、5221と共に、薄板電極51、52の側面部51B、52Bを構成している。
さらに、延長板512、522の延出部5122、5222は、薄板電極51、52の天面部51C、52Cを構成している。
【0056】
このような構成からなる薄板電極51、52は、薄板電極21、22と同様、側面部51B、52Bの高さを調整する手段を有しているが、さらに天面部51C、52Cを有していることにより、相対する一対の薄板電極51、52間に載置される食材等を、底面、側面、天面の三方から覆い、当該三方から電波を照射することができる。
これにより、食材等を万遍なく加熱することができると共に、効率よく食材等を加熱することができる。
【0057】
上述した本実施形態に係る電波発生装置2では、連結具3により、一対の薄板電極21、22が連結されたが、薄板電極21、22は、一定の距離をおいて相対して固定的に設置されればよく、本発明の実施においては、薄板電極21、22は必ずしも、連結具3によって連結されることを要しない。
この点、連結具3を用いずに本発明を実施する他の例に係る電波発生装置6について、
図9を参照して説明する。
【0058】
電波発生装置6が備える一対の薄板電極61、62は、上述した薄板電極21、22と同様、L字形状に屈曲した導電性の金属板であって、水平な底面部61A、62Aと、底面部61A、62Aの一側縁部から直角上方に延び出た側面部61B、62Bから構成されている。また同様に、この一対の薄板電極61、62は、所定の間隙を設けて相対する形で収容部内に配置させられる。
【0059】
一対の薄板電極61、62には夫々、底面部61A、62Aの下面側の四隅に絶縁体63が取り付けられている。また、この絶縁体63は外側に僅かに張り出しており、これにより電波発生装置6は、底面側や側面側において、収容部の内壁等の部材に当接することなく、電気的に絶縁した状態を確保している。
なお、絶縁体63の絶縁素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等のフッ素樹脂などを用いることができる。
【0060】
また、薄板電極61、62の側面部61B、62Bには夫々、収容部の内壁と向き合う面にマグネット7が取り付けられている。
このマグネット7は、金属製からなる収容部の内壁に対し、金属製の薄板電極61、62を磁力によって固着させる。
【0061】
一方で、このマグネット7は、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等の絶縁体で覆われており、これにより、薄板電極61、62と収容部の内壁との間を電気的に絶縁した状態としている。その結果、薄板電極61、62と収容部との絶縁性を確保しつつ、薄板電極61、62を収容部内に固定設置することができる。
【0062】
なお、以上の本実施形態に係るフライヤー電波発生装置2において、L字状の薄板電極21、22を取り付ける向きを任意の向き変えることもできる。即ち、電波発生装置2では、底面部21A、221Aが収容部内の底面と向き合い、側面部21B、22Bが収容部内の側面に向き合うように薄板電極21、22を配置しているが、底面部21A、22Aと側面部21B、22Bが共に収容部内の側面に向き合うように配置することができる。また、互いに向き合う薄板電極21、22が、互いと線対称あるいは点対称な位置に配置されてもよい。
また、L字状の薄板電極21、22は、L字に屈曲させず、四分円の円弧状に湾曲させた形状のものとすることもできる。
このよう、L字状の薄板電極21、22を任意の向きに向けて配置した場合や、円弧状に湾曲させた構成とした場合でも、互いとの絶縁性及び収容部との絶縁性を確保することで上記のとおりの作用を奏することができる。
【0063】
以上の本実施形態に係る電波発生装置2による調理について説明する。なお、以下では、電波発生装置2による調理の例について説明するが、他の例に係る電波発生装置4、5、6による場合も同様に調理が行われる。
まず、フライヤー1の油槽11内に電波発生装置2を設置する。この際、電波発生装置2の薄板電極21、22は、絶縁体23、さらには絶縁素材からなる連結具3などにより、油槽11とは電気的に絶縁した状態となっている。
【0064】
次に、油槽11内に調理用油を投入し、電波発生装置2及び加熱装置12を起動させ、調理用油を加熱する。
調理用油が調理に適した温度になったら、油槽11内に食材を投入する。
【0065】
この状態において、発振器からは薄板電極21に高周波電流が流され、これにより薄板電極21、22間に振動電流が惹起されて電波が発生し、油槽11中の食材に電波が照射される。
電波が照射された食材の内部では、水分子を繋ぐ振動子の振動や、クラスターの微細化が生じており、その結果、短い時間で調理でき、また、水分を内部に閉じ込めつつ表面をカラッと揚げて、食味の良いものにすることができる。また、これと同時に、油の酸化・劣化がより効果的に抑制される。
さらに、薄板電極22がアースに接続されているため、感電の危険性がなく、安全に使用することができる。
【0066】
以下では、上述した本実施形態に係る電波発生装置2を用いたフライヤー1により、食材を調理した場合の効果を検証した。
この検証では、幾つかの食材の中から、調理前後における極性化合物量の大きいイカ軟骨の唐揚げを対象として、極性化合物量(TMP)、酸価値(AV)、過酸化物価(PV)、トランス脂肪酸含有量、うま味(グルタミン酸の含有量)を評価した。
【0067】
なお、酸価値については、以下のとおりに計算している。
酸価値=A×F×5.611/B
A: 0.1mol/l エタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
F: 0.1mol/l エタノール性水酸化カリウム溶液の力値
B: 試料の採取量(g)
【0068】
また、過酸化物価については、以下のとおりに計算している。
過酸化物価(meq/kg)=A×F×10/B
A:0.01mol/l チオ硫酸ナトリウム標準液の滴定量(ml)
F:0.01mol/l チオ硫酸ナトリウム標準液の力値
B:試料の採取量(g)
【0069】
<調理方法>
調理方法1では、電波発生装置2を起動させた状態で、イカ軟骨唐揚げ(冷凍、未加熱)を1日当たり6kg、5日間調理し、計30kg揚げた。
また、調理方法1に対する比較例として、調理方法2では、電波発生装置2(5)を起動させずに、イカ軟骨唐揚げ(冷凍、未加熱)を同様に、1日当たり6kg、5日間調理し、計30kg揚げた。
そして、一日ごとに揚げた後の油をサンプルとして耐熱ビンに採取、冷凍保存し、分析サンプルとした。
なお、食用油は、23リットル用い、調理過程で減少した分は随時、補充した。
【0070】
<極性化合物量(TMP)>
図10は、調理方法1及び調理方法2におけるTMP値の経時変化を示しており、
A:調理方法1
B1:調理方法2において、一対の薄板電極21、22の内側から採取
B2:調理方法2において、一対の薄板電極21、22の外側から採取
である。
【0071】
また、
図11も同様に、調理方法1及び調理方法2におけるTMP値の経時変化を示しており、
A:調理方法1
B’:調理方法2において、一対の薄板電極21、22の内側と外側(油槽内)における平均値
である。
【0072】
この結果によれば、調理方法1に比べ、調理方法2によれば、調理時間を6分から4.5分に短縮することができ、TMP値の上昇を抑えることができることが分かった。
また、一対の薄板電極21、22の内外においても、TMP値に差が生じており、一対の薄板電極21、22の内側に食材を配置して調理することにより、高い効果を得られることが分かった。
さらに、調理された食材を食した被験者の多くがおいしいと感じるTMP値17.5%に達するまでの日数を求めると、調理方法1では3日間であるが、調理方法2では、一対の薄板電極21、22の内側の場合で6.6日間、一対の薄板電極21、22の内外の平均値では5.3日間と推算された。したがって、電波発生装置2を用い、一対の薄板電極21、22の内側に食材を配置して調理することで、電波発生装置2を用いない場合に比べ、2.2倍長く、おいしく食べられるTMP値17.5%以下で揚げ調理をできることが検証された。
【0073】
<酸価値(AV)>
図12は、調理方法1及び調理方法2における酸価値(AV)を示しており、
A:調理方法1
B:調理方法2
である。
【0074】
試験0日目の油のAV値は0.17であったが、5日目の油の酸価値は、調理方法1で0.28、調理方法2で0.26であった。この結果、電波発生装置2を用いることで、調理済みの油の酸価を0.02(AV)、調理方法1に比して7.1%抑制できることが把握された。
【0075】
<過酸化物価(PV)>
図13に示されるように、過酸化物価は、調理方法2では1.08、調理方法1では1.21であった。したがって、電波発生装置2を用いることで、調理済みの油の過酸化物価を0.13(PV)、調理方法1に比して10.7%抑制できることが把握された。
【0076】
<トランス脂肪酸含有量>
図14に示されるように、試験5日目の油のトランス脂肪酸量は、調理方法1で0.17g/100g、電波発生装置2を用いた調理方法2で0.10g/100g上昇した。よって、電波発生装置2を用いることで、調理済みの油中のトランス脂肪酸を0.07g/100g、調理方法1の9.9%抑制できることが把握された。
【0077】
<うま味(グルタミン酸の含有量)>
うま味はグルタミン酸の含有量として検証した。
HPLC分析の結果、
図15に示されるように、6分付近に見られるグルタミン酸のピークの面積値を比較したところ、調理方法2では159022、調理方法1では137741であった。
よって、電波発生装置2を用いることで、調理方法1に比して1.2倍グルタミン酸が多く含まれていることが分かった。
【0078】
以上のとおり、電波発生装置2を用いることで、食材の揚げ調理において、調理時間を短縮して、長く、よりおいしく食べられるようにすることができることが明らかとなった。
【0079】
以上の実施形態では、電波発生装置2をフライヤー1A、冷蔵庫1B、あるいはコンテナ1Cに適用したが、特にこれらのものに適用が限定されることはない。
例えば、コーヒーメーカーに設置し、コーヒーサーバの受け具として電波発生装置2を設置すれば、コーヒーに電波を照射することで、コーヒーの美味しさを維持することにも効果がある。また、台所のシンクに置場を確保して設置すれば、食材等を適宜、電波発生装置2内に収容することで、食材等の鮮度を保持したり美味しさを維持したりするといったことを手軽に行うことができる。
【0080】
また、本発明は、検体、血液、臓器、薬品などの医療分野、化粧品、健康食品などの美容・健康分野にも応用可能である。具体的には、薬品や化粧水など、水分を内包するものであれば、電波発生装置2による電波を照射して水分を微振動させることができ、これにより品質維持あるいは向上といった効果を得ることができる。
さらには、鮮度維持、解凍、保蔵、ドリップレス解凍、ドリップレス冷凍食品の製造ができる家庭用・業務用のプレハブ、備蓄倉庫、船、電車、飛行機、車内用揚げ物ウォーマー、おでん器、野菜のオープンショーケース、ケーキのショーケース、肉まん・飲茶のショーケース、餃子焼き器、ゆで麺器、温蔵庫、飛行機用ワゴンなどに応用することも可能である。